新年明けましておめでとうございます。
新型コロナウイルスに翻弄された1年
1年前には全く予想していませんでしたが、昨年は、新型コロナウイルス感染症に翻弄された1年でした。実は、新年のご挨拶を申し上げるにあたり、昨年の年頭所感を読み返しました。すると、結びで「本年は、いよいよ東京オリンピック・パラリンピックを迎え、日本全体が高揚感に包まれていくことでしょう。本所としても、70周年記念事業の総仕上げの年として深く想い出に残る年にしたいと思います」と記していました。この年頭所感を執筆したのは、一連の本所設立70周年記念行事を挙行し終えた直後でした。感染症拡大の状況を考えれば、正に紙一重のタイミングであったと思います。
コロナ禍初期の混乱
新型コロナウイルスの感染拡大により、本所の活動は大きく制約を受けました。心残りの最初の事例として記憶しているのは、昨年の2月20日に実施が予定されていた、東京大学 先端科学技術研究センターとの共同主催による学術講演会「ミッションオリエンテッドエンジニアリング-課題設定とOne Teamマネジメント-」の中止です。昨年12月には、JAXA宇宙科学研究所の探査機はやぶさ2が地球への帰還を果たしましたが、これに先立ち、「はやぶさ2」のプロジェクトマネージャーの 津田 雄一 教授にご講演いただく予定だったのです。直前に中止せざるを得なくなり、大変残念でした。
本所独自のコロナ対策を次々と遂行
その後、新型コロナウイルス感染拡大に対応する活動が、所内で立ち上がり始めました。多くの学校が休校になった3月上旬には、新型コロナウイルス感染症対策のため自宅に閉ざされてしまった親子を応援する活動として、本所の最新の研究成果をクイズ形式で楽しめる特別企画「#休校中親子でクイズ」を広報室が生研Facebookで配信しました。また、3月下旬には企画運営室が、所内向けの生研サロン「生研課題解決ミッション:新型コロナウイルスに対して」を開催しました。
年度が明けた4月7日には、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が出され、その後、地域が全国に拡大し期間も延長され、最終的に5月25日の解除宣言まで続きました。このような状況の中、4月下旬には本部に倣い所内に「生研・新型コロナウイルス対策タスクフォース」が立ち上がり、全構成員を対象にしたアンケートの実施と課題の把握、ウェブサイトの立ち上げとアンケート集計結果・FAQ・学生向け支援情報の掲載、日本語と英語による迅速な情報発信、所内学生用Slackの立ち上げなど、多くの危機管理・支援業務を遂行しました。タスクフォースによる機動的な対応に大いに助けられました。次世代育成オフィス(ONG)は、ゴールデンウィークに自宅にいる子どもに向けて、「最先端の科学技術」をテーマにした動画を集めたオンライン教材「ONG STEAM STREAM」を公開しました。
さらに6月からは、緊急措置として所内予算を配分して、所内から提案があった19件の新型コロナウイルス感染症対策のための研究活動が開始しました。既に成果が出始めており、ご報告できる日も間近です。
第三者評価の答申を受け、改善へ
昨年は、6年毎に実施している第三者評価を受ける年でもありました。コロナ禍での数日にわたる会議ということで大変に気を揉みましたが、幸いにも外部委員の皆様にお集まりいただくことができ、多くのご助言を対面で頂戴することができました。委員会からの答申に対する本所からの回答を加えて、6月に報告書を取りまとめ、現在は、この報告書をベースに、取り組むべきアクションアイテムの整理と議論を行っています。
本所の将来構想を描く議論が最終段階へ
2017年の旧千葉実験所の西千葉地区から柏キャンパスへの機能移転を契機に、将来構想に関する検討も継続しています。本所の特徴と魅力を多面的に描き出した冊子『生研プロファイル:エディ(IIS Profiles : Eddy)』の発行を経て、現在は、3名の副所長を中心とする将来構想戦略化ワーキンググループを組織し、将来構想に関する議論を行っています。大学債発行に向けて昨年7月に本学本部に提出した未来構想案の作成をホップと位置付けて、9月には将来構想の策定に繋げるステップイベント【潜入!工学研究最前線 ~ 東大 生研が描く「もしかする未来」~】をニコニコ生放送で配信し、7千名を超えるご視聴をいただきました。最終案の策定には至っていませんが、私の所長在任中に暫定的な取りまとめを行い、来年度からの新所長の下で対外的なジャンプイベントを企画していただければと思います。
「科学自然都市協創連合」による大漁旗プロジェクトがフィナーレへ
本所の設立70周年記念事業の柱と位置付けて設立した、「科学自然都市協創連合~宇宙開発発祥の地から繋ぐコンソーシアム~」の設立記念事業として進めてきた大漁旗(Future flag)プロジェクトは、オンライン開催を含む本年度5回の各地とのワークショップを経て、いよいよフィナーレを迎えようとしています。科学自然都市協創連合のホームページにオリジナリティー溢れる各地の旗が紹介されていますので、是非ご覧ください。最終的に、52枚となる予定です。今年1月7日に首都圏に再度緊急事態宣言が発出され、本学の活動制限指針もレベル1に引き上げられ、2月14日に予定していた本学安田講堂における御披露目会は再度の延期を余儀なくされました。3月が無理でも、いずれ盛大に開催できればと思います。
新総長と新所長の下でのさらなる飛躍を願って
最後になりますが、昨年の特筆すべき明るい話題は、何と言っても藤井 輝夫 前所長が来年度からの総長予定者に選出されたことかと思います。また、これまでよりも1か月間前倒しして12月に実施した所長選考では、来年度からの次期所長候補者として岡部 徹 教授が選出されました。現在も緊急事態宣言が再度発出されて先が見えない厳しい状況ですが、来年度からの新総長と新所長の下で本所が一層飛躍することを願いつつ、残りの任期を全うしたいと存じます。
本所の活動は、学内外の皆様との協働とご支援なくして語れません。また、多くの構成員の方々の活躍によって支えられています。特に4月からの新型コロナウイルス感染症拡大の局面では、在宅勤務を余儀なくされた不自由な状況の中で、皆様に本所の活動を絶え間なく支えていただきました。お力添えに深く感謝いたします。活動は著しい制約を受けましたが、色々な意味で長く記憶に残るであろう一年の回顧録となりました。
本年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。
生産技術研究所 所長
岸 利治