研究機関に図書室は欠かせないが、写真の高杉泰穂さんは、本所の16万冊の蔵書の維持と管理をされている図書掛長である。ご出身は北海道の函館。大学まで北海道で過ごされた道産子である。現在は東京育ちの奥様と2人の息子さんと世田谷で暮らしておられる。趣味は国内外の旅行とお酒、特にワインがお好きだそうだ。そして高杉さんを語る上で忘れてはならないのが囲碁である。先日も本学の全学レクリエーション大会で生研チームが見事優勝をおさめたが、高杉さんは生研チームの主将として大活躍された。
本学の経済学部に16年、薬学部に3年、そして本所へ来られ、この3月にまる4年を迎えられる図書一筋の高杉さん。いつもダンディーな装いと話ぶりから伺われる印象は、所内の若い女性方によると、「知的で優しそう」。まさに図書室にぴったりの方である。定員削減とインターネットの時代を迎え、従来の図書館のあり方とはまた違ったスタイルが問われる時期である。「利用者のニーズに対応しながらのスクラップ・アンド・ビルドをめざしたい」とおっしゃる高杉さんは、今後益々重要な役割を担っていかれるでしょう。
仕事を離れれば、飛行機に乗ることが大好きな高杉さんの夢は家族で世界一周旅行をすること。写真の顔の視線の先には、将来の世界旅行が見えているのでしょうか?
(目黒公郎)
昨年の6月4日、5日に開催された第三者評価(学術)諮問パネルの最終報告書が11月末に発刊されました。報告書は、8月末に諮問パネルから提出された学術諮問パネル報告書とそれに対する本所の対応策を本文とし、諮問パネルメンバーリスト、パネル委員の個別コメント、実施日程、実施計画書などが参考資料として添付されております。総合工学研究所としての本所の研究教育活動全般を「国際」、「産業界」、「学術」の3つの視点から多角的に評価していただくという本所のユニークな第三者評価制度は、本報告書の発刊をもって一つの区切りを迎えたことになります。
第三者評価制度の導入に際して、本所は、その基本理念を「大学の研究所として、学問と文化の創造と発展を社会に付託され、そのための「学問の自由」を享受するものは、自らの研究・教育上の立場と活動を社会に対して明らかにすると共に、社会の意見を多角的に取り入れる義務を有する。」と位置づけ、健全なアカデミズムの確立、社会に対する公開性の向上、社会の意見の多角的導入の3つを具体的な目的として掲げました。今回の学術諮問パネルでは、工学の広い分野の研究・教育に関して我が国の学術・教育をリードしておられる6名の有識者の方々にパネル委員をお引き受けいただき、本所の最も本質的な使命である学術・教育活動についての評価と助言をお願いいたしました。
内容のご紹介は省略いたしますが、「新しい工学分野の創成」を使命とし、「個々の研究者の知的好奇心と創意に基づく先端的な基礎・応用研究活動の推進」を、本所が果たすべき特徴的役割として指摘していただいたことを特記させていただきます。なお、報告書の内容を、インターネット上の生産技術研究所ホームページ(http://www.iis.u-tokyo.ac.jp)においてご覧いただけるよう準備を進めております。
本所は、これまで3回の諮問パネルによる評価の結果を総合的に受けとめ、都市型の科学技術総合研究所として、先進的な工学研究と高級技術者教育を通じて、社会に対するより積極的な貢献ができるよう改革努力を進めていく計画であります。また、国内の研究教育機関はもとより、世界各国の機関と本所の連携協力を深める一方、産業界とのより広範な連携についても努力して行く所存です。諸賢のご協力をお願いいたしたいと存じます。
末筆になりますが、極めてご多忙にも拘わらず、本諮問パネルにおいて本所の実績評価と数々の貴重な助言をおまとめいただいた猪瀬博座長と大橋秀雄、末松安晴、竹内伸、松尾稔、山本明夫の各パネル委員の先生方に厚く御礼申し上げます。学術情報センター安達淳教授には、パネル幹事として様々にご尽力いただいたことに感謝申し上げます。また、外部評価パネルの実施にあたり、種々ご協力いただいた東京大学蓮實重彦総長をはじめとする関係各位に心から御礼申し上げます。
第三者評価(学術)特別委員会・委員長 鈴木基之
座長 岡野達雄
科学技術、工学は、ますます高度・細分化しており、一般社会人にとって技術開発はまさに蚊帳の外で行われているとしか思われない状況です。本来、技術の正しい理解、望ましい発展は、専門家ではない一般市民を巻き込んだ形で行われるべきものでありましょう。本所では、社会に情報を発信すべくイブニングセミナーの開催、生産研究や生研ニュースの発行、あるいはWWWホームページの充実などを行って積極的に取り組んできていました。しかし、1996年におこなわれた「東京大学生産技術研究所第三者評価産業界諮問パネル」は、報告書の中で次のように指摘しました。 ![]()
