編集・発行 生研ニュース部会
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第2部の大島まり先生の専門は「流れのシミュレーション」.学生時代は核融合の,最近では生体内の「流れ」を研究されている.研究に加えて大島先生と言えば,SNG(Scientists for the Next Generation).理科系離れが叫ばれる中,小中高生を対象として科学技術の面白さや重要性を伝える「草の根活動」を展開されている.これを思いついたのは米国留学中.MITやスタンフォード大学で,大学院生が土日を利用して高校生にワイワイ楽しく教えているボランティア活動を見て.帰国して「生研女性の会」でこれを話したところ「面白そう」と,97年の生研公開で中高生向けの展示を行ったのが最初.より積極的にと同年の秋から「押しかけ授業」を開始.手弁当で始めた活動も今年からは所長のリーダシップ経費のサポートを受けている.大学院生を中心に毎回3〜4人で授業をするが,近い年齢のお兄さんやお姉さんが教える点が評判いいとのこと.これまでに6回の授業と1回の講演会を実施したが,内容やレベルは先方の理科の先生方との事前打ち合わせで決める.「押しかけ」で始まった授業も今では依頼が来るようになった.テーマを絞ったリクエストもあり,広い分野の協力が必要となっている. SNGの会合は2週間に1回.多くの方々,特に大学院生の積極的な協力を求めている.
この4月1日からは,筑波大学と生研の双方で教官の顔を持つ大島先生.筑波では授業を通した教育者として,生研では今まで同様に一線の研究者として活動される.老若男女,誰からも愛される時代の「流れ」先取りのPromising Scientist in the Next Generationである.
(目黒公郎)
生産技術研究所の「平成10年度冬季外国人研究者・留学生との懇談会」が1月12日(火)午後6時より「はあといん乃木坂」で開催され、研究者、留学生とその家族119名(20か国/地域)および教職員65名が参加した。
今年度冬季企画担当の第1部吉澤主任のwelcome speechに始まり、大園留学生センター長、渡辺正国際交流室長の挨拶の後、駆けつけた坂内所長が乾杯の発声を行った。この後は、共通語としての日本語、英語をベースに、バラエティに富んだお国言葉の入り交じる懇談の輪が会場各所に広がった。料理と飲み物を潤滑油に、研究上の話、日本における生活の話題等に花が咲き、また日常とは異なる場での家族間、夫婦間(?)の語らい、と各人各様に楽しんで瞬く間に時が過ぎた。
この懇談会では、文化交流をかねたアトラクションが恒例となりつつあり、今回も韓国の大学院生等6名による韓国の伝統歌舞サムルノリの「チンドアリラン」や「ペッノレ(舟歌)」を、会場の参加者全員で歌い踊り、大いに盛り上がった。最後に全員の集合写真撮影が行われ、和やかな雰囲気のうちに午後8時に散会となった。
(第1部 渡邊勝彦)
1月8日に定例の記者会見が、須藤研教授(INCEDEセンター長)、ヘーラト・スリカ−ンタ客員教授、目黒公郎助教授によっておこなわれた。INCEDEの役割と成果、災害に関する認識のギャップ、発展途上国におけるデータの少なさに起因する災害予測の困難さ、などが紹介された。兵庫県南部地震では、関連死を除く死者の90%近くが地震発生とほとんど同時に亡くなっているという生々しいデ−タはおおいに考えさせられる。「喉元過ぎて熱さ忘れる」ことのないようにINCEDEが情報を発信し、警鐘をならし続けていただきたいものである。
(第2部 浦 環)
1月21日(木)、本所と部局間協定を結んでいる台湾・中正大学工学部のRen C. Luo工学部長を団長とし、主要大学と関係官庁メンバーからなる視察団が来所された。日米欧のMEMS, Mechatronics, Automation, Intelligent Manufacturing Systemsなどの研究状況を調査する方々で、当日午後3時より生研第2会議室でミニシンポを開き、情報・意見の交換をした。視察団8名と、本所教官数名が参加したプログラムは以下のとおり.
