IIS NEWS

IIS NEWS 1997.8. 1 No. 47


IIS TODAY

*  千葉実験所 技官 石川 利明

Photo 千葉生まれの52歳。昭和42年10月千葉実験所で採用されて、途中しばらく六本 木に配属されたほか、実験所で木々の面倒を見て下さっています。
実験所にある木の中では、手は掛かるが松がもっとも好き。実験所内に約50本ある 松は、石川さんが赴任された57年には「ボウボウ」状態。1年目は掛かりきりで散髪 して、今の姿の原形ができたそうです。高さは5mから6mあり、高所作業になります 。年2回の剪定を欠かせない松たちです。
けやきも世話が焼けます。写真後ろのように背の高いものは20m近い高さがありま す。梯子にのってのこぎり作業。大変なことです。実験所の桜は、春には生研全体の お花見サイトになっています。そめいよしの100本、八重桜60本、合計160本あ るそうです。桜は消毒がもっとも大切なのだそうで5月から10月まで毎月消毒しま す。
刈り込みをするのは、正門通りのサンゴジュとさつき。さつきの植え込みはなんと10 0mもあります。そのほか、柿5本、みかん4本、びわ3本はしっかり肥料も与えられて 、毎年実っています。季節に実験所にいくと食べさせてもらえるかも。
写真の雄姿の後ろは、エンジン芝刈り機です。これからのシーズンこれを使った大変 な作業が草刈りです。腰に付いている蚊取り線香に守られながら暑い屋外作業。本当 にご苦労様です。
家に帰れば、1男1女のお父様。結婚2?年の奥様と今後とも息災にお過ごしいただ き、実験所のお世話をお願いしたいものです。
第4部 前田 正史

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NEW CAMPUS

 * 建築計画第2段階スタート

所長 鈴木 基之

 5月15日に本所のキャンパス特別委員会が開催され、ここでこれまでの整備事業の進行状況と今後の見通しや対応について話し合われました。ご承知のように、高層棟・中層棟の、建設は本部施設部の計画では4つの段階に別れております。このうち、第1段階につきましては既に工事が始まり、現在第2段階の部分に関係される研究室や研究グループ、関連諸施設担当者とのヒヤリングが進んで、試設計が進行しております。それ以降の第3段階、第4段階の新営工事の時期につきましては、その見通しが未だ明らかでない点もありますが、東京大学の3極構想を実現し、生研が先端研、国際・産学共同研究センターとともに、駒場地区のひとつのコアとしてそのアクティビティーをますますあげていく上で、早期の整備は必須であり、このことを積極的に学内外に訴えていくことが肝要と考えております。 特に、最終的な事務、会議室などの共通部分を包含する建物が完成するまでは、駒場と六本木の2キャンパス運営となり、種々の困難が予想されます。ご関係の部屋の基幹設備や研究設備計画の具体化などの対応と併せて、この面でのご理解とご協力をお願い申し上げます。



