◎ 高圧ガス事業所に係る大規模災害対応マニュアル
(東京に震度6強以上の大規模地震が発生したケースを想定) 流体テクノ室
○
発災時の行動基準
@ 人命の安全確保を最優先
A 被害の拡大防止などの処置
B 被害状況の連絡と確認
これら三つの行動原則を念頭において、大規模地震対策特別措置法による警戒宣言、予知情報が発令された場合は、東京大学生産技術研究所防災マニュアルに盛り込まれた防災体制を理解し、流体テクノ室職員各自が創意工夫し、それぞれの現場に応じた防災体制をとることが求められる。
(参考資料: 防災マニュアル 東京大学生産技術研究所 2002年)
○
東京都高圧ガス施設安全基準
東京都による、本室のような高圧ガス事業所に対する大規模地震等による保安対策の指針については、「高圧ガス保安法」及び「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」に基づく規制のほか、東京都震災予防条例に基づき高圧ガス施設からの災害発生防止と被害の最小化のための施策として「東京都高圧ガス施設安全基準」を制定(1979年)している。のちにこの「安全基準」は、1995年に発生した阪神・淡路大震災の被害を踏まえ、東京都における高圧ガス施設の耐震に係る安全性の強化から見直され、1997年「東京都高圧ガス施設安全基準」が改定、施行されるに至った。
(参考資料:東京都高圧ガス施設安全基準(第2次改定抜粋版) 東京都環境保全局)
適用範囲について
当高圧ガス事業所について、「東京都高圧ガス施設安全基準」を適用してみたところ、当高圧ガス施設等は2001年に創設されているので、新設基準(耐震設計基準、基礎等基準、高圧ガス貯蔵設備基準など)に合致したものとなっている。
また、当高圧ガス事業所の高圧ガスの区分については、第一種ガス(不活性ガス)のヘリウムおよび窒素となっている。圧縮空気や不活性ガスについては、災害の拡大に比較的影響が小さいことから、とくに保安の確保が必要な爆発性、毒性又は反応性の高い高圧ガスなどと較べて、新設基準の規制対象外の部分が多い。
しかしながら、震災時において、高圧ガス容器の転倒や液体窒素貯槽からの液漏れ、酸欠事故等の災害は起こりうるので、異常事態の対応マニュアルに沿った行動基準をとらねばならぬことは言うまでもない。
1.平常時の対応
○「高圧ガス保安法」で定められた「危害予防規定」を遵守し、運転基準に従い高圧ガス設備等の「日常点検」「運転記録」を怠らず実施すること
○ 高圧ガスボンベ設置での注意
a.安全確実なボンベ架台に設置。
b.架台の鎖をゆるみがないように止める。
c.直立したボンベはバンドまたは鎖を用いて固定する(転倒防止)
d.液化ガス及びアセチレンガスは横倒し不可。
e.横倒ししたボンベには転がり止めを必ず付ける。
f.廊下・階段などの通路にボンベを決して置いてはならない。
2.大規模地震(震度6強以上)発生時の対応
○ 安全な場所に隠れる
○ ヘリウム液化装置を運転中は、「緊急停止ボタン」等を使用して装置を停止させる。
○ 液体窒素供給装置の利用者の有無など、初期情報を収集する。
○
3.大規模地震沈静直後の対応
○ 避難路を確保する。
○ 保安係員以外の者を室外退避させる。
○ B1Fの液体窒素供給装置の使用中止措置をとる。
○ 高圧ガス設備各々について、日常とは違う“異変”の有無を巡回点検する。
主として、外観検査についての情報を収集する。【情報収集】
(外観検査の項目については、以下を参照する)
○ 点検の結果、高圧ガス設備からの液化窒素の大量漏洩、貯蔵ガスの大量漏洩、近隣の火災等により危険であると判断したときは、近くの作業者に知らせるとともに必要に応じた適切な措置をとり、又は消化にあたる。【応急措置】
・液体窒素貯槽は液取出元弁M8を閉める、ガス放出弁B1を開ける。
・ヘリウム長尺ボンベは各々の元弁を閉める。
・回収用圧縮機を手動運転に切り替える。
・液体ヘリウム容器の常時開放弁は開いていること。
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《外観検査の内容》 |
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検査対象 |
検 査 項 目 |
判定 | |||||||||
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回収用圧縮機 及び 附属配管 |
塗装の剥がれ、腐食・ひび割れの有無 |
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合・否 | |||||||
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高圧ガスの漏洩の有無 |
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合・否 | |||||
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計器類・バルブ・回転音等の異常の有無 |
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合・否 | ||||||||
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基礎及び基礎ボルトの緩み |
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合・否 | ||||||
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不純ガスカードル 及び 附属配管 |
塗装の剥がれ、腐食・ひび割れの有無 |
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合・否 | |||||||
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高圧ガスの漏洩の有無 |
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合・否 | |||||
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計器類・バルブ等の異常の有無 |
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合・否 | ||||||
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基礎及び基礎ボルトの緩み |
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合・否 | ||||||
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高圧ガスドライヤー 及び 附属配管 |
塗装の剥がれ、腐食・ひび割れの有無 |
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合・否 | |||||||
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高圧ガスの漏洩の有無 |
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合・否 | |||||
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計器類・バルブ等の異常の有無 |
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合・否 | ||||||