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* ミニシンポジウム
国立中正大学 Ren C. Luo 工学部長
3部 池内克史教授 "Modeling from Reality"
3部 年吉洋講師 "Research Activities on MEMS at Fujita-Toshiyoshi Group"
2部 白樫了講師 "Heat and Mass Transfer in Micro Scale"
2部 鈴木高宏講師 "Dynamical Nonholonomic Robot Systems"
(司会 川勝英樹助教授)
Ren C. Luo 工学部長は、本所のRGOEだったマイクロメカトロニクス研究グループの元メンバーで、シンポジウムの合間に川勝助教授、年吉講師らと歓談された.
ミニシンポののち、増沢研究室と藤田研究室を見学していただき、夕刻からは坂内所長、原島元所長も交じえた関係者と懇親会を開いた。
(第4部 渡辺 正、第2部 川勝英樹)
産学連携に関する報告講演会が1月22日の16:30から18:00まで、はあといん乃木坂で開催された。今回の報告講演会では、それに先立つ14:00から16:00まで、大学院博士課程の学生によるポスターセッションが本所第1、第2会議室で開催された。このポスターセッションは産業界からの要望に答える催しとして企画されたもので、25名の学生による研究成果のポスター発表が行われた。新しい試みであるため、どの程度の来訪者があるか懸念されたが、開始から終了まで間断なく所内外の来訪者があり、評判の方も概ね好評であった。ただし、全般的にポスター製作に準備不足の面が伺われ、次回には改善すべき反省点もあった。
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報告講演会では、まず坂内所長から本所および奨励会の産学連携に係る活動報告があり、安井国際・産学共同研究センター長から同センターの活動方針についての説明があった。次に第2部木内教授による「生産技術の革新−我国製造業が世界を先導し続けるために−」と題する格調高い講演と、第4部前田教授による「大学における研究教育と産学連携」と題する愉快な講演があり、大好評のうちに報告講演会は終了した。
報告講演会に引続き、はあといん乃木坂の別室で懇親会が開かれた。報告講演会での講演の余韻もあって、産業界の参加者から貴重な意見を聞くことが出来たが、生研教官の参加が必ずしも多くなかったのは残念であった。次回以降の、多くの教官の参加を訴えたいと思う。最後に、ポスターセッション参加の各学生に1万円の謝金を出して頂いた奨励会に感謝の意を表したい。
(第2部 藤田隆史)
本所にはこれまで、耐震関係、数値流体力学関係、あるいは加工関係など分野を横断した大きな研究グループがあり、特色のある活動をしてきました。研究が多様化していくなかで、個々の研究が先鋭化する一方で、こうした横断分野を新たに開拓し、他の研究所にはない研究活動を推進しようと、昨年10月より生研イブニング・セミナーがほぼ隔週に開催されています。例えば、「シリコン」というテーマは、単結晶作り、切断、研磨、回路の設計、IC作り、マイクロ・メカトロニクス、などなど生研の多くの研究者が関係しています。こうした新しい関係を掘り起こそうと、研究推進室がテーマを設定し、夕刻6時から4〜5人の教官が15分程度の関連する発表をおこない、皆で議論するという場を作りました。素面では討論の舌の回りも悪かろうというので、ビールを飲みながらという企画です。毎回30名近く、生研の教官の1/3近くが参加し、教授会より参加数が多いのではないかと言われるほどになっています。当初は8時までと考えていたのですが、毎回9時近くまで議論が続いています。これまでのテーマは次の通りです。
