ゼロエミッション社会の実現に向けて
ゼロエミッションという言葉が最近ではマスコミ等でも時々使われているのではないでしょうか。ゼロエミッションとは、ある生産プロセスでの無用の排出物を別の生産プロセスの原材料として循環利用すれば、いわゆる「廃棄物ゼロ」が実現できると国連大学が5年前に提唱した産業システムの理念・哲学で、21世紀において持続可能な発展を続けるためには必要不可欠であることには疑問を挟む余地はないように思われます。しかしながら、農業等を産業基盤とする発展途上国とは異なり、我国のように工業国としての産業構造が既に出来上がっている場合には、ゼロエミッション社会の実現は容易ではありません。このために、大学や企業の様々な専門分野の研究者が多くの手法や技術を開発しています。本所でも工学研究の立場から、各種産業から排出されている未利用物質の量を炭素や窒素といった物質レベルで把握する手法、さらに蒸煮爆砕処理や高温高圧水処理によって特に農林系未利用素材を糖や有機酸といった工業原料に変換する技術を開発しています。

第4部 迫田研究室