TOPICS

 * 「駒場新キャンパスにおいて生産技術研究所の新たな飛躍を」
ー新分野を開拓するため柔軟な組織と人材育成にさらなる力をー

第三者評価(学術)諮問パネル開催

 一昨年の国際諮問パネル、昨年の産業界諮問パネルに続いて、6月4日、5日の2日間、学術諮問パネルによる第三者評価が行われました。研究・教育活動全般について、国際貢献、学術貢献、社会貢献という異なる視点から多角的に勧告・助言を受ける試みとして始められた本所の第三者評価制度は、今回のパネルを受けて最終まとめを行うことによりその第1段階を終了することになります。
 今回の学術諮問パネルでは、我が国の科学技術研究において指導的な立場におられる6名の先生方に評価委員をお願いし、我が国の科学技術研究体制の中で本所が一層の学術貢献を果たしていくための方策について、具体的かつ率直なご意見をいただきました。今回のパネルを構成されたのは、猪瀬 博(座長、学術情報センター所長)、大橋秀雄(工学院大学学長)、末松安晴(高知工科大学学長)、竹内 伸(東京理科大学基礎工学部教授)、松尾 稔(名古屋大学大学院工学系研究科教授)、山本明夫(早稲田大学理工学研究科教授)の各先生方です。また、学術情報センター安達 淳教授には、パネル幹事として報告書の取りまとめに参画いただきました。
 パネルの第1日目は、組織体制と活動状況についての所長による全般的説明を口切りに、本所の研究教育活動についての密度の高いヒアリングを行いました。次いで二日目は、前日のヒアリングを基にしてパネル委員による総括会議を午前・午後の2回行い、生研公開中の研究室を総括会議の合間に視察していただきました。パネル委員は、いずれも研究・教育活動の実践と組織運営についてのエキスパートの方々であり、今回の諮問事項に掲げられているような研究所の課題について、豊富な体験と熟成された思考に基づいた的確なご意見をいただくことができました。本所の将来展望についてこのような親身になったご批判と助言をいただけたことは誠にありがたいことでありました。また、ヒアリングにおける質疑やコメント作成においてパネル委員の方々が示された真摯な姿勢は、パネル運営に携わったものに大きな感銘を与えました。大変にお忙しい中、諮問パネルに委員として参画いただいた先生方に厚く感謝申し上げる次第です。
 諮問パネル2日目の午後4時より,学術諮問パネルの暫定報告を記者会見の形で公表いたしました。文末にありますのは、この暫定報告の概要です。今後、諮問パネルからの正式な報告を、8月末にいただき、それを受けて、本所の対応についての見解を含めた最終報告書を年末を目処に作成・公表することになっております。また、本所の第三者評価制度発足時に計画した3つのパネルを受け、今後は本所の将来構想を具体的に記述していく我々自身の作業が重要となります。ともあれ、今回のパネルに関係された全ての方々のご努力に心から感謝申し上げたいと存じます。感謝の言葉を連ねるかわりに今回の諮問パネルの猪瀬座長による次のご発言を引用させていただきます。「本評価活動のために、事前に周到な準備が行われ、かつ審議の過程においても臨機応変の対応が行われたことは高く評価できる。学術評価パネルとして、今回のパネル運営に深甚の敬意を表明するものである。」
(第三者評価(学術)特別委員会座長 岡野達雄)
(学術諮問パネルWG委員長 前田正史)

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第三者評価(学術)諮問パネル暫定報告書の概要

学術諮問パネルに対する諮問事項。
1)本所の担うべき使命
2)本所の実績と将来計画の評価と助言
3)新しい研究分野の創成を活発化する組織体制と運営
4)推進すべき分野の選択方法の評価と育成方法への助言
5)大学院教育及び研究者生涯教育に関する評価と助言

暫定報告書では、上記の諮問事項に対する総括的なコメントを以下の通りまとめている。

【業績】
・本所の研究成果・実績、社会的貢献については世界的水準を超えていると判断できるものがある.
・研究室制に基づく運営は、理工学の諸分野を広くかつダイナミックにカバーしている.また、時限のセンターを設け、学際分野・新規分野に対応している.
・選定研究制度などにより、若手研究者を育成し、優れた萌芽的成果を上げている.
・個々の研究が応用・開発を明確に意図しており、研究者の業績は極めて高い.
・基礎研究を通してのアカデミックな貢献も引き続き重視していただきたい.
・研究所の活動が社会にわかりやすく認知されるための、さらなる努力を期待する.
・今後さらに,国際的なプレゼンスを高めることが望ましい.

【人材育成】
・大学院独立研究科構想など高度な人材養成について,ポストドクトラルフェローなどの若手研究者も含めた体制の検討を求めたい.
・アジアを中心とする新しい工業国の人材養成に努めることを期待する.

【組織・人事】
・新分野の急速な進展に対応するためには,従来の部門運用にとらわれず、所長のりーダーシップが十分発揮されるような人事、組織構想の企画と具体化を進める必要があろう.
・公募制の導入および外国人研究者の任用をより積極的に行うことが重要である.