「...その社会的な貢献にもかかわらず、新聞に取り上げられる機会が少ないなど部外に知られていない傾向がある。産業技術を支える基盤的な研究もしっかり押さえつつも、もっと広く自らの活動を所外へ知らせるためのPR策を考え、生産研といえばすぐに思いつくような、何か光るものを持つことを希望する。」幅広い発信は、既存のマスメディアを通じて行うことにより、効果を増すと考えられます。そこで、本所における工学研究の成果を社会に還元する活動の一環として、1996年12月より「生研記者会見」を定期的に開催しております。この企画は、本所における多様な工学研究の成果を時期に即して分かりやすく紹介するとともに、本所研究スタッフと報道関係者が科学技術の現状と将来について親密に話し合うことを目的としております。
1997年12月までに8回の記者会見が行われ、延べ86人の参加、19誌34件(情報普及掛の把握)の記事が掲載されました。1997年6月に行われた第三者評価学術パネルの懇親会に参加された蓮實総長は、挨拶の中で同年2月に発表された須田助教授の新聞記事に言及され、この企画が当初予定していた成果を挙げつつあることを印象づけました。
当初は毎月行っていましたが、現在は、奇数月の教授総会がある日(主として第3水曜日)に開催しております。これまでは研究推進室がこのお世話をしてきましたが、1998年5月からは広報委員会に作業の責任を移し、本所の広報活動の柱の一つと位置づけていく予定です。
(研究推進室・室長 浦 環)
千葉実験所は、本所の前身である旧第2工学部発祥の地、西千葉駅前にあります。面積は9.2haで、六本木キャンパスでは実行が困難な大規模装置を用いた試験や、広い土地を必要とする研究を主に行っています。
1942年に第二工学部がこの地に設置され、49年に本所に改組されました。54年には試験溶鉱炉が運用を開始し、62年に六本木移転するとともに、大規模実験プロジェクトを支援するために千葉実験所として設置されました。65年には新潟大地震をきっかけとして当時としては最大級の大型振動台をおきました。糸川ロケットもこの地で初期の実験を行いました。
最近では構造物動的破壊試験設備(大型振動台と振動シミュレータ)、地震で壊れる構造物を自動的に観察する装置、風路付き回流水槽(風を当てながら水槽内で船の模型の試験を行う装置)などが整備されるとともに、不織布を用いた試験盛土実験、地震動のアレー観測なども実施されています。多くの大型設備は共同で使用されていることも特徴的です。
平成7年には鉄筋コンクリート2階建てで延べ床面積3767uの研究実験棟が建築され、実験所の研究基盤整備の第一歩となりました。現在実験所の将来計画に基づき実験棟、事務棟の計画がなされています。
新棟には複合材料の加工、プラスチックの射出成型の国内共同研究コンソーシアム、大型電子ビーム熔解装置による太陽電池用シリコン基板の製造試験、コンクリート構造物の耐久性と施工法の研究などがなされています。
実験所の研究施設や設備の利用については、管理運営委員会が、研究希望教官から出される研究計画書を審査し承認することになっています。すなわち、研究用のスペースを審査によって割り当てているのです。最近では約30名の教官が40から50件のテーマで研究活動を展開しております。キャンパスの維持・管理は虫明実験所長以下、5名の職員が当たっています。
最初の公開は1979年ですが一度中断し、再会されましたのは1990年です。その後の公開は隔年に行われてます。昨年(11月7日)も公開中に活発な討議が行われました。今後地域の産業基盤の一部となれるふれあいの場としても、この公開が機能することを目指したく計画しているところです。
(千葉実験所運営委員会・委員長 前田正史)
11月4日、米国ミシガン州・フォード研究所から研究者3名の来訪を受け、センサー、マイクロマシン関係の研究交流を行った。午前はフォード研究所の活動紹介(化学部長 Beardmore 博士)、電気化学ガスセンサーの開発(同 Logothetis 博士)、ナノメートルオーダーでの計測・制御(第2部 川勝助教授)、酵素包括超薄膜バイオセンサー(第4部 渡辺教授)の講演で意見を交換し、午後には第3部・藤田研究室のマイクロマシン見学をした。
