谷口 維紹 特任教授からのメッセージ

  1. 研究室の生い立ちと研究の流れ;概観
  2. 研究内容について
  3. 論文発表について
  4. 教育について
  5. 教職員について
  6. 学会活動などについて
  7. 研究室の運営について
  8. おわりに

1. 研究室の生い立ちと研究の流れ;概観

炎症・免疫制御学社会連携研究部門は現在、特任教授の谷口維紹(たにぐち・ただつぐ)と特任准教授の柳井秀元(やない・ひでゆき)とがそれぞれ分子免疫学分野、分子炎症学制御分野を担当しています。研究室は二人がそれぞれの経験や実績に基づいてお互いに協力しながら運営しています。谷口は財団法人癌研究会・癌研究所(現 公益財団法人がん研究会)、大阪大学を経て1995年に本学大学院医学系研究科・医学部・免疫学講座を担当してきました。2012年3月に医学系を定年退職した後、生産技術研究所の特任教授として赴任しました。一方、柳井は医学系大学院終了後、助教を経て特任准教授となり、現在は医学系研究科・病因病理学講座の協力講座指導教員(柳井)として、大学院学生の教育にも携わっています。

研究室では、免疫系におけるシグナル伝達・遺伝子発現の制御機構を中心に研究を続けて来ました。特に、サイトカインと呼ばれる炎症・免疫の調節分子の研究を推進してきましたが、サイトカイン研究は周辺分野にも大きな影響を与え、それにつれて我々の研究の流れも変貌しています。なかでも、IRF (Interferon Regulatory Factor) ファミリーと呼ばれる転写因子の発見(大阪大学在籍当時、修士課程大学院生によってなされた)はインターフェロン系の遺伝子発現機構の解明にとどまらず、Th1,Th2免疫応答の制御、ナチュラルキラー細胞の分化、発がんの抑制機構といった幅広い分野に波及効果を及ぼしました。我々は、ノックアウトマウスの作製・解析を通して、現在もIRFに関する遺伝子発現、シグナル伝達、発がんの抑制など、先端的な研究を続けています。インターフェロンが自然免疫系の必須の担い手であることは明らかですが、最近では適応免疫との深い関係も明らかになりつつあります。このような視点に立って樹状細胞の成熟・活性化とその制御機構の研究も進めています。また、インターフェロンシグナルやIRFが、細胞がん化と深い関係があることを突き止めたことがきっかけとなり、発がんの調節機構についても研究を展開させてきました。

最近ではToll-like receptor, Cytosolic receptor等による免疫系の識別、活性化メカニズムの研究や炎症・免疫・発がんを繋ぐシグナル伝達や遺伝子発現の研究を推進しています。特に、柳井はHMGB1と呼ばれる核内因子が実際には核酸による自然免疫系の活性化において普遍的な核酸センサーであることを発見し(Nature,462, 99-103, 2009)、その後もHMGB1と炎症、免疫、発がん等の研究において基礎的研究と疾患治療への応用研究を幅広く展開させています。一方では、死細胞から放出され、炎症、免疫、がん等に影響を及ぼす分子群(Damage Associated Molecular Pattern; DAMPs)の研究も幅広い展開を見せています。例えば、自己免疫疾患に関ると思われる低分子RNAの発見、がん細胞がその死とともに放出する新たなDAMP分子の同定など、従来の免疫学のベクトルとは異なる視点を切り開くべく、スタッフ、ポスドク、学生が一緒になって研究を推進しています。一連の研究を通して新しい概念の創出や疾患の治療法の開発を目指しています。また、広く海外との連携を深め、国際的な研究とそれを担う人材の育成に務めています。

2. 研究内容について

基本的には我々の研究は、確固とした分子生物学を土台とし、新しい技術や考えを積極的に取り入れながら、炎症・免疫系という複雑系をどう理解するか、という分野の先端的研究を目指しています。当然ながら、臨床医学とも深くかかわる分野であり、新しい治療法に路を開くことも視野に入れながら研究しています。以下に、現在進行中のプロジェクトについてもう少し具体的に述べます。プロジェクトの数が多いと思われるかも知れませんが、(学生を含めた)個々人の発想やプロジェクトへの想いを尊重する研究室の姿勢が理由のひとつに挙げられると思います。いずれも独創性のある最先端研究であることを自負しております。 

