不思議なことに表紙の写真に実験装置が鎮座した例はこれまであまりない。この装置は前田(正)先生が特にお気に入りで、「いわばペットです。実に楽しく実験でき ますからね。」とおっしゃる電子ビーム溶解装置である。管理された雰囲気下で金属を溶かす装置で、現在は太陽電池用シリコンの連続結 晶化などのご研究にフル稼働とのこと。8年前からの手作り装置で、現在はこれを5 0倍くらい大型化した装置を千葉実験所で試運転中。
このことからも実験が大好きな先生と想像できますが、研究活動以外にもご承知の ように移転準備室幹事や第三者評価(学術)のWG委員長などなどをお勤めで、超ご 多忙。所の全員がたいへんお世話になっているわけです。
また、一方でご家庭ではよき(?)お父さん。ちょうど取材の時期はお二人のご子息がと もに(?)大学受験の真最中とか。修士1年の時にご結婚なされ、「以来、さより(奥 様)には苦労をかけ続けています」とのこと。(A.S)
所長 鈴木 基之生研のキャンパス整備につきましては、この2月に高層棟、中層棟建設の第1phaseの後半部分の整備が本格化する見通しになりました。この結果、文部省文教施設部と整備の内容についての打ち合わせが進められるなど、これから7月の入札に向けて様々な調整が活発に進められていくことになります。このなかには、ネットワークやPHSなど生研の今後の情報通信システムなどの基幹設備の計画内容の確認や“建物新営に伴う設備費”および“移転費”の積算資料作成のため準備いただいた什器整備、移設設備の配置等の案の確認などが含まれます。またこれらに加えて、駒場Uキャンパスを共有する先端科学技術研究センターとともに廃棄物処理や各種インフラ設備などについても検討を進めておく必要があり、3月14日の起工式の後、本所移転準備室と先端科学技術研究センターの担当者との打ち合わせが行われる予定です。
第1phaseとこれに続く一連の研究棟(高層棟、中層棟)の整備が進みますと、完全ではないものの研究施設面ではとりあえず移転の環境が整う形になります。しかし新キャンパスの厚生、福利面や事務施設など重要な機能の本格的な整備はこれ以降のphaseに計画されていて、継続した工事の進行中となることが予想されます。したがって研究遂行上の不都合とならないことや、引っ越し作業の能率化などを考慮して、第一陣の移転に適した時期について移転準備室などで検討を進めております。
今回見通しの立ちました初期整備の後半部分に該当する研究設備の申請につきましては新年度に関係者の方々に早速準備をお願いすることになる見込みです。今後、新たに早急な対応が求められることがたびたびあるかと思いますが、快適なキャンパス実現に向けてぜひ皆様のご協力をお願い申し上げます。
一昨年の国際諮問パネル、昨年の産業界諮問パネルに続いて、本年6月4、5日の両日に、本所の活動状況と将来構想について学術貢献の視点から評価と助言を頂く「学術諮問パネル」が開催されます。
本所では、組織体制と研究活動に関する恒常的な点検作業の一環として、「国際貢献」、「社会貢献」、「学術貢献」の3つの異なる視点から、本所の活動全般についての評価と助言を頂く制度を発足させております。この制度の目的は、(1)健全なアカデミズムの確立、(2)社会に対する公開性の向上、(3)社会の意見の多角的取り入れという3点に集約されております。
平成7年度は、この第三者評価制度の口切りとして、海外の著名な研究者5名による国際諮問パネル(座長:米国カリフォルニア大学バークレー校学長Chang-Lin Tien氏)を実施し、国際的な視点からの本所の活動状況と将来構想についての評価と助言をいただきました。ついで本年度は、我が国の産業界で研究開発に長年たずさわってこられた方々13名による産業界諮問パネル(座長:富士通代表取締役会長山本卓真氏)を実施し 、本所の社会貢献に関する活動状況の評価と助言をいただいております。