第1回 1998年10月14日 快適工学
第2回 1998年10月28日 シリコン
第3回 1998年11月11日 安全
第4回 1998年11月25日 光
第5回 1998年12月9日 スマート工学
第6回 1999年1月13日 広がるマイクロマシンの活用
第7回 1999年2月24日 産学連携活動での産業界との付き合い方
第8回 1999年3月 3日 モデリング
4月からは定期的に毎月第2水曜日に開催することを計画しています。
(研究推進室 浦 環)
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生研の駒場新キャンパスへの移転も現実のものとなり第I期研究棟(C棟写真)に5つの研究室が移動して既に2ヵ月余りが経過しました。新しい環境にも慣れ研究活動も徐々に軌道に乗って来るころかと思われます。3月中には、さらに1部、5部の数研究室が引越しを行う予定で、C棟につきましては今年度中にほぼ7〜8割が移動を完了することになります。
また、同じく第I期工事分として建設が進められておりました国際・産学共同研究センター棟が完成の運びとなり、3月31日の竣工に向けて内装等仕上げの作業が急ピッチで進められているところです。
第TI 期工事分であるB棟につきましては、外壁工事もほぼ終り現在内壁およびサッシ等の建具の取り付けが行われており、今年夏頃の完成に向けて順調に作業が進められています。第 TTT期工事分であるD棟につきましても杭基礎が終了し基礎部分の鉄筋組が順調に進んでいます。さらに、第 IV 期工事分であるE棟とF棟に関しましては、設計細部もほぼ固ま り、3月中旬に予定されている工事発注にむけて研究室を交えての図面の確認等の最終作業を行っているという状況です。
また、研究棟だけでなく付属施設等も次第に充実しつつあります。新たに設置されました設備センターはタイル造りの洒落た建物ですが、将来の電力需要を見越した特別高圧受変電設備の設置が可能になっています。さらに、正門に向かって東側のエリアには生研専用の駐車場の設置も計画されており、車による入構者の便宜を図るとともに、構内の交通事情の改善も期待されます。その一方で、食堂をはじめとした厚生施設の整備には未だ遅れている部分も有り、今後解決すべき課題として残されています。
新キャンパスも設備面で急速に整備されつつあり、研究室の移動がいよいよ本格化しようとしています。今後いろいろな面で皆様方のご協力をいただくことも多いかと思いますが、移転に関する御質問・御要望につきましては「新キャンパス企画室」各部室員にお問い合わせ下さい。より円滑な移転の実施のため、皆様方のより一層のご支援をお願い申し上げます。
第2部 助教授 加藤千幸
平成11年1月1日付けで第2部の助教授として生研に参りました.着任してから早くも1ヶ月半が過ぎ,ようやくこちらのシステムにも慣れてきたところです.専門は熱流体分野であり,特に,コンピュータシミュレーションや風洞実験等を活用し,流れから発生する音の発生メカニズムの解明やその低減,動力エネルギー機器の 性能向上や最適化に関する研究を行う予定です.私はこちらへ来る前は約15年間,(株)日立製作所の機械研究所というところで,やはり流体音の低減や流体機械の性能向上に関する研究に従事しておりました.ここ生研では,これまでの産業界で得た経験や知見を活かして研究を進めたいと考えております.皆様何卒宜しくお願い申 し上げます.