【駒場移転】
・駒場地区における先端科学技術研究センター、教養学部などの部局との連携をはかりつつ、東京大学の3極のひとつとして、新しい研究推進および人材育成体制を実現することが望ましい.
・建物新営に当たっては、早期全面完成,研究スペースの確保、安全性の向上に努力していただきたい.

【産学連携】
・国際・産学共同研究センター(駒場)との連携の強化を図る.
・所内に産学連携を推進する顕在的な組織を作ることが望ましい.
・産業技術を工学に体系化する努力を推進するためにも,産業界との人材交流、情報交流に一層つとめていただきたい.

(第三者評価(学術)特別委員会座長 岡野達雄)



REPORTS

* 生研公開開催される

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 さる6月5・6日の2日間、恒例となった生研公開が行われた。第1・2会議室では、これも恒例となった講演会が、石井勝教授(第3部)、渡辺正教授(第4部)、魚本健人教授(第5部)、渡邊勝彦教授(第1部)、吉識晴夫教授(第2部)の各教官により行われた。それぞれの研究テーマについての明快かつ興味深い講演であり、大変な盛況であった。所内各展示室では、ポスター前での熱気あふれる説明に熱心に聞き入る姿が数多く見られ、生研公開全体の盛況ぶりをうかがわせた。初日の午後には第三者評価(学術)のパネルメンバーの見学も企画され、担当研究室にはやや緊張の色が見られたものの、無事終了したようである。来所者数がやや減少の傾向にあるのが気になるところだが、インターネットの普及により既に生研の情報も外部に行き届いた結果なのだろうか。それとも研究と技術開発のさらなる向上をめざせとのメッセージと受け取るべきなのだろうか。
(第1部 福谷克之)

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* 中学生のための生研公開

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 昨今、若い人の理工系離れが問題となっている。そこで、生研で行われている様々な研究を通して、科学や工学を身近に感じてもらい、そしてより一層興味を深めることのできるような機会を設けるために「中学生のための東大生研公開」を行った。本プロジェクトは生研で働く女性研究者・技術者が中心となって企画および運営を行い、第1回目として生研の一般公開と並行して平成9年6月5日(木)午後4時から約2時間にわたって行われた。生研近郊の中学校4校(四谷第一中学校、三河台中学校、赤坂中学校、麻布中学校)より57名の参加があり、第2部浦研(海中ロボット)・第3部原島・橋本研(インテリジェント・メカトロニクス)・第5部橘研(音響シミュレーション)の3研究室を見学した。なかには説明員が答えるに窮するような鋭い質問も飛び交い、中学生にとって楽しみながら学ぶことのできる2時間であったようだ。当日とったアンケートの結果、評判は大変良く、生研協力者の努力のかいあり、大成功を収めることができた。中学生は浦研から配られたポンポン船と、試作工場のワイヤ放電加工により製作した生研オリジナルしおりを、生研は中学生からのポジティブな反応を記念に、第1回目の「中学生のための東大生研公開」は無事に終了した。
第2部 大島 まり

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* 日仏共同研究ラボの評価委員会を開催
− LIMMSにおけるマイクロマシンの研究成果に高い評価 −

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 生研とフランス国立科学研究センター(CNRS)は、マイクロマシンをターゲットに共同研究ラボを2年前に設立した。LIMMS(リムス:集積化マイクロメカトロニクスシステム研究ラボ、代表:藤田博之教授、ドミニック・コラール客員研究員)では、現在10名のフランス人研究員(ポスドク以上)が生研に1〜3年間滞在して、日本人研究者と共同で研究を行っている。CNRSの他の研究所と同様に、LIMMSも成果のレビューと今後の運営への助言を得るため、定期的な研究評価が義務づけられており、今年の3月13日にフランスのツールーズで、第2回目の評価委員会を開催した。評価委の座長はCNRS工学部門長のJean-Jacques Gagnepain博士と本所前所長の原島文雄教授が務め、委員には東北大の江刺正喜教授、NTT入出力研究所の桑野博喜博士ほか、フランスの研究所所長クラスが選ばれた。ラボ全体の運営に始まり、各々の研究テーマの成果にいたるまでを1日で発表した結果、極めて活発に研究活動を行い優れた成果を挙げていると、高い評価を受けた。LIMMSのメンバー一同大いに面目を施し、終了後のシャンパンを楽しむことができた。
第3部 藤田博之