今回の学術諮問パネルでは、我が国の科学技術研究において指導的な立場におられる6名の先生方に評価委員をお願いし、今後の我が国の科学技術研究体制の中で本所が一層の学術貢献を果たしていくための方策について、ご提言いただく予定です。具体的な諮問内容としては、本所の学術貢献の実績と将来計画、組織体制と運営、推進すべき研究分野の選択方法と育成方法、大学院教育および研究者生涯教育などについての評価と助言をお願いしております。前2回の諮問パネルと同様に、学術諮問パネルからの諮問事項に関する報告を頂いた後、本所の対応についての所内の審議を踏まえた最終報告書を作成、公表いたします。
(第三者評価(学術)特別委員会座長 岡野達雄)●第三者評価(学術)諮問パネルメンバー表
氏 名 所属・職名 専門分野 猪瀬 博 座長:学術情報センター センター長 情報工学 大橋秀雄 工学院大学 学長 流体工学 末松安晴 工業技術院産業技術融合領域研究所 所長 量子電子工学 竹内 伸 東京理科大学 教授 固体物性 松尾 稔 名古屋大学 理工科学総合研究センター センター長 地盤環境工学 山本明夫 早稲田大学 教授 合成化学
生産技術研究所と大連理工大学の学術交流協定延長覚書きの調印式が去る2月1日、大連理工大学にて行われました。大連理工大学の前身は大連工学院で、その創建は奇しくも生産技術研究所と同じ1949年です。以来約50年にいたる歴史の中で遼寧省で国家教育委員会直属の唯一の全国重点大学の一つとして、中国の著しい近代化を支えてきました。
調印式には本所から鈴木所長、渡辺国際交流室長が列席したほかこれまで盛んな交流のあった耐震工学の分野から小長井助教授、事務部から高橋義昭氏が同席し、一方大連理工大学からは程学長、林前学長、金前々学長をはじめ、土木、化学、機械工学など主要な学科の教官がこれに加わりました。おりしも旧正月の10日前で中国全体が休みに入いった時期にも拘わらず、日本と深いつながりのある教官が多く出席し大連理工大学側からの参加者は総勢24名に達しました。覚え書きの署名交換に引き続き、程学長、鈴木所長の挨拶、各列席者の紹介、大連理工大学と生産技術研究所のアクティビティの紹介などがあり、列席者の仲からは時々流暢な日本語で質問やら紹介が飛び出すなど和やかな雰囲気のうちセレモニーが終了しました。
( 第1部 小長井一男 )
1月10日(金)に生産技術研究所における外国人研究員・留学生の懇談会が「はーといん乃木坂」で開かれた。この催しは、生産技術研究所に滞在している短期、長期の研究員あるいは留学生の方との懇談を通じて相互に理解を深めることを目的として、毎年開かれているもので、本年は、研究員、留学生の方とそのご家族ら約100名(21か国)に、本所教官、事務官ら約50名が参加して盛会となった。
本年の企画を担当した木内第2部主任、鈴木研究所長の挨拶に始まり、渡辺国際交流室長の乾杯の発声ののちは参加者の話の輪が会場が広がり、各国研究者らのインターナショナルな議論が盛り上がる一方で、家族の方や子供たちを交え母国語で話すアットホームなテーブルもあって、各人各様の楽しみ方で参加いただいた様子であった。
中国から短期訪問されていたWu教授、フランスCNRSと生産技術研究所の共同研究のために長期滞在されているHummady博士のスピーチでは東京大学の印象を率直に披露して戴くなど真剣な場面もあったのち、韓国出身の大学院学生5人が韓国の伝統打楽演奏「サムルノリ」を披露した。
サムルノリは韓国の祭りなどで伝統的に用いられる銅鑼,鉦,太鼓,ザング(鼓の一種)を様々なリズムで演奏するもので、会場に鳴り響く演奏は本人らの控えめな説明にもかかわらず、なかなかの迫力であった。
会の最期には恒例となった150名を越える全員での写真撮影が行われ、和やかな雰囲気のうちに8時過ぎに閉会となった。
(第2部 谷口伸行)
第2部 教授
木村 好次旧宇宙航空研究所の改組があって,駒場Uから生研に移り,10年ほどお世話になったところで停年を迎えることになりました.