(1) HMGB1による炎症・がんの調節機構の解析

柳井らは、核酸による炎症・免疫応答の惹起の仕組みを解析するため、免疫原性を示す核酸をベイトにして網羅的な結合分子を検索した結果、核内でクロマチンに結合することで知られているHMGB1(及びそのファミリー)が同定されました。そこで更なる解析を進めたところ、HMGB1は細胞質内にも存在すること、そしてDNA, RNAを問わず、核酸による炎症・免疫応答の惹起にはHMGB1(及びそのファミリー)が普遍的に関与していることを明らかにしました(Nature,462, 99-103, 2009)。この知見を基に、HMGB1に強く結合する非免疫原性オリゴ核酸ISM ODNを合成し、このオリゴ核酸がHMGB1が関与すると思われる多くの疾患モデルにて強い抑制効果を発揮することを見いだしました(Proc Natl Acad Sci U S A.,108,11542-7, 2011). 現在、製薬会社と共同で開発研究を行なっています。 また細胞がある刺激を受けると細胞外に放出されることも判明し、更にその放出に必要なHMGB1修飾のメカニズムも明らかになりつつあります。更に、HMGB1遺伝子を組織特異的に欠損させるマウスの作製にも成功し、その機能解析も進んでいます(Proc Natl Acad Sci U S A.,110, 20699-704, 2013)。最近ではHMGB1ががんの転移に必須であることも明らかとなっており、今後の基礎・臨床研究が大きく進むことが期待されます。

(2) 細胞が放出する炎症・免疫制御分子の同定と解析

細胞が死を迎える際には核酸やタンパク質が放出され、炎症反応を引き起こすことが知られています。これらの分子はダメージ関連分子パターン(damage associated molecular patterns;DAMPs)と呼ばれ、炎症・免疫系を活性化し、自己免疫疾患や動脈硬化、がん、神経変性疾患など、炎症の関わる様々な病態に関わることが分かってきています。したがってDAMPsはさまざまな疾患に対する治療標的として注目を浴びていますが、このようなDAMPsの中に炎症・免疫反応を抑える分子が存在するかどうかは知られていませんでした。 特任研究員の半谷匠(はんがい・しょう)らは、細胞が死ぬと、プロスタグランジンE2(PGE2)が放出され炎症・免疫系を抑制することを見いだしました。実際、細胞が死を迎える際にPGE2の放出を抑えた場合、炎症・免疫応答が増強されることも明らかにしました。さらに、肝障害を患ったマウスにおいてもPGE2の産生を抑制するとその症状が悪化し、死んだ細胞による炎症反応が増強されることやがん細胞においてもPGE2の産生を抑制すると、抗腫瘍免疫応答が増強され、がん細胞の増殖が抑えられることもわかりました。 これまで、炎症・免疫系を引き起こす分子群として注目されてきたDAMPsの中には、実は、炎症・免疫反応を抑える働きがあることが明らかとなったことから、半谷、柳井らは、DAMPsをactivating DAMP(aDAMP)とinhibitory DAMP(iDAMP)に分類することを提唱しています(Proc Natl Acad Sci U S A.,113, 3844-9, 2016)。私たちの体内では正常時でも1秒あたり10万個の細胞が死んでおり、また炎症性疾患、がんなどの疾患においても大量の細胞死が起こります。今回の成果は個体の恒常性の維持やこれらの疾患の病態進展のメカニズムに新たな視点を提供し、新たな治療法開発に向けた分子基盤の確立につながっていくものと期待されます。 現在、半谷らはaDAMPの実体とその機能の解析を推進しています。

(3) IRFファミリーによる炎症・免疫制御機構の解析

私たちのグループが発見した、IRF ファミリー転写因子についてそれらの遺伝子のいくつかを欠損したマウスを作製し、その解析を行うとともに、IRF因子群の機能を制御するシグナル伝達系の機構を解析してきました (Ann. Rev. Immunol., Vol. 19, 623-655, 2001;Nature Rev. Immunol., Vol. 6, 644-659, 2006)。既にIRF3, IRF7, IRF5がI型インターフェロン等の誘導に果たす役割を解明しました(Nature, Vol. 434, 243-249, 2005; Nature, Vol. 434, 772-777, 2005, Nature, Vol. 434,1035-1040, 2005)。注目されるのは、このメンバーを欠損したマウスでは、あるものはTh1型免疫応答、免疫応答の終息、樹状細胞の分化・機能などに異常があることが判明していることです(Nat Immunol., 9, 34-41, 2008)。また、IRF1ががん抑制因子であることは知られていますが、他のIRFとがん化抑制の研究もたいへん興味深いところです。実際、 IRF5が発がん抑制因子であること、細胞周期制御には関与せず、細胞死(アポトーシス)経路を活性化することが判明し、如何なるメカニズムが存在するのか、今後の興味深い課題です(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.101, 2416-2421, 2004;Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 105, 2556-2561, 2008; Oncoimmunology, 1, 1376-1386, 2012)。現在は、IRF3を組織・細胞特異的に欠損させたマウスの作製を終了し、解析を行なっています。