(国際交流室・室長 渡辺 正)
生研公開講座第17回イブニングセミナーは、「未来工学予測 -視る・聴く・創る」という題目で10月17日から12月12日までの毎週金曜日の夕方、全9回にわたってオムニバス形式で行われた。空気、水、プラスチックの流れ及び固体を伝わる音の可視化と予測、鉄、ガラスの新切削加工技術、新形材の製造技術、原子レベルでの力や位置の制御、無人潜水艇による深海観測、衛星を用いた海氷の観測及び動きの予測など、コンピュータをはじめとする最新の科学機器により可能になりつつある工学現象の現状や将来展望について述べられた。今回のイブニングセミナーは、東京大学創立120周年記念展の「知の開放プロジェクト」の一環としてCS衛星放送やインターネットに放映されたこともあって、いつにも増して熱気が感じられた。
(第2部 林 昌奎)
本郷キャンパス内で開催されていた東大創立120周年記念展(10月16日〜12月14日)が終了した.本所からは,仮設エアドーム「知の開放」展において「マイクロアクチュエータ(第3部 藤田研,LIMMS)」ブース展示のほか、マルチメディア・バーチャル展示「デジタルミュージアム」に7件の研究資料が提供された.また,エアドーム内スタジオでは記念展が作成した放送番組「東大チャンネル」が24時間放映され,同時にインターネット(全期間)と衛星CS放送(パーフェクトTV,11/7〜12/14)を通して公開された.ここでは,本所の最新研究を紹介する17テーマがシリーズで放送されたほか,生研イブニングセミナー「未来工学予測―視る,聴く,創る―」が公開された.
(第2部 谷口伸行)
本所では、新たに作成した防災マニュアルに基づいて、12月5日、大規模地震の発生を想定した防災訓練を実施した。この訓練では、不測の災害時に被害を最小限に止め、防災防火に対する教職員等の意識高揚を図ることを目的に、教職員・大学院学生等の所在安否確認、所内の被害状況調査報告、および屋外への避難訓練を実施した。想定地震発生を13時10分に設定し、所内放送により訓練を開始、13時30分に鈴木所長を本部長とする災害対策本部を設置、各研究部等で集計した安否・被害状況が同本部に報告された。これらの訓練には、当日、本所に居合わせたほぼ全員の参加を得た。また14時20分から、消防署の協力を得て、物性研究所と合同で、救助袋による避難訓練、消火器による消火訓練、起震車及び煙ハウスを体験し、15時30分に全ての訓練を終了した。今回の防災訓練は、災害発生時の役割認識と情報連絡等に力点を置いた初めての試みで、幾つかの反省点も見い出され、大変有意義な訓練であったと思う。
(防災対策専門委員会・委員長 山崎文雄)
本所技術系職員と所長(技術部長)との意見や情報の交換を円滑にする目的で、技術部連絡会が発足した。従来、技術系職員への情報伝達は、各部、各施設の運営に任されてきたが、特に職員が個別の研究室で仕事をしている研究部では、必ずしも十分に機能しているとは言えない状況にあった。本連絡会は、これを補完するためのものであり、毎月1回のペースで開催される予定である。
本連絡会は、鈴木技術部長(所長)、2名の所長補佐担当教官、および各部、共通施設の技術官、総務課長(オブザーバー)で構成され、10月、11月の連絡会においては常務委員会報告など本所の運営に関する情報の伝達とともに、技術系職員からの要望等について、自由な意見交換が行われた。また、本連絡会での連絡事項や議論に基づいて、各部において連絡会が開催されるなど、情報交換のための新しい組織として機能することが期待される。
(第3部 平川一彦)
本所のこれまでの整備計画進展の経緯をここで再確認するべく、重要なできごとを付表にまとめてみました。これらを通観いたしますと、平成4年6月の本学の評議会にて、本郷・駒場・柏の3つの地区を核とし、駒場T、U地区には教養学部、数理科学研究科、生産技術研究所、先端科学技術研究センターを配置するという三極構想が立案、承認されたことが、その後の展開の契機となっています。本所ではかねてからそのアカデミックプラン実現のため、六本木キャンパスの整備構想を打ち立てておりましたが、上記の全学的な3極構造の方針に沿って提示された駒場U地区での本所の第1次整備案(床面積65,000u)が、本所のアカデミックプランの趣旨に沿うものと認められ、これを本格化させることになったわけであります。この結果、駒場U地区は多様化する科学技術の教育、研究の核として、生産技術研究所、先端科学技術研究センター、そして平成8年に設置された国際・産学共同研究センターが配置されることになり、これらが、ご存知のように時計台を中央にしたユニバーシティ広場をぐるりと取り囲む魅力的なキャンパスプランとして具体化いたしました。