第2部 教授 中川威雄
この慣れ親しんだ生研の建物ともいよいよお別れする時が来たようだ。丁度29年前、助教授として赴任して来た日、以前に一度訪れた自分の居室へたどり着くことが出来ず、外周廊下をぐるぐる廻ってしまったことが懐かしく想い出される。
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生研での研究生活の後半は、理化学研究所を兼務することとなってしまい、生研に居る時間が減ったものの、ほんとに長い間お世話になったと言うのが正直な気持ちである。このところ他大学や公的研究機関を拝見する機会が多かったが、その度に生研の粒揃いの研究陣と活発な研究にはつくづく感心する。こんな素晴らしい研究環境の中で研究生活が送れた我が身の幸運を感謝している。
停年を前にして考えること約1年。どうみても自分は教育には向いていない。理研で管理職の真似事をやらされたものの、もうひとつ満足感がない。雑用に追いまくられている毎日の中で、研究に対し猛烈なハングリ−感を憶えた。自分には研究しか生きていく道はない。
自分で下した結論は研究で飯を食おうというのである。考えてみれば、これは私にとって長い間の夢だった。会社を興し破産の恐怖の中で、必死になって研究を商売にするのも真剣味があって、生き甲斐となるかも知れない。また、生研での産学協同研究の経験が生かせる利点もある。世間で話題となっている大学人によるベンチャ−企業の仲間入りをさせてもらえるよう頑張るつもりである。
第4部 教授 瓜生敏之
内容 私は昭和32年東大教養学部理I に入学して42年間東大で高分子化学研究一筋で来た。大学院時代に始めた高分子の立体規則性を定量する研究分野は、世界的な人気分野になった。留学で学んだ立体規則性多糖の重合という研究分野を、工学部助手、講師、助教授時代(17年間)に興した。工学部時代の教授退官と生物化学者の教授就任に伴い、昭和58年に生研教授へと移った。生理活性高分子特にエイズウイルスの治療薬の合成研究をここ12年行っている。研究室員が行っていた研究は2つ工業化された。特定領域研究の代表者就任、日本化学会賞受賞もあり、16年間生研で素晴らしい研究生活を送ることが出来て、東大と生研に感謝しています。
停年退職された方々
第4部 助手 斎藤秀雄
第4部 助手 張 東植
学生
第5部 目黒研 大学院学生 宇治田 和
受賞日:1999.1
受賞名(団体名):平成10年度土木学会年次講演会優秀講演者((社)土木学会)
受賞項目:被災経験・防災知識に応じた人々の防災危険度意識の分析
第5部 目黒研 大学院学生 ハテム・タグエルディン
受賞日:1999.1
受賞名(団体名):平成10年度土木学会年次講演会優秀講演者((社)土木学会)
受賞項目:応用要素法による構造物の大変形解析
第5部 目黒研 大学院学生 原田 雅也
受賞日:1999.1
受賞名(団体名):平成10年度土木学会年次講演会優秀講演者((社)土木学会)
受賞項目:災害状況を考慮した最適避難誘導法の検討
第5部 目黒研 大学院学生 西川 大介
受賞日:1999.1
受賞名(団体名):平成10年度土木学会年次講演会優秀講演者((社)土木学会)
受賞項目:3次元拡張個別要素法を用いた組積造物の動的破壊解析
第5部 虫明研 大学院学生 小林 広道
受賞日:1999.3
受賞名(団体名):古市賞(東京大学大学院工学系研究科社会基盤工学専攻会議)
受賞項目:GPS大気遅延情報に基づく可降水量の推定と熱帯域への応用
第5部 平本研 大学院学生 高宮 真
受賞日:1998.9
受賞名(団体名):第4回(1998年春季)応用物理学会奨励賞(応用物理学会)
受賞項目:バック界面の制御方法が異なるシングルゲートSOIMOSFETの特性比較
本所も昭和24年5月に東京大学附置研究所として発足以来、本年は創立50周年を迎えることとなった。これを記念するために「50周年記念事業特委員会(委員長:坂内正夫所長、座長:橘秀樹教授)を組織し、以下の事業の計画・準備を進めている
(第5部 橘 秀樹)
日 時: 平成11年6月1日(火)10:OO〜19:00
場 所: 記念シンポジウム・・・ 第1・2会議室
懇談会 ・・・ 物性研第1会議室
プログラム
(1)記念シンポジウム 司会 黒田和男教授
10:00〜10:05 開会の辞・趣旨説明 渡辺国際交流室長
10:05〜10:10 所長挨拶 坂内正夫所長
10:10〜11:00 「未来社会の持続可能性」 安井 至教授(司会:尾張助教授)