(4) 腸管の炎症・免疫系を制御するバクテリオファージに関する研究

大学院生の一人(既に卒業して就職)が特任助教の根岸英雄(ねぎし・ひでお)らとともに、特定の腸内常在細菌に感染する新しいバクテリオファージを発見しました。その後、根岸と他の大学院生によって、このファージの感染が宿主細菌=の免疫原性を著しく高めることが判明し、この感染が潰瘍性大腸炎のマウスモデルにおいて病態の増悪に関っていることを示す予備的知見も得られました。一連の研究は特定のファージが宿主の炎症・免疫応答に影響を及ぼすこと示した初めての例であり、今後腸内細菌と宿主の相互作用の理解に新たなブレイクスルーをもたらすことが期待されます。実際にはファージ感染を受けた細菌による炎症・免疫系の活性化に関する詳細な分子機構の解明を行なうとともに、別種の細菌・ファージの組み合わせの探索および解析、ヒト常在ファージの探索および疾患との関わり等に関する研究を展開させることによって、新しい研究領域の開拓が期待されます。また、このようにして単離したファージは、応用的側面からも治療のツールとなりうる可能性を秘めていると考えられます。すなわち、ファージ感染によって細菌の免疫原性を変化させて炎症、免疫応答を制御することや、ファージ遺伝子を操作することによって特定の免疫調節因子をファージに産生させることにより宿主免疫応答を改変する、などにより疾患制御の分子基盤を確立できる可能性があります。実際、ファージ治療という言葉は古くから存在し、最近あらたな注目を浴びてはいるものの、基本的にはファージ感染による特定病原菌の排除、を目的としていることから、ファージの操作による炎症、免疫応答の制御、という私たちの発想とは異なったものです。

(5) 腸管免疫系の制御における臓器間連携機構の解析

消化管はユニークな免疫系を構築しており、そこでは免疫細胞がバランスよく保たれています。近年、腸管免疫系が腸内疾患のみに関らず、多くの他の疾患と関っているとの認識が広まっており、本研究分野は免疫学の重点課題ともいえる状況となっています。消化管免疫系の構築において,腸内フローラが重要なはたらきをしていることが徐々に明らかになってきていますが、腸内フローラを構成する個々の細菌種は,それぞれ異なる様式により消化管免疫系に影響をあたえることも知られています。一方、他の臓器が消化管免疫系や腸内フローラにどのような影響を及ぼしているか、については理解が進んでいません。研究室の大学院生の一人(既に卒業。就職)がその課題に取り組み、他臓器由来の免疫調節因子が腸管に運ばれ、腸内フローラの恒常性を維持するために重要である、という知見を得ました。その後、特任助教の西尾純子(にしお・じゅんこ)らによって、この因子が免疫細胞の恒常性維持にも重要であることが判明しています。このような「inter-organ regulation of the immune system」ともいえる新たな研究分野の展開は種々の疾患発症のメカニズムの解明にも繋がることが期待されます。

(6) 自己免疫疾患の原因とその病態克服に向けた研究

免疫系が自己由来分子を認識し、自己の組織破壊に繋がる免疫応答を活性化することは長年知られてきましたが、自然免疫系においてはより最近になり、死細胞等によって放出される自己分子が自然免疫シグナルを活性化することが明らかにされています。このような応答によって惹起される炎症が多くの疾患に関与していることから、免疫応答を惹起するこのような自己由来分子に関する研究は世界的にも注目される分野となっています。しかしながらこのような自己由来成分の本態や機能、そして病態への関与については未知の点が多く残されています。特任助教の根岸英雄(ねぎし・ひでお)らが独自に取得したSLE及び関節リウマチの病態を強力に抑制する化合物KNを基に、その化合物の標的を検索したところ。低分子 RNAであることが判明しました。この自己由来分子であるRNAによる自然免疫系の活性化が如何に病態と関与するかを解明することで病因・病態の解明に繋がる可能性が高いと考えられます。そして、本研究は医薬品としての開発において極めて実現性が高い研究と考えられます。