本所の新営工事は順調に進み、平成10年6月に第T期の新研究棟が完成する見込みです。第U期以降の整備に関しましては,平成9年12月の時点で先回ご報告申し上げた以上の新たな情報はありませんが、今後の新たな展開に応じてAd hocな対応を皆様にお願いすることになるかと思います。よろしくご協力のほどお願い申し上げます。生研ニュースホームページへ
年月日
事項
関連資料
H2. 5
生研「第6次将来計画委員会報告」
同左、教授総会承認
H3. 7
キャンパス整備の3原則
1. 大学自主性の原則、 2. 部局衡平の原則、 3. 関連部局計画重視の原則
東京大学評議会決定
H4. 3
生研「臨時将来計画調査室報告」
同左、教授総会受理
H4. 6. 9
「東京大学キャンパス計画の概要」(総長)。東大三極構造の提示。駒場地区(駒場T、U、六本木)は教養学部、生研、先端研、数理科学研究科を配置。
「東京大学キャンパス計画の概要」東京大学評議会承認
H4. 10. 21
生研キャンパス特別委員会発足
H4. 10.21 教授総会資料
H5. 1
本所のキャンパス整備基本計画が立案される。
「生産技術研究所キャンパス基本計画(骨子)」
H6. 7. 14
駒場地区整備委員会にて、
本所第 1 期 88,000 u、第2期 20,000 uの延床面積が承認される。
駒場地区整備委員会資料
H7. 1 〜 3
東大本部より当面の整備計画分として 65,000 uの床面積案が生研に打診される。
H7. 4. 1
本部よりの当面の整備計画分床面積案に対し、生研の建築計画調査室にてこれを3期に分ける計画が答申される
生研キャンパス整備基本計画U(建築計画調査室)
H8. 3. 14
上記答申に対する本部施設部の整備計画構想(第T〜X期、 H13 末までにX期終了:総計 65,000 u)の提示 *
駒場Uキャンパス研究設備年次計画(建築計画調査室)
H8. 6. 18
施設部構想に基づき、本所の平成 9 年度概算要求(第 1 次〜第4次:総計 65,044 u)
平成 8 年 6 月 19 日常務委員会資料
H8. 7. 24
生研建築計画調査室(昭和57年6月設置)が移転準備室に改組
移転準備室要綱( H8.7.24 )
H8. 10.25
第T期工事契約
H9. 3. 14
生研・先端研合同起工式
11月21日(金)
学内レク囲碁優勝
12月8日(月)
構内環境整備
生研ニュースホームページへ
ここ数年、「情報発信」という言葉が盛んに叫ばれている。インターネットのブームは第2の開国といった様相を呈してきた。本所でもホームページを軸とした情報発信を推し進めようという動きが活発である。私も所内の電子化に係わる委員会等で所内外の情報流通のお手伝いをさせて頂いている。
この「情報発信」を考える時に気をつけなければならないことがある。それは、発信が自己目的化してしまうことである。ただホームページさえ作ってしまえばよいのではない。自分を人前に晒すこと自体が立派なわけではないのだ。
ここで、「あきれたページ」というキーワードで検索をしてみていただきたい。作ったはいいがそれ以来更新されないページや、画面ばかり立派で知りたい情報が何も載っていないページなど、困ったホームページを見つけては紹介している人達のページがみつかるであろう。このところ、企業だけでなく政府や自治体の関係団体がこぞってホームページを作っているが、その中には「あきれたページ」と称されるものが少なくない。企業と違って作ったページが売上につながる必要もなければ、誰かに是非伝えるべきものも何も持っていないのであろう。作ることにこそ意義があったのだ。
悲しいことに、「あきれたページ」の中に本学の某所の名前を見つけた。いい研究をしているところなのだが…。
情報を「発信する」ことと「伝える」ことは異なる。それはインターネットが現れる前から変わっていない。ただその違いがネットの出現で顕在化しつつあるのだ。あとは技術よりも各人の意識の問題であろう。
自己の、あるいは組織の存在自体に最初から価値があるわけではない。自分がいなかったとしてもだれも困らないし世の中は動いて行くだろう。それを認識した上で、誰に対して何のために何をいかに伝えようとするのか。自分は人に伝えるべき何を持っているのか。
自分はそれを持っていると信じてこの商売をしている。あなたはどうですか?