11:00〜11:50 「エネルギ−と環境問題」 吉識春夫教授(司会:西尾 教授)
11:50〜13:00 ・・・昼 食・・・
13:00〜13:50 「ゼロエミッション戦略」 鈴木基之教授(司会:迫田助教授)
13:50〜14:40 「エコマテリアルの展開」 山本良一教授(司会:前田 教授)
14:40〜14:55 ・・・休 憩・・・
14:55〜15:45 「地球環境のリモ−トセンシング」 安岡善文教授(司会:柴崎 教授)
15:45〜16:35 「災害軽減の環境づくり」 須藤 研教授(司会:ヘ−ラト 教授)
16:35〜17:25 「居住環境:人体スケ−ルから都市スケ−ルまで」 村上周三教授(司会:加藤助教授)
17:25〜17:30 閉会の辞 黒田教授
(2)懇談会
17:45〜19:00
1.日 時: 平成11年6月3日(木) 15:00〜20:00
2.場 所: @記念講演会・・・第1・2会議室
A記念式典 ・・・・フロラシオン青山「はごろもの間」
B祝賀会 ・・・・フロラシオン青山「ふじの間」
3.プログラム
(1) 記念講演会 15:00〜
(2) 記念式典 17:30〜
(3) 祝賀会 18:15〜
役 職 氏 名 職 名 所属 議 長 坂 内 正 夫 所 長 委 員 ※ 小長井 一男 教 授 第1部 〃 高 木 堅志郎 〃 第1部 〃 ※ 都 井 裕 〃 第2部 〃 谷 泰 弘 〃 第2部 〃 ※ 池 内 克 史 〃 第3部 〃 石 井 勝 〃 第3部 〃 ※ 前 田 正 史 〃 第4部 〃 荒 木 孝 二 〃 第4部 〃 ※ 須 藤 研 〃 第5部 〃 藤 井 明 〃 第5部
開催日:講師と演題
5/7 教 授 浦 環 「海中を動く機械」
5/14 助教授 須田義大 「次世代の鉄道車両と走行メカニズム」
5/21 教 授 藤田隆史 「免震・制振・スマート構造」
5/28 講 師 鈴木高宏 「非ホロノミックロボット」
6/11 助教授 川勝英樹 「ナノメートルオーダの振り子で原子を測る」
6/18 助教授 柳本 潤 「環境負荷低減と金属材料加工技術開発との関わり」
6/25 教 授 横井秀俊 「プラスチックの流れを視る」
7/ 2 教 授 西尾茂文 「熱制御とエネルギーそしてサステナビリティ」
7/ 9 助教授 谷口伸行 「流れの数値シミュレーション」
●時間:午後6時から7時30分
●場所:生産技術研究所第1会議室(正面玄関真上、3階)
●参加費:無料、なお事前の参加申し込みは必要ありません。
●協力:(財)生産技術研究奨励会
第1日 6月3日(木) 10:00〜17:00
第2日 6月4日(金) 10:00〜16:00
(両日とも終了時間の1時間前までにご来場下さい。)
第5部 村井 俊治
海外旅行に行って驚くのは,欧米諸国家の付加価値税率(Value-Added TAX, フランス語では TVA: Taxe sur la Valeur Ajoutee )が軒並高いことです(イギリス16%, フランス 20% など). ところで私は VAT のことをずっと消費税だと思っていたのですが,昨年フランス留学中に,この二つは似て非なるものだと知らされた一件がありましたので御紹介します.
6月のある日,某社さんから Fedex で,著作本の別刷を寮に送っていただきました.著者献本だから無償で,何も問題ないと気にとめてなかったのですが,Fedex パリ支局から,関税を払わないと本を受けとれないという電話がかかってきました.良く聞いたところ,3%の関税に,本体価値に対する20%の付加価値税,それに運送代に20%の付加価値税で,しめて1万7千円.日本に送り返したとしたら運送料は3万5千円.でなければ本を廃棄するしかない,ということでした.本が捨てられるのを見るにしのびなかったのでしぶしぶ税金を納めました.
どうしても納得が行かなかったので,Lille 市税務署に乗り込んで「この本は著者献本で無償なので税金を払うのは納得いかない」とねばったのですが,結局,金銭の授受があったかどうかが問題なのではなくて,価値があるものが移動すれば課税する.ただし大体2千フランまではこれに問われない,とのことでした.消費税だったら,「国内の事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡」(つまり物を売った場合)以外は基本的に課税されない(*)ところですが,価値があるものを動かすだけけで課税されるとは知りませんでした.所かわれば品かわる,といったところでしょうか.
