2. 研究部・センターの各研究室における研究

基礎系部門

放射光励起による内部転換電子放射の研究
教授 岡野 達雄[代表者],技術官 河内泰三,助手(高エネルギー加速器研究機構) 張 小威,研究員(高輝度光科学研究所) 依田芳卓, 助教授 福谷 克之, 助手 松本 益明, 助教授 小田 克郎, 大学院学生 杉江薫
SPring-8およびKEK-ARにおいて,放射光により励起される原子核の緩和過程を,核共鳴X線散乱と内部転換電子放射により研究している.57FeをSi(111)表面上に数原子層積層した試料において,内部転換電子の時間スペクトルに,核共鳴X線散乱のは異なる振動構造を見出した.また,放射光実験試料と同じ成膜条件で作成した鉄ナノ構造のSTM観察とアイソトープ線源を用いた内部転換電子メスバウア分光法測定を行った.

超伝導体からの電界電子放射に関する研究
教授 岡野 達雄[代表者],岡野研 大学院学生 吉野 学, 助手 松本 益明,技術官 河内泰三
超伝導電界放射陰極からの電子放射に関する研究を継続している.放射電子の時間相関分析を目標にして,超高真空装置内で使用しうるヘリウム冷却システムやコインシデンス検出システムの開発を進めた.Nb電界放射陰極を作成し,電界放射像を確認した.

水素ビーム源に関する研究
教授 岡野 達雄[代表者],岡野研 大学院学生 二木かおり, 助教授 福谷 克之, 助手 松本 益明, 大学院学生 中井康太
前年に引き続き,低温吸着・脱離を利用したオルソ水素源の開発を進めた.機械式冷凍機を利用し,吸着・脱離プロセスを繰り返し行うことのできる純化装置を開発し,吸着分離セルの温度を15−40Kの範囲で変化させ,水素ガスのオルソパラ比の測定を行った.また原子状水素発生装置の開発を行った.水素吸蔵過程の研究を共鳴核反応法によって行うための試料ホルダーを開発した.炭素ナノチューブへの水素吸着実験を行った.

マイクロ空間の真空計測に関する研究
教授 岡野 達雄[代表者], 助教授 福谷 克之, 助手 松本 益明
ナノテクノロジーに付随する微小空間の気体分子密度と速度分布の計測に関する研究を開始した.本年度は,数百ミクロンの間隙内の圧力測定をレーザー分光法によって行うための準備として,共鳴スペクトルのドップラー幅と壁面の温度分布の関係を明らかにした.

擬似位相整合と群速度整合の両立によるフェムト秒波長変換
教授 黒田 和男[代表者], 教授 志村 努, 助手 芦原 聡, 技術職員 小野 英信, 大学院学生 藤岡 伸秀, 大学院学生 太田 隆之
フェムト秒レーザーが成熟し,超短光パルスの分光・加工・通信分野での有用性が明らかになるにつれ,その波長変換技術の重要性が高まっている.われわれは,人工的な周期構造を有する非線形光学結晶を利用したフェムト秒光パルスの波長変換技術を開発している.特に,群速度不整合という本質的な問題を解決する方法として,非平行型第2高調波発生法を考案し,その有効性を理論・実験両面から明らかにした.この独自の手法のさらなる応用展開を検討している.

2次非線形光学効果を用いた超短光パルスの時空間制御
教授 黒田 和男[代表者], 教授 志村 努, 助手 芦原 聡, 博士研究員(日本学術振興会) 曾 祥龍, 大学院学生 藤岡 伸秀, 大学院学生 太田 隆之
超短光パルスは高速分光から光通信,光加工まで幅広いニーズがあり,その波長・パルス波形・空間プロファイルの制御技術の重要性は疑う余地が無い.われわれは2次非線形光学媒質中で起こる特異な非線形現象(ソリトン効果や変調不安定性)を利用した,超短光パルスの時空間波形制御を行っている.これまでに,擬似位相整合素子中のソリトン効果を利用して,近赤外域で約35フェムト秒へのパルス圧縮に成功している.さらに,擬似位相整合の最適設計による時空間ソリトンの生成やソリトン生成効率の向上などを目指している.

中赤外超短光パルスの発生と波形制御
教授 黒田 和男[代表者], 教授 志村 努, 助手 芦原 聡, 大学院学生 加久 大地
中赤外波長域(2〜10ミクロン)は分子の指紋領域といわれ,種々の分子振動モードが集まっている.われわれは特に,分子振動や化学反応の高速分光からその量子制御への応用を目的として,中赤外域超短光パルスの発生を行っている.チタン・サファイアレーザーの再生増幅パルスをポンプ光とし,周期分極反転ニオブ酸リチウム素子を波長変換素子とした光パラメトリック増幅法を用いている.すでに中心波長3.5ミクロン,スペクトル幅0.7ミクロン,パルス幅66フェムト秒の超広帯域コヒーレント中赤外光の発生に成功しており,さらなる短パルス化と高エネルギー化,および波形制御を目指している.

強誘電体分極反転素子の開発
教授 黒田 和男[代表者], 教授 志村 努, 助手 芦原 聡, 技術専門職員 千原 正男, 技術職員 小野 英信, 大学院学生 藤岡 伸秀, 大学院学生 加久 大地
高調波発生や光パラメトリック増幅などの波長変換技術とパルス圧縮を組み合わせた新しい超短光パルス波長変換法を開発している.そのキーデバイスは,大きな非線形感受率と設計自由度をあわせもつ,強誘電体分極反転素子である.われわれはこのようなデバイスの設計および作製を行っている.ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムの単結晶から,電子線リソグラフィー技術および電界印加法により3〜20ミクロンの微細分極反転構造を有する素子を作製している.

窒化物半導体ナノ構造を用いた光デバイスの研究
教授 黒田 和男[代表者], 教授 荒川 泰彦, 教授 志村 努, 助手 芦原 聡, 大学院学生 野村 政宏
InGaN/GaNダブルへテロ構造内には強いピエゾ電場が存在し, 光励起キャリアによる電場の遮蔽を利用して吸収の光制御が可能である.我々はこの光誘起吸収効果を利用して紫色領域で動作する光アドレス型二次元光デバイスの開発を目指して研究を行っている.今年度はこの構造を用いて透過率の光制御を行い, 1 W/cm2のCW制御光で20%を超える透過光強度変化と遮断周波数30 kHzを得た.また, Heイオン照射を行い応答速度と空間分解能の向上に成功した.

電圧印加型InGaN多重量子井戸素子の光変調特性
教授 黒田 和男[代表者], 教授 荒川 泰彦, 教授 志村 努, 助手 芦原 聡, 助手 藤村 隆史, 大学院学生 野村 政宏, 大学院学生 為村 成亨
本研究は,大容量光記録デバイスの記録波長である405nmの青色半導体レーザーに感度のあるInGaN多重量子井戸光変調素子の作製を目的とする.井戸層に対して垂直に電場を印加するために絶縁性であるサファイア基板をレーザーリフトオフ法により剥離し測定を行った.これまでに,外部電場を印加することで光変調特性が向上することを明らかにし,光誘起による透過光の制御に成功した.また,フェムト秒パルスレーザーを用いたポンプ・プローブ分光により,外部電場を印加し内部電場を大きくすることで,井戸内でのキャリア緩和が早くなることを明らかにした.

半絶縁性窒化物半導体のフォトリフラクティブ効果
教授 黒田 和男[代表者], 教授 荒川 泰彦, 教授 志村 努, 助手 芦原 聡, 助手 藤村 隆史, 大学院学生 野村 政宏, 大学院学生 北崎 総一郎
半導体はフォトリフラクティブ材料の中でも高速な応答を示す材料である.われわれは青紫色領域で動作する高速なフォトリフラクティブ素子の実現を目指し,窒化ガリウム半導体(GaN)を用いて研究を行っている.今年度は,ヘリウムイオンを注入した半絶縁性鉄ドープGaNにおいて,紫外領域において2光波混合実験を行い,電界吸収効果によるフォトリフラクティブ効果を初めて観測した.

社会基盤施設の地震断層に対する防災性向上の研究(継続)
教授 小長井 一男[代表者], 教授 古関 潤一, 教授 目黒 公郎,教授 (東大地震研究所) 堀宗朗,ヨハンソン ヨルゲン
1999年トルココジャエリ地震や台湾集集地震は地震断層の変位が社会基盤施設に甚大な被害を与えたものとして特筆すべき地震であった.一方わが国は,大幅な都市域が断層に対する明確な規制を伴わないまま発展している.地震断層に対処するための工学的,行政的な対応について,土木学会,地盤工学会に関連委員会を組織し研究を進めている.

フィルダムの耐震性に関する研究(継続)
教授 小長井 一男[代表者], 研究員(筑波大学・助教授) 松島 亘志
粒径の大きな岩石を積み上げたフィルダム斜面の動的安定性をLATによる可視化模型実験やDEMによる数値シミュレーションで検討している. 斜面がその安定の限界に達するまでに必要とされるエネルギーについての研究を中心に進めている.

軟弱地盤中のトンネルの地震時挙動に関する研究
教授 小長井 一男[代表者], 小長井研・技官 片桐 俊彦, 修士2年 福永 勇介
軟弱地盤中に建設されているトンネルについて, 地震観測によって地震時の加速度応答, トンネル覆工のひずみを調べている. 本年度は土丹層(広尾)と東京礫層(新木場)の記録を比較し,基盤入力に与える表層地盤の影響を確認した.

アースダムの地震時における動的性状に関する研究(継続)
教授 小長井 一男[代表者],小長井研 技官 片桐俊彦,小長井研 大学院学生 福永勇介
実在のアースダム(山王海ダム)で地震観測を継続している. これまでにこのダムで様々な記録が得られたが, 現在このダムの上にさらに積み上げる形で新しいロックフィルダムが建設されたため, 上流側斜面の旧堤体と新堤体の境界部に新たに埋設型の地震計を設置し,ISDNによる遠隔管理システムで観測を継続している.本年度は7月に発生した宮城県沖地震の記録が収録され旧ダムと新ダムの複合構造の震動モードを確認できた.

地震地すべりの調査と地盤大変形の解析(継続)
教授 小長井 一男[代表者],助手 Jorgen JOHANSSON, 博士2年 沼田 宗純
火山屑砕物の堆積した斜面の崩壊は,その流下距離の大きいことで知られ,極めて悲惨な災害に繋がる.2001年1月13日に発生したエルサルバドル地震では,この地震の被害者の半分以上がLas Colinas一箇所の地すべりによるものである.この被害の実態を現地で調査するとともに,詳細な解析を新たな大変形解析手法(LPFDM)で実施している.今年度は間隙水圧の影響を取り込み,地すべり土塊の液状化過程を表現した.また7月の宮城県沖地震で発生した築館地滑りの崩壊機構を調査した.

歴史地震痕跡の工学的評価手法の開発
教授 小長井 一男[代表者], 客員教授 寒川 旭,小長井研 大学院学生 伊藤寛倫,ヨハンソン ヨルゲン
遺跡で発見される地震の痕跡を用いて,地震の発生時期(時には時刻)や当時の人々への影響などを考えるという寒川によって始められた研究手法は「地震考古学」と呼ばれている.地震痕跡として頻繁に見つかるものには(a)液状化痕跡,(b)地すべり痕跡,(c)地震断層痕跡がある.これらの工学的パラメータの計測,解析手法を開発し,年間数千ヶ所に及ぶ遺跡の発掘が行われているわが国で,(1)地震の発生時期,に加えて (2)地震動の強さの広域分布を客観的な指標を持って示すこと,を目的に調査・研究を進めている.今年度は慶長伏見地震で発生したと見られる今城塚古墳の地すべりを調査し,その地震動の規模を工学的手法で推定した.

2004年10月23日中越地震被害のデータアーカイブス構築
教授 小長井 一男
中越地震は (1) 相次ぐ強い余震があったこと,(2) 地震前に複数の台風の襲来があったこと,(3) 地震後の長雨,積雪,融雪期にわたり,伏在する損傷や課題が顕在化し,その影響が長期にわたること,というこれまで顧みられることのなかった活褶曲地域の地震の課題をつきつけている.これらの地震被害の精密なデータアーカイブスを横断的に整備し,同じような活褶曲地帯での防災対策への活用を図り,併せて可能な対策についての提案を行う.

リラクサー系強誘電結晶のフォトリフラクティブ効果
教授 志村 努[代表者], 教授 黒田 和男, 助教授 小田 克郎, 助手 藤村 隆史, 技術専門員 千原正男, 技術専門職員 小野英信, 技術専門職員 片倉智, 大学院学生 藤澤俊幸, 大学院学生 藤田勇人
リラクサー系強誘電結晶Pb(Zn1/3Nb2/3)O3-PbTiO3の持つ巨大な圧電性を利用することにより,これまでに無い大きな屈折率変化を示すフォトリフラクティブ(PR)材料を実現すべく研究を行っている.今年度は不純物を積極的に添加することによる感度波長域の広域化を行った.Rhを添加した試料において幅広い波長域で大きなPR効果が観測され,波長488nmにおいて二光波混合ゲインの最大値21cm-1,波長633nmでは 8.3cm-1が得られた.またこの試料において大きなフォトボルタイック効果が観測された.

材料設計によるフォトリフラクティブポリマーの高機能化
教授 志村 努[代表者], 教授 黒田 和男, 教授 荒木 孝二, 助手 芦原 聡, 助手 藤村 隆史, 助手 務台 俊樹, 技術専門員 千原正男, 技術専門職員 小野英信, 大学院学生(志村研) 丁景福
われわれは,大きな屈折率変化,速い応答速度(msあるいはサブms),材料の安定性(寿命)のすべてを同時に満足する高性能フォトリフラクティブポリマー材料の開発を目指して研究してきた.非線形分子DMNPAAにアルキル基を導入して非線形分子を改良し,系の融点を下げることにより微結晶化を抑制した.非線形分子m3p2,6を合成し,フォトリフラクティブポリマー (PVK:m3p2,6:BisCzPro:TNF)を作製して,材料の安定性及びフォトリフラクティブ特性を評価した.室温で安定性を調べた結果,これまでの試料では一週間以内に微結晶化が起こったが,改良した非線形分子m3p2,6を含む試料は2ヶ月以上微結晶化は起こらなかった.また,フォトリフラクティブ応答速度33ms, 回折効率49%(@E=100V/m, I=942mW/cm2)という非常に高い性能を示した.

フォトリフラクティブ効果を用いた不揮発性ホログラフィック光メモリの研究
教授 志村 努[代表者], 教授 黒田 和男, 助手 藤村 隆史, 技術専門員 千原正男, 技術専門職員 小野英信
フォトリフラクティブ効果を用いたホログラフィック光メモリには読み出し時に記録した情報が消えていくという大きな問題点がある.本研究では,ダブルドープ2波長記録方法を用いた高感度不揮発記録材料の開発を行っている.前年度は,Ru,Fe:LiNbO3結晶において高効率な不揮発記録が可能であることを見出し,今年度はこの材料の基礎物性を測定して,Ruに関する物質パラメータを見積もった.またこれらの値を用い2準位モデルによるシミュレーションを行うことで,より高い記録感度を得るための指針を得た.

二重井戸型光トラップによる微粒子ソーティング
教授 志村 努[代表者], 教授 黒田 和男, 助手 芦原 聡, 助手 藤村 隆史, 大学院学生(志村研) 林靖之
本研究は,光を用いて粒径や屈折率など光学特性の異なる微粒子を選択的に抜き出すソーティング技術の開発を目的とする.集光したレーザー光が微粒子に照射されると光強度の強い方へ力が加わり焦点近傍に微粒子が補足される.また,隣接する2つのガウス形光強度分布を足し合わせた形の強度分布をもった光パターンを照射すると微粒子は2つのサイトに準安定的に補足され,ブラウン運動により両サイトを行き来する.上記の実験においてこれまでに,粒径,光強度分布等を変えた場合の平均サイト間移動時間の評価と,ソート実験を行った.

フォノンスペクトロスコピーと物性研究
教授 高木 堅志郎[代表者], 助教授 酒井 啓司, 大学院学生(高木研) 与儀剛史, 大学院学生(酒井研) 南康夫
光散乱法,パルス法などの手法を用いて物質中のフォノンの位相速度と減衰を測定し,液晶・溶液・ゲル・生体系など複雑流体のダイナミックな物性の研究を行っている.本年度は特に,我々が開発した光ビート分光ブリュアン散乱法の高感度化ならびに高精度化を図った.高感度化に際しては高出力レーザーの導入,検出光学系の改良などによりこれまで測定が不可能であった固体材料あるいは気体中の熱フォノン検出を世界ではじめて可能にした.これにより結晶相転移やプラズマ中の音響モード振動の観察が期待できる.またフォノン共鳴観察により,超音波測定に匹敵する音速・吸収測定精度を熱フォノン測定において実現した.

リプロンスペクトロスコピーと液体表界面の物性研究
教授 高木 堅志郎[代表者], 助教授 酒井 啓司, 助手 美谷 周二朗, 大学院学生(高木研) 清原拓郎
液体表面を伝搬する高周波表面波の挙動を広い周波数帯域にわたって測定することにより,表・界面の動的な物性を調べることができる.この技術をリプロンスペクトロスコピーと呼んでいる.本年度は光ヘテロダイン信号の処理に大容量メモリと相関計算を導入することにより,高い時間分解能でのリプロンスペクトルを得ることが可能になった.これによりmsのオーダーで刻々変化する液体表面分子の状態を実時間でモニターすることができる.現在この系を様々な電気界面化学現象の高速観察に応用する試みを進めている.

超音波精密計測に関する研究
教授 高木 堅志郎[代表者], 助教授 酒井 啓司, 協力研究員 細田真妃子
液体および固体中の超音波に関する新しい計測法と映像法の研究を行っている.物質中を往復伝搬する超音波パルス列の計測において,それぞれのパルス波形間の相関を計算することにより極めて高い精度で超音波音速を決定する「相関パルス法計測システム」を開発した.この手法により1,000,000分の1という精度で,かつ1秒毎の音速変化を測定することができる.あわせた開発したコーナーキューブ反射鏡を併用することにより,投げ込み型の簡便なシステムで,化学反応の進行状態を敏感かつ迅速に追跡することが可能となった.

音響位相共役波の研究
教授 高木 堅志郎[代表者], 助教授 酒井 啓司, 技術補佐員 小久保旭
弾性波と電場の非線形相互作用を利用した音響位相共役波の発生,およびそのデバイスへの応用の研究を行っている.位相共役波とは,任意の入射波に対して周波数と位相を保存し,伝搬方向を逆転させた波である.光学における位相共役波の研究は非常に盛んであるが,超音波の位相共役波についての研究はまだ例が限られている.我々はセラミック圧電材料を用いることにより音響位相共役波を高効率で発生させることに成功している.本年度は,新しい位相共役鏡の材料としてレラクサー強誘電体結晶に着目し,音響位相共役波への変換効率の評価を行った.これにより従来のセラミクス素子より1桁高い効率が期待できる.

液体のガラス転移現象と水の熱力学異常の理論的研究
教授 田中 肇
液体はこれまで密度という秩序変数のみにより記述されると信じられてきたが,我々は,液体が局所的にエネルギーの低い構造(局所安定構造)を形成することを記述するために,新しい秩序変数(ボンド秩序変数)の導入が必要であることを主張している.この液体の2秩序変数モデルは,水の様々な熱力学異常を説明できるばかりでなく,液体のガラス化とランダム磁性体のスピン・グラス化の間にアナロジーが成り立つことを示唆しており,現在, 理論・数値シミュレーションの各面から研究を行っている.

計算機シミュレーションを用いた複雑流体の相分離現象
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭
当研究室において,高分子溶液系などの動的に非対称な系特有の全く新しい相分離様式が観測されることが実験的に見出され,それを粘弾性相分離現象と名付けた.この現象の起源や相分離メカニズムを明らかにするため,粗視化した濃度場に対する相分離モデルを作成し,数値シミュレーションを行った.その結果,実験的に観測された相分離パターンの時間発展を定性的に再現することに成功し,その時間発展機構を明らかにした.その他,コロイド分散系や液晶系等に対する数値視ミュレーションも行っており,複雑流体を用いた材料開発において,有益な知見を与えるものと期待している.

コヒーレント光散乱法を用いた複雑流体の動的物性
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭, 講師(武蔵工業大学) 高木晋作
高濃度コロイド分散系のような白濁した試料では,光の多重散乱が起こる.従来の動的光散乱法では,多重散乱光を単一散乱光と分離できないため,スペクトルに重大な変形を生じる.我々の開発した位相コヒーレント光散乱法では,熱励起揺らぎに代わってレーザー光によってコロイドの濃度変調をコヒーレントに励起し,散乱光を位相も含めて検出するため, 多重散乱光と単一散乱光とを分離することができる.この方法で,従来法では不可能であった白濁試料中での粒子拡散モード光散乱スペクトルの分光に成功した.この励起原理は他のモードにも容易に応用が可能で,干渉縞にコヒーレントな超音波や温度分布の励起,あるいは偏光方向の変化による異方性分子の配向のコヒーレントな制御から,対応するモードの複素スペクトルを観測できる.

高分子混合系相分離現象における粘弾性効果
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭, 博士研究員 小山岳人
高分子溶液系では粘弾性相分離現象という,これまで知られてきた理論的モデルでは説明できない相分離現象が現れる.その特異性は構造的特徴に現れ,高分子が非常に希薄でありながら高分子濃厚相が細く連結するというものである.このような新たな特徴を有する相分離現象の基礎と応用に関し,直接重要な知見を得るためには,構造形成の発現条件とその過程の時間的・空間的特徴との関係をを明確にする事が必須である.このような観点から研究を行ってきており,現在のところこうした粘弾性相分離現象の発現条件が,分子量によらない表式で統一的に表現できるという知見を得ている.

過冷却液体の長距離密度揺らぎの研究
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭, 博士研究員 小林美加
ガラス形成物質では,構造緩和と呼ばれる緩和現象が最も遅い時間スケールをもつと一般的には考えられており,その特徴的長さはナノメーター程度であるとされている.ところが一方で,理論的予測よりもはるかに大きいレイリー散乱の散乱強度が観測されることが知られており,この波数依存性から数百ナノメーター程度の極めて長い相関長の存在が示唆されている.また,その時間スケールは構造緩和時間よりも3〜5桁も長い.こうした長距離の空間相関はFischer clusterと呼ばれているが,その正体はいまだわかっていない.そこで,以上の現象の起源を解明するため,様々な過冷却液体に対して,光散乱法などを用いた研究を行っている.

レーザ・トラッピング法を用いた局所物性測定法の開発と応用
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭, 博士研究員 岩下靖孝
生物分野で知られるレーザピンセットは,透明媒質内の物体を自由に非破壊・非接触で操作する技術である.これは屈折率の高い物質が電場の強いところ,この場合は集光されたレーザに引き寄せられるという現象を利用したものである.本研究ではこの技術を用いて高分子・液晶などのソフトマテリアルの局所的な力学物性を解明することを目的としている.これまでに界面活性剤系液晶に対してプローブ粒子を用いた微小構造のパターニング,局所粘性率測定を実現しており,またトラッピングビームをスキャンし試料中の微粒子を強制振動させることによる,試料のマイクロレオロジー測定等にも成功している.今後は2本のビームでプローブ粒子をコントロールすることによる,流体や配向場などを介したソフトマテリアル内での複雑な2体間相互作用の解明などにも取り組む予定である.

分子性液体における液体・液体相転移
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭, 大学院学生(田中研) 栗田玲
Triphenyl Phosphite(TPP)という典型的な分子性液体において,過冷却液体とも結晶とも異なったGlacial相と呼ばれる相がKivelsonらによって発見された.この相に対して様々な研究者がX線やNMRといった微視構造解析手法を用いて研究した結果,微結晶説や柔粘性結晶説など様々な結論に至ってしまい,実際のところGlacial相の正体は不明のままであった.そこで,Glacial相のパターン形成に注目し顕微鏡や熱量測定,力学測定を行った.その結果,TPPは液体・液体相転移することを発見し,Glacial相は第2液体のガラス状態であることが明確にわかった.このことから,初めて分子性液体において液体・液体相転移を観察したといえる.これまで観察された液体・液体相転移は原子性液体であったので,高温・高圧という条件でしか相転移は起こらず,そのキネティクスを調べることは出来なかった.今回発見したTPPにおける液体・液体相転移は常温・常圧であるので,相転移のキネティクスを詳細に調べることが出来た.その結果,初めて液体・液体相転移の連続転移を発見した.

セッケン2分子膜系における流動誘起トポロジー転移
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭, 大学院学生(田中研) 宮澤秀之
セッケンは日常生活において様々な場面で活躍しているが,これは一分子内に親水性,疎水性をあわせ持っているためである.このような両親媒性分子は水溶液中においてミセルや2分子膜などの様々な会合体を形成することが知られているが,本研究室では2分子膜に流動場をかけたときの影響に注目している.2分子膜には,高温領域における膜がランダムに結合したスポンジ相と低温領域における膜が球状に重なったオニオン相(低濃度では平行配向したラメラ相)が存在する.一般的にスポンジ相から降温するとオニオン相に転移し粘性率が増加することが知られているが,流動場をかけた場合ある大きさ以上の流動場においては粘性率の減少する転移が観察された.現在,この粘性率の差をもたらすオニオン相の構造差,流動場の臨界値と濃度の関係などについて研究中である.

相互作用にフラストレーションを導入した過冷却液体・ガラス転移の数値シミュレーション
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭, 大学院学生(田中研) 新谷寛
球状の分子からなる系において,結晶構造的に許される配置よりも,局所的には正二十面体構造の方がエネルギー的に安定であることが指摘されている.液体中にはこのような局所構造が存在しており,液体がガラス化する際には,結晶構造の対称性とそれと相容れない局所構造の対称性の競合が重要な役割を果たすという考えに基づき,我々は二秩序変数モデルを提案してきた.そこでこの考え方の妥当性を検証する目的で,局所構造を反映する(結晶構造に対してフラストレーションを生ずる)異方的な変調をLJ(Lenard-Jones)ポテンシャルに掛けたポテンシャルを用いて2次元MDシミュレーションを行った.その結果フラストレーションの強度(変調の強度)を変化させると,2次元単一粒子系でガラス化が起こることが示された.今後は変調強度が液体の緩和,結晶化,ガラス化等にどのような影響を及ぼすかを研究していく予定である.

コロイド分散系・リゾチーム溶液における粘弾性相分離
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭, 大学院学生(田中研) 吉澤亮平
我々の研究室では,高分子溶液系のような大きな分子と小さな分子を混ぜた動的に非対称な混合系において,これまでに知られている相分離様式では説明できない新しいタイプの相分離現象(粘弾性相分離)を見出した.粘弾性相分離の本質的な起源が成分間の動的な非対称性にあるという我々の主張が正しければ,高分子特有の粘弾性をもたない動的非対称な系であるコロイド分散系やリゾチーム溶液においても,同様に粘弾性相分離が観察されるはずであると考え,粘弾性相分離現象の普遍性を検証するため,これらの系における相分離について研究をしている.手法としては,三次元系における構造形成のダイナミクスを観察するために,共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて実験した.そして,これらの系の相分離において,コロイドやリゾチームが溶媒に対して少数相となる領域で,これらの相が系全体に連結したネットワーク構造を形成し,その後ネットワークが切れることにより粗大化が起こることが観察された.このように少数相により過渡的ゲルが形成されることは粘弾性相分離特有の特徴であり,コロイド分散系やリゾチーム溶液においても粘弾性相分離が起こることを強く示唆する結果となっている.

荷電コロイド分散系の凝集過程
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭, 大学院学生(田中研) 菅沼卓也
これまでの荷電コロイド凝集構造のシミュレーションにおいて,流体力学的な相互作用と静電的な相互作用を取り入れた例はあまりない.特にコロイド粒子の静電相互作用についてはDLVO理論を用いて記述される場合が多いが,この理論が適用できる範囲は限られている.そこで我々は,これまでに開発してきた粒子間の流体相互作用を取り入れた数値シミュレーション手法(流体粒子ダイナミクス法)に,イオン濃度の自由度を導入することにより多粒子系に適用できる荷電コロイド分散系の数値シミュレーション法を開発した.これを用いて凝集構造の塩濃度依存性,正負二種類の荷電コロイドの凝集過程,電場下における電気泳動の安定性などについて研究を行っている.

CED(き裂エネルギ密度)概念による破壊力学の構築(継続)
教授 渡邊 勝彦
現実のき裂端近傍における現象はほぼ例外なく非弾性現象である. 現在広く行われている破壊力学はこの非弾性現象を弾性き裂の力学により評価しようとして来たものであるといえ, そのため種々の限界, 矛盾が生じている. 本研究においては, CED概念を中心とした非弾性き裂の力学とも呼ぶべきものを構成し, その各種破壊問題への適用を通じて従来の破壊力学における限界, 矛盾を克服し, あらゆるき裂問題に適用可能な破壊力学体系の構築を目指して研究を進めている.

異材界面の破壊と強度評価法に関する研究(継続)
教授 渡邊 勝彦[代表者], 大学院学生 Kim Sang-won
異材界面においては, 弾性解における界面き裂端での応力の振動特異性, 界面端部での応力特異性を見ても分かるように, 均質材では見られない特殊な挙動を示し, その強度評価法の確立に向けて解決さるべき問題が多い. 本研究では上の界面き裂と界面端部の強度評価法の開発・確立に向けての理論的, 実験的研究を進めており, 前者においては, 脆性破壊を対象にした応力拡大係数をパラメータとしての研究, また一般にはき裂端近傍での非弾性挙動を考慮に入れる必要があることから, 弾性から非弾性まで統一的に扱うことを可能にするCEDを中心とした界面き裂パラメータに関する検討を行っている. 後者については軸対称問題, 三次元問題における界面端部,界面コーナー点の特異性について研究している.

混合モードき裂の破壊挙動評価に関する研究(継続)
教授 渡邊 勝彦[代表者], 研究員 宇都宮 登雄, 技術専門職員 土田 茂宏
き裂の破壊挙動評価は, 混合モードき裂がどの方向に, どのような条件を満たしたときどの破壊モードで起こるかを判断できて初めて完全なものとなる. 本研究ではCEDをパラメータとして用いることにより, 上記の条件を満たす, 脆性破壊から大規模な塑性変形をともなった破壊まで統一的に扱える混合モードき裂破壊挙動評価が可能となることを均質材中き裂について実証してきており, 現在は, 異材界面においては一般に混合モード状態となることから, 本研究での手法の, 降伏応力が異なる同種材料を溶接したときの界面上および界面近傍のき裂問題への適用性につき, 材料の組合せや液体窒素温度から常温までの温度の影響も含め,検討を進めている.

分子動力学法, 個別要素法の破壊問題への適用性に関する研究(継続)
教授 渡邊 勝彦[代表者], 元大学院学生 張 万石, 研究員 飯井 俊行
本研究は分子動力学法によるシミュレーション, また同法の手法を取り込んだ個別要素法の開発とそれによるシミュレーションを通じて破壊現象の本質に迫り, その理解を深めると共に通常の連続体的強度評価手法の今後の展開に資そうとするものである. 前者においてはbcc Feマトリックス中のCu析出物周りの内部応力評価, 三次元問題を含むいくつかのき裂問題の解析等を進めており, また後者については繊維強化複合材料の衝撃破壊等への適用性についての検討を行っている.

圧電材料の破壊力学に関する研究(継続)
教授 渡邊 勝彦[代表者], 助手(特別研究員) 南 秉群, 技術専門職員 土田 茂宏, 大学院学生 Liu Ronfeng, 大学院学生 Na Hgoung-Su, 研究員 永井 学志
圧電材料はセンサーやアクチュエーターとして用いられ, 将来の知的材料の構成要素として期待されているが, その破壊力学的強度評価法は未だ確立されるに至っていない. 本研究はその確立を目指すものであり,切欠き・き裂における特異性, 力学的効果, 電気的効果のカプリングの現れ方等, 基本的性質の把握から始め,圧電材料へのCED概念の導入,それによる破壊クライテリオンの提案,破壊実験法の開発と実験実施による提案クライテリオンの有効性の実証等を進めている.

圧電材料の非線形挙動シミュレーション手法に関する研究
教授 渡邊 勝彦[代表者], 大学院学生 月足 繁, 研究員 永井 学志
圧電材料においては力学的負荷や電気的負荷を受けると分極方向が変化するいわゆるドメインスイッチングと呼ばれる現象があり,これが材料の力学的−電気的非線形挙動を引き起こし,電気的−力学的特性や強度特性の評価を困難なものにしている.本研究ではドメインスイッチングが起こるクライテリオンを新たに提案し,それを適用して圧電材料のミクロ挙動からのマクロ挙動シミュレーションを行う手法についての研究を進めている.

熱応力下応力拡大係数の特性とその構造物健全性評価への応用(継続)
教授 渡邊 勝彦[代表者], 研究員 飯井 俊行
熱サイクルを受ける構造物においては, 熱応力によりいったんき裂が発生, 進展を開始しても, その後停留してしまう場合も多い. これにつき従来, 熱応力下においてはき裂の進展に伴い始め応力拡大係数は増加するがその後減少していくためであろうと概念的に考えられているが, 定量的には殆ど議論されていない. 本研究においては, 各種の熱応力下応力拡大係数を系統的にかつ簡便に評価する手法の開発を行ってき裂停留の本質を明らかにすると共に, 停留現象を構造物のより合理的な, 健全性評価・設計に活かす方法について研究している.

薄型シリコンチップの強度評価法に関する研究
教授 渡邊 勝彦[代表者], 助手(特別研究員) 南 秉群, 技術専門職員 土田 茂宏
ICカードのような電子デバイスに組み込まれる半導体チップには薄さが要求されるために, 数10μm厚のものが開発されつつあるが, 材料である単結晶シリコンは欠陥に対して敏感であることや微小であること等も加わり, 従来の強度評価手法をそのまま適用することは困難となっている. このような現状を踏まえて, この種の材料に対する強度評価手法について検討を行っている.

半導体中転位の電気的・光学的性質
助教授 枝川 圭一
半導体中転位によるデバイス特性劣化の詳細な機構を明らかにするため,また半導体中転位の1次元電子系としての物理的性質を調べるため,塑性変形により半導体中に転位を導入し,その電気的・光学的性質を調べている.本年は,GaN,GaAsについて,転位の電荷分布を電子線ホログラフィーにより調べた.また,それらの試料について光透過スペクトルの測定を行った.

Al-Cu-Fe B2相の機械的性質
助教授 枝川 圭一
代表的な金属間化合物の一つであるAl-Fe B2相にCuを添加して,その機械的性質の変化を調べた.Cu添加量が増えるに従い,強度が上昇した.その原因は,Cuによる固溶体強化が直接効いているのではなく,Cu添加によって原子空孔濃度が増えるためであることが明らかになった.また,極めて高い強度をもつAl-Cu-Fe準結晶を析出させて強化する試みも行っている.

金属ガラスの塑性
助教授 枝川 圭一
金属ガラスは,合金系によらず,ビッカース硬さとヤング率の比がほぼ0.06となることが実験的に示されている.このことは系によらない金属ガラス共通の塑性変形機構の存在を示唆するものである.また,金属ガラスの変形がすべりによることが多くの系で見出されており,このことは変形がある種の転位の運動によって起こることを示唆するものである.本研究では,計算機上に金属ガラスの構造モデルを作製し,これに転位を導入し,その転位の動力学的性質を調べることにより,金属ガラス共通の塑性変形機構を明らかにすることを目的としている.本年は,(1)金属ガラス中に転位は,静的には安定に存在しないことを明らかにし,(2)外応力下で転位の運動によりすべり帯が形成される過程を再現した.

準結晶のフェイゾン弾性
助教授 枝川 圭一
準結晶にはその特殊な構造秩序を反映してフェイゾンとよばれる特殊な弾性自由度が存在する. 準結晶のフェイゾン弾性は, そもそも準結晶構造秩序がなぜ安定に存在しうるかといった基本的な問題と深く関係しており, また準結晶の電子物性, 熱物性, 力学物性の特殊性の源とも考えられている. 従ってその性質を明らかにすることは重要である. 本年度は, フェイゾン−フォノンのカップリングの強さを表す弾性定数を世界で初めて実験的に評価した.

液体表・界面構造と動的分子物性
助教授 酒井 啓司[代表者], 助手 美谷 周二朗, 大学院学生(高木研) 吉武裕美子
液体表面や液液界面など異なる相が接する境界領域での,特異的な分子集合体の構造や現象に関する研究を行っている.本年度は液面光マニピュレーション法を用いて様々な複雑流体表面の分子ダイナミクスの研究を行った.粘弾性流体表面の物性測定手法を開発した.屈折率の異なる媒質間にレーザーを伝搬させると屈折率の小さいほうに向かって放射圧が働き界面が局所的な変形を受ける.このとき液面の変形量が表面張力や粘弾性と相関を持つために非接触かつ高精度で界面の物性と構造を測定することができる.この手法を用いてゾル-ゲル転移に伴う表面物性の変化を高速で解析することにより,ゲルの表面エネルギーと弾性を決定した.この技術は,安定なLB膜作成のデバイスとして有効なゲル上吸着分子膜の凝集状態モニター手法として有効である.

多自由度が競合する複雑流体における分子緩和現象の研究
助教授 酒井 啓司[代表者], 技術員 平野太一, 大学院学生(酒井研) 堀井和由, 協力研究員 細田真妃子
流れ場に加えて濃度場や分子配向,温度勾配などの自由度が相互にカップルする複雑流体においては,各自由度の緩和過程が他の自由度からの影響を受けて特異なスペクトルを示すことが知られている.この緩和ダイナミクスを精密に観察することにより,各自由度間の結合の起源を分子レベルで明らかにする試みを行っている.本年度は,液体中の流動場と分子回転などの局所的な配向自由度が結合する動的緩和過程を広い周波数域で調べる四重極流動複屈折法を開発した.これによりHz〜100kHzの配向緩和スペクトルを高感度で測定することができる.現在,液晶・ミセル・高分子など複雑流体系の自由度競合緩和現象の測定を行っている.

