問題1:
a)
1,3,6,8-ナフタレンテトラオール。アセチルCoA由来の部分構造として,1,2-位,2,3-位,3,4-位いずれも可能性がある。この中のどれか1つが指摘できていればOKとする。2つのメチルマロニルCoAが入ると,4a位以外で,OH基の結合していない炭素上の2箇所にメチルが入る。ただし,例えばアセチルCoA由来の炭素として1,2-位であると答えた人が,2位と7位にメチル基の入った化合物を生成物の1つとして答えた場合は明らかに間違いなので,そのようなものは不可。
b)
アセチルCoA由来はメチル基とその隣の炭素。メチルマロニルCoAが入ると,メチル基の結合している炭素のすぐ左の炭素から始まって1つおきにメチルが入る可能性のある場所になる。それらのどこか2箇所に入っていればよい。
問題2−4:省略
問題5:
1)[採点にあたっては,下記の複数の特徴のうち1つが書けていれば,よしとした。]
A (メチル基と同じ側から水素が入ったものができたという意味で)ジアステレオ選択的,(C=Cが水添されて,C=Oは反応しなかったという意味で)サイト選択的。
なお,このように別々の(反応するかも知れない)官能基のうち一方が反応する場合,正しくは化学選択的(chemoselective)という。このコトバは講義で紹介しなかったので,サイト選択的と書いてあればそのような意図によるものと見て,正解とした。
B (カルボニル基のアセタール保護がはずれたので)脱保護,(脱水でC=C結合ができるときに可能性のある3種の位置異性体のうち1つができたという意味で)位置選択的。さらに想像を膨らませると,その前のメチルGrignardの求核攻撃に立体選択性がなかったとすれば,複数の立体異性体混合物から単一の化合物ができたという意味で,立体収束的。
C (エポキシドが水素と同じ側にできたという意味で)ジアステレオ選択的,(エポキシドとシクロヘキサン環の縮環がシスであるという意味で)立体特異的,(C=Oは反応せずC=Cのみ酸化されたという意味で)サイト選択的【化学選択的】。
D (エポキシドの開環が一方の炭素上のみで起こったという意味で)位置選択的,(エポキシドへの攻撃が立体反転で進行したという意味で)立体特異的,(ケトンのα位に新しくできた不斉炭素の立体が一通りに決まったという意味で)ジアステレオ選択的,
さらに言えば,エポキシドは強塩基によってアリルアルコールに異性化することが知られているので,そのような反応が起こらずに,ケトンエノラート生成に起因する反応だけが起こったという意味でサイト選択的【化学選択的】。
2)
ジブロモシクロプロパンを経由する環拡大反応が起こっていることに注意。
3)可逆的な分子内アルドール反応が起こるため。エノールのπ軌道とカルボニルのπ*軌道の重なりなど,分子内アルドールが起こる原因について言及したものももちろん可。
4)この化合物は塩基の作用でGrob開裂を起こしてC=C結合を与える。Grob開裂は立体特異的反応であり,生成物がシスアルケンとなるためには,その前駆体のメシラートは紙面手前に出ていなければならない。つまり,ヒドリドは紙面奥から攻撃したことになる。OH基が配向基になってBH4-が紙面裏側から攻撃するなど,その原因になっていることに言及したものも可。また,結果として答えが間違っていても可能性のある理由が述べられているものには部分点。
以上