(第3部 舘村純一)
第1部 助教授 枝川 圭一
私は、平成7年8月にお隣りの物性研から講師として移って参りまして、この度12月1日に助教授の辞令をいただきました。物性研では主に準結晶とよばれる特殊な秩序構造をもった物質の構造と物性に関する研究を行い、本所に移りましてからは準結晶に限らず、固体一般の強度物性に関する基礎的研究を鈴木敬愛先生のご指導の元に行っています。この分野は、工学的にも物性物理の一分野としても大変重要であり、やりがいのある研究分野である反面、その重要性のためにすでに長い歴史があり、独創的な研究が比較的でき難い分野でもあります。この分野の新たな展開を図るような研究のアイデアを模索している毎日です。今後とも宜しくお願い致します。
概念情報工学研究センター/第3部 講師 佐藤洋一
12月1日付けで第3部の講師に採用されました。さまざまな視覚センサを通して現実世界を観察することにより、実世界に存在する物体や事象を自動的に認識・理解するための研究を進めています。特に、実物体の高精度なモデルを自動生成し、それらをネットワーク上に存在する仮想空間に融合させていくための研究に興味を持っております。多岐にわたる研究分野を備えた生産技術研究所という恵まれた環境において、コンピュータビジョンという切口からさまざまな分野を勉強していきたいと考えております。今後ともよろしくお願いいたします。
- 第1部 助教授 田中肇
1997.5.25
学会賞((社)高分子学会)
粘弾性相分離現象の発見とその機構解明- 第5部 教授 村井俊治
1997.7.12
白象綬褒賞勲二等(タイ国国家研究評議会)
20年間にわたるリモートセンシング分野でのタイ国に対する貢献- 第5部 教授 村井俊治
1997.7.31
アカデミシャン(国際ユーラシア科学アカデミー)
長年にわたる国際的およびアジアにおけるリモートセンシング、地理情報システム(GIS)の活動- 国際・産学共同研究センター/第5部 教授 藤森照信
1997.11.20
第6回町田市優秀建築賞(町田市)
ニラハウス
阪神・淡路大震災以降、防災対策専門委員会では防災関連の規則や災害時の組織をより実際的なものに改めるため、度重なる審議を行ってきたが、このたび事務系職員と各部のメンバーによるワーキンググループによる防災マニュアルが完成した。マニュアルは、「はじめに」、「緊急時の対応」、「日頃の防災対策」、「千葉実験所の防災対策」、「資料」の5部構成となっており、「避難時の配置図」や「安否確認リスト」などを盛り込んだ実務に則したものとなっている。
各研究室にはすでに1、2冊ずつ配付されていることと思うが、ここでは本所の所員としてぜひ知っておいてほしいと思われるポイントを簡単に述べさせていただく。
□ 発災時の行動基準
教職員をはじめ学生等を含むすべての所員に共通する行動の原則として、「人命の尊重を第一に考えて行動する」、「被害の拡大防止と災害復旧活動に協力する」、「近隣避難住民の屋内への立ち入りを禁止し、青山墓地に避難してもらう」などが定められている。
□ 防災マニュアルの設置場所
防災マニュアルは各研究室の扉周辺など見やすい位置に置き、非常時にはすぐに取り出せるようにしておくこと。
□ 新学期のミーティングに行っていただきたいこと
新入生が入ってくる春には、マニュアルに記載されているいくつかのリストが研究室等に配付される予定である。これらのリストへの記入は、新学期のミーティング時に行い、救急箱など災害時に必要となる防災備品の位置や避難場所などを研究室内で確認し合うこと。
□ 避難場所
大地震や大火災が発生した場合には、たくさんの薬品や危険物貯蔵庫が置かれている東側を避け、避難場所として指定された中央廊下より西側の屋外と正門付近(防災訓練を行っている場所)へ避難する。
□ 教官の役割
発災後は研究室、センター、共通施設ごとに安否確認と被害状況を調べ、速やかに「安否確認リスト」と「被害状況報告用紙」を提出する。また、災害対策部の指示に従い、各種活動に協力する。