複雑流体表面の超高分解能マイクロスコピー
助教授 酒井 啓司[代表者], 助手 美谷 周二朗, 大学院学生(高木研) 山本裕也
液体表面の力学的物性,特に分子吸着に伴う表面エネルギーと表面粘弾性の動的変化を調べる新しい手法の開発を行っている.本年度は局所的な電場印加によって液体表面の変形を励起し,その応答から表面の力学物性を調べる手法を開発した.この技術により液体表面の表面エネルギーや粘弾性のみならず樹脂材料の硬化やゲル化などの動的プロセスを,非接触かつ迅速に追跡することができる.現在,プローブの形状を微細化することにより,光学顕微鏡を越える空間分解能での測定を目指している.

光による分子操作と分子配向素過程の研究
助教授 酒井 啓司[代表者], 助手 美谷 周二朗, 技術員 平野太一, 大学院学生(酒井研) 堀井和由
異方形状分子からなる液体について,レーザー光を用いた分子配向制御を試みている.熱平衡状態ではランダムに配向する分子の集団に偏光制御されたレーザーを導入して分子配向秩序をもたらし,その秩序の程度を複屈折計測により定量評価する.本年度は,自発的な揺らぎによって駆動される分子の動的配向現象を高分解能光散乱スペクトロスコピーで観察し,液晶転移点近傍における分子形状と配向-並進カップリング係数の分子形状異方性の影響を調べた.その結果,並進−回転結合係数の臨界異常性が多くの分子で普遍性を持つこと,またその輸送係数が形状異方性に大きく依存することを見出した.これは液晶などの機能性流体を設計する上での大きな知見となる.

ナノ・マイクロ流体ダイナミクスの研究
助教授 酒井 啓司[代表者], 大学院学生(酒井研) 笹川直人
近年,直径数μm程度の微小流体粒を用いた新たなデバイス作製技術の研究が盛んに行われている.この程度の粒径では,マクロスケールに比べて無視できなくなる表面エネルギーや表面粘弾性,あるいは流体内イオンによる静電相互作用により,そのダイナミクスはマクロな液滴とは極めて異なったものとなることが予想される.本研究では,これまで精密な測定が困難であった微小複雑流体粒の静的構造や粒子運動を観測する新たな手法の開発を行っている.本年度は微小流体粒子を空気中にトラップし,画像処理によってその粒径変化を迅速に測定するシステムを構築し,微小界面からの液体の蒸発現象についての基礎的実験を開始した.

2次元凝集体の相転移と臨界現象の研究
助教授 酒井 啓司[代表者], 大学院学生(高木研) 吉武裕美子, 大学院学生(酒井研) 平岡良彦
界面活性剤分子や液晶性分子が液体表面に形成する薄膜は,環境に応じて相転移を起す.この相転移について,レーザー光による非接触・非破壊観察を行うとともに,薄膜を2次元流体とみなすモデルによる説明を試みている.本年度は液体表面に形成される可溶性単分子膜が,動的な圧縮・伸張過程によって示す相変化を相関リプロン光散乱法によって観察した.これまでのリアルタイムリプロン光散乱法をさらに高分解能化することで,表面の有する2次元の固さである「表面弾性」をmsの時定数で測定することに成功した.これにより可溶性分子膜の非平衡定常状態を実現し,新たなタイプの表面相転移現象を探索した.

コンクリート系壁式集合住宅の耐震性能評価に関する研究(新規)
助教授 中埜 良昭[代表者], 技術員 山内成人, 大学院学生(中埜研) 太田行孝, 大学院研究生 朴珍和, 大学院研究生 Girija Rajarathinam
一般にRC造壁式構造あるいはプレキャスト構造による中低層集合住宅はこれまで大きな地震被害を受けなかったが,東海地震や東南海・南海地震など,巨大地震が予想されている地域においては従来よりもより大きな地震動が予想されることから,これらの構造物の安全性を耐震診断のみならず,震源距離や地盤条件を考慮したより詳細な検討により評価することが求められている.本研究では,東海地震が予想されている地域に建つ実在建物群を対象に,その耐震性能を把握することを目的としたもので,本年度は常時微動による基本的な振動性状の把握,耐震診断およびS-Rモデルによる地震応答解析により,その地震応答性状の検討を行った.

サブストラクチャ・オンライン地震応答実験の精度向上に関する研究(継続)
助教授 中埜 良昭[代表者], 技術員 山内成人, 大学院学生(中埜研) 楊元稙, 大学院学生(中埜研) Cagri Oktem, 大学院研究生(中埜研) 朴珍和
サブストラクチャ・オンライン地震応答実験(SOT)法は構造物全体の応答性状を直接実験的に評価することが困難な構造物に対して極めて有効な実験手法の一つである. 本手法では解析部分の部材に対し既存の数式モデルを設定するのが通例であるが, この場合SOT法の最大のメリット, 即ち履歴特性をモデル化することなく, 動的挙動を直接的にシミュレートできるという利点を最大限には生かせない. しかしながら, もし解析部分で用いる履歴特性を実験から得られる特性に基づき推定することが可能となれば, SOT法のメリットを最大限に生かすことができる. 本年度は実際にニューラルネットワークを応用したSOT法による構造実験を行い,本手法の妥当性を検証した.現在,本手法を鉄筋コンクリート造構造物へ適用すべく,非対称履歴特性を含む強い非線形性を有する履歴特性の推定手法の開発に関する検討を行っている.

韓国の鉄筋コンクリート造建物の耐震性能に関する研究(継続)
助教授 中埜 良昭[代表者], 技術員 山内成人, 大学院学生(中埜研) 崔琥
韓国における地震活動は日本と比べてさほど活発ではないため, これまで地震防災に対する意識はあまり高くはなかったが, 近年韓国においても中・小規模の地震が発生していること, また隣国の日本では1995年阪神・淡路大震災を, 台湾では1999年台湾集集地震を経験したことなどから, 同国における既存建築物の耐震改修の重要性が強く認識されてきている. 韓国では無補強ブロック造壁を有する鉄筋コンクリート造架構が多く用いられているが,その基本的な耐震性能や,本架構が地震により被災した際の残存耐震性能の評価に関する基礎的なデータはほとんど無いのが実情である.そこで本研究では,これらのデータを実験的に得るために,ブロック造壁を有する鉄筋コンクリート造骨組の実大載荷実験結果を2003年に実施した.本年度はその実験結果を分析し,架構に生じたひび割れ幅と架構の応答との関係を用いて,残存耐震性能の評価手法開発に向けての基礎データの蓄積を行った.

組積造建築物の耐震性能向上に関する研究(新規)
助教授 中埜 良昭[代表者], 助手(東大) 真田靖士, 講師(新潟大) 中村友紀子, 技術員 山内成人, 大学院学生(新潟大 中村研) 八巻勝俊, 大学院学生(中埜研) 崔琥
過去の地震災害を見ると,地震に脆弱な無補強組積造建物の被害が建築物の被害の主原因となる事例が数多く見られる.本研究は無補強組積造建物の耐震性能を適切に評価するとともに,その耐震化を合理的に進めるための基礎的研究として,本構造の水平抵抗機構を実験的に解明し,その耐震性向上を実現するための基礎データを蓄積しようとするものである.本年度は,インターロッキング機構を利用した無補強組積造壁の要素実験を行い,その基本的性状を検討した.

鉄骨系架構により補強された鉄筋コンクリート造骨組のねじれ応答性状に関する研究(継続)
助教授 中埜 良昭[代表者], 技術員 山内成人, 大学院学生(中埜研) 上田芳郎
本研究では, 昨年度に引き続きRC造壁および鉄骨系架構により耐震補強された鉄筋コンクリート造骨組を対象に, その捩れ応答性状の把握に着目して実施した振動実験結果を分析し,破壊形式の違いにより加振途中に振動モードが変動することを確認し,これを解析的に追跡するためのツールの開発,およびねじれが生じる建物の応答推定手法に関する検討を行っている.

高靭性繊維補強セメント系複合材料を用いた簡易震動実験手法の開発研究(継続)
助教授 中埜 良昭[代表者], 技術員 山内成人, 大学院学生(中埜研) 徳井紀子
本研究は, 鉄筋コンクリート造建築構造物の模型震動実験に伴う試験体製作の労力と経費を大幅に節減できる簡易震動実験手法の開発を目的とする実験研究である. 本年度は,昨年度実施した高靭性繊維補強セメント系複合材料と主筋のみで模擬した超小型試験体(30×30×180o)を用いた振動実験結果を分析し,ひずみ速度の影響を考慮した解析手法による応答推定の妥当性について検討した.

隣接建物の衝突および連結が建物の応答性状に与える影響に関する研究(継続)
助教授 中埜 良昭[代表者], 協力研究員 Basem Shatla
過去の地震における構造物被害の要因の一つとして, 隣接建物間の衝突が報告されている. その解決策として, 慣用的にしばしば近接建物同士を連結する手法が用いられるが, 建物の衝突がその応答性状に与える影響, 建物の連結による耐震性能改善効果, 連結部の具体的な設計手法については必ずしも明確ではないのが実状である. そこで, 本研究では建物の衝突, 連結がその応答性状に与える影響を解明することを目的として, 解析的, 理論的な検討を行っている.

弱小モデルによる地震応答解析(継続)
助教授 中埜 良昭[代表者], 技術員 山内成人
小さな地震でも損傷が生じるように, 通常の建物より意図的に弱く設計された縮尺率1/4程度の鉄筋コンクリート造5階建て建物2体(柱崩壊型モデル, 梁崩壊型モデル)を千葉実験所に設置し, 地震応答観測を行っている. 1983年8月の観測開始以来, 千葉県東方沖地震をはじめ, 200以上の地震動に対する建物の応答を観測することができた. 本年度は観測システムの内, PCによるデータベースシステムの改良, 更新を行った. また, これらの蓄積された観測結果の分析・解析を行うとともに, ニューラルネットワークを利用した履歴推定手法の教師データとして利用している.

新潟県中越地震により被災した建築物の被害調査
助教授 中埜 良昭[代表者], 大学院学生(中埜研) 徳井紀子, 大学院学生(中埜研) 太田行孝
2004年10月23日に発生した中越地震で被災した,主として学校建築物の被害調査を行い,その被害原因と復旧方法に関する検討を行った.

スマトラ島沖地震による津波被害に関する調査
助教授 中埜 良昭[代表者], 大学院研究生(中埜研) Girija Rajarathinam, 大学院研究生(中埜研) 朴珍和
2004年12月26日に発生したスマトラ島沖地震では,インド洋沿岸地域の12ヶ国において,津波により30万人を超える死者・行方不明者が発生している.本調査では,現地の被災地域の津波による構造被害を中心に実態を観察し,津波危険地域が今後とるべき対策の検討や構造物に作用した波圧算定のためのデータを収集することにより,被災地のみならず,東海地震や東南海・南海地震において津波被害が懸念されている我が国においても防災対策に役立つ基礎データの収集を行った.

非エルミート量子力学とその応用
助教授 羽田野 直道[代表者], 大学院学生(羽田野研) 中村 祐一
量子力学では通常,ハミルトニアンはエルミート演算子とされる.それを,ある特殊な形(虚数ベクトルポテンシャルを導入する形)で非エルミート演算子に拡張したモデルを研究している.このモデルは,アンダーソン局在状態や共鳴状態の探査に便利である.新たに,強相関系においても相関長を求めるのに有用であることがわかってきた.ただし,その際に巨大非エルミート行列のスペクトルを求める必要がある.そのようなアルゴリズムの研究も行っている.

メゾスコピック系の電気伝導と共鳴状態
大学院学生(羽田野研) 笹田 啓太, 助教授 羽田野 直道[代表者]
導線に接続されたメゾスコピック系は「開いた量子系」であるため,共鳴状態が存在します.この共鳴状態は,メゾスコピック系の電気伝導に大きな影響を及ぼします.メゾスコピック系のコンダクタンスのピークが,共鳴状態の位置から理解できることを示しました.ナノデバイスの動作特性を物理的に理解するのに役立ちます.

経済現象の物理的モデリング
大学院学生(羽田野研) 饗場 行洋, 助教授 羽田野 直道[代表者]
外国為替相場の揺らぎは,相転移点直上の揺らぎと共通しているという点から,物理的興味を持たれています.我々は,その揺らぎの特徴を捉えるため,複数の為替相場の相互作用を考慮した新しいモデルを提唱しました.そのモデルによるシミュレーション結果は実データをよく再現します.

複雑な運動をする小さな量子系のダイナミクス
技術職員 町田 学[代表者], 助教授 羽田野 直道
複雑に運動をする量子系を考える.単純な量子系ならばSchroedinger方程式を直接解くことができるだろう.また,粒子数が無限とみなせるほど大きな場合には自由度の多さを逆手にとって熱力学による記述ができる.我々は中途半端な自由度の量子系の外場に対する応答に興味を持っている.このような量子系は,量子ドットやナノ磁石として近年実験的にも作成されるようになった.例えばナノスケールの小さな領域に電子をいくつか閉じ込めてその境界を外から振動させてみよう.内部の電子のエネルギーは古典的にはどんどん上昇するが,今の場合はエネルギーはある値まで上昇すると飽和してしまうことがわかる.我々はランダム行列を用いてこのような系のダイナミクスを調べ,飽和エネルギーと境界の振動数の関係を求めた.つまり,境界の振動のさせ方によって電子が吸収できるエネルギーが変化する.

ハイブリッド乱流モデルの研究
助教授 半場 藤弘
高レイノルズ数の壁乱流のラージ・エディー・シミュレーションを行うには,格子点数の制約から滑りなし条件が困難なため壁面モデルが必要となる.レイノルズ平均モデルと組み合わせるハイブリッド型の計算が精度のよい壁面モデルとして期待される.しかし単純に二つのモデルを組み合わせてチャネル流の計算を行うと平均速度分布に人工的な段差が生じることがわかった.そこで本研究では,段差の原因を調べそれを取り除く数値計算法を提案し,チャネル流に適用して検証した.さらに乱流モデル方程式の融合法に着目し改良を進めている.

乱流の非局所的非等方的な渦粘性
助教授 半場 藤弘[代表者], 大学院学生 大河原 斉揚
乱流モデルで良く用いられる渦粘性モデルでは局所近似を仮定している.本研究では乱流の非局所性の観点からモデルを検証し改良を試みた.グリーン関数を用いて厳密な非局所的渦粘性表現を導出し,チャネル乱流の直接数値計算で検証した.また,2スケールの変数を用いない新たな統計理論を提案し,剪断および高分子の効果によるレイノルズ応力の非等方性の増加について考察した.

電磁流体乱流のダイナモ機構
助教授 半場 藤弘[代表者], 助手 横井 喜充
地球や太陽などの磁場は天体内部の電導性流体の運動によって駆動され維持されていると期待される.本研究では電磁流体の乱流モデルを用いて回転球殻の磁場分布を計算し,ダイナモ効果による磁場の維持の考察を行った.また2スケール統計理論を用いてクロスヘリシティーと残留エネルギーの解析を行い太陽風乱流について考察した.

円管内旋回乱流の解析とモデリング
助教授 半場 藤弘[代表者], 助手 横井 喜充, 技術職員 小山 省司
円管内の流れに旋回を加えると中心軸付近で主流分布が凹んだり逆流が生じる,あるいは渦粘性が強い非等方性を示すなど興味深い性質を示すが,その機構は十分に解明されていない.本研究では統計理論と変分法を用いて旋回乱流の逆流現象について考察した.特に平均速度場のヘリシティーに着目し逆流の起こる条件を導いた.また直接数値計算とLESにより円管内乱流の数値解析を進めている.

表面吸着水素の拡散と非局在化に関する研究
助教授 福谷 克之[代表者], 助手 ビルデ マーカス, 技術職員 小倉正平, 大学院学生 鈴木 涼, 教授(阪大工) 笠井秀明, 助手(阪大理) 岡田美智雄
表面に吸着した水素の拡散と非局在性について,窒素イオンと水素との共鳴核反応を利用した研究を進めている.本年度は,第一原理計算からえられた基底状態波動関数から,3次元運動量空間での波動関数形状を求め,核反応によりえられた実験との比較検討を進めた.計算で求めた波動関数形状はz方向にのびた楕円体形状をしており,実験値より広がっていることがわかった.

共鳴イオン化法による水素のオルソ・パラ転換過程の研究
助教授 福谷 克之[代表者], 教授 岡野 達雄, 助手 松本 益明, 助手 ビルデ マーカス, 大学院学生 二木かおり, 大学院学生 藤原理悟
固体の表面では水素分子の核スピン状態が転換することが知られており,本研究ではその微視的な機構解明と新たなスピン計測法の開発,さらに量子コンピュータ応用を目指して研究を進めている.昨年度に引き続き,Ag薄膜表面での水素分子の光脱離・オルソパラ転換の実験を行った.脱離に用いるレーザー光の波長を532nmに変えて実験を行い,この波長でもオルソーパラ転換が加速されることを見いだした.また脱離水素分子の運動エネルギー分布をコヒーレントモデルを用いてシミュレーションし,実験で見られた同位体効果を再現できることを明らかにした.

金属酸化超薄膜の形成過程と物性
助教授 福谷 克之[代表者], 助手 ビルデ マーカス, 教授 岡野 達雄
本研究では,触媒やトンネルデバイスの絶縁膜として利用される,酸化物薄膜の形成過程とその性質を調べている.本年度は,アルミ単結晶酸化膜形成過程とその終端構造をX線光電子分光を用いて調べた.水分子と酸素分子による酸化過程を調べたところ,水分子の方が欠陥の少ない薄膜が形成されることを見いだした.また,チタン酸化膜の紫外光励起効果を共鳴核反応法を用いて調べ,その終端構造に関する考察を行った.

絶縁膜/Si基板における水素挙動の研究
助教授 福谷 克之[代表者], 助手 ビルデ マーカス, 教授(武蔵工大) 白木靖寛
本研究では,核反応を利用して表面・界面水素量を定量しデバイス特性との関連を明らかにすることで,デバイス特性の向上を目指している.本年度は,SiおよびSiGe混晶薄膜表面の水素終端性の研究を行った.Si表面は化学処理をすることで水素終端されるのに対して,SiGe混晶はGe組成が増えるにつれて終端性が悪くなることを明らかにした.また検出器として利用されるアバランシュフォトダイオードの劣化特性と酸化膜中水素量との相関を明らかにした.

金属超薄膜の電子状態と反応性
助教授 福谷 克之[代表者], 技術職員 小倉正平, 助手(阪大理) 岡田美智雄
金属超薄膜の電子状態は,膜垂直方向への量子化と配位数減少に伴う局在化という特徴を持つことが期待される.本年度は,走査トンネル顕微鏡を用いてPtおよびIr上でのAu薄膜の成長を調べた.いずれの表面でも,第1層目は樹枝状に成長しフラクタル構造を呈することがわかった.一方2層目以降は,樹枝状構造を取らず,3角形またはランダムな形状のコンパクトな島を形成することがわかった.モンテカルロ法を用いてシミュレーションを行い,テラス拡散とエッジ拡散が重要な役割を果たすことを明らかにした.

金属薄膜の水素化と物性変化に関する研究
助教授 福谷 克之[代表者], 助手 ビルデ マーカス, 助手 松本 益明, 大学院学生 鈴木涼, 大学院学生 田中誠二
希土類金属には水素化によりその物性が金属から絶縁体に変化し,同時に光学的性質も変化し金属ミラーから透明なガラスへ変化する場合がある.本研究では希土類薄膜の水素化と物性変化に関する研究を進めている.本年度は,W(110)表面に成長させたY超薄膜のβ相成長の温度依存性を,共鳴核反応法を用いて詳細に調べた.基板温度を上昇させると成長が遅くなる,逆温度効果を見いだした.またγ相形成のために,1気圧まで水素曝露が可能な高圧セルの設計と作製を行った.新たな成長法としてレーザーアブレション用の実験装置開発を進めた.

半導体核スピンのコヒーレント制御
助教授 町田 友樹
量子状態のコヒーレント制御は,量子ビットを始めとした将来の量子情報技術を開拓する上で急速にその重要性が高まっている.我々は量子ホール端状態における電子スピン−核スピン相互作用を利用することにより,半導体素子中核スピンの局所的かつコヒーレントな制御を実現した.核スピンは位相緩和時間が極めて長いため応用上理想的な系であると同時に,拡張性のある半導体素子を使用して量子状態を制御しているため素子設計の自由度が高く,今後の幅広い応用可能性を拓く.

機械・生体系部門

流体騒音の発生機構の解明とその制御に関する研究(継続)
教授 加藤 千幸[代表者], 大学院学生 鈴木康方, 技術官 鈴木常夫, 研究実習生 小久保あゆみ, 研究実習生 塚本裕一
流体機械の小型高速化や鉄道車両の高速化に伴い,流れから発生する騒音,即ち,流体騒音の問題が顕在化しつつあり,その予測や低減が大きな課題となりつつある.本研究では,翼周りの流れなどを対象として,流れと騒音の同時詳細計測により,流体騒音の発生機構を解明し,得られた知見に基づいて,騒音制御・低減方法を開発することを最終的な目標として進めている.本年度は,翼周りの音源をLDVにより計測し,流体騒音の発生機構を明らかにした.

単独翼周りの乱流境界層と発生する空力騒音のLES解析(継続)
教授 加藤 千幸[代表者], 大学院学生 宮澤真史
LES(Large Eddy Simulation)は,乱流の非定常な変動を計算可能な次世代の乱流解析手法としてその実用化が期待されているものであり,比較的レイノルズ数が低い,大規模にはく離する流れに対しては,既に実用計算に使用されつつあるが,翼周りの流れへの適用に関しては未解決の問題が多く,LES実用化の大きな課題となっている.前記課題を解決し,LES解析の新たな展開の可能性を探索すべく,研究を進めている.

圧縮性遷移翼列流れのLES解析
教授 加藤 千幸[代表者], 大学院学生 松浦一雄
低圧タービンや小型タービンにおいては流れのレイノルズ数が10の3乗から5乗のオーダーとなり,翼面周りの境界層は遷移領域となる.このような翼列流れに対してはその予測・設計手法が確立されておらず,これらの機械の性能向上を図る上で大きな課題となっている.そこで,本研究では圧縮性遷移翼列流れの高精度な予測を目指して,Large Eddy Simulation (LES)による解析を行っている.今年度はLES解析コードの開発とその検証を実施した.

小型ラジアルガスタービンに関する研究(継続)
教授 加藤 千幸[代表者], 助手 西村 勝彦, 技術官 鈴木常夫, 大学院学生 松浦一雄, 大学院学生 金澤純太郎, 大学院生 Sapkota Rajesh, 大学院学生 山本洋祐, 研究実習生 田村理
マイクロガスタービンや自動車用エンジンとして小型ラジアルガスタービンの利用が活発化してきた.このラジアルガスタービンの高性能化のため,ラジアルタービン動翼内の3次元流体解析法の開発を行っている.また,サージ余裕の改善のため遠心圧縮機の入口案内翼後流の不安定流れの実験的研究などを行っている.さらに,モバイル型電源等として期待される超小型ガスタービンの開発のための基礎研究を行っている.

プロペラファンから発生する空力騒音の数値シミュレーション(継続)
教授 加藤 千幸[代表者], 大学院学生 井原慎一郎
本研究は, このプロペラファンから発生する空力騒音の数値的予測手法を開発し, さらに, 低騒音ファンの設計指針を確立することを最終的な目的として,民間企業と共同で行っているものである.今年度は,ファンの仕切り板の位置や形状の変化が空力特性や騒音特性に与える影響を,流れの渦構造の変化と関連付けて検討している.

自動車用ドアミラーから発生する空力騒音の研究(継続)
教授 加藤 千幸[代表者], 技術官 鈴木常夫, 研究実習生 小熊信慶, 研究実習生 小久保あゆみ
運転者や同乗者に快適な車室内環境を実現するためには,ドアミラーやフェンダーから発生する空力騒音の低減が益々重要となっている.そこで,ドアミラーから空力的に発生する不快な異音に関して民間企業と共同で研究を進めている.昨年度までの研究により,異音が発生する原因をほぼ解明することができたが,今年度は異音の発生条件やその抑制方法に関して,更に詳細な研究を行っている.

非定常キャビテーション流れのLES解析
教授 加藤 千幸[代表者], 協力研究員 山出吉伸, 産学官連携研究員 郭陽, 宇宙航空研究開発機構 山西伸宏
流れの圧力が低下することにより発生するキャビテーションは,ターボ機械の性能を低下させるだけではなく,機械の破損や損傷の原因となることもあるが,未解明な課題も多く残させている.本研究では,宇宙航空研究開発機構と共同で,キャビテーション流れの非定常挙動を解明することを目的に,数値解析プログラムの開発を進めている.今年度は解析プログラムの開発をその基礎検証を実施した.

多段遠心ポンプの流体構造連成解析
教授 加藤 千幸[代表者], 教授(東大) 吉村忍, 産学官連携研究員 王宏, 協力研究員 山出吉伸, 産学官連携研究員 郭陽, 産学官連携研究員 Md Ashrat Uddin
火力発電所用の給水ポンプを対象に,流体加振を源とし,機械内を固体伝播し発生する騒音の数値解析に取り組んでいる.文科省ITプログラム「戦略的基盤ソフトウエアの開発」の実証テーマの一つとして,産学連携により進めているものであうる.これまでに,流体加振の変動スペクトルをLES解析により定量的に予測できることを確認した.

流れの制御による空力騒音減法に関する研究(新規)
教授 加藤 千幸[代表者], 東日本旅客鉄道株式会社 水島文夫, 研究実習生 高倉宏幸
新幹線の車両連結部間際からの空力音発生メカニズムを明らかにするとともに,車両の周りの流れを制御することにより空力音を低減する方法について研究をしている.

熱音響現象のエネルギー変換に関する研究(新規)
教授 加藤 千幸[代表者], 技術官 鈴木常夫, 研究実習生 宮田寛之
熱音響現象のうち,熱から音波を発生させる現象を熱音響自励振動という.この現象に関する基礎研究として,熱音響共鳴管内の温度・圧力・速度変動の同時計測を行い,供給熱量と自励振動の関係を明らかにした.

競漕用シェル艇の性能向上(継続)
教授 木下 健[代表者], 海上技術安全研究所 小林 寛, 大学院学生(木下研) 宮下 雅樹, 技術官(木下研) 板倉 博, 助手(東大) 鵜沢 潔
ボート競技に用いられる用具の改良,開発と,漕法の研究を行っている.ブレードに働く流体力の非定常性を考慮した推定法と,実際の模範的な漕手の体重移動をモデル化した艇速予測プログラムを利用し,ブレード形状の最適化を回流水槽を用いて行った.

係留浮体の長周期運動に関する研究(継続)
教授 木下 健[代表者], 助手・特別研究員 佐野偉光, 研究員 吉田基樹, 大学院学生 二瓶 泰範, 助教授j(東海大学) 砂原 俊之
波浪中の長周期運動は係留浮体の設計上で, 最も基本的かつ重大な課題の一つであるが, 非線形性が強く重要な研究課題が数多く残されている. その中で波漂流力と波漂流減衰力の推定はこれまでの当研究室の研究でほぼ可能となった.波漂流減衰力と位相が異なる波漂流付加質量について,本年度は任意形状に適用可能な解析法の開発を開始した.

帆による非係留型メガフロート(巨大海洋構造物)の位置保持に関する研究
教授 木下 健[代表者], 助教授(阪大) 高木 健, 教授(東海大) 寺尾 豊,環境研化学環境研究グループ
大型浮体であるメガフ ロートは,現在のところ,比較的静謐な海域に係留設置することをベースに開発されているが,波浪や風の影響下で非係留で自律的位置決め機能が不可欠と考えられる系については,まだ未検討である.自動位置決めの方式,それに適した浮体形式の初期的検討と,その有力候補である帆による自動航行の概念設計を行う.

北太平洋におけるFREAK WAVEの解明と克服のための研究
教授 木下 健[代表者], 助教授 林 昌奎, 助教授(東大) 早稲田 卓爾, 大学院学生 亀岡 福太郎, 技術官 板倉 博, 助手(東大) 澤村 淳司, 学部学生 木下 信
船舶や海洋構造物を破壊する異常波の発生機構の解明と,予測,遭遇回避システムの構築を目指している.本年度は,新しいリモセンのアルゴリズム開発の基礎実験を水槽で行うとともに,異常波の水槽内発生法として線型法とともに非線型法を開発した.

紫外線硬化樹脂を利用した精密切断ブレードの開発(継続)
教授 谷 泰弘[代表者], 研究員 榎本 俊之(阪大), 助手 柳原 聖, 研究生 李 承福
半導体ウェーハの精密切断には厚さ数十μmの薄刃の砥石が利用されているが. 熱硬化性樹脂を利用しているために焼成工程に時間がかかってしまう. そこで. 紫外線硬化樹脂を利用して精密切断ブレードを大量に短時間に製造する技術を開発した. 本年度は構造型ダイシングブレードの開発を行った.

複合粒子研磨法の開発(継続)
教授 谷 泰弘[代表者], 研究員 河田 研治((株)フジミインコーポレーテッド), 準博士研究員 盧 毅申, 元大学院学生 周 文軍
鏡面研磨においては研磨布が一般に利用されている. しかし,研磨布は目づまりや切れ味の劣化を起こしやすく,研磨加工を安定させる際の足枷となっている. そこで,研磨布の代わりにポリマー微粒子を添加することで研磨布を利用しない研磨加工複合粒子研磨法の実現を試みている. 本年度はペースト,キャリア粒子の最適化,実用を考慮したスラリーのリサイクル等について検討している.

極薄研磨保持具の高速製造法に関する研究(継続)
教授 谷 泰弘[代表者], 助手 柳原 聖
水晶振動子の高周波数化においてはウェーハを薄肉化する必要がある.したがって,水晶を研磨する研磨加工用保持具も薄肉化する必要がある.本研究では電鋳技術やスピンコーティング技術を利用して従来製法では不可能であった超薄型の保持具の製造法を検討した.

ガラス多孔質体を利用した研削砥石の開発(継続)
教授 谷 泰弘[代表者], 技術官 上村 康幸
研削加工において均質で多孔質なビトリファイド砥石が製作できれば,加工面粗さ,加工能率の優れた砥石となることが考えられ,硬脆材料の精密仕上げ加工など幅広い分野での需要が期待される.そこで砥石を多孔質にするために発泡性水ガラスが発泡して気孔を形成することに注目し,結合剤として使用しその高機能砥石としての可能性を検討した.その結果湿式加工でセルフドレス性が認められ,優れた加工面が得られた.

機械加工工具の機上再生技術に関する研究 (新規)
教授 谷 泰弘[代表者], 助手 柳原 聖, 大学院学生(谷研) 小塩 直紀
機械工具資源の有効活用と工具交換に伴うアライメントエラー回避を目的に,工作機械上で機械加工工具を様々な使用に形成・再生する技術を検討している.具体的には機上で迅速に工具表層部を形成・交換できる種々のコーティングの開発を行っている.この技術を利用して摩耗した切削工具・研削工具・研磨工具を再生し加工を継続できるようにしたり,それぞれの工具を違う種類の工具へと転換させたりしてnmオーダの高精度機械加工技術の実現を目指している.

空間骨組構造の順応型有限要素解析手法に関する研究(継続)
教授 都井 裕[代表者],
海洋構造物,機械構造物,土木・建築構造物などに見られる大規模・空間骨組構造の様々な崩壊問題に対し,順応型 Shifted Integration法(ASI法と略称)に基づく合理的かつ効率的な有限要素解析手法を開発し,静的・動的崩壊を含む各種の非線形問題に応用している.本年度は, 要素サイズ依存性を除去した弾塑性損傷解析アルゴリズムを動的解析に拡張する研究に着手した.

機械・構造物の連成力学挙動の有限要素解析に関する研究(継続)
教授 都井 裕[代表者], 助手 高垣 昌和
機械部品,構造物のマルチフィールド下における連成力学挙動の有限要素解析アルゴリズムの構成と応用に関する研究を進めている.本年度は,電磁場,熱伝導,弾塑性損傷および金属変態を考慮した機械部品の高周波焼入れ解析,熱伝導およびクリープ損傷を考慮した環状亀裂の熱疲労進展解析を実施した.

イオン導電性高分子材料によるアクチュエータ素子の有限要素解析に関する研究(継続)
教授 都井 裕[代表者], 研究機関研究員 姜 成洙
イオン導電性高分子材料(Nafion,Flemionなど)によるアクチュエータ素子の電気化学・力学連成挙動の有限要素解析に関する研究を進めている.本年度は,Flemionを用いたIPMC(Ionic-conducting Polymer Metal Composite)はりの連成挙動に対する有限差分および有限要素解析プログラムを開発し,試計算により有用性を検証した.

形状記憶合金アクチュエータ素子の有限要素解析に関する研究(継続)
教授 都井 裕[代表者],大学院学生 李 宗賓
形状記憶合金(SMA)アクチュエータ素子の超弾性変形挙動,形状記憶挙動に対する解析ソフトの開発を進めている.本年度は,SMAとFeを組み合わせたハイブリッド型アクチュエータの磁場・超弾性変形連成解析を実施し,実験結果とほぼ良好に対応することを確認した.また,定式化を2次元アクチュエータ解析に拡張した.

材料破壊の計算メソ力学に関する研究(継続)
教授 都井 裕
計算メソ力学モデルによる材料破壊のメソスケール・シミュレーション手法の開発と各種固体材料の構成式挙動および損傷・破壊現象への応用に関する研究を進めている.本年度は,多数のマイクロボイドを含む固体のマクロ弾性定数,マクロ降伏応力,ボイド結合などに関する既存の研究のレビューを行うとともに,Type Wクリープ損傷挙動のメソ解析について検討した.

数値材料試験と構造物の疲労寿命評価への応用に関する研究(継続)
教授 都井 裕[代表者],研究員 岩渕研吾,大学院学生 広瀬智史,技術専門職員 岡田和三
材料の損傷・破断を含む構成式挙動をシミュレートするための連続体損傷力学モデルによる数値材料試験,および有限要素法を併用した部分連成解析法の構造要素・疲労寿命評価への応用に関する研究を行っている.本年度は,金属接合部の寿命評価,変動応力下の寿命評価計算を実施し,実験結果,Miner則などと比較検討した.

工学構造体の計算損傷力学に関する研究(継続)
教授 都井 裕[代表者],大学院学生 田中英紀,大学院学生 朴 哉炯
連続体損傷力学に基づく構成式モデルと有限要素法による局所的破壊解析法を各種の工学構造体の損傷破壊挙動に応用するための基礎研究を行っている.本年度は, 炭素繊維シートで補強したRC構造体の損傷寿命解析,横衝撃を受ける多層塗膜の動的損傷解析を行い,それぞれ対応する実験結果と比較検討した.

自己修復材料のモデリングと有限要素シミュレーションに関する研究
教授 都井 裕[代表者], 大学院生 広瀬 智史
材料あるいは構造の安全性,信頼性,経済性を一層向上させることを目的として,生物と同様の自己修復機能を付与した自己修復材料の開発が活発化している.本研究は,自己修復材料のモデリングおよび構造挙動の有限要素解析法の確立を目的としており,本年度はクリープ損傷鋼材の焼結による自己修復過程のモデリングと解析を実施した.

液相の相変化現象における素過程と熱伝達(継続)
教授 西尾 茂文[代表者],西尾研 大学院学生 山神 成正,西尾研 大学院学生 政井 文仁
蒸発・沸騰や凝固・凍結などの液相の相変化現象は, 相変化分子運動論・界線動力学・界面安定性を媒介として異相核生成・異相成長・界面形態形成により異相構造が形成されるため, 物理的に興味深く, またエネルギー・熱制御・素材製造・食品保存などの工学事象とも関連が深いため熱伝達の解明・制御の観点からも重要である. 本研究では, こうした素過程および熱伝達に関する研究を現象の物理的理解を深め,その知見から技術展開を図る研究を継続的に行っている. 本年度は, 1)Landau不安定,2)希薄噴霧冷却における熱伝達特性に関する冷却面姿勢の影響を調べる数値計算および実験を行った.

電子機器の統合冷却システム(継続)
教授 西尾 茂文[代表者], 西尾研 技術職員 上村光弘,西尾研 特別研究員 汪 双鳳,西尾研 大学院学生 許 建偉, 西尾研 大学院学生 志村暢彦, 西尾研 技術補佐員 永田真一
高集積化・高密度実装により発熱密度が急増しているLSIチップについては, notebook PCに代表されるように空冷が基本となるが, 発熱密度は在来の空冷技術で処理できる範囲を超えつつある. そこで, 本研究では, (a)チップからの発熱を再電力化し放熱負荷を低減する要素, (b)放熱面積の拡大要素, (c)高性能なヒートシンク要素, (d)導入空気の低温化要素を総合・統合した冷却技術, すなわち統合熱制御システムを提案し, 要素開発を開始した. 本年度は, 放熱面積の拡大要素として, 1)加振機構を内蔵したCOSMOS heat pipe型ヒートスプレッダーの開発, 2)流路径0.5mm程度の細径SEMOS heat pipeの開発などを行なった.

低温排熱の動力化に関する研究(継続)
教授 西尾 茂文
エネルギー問題は, 石油資源の枯渇を中心とした資源制約と, 地球温暖化を中心とした環境制約との両面を有する. 近未来においていずれが主たる制約となるかについては様々な見解があるが, いずれにしても同一の生産過程などにおけるエネルギー消費を押さえる省エネルギー技術と, 未利用のエネルギーを利用する未利用エネルギー利用技術とは, エネルギー有効利用技術の核である. 本研究では, 後者の中で動力化が難しく熱利用として注目されている低温排熱を再動力化するソフトエンジンシステムの開発を目指している. 本年度は, 熱電素子に注目し,その温度差利用率を飛躍的に高めるための高効率フィン構造を細径ヒートパイプにより構築する研究を行った.