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* 日仏ワークショップ開催
 -- マイクロマシンで分子や原子の世界を探求 --

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 5月21日から23日まで、フランス大使館と生研の共催による日仏ワークショップが、恵比寿の日仏会館で開催された。この会議は「マイクロマシンでナノの世界とマクロの世界を結ぶ」と題し、マイクロマシンのナノテクノロジーへの応用の可能性を探るため、生研のLIMMS/CNRS共同研究ラボが幹事役となって企画・運営した。ノーベル賞受賞者のJean-Marie Lehn 教授の超分子化学に関する基調講演を皮切りに、ナノテクノロジーに関係する物理・化学・生物化学・工学の超一流の日仏研究者18名の講演と20件のポスター発表を行った。会場はもとより、フランス大使の招待による晩餐会などでも、活発な討議と意見の交換があり、分野や国籍を越えて相互の理解と連帯を深めることができ、極めて有意義な会議であった。最後のパネル討論で、ワークショップの継続と、本分野に関する国際共同研究の樹立を目指した努力をすることを確認して、会議は成功裏に終了した。末筆ながら、日本学術振興会はじめご援助いただいた関係各位に深く感謝する。
第3部 藤田博之

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* イブニングセミナー「エレクトロニクスの最先端と夢」

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平成9年度前半のイブニングセミナーは、3部が担当し、「エレクトロニクスの最先端と夢」という題目で毎週金曜日の夕方、10回にわたって行われた。インターネット時代を迎え、その核となるエレクトロニクス技術を分かりやすく解説し、また現在の問題点と将来の展望(夢)を語った。本セミナーは教養学部の全学自由研究ゼミナールもかねて、広く一般から聴講者を募集して行われた。さいわい、多方面から多くの参加を得ることができた。聴講者の方々からは、急速な発展期にあるネットワーク社会の展望を得ようという意気込みが感じられた。また、これをきっかけに若い学生・参加者と生研教官との間に、新しいコミュニケーションを築くことができたことも大きな成果である。
            第3部 橋本秀紀

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* 事務系職員のためのパソコン講習会開催される

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本所事務系職員を対象にパソコン講習会が平成9年6月9日(月)から6月19日(木)に開催された。 この講習会は,予てから懸案となっている事務電算化の一環として,職員間の電子メ ールによる文書の送信・受信等、情報伝達方法について,ノートパソコンの配置がほぼ 完了したことに伴って行われたもので,事務系職員へのアンケートに基づき,事務電算化 ワーキング・グループ(構成員 事務部職員)のメンバーが講師になり、パソコンの使 い方、電子メールでの文書の送信・受信、電子メールでの添付ファイルやアドレス帳 の使い方等について、1回(5〜6人単位)あたり、約2時間程度で実施されたもの である。参加者は、事務部長をはじめ、事務系職員63名であった。
総務課長 佐藤 國雄

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SnapShots

../Image/Dot 4月23日

千葉実験所で初の教授総会
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../Image/Dot 5月26日

構内環境整備の実施
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../Image/Dot 4月23日

平成9年度新規採用者研修及び新任教官等研修
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PERSONNEL

*   退任のご挨拶

第5部 客員教授
 尾島 俊雄

Photo 1994年から2年、「多次元数値情報処理」部門の客員教授として、巨大都市東京におけるヒートアイランド現象の数値解析を村上周三教授のご協力を得て行いました。また、1996年より「高次協調モデリング」の客員教授として1年間、「アジアの巨大都市のモニタリングとモデリング研究」を推進いたしました。その間、村井俊治、虫明功臣、柴崎亮介先生等のご協力を得て、インターネットで世界にその研究成果を発信し、新しい客員部門の高次協調研究の先鞭をつけさせていただきました。3年間の生研での生活でしたが、この間に日本建築学会会長に推薦されたのも、現所長の鈴木基之先生、前所長の原島文雄先生、元所長の岡田恒男先生、科技庁へ行かれた片山恒雄先生を始め、生研で知り得た人脈の豊かさに依るところが多く、私にとって実り多い毎日でした。幸い客員研究員として今後とも研究活動の継続が許されておりますので、これまで以上に精進して参りたいと考えています。