□ 事務系職員の役割
事務系職員は平常時の業務にもとづき、災害時の役割がそれぞれ定められている。それらについてはマニュアルに細かく記載されているので、一読し、各自の役割を認識しておく。マニュアルの完成を契機に、本所における防災対策はさらなる段階へと移行しつつある。防災マニュアルを真の意味で生きたものにするためには、全所員の理解と協力が不可欠ので、今後とも御協力の程よろしくお願い申し上げます。
(防災マニュアルWG 村尾 修)
広報委員会と事務機構改善準備室では、事務機構改善及び所内コミュニケーションの円滑化を図るため、メーリングリストの作成を行ってまいりましたが、この度、皆様のご協力をもちまして完成いたしましたので、お知らせ致します。
メーリングリストとは、一つのアドレスを指定するだけで、自動的に多数の人間に同報e-mailを送信出来る仕組みのことです。例えば、今回用意したfaculty@iis.u-tokyo.ac.jpをe-mailの送信先に指定すると、全教授会メンバー宛に同一のメールが送信されます。
今回準備したのは各部の教職員に対応する1bu@iis.u-tokyo.ac.jp, 2bu@iis.u-tokyo.ac.jp, 3bu@iis.u-tokyo.ac.jp, 4bu@iis.u-tokyo.ac.jp, 5bu@iis.u-tokyo.ac.jp、また、職務別のメーリングリストしてfaculty@iis.u-tokyo.ac.jp(講師・助教授・教授)joshu@iis.u-tokyo.ac.jp(助手)gikan@iis.u-tokyo.ac.jp(技術官)jimu@iis.u-tokyo.ac.jp(事務官)です。但し、まだリストに不備があることや、必ずしも全教職員がe-mailにアクセスが可能な状況ではないことから、重要な事務連絡については従来ルートでの周知徹底も宜しくお願いいたします。
既に、これらのメーリングリストを通して何通かのお知らせを流しましたので、ご自分の所に関連メールが届いていない場合はメーリングリストから漏れています。是非追加登録をお願いします。連絡先は、iis-staffml-admin@iis.u-tokyo.ac.jpです。
(所内ネットワーク検討WG・主査 瀬崎 薫)
第1部 田中 肇
文部省在外研究員として幸運にも1997年3月から年末まで、9ヶ月間の英国Cambridge大学Cavendish研究所と1ヶ月間のフランス・パリ、Ecole Normale Superieure(ENS)の統計物理学研究所滞在の機会に恵まれました。Cavendish研究所の廊下にはRayleigh, Kelvin, Maxwell, J.J.Thomson, Rutherford, Bragg, Dirac, Mott, Josephson, Watoson, Crickなど物理専攻でなくても教科書で見たことがある人たちの写真、ゆかりのもの、実験装置などがずらりと並び、毎日その横を通っているだけで、学問の世界に引き込まれていくような気がするほどです。とはいっても、実際には、東大の古い建物の廊下においてある古い実験装置と見た目はたいして変わらないのですが。
Cavendish研究所の人たちの服装は、一般の英国紳士のイメージからはかけ離れ、古ぼけたセータを毎日きて来る人が大半で、外見はほとんど気にしていないようです。ところが、夜Colledgeでディナーがあるときは、突然姿を変え、タキシードにマントといういでたちに変身するのです。このギャップの大きさには驚かされます。ある意味では、2値化された服装といえます。日本の場合には、連続スペクトルといった感じですが、経済的にはCambridge式の方がはるかに効率的にみえます。Cambridgeは、そこにいるだけで研究に自然に没頭するような雰囲気を持っており、歴史と伝統を感じさせる大学町でした。その点、パリの研究所は、近くにレストラン街があり、生研の環境に近いのですが、自分がパリに居ると意識しているせいか、さらにファッショナブルな感じがします。ティーからエスプレッソへの変化が両国のおおきな文化の違いを物語っているように感じられます。研究の方は、Cavendish、ENSとも、研究者個々が極めて独立に研究を行っているにもかかわらず、議論は極めて活発で、そうした環境の中で、私も“水の物理”、“ガラス転移”の理論的研究といった全く新しい分野の研究を始めることができ、とても有意義な滞在でした。この記事が、ニュースに掲載される頃には、生研に戻っているはずですので、また、よろしくお願い致します。
