有機化学5(有機立体化学)6/1分Quizの解答

(注) 理由を書かずに構造式だけを書いた答案が散見されました。試験のときは正しい異性体が
示されていてもそれを与える理由が書いていなければ大幅な減点になるので注意のこと。

1)


 

エノラート(E-エノラート)(A)はMeとO-のA1,3-反発のため,最安定なコンホメーションではない。
(A')が最安定コンホメーションであり,この構造をもとに求電子剤の接近方向を考える。
iPrとMeではMeの方が小さいため,Et-IはMeと同じ側から接近し,
主生成物として(C)を与える。主鎖をジグザグにとった書き方をすると(C')のようになる。(つまり主生成物はsyn体である)
正答率33%。最も多かった間違いはEtのついた炭素の立体が逆になっているもの(43%)であり,
そのほとんどは,問題に与えられたコンホメーションのまま反応が進行すると仮定していた。
単結合は自由に回転可能であり,エネルギー的に最安定なコンホメーションの存在確率が最も高い。
このため,反応基質であるエノラートのコンホメーションとしてA1,3-反発が最小になるようなものを考える。
なお,上記ではエノラートの立体化学としてE体を仮定しているが,Z体(B)であっても同じ結果となる。(OMeとO-Li+のかさ高さは同程度であるため)

[訂正:講義では上記(A)のE-エノラートのことをZ-エノラートといったが,LiはCよりも原子番号が小さいので,(A)は正しくはE−エノラートです。お詫びして訂正します。]

(別解)
量子化学計算に基づいたコンホメーションで考える。その場合(D)と(E)の比較となる。

Et-Iはかさ高いiPr基の方からは近寄れない。反対側から接近したときにMeとの間では立体反発がはたらくが,
Hとの間ではそれはない。このため,(E)のコンホメーションでHの側からの接近が最も有利。
そのようにしてできた生成物は上記の(C)と同一である。
 

2) 単純にFelkin-Anh則の適用ができるかを問う問題。下記の2つのコンホメーションで考える。

上記と似ているが,異なるのは反応相手の接近方向。こちらは求核攻撃をうけるので,π*軌道との重なりが
大きくなるようにヒドリドイオンが接近する(Burgi-Dunitz軌跡)。このとき,Meとの間では立体反発があるが,Hとの間にはそれはない。
このため,(F)のコンホメーションでHの側からヒドリドが接近して。下記の(H)の化合物を与える。それを
鎖状の構造式で表すと(I)のようになり,主生成物はanti体である。

正答率20%。