本所は、本年度、国際諮問パネル(IAP)による第三者評価を実施し、成功理に終えることができた。このための第三者評価特別委員会の座長をつとめられたのが二瓶好正教授である。 第三者評価にともない、生研のWorld Wide Webサーバーによる情報提供も開始された。アドレスはhttp://www.iis.u-tokyo.ac.jpである。WWWを通してディスプレイ上に写し出されているのはIAPメンバーの方々である。「最初から名前の上がった候補であるこれらの方々にIAP就任をお願いしたところ、すべてお忙しいにもかかわらず快諾していただき、そのとき大成功を確信した。と同時に、生研のいてきた外との絆の強さを実感した。」そうである。
専門は、物質情報工学。現在は、新しい固体表面解析法の開発に力をいれて研究を行われている。休日には、クラシックの音楽鑑賞を楽しまれるそうである。また、第三者評価の打ち上げパーティーでは喉(英語の歌)も披露された。
今後は、産業界諮問パネル・学術諮問パネルにひきつがれ、より良い生研に向けての努力は継続される。(T.K.)
生産技術研究所では平成7年12月、国際諮問パネルによる第三者評価最終報告書をまとめ公表した。本報告書は、昨年6月に行なわれた国際諮問パネル(IAP)会議に基づき、カリフォルニア大学学長C.L.テイエン教授より鈴木基之所長あて提出されたIAP最終報告を受けたものであり、本所第三者評価特別委員会において本所の対応について審議した後成文化されたものである。
本報告書は、国際諮問パネル報告書(和訳)と国際諮問パネル報告書に対する本所の対応を主文とし、国際諮問パネル報告書原文、第三者評価実施計画書、第三者評価特別委員会記録ならびに本所第7次将来計画(中間報告)などの付属資料からなる。また、昨年6月のIAP会議会期中におこなわれた記者会見に伴う各種メディアの反響なども資料として添付してある。
「国際諮問パネル報告書」は、「工学の研究と教育は今、進路の選択を迫られている。21世紀を、目前にして、世界の主力大学は新しい課題と責務に直面し、飛躍の機会を模索している。主導的研究教育機関としての東京大学生産技術研究所(生研)もその例外ではない。」と書き出されているが、「日本の技術、政治・経済・文化の心臓部に位置する生研は、このたびその研究業績・組織構成、国際研究交流プログラム・将来計画についての評価を得るため、国際諮問パネルを構成するという勇気ある一歩を踏み出した。」との認識が述べられている。
また生研に関し、「創立以来45年、生研は日本の先端工学の、研究・教育を主導してきた。来たるべき技術の変貌をいちはやく予見し、研究戦略とプランを具体化することによって、常に前線に位置し続けた。」とその実績を高く評価したうえで、今後改善すべき点として、以下の項目を挙げている。
1.生研が今後とも主導的研究教育機関であり続けるには、研究スペースの拡大、予算の拡充、予算配分法の見直しが必要であろう。
2.今後は、社会・人間・環境などにかかわる「よりソフト」な工学研究の推進が望ましい。
3.各個研究を重視する現行の組織から、より増幅効果の期待できるプロジェクト研究重視型の組織へ移行するのが望ましい。
4.国際共同研究はさらに充実すべきである。
5.「生産技術研究所」という呼称は、生研の現在の姿や将来の社会的役割を考えると必ずしも適切とは思えない。
6.人事面では、新しい血の導入に一層努力されたい。
生産技術研究所としては、実績に対する高い評価と、今後の改善に関する貴重な助言と勧告に対し、別記のとおり「本所の対応」をまとめたのである。おわりに国際諮問パネルによる第三者評価の企画と実行にあたった者として、教官、職員の皆様のご協力に対し心から感謝申し上げたい。![]()
生産技術研究所は「国際諮問パネル(IAP)報告書」を受け、その中に含まれている多くの貴重な助言と勧告に対し、当面直ちに対応すべき点に関する本所の対応についてまとめた。その概要は以下のとおりである。
1)生研のスペースと予算について 本所の長年にわたる努力が実り、平成7年度より駒場第2キャンパスの再開発計画が実行に移されることとなった。そこで本所の当面の整備計画として65、000m2 の研究/実験棟の新営を行うと共に、21世紀に向けた研究教育環境の整備を行うため、研究インフラの整備と研究実験設備の充実等に最大限の努力を払う所存である。
2)推進すべき研究分野について 本所の将来計画では「生産の方法論としての工学」から「人間活動を支える工学」への変容が必要であるとの決意が述べられているが、今後さらに具体的な検討を重ねたい。
3)組織構成について 本所では従来、研究分野と研究目的を縦横の軸としたマトリックス型の組織をとってきたが、目的志向軸をより重視した組織への移行を重要検討課題としたい。
4)国際研究協力について 本所では、「IAP報告書」でも高く評価された従来の実績と方針のとおり、最先端の研究分野での先進諸国との国際協力を進めると共に災害軽減工学等の分野で発展途上国との研究協力を推進してきたい。また、国際産学共同研究センターを実現し今後の国際研究協力を特段に進展させる予定である。
5)研究所の名称について 我が国では名称の変更は決して容易ではないが、研究所全体の将来構想の実現と共に検討していきたい。
6)教官の採用について 研究者の国際的交流を促進するとともに、さらに教官として招聘するなど、より開かれた教官採用方式の確立に向けて検討したい。
10月13日から12月22日まで、毎週金曜日の夕刻、「機械技術の最前線・夢」と題して、本所第2部の教官有志によるイブニングセミナーが開催された。加工技術、熱、トライボロジー、鉄道技術、計算力学などに関する最新の研究成果とトピックスがわかりやすく語られ、年末を控えた寒く慌ただしい時期であったにもかかわらず、毎回所外から数十人の技術者の方々の参加を得た。産学交流の場として定着、発展することが期待される。(Y.T.)