(7) 自然免疫受容体によるがんの増殖・転移に関する研究

大学院生二人によって(既に卒業して就職)ナチュラルキラー(NK)細胞のがん細胞傷害活性がマクロファージや樹状細胞などの自然免疫細胞によって増強されること、および、その増強において自然免疫細胞に発現する自然免疫受容体の一つであるC型レクチン受容体Dectin-1が重要な役割を持つことを明らかにされました(Chiba et al., eLife, 3: e04177, 2014)。この発見は自然免疫受容体が、自己由来の「がん関連分子パターン(tumor-associated molecular pattern; TAMP)」をも認識すること、それががん免疫監視機構における重要なメカニズムを担うことを初めて明らかにしたものと考えられます。更に、特任研究員の木村好孝(きむら・よしたか)は柳井らと共同で、Dectin-2, MCLと呼ばれるファミリー分子ががん細胞の肝臓への転移を抑制することを見いだしました。そして、肝臓のマクロファージであるクッパー細胞(Kupffer cell)で発現しているこれらの受容体ががん細胞を認識して貪食する、という仕組みも明らかになりました(Proc Natl Acad Sci U S A, 113,14097-14102, 2016)。がんに対する自然免疫応答における本受容体ファミリー及びその作用機序に関する全貌解明が期待されます。

(8) 社会の付託に応える研究

科学は社会とともにあり、学問の成果が社会に理解され支援される、社会のニーズに応える、ということはたいへん重要です。我々は炎症・免疫疾患の制御法、人工型IFN分子やがん免疫を増強する化合物の開発による新規がん遺伝子療法の原理の開発など、社会に直接に貢献することが期待される開発型プロジェクトも進めています。いずれの研究もまだ萌芽期にはあるものの、その発展の可能性は充分にあると確信していますので、上記の主たるプロジェクトと平行して推進することによって免疫学、がん研究に新しい展開をもたらすよう、努力していきたいと考えています。

(9) 異分野との連携による新しい学問領域の発展

私が現職に就いて以来、研究面で指向してきたことは、異分野、特に臨床医学との連携・共同による新しい研究分野の開拓です。典型的な例としては、免疫学と骨代謝学を統合した研究で、本学整形外科教室とともに推進しました。この分野は今では「骨免疫学Osteoimmunology」として世界的にも認知されています。また、最近では循環器内科教室とともに心肥大・心臓線維化による心不全と上述のIRF転写因子の関係が明らかになりつつあります。IRFが生体防御系に関わるのもならず、このような側面での生体機能の制御に関わっていることは驚きでもありますが、異分野との連携によって生み出される研究の典型例ともいえます。今後とも、更に他の研究分野とも連携しながら、新しい医学研究の発展に努力したいと考えています。

3. 論文発表について

今迄に約300報程度の欧文論文を発表しています。そのなかで、例えばNature, Science, Cellへの発表論文は54報、それらの姉妹誌には65報を発表しています。その他、eLifeに1報、Proc. Nat. Acad. Sci., USA 38報; Ann. Rev. Immunol. 4報などです。これらに限っても、その多くは大学院生、研究員(企業からの派遣など)がファーストオーサーになっている論文です。従ってそういう論文はこれら以外の雑誌にも多く見られます。

4. 教育について

(1) 大学院教育について

谷口は医学系研究科病因・病理学専攻の指導教官として17年の間に、数十名の大学院博士課程の学生を指導してきました。それぞれの卒業生は、国内外で研究職を得ている、あるいはHarvard, MITをはじめとする国外でpostdoctoral fellowとして活躍しています。生産技術研究所に移動してからは、医学系研究科、病因・病理学専攻の協力講座としてお認めいただきました。現在では柳井が指導教員となって、現在3名の学生を指導しています。学生の教育の一環として、力を入れていることのひとつが国内外から著名な研究者を招き、公開セミナー・講演会を開催することです。毎年、およそ10回以上のセミナーを開催して来ましたが、すべて公開で、大学院生、学部学生も多く参加してくれています。このような機会を出来るだけ多く設け、招聘研究者とのdiscussionや情報交換を通して研究者として大きく育ってくれることを祈念しています。