(*)消費税のあらまし,麻布税務署でいただきました.
第3部 藤田研究室 三田吉郎
第1部 岡野研究室
兵庫県の西播磨に近年完成した新しいシンクロトロン放射光施設を利用する機会を昨年の5月に得て,数年前から試みていた放射光励起による内部転換電子放射の測定に糸口を得ることができた.「内部転換電子放射」とは,励起状態にある原子核が基底状態に戻るときに放出されるエネルギーを原子核の周りを回っている軌道電子が受け取って外に飛び出すプロセスであり,現象自体は,今世紀の前半から知られている.1950年代に提案され,固体内の個々の原子が感じる磁場や電界勾配を高分解能に測定する手法として大きく発展を遂げた「メスバウアー分光法」とは親戚関係にある.通常のメスバウアー分光や内部転換電子放射の測定では,放射性同位体から放射される単色ガンマ線を励起源に用いるが,シンクロトロン放射光源によっても十分な輝度が達成されれば,原子核の励起を測定可能な頻度で生じさせることが可能である.ここ10年の間に,シンクロトロン放射光による核共鳴散乱実験が盛んに行われるようになったが,内部転換電子の測定はより計測が困難であり,第三世代光源と言われる高輝度放射光施設での実験が待たれていた.
当研究グループは,東大工学部と高エネルギー物理学研究所放射光施設の核共鳴X線散乱研究グループと協力し,1993年頃から内部転換電子の測定を試みてきた.当初はかなり楽観的であったが,マシンタイムの制約と微弱な電子放射を雑音から弁別して測定する困難とから期待した信号はなかなか得られなかった.実験装置に関する工夫と試行錯誤を積み重ねた結果,Spring-8の完成による放射光強度の増大に助けられ,信号を検出することができるまでになったのが図の実験装置である.測定装置の心臓部は,研究室の河内技術官が,本所試作工場の支援を得て完成した「平面四重極電子分光器」である.鉄同位体の核共鳴エネルギーに回折結晶によりエネルギー選別された放射光パルスは,試料表面に入射し,放射された内部転換電子は平面四重極電子分光器により90°曲げられて電子検出器に入射する.放射光パルスの照射により大量の光電子が発生するが,原子核の励起状態の緩和時間が数十ナノ秒程度の長さであることを利用して,照射直後のパルスを電子回路的に除外することにより内部転換電子を選別することができる.電子分光器によるエネルギー選別と併せて,毎秒0.5個程度の内部転換電子放射を高い雑音排除効率で計測することに成功している.挿入図は,鉄同位体を試料として得られた内部転換電子放射の時間スペクトルである.これにより,緩和時定数が孤立原子についての値と同一であることが初めて実証できた.放射光を利用した内部転換電子放射の測定は,利用できる原子種の多様性,表面敏感性,格子振動を介在した非弾性励起過程の可能性など多くの利点があり,基礎と応用の両面から研究をさらに進めていくつもりである
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図.内部転換電子放射測定装置と鉄同位体試料により得られた内部転換電子放射の時間スペクト
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第2部林先生の長期海外出張を期にピンチヒッターとして昨年9月より生研ニュース部会に参加しています。ニュースを発行するにあたり締め切りがきちんと設定されているせいか、メンバーの方々はとてもてきぱきとしてしていて、とても勉強になります
B この号がでる頃には新学期が始まり、新入生や新任の方々で生研キャンパスは活気にあふれていることでしょう。生研は今年50周年を迎えることとなり、今後の発展に向けて、第一歩がスタート。これからも生研ニュースを通して最新のホットな情報をお伝えできるように、益々充実させていきたいと思います。また、「Break」や「Promenade」と気軽に参加できるコーナーがありますので、学生、留学生や職員の皆様、是非投稿してください
(大島 まり)