平成30年度顕彰

 審査ならびに選考結果

 平成30年度顕彰は、平成27年度から平成29年度の特定研究奨励助成ならびに平成28年度および平成29年度の三好研究
助成の7名を候補者とし、各候補者が提出した報告書をもとに、平成30年8月23日開催の審査会での厳正なる審査の上、
次の1名が選考され、平成30年9月10日の理事会において、決定されました。

松永行子氏(東京大学生産技術研究所准教授)
 『がん微小環境を再現した臓器チップの開発

〔選考理由要旨〕
 松永行子氏は、マイクロ流体デバイス技術とハイドロゲル等の材料技術を融合して、三次元微小血管モデルの構築を手がけている。
ヒト血管内皮細胞を用いたモデルを実現することにより、がん微小環境を再現する実験系を作成し、実際に市販の抗血管新生薬を評価
することに成功している。本研究では、東京大学生産技術研究所がフランス・リール市に設置しているSMMiL-Eにおけるフランス側研究者
との共同研究ならびに企業との共同研究を通して、血管新生挙動の定量的な評価手法ならびに新たなイメージング手法の開発などへと
研究を展開しており、創薬基盤技術分野への貢献が大きい。これらの成果は、少なくとも3編の原著論文ならびに4件の新聞報道として
取り上げられており、国内外においても高く評価されている。また、同氏は自身の研究室のスタッフ並びに大学院生のみならず、他研究室の
助教2名からなるチームを構成して、SMMiL-Eにおける共同研究を行い、がん幹細胞によるがん転移挙動の解析や血中循環腫瘍細胞の
分離及び特性評価手法等、マイクロ流体デバイスおよびMEMS技術のがん診断・治療への応用研究をカバーする大変充実した国際的な
連携研究を牽引してきている。以上のように、同氏が本助成を活用し、フランスの研究機関との共同研究等を通して上げた成果は、マイクロ
流体デバイス技術ならびにがん診断・治療に資するバイオエンジニアリング分野に大きく貢献するものとして高く評価できる。また、このマイクロ
流体デバイス技術は、次世代の創薬基盤技術として多岐にわたる応用が可能であり、生産技術の発展に寄与するところが大きいと認められる。
よって同氏の成果をここに顕彰する。


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