生研の10年間は,忙しくはあったけれども大変楽しいものでした.なによりも,積極的に研究所の将来を論じ,工学の未来を語るという雰囲気がすばらしかった.構成員全体で問題意識を共有しているのは,生研の貴重な財産です.その仲間に入れていただいたことを誇りに思い,皆さんに心からお礼を申し上げます.
この4月から,香川大学工学部の創設に参加させていただき,四国に新しくトライボロジーの研究室を開設することになりました.どうぞ高松へ遊びに来て下さい.さぬきうどんなどご馳走いたします.
第3部 教授
高木 幹雄昭和40年4月に第三部応用電子工学部門の助教授として採用されて以来,32年間勤めさせて頂きました。第三部の後は,多次元画像情報処理,機能エレクトロニクス,概念情報工学と時限付センター暮しを20年致しましたが,実績を挙げて次のセンターを作らないと,職がなくなるという緊張感があり,刺激になりました。画像処理の研究を主に行い,応用として衛星の受信・処理,更に,地球環境情報処理に深入りしましたが,生研の存在感を示すべく精一杯努力して来た積りです。生研の良さは,自由に独自の研究を行える点と部の壁が低く境界領域の研究が行い易い点にあると思います。新キャンパスで更に発展されることを期待しています。
第5部 教授
原 廣司人生の主要な部分を、生研で過ごさせて頂いて、心から感謝しております。多くの優れた人々が研究室から育ち、広く活躍していてくれることが、私にとっては今では支えになっています。大学に籍を置きながら建築の設計をしてゆくことは、いろいろな面で大変厳しい経験でした。おそらく、皆様のご寛容がなかったら、とても設計をすすめてはこれなかったと思います。最後になって新しい生研の建物の建設に、微力ながら参加させて頂き、有り難いと思いつつも恐ろしくもあり、とても停年を迎えるといった心境ではございません。新しい建物が完成しました折に、あらためて停年の感謝の意を表したいと思います。
第5部 教授
高梨 晃一私は1年前に千葉大学工学部に配置換になっており、最後の1年は東大を併任させていただいた。それを入れて生研には実に34年間、多くの方にお世話になった。これ だけ長くひと所にいると、新しい環境に馴れるのにちょっと時間がかかる。千葉大で は併任期間を含めて2年になろうとしているが、やっと彼我の差を客観的に認識でき るようになった。やはり大学の運営や教育・研究に対する考え方には大きな差はあり 、それをこの歳になって感ずるのでは遅すぎる。助手で生研に赴任した時、研究に対 する姿勢のちがいを知ったが、人の流動性を高くして様々な環境で研究することが必 要であろう。一生、学部卒業した研究室で過ごすのはやはり異常なのかも知れない。 これまで楽しく過ごさせていただき改めて感謝申し上げます。
第2部 講師
宮島 省吾平成8年12月31日付けで東京大学生産技術研究所を退職し、平成9年1月より(株)三井造船昭島研究所事業統括部海洋エンジニアリング部の一員として勤務しております。昭和62年4月に助手として入所以来9年9カ月にわたって第2部前田研究室にお世話になりました。その間、方向波中における海洋構造物の挙動に関する研究を中心に海洋工学関連の多岐にわたる最先端の勉強をさせていただきました。特に平成7年からは講師に昇任させていただき独立した研究者としてメガフロートの研究に携わって参りました。今後は実務を交えながら海洋工学発展に寄与していきたいと思っております。末筆ながら皆様のご健康と益々のご活躍をお祈り申し上げます。
第4部 講師
重里 有三平成9年4月1日付けで青山学院大学理工学部化学科に転出致しました。 生研には2.5年間、講師として勤めさせていただきました。 この間、多くの分野の異なる先生方と自由であり且つ真剣に議論をしていただき、また、御指導していただけたことは私の人生にとって本当に幸せであったと改めて感じております。 生研では高機能性セラミック薄膜の作成とその構造・物性に関して研究を深めてまいりました。 今後は、さらにこれらの研究の基礎を深めると同時に、成膜プロセスや材料の種類の幅を広げ、この分野に少しでも多くの貢献をしたいと考えております。 お世話になりました生研のすべての方々に感謝するとともに、今後もご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願いいたします。