免震された精密生産施設のためのピエゾアクチュエータを用いた総合的アクティブ微振動制御システム
教授 藤田 隆史[代表者], 技術専門職員 嶋崎 守
半導体工場などの精密生産施設には,建物内部の設備機器をも効果的に地震から守るために,免震構造の採用が望ましい.本研究では,4基の多段積層ゴムで支持された2層建物モデル(3m×5m×4mH,総質量6t,免震層と上部構造物の柱と梁にピエゾアクチュエータを装着)を用いて,免震された精密生産施設の,設備機器や人間の歩行によって発生する内生微振動と,地盤振動や風による外来微振動を総合的にアクティブ制御するシステムを研究している.

MR流体を用いた可変粘性ダンパによる建築構造物のセミアクティブ免震
教授 藤田 隆史[代表者], 協力研究員 佐藤 栄児
MR流体を用いた可変粘性ダンパによって,免震効果を損なうことなく免震構造特有の大きな相対変位を出来るだけ小さくし得るセミアクティブ免震システムの研究を行った.まず,MR流体ダンパ(最大減衰力約8kN)の基本特性実験を行い,その解析モデルを構築した.さらに,縮尺免震建物モデル(2層鉄骨フレーム構造の上部構造物(総質量6450kg)を4台の転がり支承で支持し,コイルばねで復元力を与える方式の免震構造)に上記のMR流体ダンパを取り付けた実験モデルによって振動制御実験を行い,ほぼ満足し得るセミアクティブ免震性能を確認した.

ACサーボモータを用いた単結晶引上げ装置用アクティブ・パッシブ切換え型免震装置
教授 藤田 隆史[代表者], 研究員 鎌田 崇義, 民間等共同研究員 古川 裕紀, 研究実習生 晦日 英明, 研究実習生 林 洋一
単結晶引上げ装置は,弱地震動によって,機器自体ではなく製造中の単結晶が破損する.本研究では,この地震対策として,弱地震動に対しては良好なアクティブ免震性能を発揮して単結晶の破損を防止し,強地震動に対してはパッシブ免震によって引上げ装置自体の破損を防止するために,ACサーボモータを用いたアクティブ・パッシブ切換え型免震装置を開発している.本年度は,制御則にモデルマッチング法を用い,実験モデルを用いた振動制御実験を行って,優れた免震性能を確認した.

美術品用転がり型免震装置の研究
教授 藤田 隆史[代表者], 民間等共同研究員 上田 智士
本研究では,円弧と傾斜した直線からなる形状のレール上を転がる車輪によって鉛直荷重を支持する直線運動機構を,直交するように上下に重ねた機構を基本構造とする免震装置について,美術品展示ケースへの適用に関する研究を行った.実大の美術品展示ケースを用いた振動実験を実施し,良好な免震性能を確認するとともに,作成した解析モデルの妥当性を検証した.

スマート・タイヤ・システムの基礎的研究
教授 藤田 隆史[代表者], 助手 大堀 真敬, 大学院学生 石塚 達也
本研究では,自動車用タイヤのタイヤ発生力を計測し,計測データを無線通信によってリアルタイムに車体側へ伝送するシステムを開発している.タイヤ発生力の計測には,タイヤ・路面間に作用する6分力をホイールのひずみを通して計測する方法を採用しており,ハードウエアーの主要構成要素は検出ユニットモジュール,計測アンプモジュール,角度検出エンコーダである.本年度は,タイヤ試験機を用いた実験を行い,満足し得る結果を得た.さらに,実車試験も開始した.

スマート・タイヤ・システムを用いた自動車の運動制御に関する基礎的研究
教授 藤田 隆史[代表者], 研究員 鎌田 崇義, 助手 大堀 真敬, 研究実習生 赤澤 和哉, 大学院学生 浅田 千織, 研究実習生 増田 洋司
本研究では,スマート・タイヤ・システムを用いてタイヤ・路面間の力をリアルタイムで直接測定することを前提に,その計測値を用いた自動車の運動制御について研究している.本年度は,スマート・タイヤ・システムによって算出が可能となるタイヤ稼働率を制御量とした直接ヨーモーメント制御手法を提案し,シミュレーション解析によって,従来の制御手法よりも良好な制御性能が得られることを示した.

スプリングバックレス成形を実現するための熱間・温間プレス成形
教授 柳本 潤[代表者], 大学院学生 小山田 圭吾
薄板プレス成形後のスプリングバックは,この技術分野における永遠の課題でありその低減技術の学術的・経済的効果は非常に大きい.近年,地球環境維持のための車両軽量化のために比強度の高い金属素材の利用が増加しているが,これらの素材のスプリングバックは大きく,製造加工において大きな問題となっている.本研究の過程で,高張力鋼板でも500℃といった温間温度域でスプリングバックをゼロにできることを,世界で始めて見出した.

超強加工によるスーパーファイン機能素材の一発創成
教授 柳本 潤[代表者], 大学院生 長藤圭介
熱間押出し法による,超微細粒金属素材の一パスでの創成について研究を行い,単純成分系鉄鋼材料でも粒系2ミクロンを下回るの素材の製造が可能であることを示した.

鉄系,マグネシウム系合金のセミソリッド加工
教授 柳本 潤[代表者], 助手 杉山 澄雄, 大学院生 李 静媛, 外国人客員研究員 吉 沢昇, 外国人協力研究員 郭 哲良
オーステナイト系ステンレス,展伸用マグネシウム合金について,セミソリッド状態での内部組織変化ならびに流動応力の特性について,高温高速多段圧縮実験装置を用いて精密な実験を行なっている.

半凝固処理金属の製造技術に関する研究
教授 柳本 潤[代表者], 助手 杉山 澄雄, 大学院学生 李 静媛
金属溶湯にせん断攪拌および急速冷却を加えて半凝固スラリーを連続的に製造する新しい方法として, せん断冷却ロール法(SCR法)を提案し, 各種条件下での製造実験を繰り返しつつ, プロセスの特性解明を進め, 所要の半凝固スラリーを得るのに要する加工条件を探索している. 併せて, 得られた半凝固スラリーの内部構造や凝固終了後の機械的特性について調査を進めている.

高機能圧延変形解析に関する研究
教授 柳本 潤[代表者], 研究機関研究員 劉 金山
1990年より供用が開始された圧延加工汎用3次元解析システムは, 多くの事業所・大学に移植され広範囲な圧延加工の変形・負荷解析に利用されている. 種々の圧延プロセスの解析を精度良く行うための改良は現在も継続して行われているが, 同時に本年度より, 財団法人生産技術研究奨励会に設置された特別研究会「高機能圧延変形解析研究会」において, 産学共同による利用技術開発を平行して実施している.

高温変形加工時の材料組織変化に関する研究
教授 柳本 潤[代表者], 技術官 柳田 明, 研究機関研究員 劉 金山
熱間加工においては塑性変形により誘起される再結晶を利用した, 結晶構造制御が行われる. この分野は, 加工技術(機械工学)と材料技術(材料工学)の境界に位置しているため, 重要度は古くから認知されてはいたものの理論を核とした系統的な研究が極めて少ない状況にあった. 本研究室では, 再結晶過程についての実験的研究と, FEMを核とした理論の両面からこの問題に取り組んでおり, 既に数多くの成果を得ている.

冷間集合組織創成に関する研究
教授 柳本 潤
冷間プレス加工による成形性を支配する要因は, マクロな視点では金属材料の面内異方性である. 面内異方性はミクロな視点では結晶方位分布により支配されるため, 塑性変形・再結晶・変態による結晶方位分布の変化の定量化は重要な課題である. 本研究では, 冷間集合組織創成メカニズムの検討と, 集合組織創成のための新たな加工機械の開発を目指している.

通電加熱の特性と変形加工への応用
教授 柳本 潤[代表者], 技術官 柳田 明, 大学院学生 和泉 亮
通電加熱圧延では均一温度分布を得ることが雰囲気加熱に比べ容易であり, 今後変形加工における温度制御手段として有効に機能していくことが予想される. 本年度はステンレス鋼の組織制御のための温度制御手段の確率を目的として, 通電加熱の特性を実験的に検討し, 圧延と組み合わせた組織制御を実施した.

異種材料の常温でのマイクロ固相接合
教授 柳本 潤[代表者], 助手 杉山 澄雄
広範囲な異種材料の接合に利用できる,材料分流を利用した接合方法を提案し,マイクロ部材の接合への適用について基礎研究を行っている.本年度は,サブミリ寸法について検討を行い,健全な接合が可能であることを実験的に明らかにした.

血流-血管壁の相互作用を考慮した数値解析
助教授 大島 まり[代表者], 研究員 鳥井 亮
心疾患あるいは脳血管障害などの循環器系疾患においては,血流が血管壁に与える機械的なストレスが重要な要因と言われている.本研究においては血流が血管壁に与える機械的なストレスに対して血管壁の変形が与える影響を解析するため,血流- 血管壁の連成問題に対する数値解析手法の開発を行ってきた.開発した数値解析手法を用いて実形状の脳動脈瘤をはじめ,幾通りかの血管形状について数値解析を行い,血管壁の変形が血管内の血流および血管壁面上のストレスの分布に影響を与えるメカニズムを解析している.

Image-Based Simulationにおける脳血管形状の血行力学に与える影響の考察
助教授 大島 まり[代表者], 研究員 鳥井亮, 助手(東大医学部) 庄島正明, 助教授(帝京大) 高木 清
重大な脳疾患であるくも膜下出血に対して,その主要因の脳動脈瘤の破裂に関連する手術ガイドライン作成が求められている.そこで,本研究では脳血管の血流を数値シミュレーションし,動脈瘤の発生,破裂のメカニズムの解明を目指している.シミュレーションに用いる3次元血管モデルについて,医用画像から血管抽出および,3次元構築の手法の問題点と解決法を述べる.さらに,モデルの中心線を抽出することにより形状をパラメータ化し,モデルをパラメトリックに変形して血管形状の血行力学に与える影響を考察する.

医用画像に基づくWillis動脈輪の3次元モデリングと大規模シミュレーション
助教授 大島 まり[代表者], 研究員 鳥井亮, 大学院学生 星名真幸
脳動脈の発症について起きやすい家系があり,また,発症部位も同じところにできる傾向があることが報告されている.そこで,同じ家系から幾つかの症例を取り出し,好発部位を含むWillis動脈輪をMRAから抽出し,3次元モデリングする手法の開発を行った.この際に,血管の形状を表すパラメータを自動抽出するような導出方法を開発した.さらに,大規模シミュレーションを行うことより,血管形状が血行力学に与える影響を検証した.

ダイナミックPIVを用いた血管モデル内の可視化計測
助教授 大島 まり[代表者], 技術職員 大石 正道
脳動脈瘤が比較的できやすいと言われる内頚動脈の湾曲部においては,強い二次流れと非定常性により,局所的な壁面せん断応力が加わる.その湾曲を模した血管モデル内の流れを可視化計測することにより,曲がりと流速の影響を考察することを目的としている.非侵襲計測法であるPIV(Particle Image Velocimetry:粒子画像流速測定法)は瞬時流れ場の速度分布を調べる方法として最も進化したレーザ計測法ではあるが,振動や脈動等の非定常現象を対象とするには時間分解能が不足していた.そこで近年開発された高速度カメラ及び高繰り返しレーザを用いて,時間分解能を改善したダイナミックPIVシステムを構築し,時系列速度分布の取得を行っている.

Micro PIVによるマイクロチップ内流れの可視化計測
助教授 大島 まり[代表者], 助教授 藤井 輝夫, 大学院学生 木下晴之, 大学院学生 金田祥平, 技術専門職員 瀬川茂樹,山本 貴富喜
MEMS技術を利用した生化学システムはマイクロ化により,反応および拡散が促進されるといった利点を持っている.しかし,マイクロ流路内の流れの物理については不明な点が多い.そこで,マイクロチャネル内で生じる電気浸透流について,これを蛍光粒子を用いて顕微鏡下で可視化し,どのような現象が起こりうるかについて詳しい観察計測実験を進めている.また,それらの観察・計測結果に基づき,材料の種類や溶媒のpHなどに応じて変化するチャネル壁の表面電位と電気浸透流との関係について,詳細な考察を行っている.

in vitro 脳動脈瘤モデル内のステレオPIV計測
助教授 大島 まり[代表者], 大学院学生 明渡佳憲, 技術職員 大石正道
脳動脈内の流れは3次元の複雑な流れを示しており,in vitroにおける速度3成分を求める計測手法は流動現象を把握するうえで重要である.そこで,本研究ではCT画像を元に構築した脳動脈瘤の3次元モデルを光造形により作成し,瘤内の流れのステレオPIV計測を行った.その際に必要となるキャリブレーション手法として,キャリブレーションプレートを用いずに行うことのできる新しい手法の開発を行った.さらに,シリコンで作成した脳動脈瘤モデル内の流れ場をステレオPIVにより可視化計測する.

格子ボルツマン法による細動脈内の血流解析
助教授 大島 まり[代表者], 大学院学生 張東植
細動脈では流れのせん断の大きさにより赤血球が変形あるいは凝集して非ニュートン的な挙動を示す.そこで,このようなマイクロ混相流となっている細動脈内の血液の流れを格子ボルツマン法を用いて解析を行う.また,このような手法で血球と血漿成分の相互作用を把握することにより,血液の分析チップの設計にフィードバックしていく.

付着生物の空間と餌をめぐる競争モデルの開発
助教授 北澤 大輔
ムール貝は,沿岸に設置された人工構造物に付着する生物のうちで最も優占する種であり,懸濁物の摂取や酸素の消費などの活動により周辺水質に影響を及ぼす.従来は,その影響を定量的に予測するために一個体の成長モデルを構築し,各個体の餌摂取・酸素消費速度と個体数を乗じることによりムール貝群集の活動を評価してきた.しかしながら,ムール貝はお互いに積み重なって生息するため,群集の内部に生息するムール貝は必ずしも餌摂取・酸素消費活動を満足に行うことができるとは限らない.すなわち,既存のモデルではムール貝がすべて活動していると仮定され,ムール貝群集の餌摂取・酸素消費速度を過剰評価している可能性がある.従って,ムール貝の空間と餌をめぐる競争を考慮に入れ,ムール貝群集の餌摂取・酸素消費速度をより精度良く予測できる競争モデルを開発した.

琵琶湖全循環モデルの開発
助教授 北澤 大輔
琵琶湖の北湖湖底付近において見られる溶存酸素濃度の低下は,琵琶湖が富栄養化へ向かって進行していることを示す一つのバラメータであり,富栄養化は漁獲高にも影響を及ぼしていると考えられている.この溶存酸素濃度の低下の原因としては,近年の地球温暖化・陸域からの有機汚濁物質の負荷増大などのいくつかの要因が挙げられる.特に,温暖化は湖内の鉛直混合を弱め,かつ温暖化による河川水温の上昇は酸素を多く含んだ河川水の湖底への流入を妨げているとの報告がある.従って,温暖化が北湖湖底付近の溶存酸素濃度に及ぼす影響を評価するために,湖流や水温を予測する物理モデルと,湖内の低次生態系や栄養塩濃度・溶存酸素濃度を予測する化学・生物モデルとを結合させた琵琶湖全循環モデルを開発した.

細胞内への糖類等分子の細胞膜輸送量の計測・解析に関する研究(継続)
助教授 白樫 了[代表者], Uni. Wuerzburg, Dr. V. L. Sukhorukov, Uni. Wuerzburg Prof,Dr U. Zimmermann, 大学院学生 山内 一弘
細胞のelectroporation等の能動的な膜輸送促進や体積制御による膜輸送は,細胞内外の物質の組成が異なる場合,細胞膜を介して物質の交換輸送を行う.本研究では,これらの物質輸送量や膜輸送特性値を簡便な実験により推定する解析方法の開発を目指している.

食品冷凍における氷晶形態の非破壊推定法の開発(継続)
助教授 白樫 了[代表者], 大学院学生(東大院農) 上野 茂昭, 助手 高野 清
生鮮食品の保存や凍結乾燥を行う食品では,冷凍した際に内部の氷晶のサイズがその後の食品の品質をほぼ決定してしまう.このような氷晶の状態を非破壊的に計測することができれば,実用の食品加工プロセスや冷凍保存過程に適用できるができる.本研究では,食品の誘電物性を利用した簡便な非破壊検査法について原理検証と実際の凍結対象での実験を行っている.

大規模集積流路ネットワークの形態設計・評価に関する研究
助教授 白樫 了[代表者], 大学院学生(東大院工) 田村 学, 助手 高野 清
本研究では,流路系を熱物質交換という機能の下に組織化されたマルチスケールの大規模集積流路ネットワークとしてとらえることで,流路ネットワークの設計・製造の概念を構築することを目的としている.具体例として,携帯サイズの燃料電池のリフォーマーや消化器系の人工臓器の流路ネットワーク設計と製作をおこなっている.

メタンハイドレートの誘電損失特性に関する基礎研究
助教授 白樫 了[代表者], 大学院学生 笠原 邦彦
高圧・氷点以上の低温環境下で安定なメタンハイドレートの誘電スペクトル特性を明らかにすることで,海中のハイドレートの探査,分解促進へ利用の可能性を調べる

耐凍結・乾燥性糖類(トレハロース)が生体由来物質(タンパク質)の凍結乾燥に及ぼす影響に関する研究
助教授 白樫 了[代表者], 助教授 金 範凵C 助教授 野地 博行, 助教授 竹内 昌治, 大学院学生 沈 巧巧
二糖類のトレハロースは,細胞やタンパク質の保護効果があることが知られている.本研究では,トレハロースのタンパク質に対する活性維持効果を実験的に調べる.また保存中に変化するトレハロースが内包する結合水の状態変化を種々の方法で測定することで,結合水の状態とタンパク質の活性の関連性を調べる.

超柔軟マニピュレータに関する研究
助教授 鈴木 高宏[代表者], 助手 新谷 賢
弾性の存在を必ずしも前提としない,より柔軟な系の動力学と制御を考え,それにより新たなロボットシステムを創造することを目的に研究を行っている.2004年度においては,索状超柔軟アームによるマニピュレーションの一つとして,投射・巻付きによる物体の捕獲についての研究を行い,その動力学の解析と簡単な実験装置を製作し基本的な検証を行った.

メカトロニック人工食道の開発
助教授 鈴木 高宏[代表者], 助手 新谷 賢
柔軟ロボティック・メカトロニックシステムの応用の一つとして,食道の蠕動による咀嚼物搬送機能を機械的機構に代替する,メカトロニック人工食道の開発を行っている.2004年度においては,第1号試作機を用いて,様々な粘度の対象物の搬送などの実験を行い,搬送能力の計測等を行った.また,対象の粘度測定からそのレオロジー特性が明らかになり,その特性の違いによる搬送効率の変化について明らかにした.

人間-自動車-交通流系の動的挙動と制御
助教授 鈴木 高宏
国際・産学共同研究センター サステナブルITSプロジェクト(sITS)に参加し,その研究テーマの一つとして開始した研究である.ITS環境の普及段階においては,自動運転車と人間の運転する手動運転車との混在が予想されるが,そのような環境は非常に動的で複雑な挙動を伴い,しばしば安全性や効率を損ね,ITS技術の本来の価値を発揮できないおそれがある.この動的挙動の解析と制御に関しては,以前にも簡単なシミュレーションによる検討を行ったものだが,sITSにおけるDS(運転シミュレータ)およびTS(交通シミュレータ)などを統合し,出来うる限り現実に近い交通環境を模擬可能なシミュレータ環境を用いることで,より現実的な解析や制御の研究が行える.2004年度においては,まずプロジェクトへの参加を行い,統合シミュレータの構築に協力を行った.

次世代流体解析システムの開発
計算科学技術連携センター, 助教授 谷口 伸行[代表者], 教授 加藤 千幸, 助教授 大島 まり, 特任教授 寺坂 晴夫, (財)日本自動車研究所所長 小林 敏雄, アドバンスソフト(株) 張 会来, アドバンスソフト(株) 山出 吉伸, 産学官連携研究員 山田 英助, 産学官連携研究員 王 宏, 産学官連携研究員 郭 陽, 産学官連携研究員 姜 玉雁, 産学官連携研究員 横井 研介
実用的な流れ数値解析のためには,流れ場の複雑さに応じて数理モデルや解析手法を合理的に選択あるいは併用することが必要である.本研究では,複雑形状の非圧縮性流れ場の解析を主な対象として,異なる数理モデルや解析手法に基づく複数の計算コードを開発し,それらの相互比較による相互検証,および,それらの高度な解析法の開発を行う.平成14年度からは,文部科学省ITプログラム「戦略的基盤ソフトウェアの開発」と連携して,汎用乱流解析プログラム開発における計算法,解析モデルの改良,検証を行う.今年度は,特に,工学応用における実用化を目指し,LESに基づく実証計算を進めるとともに,次世代流体解析ソフトウェアFrontFlowを開発,公開した.

燃焼反応を伴う乱流の数値解析モデリング
助教授 谷口 伸行[代表者], 技術官 伊藤 裕一, 大学院学生 冨永 卓司, 電気通信大学助教授 坪倉 誠
工業的に用いられるスケールの火炉バーナやタービン燃焼器などの燃焼反応は流れ場やその乱れ特性に大きく依存しており,特にNOx制御や異常燃焼抑制の合理的な設計には燃焼乱流場の非定常現象を直接的に予測できる手法が求められている.本研究では,乱流LESおよびflameletの概念に基づく乱流火炎モデルの開発を進めており,今年度は特に,素反応流れ解析データに基づく火炎モデルの基礎検証,ガスタービン予混合燃焼器への応用などを進めた.

粒子混相乱流の数値解析モデリング
助教授 谷口 伸行[代表者], 助手 佐賀 徹雄, 技術官 伊藤 裕一, 大学院学生 武藤 昌也, トヨタ自動車(株) 山田 敏生
スプレーやエンジン・インジェクションに際して分散粒子を含む流れの予測制御が重要な設計要件となるが,工学問題において流れの乱れ特性との相互作用は十分解明されていない.本研究では乱流の非定常構造の解析に有効なラージ・エディ・シミュレーション(LES)に基づき分散粒子と乱れの相互作用の数値モデルを構築して,粒子混相乱流の数値予測シミュレーション法の開発する.本年度は,液滴燃料のスプレー燃焼流れの解析モデル開発,乱流中への噴霧拡散挙動の可視化実験解析を行った.

自動車の空気力学的特性に関する研究
助教授 谷口 伸行[代表者], 研究員 鬼頭 幸三, 東京理科大学教授 山本 誠, (財)日本自動車研究所所長 小林 敏雄
自動車などの車両の定常・非定常空力特性の解明,乱流騒音の制御,車室内冷暖房の空気流動の予測と制御に関する基礎研究を行っている.今年度は,特に自動車床下流れの数値予測に関する基礎研究として,床下車両形状やタイヤハウスの影響評価およびレイノルズ応力モデルの導入による剥離流れ予測の改善などを行った.

ネットワークを介した流体情報の可視化システムに関する研究
助教授 谷口 伸行[代表者], 大学院学生 宮地 英生
大規模な数値シミュレーションや高解像なデジタル画像センシングが研究のみならず設計開発の場にも普及しつつあり,流れ現象の多次元,非定常な解析データを取得することが比較的容易となった.本研究では,それらの流体情報の可視化解析のためのネットワークを介した遠隔協調システムの開発,評価を行っている.今年度は,特に,画像圧縮による「可視化」画像の劣化や,3次元画像表示の認識特性について検討した.

超音波モータを利用した超高真空対応回転導入器の研究
助教授 新野 俊樹
半導体技術やナノテクノロジーは近年目覚ましい進展を遂げており,今後,更なる微細構造物の加工や観察が必要となる.微細構造物の加工や観察には超高真空状態などコンタミネーションの少ない環境が求められるが,そのような環境下で動作する機械要素はあまりない.微細構造の加工や観察には電子線を用いた機器を使用することが多くみられ,それらの電子線は磁場などの影響を受けやすい.しかし,超高真空状態を保ち,電子線に影響を与えないというような機械要素はほとんどみられない.そこで,本研究室ではダイレクトドライブによる低速高トルク,ブレーキレス(静止状態で保持力を持つ)かつ非磁性である超音波モータに着目して超高真空状態に対応する回転導入器の開発を目指して研究をおこない5x10-8Paの超硬真空環境下での130時間以上の駆動に成功した.本年度は寿命のさらなる向上と駆動制御装置の構造を行った.

超高真空対応テレスコピック形Stick-Slipアクチュエータの開発
助教授 新野 俊樹
半導体技術やナノテクノロジーは近年目覚ましい進展を遂げており,今後,更なる微細構造物の加工や観察が必要となる.微細構造物の加工や観察には超高真空状態などコンタミネーションの少ない環境が求められるが,そのような環境下で動作する機械要素はあまりない.微細構造の加工や観察には電子線を用いた機器を使用することが多くみられ,それらの電子線は磁場などの影響を受けやすい.しかし,超高真空状態を保ち,電子線に影響を与えないというような機械要素はほとんどみられない.本研究室では,超高真空環境下に試料を導入したり,パラレルメカニズムを駆動できるアクチュエータとして,元の長さ100mm程度から最長300mm程度まで伸長することができ,なおかつオングストロームオーダの分解能を有するアクチュエータをめざし,テレスコピック形Stick-Slipアクチュエータを開発し,2x10-7Pa程度の高真空環境を維持したまま駆動できることを確認した.現在,安定した駆動を実現するための構造の改善と,駆動速度の向上をめざし研究を行っている.

SLSパーツの透明化に関する研究
助教授 新野 俊樹
樹脂粉末にレーザを照射することにより選択的に3次元形状を造形するSLSプロセスは,光造形など他のラピッドプロトタイピング手法に比べて,高強度な製品を造形できるという特徴がある一方,透明な造形物を作れない点において,光造形に劣っている.本研究ではSLSプロセスによって造形された製品に樹脂を含浸することによって,部品を透明化する手法を開発し,厚さ5mmの部品において全光透過率85%,曇度20%を実現した.

SLSパーツの高密度化に関する研究
助教授 新野 俊樹
樹脂粉末にレーザを照射することにより選択的に3次元形状を造形するSLSプロセスは,原理的にはほとんどの熱可塑性樹脂の造形が可能であり,製造現場における型フリー試作や少量生産への応用が期待されている.しかしながら現状では,粉末を製造が困難な場合が多いことや,造形物が多孔質になるために射出成形品と物理的性能が大きく異なることなどの問題点が残されている.本研究では,造形物を石膏に包埋,真空環境下で溶融・再固化することによって100%密度の造形物を作成することに成功した.

真空中静電浮上および浮上体の駆動に関する研究
助教授 新野 俊樹
微細構造の観察や加工に多用されている電子線の制御は,磁場擾乱の影響を受けやすいため,電子線応用機器周辺では強い磁場を発生する機器の使用は制限され,電子線直近では磁性体の存在する禁止されることが多い.また,電子線を用いた微細構造観察・加工においては真空が利用されるが,真空環境下では摩擦係数が大きくなり,摩耗も早くなるため,浮上制御技術の利用が望まれる.本研究では,摩擦フリーかつ磁場フリーな駆動機構として,静電浮上静電モータ駆動テーブルの開発を行っており,完全6自由度浮上された位置決めテーブルを,センサの分解能と同等の5umの精度で位置決めすることに成功した.

F1モーターの1分子操作
助教授 野地 博行
F1モーターの化学・力学エネルギー変換機構を解明するために,分子レベルでの操作実験を行う.これにより,反応速度定数がどのように回転角度に依存しているのかを明らかにする.

超微小チャンバーを利用した生体分子1分子実験
助教授 野地 博行[代表者], 教授 藤田 博之, 助教授 竹内 昌治
生体反応を超微小空間に閉じ込め,超高感度検出を行い,その反応機構を明らかにする.

膜タンパク質の1分子イメージング
助教授 野地 博行
膜タンパク質を人工平面膜に再構成し,そのダイナミクスを明らかにする.

情報・エレクトロニクス系部門

脳における情報表現および情報処理の数理モデルの研究
教授 合原 一幸
脳における情報表現についての理論的研究を進め,発火率による符号化と同期性による符号化を使い分けるデュアルコーディング仮説の提唱,神経細胞の集団平均発火率と単一神経細胞の試行平均発火率が等価になるエルゴード性の検討などの成果をあげてきた.また,これまで抑制性作用のみを持つと考えられてきたGABA作動性介在神経細胞が時として興奮性にも働きうるという最新の知見に基いた数理モデル化も行っている.さらに,これらの理論解析によって有用性が確かめられた計算原理の電子回路への実装にも取り組んでいる.

細胞内反応ネットワークにおけるゆらぎの数理解析
教授 合原 一幸
近年,細胞内化学反応が大きな確率的ゆらぎを示しうることが実験的に示されているが,このようなゆらぎを内在する細胞内化学反応を要素過程とする細胞内ネットワークは全体としてある種の機能を高い再現性を持って実現している.本研究では,確率性を取り込んだ評価・解析を可能にするための数理的手法の構築とシミュレーションを用いた発見的手法を並行して行うことにより,細胞内反応ネットワークがこのようなゆらぎを,抑制もしくは積極的に利用しているメカニズムを明らかにすることを目指している.

非線形動力学の工学的応用
教授 合原 一幸
非線形動力学を利用した情報処理について研究している.組合せ最適化問題やイメージの復元などのように,莫大な数の解を候補としてもつような工学的問題に対しては,できるだけ望ましい解を比較的短時間で得ることが求められる.これらの問題に対処するためのヒューリスティック解法の一つとして,非線形写像ネットワークの自己組織的なカオスダイナミクスを利用した効率良いアルゴリズムを提案した.また,非線形システムの時系列データをある閾値で符号列に変換するときに,情報量を落とさないための効率良い閾値の推定方法を提案した.

光電子デバイス技術の開発研究
教授 荒川 泰彦[代表者], 教授 榊 裕之, 教授 藤田 博之, 教授 平川 一彦, 教授 平本 俊郎, 教授(スタンフォード大) 山本 喜久, 教授(工学系) 樽茶 清吾, 教授(ヴルツブルグ大) A.Forchel, 教授(京都大) 野田 進, 教授(横浜国大) 馬場 俊彦, 特任教授 石田 寛人, 特任教授 菅原 充, 特特任教授 勝山 俊夫, 助教授 高橋 琢二, 助教授 年吉 洋, 助教授(工学系) 染谷 隆夫, 特任助教授 塚本 史郎, 講師 岩本 敏
2002年より文部科学省においてTプログラム世界最先端IT国家実現重点研究開発プロジェクト「光・電子デバイス技術の開発」が発足した.量子ドットデバイスを中心とした光・電子デバイス技術の研究開発.ナノ構造形成技術及び光電子物性制御技術を利用して,40bps・低チャープ量子ドット光源,及び単一光子発生素子の技術基盤を確立することを目的としている.本プロジェクトは,ナノエレクトロニクス連携研究センターを集中研として,企業との強いリンクのもとで研究開発を推進し,産学官連携によるナノ技術に立脚した次世代IT素子技術基板の確立をはかっている.富士通研究所,東芝,日立製作所,日本電気がプロジェクトに参加し,また,NTTとも緊密な協力関係にある.さらに,京大,横浜国大,スタンフォード大学など国内・国際連携拠点と強い連携研究チームを構成している.本プロジェクトは,経済産業省との連携プロジェクトとしても位置づけられている.本プロジェクトは,量子ドット技術の展開および光・量子科学の理解に立脚して,世界に先駆けて,高性能量子ドットレーザや高温動作可能もしくは光通信波長帯単一光子発生素子の実現に成功した.さらに高Q値を有するフォトニック結晶共振器,MEMSを有するフォトニック結晶スイッチなどを実現するとともに,量子ドットとフォトニック結晶との融合をはかった.

量子ドットの形成技術の開拓
教授 荒川 泰彦[代表者], 特任助教授 塚本 史郎, 講師 岩本 敏, 助手 西岡 政雄, 助手 石田 悟巳
次世代高機能量子ドット光デバイスの実現に向け,その重要な基盤技術である光通信用波長帯における高均一・高密度量子ドットの結晶成長技術の確立を行った.まず,量子ドットの成長パラメータである供給量及び成長速度を最適化することにより室温で1.32mmにて発光する極めて高均一な量子ドット(半値幅16.5meV)を作製することに成功した.また,Sbの導入による高密度量子ドットの形成技術を探索した.さらに,高品質GaN量子ドットの形成技術も確立した.

量子ドットにおける光・電子物性の探索とその制御
教授 荒川 泰彦[代表者], 講師 岩本 敏, 特任助手 中岡 俊裕, 産学連携研究員 加古 敏
単一量子ドット分光技術により,単一ドット電子準位のマイクロマシンによる制御を実証し,さらに,キャリアダイナミクス,量子演算へ向けたスピン物性の制御を目指して研究を進めている.まず,積層ドットにおけるドット間キャリアトンネリングの存在を時間分解測定,単一ドット列の励起スペクトル測定により明確にした.また,GaSbドットにおいて,100nsecを超える長いキャリア寿命を観測した.これは量子メモリなど将来タイプUより,In(Ga)As系ドットにおけるスピン物性(g因子)を評価し,量子ドットのサイズ,形状によるg因子制御の可能性を示した.

高性能量子ドットレーザの開発
教授 荒川 泰彦[代表者], 客員教授 菅原 充, 講師 岩本 敏, 産学連携研究員 江部 広治, 産学連携研究員 羽鳥 伸明, 産学連携研究員 石田 充, 産学連携研究員 館林 潤
高速変調・低チャープ動作の次世代光通信用波長帯半導体レーザ実現に向け,まず量産性において有利とされるMOCVD法を用いて積層InAs量子ドットを活性層に持つGaAs基板上量子ドットレーザ構造の試作を行った.量子ドットの長波長化の妨げとなっているポストアニール効果を抑制するため量子ドットレーザの上部クラッド層を低温で成長させる技術を確立した.これらの結晶成長技術を元に量子ドットレーザを作製した結果,全MOCVD法では世界最長波長である1.28ミクロンでの室温連続発振を達成した.また,量子ドットレーザにおいて,量子井戸レーザと比較してチャーピング効果が抑制されることを実験的に明らかにし,直接変調用光源として有望であることを示した.さらに,p変調ドープ構造で温度無調整で10Gbpsの動作を20-70度Cの温度範囲で実現した.

量子暗号通信に向けた単一光子発生素子の研究
教授 荒川 泰彦[代表者], 研究員 横山 直樹, 講師 岩本 敏, 産学連携研究員 加古 敏, 産学連携研究員 高津 求, 産学連携研究員 宮沢 俊之
将来的な量子通信実現のキーデバイスとして,量子ドットを用いた単一光子光源が注目を集めている.すでに多くのグループにより量子ドットからの単一光子放出が確認されているが,発光波長が光通信波長帯と比較して短波長のみであった.量子通信の高速化のためには,光ファイバーの分散,減衰特性の良い光通信波長帯での単一光子光源の実現が必須である.本研究では量産性に優れたMOCVDを用い,InP基板上に作製されたInAs量子ドットを2段階キャップ法によりInPで埋め込むことにより,光通信波長帯である1.3〜1.55ミクロンで発光する量子ドットを作製し,光通信波長帯での単一ドットの発光を確認した.さらに同試料を用いた光子相関測定により,多光子発生が抑制された非古典光放出を,光通信波長帯において世界で初めて確認した.並行して,青紫色GaN系量子ドットを用いた単一光子光源の開発を進め,200Kにおける動作を確認した.

MEMS- フォトニック結晶デバイスの設計と作製
教授 荒川 泰彦[代表者], 講師 岩本 敏, 研究員(NEC) 山田 博仁, 助教授 年吉 洋, 教授 藤田 博之, 助手 石田 悟巳
機能性フォトニック結晶素子としてMEMS集積化フォトニック結晶素子を提案し,その基本動作を数値計算で示してきた.本年度,MEMS集積化フォトニック結晶導波路素子の作製に成功し,光スイッチング動作を初めて実現した.本方式は,極微小波長可変光源への応用も可能であり,数値解析に基づく設計,作製技術の確立を進めている.

量子ドットとフォトニック結晶の融合〜次世代なの光デバイスの実現を目指して〜
教授 荒川 泰彦[代表者], 講師 岩本 敏, 助手 石田 悟巳, 特任助手 中岡 俊裕, 産学連携研究員 館林 潤
量子ドットとフォトニック結晶を融合することで,電子系と光子系の相互作用を増強することができ,電子と光子を同時に制御した究極のナノ光デバイスを実現できると期待できる.その実現のため,量子ドットを有する高Q-フォトニック結晶微小共振器の設計,作製,評価を行っている.またフォトニック結晶構造を用いた高効率単一光子光源の検討も進めている.

フォトニック結晶機能素子の研究
教授 荒川 泰彦[代表者], 特任教授 勝山 俊夫, 講師 岩本 敏, 研究員 山田 博仁(NEC), 産学連携研究員 細見 和彦, 産学連携研究員 深町 俊彦
フォトニック結晶を用いた微小集積機能光回路の実現をはかっている.スイッチなどを実現するとともに,分散補償デバイスとして積層薄膜型フォトニック結晶の検討を行い,波長依存性がなめらかで,かつ大きな遅延時間差をもつ構造を実現した.また,これを多数積み重ねることによって遅延時間差の増大が可能であることなどを見出した.さらに,40Gbpsにおいて伝送実験を行い,分散補償効果が有効であることを実証した.高度エッチング技術の開発も進めている.