(2) 学部教育について

医学部時代には学生に免疫学の基本とその医学への重要性について、講義や実習を担当していました。特に、将来の医学研究・臨床に活かせるよう、免疫学の歴史とその変遷について、偉大な仮説・モデルが如何にして生み出されたのか、それが現代の免疫学にどのように生きているのか、といった、教科書では学べないことに重点を置きながら解説して来ました。むろん、やがてアレルギー、免疫難病などの臨床の講義を受けることを前提とし、その基盤となる遺伝子の異常とそれがもたらすメカニズムの破綻などについても系統的に教えて来ましたし、学生諸君ができるだけ若いころに体験することが望ましいと考え、外国人による英語での講義も数多く行ってきました。生産技術研究所に移動してからは、谷口は学部学生の講義・実習は担当していませんが、折に触れて本学・他大学の講義をお引き受けする時には、引き続き上記のような理念で取り組んでいます。 

5. 教職員について

当該研究の先輩として「お互いに学び合い、お互いを尊重する」ことを基本とし、教員が出来るだけ個性豊かな研究者として最先端の研究を遂行できるよう、またプロモーションされるよう、努力して来ました。むろん、多くの教員は在籍中に自らがlast author となった論文を発表しています。大阪大学時代からでは数十人、そして東大医学部時代(20年間)からは10名が既に他大学の教授としてプロモートされており、他の転出教員も彼らの希望した研究室にプロモートされ、活発な研究活動を展開させています。むろん、現在在籍中の教員も多くのインパクトのある論文を発表しています

6. ジャーナル・学会活動などについて

ジャーナル関係では、Proceedings of National Academy of Sciences, USAのEditorial Board Memberとして投稿論文の査読・採否決定に関わっていますし、最近スタートしたオープンアクセスジャーナルであるeLifeのSenior Editor、Immunity (Cell Press) のEditorial Board member を務めています。学会活動としては、日本免疫学会、日本癌学会をはじめ、多くの関連学会で活動しています。国外では米国がん学会・国際問題検討委員会 (International Affairs Committee, American Association for Cancer Research) の座長を6年間務め、米国のがん研究が如何にして日本をはじめとする世界におけるがん研究を全体的に捉え、国際協調を計って行くべきか、真剣に取り組んで来ました。

7. 研究室の運営について

研究室は大学の出身学部には全くこだわらず、むしろ多くの異なったバックグラウンドを持った人を積極的に歓迎しています。基礎研究者から臨床医まで、多くの人達がお互いによいところを吸収しあい、高め合うことが大切と考えているからです。今迄の在籍メンバーのバックグラウンドをみても、医学、獣医学、農学、動物学、植物学、工学、生化学・分子生物学、と非常に多様です。研究室内での雰囲気はとても重要です;いってみれば個々のソリストが集まったオーケストラのようなところがあり、お互いが高め合い、優れたオケの音を出していく、という側面があります。すなわち、研究の厳しさは認識しながらも、お互いが明るく楽しく、研究をエンジョイできる雰囲気が作られていると確信しています。セミナーは定期的なラボセミナーに加え、特に国外からのセミナーは出来るだけ活発に開くようにしています。これはお互いの情報交換の重要性もさることながら、若い人達が実際に、自分のデータを持って、多くの著名な学者と議論し、自分を高めるためのトレーニングの一環でもあります。おそらく毎年、平均すれば一ヶ月に一回はセミナーを開いています。共同研究も企業を含め、出来るだけ活発に行っています。上記の研究の多くは我々のラボだけでは出来ない研究もたくさんあります。お互いのメリットを考え、お互いが刺激し合うような共同研究はラボの活性化にとても大切です。

8. おわりに

スタッフの先生方と私は、出来るだけ学生の皆さんの立場にたって、それぞれが大きく育ってくれるよう、努力しています。研究テーマは、何が独創的なのか、よく考えながら選んで欲しいと思います。「発見は誰もが観ることを観て、誰もが考えないことを考える、ことによって成し遂げられる」という有名な言葉どうりで、自分の思考法を磨き自分の独自性を出す、ということが重要です。論文は、データさえあれば書ける、という簡単なものではありません。英語の表現も文法さえ合っていればよい、というものではないことはいうまでもありません。如何にして緻密な論理を構築し、如何にして格調の高い論文に仕上げるのか、どのような(英語の)表現が適切なのかを実際に体験しながら学ぶことが大切です。私たち自身、経験を重ねつつもいつまでも学ぶことが多いのですが、自分の経験を如何にして次の世代の人達に還元し、その人達の育成に貢献出来るのか、は今の私に課せられた、やり甲斐のある課題だと考えています。ちなみに、レオナルド・ダ・ビンチの「自分を追い越せない弟子をもつことは悲しいことである」という有名な言葉があります。研究を通して若い人達が大きく成長できるような教室運営を目指しています。

Page Top