国際・産学共同研究センター/第5部 藤森研究室
今でこそ理工系の学問領域の中で歴史学は、医学史、土木史、科学史、造船史等々数多くあって、隆盛のきわみである。だが、それらはいずれも、功なしとげた高齢学者や好事家たちの手慰みから発している。建築史は、しかし、そうではない。19世紀後半の西洋の建築学は歴史的に建物を分析し、それをテコに新しくデザインすることが主流であって、日本もそれに同調した。建築史学はその点で言えば、建築学の最前線から始まっている。対象範囲を建築という単体から、都市史、さらに環境史という広い視野に広げながら、だが、この学問の発端にあった「最前線」という気概は忘れてはいない。それはまさにこの欄の標題「フロンティア」に一致している。
日本近代の都市と建築の歴史を鳥瞰することを研究室の核として長年行ってきた。『日本の建築(明治・大正・昭和)』(三省堂)、『日本の近代建築』(岩波新書)、『日本近代建築総覧』(技法堂)などにそれは結実している。だが、それは単に歴史のための歴史ではなかった。これら調査研究によって日本は都市の歴史的価値を再発見した。この核はやがていくつかの方向へと成長していく。
第1は、現代への感心である。たとえば、建築の世界的権威丹下健三氏の伝記編纂を行っている。日本がまだ元気だった頃、都市や建築を生み出した本人の思惟と設計のメカニズムに肉薄することによって、日本の建築や都市の未来にメッセージを伝える試みである。
第2は、アジアの建築や都市についての調査研究である。やや、翳りは見えたとは言え、アジアは経済発展のただなかにある。その急激なる都市変化の中に、正と負のふたつの現象を発見する。現象を生み出す背後の構造をとらえ、その場所のみならず、他地域の都市や環境の発展に提言を与える。中国、韓国などの東アジアを終わって、現在はベトナム、ハノイの調査を実施している。
そして、最後は、実際の設計行為。諏訪神長館、タンポポハウス、ニラハウスなど、これまで、住宅や美術館の設計を行ってきたが、設計という行為は、分散化した知を統合する究極の行為である。
われわれの学問は単なる机上の歴史学、論理学のひ弱なものではない。眼を鍛え、足と手を鍛え、そして、頭を鍛えるのである。
皆様既にお気づきのように,生研ニュースは本号(No. 50)より,A4版にサイズが変わりました。サイズの変更に伴って内容を更に充実すべく努力しましたが,皆様の印象は如何だったでしょうか?「何?全然違いがわからない」そういう方は,更に深く読み込んでみてください。きっと違いに気づくはずです。やがてそんな気がしてくるはずです。
ところでNo.46(昨年の6月号)で,私の率直な驚きとして「生研ニュースの編集過程では,テキストファイルで提出された原稿を再度印刷屋さんが入力している」ことを皆さんにお知らせしましたが,この点は既に是正され,作業の能率化と編集時間の短縮化がはかられました。ご心配してくださった方々に,この場を借りてご報告させていただきます。今後も,内容の充実に加え作業の効率化と合理化に努めますので,皆様のご協力をお願い致します。
最後に,生研ニュースはバックナンバーのみならず,印刷前の速報版がインターネット(http://www.iis.u-tokyo.ac.jp/publications/IISNEWS/IISNEWS.html)でご覧になれます。アクセスしてみてください。既にご存じかも知れませんが。
(目黒公郎)