平成26年度顕彰

 顕彰審査ならびに選考結果

 平成26年度顕彰は、平成24年度から25年度の特定研究奨励助成ならび三好研究助成の10名を候補者とし、各候補者が提出した報告書を
もとに、平成26年8月19日開催の審査会での厳正なる審査の上、次の1名が選考され、平成26年9月12日の理事会において、決定されました。

岡部洋二氏(東京大学生産技術研究所准教授)
 『幾何学に基づいた特殊変形機能を有するスマート構造材料の構築

〔選考理由要旨〕
 岡部洋二氏は、海外における長期の研究・調査に必要な経費等の支援を行う本財団の平成23年度三好研究助成を受け、英国ブリストル大学に
2012年9月26日〜2013年9月17日まで約1年間滞在した。そして、主体的にアイディアを出し、所在の最新機器を自ら駆使するなどして、アクチュエ
ータを組み込んだ新しいスマート構造材料および超音波伝播特性に基づく構造ヘルスモニタリングに関する共同研究を積極的に推進した。アクチュ
エータ組み込み型スマート構造材料については、形状記憶合金リボンとPEEKフィルムとを組み合わせた制振処理材の開発を考え、そのための基礎
データとして温度変化に対する粘弾性特性の計測を試み、今後さらに詳細な検討を進めるためには試験片や試験条件を改良する必要があることを
明らかにした。また、その検討過程において、有限要素解析やDMA(Dynamic Mechanical Analysis)試験、さらにはCFRP積層板の成型方法等、同氏
の主要な研究テーマの一つである構造ヘルスモニタリングの研究に活用可能な知見を得た。 一方、超音波を利用する構造ヘルスモニタリング
(SHM: Structural Health Monitoring)については、非接触で駆動可能なPZT素子をCFRP積層板に貼り付け、超音波伝播特性を測定することにより、
積層板内部の損傷を調べることを試みた。実際にCFRP積層板の製作から衝撃損傷付与試験、超音波伝播特性の測定、理論解析等一連の作業を
自ら行い、損傷発生の位置と程度を推定することに成功した。本実験に成功したことにより、これまでSHMにおいて有効に活用できないであろうと
考えられてきたCFRP積層板からのラム波の反射が衝撃損傷検知において有効であることを明らかにした。以上のように同氏が1年間の英国滞在中に
得た成果は、スマート構造材料や構造ヘルスモニタリング技術の高度化に大きく貢献するものであり、宇宙構造物や観測衛星、小型軽量飛行体等、
その応用範囲の飛躍的な拡大に資するのみならず、広くの生産技術の発展に寄与するところが大きい。よって同氏の成果をここに顕彰するものである。


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