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*   新任のご挨拶

第4部 講師
 亀井 雅之

Photo4月16日より第4部に講師としてお世話になっております亀井雅之と申します。専門は機能性セラミック薄膜の成長と物性です。私は図らずもいろいろな職場を転々とし、職歴はかなりバラエティーに富んでおります。民間企業研究所(旭硝子株式会社中央研究所)、半官半民の通産省主導で設立された研究所(超電導工学研究所)、私立大学助手(東京理科大学)そして生産技術研究所と10年間かけて渡り歩いてきました。それぞれ特徴があり、印象深い職場でしたが、生産技術研究所の今の生活が私は一番気に入っています。とても自由で明るい研究所であると感じました。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

第5部 助教授
 アンナ プライス

Photo 生研の皆様、はじめまして。私は、アンナ・プライスと申します。このたび、ポーランドのポズナンにあるアダム・ミツケビッチ大学からこちらへ参りました。このような有名な研究所に助教授として迎えられたことは、私にとって大変名誉なことと思っています。私の研究分野は環境音響学で、特に騒音の心理的影響(アノイヤンス)に大きな関心をもっています。生研での研究については、橘教授とも相談し、音響工学に関するいろいろなプロジェクトについて共同で研究を進める予定です。どうぞ宜しくお願いいたします。

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AWARDS

*  受賞


PROMENADE

討議: 『統計・熱力学外論』

学振の海外特別研究員として現在アメリカに長期滞在している。研究室から転送してもらう生研ニュースは懐かしく、かつ人の動きや他の先生方の考えていることなどがわかるので、大変興味深く読ませていただいている。
中でも先日読んだ酒井助教授の『統計・熱力学外論』は非常に面白かった。周囲の NASA の研究者も、皆「その理論には説得力がある」と納得していた。酒井理論につけ加えるとするならば、放っておくと雑用のみならず研究テーマの数も増え研究時間が細切れになるため、結果として酒井エントロピーが増大して研究成果が出にくくなる、という経験則も、エントロピー増大の法則で説明できる気がする。これに対する処方箋は系外に酒井エントロピーを捨てること、すなわち研究テーマも雑用も周囲に譲ることしかないと考えられる。
酒井理論に対する反例もある。雑用といえども研究教育業務の一環であり、そうではないことは勤務時間中や職場ではやらなくても良い、むしろやってはいけないと私は思っている。そのせいか、その日 10 の雑用が増えたとしても、私にとっては 1 つの雑用を終えた解放感の方が大きい。やらずに放っておくといつのまにかやらなくても良くなる雑用というのが案外多いのである。
また、現在の私の様に日本での日常業務から離れ、酒井エントロピーは小さく、酒井理論でいうところの周囲の騒がしさ温度 T も低くて研究成果を出すには理想的な条件下であっても、期待したほどの結果は出ないこともある。ひとつには締切という圧力が少ないと研究時間を浪費しがちである、という経験則で説明できる。この点については熱力学によるさらなる理論化を期待したい。
しかし、もうひとつの理由については古典的な物理学の範囲では説明不可能である。最近、特に研究成果が上がっているわけでもないのに、自分の潜在的な研究ポテンシャルエネルギーが減ってしまった、と感じている方はいないだろうか。もしそうなら現在の私と似た状況に陥っているかもしれない。そう、E=mc^2 で表現される莫大な研究ポテンシャルエネルギーが腰の回りの質量に変換されてしまっているのである。この変換に伴って、系外、特に虫明研や地球環境工学グループ、第5部の皆様に膨大な酒井エントロピーの増加をもたらしている点は誠に申し訳ないと思っている。
第5部 講師 沖大幹

