2023年度顕彰

沖 一雄氏(東京大学生産技術研究所特任教授)
 『ピーカンナッツによる我が国の農業再生及び地方創生

〔選考理由要旨〕
 沖一雄氏は、生産技術研究所の新たに開拓する分野として、食料・農業分野に着目し、生産技術研究所の
培ってきた研究・技術開発の蓄積を食料・農業分野での技術革新に活用し、世界に伍して渡り合える日本農業の
新たな食糧生産モデルの創生を目指す研究グループを組織した。2018年度から2021年度まで特定研究奨励
助成を受けて行われた研究では、農業生産物として高収益型農産物であるピーカンナッツに着目し、最先端の
工学技術を実際のピーカンナッツ生産現場において適用し、多くの有意義な成果を挙げている。

 研究組織は、生産技術研究所内の研究グループを核とし、ピーカンナッツ農場での調査研究を以前より進めて
いる米国ニューメキシコ大学や東京大学農学生命科学研究科などとの共同研究により、我が国でのピーカンナッツ
栽培に直ちに適用できるような工学技術の展開と検証を実現した。ピーカンナッツの栽培の様々な局面で必要と
されるリモートセンシング技術、多次元ビジュアル化技術、四足歩行ロボット技術、水循環モデル構築などのテーマに
所内研究グループが目標達成に向けて協調かつ自発的に取り組んで大きな成果を挙げたことは生産技術研究所の
伝統とも言える個別研究グループを越えた研究協力の成果として大きな価値がある。また、農学生命科学研究科との
共同研究では、ピーカンナッツの遺伝子解析や国内での育種場候補地の検討など、我が国でのピーカンナッツ生産に
向けての基盤整備も着実に進展した。

 本研究プロジェクトの大きな目的として「生産者がインセンティブをもって食料生産に参加できる環境を作り、我が国の
一次産業としての農業競争力を確保することと、高い農業生産性によって地域を含めた社会全体の活性化と国内の
適切な雇用創出を図ること」が掲げられている。我が国の大きな課題の解決に向けて内容のある研究活動を展開し、
今後の更なる展開を期待させる段階に達したことは高く評価されるものであり、研究を総括し推進に当たった
沖一雄特任教授を顕彰するものである。

 なお、本顕彰の対象である特定研究奨励助成は、沖一雄特任教授と巻俊宏准教授の2名が共同代表者として
プロジェクトを運営し、研究成果を得たものである。共同代表者2名が顕彰の対象となるべきであるが、巻准教授に
ついては、既に平成21年度に顕彰されているため、今回の顕彰は沖一雄特任教授のみに授与することとなった。


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