平成28年度顕彰

 顕彰審査ならびに選考結果

 平成28年度顕彰は、平成25年度から27年度の特定研究奨励助成ならびに平成27年度の三好研究助成の5名を候補者とし、各候補者が
提出した報告書をもとに、平成28年8月24日開催の審査会での厳正なる審査の上、次の1名が選考され、平成28年9月14日の理事会において、
決定されました。

野村政宏氏(東京大学生産技術研究所准教授)
 『
ナノ構造化による高効率熱電変換デバイスの実現

〔選考理由要旨〕
 野村政宏氏は、スマート社会と呼ばれている、様々な物がインターネットにつながることで、より便利で効率的な社会の構築に貢献する
環境発電デバイスの実現を目指した研究を行っています。具体的には、低環境負荷なシリコンにナノ加工を施すことで熱電変換性能を
飛躍的に向上させ、温度差のあるところに置くだけで半永久的にエネルギーを生み出すことが可能な熱電デバイスを作製しています。
フォノニック結晶と呼ばれる人工周期構造をシリコン薄膜に形成することで、熱伝導を担うフォノンの輸送を制御し、シリコンの熱電性能を
飛躍的に向上させました。同氏は、高性能化の鍵を握るナノスケール熱伝導の物理的理解に基づき、フォノンの輸送を効率的に制御する
マルチスケール構造を提案し、その効果を実証しました。この研究により、ナノ加工による熱電変換材料の高性能化研究が進展して材料の
選択肢を広げており、本分野に対して大きく貢献しました。

デバイス化に重要なマイクロテクノロジーの習得と実用性能の実現を目的として、同氏は本会の平成25年度「特定研究奨励助成」を受け、
ドイツ・フライブルク大学に平成25年12月1日〜平成27年6月10日まで約1年7ヵ月滞在しました。訪問先では、多結晶シリコン薄膜の形成を
行った後、東大生研に輸送してナノ加工を施し、ドイツに返送して電気特性および熱電変換特性の計測を行いました。新規に提案したマルチ
スケール構造を最適設計すると、多結晶シリコン薄膜の性能を3倍以上向上させ、実用性能に到達可能なことを示しました。ナノスケール物理の
知見および性能向上に成功した一連の研究により、8篇の学術論文発表、5件の国際会議招待講演などを行っています。また、この日独共同
研究は日経産業新聞でも報道されました。

以上のように、同氏が本助成によるドイツでの研究滞在中に上げた成果は、伝熱工学およびエネルギー・環境分野に大きく貢献するものと高く
評価できます。また、このエネルギーハーベスティング技術は、スマート社会において多岐にわたる応用が可能なため、生産技術の発展に寄与
するところが大きく、よって同氏の成果をここに顕彰するものであります。


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