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ヘリウム液化装置 及び 附属配管 |
塗装の剥がれ、腐食・ひび割れの有無 |
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合・否 | |||||||
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高圧ガスの漏洩の有無 |
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合・否 | |||||
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計器類・バルブ等の異常の有無 |
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合・否 | ||||||
着霜・結露の有無 |
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合・否 | |||||||
基礎及び基礎ボルトの緩み |
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合・否 | |||||||
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液化窒素貯槽 及び 附属配管 |
塗装の剥がれ、腐食・ひび割れの有無 |
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合・否 | |||||||
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液化窒素の漏洩の有無 |
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合・否 | |||||
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計器類・バルブ等の異常の有無 |
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合・否 | ||||||
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基礎及び基礎ボルトの緩み |
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合・否 | ||||||
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着霜・結露の有無 |
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合・否 | |||||
その他の顕著な被害状況 ( 高圧容器の転倒の有無、建物の損傷など )
( )
( )
○ 点検の結果、応急処置を行うことが危険であると判断した場合、また応急措置を行った後もなお危険であると判断した場合には、直ちに保安統括者ならびに保安統括者代理に報告し、二次災害の拡大を防ぐ対策(現場周辺が危険であることを知らせる、立入り禁止にするなど)を講じるとともに、必要に応じて周辺居住者に退避するよう要請する。【退避勧告】
○ いずれの場合も、保安要員の安否の確認、被災状況の報告を保安統括者ならびに保安統括者代理に速やかに行うこと。その判断のもとに関係者及び協力会社、都庁高圧ガス班、消防署、警察署に連絡する。【通報連絡】
○ 災害対策本部が設置された場合、速やかに保安要員の安否の確認、被災状況を報告する。
○ 事故災害が発生したときは、その状況、原因、処置、対策を記録し、設備の存ずる期間保存すること。【事故災害の記録】
4.大規模地震後の高圧ガス設備の再運転
○ 大地震後の高圧ガス設備の再運転に際しては、当該設備が正常に動作することを確認した後でなければ高圧ガスの製造は行わないこと。
・ 電気計装設備からの電源供給は完全に復帰していること
・ 危害予防規定に定めた定期自主検査基準に沿って、点検・合格すること
・ 被災状況が大きいと判断したときは、専門業者による保安検査事前検査と同等な拡大点検を行い、これに合格すること。
5、夜間・休日など保安係員不在時の対応
○ 夜間・休日等の保安係員不在時に大地震が発生したときは、以下の点に留意する。
@ 防災マニュアルの「勤務時間外の対応」を参考する。
A 発災時は活動可能な要員が防災センターのみと予測され、高圧ガス設備については、必要最小限の【初期対応】について情報と連携を訓練しておく。 また、大地震沈静後の巡回時に異変を発見した場合、【初期対応】以外の【応急措置】は困難と判断され、状況の推移など情報の入手に努める。
B 誰が見ても明らかに危険である被災状況のときは、【退避勧告】を要請する。
C 大規模地震災害時において、保安係員等は防災センターを通し高圧ガス設備等について被害状況を確認するとともに、家族の安全を確認した上で速やかに登庁し、状況に応じた適切な処置を行うこと。【行動義務】
D 登庁後にあっては、【通報連絡】、【事故災害の記録】などの措置をとること。
○ 夜間・休日等に稼動することのある高圧ガス設備は以下となっている。
@ 液体窒素供給装置(24時間供給体制のため)
(注) 24時間供給体制のため、酸素濃度計とそれに連動したパトライト及び酸素濃度計の警告音と監視カメラによる映像が24時間防災センターに送信されており、防災対策には万全を期している。
A ヘリウムガス回収用圧縮機(24時間任意時に自動運転自動停止する)
B 液体窒素貯槽からクリーンルームへの液体窒素供給ライン(24時間体制)
(注)震度5以上(125gal以上)時に作動する緊急遮断弁を設置済み。
補足1−窒素ガス・イオン交換水供給設備の大規模災害対応マニュアル
○ はじめに
高圧ガス以外にも、流体テクノ室が関係し所内各所に供給している特殊流体供給設備(窒素ガス、イオン交換水、ヘリウムガス回収管)は、大規模災害時には供給配管の亀裂による外気流出が予想され、酸素欠乏等など2次災害の要因となるので、それらの対応マニュアルを以下に示す。
1、大規模地震(震度6強以上)沈静直後の対応
○ 窒素ガス供給配管およびイオン交換水供給配管は、共同講、PSを通り本所内の各研究室各所に張り巡らされている。大規模地震沈静直後において、これらすべての配管の漏洩確認などを点検【情報収集】することは不可能なことから、2次災害を未然に防止するため以下の措置を最優先とする。
○ 窒素ガスおよびイオン交換水供給設備は、その供給元弁を緊急に閉める。
(各供給元弁は、Fe-B01(ユーティリティー室の入口)にある)
○ それぞれのユーザーに対し、連絡方法が可能なときは「供給元弁を閉めた」ことの通知をする。また、連絡不能な時のため、平常時において「緊急時での供給停止」があることを周知徹底させておく。
2、大規模地震後の各供給設備の再運転
○ 大規模地震後の各供給設備の再供給については、各供給配管からの漏洩がないことを確認した後でなければ、それぞれの再供給は行わないこと。
・ イオン交換水の漏洩点検は外観検査により確認する。
・ 窒素ガスの漏洩点検は、常用圧力での圧力保持(10分間)により確認する。
・ 被災状況が大きいと判断したときは、それぞれの専門業者による漏洩検査を実施し、これに合格すること。
3、防災センターとの連携体制
○ 夜間・休日等の保安係員不在時に大規模地震が発生したときは、高圧ガス設備の対応マニュアルと同様に【初期対応】について防災センターと連携する。
【初期対応】(2次災害防止のための必要最小限の措置)
・ 液体窒素貯槽A、Bともに液取出し元弁M8を閉める。(貯槽置場)
・ 窒素ガスの供給元弁を閉める。(Fe-B01)
・ イオン交換水の供給元弁を閉める。(Fe-B01)
・ ヘリウム回収配管については、緊急性はないと判断する。