前年度に引き続き、教室系技術官全学研修(映像技術関係)が10月24日〜27日の4日間、行われました。受講者は6部局9名(うち女性1名)であった。
プレゼンテーション技術における重要な課題である「なにをどう表現し、どう理解してもらい、どう訴えるか」について具体的な用例を引きながらの講義につづき、プレゼンテーションの一環として実際にビデオ制作に携わる場合のプロセス(構成・表現・方法・撮影・編集)を把握できるような研修内容となりました。
2日目からは実技・演習のため2班編成とし、制作課題のご協力快諾くだっさった中川・小林両研究室での取材・打ち合わせを行い、それぞれ5分〜10分程度のビデオにまとめることにしました。テーマ・タイトル・シナリオ・BGMなど企画会議が熱心に行われ、白熱した討論の中で構成ができ上がりました。
3日目には撮影機材(カメラ・三脚・ライト・マイクなど)を担いでの撮影と編集作業にうつり、最終日の午後には両チームの力作が発表され、合評会席上では制作上の苦労話なども飛び出し、和やかなうちに4日間を終えました。
業務用の大きく重い機材を使っての作業はハードでしたが、受講者はディレクター・カメラマン・ライトマンなど各々の役目を順繰りに経験し、グループでひとつのものをつくる楽しさを満喫し、研修を終了したようでした。 (映像技術室)
本年度で3回目の全学研修が当試作工場で11月7日〜11月10日の4日間行われ,受講者は5部局5名であった.この研修の目的は,実験用機器の分解組立や加工具.工作機械による手直し・部品加工に必要な基礎的技術を習得することである.初日は「設計製図の基礎,加工図面の作成」,「加工具および測定機器の正しい使用法」の講義を行い,2日目からの実技・演習は旋盤,フライス盤,ボール盤等の工作機械を使用して制作する「一軸スライドステージ」を課題とし,旋盤作業ではステージ送りネジの加工を行なった.初めて触れる機械に緊張と戸迷いの様子であったが,最終日の組み立て・調整の頃には工場独特のモーター音や切削油の焦げるにおいにも慣れ,完成品をお互いに自慢する受講者もみうけられた.工場設備見学では,水中で放電しながら高精度で加工が進行するワイヤー放電加工機の機構や加工能力について質問が多くだされ,予定時間を過ぎても熱心に説明を受ける受講者もいて好評であった.また,毎年11月8日に行なわれる伝統的な行事の一つであるふいご祭りが研修日と重なり,バイトの鍛造や鋼の熱処理の状況も紹介することができた.工場利用者への支障がないよう通常業務を行いながらの研修であったが無事終了した.今後もご理解とご協力をお願いしたい.
12月14日(木)午後2時から構内の環境整備が行われた。天気予報の午後からの雨が降るとの予想も見事外れ、風の強い日が多かったのに清掃実行の当日は風もなく身体を動かしはじめると少し汗ばんでくるような絶好の日に恵まれた。
7月の構内清掃と同様に、各部に割り当てられた清掃ブロックで約280人が心地よい汗をかいた。
今回は落葉を片付けることが清掃の主眼になり、ある部ではかき集めた落葉の「落葉焚き」をしていたが、隣接のビルから「会議中で煙が目に染みるので消してください」というご注意をいただいた。
焚火に入れていた芋が生焼けだったのかどうかは確認していない。
皆様ご苦労さまでございました。
ところで、7月の清掃の時に煙草の吸い殻が散乱していて灰皿設置の要望が出ていたが、この度ゲート6箇所(4、6、7、11、14、16の各ゲート)と7ゲートの屋上、8ゲートの下に灰皿を設置した。 煙草服みのマナーを守って利用してください。(T. M.)