3月24日(月)所長室にて表彰状伝達式が行われました。
総務課課長補佐
坂本 昇総務課調査主任(併・第4部掛長)
田川文夫第2部 技術官
長瀬久子第5部 技術官
小川純子
さて仕事全体における研究の割合をk、雑用の割合をzとするとエントロピーSはS=−klogk−zlogzで表される。Sはk=z=1/2の時最大となり、一日の仕事は研究か、雑用かどっちかにしぼったほうがエントロピーは小さくなる。「きょうは半分雑用、残りは実験」などというのは最悪である。現実の系はこれほど単純ではなく、これをモデル化するために本来研究者であるという良心にしたがって次の仮定を導入する。すなわち「研究テーマは元々自分の興味から発生したものでありそれぞれのテーマには強い相関があるが、雑用はランダムに発生しその内容には全く相関がない。」このとき各雑用の割合をziで表すと、エントロピーはS=−klogk− zilogziとなる。これは手帳の予定表欄を各仕事毎に色分けしたときに、手帳の華やかさを示す量である。これより雑用の総量は同じであっても種類Nが増えるとエントロピーはlogNに比例して増大することがわかる。これは「締め切りを一つ抱えているときより二つのときのほうが、二つのときより三つのときのほうが処理速度は小さくなる」という経験則を支持する。
各研究者から外部に取り出しうる自由エネルギーFは、研究者個人の潜在的ポテンシャルUからエントロピーを引いたものでありF=U−TSとなる。ここで比例係数Tは温度と呼ばれるパラメーターであり、まあいってみれば周囲の騒々しさを記述する量である。エントロピーが増大し、あるいは温度が上昇して自由エネルギーが0になると研究者はもはや何ら新たな価値を創造することはできず、ちょこまかと働いているように見えて実はたんに熱揺動しているだけという状態に陥るので注意を要する。もともとポテンシャルに乏しくかつ周りが騒がしく思える昨今の筆者の状態などはすでにこれに近い。
ところで厳密には研究者の生活過程は不可逆なものであって、以上の平衡状態のへ理屈をそのまま用いることはできない。このことは「雑用が一つ片付いたときの心理的解放感は、雑用が一つ増えたときの心理的圧迫感に比べはるかに小さい」という直感的事実により証明される。現実の系には時間的対称性がなくエネルギーは保存されずに散逸系となり、新たな神経の消耗、じゃなかった、自由エネルギーの減少が起こる。これについては次の機会(もう依頼は来ないような気もするが)に詳しく述べたい。以上。
(材料界面マイクロ工学研究センター・第1部 助教授 酒井啓司)
平成9年度の研究室公開は、6月5日(木)6日(金)の2日間、例年どおり開催されます。また、同時に行われる講演会は以下のプログラムを予定しています。
(研究交流委員会委員長 黒田和男)平成8年6月5日(木)
・11:00〜11:50 第3部 石井 勝 教授
「 雷 」・13:00〜13:50 第4部 渡辺 正 教授
「 光合成と地球環境 」・14:10〜15:00 第5部 魚本健人 教授
「コンクリート用FRP緊張材の特性と耐久性」
平成8年6月6日(金)
・11:00〜11:50 第1部 渡邊勝彦 教授
「 き裂あれこれ−壊さないために− 」・13:00〜13:50 第2部 吉識晴夫 教授
「エネルギー・環境問題とガスタービン」
議長 鈴木基之 所長 委員 中桐 滋 教授 第1部 吉澤 徹 教授 〃 西尾茂文 教授 第2部 増沢隆久 教授 〃 藤田博之 教授 第3部 榊 裕之 教授 〃 七尾 進 教授 第4部 篠田純雄 教授 〃 虫明功臣 教授 第5部 半谷裕彦 教授 〃
