平成20年度顕彰

 顕彰審査ならびに選考結果

平成20年度顕彰は、前年度(平成19年度)の研究奨励助成対象者12グループならびに海外派遣助成対象者5名を候補者とし、
各候補者が提出した報告書をもとに、平成20年8月18日開催の審査会での厳正なる審査の上、次の2名が選考されました。


沖大幹氏(東京大学生産技術研究所教授)
 『東大水フォーラム』

横井喜充氏(東京大学生産技術研究所助教)
 『乱流理論に基づく太陽風乱流モデルの研究〜太陽風乱流の空間発展を予測するモデルの開発〜』

〔選考理由要旨〕
東京大学の沖大幹氏が代表をされている「東大水フォーラム」につきましては、世にさきがけた研究を実践するとともに、その
研究活動の環を拡げていくことに多くの実績を挙げてきた東京大学生産技術研究所の組織のDNAを引き継いでいるような組
織体でありまして、代表者の沖氏は、世界にさきがけて、地球規模での水循環・水利用に関する研究を創始したひとりであり、
IPCC第4次報告書の執筆者の一人として招かれ、各国研究者と協力し、同報告書のとりまとめを行いました。東大水フォーラ
ムは、沖氏のこのような成果・知見を核の一つにしつつ東京大学学内の水に関わる研究に取り組んでいる研究者が連携する、
自主的なネットワーク組織であり、課題分析にとどまらず課題解決を指向し活動しています。沖氏は、この東大水フォーラムの
リーダーとして、その組織の立ち上げ、運営においてリーダーシップをふるっておられます。その活動が実って、同フォーラムは
学界及び社会の注目を集めることになり、水問題解決のためのCOEを形成しつつあります。その証左として、本年4月には、同
フォーラムが母体となって、サントリー株式会社より総括寄付講座「水の知」が東京大学に開設され、活動しています。このような、
組織的活動の立ち上げ及び社会的インパクトに鑑み、本会の助成により達成した多大な成果を評価いたしました。

東京大学の横井喜充氏の「乱流理論に基づく太陽風乱流モデルの研究〜太陽風乱流の空間発展を予測するモデルの開発〜」
につきましては、
平成20年2月27日から同年3月30日に掛け、米国メリーランド州にあるNASA Goddard Space Fight Center
(GSFC)などに滞在し、同センターの太陽風研究の第一人者等と活発な意見交換をするとともに、横井氏が提案した、太陽風の
挙動を予測する新しい乱流モデルに関して、3回の招待講演を行いました。前記のNASA GSFCの研究者も氏の提案するモデルを
実際の計算に取り込むことを検討するなど、横井氏の提案したモデルは米国の太陽風研究者の間でも極めて高く評価されました。
また、横井氏は本滞在で得られた成果を基に、英文学術雑誌に論文投稿をいたしました。太陽風は磁場を伴って太陽から放射状に
吹き出す、毎秒数百kmにも達する高速のプラズマ流です。プラズマのような高エネルギー荷電粒子の照射は人工衛星などに搭載
されている電子機器に重大な影響を及ぼすため、太陽風の挙動の解明やその予測モデルの開発は学術的のみならず、工学的にも
大きな意味を持ちますが、その挙動には未解明なところが多く、予測を難しいものとしています。今回、横井氏が提案した新たな予測
モデルは上記の課題の解決に対して多大な貢献をすることが予想されております。このように、純粋な乱流の理論研究の成果を工学
的にも応用できる形で発展させることを奨励することは、正に本財団の使命であると考え、本会の助成により達成した多大な成果を
評価いたしました。


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