窒化物半導体ナノ構造とそのデバイス応用
教授 荒川 泰彦[代表者], 講師 岩本 敏, 産学連携研究員 星野 勝之, 産学連携研究員 加古 敏
GaN/AlNヘテロ構造は,自発分極差やピエゾ電界による内部電界によって外部電界がない状態においてでも量子閉じ込めシュタルク効果が顕著に現れ,量子井戸や量子ドット中に数MV/cmの強い内部電界が生じるユニークな系である.今年度はGaN/AlN量子ドットにおける単一量子ドット分光法を確立し,ここの量子ドット中の電子状態・発光特性の解明に重点を置いて実験・検討を行った.単一量子ドット分光は,顕微発光分光法と試料表面にメサ構造を形成することで行った.横サイズが200nmのメサにおいて,各々単一の量子ドットに対応した数個の発光ピークを観測できた.また発光積分強度の励起光強度依存性から,励起子基底状態と励起子分子状態からの発光を確認し,内部電界によって励起子分子の結合エネルギーが負になることを明らかにした.この現象を利用して単一光子発生素子や面発光レーザを開発している.

有機分子半導体エレクトロニクス・フォトニクス
教授 荒川 泰彦[代表者], 講師 岩本 敏, 特任助手 北村 雅季
欠陥構造を有するフォトニック結晶(PhC)の発光層に有機分子を利用できれば,発光の単色化や強度の増大など,様々な興味深い特性が期待できる.我々は,SiO2の中空構造を利用し有機物を発光層とする点欠陥2次元PhCの作製に成功した.欠陥モードに起因する発光ピークは通常の10倍以上の強度に達し,スペクトル幅1nm以下の発光スペクトルも得られている.発光のピーク波長はPhCの格子定数により制御可能である.本研究の点欠陥PhCを利用し,有機レーザ,単一光子発生素子,バイオセンサー等への応用が期待できる.

自然雷の研究
教授 石井 勝[代表者], 技術職員 斎藤 幹久, 技術職員 藤居 文行, 協力研究員 奥村 博, 協力研究員 Syarif Hidayat
自然雷の放電機構, 雷放電のパラメ−タに関する研究を, おもに電磁界による観測を通じて行っている. また, 雷放電位置標定システムの精度向上, VHF帯およびMF帯電磁波の多地点での高精度時刻同期観測による雷雲内放電路の3次元位置標定, 静的電界変化の多地点観測による雷雲内電荷分布の研究を行っている.広域雷放電位置標定システムのデータ解析を通じて,多地点同時落雷の様相を明らかにした.

電磁界パルス(EMP)の研究
教授 石井 勝[代表者], 大学院学生 宮嵜 悟, 協力研究員 馬場 吉弘
雷放電や, 高電圧回路のスイッチングに伴って発生する電磁界パルス(EMP)のモデリング, 伝搬に伴う変歪, 導体系との結合などについて研究を進めている. 電磁界変化波形の多地点測定データにもとづく帰還雷撃放電路のモデリング,至近距離で観測された電磁界微分波形にもとづく帰還雷撃開始時の雷放電路内電流分布推定を試みている.

雷サージに関する研究
教授 石井 勝[代表者], 大学院学生 宮嵜 悟, 協力研究員 馬場 吉弘
3次元過渡電磁界解析コードと回路解析コードにより, 送配電線や建築物に落雷が生じた時に発生する雷サージを立体回路で計算し, 電気設備や建築物の幾何学的構造,大地導電率,雷放電路の特性などが雷サージ波形に及ぼす影響を調べている. また発生する雷サージ波形は波尾の短い非標準波形になるため,数十cm級気中ギャップの非標準波形電圧による絶縁破壊特性を実験的に検討している.

インパルス高電圧計測の精度向上に関する研究
教授 石井 勝[代表者], 協力研究員 馬場 吉弘
抵抗分圧器を使用したインパルス高電圧計測を, モーメント法またはFDTD法による3次元過渡電磁界解析手法で数値的に模擬し, 種々のパラメータが測定精度に及ぼす影響を調べている. また国家標準級測定系同士の比較試験を通じて,このクラスの測定系の不確かさを検討した.

開示条件を制御可能な電子文書墨塗り技術
教授 今井 秀樹
署名つき電子文書は,必ずしも署名したときのまま利用されるとは限らない.たとえば,行政文書が情報公開制度に基づき開示されるときには,そこに記述された個人情報や国家安全情報は,通常「墨塗り」された上で開示される.この一連の手続きを従来の電子署名技術を使って実現しようとした場合,保管時に付与した署名が,文書の一部が墨塗りされたことにより,検証できなくなる可能性がある.この問題への対策技術として,電子文書墨塗り技術が提案されている.われわれは,開示部分に対する追加的な墨塗りの可否を制御可能かつ開示箇所の個数を秘匿可能な電子文書墨塗り技術を提案した.

Wireless networking
教授 今井 秀樹
Wireless networking evolves towards IP-based heterogeneous networks,providing ubiquitous connections among users and resources. To maintain continuous user connectivity, cellular systems, wireless LANs and Internet need to be interconnected. This leads to the development of IP-based heterogeneous networks. The challenge resides in the interconnection of the different systems in order to support user applications such as real-time and non real-time services. In this context, mobility, signalling for different applications and security are crucial issues. The three former aspects are related: the impact of security protocols, of mobility protocols and signalling protocols on the Quality of Service (QoS) performances need to be evaluated in an IP based heterogeneous environment where users are roaming within one system and from one system to another. Mobile stations may roam from WLAN to cellular networks without any interruption of the connection and of the ongoing session. This involves that the latency introduced by security, signalling and mobility procedures in the vertical handover should be small enough so that user does not notice the handover. This is a challenge when the user is using real-time services that are time-stringent applications. The real-time applications considered here are voice applications, especially Voice over IP.The support of real-time applications is a crucial issue in IP-based heterogeneous networks and it has received the highest attention here.At present, the main expected outcome of this research. project is formulation, analysis and solution to the problem of the support of real-time services, such as Voice over IP.

S-boxを利用したブロック暗号に対するキャッシュ・タイミング攻撃の解析
教授 今井 秀樹
S-boxを利用して設計されたブロック暗号の実装に対する攻撃として,キャシュ・メモリの動作に注目して暗号化鍵を推定する攻撃法がいくつか提案されている.本研究では,NECの角尾らが提案した,S-boxへの入力差分に注目した攻撃法を理論的に解析し,数種類の鍵推定法から最適なものを決定するのに成功している.

単一のパケットを大容量記憶装置なしに事後追跡できるIPトレースバック技術
教授 今井 秀樹
インターネット環境においては,通常,発信元アドレスの真偽に関係なく宛先へパケットが送られる.そのため,他人への成り済ましが容易にできる.IPトレースバック技術は,パケットの受信先から実際の発信元を特定できる,逆探知手法である.残念ながら,既存の方法の内で事後追跡が可能な方式では,追跡のために,高速動作する大容量記憶装置の設置か,多くのパケットの収集が必要となる.我々は,Bloomフィルタとパケットマーキング法を組み合わせることで,単一のパケットを大容量記憶装置なしに事後追跡できる方式を提案した.

データマイニングを用いたIDSログ分析結果の活用
教授 今井 秀樹
侵入検知装置(IDS)を利用した自動防御システム構築への研究が行われている一方で,各企業等のポリシーに基づいた柔軟な防御を行うためには,攻撃に関する知識を身につけた管理者とIDSが一体となった統合防御システムが必要である.また,管理者には,IDSのログを端緒とした深刻な攻撃行為に対する防御が求められる.本研究では警察庁が運用する定点観測システムで収集した大量の攻撃データを対象に,データマイニング手法を用いることにより,攻撃間の関連性を発生確率とともに抽出している.また,管理者がより的確に攻撃を予測できるよう,攻撃者のドメインの粒度に応じて多様な分析を行っている.本研究は,管理者が分析結果を活用することにより,攻撃の流れに関する知識を有し,深刻な攻撃に対する事前防御方策の決定・実行に資することを期待している.

情報量的に安全な非対称認証における仲裁者の役割
教授 今井 秀樹
従来の情報量的に安全な認証方式の多くにおいては,第三者に対して証拠性を主張できないなどの問題があり,これに対し,非対称な構造を導入することにより,通信を行う二者間で係争が起こった際には,仲裁者が客観的にいずれの主張が正当であるかを判断できる手法の提案がなされている.本研究においては,先行研究の誤りを指摘し,仲裁者に求められる要件を明示するとともに,比較的簡易な要件のみを満足する仲裁者を用いて非対称認証を実現する手法を示した.

量子物理系をリソースとした情報セキュリティ技術の研究
教授 今井 秀樹
情報論的に安全な暗号プロトコルのためのリソースとしてある種の量子系が利用できることが指摘されて以来,いわゆる量子暗号は注目を集めている.この分野では,暗号理論としての解析的研究から実装に向けた技術的研究まで,非常に広範な研究が行われている.本研究では,産学協同プロジェクトに参加し,幾つかの暗号プロトコルの考察とその安全性の評価,およびその基盤技術に対する理論的考察などを行っている.

Directed Acyclic Graph Encryption (DAGE) and Efficient Broadcast Encryption
教授 今井 秀樹
(1) DAGE generalizes hierarchical identity-based encryption (HIBE) schemes, which dealt only with tree hierarchies of identities, to more complex ones namely directed acyclic graph (DAG) hierarchies. We provide a unified security notion for arbitrary DAGs. It turns out that we can cast any key-evolving encryption primitives as DAGE (varied by the underlying DAGs), thus the security notion unifies the notions of these primitives. This helps us relating and understanding more about them. A secure concrete construction of DAGE for arbitrary DAG is then realized. (2) A new efficient broadcast encryption scheme is proposed. It is the first scheme that obtains ciphertext and key size independent of n while keeping computational cost sub-linear in n.

Formal Analysis of Security Protocols
教授 今井 秀樹
Security protocols were developed to enhance and overcome many flaws of security.However security protocols are still vulnerable to many kinds of attacks even for those claimed to solve security holes in previous protocols. Formal methods were pioneers to detect some security flaws in security protocols, which were used for years, and still lead the research in this domain. In our research we specify security protocols using CSP/Casper and other tools, verify their security properties: Such as authentication and secrecy using the model checking FDR, and compare it with hand proves result of those protocol. Besides, we attempting to enhance the efficiency of those tools.

単一のパケットを大容量記憶装置なしに事後追跡できるIPトレースバック技術
教授 今井 秀樹
インターネット環境においては,通常,発信元アドレスの真偽に関係なく宛先へパケットが送られる.そのため,他人への成り済ましが容易にできる.IPトレースバック技術は,パケットの受信先から実際の発信元を特定できる,逆探知手法である.残念ながら,既存の方法の内で事後追跡が可能な方式では,追跡のために,高速動作する大容量記憶装置の設置か,多くのパケットの収集が必要となる.我々は,Bloomフィルタとパケットマーキング法を組み合わせることで,単一のパケットを大容量記憶装置なしに事後追跡できる方式を提案した.

Generic Public Key Conversion with Optimal Redundancy
教授 今井 秀樹
This is the first time that a generic conversion with optimal message redundancy is built. Our scheme is probably secure, and applicable with almost all public key encryption primitives. Communication bandwidth is emphasized on, so that it makes great sense in the bandwidth restricted network. Theoretically, it also points out how much randomness is necessary for CCA security generally.

再送方式に適したMulti-Edge型Rate-Compatible LDPC符号の構成法
教授 今井 秀樹
通信システムには様々な機能ブロックが存在するが,受信パケットに誤りが生じた場合に,通信品質を維持するのに必要な機能として再送方式が挙げられる.従来この再送方式に対してターボ符号を用いたパンクチャリングによるHybrid ARQ 方式が有効であることが知られているが,広い符号化率に対して通信路容量に接近する性能を示すまでに至っていない. 我々は,広い符号化率に対して通信路容量に接近する性能を示す再送方式を実現する為にMulti-Edge型Rate-Compatible LDPC符号構成法とその設計法を提案した.この符号を用いたHybrid ARQ方式によりLDPC符号単体の性能を上回る誤り訂正能力を示す事を確認しており,通信路容量へ近づく通信システムの一方式を示した.

Intrusion detection systems: Architecture, detection, privacy
教授 今井 秀樹
Intrusion detection systems (IDSs) used to maintain networks security against any possible attacks. In our research, we work on detection algorithms to build more efficient detection models, and studying how to protect users privacy against any possible violations caused by IDSs. Also, besides studying alarms reductions techniques, we try to develop more efficient and secure architecture for distributed IDS.

Leakage-Resilient Authenticated Key Exchange Protocol
教授 今井 秀樹
Authenticated Key Exchange (AKE) protocols enable two entities, say a client (or a user) and a server, to share common session keys in an authentic way. As a main research, we reviewed the previous AKE protocols under the realistic assumptions: (1) High-entropy secrets that should be stored on devices may leak out due to accidents such as bugs or mis-configureations of the system; (2) The size of human-memorable secret, i.e. password, is short enough to memorize, but large enough to avoid on-line exhaustive search; (3) TRM (Tamper-Resistant Modules) used to store secrets are not perfectly free from bugs and mis-configurations; (4) A client remembers only one password, even if he/she communicates with several different servers. Then, we proposed a more efficient Leakage-Resilient (LR-AKE) protocol that has immunity to the leakage of stored secrets from a client and a server (or servers), respectively, where the client keeps one password in mind and stores one secret value on devices.

Security Of Multiple Encryptions
教授 今井 秀樹
In a practical system, a message is often encrypted more than once by different encryptions, here called multiple encryption, to enhance its security. Additionally, new features may be achieved by multiple encrypting a message, such as the key-insulated cryptosystems and anonymous channels. Intuitively, a multiple encryption should remain "secure", whenever there is one component cipher unbreakable in it. However, this may not be true according to adaptive chosen ciphertext attack (CCA), even with all component ciphers CCA-secure. We formalize an extended model of (standard) CCA called chosen ciphertext attack for multiple encryption, then apply analysis the security of multiple encryption. We also apply these results to key-insulated cryptosystem.

光子数分割攻撃に対してより頑強な量子鍵配送プロトコルの提案
教授 今井 秀樹
単一光子量子鍵配送プロトコルを弱コヒーレントレーザで実装した場合,無視できない確率で多光子が発生するため,光子数分割攻撃によって長距離量子鍵配送の安全性がなくなることが知られている.我々は,BB84プロトコルとSARGプロトコルを組み合わせたプロトコルを提案し,光子数分割攻撃に対する頑強性という観点から,提案プロトコルがBB84プロトコルやSARGプロトコルより長距離量子鍵配送に対して頑強であることを示した.

タイトな証明可能安全性を持つIDベース暗号
教授 今井 秀樹
IDベース暗号はID情報を公開鍵として利用する事が可能な暗号方式であり,2001年のBoneh-Franklin方式の発表以来,様々な方式が提案され,現在では強力な安全性証明が可能な方式が発表されている.しかし,安全性の仮定となる問題へタイトな帰着がなされた方式は現在までに知られていない.そこで我々は,Gap-BDH問題へのタイトな帰着が可能である方式を提案した.提案方式はIDベース暗号としては初めて,タイトな安全性証明が可能な方式である.

コンテンツ著作権保護
教授 今井 秀樹
デジタルメディアの普及に伴い,デジタルコンテンツの不正な流通が盛んになっている.この不正な流通を防ぐとともに,コンテンツの正当な利用が可能であり,しかも,利用者の利便性を損なわないDRMが要求されている.この要求条件に照らしたコンテンツ著作権保護の研究を行っている.

より強力な攻撃者に対するブラックボックス追跡方式の研究
教授 今井 秀樹
コンテンツ配信者が暗号化したディジタルコンテンツをサービス加入者(ユーザ)に同報通信路を利用して配信するシステムにおいて,不正に作成された復号器の入出力を観測することのみにより,その復号器の作成に加担した不正ユーザを特定することをブラックボックス追跡と呼ぶ.公開鍵方式に基づく従来方式であるKurosawa-Desmedtの手法やBoneh-Franklinの手法では,ブラックボックス追跡の処理ステップ数が莫大であるという問題があった.この他に,秘密分散を応用した方式が知られているが,この方式では,より強力な攻撃者(不正復号器)を想定した場合,ブラックボックス追跡が不可能である.本研究では,効率的な処理ステップ数での,より強力な攻撃者に対するブラックボックス追跡方式を提案する.

可搬媒体を用いたクローン端末発見法
教授 今井 秀樹
現在コンテンツの不正コピーを助長するといった不正な動作をする端末を悪意ある存在によって製造されるという問題がある.この対抗策として,管理団体を設立し信頼できるメーカにのみライセンスを配布し,端末に埋め込んでもらうという方法がある.しかしこの方法ではライセンスの外部漏洩により同じライセンスを持つ端末(クローン端末)が偽造される問題がある.そこで我々は,可搬媒体を利用して,端末のネットワーク利用を考慮せずにクローン端末を発見する手法を提案した.

安全なP2Pオンラインゲームのプロトコルの研究
教授 今井 秀樹
P2Pでオンラインゲームを行う主なメリットは負荷分散である.P2P型アプリケーションはサーバ・クライアント型の場合と比べて,通信障害に強いという特徴がある.一方,安全なプロトコルを作るために,信頼できる第三者(TTP)や鍵の認証局(CA)などを仮定してしまうと,それらの機関への通信障害が発生した場合,ボトルネックとなる可能性がある.本研究はこれらのTTPやCAなどを仮定しない安全なP2Pオンラインゲームのプロトコルの研究を行う

分散鍵生成(Distributed key generation, DKG)プロトコルの研究
教授 今井 秀樹
閾値暗号技術(Threshold cryptography)を構成する要素として,閾値暗号,閾値署名,そして分散鍵生成がある.分散鍵生成は他の二つ(暗号/署名)で用いられる部分秘密鍵群と公開鍵とを生成するプロトコルである.最新の分散鍵生成の研究では,適応型攻撃者モデルにおいて,Universal Composabilityに準ずる安全性を持つプロトコルが提案されている.また,静的攻撃者モデルにおいて,ある条件のもと,従来のものよりもかなり効率の良いプロトコルが提案されている.そこで,適応型攻撃者モデルにおいて,完全なUC安全性を達成すること,効率のよいプロトコルを設計することを念頭に研究を行った.

匿名権利証(Anonymous credential)の無効化・再発行に関する研究
教授 今井 秀樹
従来の認証では,仮に認証に必要なアイテム(何らかのカード,もしくはパスワードなど)が紛失した場合,それらを無効化することが容易に行えた.匿名権利証を用いた認証では,検証者は,権利証の持ち主を特定することはできない.そのため従来の匿名権利証では,どれが有効でどれが無効なのかを判断することができなかった.そこで,無効化・再発行が可能なように改良した匿名権利証の設計・提案をSITA2004において行った.

WeakIVに基づくWEPの脆弱性に関する研究
教授 今井 秀樹
WeakIVに基づく攻撃手法はWEPの致命的脆弱性として広く知られるようになり,WLAN機器メーカ各社もIV生成の際にWeakIVを避けるなどの対応をとるようになった.しかし,新種のWeakIVに対する研究は年々進行し,WeakIVを利用した攻撃の効率も高まっている.現時点でも,主要メーカの製品の殆どが,程度の差はあるが,現実的時間内にWEP鍵を漏洩する脆弱性を内包していると思われる.そこで,最新の攻撃手法に対し,既存のWEP実装が何処まで耐えられるかを厳密に算出し,WEP鍵更新の最適な時期を求める研究を進めている.

匿名性が要求される多者プロトコル
教授 今井 秀樹
匿名性が要求される多者が参加するプロトコルを研究している. 具体的には, 多者計算, グループ署名, ミックスネット等の研究を行った. (1)参加者あたりの通信回数が定数回で任意の関数を多者で安全にかつ少ない計算量で計算する多者計算方法を考案した. (2)長い暗号文を第三者に検証できる様に効率的に扱えるミックスネットを提案した. (3)グループ管理者の権限を分割でき,さらに各権限を効率的に分散できるグループ署名でを提案した. またここで, グループ管理者の権限の分割に関する安全性要件を提案した. (4)匿名で署名できる回数が制限されたグループ署名を提案した.

暗号アルゴリズム評価
教授 今井 秀樹
暗号アルゴリズム評価,特に共通鍵暗号,多項式ベース公開鍵暗号の研究についての研究を行った.近年強力な暗号アタックとして注目を集めていたalgebraic attackが,グレブナー基底アルゴリズムに帰着されることを証明し,考えられていたほど強力なアタックではないことを示した.

Minimal Assumptions for Obtaining Secure Two and Multi-Party Crypto Protocols
教授 今井 秀樹
We aim at characterizing the minimal assumptions needed for obtaining secure two and multi-party crypto primitives. We focuses mostly on physical assumptions (quantum data, noisy correlated data, constraints on the memory available to an adversary) and temporary computational assumptions.

Advanced Methods for Security Evaluation of Certain Stream Ciphers: Improved Techniques for Algebraic and Fast Correlation Attacks
教授 今井 秀樹
Advanced methods for security evaluation of certain keystream generators which could be modelled as a concatenation of a linear finite state machine and a nonlinear filtering function are considered. Developing of the novel algorithms for cryptanalysis based on the algebraic and correlation approaches are addressed including the comparisons with the previously reported techniques. The consideration originates from the identification of cryptanalyutical significance of particular characteristics of the involved finite state machines and the nonlinear transformation of the states. Employment of these characteristics yield appropriate trade-o® mainly between the required sample and the complexity of cryptanalysis within the frameworks of the algebraic and fast correlation attacks.

Advanced Key Management Methods for Data Access Control in Certain Broadcasting and Multicasting Scenarios
教授 今井 秀樹
Conditional access control, digital rights management and related topics have been recognized as the important IT issues. On the other hand the key management appears as the main element for the above topics of a high interest from the both: the scientific and applications related points of view. Accordingly,developing of the novel methods for the key management which minimize the overheads introduced to the system due to the security requirements is addressed. The goals include not only novel techniques but the novel concepts as well. Particular attention is focused on suitable underlying structures and the related cryptographic primitives (one-way hash functions and pseudorandom number generators. An additional goal is consideration of the applications of these techniques for the digital rights management and related issues.

半導体ナノ構造の研究(1)−電子状態の量子的制御と物性・機能の解明−
教授 榊 裕之[代表者], 教授 荒川 泰彦, 教授 平川 一彦, 助教授 高橋 琢二, 助教授(東大) 秋山英文, 技術官 川津琢也, 技術官 柴田憲治, 博士研究員 鳥井康介, 博士研究員 C. Jiang, 学術研究支援員 M. Lachab, 学術研究支援員 近藤直樹, 大学院生(榊研) 秋山芳広, 大学院生(榊研) 大森雅登, 大学院生(榊研) 小林茂樹, 大学院生(榊研) 山崎 融, 大学院生(榊研) 奈良田新一, 協力研究員 井下 猛, 協力研究員 田中一郎, 協力研究員 小柴 俊, 教授(カリフォルニア大) S. J. Allen, 主任研究員(CNRS-ENS) G. Bastard
10nm(ナノメートル)級の半導体超薄膜を積層化したヘテロ構造やSiMOS構造内の極薄チャネルでは, 電子の量子的波動性が顕在化し, 新しい物性や機能が現われるため, 種々のデバイスの高性能化や高機能化に利用されつつある. 本グループは, これら超薄膜に加え, 量子細線や量子箱(ドット)構造を対象に, 電子状態の量子的な制御法の高度化と新素子応用の探索の研究を進めている. 特に,結晶の微傾斜面上の原子ステップを活用した多重量子細線や表面超格子構造に加えて, 自己形成法で得られるInAs系やGaSb系の量子箱や量子リング構造を中心に, 電子の量子状態を理論解析するとともに, CWおよび時間分解レーザ分光・と磁場中の伝導計測・容量電圧分光やトンネル分光などによる解明を進めている.低次元の電子や励起子の量子状態, 電子の散乱・拡散・トンネル透過・緩和などの過程や, 電子正孔対の束縛・解離・再結合過程の特色や制御法に関し, 新しい知見を得た.特に,正孔のみを束縛するGaSb系ドットやリング状構造の電子状態の特異性を明らかにした.

半導体ナノ構造の研究(2)−高性能・超微細FETと新電界効果素子−
教授 榊 裕之[代表者], 技術官 川津琢也, 技術官 柴田憲治, 博士研究員 C. Jiang, 大学院生(榊研) 秋山芳広, 協力研究員 野田武司, 教授(Finland国立技研VTT) J. Ahopelto, 大学院生(Finlandヘルシンキ工科大VTT) M. Prunilla
AlGaAs/GaAsなどのヘテロ構造を用いた超高速FETとSiO2/Si 構造を用いたMOSFETは, 電子工学の最重要素子のひとつである. これらの10nm(ナノメートル)級の超薄伝導層を用いたFETや量子細線を伝導路(チャネル)とするFET素子の高機能化と高性能化の研究を進めている. 特に, ヘテロ系FETに関しては, チャネル近傍にInAsやGaSbの量子箱を埋め込んだ素子のメモリー機能と電子散乱の解明, 自己形成によるステップ型量子細線チャネル内の2次元および1次元電子伝導, さらにInGaAsやGaAs系ヘテロ系FETの容量・電圧特性や雑音特性に関する研究を進めた. また, 絶縁基板上の Si 超薄膜をチャネルとするSOI型ダブルゲートMOSFETにおける速度変調効果と界面凹凸散乱や電子状態を明らかにする研究も理論実験の両面から進めた.

半導体ナノ構造の研究(3)−トンネル伝導素子および単電子素子−
教授 榊 裕之[代表者], 技術官 川津琢也, 技術官 柴田憲治, 大学院生(榊研) 秋山芳広, 大学院生(榊研) 大森雅登, 大学院生(榊研) 小林茂樹, 協力研究員 田中一郎, 博士研究員 C. Jiang
トンネル障壁を2重に設けた素子構造では, (1)特定波長の電子波が共鳴的にトンネル透過したり,(2)2枚の障壁間に蓄積される電子の静電的な作用で伝導が抑制される.この現象の素子応用可能性を探っている.特に, 自己形成InAs量子箱を埋め込んだGaAs/AlGaAs二重障壁ダイオードを対象として零次元電子の関与した共鳴トンネル効果を調べるとともに, ヘテロFETのチャネルの近傍にInAsやGaSb系の量子箱や量子リングを埋め込んだ素子において, 単一の電子の捕捉の関与したメモリー現象と光検出器応用の検討を進め,その高性能化の研究を進めている. また, 20 nm程の周期の界面凹凸を持つヘテロ構造伝導路に量子ポイント接点構造を作り込み,準弾道伝導特性における局在効果や多体効果の影響を調べている.

半導体ナノ構造の研究(4)−光学的性質の探求とフォトニクス素子応用−
教授 榊 裕之[代表者], 博士研究員 鳥井康介, 学術研究支援員 M. Lachab, 学術研究支援員 近藤直樹, 大学院生(榊研) 松岡 和, 大学院生(榊研) 秋山芳広, 大学院生(榊研) 大森雅登, 大学院生(榊研) 小林茂樹, 大学院生(榊研) 山崎 融, 助教授(東大) 秋山英文, 協力研究員 井下 猛, 協力研究員 小柴 俊, 教授(カリフォルニア大) S. J. Allen, 主任研究員(仏CNRS-ENS) G. Bastard, 教授(Finland国立技研VTT) J. Ahopelto
先端光エレクトロニクス素子への活用が注目されている量子井戸, 量子細線, 量子箱(ドット)に加え,量子リングなどのナノ構造について, その光学特性を調べ, その素子応用を探索している. 10 nm級の寸法のInAsやGaSb系の量子箱(ドット)に赤外光を照射した時の電子の占有状態や分離状態など電子と正孔との制御可能性を調べ, 光書き込みメモリーや光検出器としての特性を高めるための検討をさらに進め,単一光子検出素子への展開を進めている.また, 各種の量子箱(ドット)構造について光吸収や蛍光スペクトルとその電界依存性を解析し,シュタルク効果や準位充満効果を用いた 光変調器の可能性や特色を探っている.さらに,量子箱(ドット)集団の蛍光スペクトルや寿命の温度依存性から,ドット間のキャリアの往来やドット内の準位間の緩和過程を知見した. さらにステップ型量子細線の理論計算と光学特性計測により, 一次元励起子の束縛エネルギーや不均一性による局在効果の影響などの研究も進めた.

半導体ナノ構造の研究(5)−形成技術と構造評価法の開発−
教授 榊 裕之[代表者], 助教授 高橋 琢二, 技術官 川津琢也, 技術官 柴田憲治, 技術官 島田祐二, 博士研究員 C. Jiang, 学術研究支援員 近藤直樹, 大学院生(榊研) 秋山芳広, 大学院生(榊研) 大森雅登, 大学院生(榊研) 小林茂樹, 大学院生(榊研) 奈良田新一, 協力研究員 野田武司, 協力研究員 小柴 俊, 協力研究員 田中一郎
各種のnm級半導体超薄膜に加えて, 量子細線や量子箱(ドット)や量子リング構造を分子線エピタキシーや先端リソグラフィ法で形成し, その形状や組成を原子スケールで評価し, 新しい電子材料や光学材料としての可能性を探索する研究を進めている. 特に, 細線については(111)主軸から傾斜させたGaAs基板上に多段原子ステップを自己形成させ,その上にInGaAs/GaAsおよびGaAs/AlGaAs系の超薄膜を成長させることにより多重量子細線構造を形成しその構造評価を進め,電子状態の制御性を高めた. また, GaAs/AlGaAsヘテロ構造内にInAsやInAlAsやGaSb系の10 nm級の量子箱(ドット)やリングを形成し, FETメモリーや光素子への応用可能性を調べている. これらの構造の評価手段として, 原子間力顕微鏡に留まらず, 蛍光線の線幅や電子移動度および磁気抵抗振動の計測と解析が有効であることを示した.

LSIの動的IR-Drop評価・抑制技術開発
教授 桜井 貴康
(東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

超低電力プロセッサの設計
教授 桜井 貴康
(東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

アクティブリークを削減するナノサーキットの研究
教授 桜井 貴康
(東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

ユビキタスコンピューティングに対応した無線/アナログチップ技術
教授 桜井 貴康
(東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

有機トランジスタのシート型スキャナへの応用
教授 桜井 貴康
(東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

時間分解テラヘルツ分光法を用いた半導体中のキャリアダイナミクスの解明
教授 平川 一彦[代表者], 助手 大塚 由紀子, 助手 関根 徳彦, 学術研究支援員 近藤孝志, 大学院学生 山下隼人
フェムト秒レーザパルスを用いた時間分解テラヘルツ(THz)分光法を用いて,半導体中のキャリアの超高速運動が放出するTHz電磁波を実時間領域で検出することにより,キャリアのダイナミックな伝導現象を解明することを目的に研究を行っている.本年度は,(1)超高速トランジスタのチャネル中の電子が放出するTHz電磁波を検出し,トランジスタの動作速度に関する知見を得た.(2)シリコン中の電子の過渡速度の観測に成功した.(3)広帯域THz電磁波発生システムの構築を行った.

半導体超格子中の電子のミニバンド伝導とその応用
教授 平川 一彦[代表者], 助手 関根 徳彦, 大学院学生 小林秀央
時間分解テラヘルツ(THz)分光法を用いて,半導体超格子中のミニバンドを伝導する電子が放出するTHz電磁波を実時間領域で検出することにより,超格子中のキャリアダイナミクス,およびブロッホ振動を用いたTHz電磁波の発生・増幅・検出の可能性について探索を行っている.本年度は,(1)ブロッホ振動する電子の利得スペクトルを求めることに世界で初めて成功するとともに,利得の発生機構について古典理論による考察を行った.(2)量子カスケード構造を作製し,10ミクロン帯においてレーザ発振を確認した.

自己組織化量子ドットを用いた超高感度赤外光検出器の開発
教授 平川 一彦[代表者], 教授 榊 裕之, 大学院生 Jung Minkyung,中村大輔,松岡 和
自己組織化InAs量子ドット構造の特異な電子状態を利用して,超高感度の赤外光検出器を実現することを目的として研究を行っている.特に,自己組織化量子ドットと高移動度変調ドープ量子井戸を組み合わせた横方向伝導型量子ドット赤外光検出器を提案・試作し,その評価を行った.本年度は,(1)量子ドットをp型にドープした構造により,高い感度が達成できることを見出した.(2)量子ドット中への正孔の注入数と活性化エネルギーの関係について検討を行った.

量子ナノ構造の超微細加工プロセス
教授 平川 一彦[代表者], 産学官連携研究員 赤坂哲郎, 大学院生 Jung Minkyung,梅野顕憲
量子力学的によく制御された系は,単一量子の発生・検出や,コヒーレンスを用いた計算・通信などの技術分野で,ますますその重要性を増しつつある.我々は,半導体表面・ヘテロ接合界面におけるミクロな電子構造の解明と制御,また原子レベルでの超微細加工プロセスの研究を行っている.本年度は,(1)単一自己組織化InAs量子ドットに電極を形成し,単一電子トンネル作製するとともに,そのコンダクタンスに現れる量子ドットの殻構造から,波動関数の広がりなどについての知見を得た.(2)単一分子エレクトロニクスを視野に入れた超微細電極作製を行い,エレクトロマイグレーション効果を用いたブレークジャンクション法や極微めっき法などを用いることにより,原子レベルで金属電極間のギャップを制御する技術を確立した.(3)極微金属電極に安定して付着しやすい金属錯体分子の合成を行った.

先端MOSトランジスタ中のキャリア伝導に関する研究
教授 平川 一彦[代表者], 大学院生 Park Kyung Hwa,船尾大輔, 教授(東大) 高木信一
近年Si MOSトランジスタの微細化,高性能化が急速に進められている.特に,極薄酸化膜構造やひずみSi/SiGe系MOSFETにおいては,新しい物性がその動作に影響を与えることが予想されている.本研究においては,先端MOSFET中のキャリア輸送に関する物理を明らかにすることを目指し,本年度は,(1)ひずみSi MOSトランジスタ構造において,従来散乱が多いと考えられてきたSiGeバッファー層を伝導する正孔の移動度が高いことを実験的に明らかにした.さらに正孔の有効質量などの物理量の決定も行った.(2)Si MOS構造中の2次元電子が,イオン化不純物散乱が支配的となる低温領域で,移動度が非常に大きな温度依存性を示すことを見出した.

分子線エピタキシーを用いた高純度半導体へテロ構造の成長
教授 平川 一彦[代表者], 助手 関根 徳彦, 技術員(科学技術振興機構) 上田剛慈, 大学院生 Jung Minkyung,梅野顕憲,小林秀央,中村大輔
分子線エピタキシーを用いて,原子レベルで精密に制御された半導体へテロ構造の作製を行っている.特に,今年度は,赤外単一光子検出のための高移動度ヘテロ構造二次元電子系や自己組織化量子ドットの成長,さらに量子カスケードレーザを目指した構造の成長を行った.

サブ10nm極限CMOSデバイスに関する研究(継続)
教授 平本 俊郎[代表者], 助手 更屋拓哉, 大学院生(平本研) 南雲俊治
最近のVLSIデバイスの微細化は凄まじく,すでにMOSFETのゲート長は量産レベルで40nm程度まで微細化している.本研究では,10nmスケール以下の超低消費電力極限MOSFETを実現するためのデバイスビジョンを確立することを目的とする.ナノスケール領域で超低消費電力とばらつき抑制を達成するためには,基板バイアス効果の利用が必須である.そこで有限の基板バイアス効果を有し,しかも短チャネル効果に強いデバイスとして,セミプレーナーSOI MOSFETを提案している.例としては,三角形細線MOSFETやアスペクト比の低いFinFETが挙げられる.本年度はシミュレーションにより,FinFET構造のコーナーの影響により,基板バイアス係数の逆短チャネル効果という特異な現象が現れることを示し,これがばらつき抑制に寄与することを明らかにした.セミプレーナーSOI MOSFETの試作も進行中である.

ナノスケールCMOSデバイスの特性ばらつきに関する研究
教授 平本 俊郎[代表者], 助手 更屋拓哉, 大学院生(平本研) 宮地幸祐, 大学院生(平本研) 橘 文彦
MOSトランジスタが微細化されるとともに,ランダムな特性ばらつきの影響が無視できないほど大きくなってきている.その原因は主にチャネル中の不純物数の揺らぎとゲート電極のラインエッジラフネスである.本研究では,これらのランダムな特性ばらつきがSRAMの安定性に与える影響についてシミュレーションによる検討を行った.その結果,ITRSのパラメータをそのまま用いると45nmノードでSRAMの歩留が大幅に低下することが明らかとなり,これを防止するためのデバイスパラメータの設定について提案した.一方,MOSトランジスタは温度によっても大幅に特性が変化する.バルクMOSFETとFD SOI MOSFETの温度特性を検討し,微細化とともに特にバルクMOSFETで温度特性が向上していくことを明らかにした.

完全空乏型SOI MOSFETの基板バイアス効果を利用した高性能化と低消費電力化(継続)
教授 平本 俊郎[代表者], 助手 更屋拓哉, 博士研究員(平本研) Anil Kumar, 大学院生(平本研) 南雲俊治, 大学院生(平本研) 大藤 徹, 大学院生(平本研) Arifin Tamsir Putra, 研究実習生(平本研) 横山弘毅
完全空乏型SOI MOSFETは将来の低消費電力デバイスとして有望である.本研究では,本デバイスの特徴を引き出すため,基板バイアス効果を積極的に利用した高性能化と低消費電力化とについて検討している.本年度は,昨年度に提案した基板バイアス係数可変MOSFETについてさらに検討を進め,ゲート長が長い場合のみでなくゲート長が短い場合においても提案デバイスが優れた特性を示すことを明らかにした.これは埋込酸化膜直下の空乏層により,ドレイン容量が動作時に低減されるためである.本提案デバイスの試作も進行中である.