第4部 教授 山本良一
“暗水花径を流れ、春星草堂を帯ぶ”とは今頃の季節を歌ったものでありましょうか。今年は梅の開花が早く、各地で紅梅、白梅が見頃となっているようです。私は花を賞することにかけて、日本は中国に勝っていると長い間思い込んでいました。ところが’83年に初めて中国を訪問、中国科学技術大学に滞在した折に、中国の先生方からその誤りを正されました。実際中国には花を詠んだ素敵な詩がたくさんあるのです。例えば、“時に落花の至るありて、遠く流水に随って香る”などうまいものではありませんか。落花に感傷的になるのも日本人の専売特許では無いようで、紅楼夢のヒロイン、林黛玉は“花落ち花飛び飛んで天に満つ、紅消香断誰か怜れまん”と歌っています。まだ確かめてはいませんが、韓国にもおそらく花を詠んだ素晴らしい詩がたくさんあるに違いありません。私にとっての中国旅行の魅力は、風景に歴史と詩文が重なり合って迫ってくるところにあり、それに朋友と中国料理が加われば極楽、極楽なのであります。名所家旧蹟については本所4部の瓜生先生に、中国料理については同じく工藤先生に及びませんが、’83年以来いくつかの山水、園林、楼閣、古寺を訪ねることができました。山では安徽の黄山、四川の峨嵋山、湖では“春江花月夜”の詩で名高い無錫付近の太湖、楼閣は江南三大名楼として知られる武漢の黄鶴楼、岳陽の岳陽楼、南昌の騰王閣が見事です。毛沢東が絶賛したこともあって騰王閣序にある詩句“落霞は独り飛ぶ鴨とともに翔り、秋水は青く遥かな天空につづく”は人々に良く知られています。古寺では玄奘三蔵の墓のある西安の興教寺、鑑真ゆかりの楊州の大明寺、空海入唐の地である福州の開元寺などが、レストランでは北京の 膳、蘇州の松鶴楼、杭州の楼外楼が印象的でした。中国へ行く度に歴史悠久を感じ、中国・朝鮮・日本の東アジア三国の文化交流史、近代化の差について考え、21世紀へ向けて持続可能発展へ共同でどう取り組むべきかに思いをめぐらせております。その一環として、今年の9月には筑波で第3回エコマテリアル(環境調和材料)国際会議を開催する予定ですが、中国より56名、韓国より12名を招待しています。思えば空海は31才で、道元は24才で中国へ留学し、それぞれ2年間、4年間で“学位”を取得して帰国しております。二人とも良き師にめぐり会えた幸せを書き残していることを考えるにつけ、研究室の留学生諸君に対し、私も身の引き締まる思いがしている昨今です。
建設複合材料学 第5部 魚本研究室
当研究室では様々な建設材料に関する研究を長年実施しているが、1996年から開始した新しい研究として「高品質吹付けコンクリートの開発に関する研究」がある。この研究の一貫として平成9年度から5年間、千葉実験所において大々的に実験を始める予定であり、現在その準備をしているところである。
写真1に示すように、吹付けコンクリートは、従来、トンネル用ライニングまたは法面保護用材料として広く使用されているが、建築物でも鋼材の防火保護用材料等に利用されている。しかし、この吹付けコンクリートに関しては、我が国のみならず諸外国でも大学等による学問的な研究が行われておらず、ノズルマンの経験と「かん」でその配合や吹付け方法が選定されている。その結果、未だにそのメカニズムや品質の制御方法などが明確にされていないのが現状である。
当研究室では、既に個別要素法等による解析とモルタルによる簡単な実験を行っており、徐々にではあるが図1に示すようにリバウンドのメカニズム等が明らかになってきている。今後、コンクリートの品質がどのような要因でどのように変化するかを実験で明らかにすると供に、ベテランのノズルマンがいなくても高品質吹付けコンクリートを容易に製造できるようシステムの開発を行う予定である。この研究については企業との共同研究で実施する予定であるが、平成9年度中に千葉実験所に作製する「吹付け用模擬トンネル」が皆さんの目からもおもしろいものになれば良いと願っている。(魚本記)
図2