コンビナトリアル化学的手法によるFAD結合性ペプチドの探索

S. Sakamoto, I. Okano, K. Kudo, Chem. Lett., 33, 978-979 (2004).

(概要)固相上に固定されたライブラリのスクリーニングにより,FAD結合性を持つペプチドを効率的に
探し出すことに成功しました。

α-ヘリックス構造をとるようにペプチドを設計し,そのうち1つのLysの側鎖には,アミド結合を介してボロン酸を導入しました
(下図のK(BB)部分)。これは,ボロン酸が糖などのgem-ジオール類に対して結合能を持つことが知られており,標的分子であるFADは
部分構造として糖や糖アルコールを持っているためです。
その上で,ヘリックス上でK(BB)と同じ側に配置されるX,Y,Zの3つのアミノ酸残基をランダム化して,スプリット合成法により
7×103のサイズを持つライブラリを固相上に作製しました。


 

蛍光顕微鏡下スクリーニングしたところ,FAD結合能をもつものが見出されました。(下図)

結合能を示したビーズのアミノ酸分析によってペプチド配列を決定し,別途そのペプチドを合成して
樹脂の担体から切り離した上でFADに対する結合能を評価したところ,1:1の錯形成を仮定すると
7.0×105 M-1の結合定数を持つことが分かりました。この数値は少し前にM. L. Watersらが発表した
フラビン結合性ぺプチド1)の結合定数よりも2桁も大きなものです。

1) S. M. Butterfield, C. M. Goodman, V. M. Rotello, and M. L. Waters, Angew. Chem., Int. Ed., 43, 724 (2004).