極微細シリコンMOSFETにおける量子力学的効果の研究(継続)
教授 平本 俊郎[代表者], 大学院生(平本研) 齋藤真澄, 大学院生(平本研) 筒井 元, 大学院生(平本研) Fransiscus Asisi Doni Januar Nowo Nugroho
シリコンMOSFETは性能向上のため微細化が続いているが,そのサイズがナノメートルオーダーになると量子効果が顕著に特性に影響を及ぼす.本研究では,極めて細いチャネルをもつMOSFETにおける量子力学的効果を実験とシミュレーションにより検証している.実際にチャネル幅が10nm以下のMOSFETを試作し,しきい値電圧が線幅の減少とともに上昇する量子力学的狭チャネル効果を観測することに成功している.また,量子効果の異方性により,チャネル方向が<110>方向の方が<100>方向の場合より移動度が電子,正孔とも高くなることをシミュレーションにより示している.本年度は,極めて薄いSOI MOSFETにおいては,量子効果により移動度が変調されるため,わずから膜厚揺らぎによりしきい値電圧が大幅にばらつくことを実験的に示した.また,この特性ばらつきを基板バイアス効果により抑制する手法を開発した.

シリコン単電子トランジスタにおける物理現象の探究(継続)
教授 平本 俊郎[代表者], 大学院生(平本研) 齋藤真澄, 大学院生(平本研) 小林正治, 研究実習生(平本研) 原田英浩
シリコンにおける単電子帯電効果を明らかにすることは,VLSIデバイスの性能限界を決める上で必須であるとともに,新しい概念をもつデバイスを提案する上でも極めて重要である.本研究では,Siにおいて極微細構造を実際に作製し,単一電子現象の物理の探究を行っている.これまでに,VLSI互換プロセスを用い室温で世界最大のクーロンブロッケード振動を示す単電子・単正孔トランジスタの作成に成功している.本年度は,2個の室温動作単正孔トランジスタの集積化を行い,世界で初めて室温動作単電子・単正孔トランジスタの電流スイッチング動作を確認した.また,3個の単正孔トランジスタの集積により,アナログパターンマッチング回路を構成し,室温においてその動作を実証することに成功した.この成果は,2004年12月の国際電子デバイス会議(IEDM)にて発表を行った.

シリコン量子ドットを浮遊ゲートとするシリコン微結晶メモリ(継続)
教授 平本 俊郎[代表者], 博士研究員(平本研) Julien Brault, 大学院生(平本研) 齋藤真澄, 研究実習生(平本研) 柳平康輔, 研究実習生(平本研) Sangsu Park
シリコンドットを浮遊ゲートとするシリコン微結晶メモリは,現在のフラッシュメモリに代わる不揮発性メモリとして有望であり,近年盛んに研究されている.本研究では,シリコンドットメモリの性能向上,電子数の制御,および集積化の研究を行っている.これまでに,世界最小セルの試作や1セル2ビット動作等に成功している.今年度は,シリコン微結晶メモリのチャネル構造を変えることによる高性能化の実験を行った.チャネルをダブルゲート構造あるいは極薄SOI構造にすることにより,しきい値電圧シフトの増大や保持時間の増大が可能であることを実験的に示した.またシミュレーションによりこれらのチャネル構造でメモリ特性が向上する理由を明らかにした.

電気自動車の制御
教授 堀 洋一
電気モータの高速トルク発生を生かし,電気自動車で初めて可能になる新しい制御の実現をめざしている.タイヤの増粘着制御によって,低抵抗タイヤの使用が可能になる.4輪独立駆動車は高性能な車体姿勢制御が実現できる.モータトルクは容易に知れるから路面状態の推定も容易である.インホイルモータ4個を用いた高性能車「東大三月号-II」および「カドウェルEV」を製作し実験を進めている.車体すべり角βの推定,DYCとAFSの非干渉制御などに力を入れている.最近キャパシタだけで走る「コムスCV」を製作した.

アドバンスト・モーション・コントロール
教授 堀 洋一
電気・機械複合系のモーション・コントロールとして,(1)外乱構造に着目した新しいロバストサーボ制御,(2)多重サンプリング制御を用いたビジュアルサーボ系,(3)加速度センサを用いた外乱抑圧制御,(4)加速度変化率の微分を考慮した目標値生成法,(5)非整数次数制御系と係数図法にもとづく制御系設計のためのCADシステム,(6)GAを用いたパラメータチューニング法,を行っている.応用としては,多軸ロボット,バックラッシをもつ軸ねじれ系実験装置,ハードディスクドライブ装置である.

福祉制御工学
教授 堀 洋一
福祉分野を想定した独特の制御手法の開発を目論むもので,福祉制御工学という学術領域を作りたいと考えている.現在行っている研究は,(1)カメラ画像情報による非日常性の検出,(2)介護ロボットのためのパワーアシスト技術,(3)新しい制御原理にもとづく動力義足の製作,(4)パワーアシスト車椅子の後方転倒防止制御, (5)機能的電気刺激を用いた歩行支援である.とくに,人間親和型モーションコントロールという形での体系化を試みている.

位置情報の高度利用
助教授 瀬崎 薫[代表者], 大学院学生(瀬崎研) 山崎 浩輔, 大学院学生(瀬崎研) 黄 楽平, 大学院学生(瀬崎研) テープウィロージャナポン 二ニワット, 大学院学生(瀬崎研) 関根 理敏, 大学院学生(瀬崎研) 魏 新法, 大学院学生(瀬崎研) 林 徹, 大学院学生(瀬崎研) 山根 弘
地理的な位置情報に基づき,位置依存サービス(LBS)を展開するためのフレームワークの提案を行った.合わせて,位置情報そのものをオブジェクト同定のためのアドレスとして用いる手法を創出した.また,逆に位置情報を隠蔽するためのLocation Privacy問題について定量的な議論を行うための基本的問題設定を行った.

アドホックネットワーク
助教授 瀬崎 薫[代表者], 大学院学生(瀬崎研) 山崎 浩輔, 大学院学生(瀬崎研) ベルネル クレイセル, 大学院学生(瀬崎研) 天野 啓, 大学院学生(瀬崎研) 浜端 紀行, 受託研究員(日立製作所) 福田 弘法, 研究実習生(早稲田大学) 竹内 彰次郎
アドホックネットワークに関する諸課題について継続的に研究を行っている.本年度は,ユーザ行動モデルに基づく防御的ルート変更,省電力MACプロトコル,ゲートウェイ発見アルゴリズムの効率化の検討を行い提案方式を実装するとともに,屋外実証実験を行った.

触覚メディアの研究
助教授 瀬崎 薫[代表者], 大学院学生(瀬崎研) 有本 勇, 大学院学生(瀬崎研) 福田暁史, 協力研究員(空間情報科学研究センター) 任 明, 研究実習生(早稲田大学) 引地 謙治
覚・力覚を新しいメディア・インタフェースとして捉え,このネットワーク上を伝送を利用するための諸問題を多様な観点から検討している.具体的には,ネットワーク上での情報量削減とパケットロス対策としてのdead reckoningの手法,メディア同期の枠組み,帯域圧縮,力覚ストリームとオブジェクト情報ストリームの制御,異種インタフェース間の連携等について主観評価実験と理論的考察の両面から検討を行っている.

マルチモーダルGIS
助教授 瀬崎 薫[代表者], 大学院学生(瀬崎研) 福田暁史, 協力研究員(空間情報科学研究センター) 任 明, 研究実習生(早稲田大学) 引地 謙治
音声,画像,触覚等多様なモダリティを活用することにより,空間情報の認知と操作の改善を図ることを試みている.本年度は,触覚認知が画像認知より本質的に高解像度のデータ表現に適しているとの仮説に基づき基礎実験を行っている.

センサネットワーク
助教授 瀬崎 薫[代表者], 大学院学生(瀬崎研) 黄 楽平, 大学院学生(瀬崎研) テープウィロージャナポン 二ニワット, 大学院学生(瀬崎研) 関根 理敏, 大学院学生(瀬崎研) 山根 弘
環境情報,コンテクスト情報を取得する基盤となるセンサネットワークについての研究を行っている.本年度は,MACプロトコルの改善,Concast, Anycastに適したルーティング手法,データ集約手法,セキュリティ強化手法の検討を行った.

ユーザ効用に基づくコンテンツ配信手法
助教授 瀬崎 薫[代表者], 大学院学生(瀬崎研) 松井 佑馬
本格的なアンケート調査に基づき,ダウンロード形式及びストリーミング形式の映像コンテンツのユーザ効用関数を求めた上で,これを最大化するためのCDN構築手法と運用法の提案及びその評価を行った.

表面近傍量子ナノ構造の走査トンネル分光
助教授 高橋 琢二[代表者], 技術官 島田 祐二
表面近傍に二重障壁や量子ドット構造などの量子ナノ構造を埋め込んだ半導体試料において,走査トンネル顕微鏡/分光(STM/STS)計測を行い,二重障壁による共鳴電流や埋め込み量子ドットを介して流れる電流などをナノメートルスケールの分解能で測定して,それらナノ構造に起因する電子状態変調効果を調べている.さらに,5K程度の極低温,10T程度の強磁場中でのSTS計測を通じて,ナノ構造中の電子状態を明らかにすることを目指している.

二重バイアス変調を利用した新しい走査トンネル分光法の開発
助教授 高橋 琢二[代表者], 技術官 島田 祐二, 大学院学生(高橋研) 村中 雅幸
走査トンネル顕微鏡によるトンネル分光計測において問題となるいくつかの不安定要素を効果的に取り除き,安定した計測を可能とする手法として,二重バイアス変調を用いた微分コンダクタンス分光法を新しく提案するとともに,自己形成InAs量子ドットに対する分光測定を行って,その有効性を確認している.

原子間力顕微鏡(AFM)におけるサンプリング法を利用した高速画像獲得手法に関する研究
助教授 高橋 琢二[代表者], 日本学術振興会特別研究員 小野 志亜之
カンチレバーを周期的に振動させながら画像を獲得するAFMにおいて,レバーの変位量を探針が試料表面に接触するタイミングと同期してサンプリングした信号から形状像を得る方法を提案するとともに,その動作確認実験を行った.この手法では,フィードバック制御に依らずに形状像が得られることから,通常モードと比べて10倍以上の高速での画像獲得が可能であることが示された.

ケルビンプローブフォース顕微鏡によるInAs微細構造の表面電位計測
助教授 高橋 琢二[代表者], 日本学術振興会特別研究員 小野 志亜之
導電性探針を有する原子間力顕微鏡(AFM)において,探針−試料間に電圧を印加した際に働く静電引力の印加電圧極性依存性がなくなるように直流バイアスを重畳して試料表面ポテンシャルを計測する,いわゆるケルビンプローブフォース顕微鏡(KFM)モードを利用して,InAs薄膜・細線の表面ポテンシャルの計測を行った.これまでに,InAs薄膜の表面電位(フェルミレベル)が膜厚に依存して変化すること,InAs微細構造の形状,例えば細線構造によって表面電位が変調されること,などを明らかにしている.

ケルビンプローブフォース顕微鏡による表面電位計測の確度に関する検討
助教授 高橋 琢二[代表者], 日本学術振興会特別研究員 小野 志亜之
ケルビンプローブフォース顕微鏡(KFM)で計測される表面電位の値が,動作モードや探針形状から受ける影響について,理論・実験の両面から検討を加えた.また,サンプリング法を利用して静電引力成分を抽出することにより,より高感度・高空間分解能での電位計測が可能となることを見出した.

ケルビンプローブフォース顕微鏡における新しい表面電位決定手法に関する検討
助教授 高橋 琢二[代表者], 日本学術振興会特別研究員 小野 志亜之, 大学院学生(高橋研) 池田 優
ケルビンプローブフォース顕微鏡(KFM)における表面電位決定アルゴリズムとして,従来のフィードバックを用いたものではなく,静電引力とオフセット電圧の間の線形性を利用して表面電位値を近似推定する新しい手法を提案し,その実証実験を行った.本手法は電位変化に対する応答性がよいことから,KFM測定の高速化に繋がる可能性があることが示された.

磁気力顕微鏡(MFM)を用いた非接触・微小電流計測
助教授 高橋 琢二[代表者], 大学院学生(高橋研) 才田 大輔
ナノ構造中を流れる電流を被測定系への擾乱を避けながら測定するために,電流の作る磁場を検出できる磁気力顕微鏡(MFM)を用いた非接触電流測定系の構築を目指している.特に磁気力信号の正確な測定のためには静電引力の影響を排除することが重要であることを指摘した上で,得られる磁気力信号の妥当性,電流に対する線形性,磁気力像の空間分解能などについて検証し,MFMによる電流定量計測の可能性を探っている.

自己変位検知カンチレバーAFMを用いた局所的光吸収計測
助教授 高橋 琢二[代表者], 大学院学生(高橋研) 増田 裕之
変位検出用レーザが不要である自己変位検出カンチレバーAFMを用いて,単一量子ナノ構造の光吸収特性の評価を行っている.これまでに,GaAs微傾斜基板上InAs単一量子細線において凹凸像と同時に光応答電流像が得られること,またその光応答電流が照射レーザ光の波長に依存して変化することを見出している.それらの結果から,InAs中で発生した光キャリアの散逸過程などについても検討を加えている.

自己変位検知カンチレバーAFMによる多結晶Si太陽電池の局所的特性の評価
助教授 高橋 琢二[代表者], 大学院学生(高橋研) 五十嵐 考俊, 助教授(名大) 宇治原 徹
変位検出用レーザが不要である自己変位検出カンチレバーAFMを用いて,多結晶Si太陽電池の評価を行っている.短絡光電流や開放光起電力といった太陽電池の主要な特性を局所的に測定し,多結晶特有の異なる面方位をもった結晶粒の存在やそれらの粒界が太陽電池特性に与える影響を明らかにすることを目指している.

知的制御システムに関する研究
助教授 橋本 秀紀
知的制御システムは「環境を理解し,それに応じた制御構造を自己組織化する能力を有するもの」と考えることができ,新しいパラダイムへつながるものである.このパラダイムを確立するために,柔軟な情報処理能力を有する Artificial Neural Networks,Fuzzy等の Computational Intelligence の利用および数理的手法に基づいた適応能力の実現による制御系のインテリジェント化を進めている.

Networked Robotics に関する研究
助教授 橋本 秀紀
人間中心の機械システム実現のため,「人間自身の理解」と「人間と機械の双方が理解する,共通概念の構築」を目指し,高速広域ネットワークを利用した人間機械協調系:Networked Robotics の構築を目標に研究を行っている.ネットワークを介して分散しているロボットが,システムとして高度な機能を実現するには,ロボット間の知的ネットワーク通信が必須の条件であり,そのためのネットワークプロトコルの開発が重要となる.本研究では,ロボットのためのプロトコルの研究を通して,Networked Robotics の問題へアプローチする.

分散されたデバイスと相互作用し賢くなる知的空間
助教授 橋本 秀紀[代表者], 大学院学生 森岡 一幸, 大学院学生 セメシュ ペーター, 大学院学生 山下 祥宏, 大学院学生 新妻 実保子, 大学院学生 井須 寛之, 大学院学生 佐々木 毅
人間を観測し,その意図を把握して適切な支援を提供する人工的な空間の創造を目指す.空間内に多数の知的デバイスを分散配置し,ネットワーク化することで知能化空間を構築し,空間内の人間から得られる多様なデータの取得や,空間の情報化および知能化手法を検討し,データの持つ意味から人間やロボットに対して適切な支援を発現する仕組みを提案する.

分散配置された知的センサによる空間認識に関する研究
助教授 橋本 秀紀[代表者], 大学院学生 森岡 一幸, 大学院学生 セメシュ ペーター, 大学院学生 井須 寛之
多数のネットワーク化された知的センサを環境に分散配置し空間を知能化するには,空間認識のためのセンシング技術が必要である.現在,知的センサとしてCCDカメラに空間認識のためのアルゴリズムを埋め込んだ分散間隔知能デバイスのプロトタイプを構築し,空間知能化の基礎研究を行なっている.本研究では,各デバイスが獲得した画像情報から,人間やロボットなどの位置情報,動作情報などを知るための画像情報処理方法を検討する.主に,空間内オブジェクトの追跡方法,知的デバイスの協調手法などについて検討している.

知能化空間における人間観察に基づく移動ロボットの行動計画に関する研究
助教授 橋本 秀紀[代表者], 大学院学生 セメシュ ペーター, 大学院学生 森岡 一幸, 大学院学生 佐々木 毅
知能化空間における人間共存型ロボットには,人間の歩行動作など通常の行動を妨げることなく行動可能な制御方法が求められている.本研究では,知能化空間における知的デバイス群により人間の歩行行動を観察し処理することにより,移動ロボットの行動マップを生成することで,移動ロボットを制御する手法を提案している.空間の知的デバイスが画像情報から人間の歩行特性を取得し,その大域的,局所的な歩行状態を学習することで,ヒューマンフレンドリーな移動ロボットの動作計画が可能であることが示された.

知能化空間における空間ヒューマンインタフェースに関する研究
助教授 橋本 秀紀[代表者], 大学院学生 新妻 実保子
空間内に配置された複数のコンピュータや機器,知能化空間内で生成される新たな情報や既存データなどを効率的に利用することは,空間内での人間の創作活動など様々な情報活動を円滑に進めるうえで重要なことである.そのため,本研究では空間の三次元座標をメモリアドレスとして扱う空間メモリを提案し,空間内の機器や情報を直感的かつ効率的に扱うためのヒューマンインタフェースの研究を行っている.人間は手先や視線といった身体動作により3次元座標を指し示すことにより空間メモリへのアクセスを実現する.主に,人間のインディケーション動作の解析とデータ蓄積方法・表現方法などについて検討している.

GPSによる高精度位置推定システムを用いたオフロード移動体に関する研究
助教授 橋本 秀紀
手軽で信頼性の高い測位システムとして,GPS (Global Positioning System)がカーナビゲーションの主要技術として急速に普及してきている.受信システムの新たな構成を提案し非線形フィルタを導入することでシステムの信頼性と精度の向上を実現することが可能である.GPSベース位置推定への現代非線形フィルタ技術の応用に関して,本年度は非線形フィルタに基づくGPS信号処理のためのモデルと推定アルゴリズムの構築と実装,および新しいアルゴリズムに基づいたGPSレシーバー信号処理の部分の検討を行なった.今後はオフロード移動体の車両状態推定のための応用に関して研究を進めていく.

シングルマスタマルチスレーブ遠隔微細作業支援システムに関する研究
助教授 橋本 秀紀[代表者], 大学院学生 黄 吉卿
マイクロロボットの試作や微細部品の組立てなどの複雑な作業を目的としたシングルマスタマルチスレーブ遠隔微細作業支援システムを用いた人間・ロボット協調に関する研究を行っている.人間の操作に対するストレスを軽減するため,シングルマスタにより複数の6自由度パラレルリンクスレーブマニピュレータを制御可能なシステムを提案した.6自由度のマスタ操作による12自由度のスレーブの制御を行うため,仮想マッピング方法に基づいた複数個のマニピュレータの協調インピーダンス制御を導入してシステムを構築した.今後は複数個のマニピュレータの協調作業の自動化を目指し,教示やエラー発生時のみに人間が介在するようなスーパーバイザリ型の微細作業システムや微細構造の組立てシステムへの拡張を行なう.

電子証拠物技術と事後追跡技術
助教授 松浦 幹太[代表者], 技術職員 細井 琢朗, 大学院学生 森垣 努, 大学院学生 松崎 孝大
電子社会における公平な取引の実現には, 起こり得る紛争の事後的な解決を可能とする電子証拠物が必要不可欠である. 特に, 電子データの存在時刻と一貫性を保証する電子時刻印技術が注目されている. 我々は, 単一機関に依存しない電子時刻印システムにおける時刻精度に着目し, 従来の日単位の精度から, 秒単位の精度へ飛躍的に高める技術を開発した. また, 電子社会の重要な基盤であるインターネットにおいては, 発信元情報が正しいかどうかに係わらず, 通信データは受信先へ送られることから, 高い利便性や拡張性が提供される一方, サービス妨害などの深刻な攻撃も発生する. 我々は, インターネット上で受信先から通信データの発信元を特定する技術の内, 通信の事後に, 最小の通信であっても大規模な記憶装置無しに追跡可能な技術を開発した.

リスク定量化とセキュリティマネジメント
助教授 松浦 幹太[代表者], 助教授(東大) 田中 秀幸, 大学院学生 劉 薇
情報セキュリティの惨事の多くは, 不十分な経済的動機付けに起因する管理の甘さや対策不徹底によって発生する. この問題を解決するためには,リスクを定量化して費用対効果の観点からセキュリティマネジメントを行うことが重要である. 我々は, 地方自治体の電子政府システム投資データを分析し,中程度の脆弱性に対応するリスクへの対策に重点的に投資する最新理論の実証に世界で初めて成功した.この分析では,一般的なIT投資額から情報セキュリティ投資を間接的に抽出する技法を提示し,セキュリティマネジメントの分野における他の応用も開拓しつつある.また, この実証結果を根拠とした政策提言を行い, 日米両国にまたがる調査と実践に取り組んでいる.

不正検知とフィルタリング技術
助教授 松浦 幹太[代表者], 大学院学生 古谷 隆行, 大学院学生 大福 泰樹, 警察庁 田村 研輔
インターネット上に開設された各種サービスで, サーバへ多数の通信が送信されることでサービス機能を低下・停止させられるサービス妨害攻撃が問題となる. この攻撃は多数の正規ユーザからの通信が輻輳している状態と区別が付きにくく, 攻撃検知そのものが困難である. 我々は, 各通信パケットの情報理論的複雑度(コルモゴロフコンプレキシティ)の変動を監視することで, 任意のサービス妨害攻撃を検知可能な検知システムを開発した. また, インターネットに広く配置されたネットワーク定点観測システムによって収集されたデータを利用した, ネットワークの早期異常検知の研究も進め, 幾つかの事例で早期検知が可能なことを示した. さらに, 現在多数のネットワークユーザを悩ませている迷惑メールのフィルタリング技術の研究も行っている.

物質・環境系部門

分子系超構造の設計と作製(継続)
教授 荒木 孝二[代表者], 技術官 吉川 功, 大学院学生 李ジュン, 大学院学生 高山 曜, 大学院学生 相良 剛光, 大学院学生 邊 裕子
分子間相互作用の階層化という方法論に基づく高次組織構造構築を目指した研究を進めている.その一環として,低分子核酸系化合物の分子設計で,二次元水素結合により形成されたシート状構造体の積層構造を持つ柔軟な超分子フィルム作製に成功している.この成果を踏まえ,シート形成と積層過程を効率よく分離するための分子設計指針を追求し,シート間相互作用制御と機能性付与を目指した新規な超分子フィルムの作製をおこなった.また一次元テープ状ユニットを擬似高分子鎖とする超分子繊維の開発を引き続き行い,芳香環がスタックしたカラムを多重水素結合鎖が取り囲んで形成される一次元超分子ポリマーが,さらに一軸配向した超分子繊維の作製にも成功した.

光電子機能性有機材料に関する研究(継続)
教授 荒木 孝二[代表者], 助手 務台 俊樹, 博士研究員 赤坂 哲郎, 大学院学生 張 書宏, 大学院学生 吉原 慎治
光機能性分子素子の開発に向けて,ポリペプチド鎖をエネルギー移動経路とする光エネルギー移動システムの構築を行っており,効率の良いエネルギー移動,二次構造相転移によるエネルギー移動のスイッチングなど,ポリペプチド鎖の優れた機能性が判明している.本年度は,多様な機能性ポリペプチドユニットを結合した光機能デバイスの構築に向けて,各部分構造の分子設計・合成をおこなった.また,優れたフォトクロミック材料であるジアリールエテン誘導体を用い,ジアリールエテン分子の立体構造変化を利用したエネルギー移動経路の光スイッチを分子設計・合成し,目的分子が光応答性スイッチとしての基本動作を示すことを確認した.

機能性有機蛍光材料の開発(継続)
教授 荒木 孝二[代表者], 助手 務台 俊樹, 大学院学生 田 鎮棟
新規な機能性の高い有機蛍光材料を開発する研究を進めており,多点分子間相互作用部位を持つポリピリジル化合物に蛍光性を付与した新規な機能性蛍光物質群の設計・合成に成功している. 本年度は, 固体中でのコンホメーションやクロモフォアの相対位置に起因して発現する特異な超分子発光特性に関して,主にポリピリジル化合物を対象とした研究をさらに発展させ,結晶中での分子集積構造に由来する蛍光発現が実際に起きることを実証し,結晶中での分子のコンホメーション固定が蛍光発現に寄与している可能性を示した.これにより,化合物の分子構造の修飾ではなく,固相での分子集積構造変化に基づく発光制御という新しい方法論の有効性を示した. また,新規な蛍光性ポリピリジル化合物であるアミノ置換ポリピリジルについても,新規な各種芳香族置換誘導体を合成し,その化学構造と蛍光特性との関連を解明した.

機能性金属錯体に関する研究(継続)
教授 荒木 孝二[代表者], 講師 北條 博彦, 助手 務台 俊樹, 大学院生 田中 亮, 大学院生 渡邊 裕子
テルピリジル部位を金属配位部位とする金属錯体について研究の一環として,テルピリジル部位がアミノ基を介して二つおよび三つ結合した新規なオリゴテルピリジル化合物の合成方法を確立し,その蛍光特性をはじめとする各種の物性,および各種金属イオンとの錯体生成挙動を解明した.またテルピリジル配位部位を持つ配位性アミド化合物からの金属触媒による効率の良いアミノ酸エステル生成反応について,活性種となる解離型アミド錯体の構造と反応機構との関連を明らかにした.

イオン・電子マルチ収束ビームによる表面・局所分析法の開発(継続)
教授 尾張 真則[代表者], 研究員 坂本 哲夫, 尾張研 大学院学生 森田 能弘, 尾張研 大学院学生 岡崎 素也
固体材料の微小領域や粒径数ミクロン以下の単一微粒子に対する三次元分析法の確立を目的として,複数のGa収束イオンビーム(Ga-FIB)と高輝度電子ビーム(EB)を用いた,新しい表面局所分析法を開発した.具体的には,(1)Ga-FIB加工断面のEB励起オージェ分析や,(2)加工断面の飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)法による微小領域三次元分析などが挙げられる.また,本法を半導体素子やボンディングワイヤ接合部あるいは電池材料微粒子などに適用し,固体内部の精密な三次元構造を明らかにした.

超臨界流体抽出法を用いた環境汚染物質分析法の研究(継続)
教授 尾張 真則[代表者], 研究員 坂本哲夫
超臨界流体は温度と圧力を変えることにより流体密度,すなわち溶解力を制御できるという特長をもつ.本研究では,多様な混合物である環境汚染有機物質を迅速に固体から抽出し,かつ,超臨界流体の密度(温度,圧力)をコントロールすることにより,従来の有機溶媒による一括抽出ではなく,分析目的物質のみを選択的に抽出・回収する新しい分析前処理技術を開発している.これまでに,フライアッシュ試料から,n-アルカン,クロロベンゼン類,PAH類をそれぞれ選択的に抽出することに成功している.

化学実験のダウンサイジング(継続)
教授 尾張 真則[代表者], 研究員 坂本 哲夫, 尾張研 大学院学生 金 朋央
研究上行われる化学実験は新たな情報を得るためになされるものであり,量的生産を目指しているものではない.したがって,実験に用いる試薬の量は,必要最小限であるべきである.本研究は,従来のリットル,ミリリットル,グラムレベルの試薬を用いた化学実験を,得られる情報量を損なうことなくその10の分の1から100分の1以下の試薬により行う実験システムの開発を目指すものである.

局所分析法を用いた大気浮遊粒子状物質の起源解析(継続)
教授 尾張 真則[代表者], 研究員 坂本 哲夫, 研究員 冨安 文武乃進, 協力研究員 野島 雅
都市大気中の浮遊粒子状物質(SPM)に関する環境・健康影響評価のためには,発生起源や輸送経路の解明が重要となる.またSPM粒子個々の大きさや形,化学組成,粒内元素分布などの情報が必要となる.本研究では沿道や都市人工空間などで捕集されたSPMに対して,マイクロビームアナリシス法を用いて粒別分析し,得られた粒別平均化学組成に基づくクラスター分析を行ない,起源解析・環境評価などを行なっている.さらに,SPM表面に吸着した有害有機物の評価法に関する検討や,大気環境中で異なる起源の粒子が複合した複合微粒子に対する分析法の検討,あるいはガソリン車の白金触媒を起源とする極めて稀な環境微粒子に対する精密な分析法の開発などを行なった.

ナノスケール二次イオン質量分析(SIMS)装置の試作(継続)
教授 尾張 真則[代表者], 協力研究員 野島 雅, 尾張研 大学院学生 千葉 豪
二次イオン質量分析(SIMS)法は,深さ方向分析が可能な高感度固体表面分析法である.本研究ではGa収束イオンビーム(Ga-FIB)をSIMS装置の一次ビームに採用し,0.1ミクロン以下の高い面方向分解能を実現した.またマルチチャンネル並列検出システムの開発により,迅速で正確なSIMS分析を可能とした.さらにshave-off分析なる独自の微粒子定量分析法や,Ga-FIBの加工機能を利用した新しい三次元分析法ならびに高精度shave-off深さ方向分析法を確立した.現在は,一次イオンビームのナノビーム化に関する検討・装置化を行っている.

反応性ガス支援高速・微細加工システムの開発(継続)
教授 尾張 真則[代表者], 研究員 坂本哲夫, 協力研究員 野島 雅, 尾張研 大学院学生 岩並 賢, 尾張研 大学院学生 劉 玉静
一般に,固体表面局所の微細加工には収束イオンビーム(FIB)が用いられる.しかしながら,従来の微細加工は,主として物理衝突によるスパッターを利用しているため,深さ数10 nmまでの表層に損傷層が形成される.したがって,加工断面でのアモルファス化や格子欠陥の形成,化学状態変化などが問題となる.本研究では,この様な問題を解決するため,断面加工中に反応性ガスの化学的エッチング効果を利用した「高速化」,ならびに反応性ガスと電子ビーム照射による損傷層の選択除去による「低損傷化」を目的とした高速・微細加工システムの開発を行なっている.

光電子スペクトロホログラフィーによる原子レベルでの3次元表面・界面構造解析装置の開発(継続)
教授 尾張 真則[代表者], 協力研究員 石井 秀司, 協力研究員 野島 雅
X線光電子回折(XPED)法は,光電子の放出角度依存性や入射エネルギー依存性などから,表面・界面を含めた固体表層原子構造を化学状態別に知ることのできる手法である.我々はこの手法をさらに進めた光電子スペクトロホログラフィー法を提案し,その測定装置・手法の開発を同時に行ってきた.この手法では数種の励起X線の特長を活かすことにより,表面・界面などの構造・状態を3次元的に原子レベルで明らかにできる.光電子スペクトロホログラフィー装置の開発およびそれを用いた超薄膜系の構造解析を行っている.

凍結含水生物試料の局所三次元分析法の研究(継続)
教授 尾張 真則[代表者], 協力研究員 野島 雅, 尾張研 大学院学生 劉 玉静, 尾張研 大学院学生 岩並 賢
組織細胞が含有する化学的成分の局在を形態学的に検索する技術は,組織化学の分野で発達し,現在ではその方法をヒトその他各種の動物,主にラットとマウス等の実験動物の各器官系に応用するにまでいたっている.その中で,組織細胞の断面形態観察は組織・細胞内において特定の元素の局在を明らかにするのに有用である.そこで,軟組織試料の超細密三次元分析法の開発を行っている.

内容不明実験廃液処理システムの構築(新規)
教授 尾張 真則[代表者], 環境安全研究センター 助教授 鈴木 良實, 研究員 冨安 文武乃進, 尾張研 大学院学生 中尾 英明
大学などの教育・研究機関には過去に発生しながら適切な処理がなされないまま長期にわたり研究室に保管され,内容が不明となってしまった実験廃液が存在している.このような内容不明廃液は種々の潜在的危険性を有しているため,速やかかつ適正な処理をする必要がある.そのためには内容物を特定する必要があるが,各種法令で規制されている化学物質は数100種に上り,系統的分析手順の確立が不可欠である.本研究は,内容不明な実験廃液を適正に処理するために必要となる情報を合理的かつ効率的に収集する手法の構築を目指している.

オール酸化物熱反射コーティングの赤外線領域における熱反射特性
教授 香川 豊[代表者], 受託研究員 小野寺正剛
光の干渉の原理を赤外線領域に利用し,材料全体における反射・透過を変化させ,材料へのエネルギーの流入量を制御することで熱伝導を制御できる熱反射コーティングの高温における熱反射特性を検討した.TiO2,ZrO2およびAl2O3のセラミックスコーティングの赤外線領域での熱反射特性を測定した結果,コーティングの設計のためにはコーティング層の赤外線領域における屈折率の波長特性を把握することが必要であることが明らかとなった.また,コーティング層自身の屈折率を反射率の測定結果より簡易的に推定する方法を検討した.

ナノコーティングのパフォーマンスの評価(継続)
教授 香川 豊[代表者],受託研究員 郭 樹啓
耐熱合金基板上にセラミックス系のナノコーティングを施した材料を用い,界面力学特性の測定手法を開発した.これを通して,コーティングと基板間の界面力学特性の正確的な測定方法を確立した.それに基づいて,異なるプロセスで作製したコーティングならびに異なるボンドコート粗さおよび膜厚のコーティングの界面力学特性を定量的に評価した.界面力学特性に及ぼす影響要素を解明した.また,高温熱暴露と熱繰り返し試験を行い,コーティング材料の組成相の安定性およびコーティングの損傷挙動を調べた.

金属―セラミックス接合体の界面剥離
教授 香川 豊[代表者], 助手 長谷川誠
Ni-Al系合金とサファイアの接合体を遮熱コーティングシステムのモデル材料として作製し,荷重負荷時における界面剥離の挙動を初期の剥離領域,NiとNi3Alの存在率等を考慮して実験的に調べた.界面剥離エネルギーは初期の剥離領域を考慮すると,NiとNi3Alの存在率に関係なく一定の値となり,その値は2.9J/m2,と低い値となった.破壊した界面の元素分析をXPSによって調べた結果,界面にはNiAl2O4やNiOの生成が認められた.これらの生成が低い界面剥離エネルギーが得られた理由と考えられ,反応析出物の生成が界面剥離に大きな影響を与えることが明らかとなった.

プラズマ溶射遮熱コーティングのTGOの応力分布(新規)
教授 香川 豊[代表者],技術補佐員 田中 誠, 助手 長谷川誠
プラズマ溶射によるTBCの熱暴露試験を行い,TGOの応力を蛍光分光法により測定してTGOの成長及び形状との関係を調べた.熱暴露時間が増加するに従ってトップコート層内のポアが減少するとともに,TGO層の厚さが増加した.TGO層内の圧縮応力は,熱暴露時間が増加するに従い一旦増加し,その後,微小な亀裂が発生したため圧縮応力は減少する傾向を示した.トップコート層内のトップコートとTGOとの界面近傍の亀裂がTGOの応力状態に影響を及ぼす重要な因子であることが明らかになった.

近接場光学手法による多結晶Al2O3の蛍光を用いた高分解能応力評価(継続)
教授 香川 豊[代表者],大学院学生 冨松 透
近接場光を用いた蛍光分光法により,多結晶Al2O3内部の応力を〜数100nmの空間分解能で測定することを検討している.近接場光とAl2O3結晶との光学的相互作用を明らかにするため,Crイオンを含有した単結晶Al2O3を用い,近接場光照射系での蛍光発光特性と測定結晶方位面,Crイオン濃度との関係について調べた.蛍光のR1,R2ピークの強度比はCrイオン濃度依存性はなく,結晶方位面によって変化することが分かった.これより,結晶粒の異方性を利用した結晶方位同定,及び各応力成分の測定が可能であることが確かめられた.

熱遮蔽コーティングの界面力学特性の評価手法開発
教授 香川 豊[代表者], 大学院学生 曹 寧源
熱遮蔽コーティング(TBCs)ではTBC層の基材からの剥離を防止することが重要である.本研究では,Barb法というモードIIの条件に対応できる実験手法を提案し,有限要素法(FEM)解析を用いて界面剥離時の力学条件を調べ,この手法をTBCの界面力学特性測定に用いる際に得られる力学特性値の物理的意味づけを行った.調べによると,亀裂先端では混合モードとなり,クラック長さの増加につれて,k1は徐々に増加し,k2は逆に減少する傾向が認められた.クラック先端部でのエネルギー解放率は熱応力有無及びPhase Angleにより大きく変化した.さらに,この傾向はTBC層と基材との弾性率比に大きく依存した.これらの結果により,Barb法では広範囲の混合モード下での試験が可能であると考えられた.

Thermal Energy Window Coatingの実現(新規)
教授 香川 豊[代表者], 大学院生 池上将英
セラミックス基板上に厚さ数百ナノオーダーの積層コーティングを作製することで各層の界面による干渉効果により赤外光の特定波長範囲の光を反射できることが明らかになっているが,残留応力,異方性,屈折率の温度依存・波長依存性など解決すべき問題点は数多い.単結晶Al2O3(サファイア)基板上にAl2O3,TiO2とZrO2層からなる多層構造モデルを用い,Maxwellの方程式・Fresnelの法則に従い,残留熱応力による屈折率への影響(光弾性効果),材料特有の屈折率の異方性の有無,入射角などを考慮し,膜厚を変化させながら,近赤外域の波長に対する光反射率の計算を行った.計算の結果,光反射率には光学異方性が与える影響が非常に小さく無視できることが明らかとなった.また,膜厚の最適化手法を確立し,最適解を算出した.

SiC系繊維を用いた多機能電波吸収材料(継続)
教授 香川 豊[代表者],大学院学生 大黒寛典
電磁波吸収特性と力学特性を兼ね備えた複合材料を実現するためにSiC系繊維強化プラスチック多機能複合材料を用いての素材選択,特性設計および可能性を検討した.SiC繊維を織物状にしたものを用いて18〜40GHzの周波数範囲での電波の反射特性と透過特性をSパラメーター法により測定した.得られた結果からSiC系繊維の電波吸収機構について考察した.