開かれた大学を目指して Tri-Tech Conference '95 開かれる
11月27日、豊橋技科大において、「開かれた大学をめざして」- 異なる機関にわたる研究交流とそのノウハウ - と題してTri-Tech Conference が開かれた。基調講演では、本所の増沢教授とコラール客員研究員から、本所と CNRS の間の共同研究成立の経緯について、長岡技科大の植村教授から、民間企業との共同研究の現状について報告があった。今回はいわば研究の裏側の部分がテーマであり、専門分野は全く違っていても共感できる部分が多く、議論は終盤盛り上がっていた。
本会議終了後、来年度は生研で開催されることと、これからの10年間を見越して、この研究会議をいかに位置づけ、運営していくか3機関で協議することが確認された。(研究交流委員長 黒田和男) 教育って何だろう
現在名医の誉れの高い同級生と最近数年ぶりに再会し、酒を飲み交わしながら昔を懐かしんだ。我々は都立日比谷高校の同級生であるが、この高校は自主性を重んじ、隔週土曜日が休みであり受験時期に至っても授業では教科書が終わっていない具合で、進学校というイメージは全くなかった。自主性の典型は、クラス編成であった。つまり、校庭に2年生全員を集め、クラスの旗を持った担任が校庭の反対側に立つ。生徒はこれを見て希望するクラスの旗に集まる。担任は、生徒同士の話し合いでクラスの人数が平均するまで待つのである。2日かかった場合もあったと聞いている。このように自主性を重んじる高校であったから、様々な生徒がいた。当時はビートルズ全盛時代であり、シングルレコードのジャケットに解説を書いて相当の収入を得ている「評論家」がいた。オーシャンウイスキーを忍ばせて課外授業にくる「哲学者」や、学校に来ると授業を受けずに図書室に入り浸っていた「文学者」もいた。勉強ができる生徒よりは、それ以外で光っている生徒がむしろ尊敬を集め、様々な価値観が認められていた。再会した同級生と懐かしんだのは、こうした環境である。私は、教育環境を形作る第一の要素は個々の価値観の基で輝いている人間たちであると思っている。こうした人間たちは、同級生でも先輩でも先生でも良い。時代を共有する多様な人間たちの中で人は育つと信じたい。東京大学は、その入学試験に意味があり、入学後の教育にはあまり意味がないとの声を耳にする。我々教職員にとって耳の痛い言葉であり反省する点も多いが、私は上で記したように教育の場としてまず保証すべきものは、輝いている人間たちが多く集まり、その輝きを互いに吸収し合える環境であると思う。生研は、こうした意味からも光っている情報広場であると信じている。(第二部 西尾茂文)
10月16〜20日
学内レクリエーション 「ボーリングの部」
於:後楽園ボーリングセンター
団体優勝・Bチーム(1276点)
女子1ゲーム高得点者
1位 福島奈緒美(198点) 女子の部
学内レクリエーション「サッカー」の部
10月31日〜12月1日
於:御殿下グラウンド
Aチーム:1ブロック 3位
ふいご祭
11月8日
於:試作工場
第10回生研同窓会(事務系職員)
11月22日
於:第1、第2会議室
健保会館
ボイラー火入れ式
11月30日
防災訓練
12月14日
工学系研究科懇親会
12月15日
於:健保会館
教官懇親会
12月20日
於:フロラシオン青山
生研ニュースホームページへ
オートマチック自動車
生研の自動車研究は1946年に自動車技術会が設立された頃に,貨物自動車の性能試験とその科学的検討に加わったことに始まる.故石原智男教授が流体トルクコンバータの研究を始めたのは1949年のことだった.流体トルクコンバータは自動変速機として種々の利点を有しているが,複雑な形状をもつポンプ,タービン,ステータから構成されており,当時では(現在でも最も解析し難い流体機械であるが)性能の適確な評価や合理的な設計方法の提案は至難とされていた.石原教授はいすゞ自動車,続いて文部省科学試験研究費の助成を得て,複雑な回路内流れをエネルギーバランスの考え方を導入して理論的に解析し,さらに,羽根車枚数,羽根の表面粗さ,羽根車流路の曲がりなどの影響を考慮に入れた理論解析法を提案し,同時に試作トルクコンバータを用いてその解析法が設計に適用できることを実証した.1954年頃のことである.以来,30余年にわたってトルクコンバータの研究を積み重ね,オートマチック付き乗用車の発展の基礎を築いた.
