平成21年度顕彰

 顕彰審査ならびに選考結果

平成21年度顕彰は、前年度(平成20年度)の海外派遣助成対象者4名を候補者とし、各候補者が提出した報告書をもとに、
平成21年8月11日開催の審査会での厳正なる審査の上、次の1名が選考されました。

巻俊宏氏(東京大学生産技術研究所助教)
 『自律型水中ロボットによる海底環境の観測手法の研究及び関連技術の最新動向調

〔選考理由要旨〕
東京大学の巻俊宏氏は本財団の三好研究助成を受け、平成20年10月1日から同年12月31日に掛け、米国マサチューセッツ州
にあるウッズホール海洋研究所(Woods Hole Oceanographic Institution: WHOI)に滞在し、水中画像モザイキング研究におけ
る世界的な第一人者であるHanumant Singh博士の下で当該研究を行うとともに、自律型海中ロボット関連の研究教育動向の
調査を行いました。

 画像モザイキングとは多数の写真を繋ぎ合わせて一枚の大きな写真を得る技術であり、航空写真等の分野で広く使われて
おります。水中において、ある程度広範囲の視覚的イメージを得る上で、このモザイキング手法は有効でありますが、水中では
撮影距離が短いことや光の屈折影響が大きいことなど、従来の方法をそのまま適用することが難しい。同氏は鹿児島湾におい
て自律型水中ロボット(AUV)を用いて取得した画像に対して、Singh博士が開発した水中画像モザイキング手法を適用しましたが、
画像マッチングに課題があること、特に視覚的特徴に乏しい海底面の画像マッチングに困難が伴うこと、精度の検証が十分でない
ことが明らかになりました。これに対して、同氏は画像同士のマッチング操作にAUVの測位情報を拘束条件と課すことによって
最適化する手法を導入することを提案し、その結果、誤差がAUV移動距離の3%以下となるような高精度かつロバストなモザイ
キングの実現に成功いたしました。

 また、同氏は今回の滞在において、WHOIにおいて開発が進められている海底観測用AUVに関する技術の調査を行うとともに、
MIT/WHOI Joint Programにおける博士論文口頭審査に参加するなど、AUVに関連する研究及び教育の動向に触れる機会を
得ております。

 このように、同氏が三好研究助成によって行った調査研究は、自律型水中ロボットによる海底観測手法の、より一層の発展に
益するところが大きい。よって同氏の成果をここに顕彰するものであります。

 


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