誘電体粒子を分散させたH2Oの電磁波との相互作用(継続)
教授 香川 豊[代表者],大学院学生 宮崎 暢
H2Oは20 GHz付近の周波数で,極性に起因する分子回転による電波吸収機構が生じることが知られている.本研究ではH2O中へAl2O3粒子を分散させたときに生じる電磁波との相互作用について調べた.Al2O3粒子の体積率を60 %まで変化させて電波反射率・透過率を測定した結果,体積率が増すと電磁波の反射率が減少することが明らかになった.

電磁波照射による材料の電子共振現象(継続)
教授 香川 豊[代表者],特別研究員 松村功徳,大学院学生 溝田 尚
誘電体では誘電率が周波数に応じて変化する誘電分散の現象が起こる.電子分極による分散では電子が共振する周波数の付近,すなわち,プラズマ周波数の付近で誘電率が大きな変化を示す.本研究では材料中で電子による電子による共振が生じる場合の電磁波との相互作用を調べた.

ブロック共重合体の自己組織化を利用した電気伝導体周期構造の作製
教授 香川 豊[代表者], 大学院学生 玉川啓一郎
ブロック共重合体の自己組織化を利用すればナノオーダーの誘電体周期構造を作製できることが知られている.本研究では,金属錯体の還元を用いて,自己組織化構造の特定の相に金属クラスターを優先的に析出させた薄膜を作製した.その結果をもと自己組織化構造に電気伝導性を付与することによる電気伝導体ナノ周期構造の作製の可能性を検討した.

透明で大きな破壊抵抗を持つGFRP/ガラス積層材料の設計
教授 香川 豊[代表者], 大学院学生 杉浦 有
ガラスやPMMAは窓用材料として広く用いられているが材料自体の靭性が低く過大な力が働くと脆性的破壊を生じ機能を失う.近年光透過性を持つガラス繊維強化プラスチック(GFRP)のシートを作成することが可能になり,これを用いると十分な強度と破壊抵抗が得られる可能性がある.本研究では光透過性を持つGFRP/ガラス積層材料の設計および実証を目的とする.

セラミックスナノ粒子を用いた低誘電率材料の作製
教授 香川 豊[代表者], 大学院学生 宮村 宏之
近年準ミリ波帯域の電磁波が使用されるようになり,準ミリ波帯域で電磁波を透過する低誘電率材料が必要とされている.電磁波と粒子の相互作用は粒子径が小さくなるほど低下することが知られており,ナノ粒子を用いたバルク材を作製することで低誘電率化が実現できることが期待される.本研究では,セラミックスナノ粒子を用いて低密度バルク材料を作製し,準ミリ波に対して既存の材料よりも電波を透過する低誘電率材料の作製を目的とした.

ナノ粒子分散プラスチックス複合材料の力学特性
教授 香川 豊[代表者], 助手 長谷川誠, 研究実習生 梶原敦人
ナノ粒子を強化剤として用いることにより,既存の複合材料では実現できないナノレベルでの界面剥離やクラックボウィングによって,より大きな特性向上の可能性がある.本研究では同一体積率で粒子径を11~200nmまで変化させたAl2O3粒子分散エポキシ樹脂複合材料を作製し,複合化による破壊挙動やヤング率の変化を実験的に調べた.圧子の押し込みによる破壊挙動は,試料中の凝集,未凝集領域によって,その破壊の挙動が大きく異なった.また,ヤング率は粒子径によらずほぼ同一の値を示し,その値は複合則によって予想されるヤング率よりも高い値を示した.エポキシの3次元網目構造内にナノ粒子が入り込み,エポキシ分子を拘束していることに起因すると考えられる.

セラミックスへのナノノッチ導入の可能性の検討
教授 香川 豊[代表者], 助手 長谷川 誠, 研究実習生 白木 啓一郎
10~200nm程度のナノクラックがセラミックスの破壊に及ぼす影響を理解するにあたり,ナノノッチの導入手法を確立する必要がある.本研究では,表面の荒さを10nmにまで抑えたサファイア基板を対象に,原子間力顕微鏡下でダイアモンドカンチレバーを使用して,スクラッチ試験の要領でノッチ導入を試みた.得られたノッチはノッチ長さによらず,表面での幅は最大1m程度であるが,ノッチ先端部は鋭いものであった.また,精密移動台を用いることによって,十分な直線性と長さのノッチが得られ,また,カンチレバーの荷重の制御と移動台を複数回往復させることにより,目的のノッチ深さを得られることが可能になった.

過熱水蒸気バイオマス反応プロセスによるフェノール類生産
教授 迫田 章義[代表者], 助手 下ケ橋 雅樹, 大学院学生(迫田研) 大須賀 隆太
バイオマスリファイナリーを基盤とした地域物質循環をめざし,未利用バイオマスの資源化プロセスのひとつとして,過熱水蒸気反応プロセスによるフェノール類生産技術の開発を行っている.特にフェノール類の収率低下につながるばかりでなく,操作上の問題ともなるタール状成分の生成メカニズムとその軽減策の検討を行っている.

過熱水蒸気バイオマス反応プロセスにおける窒素化合物の挙動解明
教授 迫田 章義[代表者], 助手 下ケ橋 雅樹
過熱水蒸気バイオマス反応プロセスは炭化プロセスの一種であるとともに,生成ガスを水溶液として回収できるため,他の炭化プロセスと比較した場合窒素酸化物などの有害ガスの大気への放散を低減できる可能性を有する.本研究では,過熱水蒸気バイオマス反応プロセスにおける元素窒素の挙動を解明し,同プロセスの大気中への窒素放散低減能を評価する.

新規デンプン樹脂の開発
教授 迫田 章義[代表者], 助手 下ケ橋 雅樹, 大学院学生(迫田研) 原間 章博
天然に存在するデンプン質を主原料,各種バイオマスリファイナリープロセスから得られる生成物を副原料とした新規デンプン樹脂の開発を行っている.特にこの開発においては,低純度副原料からの合成や,生成したプラスチックの再利用性に焦点をあてている.

水中溶存オゾンの吸着を利用する新しい水処理技術の開発
教授 迫田 章義[代表者], 助手 下ケ橋 雅樹, 技術専門職員(迫田研) 藤井 隆夫, 産学官連携研究員(迫田研) 蔡 宗岳
シリカ系吸着剤には水中溶存オゾンに高い吸着性を有するものがある.しかも, 吸着されたオゾン分子は自己分解が抑制されることから, バルク水中よりもはるかに高密度で長時間の貯蔵が可能である. また, 有機物とオゾンが高濃度に濃縮されて共吸着する場合には, バルク水中に比べて非常に大きな有機物の酸化速度となる. これら現象の基礎と水処理への応用の検討を行っている.

新しい水処理のためのCarbon Whisker膜の開発
教授 迫田 章義[代表者], 助手 下ケ橋 雅樹, 準博士研究員(迫田研) 「 尚大
Whisker膜(CWM)の開発を行っている. この新規の機能性炭素系膜は, セラミックス等の単体の上に炭素の膜が形成され, さらに設計した面密度で直径数ミクロンの炭素のヒゲを有している. このような構造から, 例えば水中の揮発有機物(VOC)の除去や微生物分離等の新しい水処理技術への応用が有望と考えられ, 材料とプロセスの同時開発を進めている.

廃植物油を原料としたバイオディーゼル生成プロセスの確立
教授 迫田 章義[代表者], 助手 下ケ橋 雅樹, 大学院学生(迫田研) 張 妍
植物油を原料としたバイオディーゼル燃料は資源・環境問題を解決する上で極めて有効な石油代替燃料である.本研究では特に食品用途のない低純度廃植物油を原料とし,安価かつ天然に存在するアルカリ土類金属を触媒としたバイオディーゼル燃料製造プロセスを設計・確立することを目的としている.

圧力スウィング吸着分離法を利用した同位体分離に関する研究
教授 迫田 章義[代表者], 助手 下ケ橋 雅樹, 技術専門職員(迫田研) 藤井 隆夫, 大学院学生(迫田研) 大木 崇
安定同位体は医薬・医療産業等で重要な役割を担っており,更にその利用を拡大するためには有効な濃縮・分離手法の開発が必要となる.現在,精密蒸留法や化学交換法が安定同位体の主流な分離・濃縮手法となるが,コスト的問題を抱えるなど改善の余地は大きい.PSA法(圧力スウィング吸着法)は既に空気分離等で実証されているように優れた気体分離性能,処理容量を示すことから,新しい同位体分離手法としての期待は大きい.本研究では最適吸着剤,最適操作方法等について実験的及び数値シミュレーション的に検討を行うと共に,その適用可能性と限界について明確化する.

電解コンデンサ用ニオブおよび合金電極材料の研究(継続)
教授 七尾 進[代表者], 助手 渡辺 康裕, 技術専門職員 簗場 豊, 学術研究支援員 遠藤 道雄
現在タンタルコンデンサが高性能電解コンデンサとして使用されているが,タンタルは高価である上に資源的な不安定要素を抱えている.タンタルを代替する電解コンデンサ電極材料としてニオブが注目を集めているが,その誘電体皮膜には温度的,耐電圧的不安定要素が存在し本格的実用化に至っていない.この欠陥を克服すべく,Nbに添加すべき第2元素としてAlを選択し,Nb-Al合金粉末あるいはNb粉末とAl粉末の混合粉を用いて,多孔質なNb-Al系電極材料を作製するための基礎的条件を調べた.同材料への誘電体皮膜の形成条件についても調べた.

準結晶の磁気コンプトン散乱測定(継続)
教授 七尾 進[代表者], 助手 渡辺 康裕
磁気コンプトン散乱は,磁性体の磁化に寄与する電子のスピン磁気モーメントの大きさとその運動量分布との相関を測定する手段である. 正十角形相の Al-Mn-Fe-Ge 合金は大きな磁化(鉄の1/10程度)をもつ2次元準結晶で,ab 面内では準周期的,それと垂直な方向では周期的な構造をもっている.通常2次元の準結晶でも電子スペクトルの異方性は非常に小さいが,磁気コンプトン散乱法よって磁性を担う3d電子のみのスピン依存運動量分布を測定し,その異方性をはじめて検知しえた. 今年度はこの結果の追実験をKEK−ARで行ない,結果が正しいことを再確認した.また,さらに詳細なスピン偏極の方位分布を測定するための実験準備を進めている.

X線発光分光法によるPt有機クラスターの研究(継続)
教授 七尾 進[代表者], 教授 溝部 裕司, 助手 渡辺 康裕
新しく合成されたPt有機クラスター( |NEt4||Tp*WS3(PPh3)| および |NEt4||Tp*WS3(Cl2)| ) は触媒の基礎構成材料としても有力な物質であるが,そのなかで重要な役割を演じる Pt の電子状態については知見が少ない.X線発光分光法により, Lα1 発光を調べることにより,その価数をそれぞれ0価,2.7価と決定した.また, 個々のスペクトルから詳細な情報を得た.

X線共鳴非弾性散乱法によるラーベス相Ce(Fe1-xCox)の研究(新規)
教授 七尾 進[代表者], 助手 渡辺 康裕
Ce(Fe0.8Co0.2)化合物は室温から低温になるにしたがって,常時性状態,強磁性状態,反磁性状態と磁気的状態が変化することが実験的に確かめられているが,各状態における電子状態がどのようなものであるかの実験的研究は少ない.本研究では,この系のCeLV吸収端近傍で入射X線を走査し,Lβ2,15X線発光分光を行なうことによって5d電子状態の変化を調べた.その結果,特定の入射X線エネルギー領域で発光スペクトルが温度によって大きく変化することを見出した.

鉛フリー合金に関する研究 (新規)
教授 七尾 進[代表者], 助手 渡辺 康裕, 学術研究支援員 遠藤 道雄
Sn-Pb共晶組成のハンダ合金は,融点が低く接合信頼性に優れかつ低コストであるため,電子部品の接合材料として広く普及している.しかし,酸性雨により本合金を含む廃棄製品からPbが溶出することから土壌汚染や健康障害が深刻な問題となり,世界的規模でハンダのPbフリー化が進められている.しかし,Sn-Pb合金の融点183℃に対して現在主流のSn-Ag合金は220℃,また低融点タイプのSn-Zn合金でも200℃と高く,ハンダ付け部品に熱損傷を発生しやすいという問題点がある.Sn-Pbより低融点のハンダ材料としてSn-In合金があるが,価格的に凡用材料には不適当である.本研究では安価なSn-Znをベースに,融点低下に効果がある添加元素を検討した.その結果Mgが有望であることを見出した.Sn-Zn-Mg・3元系合金の組成と凝固挙動の関係を明らかにした結果,融点180℃以下の組成領域が存在することを発見するという大きな成果を得た.

状態選択XAFS分光法と寿命幅フリーXAFS分光法の開発(継続)
教授 七尾 進[代表者], 助手 渡辺 康裕
X線吸収微細構造(XAFS)は,元素選択性をもった局所構造および電子構造の研究手段として極めて有用であるが,原子の酸化数や局所的な結合状態が異なる状態に関して平均化された情報しか得られない.特定の蛍光X線エネルギー領域をモニターしながら励起スペクトルを測定する方法はXAFSに状態選択性を付与することができる.この方法を選択的XAFS分光法と呼ぶ.新たに開発した共鳴X線非非弾性散乱測定装置を用いて,Nd2-xCexCuO4およびDyについて共鳴X線非非弾性散乱を測定し,発光の2次元プロファイルから,状態選択XAFSおよびCuOの寿命幅フリーXAFSのスペクトルが得られることを示すと共に,このスペクトルからその電子構造に関する貴重な情報が得られることを示した.

体外循環による血中病原性微粒子除去システムの開発
教授 畑中 研一[代表者], 助手 粕谷 マリアカルメリタ, 大学院生(畑中研) 宮川 淳, 大学院生(畑中研) 中根 正之
血液透析膜を用いて血中の病原性細菌やウイルスを選択的に吸着・除去する装置を開発することを目的としている.具体的には,化学合成した糖質高分子や細胞を用いて合成したオリゴ糖鎖(病原性微生物や病原性たんぱく質に特異的に結合するもの)を元に調製される糖質高分子を中空糸に固定化し,血液の体外循環によって,血中の病原性微粒子濃度を著しく低下させる装置を開発している.血中の病原体数を減少させることにより,その後の治療効果を上げると考えられ,抗生物質の過大投与を避けることも可能となる.

シクロデキストリンを有する新規なバイオマテリアルの開発
教授 畑中 研一[代表者], 助教授 吉江 尚子, 助手 粕谷 マリアカルメリタ, 大学院生(畑中研) 田村 潔
バイオマテリアルに使われている材料の一つにポリマーゲルが挙げられる.特に水を含むゲルはハイドロゲルと呼ばれ,生体材料工学の分野において大いに注目されている.ゲルは,架橋された高分子を主成分としているが,化学結合で架橋した場合には架橋点が固定されている.これに対して,近年,新領域創生科学研究科の伊藤耕三教授らは,シクロデキストリンの内部に2本のポリマー鎖を通した「トポリジカルゲル」を作製している.トポリジカルゲルでは,架橋点が移動するのが特徴である.本研究では,従来の(共有結合で架橋されている)ゲルとトポロジカルゲルとの中間の性質を示すと推察されるインターペネトレート(相互貫通)型のゲルを作製し,その構造と性質を詳しく調べている.2箇所に官能基を導入したシクロデキストリン(CD)と両末端に官能基を導入したポリエチレングリコール(PEG)との縮合ポリマーのPEG鎖部分は,別のポリマー鎖中に存在するCD環の中を通ることが可能である.インターペネトレートゲルでは,架橋(貫通)に関与していないCD環には有機化合物を包接することも可能であると考えられる.

糖鎖プライマーを用いた細胞による糖鎖生産
教授 畑中 研一[代表者], 助手 粕谷 マリアカルメリタ, 大学院生(畑中研) 室塚 淑美
長鎖アルキルアルコールのグリコシド(糖鎖プライマー)を培地中に添加して細胞を培養すると, 糖鎖プライマーは細胞の中に取り込まれ, 糖鎖伸長を受けた後に培地中に出てくる. 本研究では, 長鎖アルキルの末端にアジド基や二重結合などの官能基を導入した糖鎖プライマーを用いて, 細胞内における糖鎖伸長を観察し, 糖質高分子の構築を試みている.

ヌクレオシドを有するポリマーと細胞膜表面の糖転移酵素との相互作用
教授 畑中 研一[代表者], 助手 粕谷 マリアカルメリタ, 大学院生(畑中研) 堀池 由浩
糖転移酵素は糖ヌクレオチドの糖鎖部分を受容体糖鎖上に転移する. 本研究では, 細胞膜表面のガラクトース転移酵素を利用して, ウリジン, ガラクトース, N−アセチルグルコサミンを有するポリマー上への特異的な細胞接着および細胞移動などに関して調べている.

糖鎖合成における含フッ素化合物の利用
教授 畑中 研一[代表者], 助手 粕谷 マリアカルメリタ, 大学院生(畑中研) 伊藤 文香
糖鎖合成には,化学合成,酵素合成,細胞内合成などがあるが,フッ素を含む化合物を用いて,化学反応の制御や含フッ素溶媒による抽出などを行い,糖鎖合成の簡略化を目指す.

ウイルス除去フィルターの作成
教授 畑中 研一[代表者], 技術職員(畑中研) 奥山 光作
糖鎖の相互作用などを利用してインフルエンザなどのウイルスを除去するフィルターを作成している.

単糖およびオリゴ糖の機能分子化
教授 畑中 研一[代表者], 技術職員(畑中研) 奥山光作
単糖やオリゴ糖を修飾して,生体分子による認識を向上し,様々な機能性の分子へと変換している.

PLD法による高品質V族窒化物の成長
教授 藤岡 洋[代表者], 研究機関研究員 太田 実雄
従来のV族窒化物成長技術では基板を加熱し熱エネルギーを与えることによって単結晶成長を実現していたが,本研究ではV族原子にパルスレーザーのエネルギーを与えることで室温でV族窒化物の成長を実現する.この技術によって従来使用することのできなかった化学的に脆弱な格子整合基板を利用することが可能となり,結晶の品質が大いに向上する.

フレキシブルデバイスの開発
教授 藤岡 洋[代表者], 研究機関研究員 太田 実雄
大面積金属基板上へ半導体単結晶を成長し受発光素子や電子素子などのエレクトロニクス素子を作製する.その後,作製した素子をポリマーへ転写することによって透明かつ柔軟,大面積のフレキシブルデバイスを作製する.

新規遷移金属反応場の高効率分子変換への利用
教授 溝部 裕司[代表者], 助手 清野 秀岳,技術専門職員 大西武士,溝部研 大学院生 岩佐健太郎,溝部研 大学院生 権藤寿美恵,溝部研 大学院生 新倉史也, 溝部研 研究実習生 坪井浩子
有機金属錯体はその金属の種類や酸化状態, 金属中心を取りまく配位子の立体的および電子的効果などにより, その金属サイト上で多彩な化学反応を促進できる. 本研究では, 単核から多核にわたる様々な金属錯体について新規に設計・合成を行い, これら錯体上で進行する高効率・高選択的反応を検討することにより次世代の触媒の開発を試みる.

遷移金属カルコゲニドクラスターの合成と利用
教授 溝部 裕司[代表者], 助手 清野 秀岳,溝部研 博士研究員 長尾正顕, 溝部研 大学院生 梶谷英伸,溝部研 大学院生 五味田里美,溝部研 大学院生 越川壮一, 溝部研 大学院生 大家一将, 溝部研 研究実習生 中川貴文, 溝部研 研究実習生 三角禎之, 溝部研 研究実習生 吉村賢治
カルコゲン元素(第16族元素)配位子により架橋された強固な骨格をもつ遷移金属クラスターは, 生体内酵素活性部位モデル, 高活性触媒, 高機能性材料などとして幅広い学術的および工業的用途が期待される. 本研究では, 多様な遷移金属-カルコゲニドクラスターの一般性ある合成法を確立するとともに, 得られた新規化合物の詳細な構造と反応性の検討を行い, その高い機能の利用法を開発する.

遷移金属クラスターを担持した新規固体触媒の開発
教授 溝部 裕司[代表者],技術専門職員 大西武士, 助手 清野 秀岳
分子性の遷移金属クラスターについては,合成化学的手法を用いて望み通りの構造と組成をもつ多核構造を構築することが可能である.本研究では,架橋カルコゲニド配位子により強固に連結された金属多中心をもつクラスターを,その特異な骨格構造を保持したままで担体上に担持することにより,高い反応性を有する新規触媒の開発を目指す.

ビスマス層状構造強誘電体における構造と物性の相関
教授 宮山 勝[代表者], 講師(東大) 野口 祐二, 大学院学生(宮山研) 後藤 崇, 大学院学生(宮山研) 吉村 祥, 外部研究生 村田 紘一朗
耐疲労特性に優れた不揮発性メモリー材料として知られるビスマス層状構造強誘電体について,結晶の格子歪み,ドメイン構造,強誘電相転移と各種物性(分極特性,誘電率,高温導電性とそれらの異方性)の間の相関の解明を行うとともに,格子欠陥を制御して各種物性を制御する研究を行っている.酸素欠損を低減させたタンタル酸ストロンチウムビスマス系単結晶で著しく大きな残留分極を確認した.また,希土類置換を行ったチタン酸ビスマス系で,微細なドメイン構造,酸素欠損低減による低リーク特性などを明らかにしている.

交代相構造・ドメイン構造誘起新規強誘電機能の創製
教授 宮山 勝[代表者], 講師(東大) 野口 祐二, 大学院学生(宮山研) 小林 友
異なるペロブスカイトブロックが酸化ビスマス層を介して積層したビスマス交代相構造酸化物では,単一層体とは異なる物性が期待される.チタン酸ビスマス-チタン酸バリウムビスマス交代相単結晶において,層に平行な分極軸方向で,非鉛ペロブスカイトでは世界最高の残留分極値の達成に成功した.また,適度な導電性をもつ強誘電体において,外部電界による分極反転の際に導電性が変化する現象を見出しており,ドメイン構造変化との関連を追及している.このような特異な構造に由来する新規強誘電機能を明らかにし,新たな機能材料への展開を進めている.

中温作動型燃料電池用材料の探索・設計
教授 宮山 勝[代表者], 技術官 高野 早苗, 大学院学生(宮山研) 堀 幹裕, 大学院学生(宮山研) 川上 洋介, 大学院学生(宮山研) 鈴木 智史
100〜200℃で作動可能な燃料電池の電解質材料として金属酸化物水和物に着目し,合成とプロトン伝導性評価を行っている.酸化スズ水和物では表面マイクロポア中の水和水により,また,層状構造をもつ酸化タングステン系およびリン酸金属系の水和物では層間の水素結合ネットワークにより,150℃高水蒸気分圧下で高プロトン導電率を示すことを明らかにした.ポリマー系電解質との複合化も進めている.固体酸化物型では,600〜800℃での作動を目指し,セリア系固体電解質とLa-Sr-Co-Fe系酸化物カソードを用いた系での界面抵抗評価と単室型構造燃料電池(メタン・空気混合ガス使用)の特性評価を行っている.電極には電子・イオン混合伝導性が重要な要素であることを確認している.

電気化学スーパーキャパシタ用電極材料の研究
教授 宮山 勝[代表者], 助手(東大) 鈴木 真也, 大学院学生(宮山研) 桑原 章, 大学院学生(宮山研) 岡田 朋美, 大学院学生(宮山研) 稲葉 慶吾, 大学院学生(宮山研) 三ツ木 伸悟
高容量と高速の充放電特性を兼ね備えたスーパーキャパシタは、電気自動車補助電源等への応用が期待される。層状やトンネル構造をもつ酸化バナジウム、リン酸鉄リチウム、チタン酸などの活物質を液層から形成し、電子導電性カーボンの粒子や繊維にコーティングして高表面積・多孔質複合体とすることにより、リチウム二次電池と同じ機構で上記の特性を示すことを見出している。また、四チタン酸などの層状構造体を層間剥離・再構築することにより得られるナノシートによる電極が、バルク体より優れた充放電特性を示すことを見出しており、その特性を調べている。

ガラス中のイオン伝導機構の解明
助教授 井上 博之
ガラスは結晶質とは異なり,明確な原子配列あるいは原子位置が特定できない.このようなガラスにおいても,比較的イオンの動きやすい組成があることが知られているが,原子位置や配列が特定できないために,その伝導イオン種や機構が明確にわかっていない.本研究では,このようなガラスの中のイオン伝導機構や伝導パスの解明を行い,さらに伝導度の高いガラスの開発を試みる.

ガラス中の微細組織の形成
助教授 井上 博之
ガラス中のナノレベルの微細な組織の形成は,ガラスに新たな特性を付与することが期待される.本研究では,酸化物ガラス中に微細なハロゲン化物の相を析出させる.この相の析出過程を調べ,また,制御することにより,機能を持たせることを目指している.

ガラス中の希土類イオンの発光設計
助教授 井上 博之
希土類イオンは,その発光特性が利用されている.本研究では,ガラス中の希土類イオンの周囲の原子配列とその発光特性の関係を明らかにすることを目的としている.これにより,希土類イオンの発光スペクトルから,種々のガラス中における原子配列を解析することや希土類イオンの光学的特性を把握して,その特性を設計することを目指している.

巨大磁気抵抗効果を示すペロブスカイト型酸化物の電磁気特性
助教授 小田 克郎
ペロブスカイト型結晶構造を持つLaMn系酸化物は磁場を印加することにより巨大な磁気抵抗(GMR)効果を引き起こす.このGMR効果は電子のスピンによるキャリアーの散乱に関連したものであるため,電気伝導を磁場でコントロールできる.この特性から次世代のMR素子や磁場制御機能性材料への応用面に期待をもたれ,同時に基礎物性の面では3d遷移金属酸化物における磁性と伝導の複合した物質として注目を浴びている.LaMn系酸化物における伝導バンドのフィリング制御にはMn4価はキャリアーを担う重要なファクターであると考えられる.LaMn系酸化物中の既存の研究の多くはLaサイトを他の2価金属イオンで置換したもので行われている*1.それに対して本研究ではBサイトのMnをNiで一部置換した試料を作製しMn4価量と電気的性質の相関を調べた.

巨大磁気抵抗効果を示すペロブスカイト型Mn酸化物薄膜の作製
助教授 小田 克郎
本研究ではヘリコンスパッタ法を用いて結晶配向性の揃った[RE](Mn,Met)O3ペロブスカイト型Mn酸化物薄膜[RE:希土類金属,Met:3d金属]を作製してそのGMR効果を調べることを目的とする.特に,薄膜を作製する際に酸素のアシストガンを併用した"基板上反応性スパッタ法"を用いて,高品質の結晶配向性の揃った薄膜の作製を狙うのが独創的な点である.この方法では複数のヘリコンガンでメタルのターゲットをたたいて酸化物を校正する金属イオンを基板へ跳ばし,基板上に別のアシストガンからラディカルな酸素原子を入射して基板上で酸化反応を起こさせるガンへの投入エネルギーと酸素の入射エネルギーを調節してペロブスカイト型構造の結晶配向性を制御する.

磁性強誘電体薄膜の作製とその物性
助教授 小田 克郎
強誘電体の磁気特性についてはバルク材について少し調べられているが,薄膜についてはほとんど調べられてきていない.本研究ではこのような強磁性と強誘電性を組み合わせた新しい電磁気機能性を持つペロブスカイト型結晶構造の薄膜の作製し,その薄膜の強誘電,強磁性特性を調べることを目的とする.薄膜の作製方法としては優れた強誘電特性を得るためには必要不可欠な結晶配向性のそろった薄膜を作製するのに適したイオンビームスパッタリング法を用いる.

結晶配向性の揃ったFe4N窒化物薄膜の作製
助教授 小田 克郎
Fe4N高い内部磁場を持ち,次世代の磁性材料として有望視されている.本研究では結晶配向性の揃ったFe4N薄膜を作製して,結晶配向性とともに,磁化の方位も揃えて垂直磁化異方性膜の作製を目指している.

機能性交互共重合ポリイミドの合成と物性評価
助教授 工藤 一秋[代表者],大学院学生 濱田 崇,研究実習生 今井崇裕,大塚安成
これまでに,当研究室で開発した三環性スピロ二酸無水物と2種のジアミンを用いてone potで交互共重合ポリイミドを作ることに成功している.今回は,この合成法を利用してポリイミド中に蛍光クロモフォアを適当な間隔で配置させた固体状態で蛍光性を示すポリイミド,ならびに親水性部位と疎水性部位を交互に配置した主鎖型両親媒性ポリイミドを開発し,それらの物性を明らかにした.

有機ヅL用ポリマー材料の合成と評価
助教授 工藤 一秋[代表者], 教授 荒川 泰彦,技術職員 高山 俊雄, 助手(東大) 北村雅季
これまでに,有機電界発光(有機EL)素子に用いられるAlq3の可溶性高分子化について研究を行なってきている.今回は,可溶性を付与するための置換基の効果について検討を行い,従来のものよりも発光効率が上昇することを見出した.

会合体形成能のあるα-ヘリックスペプチドを利用した機能性分子の創製
助教授 工藤 一秋[代表者], 助手 坂本 清志, 大学院学生 林千紘,福島秀和, 大学院研究生 山田早苗
会合能をもつα-ヘリックスペプチドを機能化することは,水中での化学プロセス創製のための有効なアプローチである.今回,ヘテロcoiled-coil構造を形成する2本のペプチド鎖を用いて,ヘムならびにFADを補因子とする酵素を空間的に近づけることで,電子伝達の効率を上げることに成功した.また,coiled-coilや3α-ヘリックスバンドル形成能のあるペプチドを連結した系を用いて,ペプチド会合体の形成する疎水場を反応場として用いる試みも行なった.

バイオアッセイを活用する廃棄物最終処分場の管理
助教授 酒井 康行[代表者], 教授 迫田 章義, 教授(岡山大) 小野 芳郎,(埼玉県環境科学国際センター)小野雄策, 助教授 (岡山大)毛利紫乃,(国環研)山田正人,助教授(東京高専)庄司良,技術官 藤井隆夫
廃棄物最終処分場から何らかの理由で漏出する化学物質の生態系やヒトへの影響が懸念されている.しかし化学分析で同定できる物質は,例えば有機物についてはわずか1%以下であると報告されている.そこで,生態系の一次生産者としての藻類の増殖阻害試験,ヒト影響評価のための肝細胞生存阻害試験や多環芳香族類検出のための肝細胞解毒酵素誘導試験などのバイオアッセイと,主要物質に関する化学分析のデータを総合することで,最も緊急に管理を必要とする物質群を同定したり,効果的な浸出水処理手法を提案したりすることを目指し,検討を行っている.

ヒト環境応答評価のためのin vitro臓器モデル開発と利用
助教授 酒井 康行[代表者], 教授 迫田 章義,助手 小島伸彦,酒井康行研 大学院生 西川昌輝, 大学院学生(酒井研) 高村 里佳, 大学院学生(酒井研) 阪井 仁美, 研究実習生(酒井研) 内野 拓郎, 主任研究官(産総研) 岩橋 均, 助教授(芝浦工大) 吉見 靖男, 教授(岡山大) 小野 芳郎
既存の単一培養細胞からなる毒性評価系では,吸収・代謝・分配といった人体内での毒性発現に至までのプロセスが考慮されない.そこで,これらを考慮する実験系として,膜上に培養された小腸上皮細胞,同じく膜上に培養された肺気道・肺胞上皮細胞,担体内に高密度培養された肝細胞および標的臓器細胞(腎臓・肺など)などの個別のモデル臓器コンパ−トメントを開発すると共に,これらを生理学的な培養液灌流回路で接続する新しい毒性評価システムを開発し,毒物経口摂取後の血中濃度と毒性発現を速度論的に再現することを目指している.

三次元造型技術と臓器前駆細胞の増幅技術を用いた大型臓器in vitro再構築
助手 小島伸彦, 助教授 酒井 康行[代表者], 技術官 鶴 達郎, 大学院学生(酒井研) 花田 三四郎, 大学院学生(酒井研) 黄 紅雲, 大学院学生(酒井研) 成戸 啓介, 大学院学生(酒井研) 高宮 寿美, 研究実習生(酒井研) 松尾 朋樹, 研究実習生(酒井研) 細田 恵美,教授(分生研)宮島篤,教授(東大医)幕内雅敏,助手(東大医)成瀬勝俊, 助教授 白樫 了, 助教授 新野 俊樹, 助教授 藤井 輝夫, 教授(東大) 牛田 多加志, 講師(東大) 古川 克子, 教授(東大) 上野 照剛, 博士研究員(藤井研) Christophe Provin
将来,移植にも耐え得るような肝・肺・腎などのヒト大型組織をin vitroで再構築するために,多面的な技術開発を行っている.具体的には,複雑な内部構造を持つ生体吸収性樹脂担体の光重合・機械加工積層造型法に関する検討や,増殖能と臓器再構築能に優れたマウス・ラット・ブタの胎児由来細胞のin vitro増幅技術の開発,などについて研究を進めている.

無機・有機複合化による生体骨類似骨修復材料の作製および評価
助教授 朱 世杰[代表者], 客員研究員 張厚安
現状の荷重部用骨修復材料の問題点は,生体骨との力学的性質が相違,骨と結合能が低い,手術現場での加工が困難,抗菌性がないである.ナノ酸化チタン粒子とミクロ水酸アパタイト粒子強化有機高分子複合材料を作製し,粒子の体積率および空孔率の影響について研究した.また,高い生体活性,手術現場での切削加工が容易,滅菌が容易,抗菌性があるという利点を持つナノ酸化チタン粒子分散有機高分子複合材料の力学的強度および疲労損傷機構について研究した.生体骨に類似骨修復材料として生体骨類似の力学的強度および疲労寿命を持つことを明らかにした.

超大容量電気キャパシターに関する研究
助教授 朱 世杰[代表者], 受託研究員 米 国民
従来の大容量キャパシタは基本構造として活性炭を使用しており,その容量は普通なコンデンサの約1,000倍以上大きいであるが,蓄電の機能として現段階では,電気二重層キャパシタのエネルギー密度は化学電池より約1/20に過ぎない.エネルギー素子として使用には電池より今まだ10~100倍ぐらいのギャップがある.容量向上のために様々な試みをしている.キャパシタの性能を解析すると共にキャパシタの電極材料の選択,デーザイン,有機・無機電解液の組み合わせを工夫し,電極材料の物理・化学処理によるキャパシタの大容量化に繋ぐ.また,活性炭のメカノケミカル処理によるキャパシタの容量を向上することが確認した.

科学研究費補助金採択研究課題数による大学の研究活性度の評価
研究員(東京電機大教授) 野村 浩康, 助教授 光田 好孝[代表者], 教授 前田 正史, 技術職員 前橋 至
科学技術基本計画にもとづき科学技術研究に対する資金,特に,競争的資金の増額が計られてきた.中でも,大学等における基礎科学の振興を目的とする文部科学省による科学研究費補助金は,過去5年間で急激な伸びを示し,平成16年度には1800億円を超え我が国最大の競争的研究資金となっている.科学研究費補助金は,国・公・私立大学の区別なく研究者個人が申請し研究費を獲得する制度であり,そのうち,個別の教員が研究テーマを申請しピアレビューによって採択が決定される個別研究費(基盤研究等)は教員の研究活動を表す一つのバロメーターであると考えられる.採択件数の多い大学は,活発に研究活動をしている教員が多く所属していることになり,分野ごとの採択件数の多少は,各大学の研究活性分野の濃淡を表すことになる.今年度は,2003年度の採択分より研究分野に関する「細目表」が大幅な改訂が行われた結果,変更前後とどのような採択状況に変化を及ぼしたかについて,検討を行った.大きな改訂となった人文社会系では,教育学や言語学を分離したことに伴い,活性度の高い大学が明瞭となっている.一方で,理工系や医系では,大きな改訂がなかったため2002年度との大きな差が見られていない.しかし,複合領域の見直しにより,新たな研究分野への対応が行いやすくなっていると考えられる.

高等教育の魅力ある発展に向けた政策的課題の探求
助教授 光田 好孝
社会の発展への影響力を大きく持つ高等教育は,欧米諸国に限らずアジアにおいても,重要な政策課題となっている.米国の大学を頂点として,教員や学生の流動性が増す中で,自国の高等教育機関を強化しようとする政策が次々と立案され,実行に移されている.これに対して,我が国でも,中央教育審議会大学分科会において高等教育改革に関する議論が行われ高等教育の将来像の提示を行い,各高等教育機関に将来像の実現に向けた努力を促している.このような中で,米国のカーネギー分類のように大学を機能別に分類することにより,教育改革の課題を明らかにしようとする動きもある.そこで,本年度は,大学の学位号(学士・修士・課程博士)の授与状況を用いて,日本の大学の機能別分類を行った.この結果,我が国の大学は,人文社会系のみの大学が大半を占め,幅広い分野での教育研究を行い博士課程教育までカバーする総合研究大学と呼べるものは米国に比べ非常に少なく13校しかないことが明らかとなった.これらの大学は,21世紀COEプログラムも複数の分野で採択されている大学であり,国内のピアレビューにおいても総合研究大学として認められているといえる.

カーボンナノチューブの曲げ変形挙動と電気伝導性のその場測定
助教授 光田 好孝[代表者], 技術職員 葛巻 徹
透過電子顕微鏡内でのナノプローブマニピュレーション技術を適用し,カーボンナノチューブ(CNT)の電気的・機械的特性と原子構造との関連を調べている.これまでの成果として,CNTの電気伝導は弾性限内での変形では可逆的に変化するが,弾性限を超える変形によって構造欠陥を生じさせると電気伝導性が低下し,応力を除いても初期電流値には回復しないことが判明している.本年は電気的特性に加えて微小変形応力の計測を実現するためマニピュレーションユニットを改造し,市販のAFMカンチレバーをプローブとして導入した.CNTの座屈,曲げ変形時の力をカンチレバーアームの撓みから計測することでCNTのヤング率を求めることを可能にした.CNTの電気的特性に影響を及ぼす構造因子や欠陥構造を形成するしきい応力を定量的に評価することによって,CNTの歪ゲージやスイッチング素子等への応用が開ける.現在,多層CNTの内層引き抜き変形時の電気伝導変化及び層間滑り応力の計測に取り組み,ナノ材料としての応用に向けた研究を継続している.