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INFORMATION

../Image/Dot 技術官等による技術発表会の開催

 今年も、技術系職員を中心に6回目の「技術発表会」を開催します。
この発表会は、技術職員の知識及び能力の向上を図り、お互いの技術交流の場として行われています。
 今年は、例年の口頭発表のほかに、新たな試みとして、ポスター発表を企画しています。
 多くの皆様の参加をお待ちします。

日 時: 9月26日 (金) 10時00分〜17時00分
場 所: 東京大学生産技術研究所 第1、第2会議室

 なお、発表会終了後には、懇親会を予定しています。       (試作工場 菊本裕一)

     

../Image/Dot 生研基礎講座
−金属素材の創形創質加工-理論と応用-(第4回)−

講師 教授 木内 学
時間 10:00〜16:15
受講定員 25名
第1回 基礎理論と解析手法           10/14(火) 10/15(水)
第2回 板材の製造技術とその矯正技術、成形技術 11/13(木) 11/14(金)
第3回 管材の製造技術とその二次加工技術    12/ 9(火) 12/10(水)
第4回 棒・線・形材の製造技術        1/22(木) 1/23(金)
受講: 生産技術研究奨励会の賛助員の方 48,000円/一般の方 96,000円
なお、お申込みと同時に入会された場合は賛助員扱いとなります。
問い合わせ先: (財)生産技術研究奨励会 tel 03-3402-1331
e-mail:fpis@interlink.or.jp
主催 財団法人生産技術研究奨励会 協力 東京大学生産技術研究所

 * 第5回平成9年度東京大学技術職員研修の実施について
− 機械工作技術関係と木工工作技術関係 −

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試作工場では昨年度まで既に4回の技術職員研修を実施していますが、今年度は、新しい試みとして機械工作技術関係ばかりでなく、皆様の要望の高い木工工作技術関係の研修も併せて、10月6日(月)から10月9日(木)まで実施します。日頃、機械工作または木工工作に関心がある方はふるって御応募ください。なお、機械工作技術関係の定員は3名以上6名以内(担当:米良技術官、福尾技術官)で、木工工作技術関係の定員は2名(担当:唐崎技術官)です。
試作工場長 魚本 健人

../Image/Dot  生研イブニングセミナー「未来工学予測−視る・聴く・創る」

 コンピュータを始めとする種々の科学機器の発達により,これまでは視ることも,聴くことも,また創ることも不可能だと考えられてきたことが可能になりつつあります.本セミナーでは,何がどこまでできるようになったのか,またそのことによりどういう新しい現象が明らかにされ,科学の進歩に寄与しているのかを解説いたします.未来工学予測−新しく切り開かれた未来の工学とその拡大していく方向の予測について,全9回のオムニバス形式でセミナーを開催いたします.参加費は無料です.どなたでも是非ご参加下さい.
   第2部 谷 泰弘
■講師と演題(予定)
10月17日 横井 秀俊 教授 プラスチックの流れ
24日 中川 威雄 教授 鉄を高速に削る
  31日 木内  学 教授 素形材を創る
11月 7日 浦   環 教授 海中を見る
  14日 谷  泰弘 教授 ガラスを削る
  21日 谷口 伸行助教授 流れの科学
  28日 川勝 英樹助教授 原子を見る
12月 5日 大野 進一 教授 固体を伝わる音
  12日 林  昌奎助教授 海氷の動き
■日時  平成9年10月17日(金)から12月12日(金)
(予定)(毎週金曜日 午後6時から7時30分まで)
■場所  東京大学生産技術研究所 第1会議室
(正面玄関真上,3階)
■参加費と参加方法
参加費は無料です.事前の参加申し込みも必要ありません.