(2部 小林敏雄)
開発当時のトルクコンバータ羽根車とトルクコンバータ・カットモデル.1949年より研究を開始し,いすゞ自動車と共同で開発したトルクコンバータ
トルクコンバータ付き国産1号車.左から2台目がいすゞ自動車製造のトルクコンバータを搭載したトヨタコロナ車.これがトルクコンバータ搭載の国産1号車である.左手前が故石原教授.
240ccスクーター用世界最小の実用トルクコンバータ(1958年当時)=スーパーフローを搭載したスクーター
生研ニュースホームページへ
- 第5部 教授 村井俊治
1995.11.20
ブーン・インドラムバヤメダル タイ国研究評議会
アジア地区におけるリモートセンシング研修および技術移転を続けてきた功労にたいして- 第2部 技術官 野口裕之
1995.11.22
通商産業大臣賞((財)素形材センター)
ものづくりコンテスト一般の部
本年度停年退官される岡田恒男教授(元所長)、棚沢一郎教授、高羽禎雄教授、藤井陽一教授の記念講演が,3月21日と22日の両日,生産技術研究所第一会議室において下記のとおり開催されます。日 時 講 演 者 3月21日(木) 13:30〜15:00 藤井陽一 教授 光エレクトロニクス技術-来世紀への展望-3月21日(木) 15:30〜17:00 高羽禎雄 教授 21世紀の道路交通-情報化・知能化の時代-3月22日(金) 13:30〜15:00 棚沢一郎 教授 エネルギー・環境問題における熱工学の役割3月22日(金) 15:30〜17:00 岡田恒男 教授 建物の地震対策
図書室では、利用者の皆様がご自分で情報検索できるように、雑誌閲覧室にパソコン( Power Macintosh 7100/80AV )1台を設置しました。これにより、東京大学附属図書館や東京工業大学附属図書館の所蔵目録 ( OPAC : Online Public Access Catalog ) をはじめ、下記のような各種データベースの検索が可能になりました。また、その検索結果をプリントすることもできます。検索方法については、パソコンのそばにマニュアルを備え付けてありますが、ご不明な点がありましたら、図書事務室までお問い合わせ下さい。データベース名 分野 MEDLINE 医学・生命科学 CINAHL 看護学 BIOSIS 生命科学 AGRICOLA 農学 SCI 自然科学 SSCI 社会科学
半谷研究室 修士1年 小川 知一
去る12月6日の某スポーツ新聞に六本木恐走会という団体名で第5部の半谷教授を始めとする数名と、私の名前が載っていた。これは11月末に行われた河口湖マラソンの全完走者(5時間以内にゴールした人)の名前、タイム、団体名が掲載されたものである。ここ生研から42.195km東に進めば、千葉実験所くらいまでは行ける。この過酷なレースに今年はなんと約14000人が参加し、このうち9000人近くが完走した。新聞に載っているはずの自分の名前を探すのも大変だった。六本木恐走会も初めは半谷教授を中心とする数名であったが、その会員数は年々増えており、創立3年目をむかえた今年は20人近くになった。いったい何を好き好んで私を含めた多くの人は自ら苦しい思いをするのだろうか?河口湖マラソンには、老若男女、素人、玄人を問わず、いろいろな人が参加する。それぞれ答えが異なるであろうが、私の場合は、一言で言うと、マラソンが’自分との戦い’であるから好きである。他のスポーツにおいてもこの’自分との戦い’は存在するが、最終的には’他人との戦い’に勝つことが目的だと思う。しかし素人である私にとってのマラソンは純粋に’自分との戦い’、自分の精神・肉体との戦いであり、自分を客観視することができるところがいい。そしてこの戦いは、六本木恐走会の会員はもちろん、他の参加者、沿道の人たちまでもが味方になる。沿道の人たちの声援に感動して、自分に力が湧いたとき、精神と肉体の関連性を実感するとともに、また来年も走ろうと思う。来年もまた会員が増えるのが楽しみである。
上:河口湖を背に走る半谷教授
左:六本木恐走会の面々(後列中央の帽子が筆者.)