ナノプローブマニピュレーションTEMによるCNT複合材料のナノダイナミックス評価
助教授 光田 好孝[代表者], 技術職員 葛巻 徹, 研究員(東工大助教授) 大竹 尚登, 助手(東工大) 安原 鋭幸
カーボンナノチューブ(CNT)をはじめとするナノ炭素系繊維の大量合成法の開発を背景に,これらを樹脂基複合材料の強化繊維とする応用研究に取り組んでいる.これまでのところナノ炭素系繊維の複合では十分な強化効果が得られていない.我々はこの原因を繊維の特性と複合組織に求め,ナノスケールでの解析を進めている.本研究では,各種繊維材料の構造と変形挙動の解析に加え,AFMカンチレバーをプローブとするマニピュレーターにより繊維単体の機械的性質の定量的評価を実施し,ヤング率の計測を行った.構造欠陥を内包したCNTは元来の形状が直線性に欠け,全体的に湾曲したう,ねった形状をしている.これらは欠陥部分を基点として変形しやすく,見かけのヤング率が低い.市販品を含む各種ナノ炭素繊維の評価により,使用目的に応じた最適な繊維の探索,及び,複合材料形成後のナノ引張り試験等から樹脂基複合材料実現へ向けた評価研究に取り組んでいる.

リサイクル志向高分子材料の開発
助教授 吉江 尚子
これまでプラスチックリサイクル技術は,材料特性が最適化された材料に対してリサイクル方法を構築するという手順で行われてきたが,本研究はこれとは逆,すなわち,易リサイクル性高分子を設計し,そこに材料特性向上のための方策を施すという手順で新規材料を開発している.

微生物由来ポリエステルの構造・物性解析とその材料設計への応用
助教授 吉江 尚子
微生物由来ポリエステルの構造を徹底解析し,その物性との相関を調べ,材料設計へと応用する。特に,微生物由来共重合ポリエステルは,一般の化学合成高分子と比較して化学組成分布が非常に広い,アイソモルフィズムと呼ばれる稀有な結晶構造をもつなどの特徴があり,構造-物性相関研究の対象として非常に興味深い。

共重合ポリエステルの微細構造の徹底解析
助教授 吉江 尚子
ある種の脂肪族共重合ポリエステルがアイソモルフィズムと呼ばれる稀有な結晶構造をとることを明らかにし、その結晶化機構の詳細を検討している。また、この共重合ポリエステルでは、化学組成の変化により、これまで知られていなかっら新たな構造転移が観測されることを明らかにし、その転移を説明するモデルとしてサンドイッチラメラモデルを提案し、その有用性を検討している。

有機−金属錯体高分子による微小構造体の形成に関する研究
講師 北條 博彦[代表者], 大学院生(荒木・北條研) 渡邊裕子, 研究実習生 芝本匡雄
有機高分子と遷移金属イオンの反応により有機−金属錯体を基本構造としたポリマーを作製し,その自己集合過程を利用してマイクロメーターサイズのファイバーや球状粒子の形成を試みた.有機分子の設計を系統的に変更し,分子構造と微小構造体形成能との関係について調べた.また構造体の形態制御を目的として,濃度,温度,溶媒などの反応条件が形態に及ぼす影響について検討した.

人間・社会系部門

環境感性工学の開発(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三, 大学院学生 梁禎訓
環境感性工学開発の第一段階として,空調による室内温熱環境における適用を検討する.室内の温熱環境シミュレーションシステムに,環境からの刺激に対して,環境に対し能動的に反応する人間要素を組み込み,環境制御のため投入したエネルギー量と人間の環境に対する不満足度を最小化するよう,環境−人間系システムを最適化する.この検討により,省エネルギーかつ,人間の感性に沿った空調システムを発見,選択することが可能となる.本年度も昨年に引き続き,サーマルマネキン(人体の放射性状をシミュレートするマネキン)を用いて様々な空間の温熱環境を計測,評価し,環境−人間系システムを検討した.

室内の換気・空調効率に関する研究(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,研究員 吉野博,協力研究員 金泰延,協力研究員 伊藤一秀
室内の空気温熱環境の形成に預かっている各種要因とその寄与(感度)を放射および室内気流シミュレーションにより解析する.これにより一つの空調吹出口や排気口,また温熱源などが,どのように室内の気流・温度分布の形成に関わっているか,またこれらの要素が多少変化した際,室内の気流・温度分布がどのように変化するかを解析する.これらの解析結果は,室内の温熱空気環境の設計や制御に用いられる.本年度は暖房室内で開放型灯油ストーブを燃焼させた際の室内空気質の濃度分布性状について検討した.

数値サーマルマネキンの開発(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,研究員 田辺新一,大学院学生 梁禎訓
本研究は,サーマルマネキン等を用いた実験に基づいて行われている人体とその周辺の環境場との熱輸送解析を,対流放射連成シミュレーション,さらには湿気輸送シミュレーションとの連成により,数値的に精度良くシミュレートすることを目的とする.本年度は四肢と顎部,胸部などの局部形状を詳細にモデル化した人体モデルを作成し,この人体モデルを用いたCFD解析により,人体局所形状の影響を考慮して,人体吸気領域の検討を行った.

室内温熱環境と空調システムに関する研究(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,研究員 近本智行,協力研究員 金泰延
良好な室内環境を得るための最適な空調システムに関して,模型実験・数値シミュレーションにより研究している.OA化による室内熱負荷の増加・偏在化やオフィスのパーソナル化などにより,従来の全般空調方式から個別制御可能なパーソナル空調としてワイドカバー型空調およびスポットクーリング型空調を提案し,その有効性につて検討した.

室内気流の乱流シミュレーションとレーザー可視化,画像処理計測手法の開発研究(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,協力研究員 伊藤一秀
室内気流を対象とした乱流シミュレーション・可視化計測による流れ場,拡散場の予測,解析,制御のための手法の開発を行う.特に,レーザー光を用いた流れの可視化による定性的な把握とともに,定量的な計測を行うシステムの開発研究に重点を置く.模型実験での可視化により得られた流れ性状を数値化してシミュレーション結果と比較し,その精度向上に務めた.

室内化学物質空気汚染の解明と健康居住空間の開発(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,研究員 伊香賀俊治,研究員 田辺新一,研究員 近藤靖史,協力研究員 伊藤一秀,外国人特別研究員 朱清宇, 大学院学生 徐長厚
建築物・住宅内における化学物質空気汚染に関する問題を解明し,健康で衛生的な居住環境を整備する.研究対象物質としてホルムアルデヒド,VOC,有機リン系農薬及び可塑材に着目する.これら化学物質の室内空間への放散及びその活性化反応を含めた汚染のメカニズム,予測方法,最適設計・対策方法を解明すること,その情報データベースの構築を目的とする.本年度も昨年度に引き続き,実大スケールの家具などの製品からの揮発性有機化合物の放散性状について検討した.また,室内居住域の化学物質濃度を健康で衛生的な範囲内に留めるための多岐にわたる建材使用の条件,室内換気方法,除去分解方法を具体的に提案する.

高密度居住区モデルの開発研究(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,研究員 伊香賀俊治, 大学院学生 樋山恭助
人口爆発を止めることは困難であり,人類は好むと好まざるに拘らず,都市において高密度居住の道を選ばざるを得ない.高密度居住を積極的に利用して,効率的で,高いサステナビリティ性を備えた,そして環境負荷の少ない居住区モデルを開発する.本研究では,都市負荷の最小化を目指して高密度居住区を計画し,その環境負荷削減効果を明らかにするとともに食料生産,ヒーリング等のための耕地地区,緑地地区と高密度居住地内のバランスのとれた配置計画方法を提案する.本年度はベトナム・ハノイに建設されたボイドを内在させ大規模開口からの自然換気を積極利用したハノイ実験住宅についてエネルギー収支型通風計算モデルにより換気量評価を行い,その有効性を検討した.

風洞実験・室内気流実験で用いる風速並びに風圧変動測定方法の開発に関する研究(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,研究員 小林信行,研究員 近藤靖史,技術専門職員 高橋岳生, 大学院学生 河野良坪
建物周辺気流に関する風洞実験や室内気流実験で用いる平均風速,風速変動の3次元計測が可能な風速測定器の開発・実用化および変動風圧の測定法等の開発に関し,研究を進めている.本年度も前年度に引き続き,PIV流速計により等温室内気流,および非等温室内気流の乱流統計量を測定し,その特性を解析した.また,高層集合住宅における給気口と排気口位置の2点間の風圧変動の特性について多点圧力計による模型実験を行った.

CFD解析に基づく室内温熱環境の自動最適設計手法の開発(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,協力研究員 金泰延
本研究は,室内環境CFD(Computational Fluid Dynamics)解析シミュレーションに基づく室内温熱・空気環境の自動最適設計手法を開発することを目的とする.これは室内の環境性状を設計目標値に最大限近づけさせるための室内の物理的な境界条件を求める手法,すなわち逆問題解析による環境の自動最適化設計手法の基礎的な検討を行うものである.本年度はGA(遺伝的アルゴリズム Genetic Algorithm)を導入し,より少ない計算量で広範な条件から複数の最適条件候補を探索する手法を検討した.特に,気象条件などの外部環境条件を確率変数として扱い,対応して空調などのアクティブ制御によって決まる室内環境の要素を考慮して室内の形状などの設計要素をGAにより最適化する方法を検討した.

市街地大気汚染拡散メカニズムの解明と最適制御手法の開発(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三, 技術専門職員 高橋岳生, 助手 黄弘
近年の大都市部における窒素酸化物(NOX)や粒子状物質(SPM)による市街地沿道の大気汚染は,自動車排ガス規制など種々の施策にもかかわらず,昭和60年以降はむしろ悪化の傾向を示している.これは市街地の高層化や道路の複層化など,高密度な空間利用による風通しの悪さにより,自動車排ガスがストリートキャニオン内で滞留するためと考えられる.本研究では,風洞実験とCFDを用い,市街地大気汚染拡散メカニズムを解明し,光触媒の最適配置など低コストで効率的な大気汚染制御手法を開発している.

省エネルギーとIAQ向上を実現する非結露型空調方式の開発(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三, 大学院学生 蔡耀賢
デシカント空調システムは,カビ・細菌等による建物屋内のIAQ(Indoor Air Quality 空気質)の低下を改善することが期待され,関連する研究も多い.しかし,一般的なデシカント空調システムは,効率(COP)が1以下であり,省エネルギーの観点から見ると,除湿ローターの再生用のエネルギーとして低温排熱を利用することがないかぎり,通常のヒートポンプを用いた冷却減湿システムの効率に遠く及ばない.また,室内で非結露を確実に担保するための条件整理も充分になされていない.本研究では,CO2ヒートポンプをデシカント空調システムに組み込み,省エネルギー性と建物内及び空調システム内の非結露の実現によるIAQの向上を同時に実現し,低温排熱がない場合にも適用できる高効率のデシカント空調方式を開発することを目的とする.

自然換気併用オフィスにおける可搬型パーソナル空調機の研究開発(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三, 大学院学生 梁禎訓, 大学院学生 朱晟偉
空調エネルギー削減の方策として,政府により冷房設定温度28℃の奨励が行われているが,我慢を強いる省エネ対策は民間への普及を阻害し,快適性・生産効率の低下,窓際・高負荷エリアなどでの暑さといった弊害が生じている.本研究では,省エネルギーと快適性を両立させ,かつ既存の建物制御システムにも容易に採用可能な安価で可搬型のパーソナル空調機を開発している.特に居室内の限られたタスク領域をなるべく均一温熱環境となるよう制御し,タスク域の人体が大きな熱的不均一環境場に曝されないようにするタスク域ワイドカバー型パーソナル空調を提案している.

砂礫の変形・強度特性の研究(継続)
教授 古関 潤一[代表者], 助手 佐藤 剛司,技術職員 堤千花・大学院学生 Sajjad Maqbool・大学院学生 Munene Karimi・大学院学生 Alonso Builes
砂を用いた小型の供試体でベンダーエレメントを用いてせん断弾性波速度を測定する装置を新規導入した.この方法で得られた弾性波速度が,これまでに用いてきた圧電式アクチュエータと加速度計による測定結果と整合していることを明らかにした.また,礫を用いた大型の供試体で後者の方法によりせん断弾性波速度を精度良く計測するための基礎的な検討と,砂の平面ひずみ試験におけるひずみの局所化特性に関する画像解析を実施した.

中空ねじり三軸試験による砂質土のせん断挙動の研究(継続)
教授 古関 潤一[代表者], 助手 佐藤 剛司,技術職員 堤千花・大学院学生 清田隆・大学院学生 Nalin De Silva
地盤材料の三軸試験で用いられている板状の局所変位計測装置(LDT)では,ヒンジを介した供試体への取付け部分が線接触であるため,測定方向とは異なる方向の変位を受けると無理な変形が生じてしまう.このような変位を受けても取付け部分が回転できるように先端をピン状にしたLDTを開発し,外径20cmの中空円筒供試体を用いたねじり三軸試験で利用してきたが,外径15cmの供試体に適用すると,共有ヒンジでの反力が過大になり,出力が不安定になることがわかった.そこで,各ピンタイプLDTを個別のヒンジで支持する改良を行い,安定した出力を得ることができた.原位置で凍結サンプリングした試料は直径15cm程度の場合が多いため,このような改良により,凍結サンプリング試料の中空円筒供試体を用いた試験も可能となり,本計測手法の適用性が拡大した.

自然堆積軟岩及びセメント改良土の変形・強度特性の研究(継続)
教授 古関 潤一[代表者], 助手 佐藤 剛司,技術職員 堤千花・大学院学生 並河努・大学院学生 鯉沼琢麻
セメント改良砂の場合,主にピーク強度発現後にひずみの局所化が発生するが,ひずみの局所化が発生している部分における応力−ひずみ関係を直接計測するのは難しい.そこで,室内試験より得られるピーク強度後の荷重−変位関係より,ひずみ軟化時の応力−ひずみ関係の決定に必要な破壊エネルギーを算定した.室内試験として,引張強度発現後の荷重−変位関係を調べる3点曲げ試験と,せん断強度発現後の荷重−変位関係を調べる平面ひずみ圧縮試験を実施した.

擁壁・土構造物の地震時安定性に関する研究(継続)
教授 古関 潤一[代表者], 助手 佐藤 剛司,大学院学生 中島進
もたれ式擁壁と補強土擁壁の耐震対策として鋼矢板を支持地盤に根入れさせる工法の効果について,模型振動実験を実施して検討した.また,2004年新潟県中越地震における擁壁と土構造物の被災状況に関する現地調査を行った.

センサ融合による3次元都市空間データの作成技術の開発
教授 柴崎 亮介[代表者], 空間情報科学研究センター助教授 趙卉菁
建物・都市レベ ルを対象とした3次元空間データの自動構築技術: 建物や都市空間を対象に,3次元空間データの自動的な取得とモデル化を目標として,センサシステムの開 発からデータ処理手法の開発までを行っている.センサシステムの開発では,異なるセンサの組み合わせ技術とデータ融合手法の開発を中心に進めている.現在 開発を進めているセンサとしては航空機・ヘリ搭載のスリーラインセンサ(TLS),車載のレーザマッピングシステムなどがある.前者は世界に同種のものは 一つしかないシステムであり,住友電工と共同出資により会社を設立して開発を進めている.後者の車載システムは世界で唯一のシステムである. データ融合 手法は別個に収集されたさまざまなデータを接合したり,そこから建物,道路,樹木などの地物を3次元モデルとして抽出する手法を含んでいる.

空間シミュレーションのための分散型データ管理システムの開発
教授 柴崎 亮介[代表者], 柴崎研 研究員 謝榕
人や自動車の移 動などをマルチエージェントモデルを利用してシミュレーションするなど,空間シミュレーションへのニーズが急速に高まってきている.空間シミュレーション は計算量が非常に大きいものの,空間的に遠く離れたエージェントやオブジェクトが相互作用をすることはそれほど多くなく,並列処理が大変有効な分野である.そこで,分散空間データ管理手法をAgletを中心にして開発し,空間シミュレーションを分散するPC上で実行できるシステムを開発している.

地物や空間現象のダイナミックな変化の再現手法
教授 柴崎 亮介
交通や環境な ど,ダイナミックに変化する空間現象や地物は多い.しかし,時間的,空間的にダイナミックな変化を絶えず網羅的に計測し続けることは多くの場合,きわめて 困難であり,結局断片的な観測データから実際に生じているであろう変化を推定することが必要になる.その際,対象地物がそもそもどのように変化するかとい う知識なども併せて利用することで,推定精度を向上させることができる.観測情報などを表現・管理するデータモデルや曖昧さを持った空間情報の表現モデル の提案に加え,遺伝的アルゴリズムを利用した推定手法を開発している.適用事例には全休・超長期の土地利用変化の再現や都市内における人間移動の再現など がある.

空間エージェントモデルを用いた商業空間回遊行動モデルの開発
教授 柴崎 亮介[代表者], 大学院学生(柴崎研) 北澤桂, 大学院学生(柴崎研) 小西勇介, 株式会社NTTデータ 田仲洋之
商業空間におけ る買い物客の回遊行動をエージェントモデルとして表現することで,商業空間における空間設計,情報サービス設計,マーケッティングなどに利用する.今年度 は実際の商業空間における買い物客の行動を計測し,同時に買い物客の商品嗜好なども詳細に調べることで,立ち寄る可能性の高い店舗の推定と,回遊行動のモ デリングの両方を行った.

レーザとCCDカメラなどを組み合わせた歩行者や車両のトラッキングシステムの開発
教授 柴崎 亮介[代表者], 崎研 客員助教授 趙卉菁
歩行者や車両などの移動オブジェクトの計測技術: レーザやCCD,位置決め技術などを利用して,人や車両などの軌跡や行動パターンを計測するセンサシステムやデータ処理手法を開発している.

疑似衛星やウェアラブルセンサを利用した人間動作・行動の計測・トラッキングシステムの開発
教授 柴崎 亮介[代表者], 大学院学生(柴崎研) 小西勇介, 柴崎研 研究員 徐庸鉄, 特許庁 袴田知弘
3次元空間にお ける人間の動作や行動を計測するニーズはコンピュータゲームから,消防などの緊急活動,歩行者ナビなどきわめて多くの分野で必要とされている.しかし,既 存のほとんどの手法は,一定の計測エリアの中で動作・行動する人間を計測するためのものであり,広い地域を自由に移動する人間を対象にすることができな かった.そこで,本研究ではGPSと同じシグナルを出す発信機である疑似衛星や,MEMS技術により作成された小型加速度センサなどを組み合わせることに より,空間的な制約なく,都市内のどのような空間でも人間の動作や行動をモニタリングできるシステムを開発する.また同時に,疑似衛星や新しい衛星測位 サービス(ガリレオや準天頂衛星)の最適な組み合わせを探るために都市空間における測位シミュレーションを可能にするシステムを開発している.

エージェントモデルとGISの統合によるデジタルランドスケープモデル(Digital Landscape Model)の実現
教授 柴崎 亮介[代表者], 柴崎研 研究員 クリシュナ・ラジャン, 柴崎研 研究員 談国新, 柴崎研 研究員 余亮, 大学院学生(柴崎研) Yang Peng
長い歴史の中で 土地景観(ランドスケープ)は人間と自然の相互作用の中で変容してきた.人間活動はさらに巨視的な社会経済条件,技術的な知識の変化によりその姿や強度を 変える一方で,自然環境も地球温暖化による気候条件の変化など大きく変動している.人間や自然環境の構成要素(植生,動物など)は変化する巨視的環境,微 視的環境の中で,種の保存,生存基盤の確保,経済収益の確保などの目的のために,自らの行動を適用的に変化させていると考えられる.こうした想定に基づ き,土地景観を構成する要素(人間を含む)を自律的に行動内容や様式を変化させるエージェントモデルとして表現し,それを空間データベース上でシミュレー ションすることで土地景観の変容過程を再現することを目指す.当面,土地利用変化モデル,灌漑などの水需要推定モデルなどにDLMの考え方を応用する.

建築・都市空間の特性分析(継続)
教授 藤井 明[代表者], 助教授 曲渕 英邦, 助手 林 信昭, 日本学術振興会外国人特別研究員 Jin Taira Alonso, 大学院学生 松田達,任貞姫,Golani Solomon Erez,浅野元樹,真鍋展仁
本研究は建築・都市空間を構成する形態要素とその配列パターンを分析指標として空間特性を記述することを目的としている.本年度は,東京の大規模領域について,形態的特徴や街路との関係に着目し,都市での現象の仕方について,「非顕在性」という視点から分析を行った.

空間の構成原理に関する実証的研究(継続)
教授 藤井 明[代表者], 助教授 曲渕 英邦, 助手 橋本憲一郎, 技官 小駒幸江, 研究員 及川清昭, 協力研究員 槻橋修, 大学院学生 朴正a,佐々木一晋,田中陽輔,松村永宣,沖野優
伝統的な集落や住居に見出される空間の構成原理は,今日の居住計画を再考する上で重要な示唆に富んでいる.本研究室では過去30年以上にわたって世界の伝統的集落の調査を継続しているが,本年度は中国雲南省の伝統的住居を対象とした調査を行った.また,韓国の伝統的集落を対象として,「閾」による空間の分節について分析した.

地域分析の手法に関する研究(継続)
教授 藤井 明[代表者], 助教授 曲渕 英邦, 協力研究員 大河内学, 大学院学生 Gomez Tangle Martin,尹哲載,松田聡平,畑野了,Guimond Andre Moore,吉田昌平
地域空間の構造を的確に把握することは,地域性を積極的に組み入れてゆくという計画学的な視点からも非常に重要である.本年度は,建替えという現象に着目し,渋谷区の築年次データから都市の局所的変遷過程を記述した.

計算幾何学に関する研究(継続)
教授 藤井 明[代表者], 助教授 曲渕 英邦, 助手 今井 公太郎,橋本憲一郎, 研究員 郷田桃代, 大学院学生 Napong Nophaket,Yim Kevin,狩野朋子,Bonfiglio Alvaro Mauro,田村順子,本間健太郎
本研究は都市・地域解析への適用を目的とした計算幾何学的な手法の開発を行うものである.本年度は,街路ネットワークの計算幾何学的な分析を行い,現実の開発についての配置計画及びバンコク中心部の都市計画の評価を行った.

歴史および自然環境に配慮した建築設計の研究(継続)
教授 藤森 照信
歴史と自然の環境に適合した建造物とその住まい方については,特に近年社会的関心が高い.こうした社会的要請にも応えるべく,従来からの同テーマにつき更に調査研究を進めるとともに,タンポポハウス, ニラハウス, 天竜市秋野不矩美術館, 一本松ハウス, 熊本農業大学学生寮, 伊豆大島椿城,茶室(矩庵-京都市,一夜城-湯河原町,高過庵-茅野市)などの建築設計を行い,実際の成果成立条件の確認作業も行っている.

戦後建築家に関する基礎的研究(継続)
教授 藤森 照信
日本の建築活動は,第二次世界大戦後半世紀の間に大いに発展し,現代では世界の建築界のリーダーシップをとるまでになった. 戦後をリードした建築家たちは,事績の資料を残すこともなく重要な建築的出来事に立ち会いながら何の記録も回想も残すことなく, 没した場合も多い.戦後60年を経た今日でもなお資料収集と分析を継続的に行う必要があり,それによって戦後建築総体の基本資料を得ることを目的として研究を進めている.

日本近代産業施設の発達と遺構の生産技術史的研究(継続)
教授 藤森 照信
わが国の産業施設の発達過程は, 変化があまりにも急速である. その歴史が記述される前に, 肝心な生産施設そのものが取り壊される傾向にある. この現状を踏まえ, 全国の生産施設, 土木, 工場施設についても順次研究を進めている.

日本の近代都市形成史の研究(継続)
教授 藤森 照信
日本の近代都市の発達を歴史的にとらえるため, 江戸から東京への変化の過程を明らかにする. これについては, 明治期に関する限り, ほぼ全容を明らかにすることができた. また引き続き大正期から戦前についてまでも解明を進め, 郊外住宅の開発の経緯と, その日本的特徴をつかみ, 都市環境開発などの問題点なども指摘, 研究を進めている.

多民族化及び西洋化による都市と建築の近代化に関する研究 ―内蒙古フフホト市を中心に(継続)
教授 藤森 照信[代表者], 助教授 村松 伸, 日本学術振興会外国人特別研究員 包 慕萍
本研究は少数民族地域の近代都市, 建築西洋化, 漢風化, 多民族化などによって, どのように影響を受け, 近代化が形成されたのか, これまでの学習モデルの欧米近代建築史研究の視点とは異なるアジア独自の特徴などを内モンゴル・フフホト市を中心に調査, 分析, 明らかにすべく研究を進めている.

アジアの近代的歴史的建物および都市空間の復元的・再生的研究(継続)
教授 藤森 照信[代表者], 助教授 村松 伸, 技術職員 谷川 竜一
アジア各国では都市化が進み, 都市に残る近代的建築と研究保存・再生が求められている. 本研究は, アジア各研究者とネットワークを築き, 研究, 保存再生についてマニュアルを作成し, 連帯して進む道を考える.

東アジアと日本の建築近代化の比較研究(継続)
教授 藤森 照信[代表者], 助教授 村松 伸, 研究員 西澤 泰彦, 技術職員 谷川 竜一
19世紀における西欧列強の東アジアの進出の軌跡は, 東アジアに登場する近代建築の歴史的展開と符合する. 近代日本における近代化遺産も, この歴史的展開の中で行われたといえる. 本研究は, こうしたグローバルな視点から, 東アジアと日本の近代建築の発生とその展開を比較研究し, 建築近代化過程の本質的問題を考察している. また, 同時に現存する遺構調査, この地に活躍した欧米人, 及び日本人建築家の活動 に関する研究も進めており, すでに一部を研究成果として報告している.

能舞台の歴史的変遷及び, 能的建築空間設計手法の研究(継続)
教授 藤森 照信[代表者],協力研究員 奥冨 利幸
我が国独自の「能舞台」は, 最近とみに伝統文化の象徴として, 新たな能舞台が各地に建築されている. 能舞台の歴史的変遷過程と, 現存する能舞台の把握, 実測調査により, 設計方法の踏襲部分や建築空間の調査研究, 併せて現代建築の能空間的設計手法及び, 日本人に潜在的に好まれてきている能的思考の文化意識を考察研究する.

集合住宅の研究−日本・韓国・台湾・中国の住宅営団に関する研究(継続)
教授 藤森 照信[代表者],協力研究員 冨井 正憲
本研究は, 国策住宅供給機関として1940年代に設立された, 東アジア4ケ国(日本, 韓国, 台湾, 中国)の住宅営団の組織の成立過程, 及び各国公共集合住宅, 近代住宅計画成立過程を調査, 比較硯い掘・併せて東アジア4ケ国の居住空間の文化的特質を分析も研究する.

ベトナム都市における近代建築の保存と再生(継続)
教授 藤森 照信[代表者], 助教授 村松 伸, 助手 大田 省一
ベトナム都市のハノイ・ホーチミン等には, フランス植民地時代の建築物が多く残り, 都市基盤施設, 建築物は当時のものそのまま利用している. ただしすでに半世紀以上経ち, 老巧化が進み, また開放政策から急激な都市環境の変化がみられたため, 近代建築の現存リストを作成, かなりの成果を上げた. これに基づきその利用と, 保存・再生とする都市計画を提示し, その実現のためのベトナム側との共同研究を進めている.

お雇い外国人建築技師に関する研究
教授 藤森 照信[代表者],藤森研 学術研究支援員 丸山雅子
明治政府のお雇い外国人建築技師たちは,日本人建築家が十分に育つ前の日本で,国家的なプロジェクトを次々と任され,日本の近代化に大きく貢献した.しかし彼らの多くについては,その素性も,来日の経緯も,離日後の消息も不明なままである.彼らのバックグラウンドと国内外における活動を明らかにすることによって,明治初期の日本建築界の世界的な位置を探る.

日本近代の建築設計技術者の研究
教授 藤森 照信[代表者], 速水 清孝 大学院学生
日本の建築設計技術者の実像や制度の成り立ちを,特に日本では見逃すことのできない木造の庶民住宅とのかかわりに注目して明らかにする.世界的にユニークといわれる建築士制度ばかりでなく,大工や建築代理士といった,これまで設計者とは認知されなかった者も再評価する.それにより,現代の庶民住宅の設計を取り巻く状況がどのようにして形成されたかを把握する.

建設産業のサービスプロバイダー化に関する研究
教授 野城 智也
建物へのニーズが刻々変化する現今の経済社会において,環境負荷やコスト負担を考えると,建替新築によってニーズに対応するのは効率的ではなく,むしろ既存建物をニーズの変化に対して遅滞なく部分更新する方が得策である.本プロジェクトは,こういった認識にたち,多様に特化し,かつ刻々変化する個々のニーズに対応し,建物のインフィルを生体組織的に変容させる技術を開発することを目的とする.

プロジェクトにおける技術癒合に関する研究
教授 野城 智也
建設プロジェクトでは,種々の主体が,技術的詳細を決定に様々な寄与をしている.その寄与のあり方は,プロジェクトの開始時点では必ずしも明確でなく,,契約上で定義された役割とも異なるものである.主体相互間の情報フロー及び意志決定のあり方も非定型的である.にもかかわらず,この技術的融合のあり方が,最終産品(建物)の性能・機能・品質を左右する.本研究はこういった認識に立ち,事例分析を積み上げることにより,プロジェクトにおける技術融合のベストプラクティスモデルを明らかにすることを目的とする

シェルと立体構造物に関する研究
助教授 川口 健一[代表者], 機関研究員(東大生研) 鈴木悠介, 技術職員(東大生研) 大矢俊治, 大学院学生(川口研) 高田雅之, 大学院学生(川口研) 牧田瑞記
シェル構造及び立体空間構造を対象として継続的に研究を行っている.今年度は(1)実大空気膜構造のインフレート過程3次元測量と数値シミュレーション,(2)実大テンセグリティフレームの応力観測を行った.

立体構造システムを利用した振動制御方法に関する研究
助教授 川口 健一[代表者], 技術職員(東大生研) 大矢俊治, 大学院学生(川口研) 吉中進, 大学院学生(川口研) 上村一貴
大スパン構造物は屋根構造だけでなく,近年は広大なオフィスフロアなどでも頻繁に用いられるようになり,屋根構造の地震時や大風時の振動制御や,オフィスフロアの環境振動など,面外方向の振動の制御が必要となってきている.また,地震を対象とした振動制御方法は,免震,耐震,制震の3つに大別できる.本研究では,構造システムの3次元的な動きや立体構造システムの利点を生かし,従来の方式以上効果的な振動制御方法を開発することを目的としている.本年は,住宅等の軽量な構造体の為の免震装置として提案している「ハイブリッド・ロッキングカラム装置」の実験及び実験結果の解析,考察を行った.さらに,新しい免震装置の提案と振動大実験を行った.また,多重型及びMTMD制振装置の大スパン構造への効果,応用の可能性と配置問題,ランダム応答に関する数値解析的な研究調査を行った.

大スパン構造物の災害時性能に関する研究
助教授 川口 健一[代表者], 機関研究員(東大生研) 鈴木悠介, 大学院学生(川口研) 吉中進
多数の人命を収容する大スパン建築構造物の災害時における挙動の検討に対して,必ずしも共通した設計思想は無い.本研究では,建築基準法の予想を越えた外乱による構造挙動,及びその結果生じる災害や内部空間の状況について調査研究している.本年度は,新潟県中越大地震の被害調査,大スパン構造の制振手法の開発を目的として有限要素法汎用コードによる数値解析,MTMDを用いた制振装置の可能性調査,非構造材と設置高さの調査,設計におけるゾーニング手法の検討,老朽化した構内RC建築構造物の耐震診断と耐震補強の基本計画などを行った.

空間構造の形態形成の数理解析
助教授 川口 健一[代表者], 機関研究員(東大生研) 鈴木悠介, 大学院学生(川口研) 牧田瑞記, 大学院学生(川口研) 高田雅之, 研究生(川口研) Ng Kean Wei
空間構造において,形態が形成される,あるいは,決定される過程(形態形成過程)を数理解析の立場から調査している.本年度は,群論によるテンセグリティ構造の分類調査,ユニットの挙動に着目した張力安定トラス構造の張力導入に関する研究,空気膜構造(インフレータブル構造)の解析手法として分子数を制御した空気膜構造のインフレート解析手法の開発を継続,実大モデルのインフレート実験を実施し,ケーブル要素と膜要素を用いた非線形インフレーション解析,さらに一般逆行列を用いた制約条件付の膜構造の形状決定解析手法の開発を行った.

構造物の畳み込み・展開に関する研究
助教授 川口 健一[代表者], 技術職員(東大生研) 大矢俊治, 学外協力者 頴原正美, 株式会社 新日鐵 中井賢太郎, 株式会社 新日鉄 中村博志, 株式会社 新日鐵 松岡祐一, 新日鐵 山口路夫, 大学院学生(川口研) 牧田瑞記, 大学院学生(川口研) 渡邉尚彦
構造物を平面や点に畳み込む,あるいは,畳み込まれた構造物を展開して広がりのある構造物を築くという手法は建物の合理的な建設解体工法,展開・可変型構造物への適用等様々な応用が考えられる.本研究では,(1)骨組み構造の畳み込み経路における分岐経路の考察,(2)骨組み構造物の最適畳み込み経路のモデル実験と解析との比較,(3)膜構造の畳み込み解析法の基礎的研究,(4)展開型接合部の開発等を実施している.本年度はリユーサブルなシザーズ型展開骨組みの試設計とモデル作成,畳めるテトラの紙モデルの設計,簡単な折り紙型モデルの数値解析を行った.

社会的ストックとしての大規模構造物に関する研究
助教授 川口 健一
高度成長時代からバブル期を経て今日に至るまで,日本には数多くの大規模構造物が建設されている.日本は元来,木材などの軽量な材料によりスクラップアンドビルドの文化によって自然災害と共存しながら発展してきた.今日,日本が抱える大規模構造物は耐用年数の様々な材料によって構成されており,今後,日本はかつて無い量の社会的ストックの維持管理の問題を抱えることになると考えられる.本研究では,日本の例と海外の例とを比較しながら,日本の社会的ストックとしての大規模構造物のあるべき姿について研究調査している.

スマート材料の空間構造物への応用に関する研究
助教授 川口 健一[代表者], 大学院学生(川口研) 牧田瑞記, 技術職員(東大生研) 大矢俊治
スマート材料とは種々の機能を持った材料の総称である.近年,種々のスマート材料が提案されており,これらを建築構造物へ応用する試みが各地でなされている.本研究では,スマート材料の大空間構造システムへの応用に関する調査を行い,実際にその新しい可能性を研究する.本年度は形状記憶合金を張力構造の張力材として利用する方法について,実験的手法により調査し,可能性の調査を行った.

RC構造の能動的破壊制御のための埋め込み型人工デバイスの開発
助教授 岸 利治[代表者],教授(東大) 前川宏一, 長岡技術科学大学 田中泰司
コンクリート部材にとって致命的なせん断破壊を,あらかじめ部材内に埋め込んだ装置により人工的に誘発される亀裂によって制御できる見込みが既往の研究から得られている.この結果を受けて,ねじりを含む任意方向からの荷重入力に対する装置の信頼性や施工におけるシステムの実現可能性を考慮した最適な人工デバイスの開発に取り組んでいる.主として実験的な検討を行い,破壊制御による安全性能の向上と同時に,装置による破壊の誘発といった危険性も合わせて検討している.

膨張コンクリートのひび割れ抵抗機構の解明とその評価
助教授 岸 利治[代表者],大学院学生 Raktipong Sahamitmongkol
膨張コンクリートの優れた特徴である高いひび割れ抵抗性や変形性をもたらす機構の本質をとらえ,その定量的な評価を行うことを目指している.膨張コンクリートの汎用化へ理論的裏付けを与えることで,コンクリート構造物の高機能・長寿命化と信頼性向上に貢献することがねらいである.

複合水和発熱モデルの一般化と強度発現モデルの開発
助教授 岸 利治[代表者],大学院生 小田部裕一
コンクリート構造物の高機能化に伴い, 自己充填コンクリートや高強度コンクリート等の低水セメント比配合のコンクリートを使用する事例が増えている.また,複数の混和材を多量に添加する混合セメントの使用事例も増えている. 一方, 性能照査型の設計体系への移行に伴い, 設計耐用期間におけるコンクリート構造物の挙動を精度良く予測し, 構造物の健全性を確実に担保することが求められている. そこで, 本研究では, 解析と実験の両面から微視的機構の解明を試み, 構成モデルの高度化による数値解析手法の一般化を図ることを目的としている.

コンクリート中の微速透水現象および止水現象の支配メカニズムの解明
助教授 岸 利治[代表者],大学院生 高岡秀明
コンクリート中の微速透水現象における動水勾配依存性(非ダルシー性),及び始動動水勾配の存在に着目し,その支配メカニズムを明らかにすることが目的である.このことにより,大きな欠陥を有しないコンクリートの一般部や打継目程度の軽微な不連続透水状況を評価することは,現実の水分移動を過大に見積もることを明らかにした.

音響計測法に関する研究(継続)
助教授 坂本 慎一[代表者], 顧問研究員 橘 秀樹, 研究員 矢野博夫, 研究員 佐藤史明, 協力研究員 横田考俊, 大学院学生(坂本研) 平野 仁
建築音響・騒音制御の分野における計測法の開発および精度向上を目的とした研究として,音響インテンシティ計測法による音響パワーレベルおよび音響透過損失の測定方法,室内・屋外における音響伝搬特性の測定方法などに関する研究を継続的に行っている.本年度は,暗騒音の影響が大きく音響伝搬測定の困難な場合にも適用できる高精度伝搬測定方法を確立することを目的として,Long swept-sine signalの適用性に関する研究を行った.現場の暗騒音レベルおよび音源の出力レベルに応じて適切な長さの信号を用いることで測定誤差±1dB以内の高精度な測定が行えることを確認した.また,いくつかの測定現場において本測定方法を用いた応用実験を行った.