PLAZA

*  私の気分転換

目黒研究室 修士1年 ビア・アンク・ジュリア・カヤ ( Anke Julia Kaja Beer )

Photo私はドイツから参りました、ビア・カヤと申します。社会基盤工学専攻の修士課程に在学しております。目日本に来てからもう少しで1年になります。この1年間は私にとって忘れられない様々なことがありました。ここでは、私が初めて東京に来た時の第一印象をお話ししようと思います。
東京に来て最初の一週間は非常にエキサイティングでもあり、大変なものでもありました。その間、私が発見したもといえば、 " ラッシュ・アワー " の意味、" すみません " " ありがとう" の多様な使い方、印鑑の重要性、スーパーマーケットでの不便さ、チューターの助けなしで、初めて1人で生研に来た時、自分の研究室を見つけだすまでがとても大変だったこと。
夕方、新しい家で一人ぼっちになった時、私はこのような経験を語り合う相手もなく、強いホームシックを感じた事を覚えております。
間もなく、自分で思っていた以上に早く、" 普通の生活 " がやってきて、大学へ通うのに一時間かかる事も、また、その国の言葉が話せなくても、主に英語でコミュニケーションがとれる国にいることも、私にとっては、珍しいことではなくなりました。
そんな " 普通の生活 " に飽きてきたある日曜日の午後、友人と散歩をしていた時、突如この" 普通の生活 " の違う側面に気づきました。「東京の午後の街をただぶらぶら歩くのって、ファンタスティックじゃない?」いつも大学と家の往復だけの毎日でしたが、自分の知らない街を歩くことは、新しい発見もあり、気分転換にもなりました。それから私はこの感覚を忘れないようにしています。この感覚は私が大学から遅く帰るとき大いに役立っているのです。

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FRONTIER

*  準結晶の超微小押込試験

第1部 鈴木・枝川研究室

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金属・合金、半導体、セラミックス等は一般に「結晶」と呼ばれる周期構造を基本としています。一方、ガラスの様に規則性を持たない「非晶質」とよばれる物質もあり、高分子材料以外のほとんどの固体材料は原子配列の観点からこれら2つのいずれかに分類されます。ところが、ある種の合金には、そのいずれでもない「準結晶」と呼ばれる構造が存在することがわかっています。準結晶は、準周期性とよばれる特殊な並進秩序と結晶が持ち得ない5回や10回の回転対称性をもっていて、1984年に存在が確認されて以来盛んに研究が行われています。これまでなされた基礎的研究により準結晶が硬度、耐摩耗性などの点ですぐれた機械的性質をもつことが示され、被覆材料としての工業的応用の可能性も示唆されています。しかしながら現状では、準結晶の力学的・機械的性質に関する実験データは乏しく、その変形機構はほとんど理解されていません。
最近我々は、準結晶の弾塑性的性質を調べてその変形機構を明らかにする目的で、準結晶の超微小押込試験を行いました。これは、元々微小領域や薄膜の硬さ測定を目的として開発された低荷重(数グラム以下)の押込試験法です。準結晶のように、通常の押込試験ではき裂が発生して正確な硬さ測定が困難な脆い材料にもこの方法は有効です。また、この方法では圧子の押込及び引抜過程で荷重−変位曲線を測定し、これを解析することで弾性定数など硬さ以外の情報も得られるという利点があります。
図1に当研究室で開発した超微小押込試験機を示します。この測定機の荷重と変位の分解能はそれぞれ10μN(1mgf)、4nmで、加熱装置を備えており約500℃までの高温測定が可能です。図2にこの試験機で測定した、Ni結晶とMg-Zn-Y準結晶の荷重−変位曲線を示します。典型的な金属結晶であるNiと比べて準結晶は最大押込深さが小さく、硬度が高いことがわかります。解析の結果、この系の準結晶はステンレス鋼と同程度の硬さであることがわかりました。準結晶の荷重−変位曲線のもう一つの特徴は、除荷過程での回復(変位のもどり)が大きいことです。このことは準結晶が弾性的には軟らかいことを示しています。このように弾性的には軟らかい準結晶が高い塑性硬さを示す理由は、準結晶構造に起因して転位の易動度が極端に低いためと考えられます。この他にも準結晶の硬さの温度依存性が特異なふるまいをすること等がわかりました。現在、単結晶試料を用いて準結晶の塑性を系統的に調べることを計画しており、準結晶の特異な塑性変形機構の解明をめざしています。
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・図1 超微小押込試験機

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・図2 Ni結晶(白丸)とMg−Zn−Y準結晶(黒丸)の荷重−変位曲線

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