人事掛 事務官 後藤 和彦
平成7年10月31日から11月7日にかけて財団法人生産技術研究奨励会の海外派遣助成金を頂き、エジプトのカイロ大学、アズハル大学及びカイロアメリカ大学を訪問・視察した。
一人で行く今回の出張は多少わびしさを感じていたが、出発当日の10月31日、空は紺碧色、その憂いをぬぐい去るフライト日和であった。成田を発ってインスタンブール経由(トルコ航空のため)で、約19時間をかけてカイロ空港に降り立った。
当節のカイロの気温は約20度程で、ちょうど日本の初夏のようでしたが、湿気は余りなく非常に過ごし易く感じた(ほこりっぽい点を除けば)。
カイロ大学では、Aly E. Salama 工学部教授をはじめティーチング・アシスタントである Mohamed A. Ibarahim 氏により学内の主要な施設等を案内・説明して頂いた。特に留学生制度が完備している点が目をひいた(エジプトの地理的位置・国家的立場によるもの)。
その後アズハル大学、カイロアメリカ大学を訪れたが特にカイロアメリカ大学では Hassanein Amer 理工学部教授により学内の主要な施設等を案内・説明して頂いた。大学名が示すとおりアメリカの大学の教育システムと類似点が多々あり、アメリカの各大学との人的・学術的交流も活発に行われていた。
幸い出張中は天候にも恵まれ(当然かも)接して頂いた方々は、一様に親切であり、気候と相まって体が暖まるような気遣いにより非常に有意義なものとなった。
この紙面をお借りして平川先生をはじめ今回の出張でご足労頂いた方々へお礼を申し上げたい。
界面マイクロ工学研究センター 香川 豊
複合材料(Composite Materials)は金属、セラミックス、プラスチックスなどの工業材料の一つとして、我々の日常生活を快適にするためには欠かせない材料の一つにまで成長した。その理由は、複合材料では材料に要求はされるが材料単体では持ちえない特性あるいは本質は相反する特性を、一つの材料中に人工的に閉じ込めたものが得られるからである。一方、現状では複合材料の研究は、”既存の材料系の延長にあるもの”に集中しており、”世の中には存在しない全く新しい特性を持った材料を作り出す”という観点からの研究は極めて少ない。特に、光学特性を目的として数ミクロン〜数十ミクロンという光の波長に対して大きなものを複合化する研究はいままでに数例が報告されているのみである。
筆者らは数ミクロン〜数十ミクロンオーダーの強化素材を用いて光学的な特性にプラスアルファの機能を付与した複合材料系をオプトX複合材料と命名して研究を行っている。オプト-X複合材料の”オプト”は”Optical” の”Opt”であり”X”は光学特性に加えて付与したい特性を示している。この言葉は広く認知されているわけではなく、我々が複合材系に命名したものである。 以下、研究室で行っている例を述べ、”オプトX複合材料”とは何かを具体的に紹介する。オプトメカニカル複合材料(Optmechanical Composite)は材料の光学的特性を保ったまま力学特性の向上を狙った材料である。例えば、ガラスの透明性を犠牲にせずに割れにくいものを創りだそうというものである。研究室ではオキシナイトライドガラス繊維を短繊維状にしてガラス中に複合化したオプトメカニカル複合材料を作製することに初めて成功した。およそ70種類のガラスマトリックスを調製し、繊維を10〜20 vol%ガラス中への複合化を試みその中から最適なガラスを選択した。繊維自体の屈折率にマトリックスの屈折率を合わせることにより複合化後に60〜70%の透過率が得られている。また、力学特性に関してもマトリックスに用いたガラス単体よりも2〜4倍の破壊抵抗が得られている。この複合材料では可視光領域から赤外光領域まで透過能を持ち、可視光領域では界面の影響、赤外領域では繊維の体積率による影響が透過率に大きく影響していることが明かとなった。エポキシ樹脂中に複合化したものであり、樹脂本来の光透過性は犠牲にせずに樹脂の熱膨張係数のみを低下させることを目的に作製された材料である。図は研究室で作製したオプトサーマル複合材料の写真である。粒子の体積率が30vol%程度までの光透過性は写真のようにエポキシ樹脂単体に比べて遜色のない複合材料が得られている。また、熱膨張係数も粒子の体積率により任意に変化させることに成功している
以上、簡単に説明したように光の波長に比べてはるかに大きなものを複合化して得られる光学特性を中心とした材料の研究は始まったばかりである。今後の研究により色々な新しい現象が見いだせるチャンスと考えオプトX複合材料の研究を進めている。
年が改まったのを機会に,本号よりPROMENADE欄が連載開始となりました.かねてからの「生研ニュースにコラム欄を」とのご要望にお応えしたものです.
編集室では,今年も読者の皆様からの御批判と御意見を取り入れて,魅力あふれる紙面造りに努める所存です.目安箱としてE-mail: iisnews@iis.u-tokyo.ac.jpを開設しておりますので,お気づきの点等ありましたらお知らせ下さい.(N.Y.)