交通騒音の予測・評価に関する研究(継続)
助教授 坂本 慎一[代表者], 顧問研究員 橘 秀樹, 研究員 佐藤史明, 研究員 押野康夫, 研究員 田近輝俊, 大学院学生(坂本研) 平野 仁
道路交通騒音に重点を置いて,騒音の伝搬予測法並びに対策法に関する研究を継続的に進めている.これまでに,等価騒音レベルに基づくエネルギーベースの道路騒音予測計算法の改良を目的として,掘割・半地下構造道路周辺の騒音予測のための簡易計算法を提案しているが,今年度は提案式の検証に用いる基礎データとして建設中の半地下構造道路における現場実験を行い,有用なデータを取得した.このデータを用いて,簡易計算法の検討および2次元波動数値解析手法の妥当性の検証を行った.

室内音響に関する研究(継続)
助教授 坂本 慎一[代表者], 助手 上野 佳奈子, 顧問研究員 橘 秀樹, 研究員 千住真理子, 研究員 矢野博夫, 研究員 佐藤史明, 協力研究員 横山 栄, 博士研究員 安田洋介, 大学院学生(坂本研) 須田直子, 大学院学生(坂本研) 牛山 歩, 大学院学生(坂本研) 朝倉 巧, 大学院学生(坂本研) 中島章博
ホール・劇場等の室内音響に関する研究を継続的に行っている.今年度は,室内音響評価のための音響指標を検討するためのホール共同測定に参加した.数値解析に基づく音場シミュレーションおよび縮尺模型実験の応用として,実際のホール設計段階におけるシミュレーションを行った.また,室内音響でしばしば問題となる吸音処理の偏在した室における音響特異現象について,模型実験と波動数値解析を行い,その発生メカニズムの探索と防止方法の検討を行った.

室内騒音の評価に関する研究(継続)
助教授 坂本 慎一[代表者], 助手 上野 佳奈子, 顧問研究員 橘 秀樹, 研究員 矢野博夫, 研究員 佐藤史明, 協力研究員 横山 栄, 大学院学生(坂本研) 平野 仁
建築物内外における騒音が室内居住者に及ぼす影響に関して,実験室に構築したシミュレーション音場を用いた聴感評価実験により検討を行っている.前年度に引き続き,一般的に用いられている音響性能水準の見直しのための基礎的検討として,道路交通騒音,建築設備騒音,空調騒音,音楽などが単独にある場合と複合した場合の評価に関して,聴覚心理的マスキング効果を考慮した実験的検討を行った.また,建物の遮音性能評価を行うためのハウスフィルタの概念を提案し,実際に実験室実験に適用するための検討を開始した.ある集合住宅を対象に,屋外から室内へのインパルス応答測定を行い,基礎的なデータを取得した.

音場シミュレーション手法の開発と応用に関する研究
助教授 坂本 慎一[代表者], 助手 上野 佳奈子, 顧問研究員 橘 秀樹, 研究員 矢野博夫, 研究員 佐藤史明, 協力研究員 横山 栄, 大学院学生(坂本研) 須田直子, 大学院学生(坂本研) 牛山 歩, 大学院学生(坂本研) 中島章博, 大学院学生(坂本研) 朝倉 巧
ホール音場における聴感印象の評価,各種環境騒音の評価等を目的とした3次元音場シミュレーションシステムの開発および応用に関して研究を行っている.今年度は,本研究室で開発した6チャンネル収音・再生システムを用いた応用として,ホール・ステージにおける演奏者の音場評価に関する実験,客席部における聴感評価実験,自動車内の音環境評価に関する実験などを行った他,避難誘導システムの検討を目的とした公共空間における音声情報の聞き取りやすさに関する研究を行った.また,ステージ音場シミュレーション手法を音楽練習室に導入し,疑似体験ツールとしての応用可能性について検討した.

建物における騒音制御技術の開発に関する研究
助教授 坂本 慎一[代表者], 顧問研究員 橘 秀樹, 研究員 佐藤史明, 博士研究員 安田洋介, 大学院学生(坂本研) 朝倉 巧
建物外壁の遮音性能向上のための騒音制御技術の開発に関する研究を行っている.今年度,換気設備の高遮音化を目的とした換気ダクトユニットの形状設計に関する研究を開始した.2次元断面形状を種々変化させた場合の遮音効果について波動数値解析による検討を行い,ダクト内部の仕切り板数,間隔などの形状パラメータが遮音効果に及ぼす影響評価を行った.また縮尺模型実験結果と計算結果を比較することで検討結果の妥当性を確認した.

音場の数値解析に関する研究 (継続)
助教授 坂本 慎一[代表者], 顧問研究員 橘 秀樹, 協力研究員 横田考俊, 博士研究員 安田洋介, 大学院学生(坂本研) 牛山 歩
各種空間における音響・振動現象を対象とした数値解析手法の開発を目的として, 有限要素法, 境界要素法, 差分法等に関する研究を進めている. 本年度は, 室内外音場予測に対する差分法の精度向上および適用性拡大を目的として,計算スキームに関する理論的検討を昨年度に引き続き行った.この計算手法を実物ホールのインパルス応答計算に適用し,手法の妥当性および現状における適用限界の確認を行った.いくつかの実際のホールの設計段階における応用も試みた.また,騒音制御への応用として,騒音伝搬が複雑で予測の難しい半地下構造道路への適用を行い,その妥当性を確認した.さらに,音場計算の新たな手法として高速多重極境界要素法の計算アルゴリズムに関する検討を行い,領域分割法など新たな応用の可能性を模索した.

数値シミュレーションに基づく音場の可視化・可聴化技術に関する研究(継続)
助教授 坂本 慎一[代表者], 顧問研究員 橘 秀樹, 協力研究員 横田考俊, 博士研究員 安田洋介, 大学院学生(坂本研) 牛山 歩, 大学院学生(坂本研) 中島章博
建築音響・騒音制御の分野における各種音場を的確に把握するための表示方法として,数値シミュレーションに基づく音場の可視化・可聴化技術に関する研究を行っている.今年度は,建築音響設計に対する応用として,ホール,学校等の室内を対象に各種パラメトリックスタディを行い,実際の設計に適用するとともにその有効性について検討した.また可聴化技術として実験室に構築した3次元音場シミュレーションシステムへの入力信号として3次元数値解析で得られた計算結果を用いるシステムを実装した.

教育施設の音環境に関する研究(継続)
助教授 坂本 慎一[代表者], 助手 上野 佳奈子, 顧問研究員 橘秀樹, 大学院学生(坂本研) 中島章博
教育施設に求められる音響性能及びそれを実現するための音響設計手法の提案を目的として研究を進めている.本年度は,近年音の問題が顕在化しているオープンプラン型教室の音響性能について,数値解析手法および模型実験手法を適用し,隣接教室間の伝搬音低減のための建築的対策の有効性を検討した.

空間の生成プロセスに関する研究(継続)
助教授 曲渕 英邦[代表者], 教授 藤井 明, 助手 今井 公太郎, 助手 橋本 憲一郎, 外国人協力研究員 李 城彰, 大学院学生 張 希美子, 大学院学生 王 マ, 大学院学生 成瀬 友梨, 大学院学生 合屋 統太, 大学院学生 大場 晃平
建築・都市空間を構築するための設計プロセスの研究には,その基礎論として空間の生成プロセスを把握することが肝要である.本年度は,都市内のミクロな交通ネットワークとしての,自転車メッセンジャーサービスの動的把握を試みた.これにより,都市空間を成立させる条件としてのモバイル・コミュニティの様相を記述した.

文化としての空間モデルの計画学的研究(継続)
助教授 曲渕 英邦[代表者], 教授 藤井 明, 助手 今井 公太郎, 研究員 郷田 桃代, 大学院学生 謝 宗哲, 大学院学生 鍋島 憲司, 大学院学生 松岡 聡, 大学院学生 宮崎 慎也, 大学院学生 岡野 道子, 大学院学生 六角 美瑠
建築都市空間は時代精神や場所性に根ざす文化の表現であり,21世紀に向けて新たな空間モデルを提案することは,今日の重要な計画学的課題である.数年にわたり,「高温多湿気候に適応する環境負荷低減型高密度居住区モデルの開発」という課題を設定し,建築内部に十分なボイドを確保した「ポーラス型居住区モデル」の提案を行ってきた.これまでに対象地域として,東京,ベトナム・ハノイを想定した2つのモデルを作成し,ハノイモデルはハノイ建設大学との協力により,大学の敷地内に2003年6月完成した.本年度は,台湾の市街地を対象に,現実的なプロジェクトを計画・実施を目指している.

都市空間構成の形態学的研究(継続)
助教授 曲渕 英邦[代表者], 教授 藤井 明, 助手 今井 公太郎, 助手 橋本 憲一郎, 外国人協力研究員 李 城彰, 大学院学生 Adriana Shima Iwamizu, 大学院学生 李 東勲, 大学院学生 福島 慶介, 大学院学生 Georges Kachaamy, 大学院学生 高濱 史子, 大学院学生 王子 芙蓉
本研究においては,都市空間を構成する形態的要素に着目することで,その空間的特性を記述する手法の開発を行うものである.本年度は,上海のオープンスペースの変遷を歴史的に調査し,その変容過程が上海の都市空間の発展過程そのものと重なることを解明した.そして中国の伝統的思想の反映としてのオープンスペースの構成原理が,世界の発展途上国を覆うジェネリックシティと相容れない関係にあることを明らかにした.

都市空間の計画学的研究(継続)
助教授 曲渕 英邦[代表者], 教授 藤井 明, 助手 今井 公太郎, 助手 橋本 憲一郎, 外国人協力研究員 李 城彰, 大学院学生 Dietrich Bollman, 大学院学生 翁長 元, 大学院学生 矢野 寿洋
本研究は都市空間の形成に関与すると考えられる「物理的な環境」と「活動の主体としての人間」について,計画学的な立場から,個別の分析を行うと同時に両者の統合を目指すものである.本年度は都市の商業地に拡大しつつあるインターネット・アクセス・ポイントの分布状況を調査し,施設配置の状況の分析を他の都市施設の分布と比較・検討した.これにより,アクセスポイント施設配置の,経済性と偏在性の両者を併せ持つ分布傾向を明らかにした.

都市に関する文明史的研究
助教授 村松 伸[代表者], 技術職員 谷川 竜一, 研究員 深見 奈緒子, 日本学術振興会外国人特別研究員 包 慕萍, 大学院学生 福元 貴実也, 大学院学生 鳳 英里子, 大学院学生 林 憲吾, 大学院学生 岡村 健太郎, 大学院学生 白 佐立
世界の都市の5000年にわたる歴史を生態的,文明史的に類型化し,その変容を考究する.

都市文化遺産・資産の開発に関する研究
助教授 村松 伸[代表者], 技術職員 谷川 竜一, 研究員 張 復合, 研究員 深見 奈緒子, 研究員 李 江, 大学院学生 銭 毅, 大学院学生 鳳 英里子
現存する都市の遺産,資産をいかに評価しそれを再利用するかを考究し,実際の都市の再生に資する.

都市文化遺産の社会還元に関する研究
助教授 村松 伸[代表者], 技術職員 谷川 竜一, 大学院学生 鳳 英里子, 大学院学生 松田 浩子, 大学院学生 林 憲吾, 大学院学生 岡村 健太郎, 大学院学生 白 佐立
小学生,高校生等に都市を理解するための教育を行う手法を開発し,それを実施する.

戦後アジア都市,建築に関する研究
助教授 村松 伸[代表者], 技術職員 谷川 竜一
日本を含むアジアの第二次世界大戦後の都市,建築について,歴史的なフレームを構築する.

計測技術開発センター

高機能バイオセンサーの開発
助教授 立間 徹[代表者], 助手 高田 主岳, 博士研究員(立間研) 野津 英男, 学術研究支援員(立間研) 小森 喜久夫, 大学院学生(立間研) 四反田 功
藻類細胞や酵素,酵素のモデル系を利用したバイオセンサーを開発している.環境中の毒性物質の検出や,物質の毒性スクリーニングなどへの応用をめざしている.

バイオキャタリストの活性制御
助教授 立間 徹[代表者], 助手 高田 主岳, 学術研究支援員(立間研) 小森 喜久夫
酵素のモデル系を電極上に載せ,その活性中心構造の可逆な制御に基づく活性の制御を試みている.実際には,ペルオキシダーゼのモデル分子であるヘムペプチドとその阻害剤であるイミダゾールを用い,相転移ポリマーを用いて阻害作用の可逆な制御を行った.このようなシステムは,活性を自律制御する触媒システムや,測定対象に応じて感度やダイナミックレンジを自律制御するセンサーに発展するものと期待される.

金属ナノ粒子を用いたマルチカラーフォトクロミズム
助教授 立間 徹[代表者], 共同研究員(立間研) 大古 善久, 大学院学生(立間研) 川原 敬祐, 大学院学生(立間研) 鈴木 健太郎
金属ナノ粒子と半導体を用いて,照射した光と同様の色を可逆に発色するマルチカラーフォトクロミック材料を開発している.その機構の解明,特性の改善,用途開発なども行っている.

金属ナノ粒子を用いたプラズモン光電気化学
助教授 立間 徹[代表者], 博士研究員(立間研) 田 陽, 大学院学生(立間研) 南 高一
金属ナノ粒子と半導体を用いて,プラズモン共鳴に基づく光電気化学反応とそれを利用した増感型太陽電池や光触媒などのエネルギー変換および情報変換材料・デバイスを開発している.

新しい光触媒材料と応用法の開発
助教授 立間 徹[代表者], 助手 高田 主岳, 博士研究員(立間研) 野津 英男, 受託研究員(立間研) 齋藤 修一, 大学院学生(立間研) 久保 若奈, 大学院学生(立間研) 高橋 幸奈
酸化チタン光触媒による非接触酸化反応の機構について研究するとともに,この現象を固体表面の二次元パターニングに応用する光触媒リソグラフィー法の開発と評価を行う.また,酸化チタン光触媒から得られる還元エネルギーや酸化エネルギーを貯蔵し,夜間にも利用しようというエネルギー貯蔵方光触媒の開発も行う.

機械エネルギーの電気化学的変換
助教授 立間 徹[代表者], 助手 高田 主岳, 大学院学生(立間研) 田中 信宇, 大学院学生(立間研) 宮崎 太地
種々の電気化学活性ゲルやポリマーなどを合成し,これらを用いて,機械エネルギーと電気,光,化学エネルギーなどとの相互変換について研究している.ソフトアクチュエーターや圧力電池などへの応用をめざしている.

戦略情報融合国際研究センター

NOAA衛星画像データベースシステムの構築(継続)
教授 喜連川 優[代表者], 助手 根本利弘
リモートセンシング画像等の巨大画像の蓄積には巨大なアーカイブスペースが不可欠である. 本研究では, 2テラバイトの超大容量8mmテープロボテックスならびに100テラバイトのテープロボテックスを用いた3次記憶系の構成と, それに基づく衛星画像データベースシステムの構築法に関する研究を行なっている. 本年度は, D3から9840なる新たなメディアに変更すると伴に試験的に階層記憶システムの運用を開始しその問題点を明らかにした. 又, 従来データのローディングを継続的に行った.

ファイバチャネル結合型大規模パソコンクラスタによる並列データベース・マイニングサーバの研究(継続)
教授 喜連川 優[代表者], 協力研究員 小口正人, 大学院生 合田和生
100台のPentium Proマイクロプロセッサを用いたデスクトップパーソナルコンピュータをATMネットワークにより結合した大規模PCクラスタを構築した. パソコン用マイクロプロセッサの性能向上はワークステーション用RISCに匹敵するに到っており, 且つ大幅な低価格化が進んでいる. 本研究ではコモディティのみを利用した超廉価型PCクラスタを用い大規模データマイニング処理を実装し, 大きな価格性能比の向上を達成した. 本年は他のPCから未利用メモリを動的に確保する手法に関し, 手々の手法を実装しその特性を詳細に評価をすすめた.

ファイバチャネル結合型分散ディスクシステムの研究(継続)
教授 喜連川 優[代表者], 大学院生 合田和生, 大学院生 星野喬
100台のPentium Proマイクロプロセッサを用いたデスクトップパーソナルコンピュータをATMネットワークにより結合した大規模PCクラスタを構築した. パソコン用マイクロプロセッサの性能向上はワークステーション用RISCに匹敵するに到っており, 且つ大幅な低価格化が進んでいる. 本研究ではコモディティのみを利用した超廉価型PCクラスタを用い大規模データマイニング処理を実装し, 大きな価格性能比の向上を達成した. 本年は他のPCから未利用メモリを動的に確保する手法に関し, 手々の手法を実装しその特性を詳細に評価をすすめた.

スケーラブルアーカイバの研究(継続)
教授 喜連川 優[代表者], 助手 根本利弘
現在, 大容量アーカイブシステムは, 導入時にその構成がほぼ静的に決定され,柔軟性が必ずしも高くない. 本研究では, 8mmテープを利用し, 比較的小規模なコモディティロボテックスをエレメントアーカイバとし, それらを多数台並置することで任意の規模に拡張可能なスケーラブルアーカイバの構成法について研究を進めている. 本年度は9840に代表される最近の新しいテープ装置のパラメータを想定しリプリケーション手法に関しシミュレーションを行いその有効性を確認した.さらに ツVDアーカイバへの適用についても検討した.

デジタルアースビジュアリゼーション(継続)
教授 喜連川 優[代表者], 科学技術振興特任研究員 安川雅紀
種々の地球環境データを統合的に管理すると共に, 多元的な解析の利便を図るべくVRMLを用いた可視化システムを構築した. 時間的変化を視覚的に与えることにより, 大幅に理解が容易となると共に柔軟な操作が可能となり, ユーザに公開しつつある. 本年度はバーチャルリアリティシアターを用いた大規模視覚化実験を進めた.

バッチ問合せ処理の最適化に関する研究(継続)
教授 喜連川 優[代表者], 助手 中野美由紀
複数の問合せの処理性能を大幅に向上させる主記憶およびI/O共用に基づく新しい手法を提案すると共に, シミュレーションならびに実機上での実装により有効性を明かにした.

サーチエンジン結果のクラスタリング(継続)
教授 喜連川 優[代表者], 博士研究員 Yitong Wang
サーチエンジンは極めて多くのURLをそのサーチ結果として戻すことから, その利便性は著しく低いことが指摘されている. ここではインリンク, アウトリンクを用いた結果のクラスタリングによりその質の向上を試みる.いくつかの実験により質の高いクラスタリングが可能であることを確認した.

Webマイニングの研究(継続)
教授 喜連川 優[代表者], 大学院生 高橋克己
WWWのアクセスログ情報を多く蓄積されていることから, WWWログ情報を詳細に解析することにより, ユーザのアクセス傾向, 時間シーケンスによるアクセス頻度などにおける特有のアクセスパターンの抽出を目的としたマイニング手法の開発を試みた.

WWWにおけるコミュニティ発見手法に関する研究(継続)
教授 喜連川 優[代表者], 特任助教授 豊田正史, 大学院生 藤村滋
全日本ウェブグラフのクローリングにより,我国全体のWEBグラフの抽出を行うと同時に,当該グラフから密な部分グラフを抽出するいわゆるサイバーコミュニティ抽出実験を行い,そのアルゴリズムの有効性を確認した.タギングの質の向上を目指すと同時に,可視化ツールの構築を試みた.

WWWにおける時間経過におけるコミュニティ変化に関する研究(継続)
教授 喜連川 優[代表者], 特任助教授 豊田正史, 産学官連携研究員 田村孝之
全日本ウェブグラフのクローリングを数ヶ月おきにアーカイブすることにより,それぞれの時点での我国全体のWEBグラフからサイバーコミュニティを抽出し,時間変化によるコミュニティの変化を調べ,WWW上における社会的影響の確認をした.

最大フローアルゴリズムを用いたWeb空間クラスタリング手法の研究(継続)
教授 喜連川 優[代表者], 産学官連携研究員 今藤紀子
ウェブコミュニティを抽出する手法として,HITSなどの手法と比較してトピックドリフトのおこりにくい最大フローアルゴリズムを用いたコミュニティ抽出手法の提案を行い,2002年度の日本国内のウェブスナップショットを用いて,提案した手法の特性について調べた.

ウェブコミュニティを用いた大域ウェブアクセスログ解析の研究
教授 喜連川 優[代表者], 学術支援研究員 大塚真吾
本研究では類似したウェブページを抽出するウェブコミュニティ手法を用いたパネルログ解析システムの提案を行い,URLを基にした解析では捉え難い大域的なユーザの行動パターンを抽出した.

パブリッシュ・サブスクライブシステムにおけるUB−Treeインデクスに関する研究
教授 喜連川 優[代表者], 産学官連携研究員 Botao Wang, 大学院生 張旺
多量のデータを扱う高性能なパブリッシュ・サブスクライブのシステムの構築を目指し,イベントマッチングの高速処理を可能とするUB−TREEインデクス処理方式を提案し,シミュレーションを用いてその有効性を調べた.

i-SCSIの研究
教授 喜連川 優[代表者], 産学官連携研究員 山口実靖
i-SCSIを用いた二次記憶システムにおける高速アクセス方式について検討を行った.

Peer to Peer環境におけるR−Treeインデクスの研究(継続)
教授 喜連川 優[代表者], 学術支援研究員 Anirban Mondal
Peer to Peer で構成される大規模分散システムにおける効率のよい負荷分散方式について検討を行い,シミュレーションを用いて提案した方式の有効性にツいて調べた.

マルチメディア地図の構築と応用に関する研究
教授 坂内 正夫[代表者], 協力研究員 大沢裕, 助手(埼玉大学) 川崎洋
災害への対応や高度な交通管理,施設管理などにおいて我々の社会活動の基盤である都市の現況情報をリアルタイムに表現,把握することが不可欠である.本研究では,従来の図形ディジタル地図に加えて,リアルタイム映像,航空写真,異形態地図等を統合した拡張された地図(マルチメディア地図)データベースの構築とその応用方式の研究を行っている

次世代対応型ディジタル放送システムの研究
教授 坂内 正夫[代表者], 助教授 上條 俊介, 大学院学生(坂内研) 武小萌, 大学院学生 貞末多聞
ディジタル化された放送は,高度なサービス提供の可能性を持っている.本研究では,放送映像の構造化フレームワークとそれに基づく放送用ハイパーメディアアーキテクチャ,更には映像認識手段との複合による高度な対話性等を具備したマルチメディア時代のディジタル放送サービス提供技術の開発を行なっている.本年度は,従来システムの認識性能を一層向上させる幾つかの方式を創案,開発し,有効性の実証を行った.

ITSのターゲット重点化とその実現のための基盤技術の研究
教授 坂内 正夫[代表者], 大学院学生(坂内研) 川原 尊徳, 大学院学生(坂内研) 藤平 健二, 大学院学生(坂内研) 劉 小路, 大学院学生(坂内研) 劉 明哲
安全性,環境,利便性というITSの目標を更に重点化するフレームワークの研究と,それを実現するために基盤となる交通現象の高度な認識システムの開発を行い,首都高速等の実用局面での検討を合わせて行った.

室内環境における複数人物の実時間追跡
大学院学生(佐藤研) 岩崎慎介, 大学院学生(佐藤研) 小林貴訓, 助教授 佐藤 洋一[代表者],協力研究員 杉本晃弘
本研究では,室内環境において複数人物を追跡する為の頑健な手法の開発を目指している.特に,環境に分配配置されたセンサ郡からの観測情報を統計的な枠組みで統合することにより,照明条件など動的に変化する環境に対しても安定かつ高精度な追跡を実現する.更に,部屋の詳細な3次元形状などの環境モデルを利用することで,実世界環境における人物の行動パターンをも考慮した手法を検討している.

実世界指向インタフェースによる効率的なユーザ作業支援
助教授 佐藤 洋一[代表者], 協力研究員 小池英樹,協力研究員 中西泰人
ユビキタス・コンピューティング環境においてユーザが意識することなく利用できる透明なインタフェースを実現するためには,実世界環境と電子メディアの連携を重視したパラダイムにもとづくインタラクションへのシフトが重要となる.本研究では,マルチメディアコンテンツなどの電子メディアと書類などの実在メディアとの連携に着目し,拡張机型インタフェースによる透明なインタフェースの実現を目指す.具体的には,実世界に埋め込まれたセンサ群からの情報にもとづくユーザの行動およびその意図の理解,実世界におけるさまざまな事象の認識,ユーザの知覚と行動の動的相互作用に関するモデルの獲得,などの面において研究をすすめる.

適応的拡散制御を用いた頭部3次元位置姿勢の実時間推定
大学院学生(佐藤研) 岡 兼司, 助教授 佐藤 洋一[代表者], 研究協力員 小池 英樹, 研究協力員 中西 泰人
本研究では,時系列フィルタを用いて実時間で人物の頭部の3次元姿勢を安定して推定するための手法を開発する.本手法は,初期化時に自動的に獲得された3次元モデルをもとに,入力画像列に対して実時間で頭部姿勢を推定する.特に,フィルタの動作モデルにおける仮説の拡散を適応的に制御することにより,ユーザが空間中のある点を注視している場合の推定精度を高く維持すると同時に,ユーザが突発的に動作する場合の追従性を向上させることに成功している.また,本手法における性能を評価するための評価実験では,良好な実験結果が得られた.

複雑照明下における運動物体の反射特性の推定
大学院学生(佐藤研) 杜 菲, 技官 岡部 孝弘, 助教授 佐藤 洋一[代表者], 研究協力員 杉本 晃宏
一般的な照明環境下において撮影された映像をもとにして,物体表面の反射率を推定する手法を開発している.一般に,物体からの反射光は,物体表面の反射特性とその物体が置かれた環境における照明条件の両方に依存する.そのため,観察された物体表面の明るさからこれら2つの要因を分離することは容易ではなく,従来手法では単一の光源のみが存在するなどの特殊な環境を仮定することが必要であった.本研究では,実世界環境における複雑な照明分布と物体表面反射率の両方を同時に推定するアルゴリズムを提案し,その有効性を実験的に検証している.

影に基づく光源推定のフーリエ解析とウェーブレット解析
技官 岡部 孝弘, 大学院学生 佐藤 いまり, 助教授 佐藤 洋一[代表者]
画像を手掛かりに光源分布を推定する逆問題はinverse lightingと呼ばれ,鏡面反射成分,拡散反射成分,および,影(キャストシャドウ)に基づく3つのアプローチが提案されている.本研究では,影に基づく光源推定がなぜうまく働くのかを明らかにするとともに,どのような基底関数が推定に適しているのかについて議論した.まず,球面調和関数を用いた推定法を提案して周波数空間における解析を行い,影に基づく光源推定の利点と問題点を明らかにした.次に,周波数空間における考察に基づいて,コンパクトなサポートと疎な展開係数を持つHaarウェーブレットを用いた効率的な推定法を提案した.最後に,球面調和関数を用いた手法とHaarウェーブレットを用いた手法を比較した実験結果を報告する.

近接光源下における物体の見えの近似のための画像分割とその効果
技官 岡部 孝弘, 助教授 佐藤 洋一[代表者]
近接光源下における物体の見えは,光源の方向と距離が物体表面上で変化するため,解析が容易ではない.ところが,物体表面上の微小領域に注目すると,領域内では光源の方向と距離の変化が小さいため,遠方光源を仮定した技術を適用することができる.本研究では,近接光源下における物体の見えを近似するための画像分割について,次の3つの考察を行った.第一に,近接光源下の物体の画像を矩形に分割した場合の近似精度を実験的に評価し,画像分割そのものの効果を確認した.第二に,近接光源下における物体の見えを近似するための画像分割法を提案した.提案手法では,物体の幾何学的および光学的特性と光源分布の確率密度に基づいて,近似の意味で適切な分割を設計する.さらに,顔認識や画像合成などへの応用の可能性についても検討した.

注視点情報を用いた遠隔地間実世界協同作業支援
大学院学生(佐藤研) 鬼頭哲郎, 助教授 佐藤 洋一[代表者], 協力研究員 小池英樹, 協力研究員 中西泰人
人と人との協同作業をコンピュータによって支援しようというアプローチはCSCWと呼ばれる.また,人がコンピュータの中でではなく実世界においての作業を支援を行うアプローチを実世界指向インタフェースと言う.本研究では実世界指向インタフェースとCSCW を組み合わせた実世界型の協同作業支援を考え,これを遠隔地においても実現できるようなシステムを構築する.本研究では人と人とが対面して行う作業を想定するが,対面作業を行う上で重要な要素の一つとして視線情報があり,遠隔地間での協同作業支援システムにおいて,ユーザ間でのアイコンタクトやゲイズアウェアネスを確保することはこれまで多くの研究者たちが取り組んできた課題である.本研究ではカメラとスクリーンの位置調整によるアイコンタクトやゲイズアウェアネスの確保に加えユーザの視線情報を計測しこれを用いた遠隔地間協同作業支援システムを提案する.ユーザの視線情報は,頭部の三次元位置と向きを計測し顔の向きが視線の方向であるとして取得する.本研究では1 対1 のミーティングなどを想定する協同作業とし,これを支援することを目的とする.その支援の手段としてユーザの視線情報を計測し,それを用いて,1) 視線情報の相手ユーザへの提示,2) ユーザ間での机上の拡大画像の共有,3)協同作業内容の記録とインデクシングを行うことで遠隔地間の協同作業を支援する

Combining Head Tracking and Mouse Input for a GUI on Multiple Monitors
博士研究員 Mark Ashdown, 助教授 佐藤 洋一[代表者]
The use of multiple LCD monitors is becoming popular as prices are reduced, but this creates problems for window management and switching between applications. For a single monitor, eye tracking can be combined with the mouse to reduce the amount of mouse movement, but with several monitors the head is moved through a large range of positions and angles which makes eye tracking difficult. We thus use head tracking to switch the mouse pointer between monitors and use the mouse to move within each monitor.In our experiment users required significantly less mouse movement with the tracking system, and preferred using it, although task time actually increased. A graphical prompt (flashing star) prevented the user losing the pointer when switching monitors. We present discussions on our results and ideas for further developments.

サステイナブル材料国際研究センター

分光電気化学法による光合成伝達分子のレドックス電位計測と解析
教授 渡辺 正[代表者], 助手 加藤 祐樹, 大学院学生 須澤 朋之, 大学院学生 山下 麻美
光合成光化学系I反応中心P700のレドックス電位は,過去40年間,主に化学的酸化還元法で測定されてきたが,報告値には+360 mV 〜 +520 mV vs. SHEと160 mVもの不確定性がある.原因として,測定法の問題や試料分画法の違いなどが考えられるが,本研究は薄層電解セルを用いる分光電気化学法の適用を図り,分画法も統一することで,種々の酸素発生型光合成生物のP700レドックス電位を精密に計測し,差異について解析している.確立した高い測定精度により有意な生物種依存性を見出し,ほぼ進化の系統樹に応じた形でP700のレドックス電位が分類されることを初めて明らかにした.

人工色素修飾による光化学系I光誘起電荷分離反応の増感
教授 渡辺 正[代表者], 助手 加藤 祐樹, 大学院学生 溝口 信二
光合成明反応において,光化学系 I, IIは多量のクロロフィル (Chl)などからなる光捕集アンテナによって低フォトン密度の太陽光を効率よく捕集し,反応中心での光誘起電荷分離に利用している.しかし,アンテナ色素の多くは太陽光強度が最大となる500〜600 nm近辺の光をあまり吸収しない.そこで本研究は,光エネルギー利用効率の向上を目的に,光化学系タンパク質I表面を人工色素で修飾し,天然とは異なる光吸収能をもつ光捕集系の構築を図っている.ローダミンBとX-ローダミンを人工色素として選択し,共有結合でPS I表面に修飾したところ,光誘起電荷分離が2倍以上増感されることを初めて示した.

人工色素を修飾した両親媒性ポリマーによる新規光捕集系の構築
教授 渡辺 正[代表者], 助手 加藤 祐樹, 技術職員 黒岩 善徳, 大学院学生 宮島 佳孝, 大学院学生 溝口 信二
光化学系I光電荷分離を人工色素修飾により増感できることを踏まえ,より効率的な光エネルギー移動による光捕集系の構築を目指している.人工色素を光化学系Iに修飾すると,天然のアンテナ色素が存在する疎水性領域ではなく親水性領域のアミノ酸に修飾されてしまうため,エネルギー移動の観点からすれば人工色素の分光特性を十分に生かしきれているとは言い難い.そこで,疎水性領域と相互作用する両親媒性ポリマーを人工色素と組み合わせることでさらなる高効率なエネルギー移動による光捕集系の構築を目指している.

クロロフィル類のレドックス特性解明
教授 渡辺 正[代表者], 助手 加藤 祐樹, 技術職員 黒岩 善徳
光合成明反応においてクロロフィル(Chl)類は光エネルギーの捕集と光電化分離に重要な役割を担う.従来,酸素発生型光合成生物の反応中心では例外なくChl aが機能しているとされてきたが,1996年に発見された海産原核藻類Acaryochloris marinaでは,Chl dが機能していることが見出された.本研究では,A. marina中のChl dの機能について知見を深めることを目的に,Chl dの電気化学的挙動を調べ,他のChl 類と比較・検討を行っている.第一酸化電位E1oxを調べた結果,in vitroではChl dの方がChl aより貴であるとわかり,既報のin vivoでの傾向と異なることを見出した.

界面光電気化学プロセスの解析と応用
教授 渡辺 正[代表者], 助手 加藤 祐樹, 大学院学生 原 祐輔
色素増感現象の理解を深めるべく,半導体電極表面に吸着した色素の状態が半導体電極への電子注入に及ぼす影響を調べている.光エネルギー変換効率を高めるために増感色素の濃度(電極表面の数密度)を高くすると,色素が会合する傾向にある.会合体と単量体の分光特性は異なるため,色素の会合挙動は増感作用に影響を及ぼすと想定されるが,系統的な研究はなされていない.そこで,酸化スズ電極にメチレンブルーを修飾したモデル電極を用い,吸着色素の増感光電流スペクトルと電極表面上における吸収スペクトル,および溶液内吸収スペクトルを比較検討することで,増感作用について調べている.

固体化色素増感太陽電池内におけるヨウ素レドックスの挙動解析
教授 渡辺 正[代表者], 助手 加藤 祐樹
研究が盛んに行われている色素増感太陽電池の多くは,揮発性の高い有機溶媒にヨウ素など酸化還元(レドックス)体を溶解した溶液(有機電解液)を電解質に用いるが,安全性・耐久性の観点から電解質の固体化が望まれる.その方策の一つに,ポリエチレンオキシド(PEO)などの高分子を有機溶媒に代わって用いることが挙げられ,そうした場合,有機電解液では問題視されていなかった電極界面におけるレドックスに伴う電荷移動過程が電池の光エネルギー変換効率に及ぼす影響を検討する必要がある.本研究では,PEOのオリゴマー(低重合体)をモデル電解質に用い,ヨウ素レドックスの挙動を解析するとともに,高分子電解質の特性が電荷移動過程に及ぼす影響を調べている.

貴金属の回収・分離・精製における新規プロセスの開発
教授 前田 正史[代表者], 大学院学生 伊藤 順一, 助手 三宅 正男
貴金属はその特異な物理的化学的特徴から,宝飾品としての利用のほか高機能な電子,触媒,接合材料等として幅広く使われている.このような製品中に複合化,微細化され存在する貴金属を,廃棄スクラップから効率よく回収するプロセスが望まれている.本研究では,廃棄物からの貴金属の回収プロセスの最適化を目指し,その一環として化合物生成反応を利用した分離プロセスの検討を行っている.

質量分析法を用いたりん・カルシウム酸化物の熱力学
教授 前田 正史[代表者], 大学院学生 永井 崇, 助手 三宅 正男
我が国ではふっ化物の地表面の排出規制がある.そのため,溶銑処理で多用されてきたCaF2含有フラックス用いずに脱リンを行いたい.そこで,溶銑処理での炭素飽和鉄とCaO-P2O5系フラックスの平衡反応を想定し,炭素飽和鉄およびフラックス中のリンの熱力学的な研究を行っている.

冷陰極グロー放電型電子ビーム溶解装置を用いた,低真空下でのSi精製
教授 前田 正史[代表者], 大学院学生 平松 智明, 助手 三宅 正男
現在太陽電池に用いられているSiには専用の製造プロセスが無く,大半は半導体用多結晶Siの余剰生産能力と半導体用Siの高純度スクラップによって賄われている.しかし現在の急激な太陽電池用Siの需要の伸びに対し,新たな製造のプロセス開発が必要となってきている.太陽電池には用いられない低純度スクラップSi中の揮発性不純物除去には,高真空下での電子ビーム溶解精製が有効とされているが,高真空を達成するには大型の設備および維持費が必要である.これらの低減を目指し本研究では,1〜10 Pa程度の内圧でEB照射可能な冷陰極グロー放電型電子ビーム溶解装置を利用した,より安価な太陽電池原料Si製造のプロセス開発を試みている.

溶融Si中Bの除去法に関する研究
教授 前田 正史[代表者], 大学院学生 藤田 耕太郎, 助手 三宅 正男
近近年,太陽電池需要が拡大する中,原料の供給が逼迫している.これまで利用されていなかったドーパント濃度が高いスクラップから不純物を除去できれば安価な原料の確保ができる.Si中の不純物除去には真空溶解による不純物の優先蒸発除去が有効である.n型ドーパントのPやSbはその除去法が確立されつつあるが,p型ドーパントのBは依然として除去速度が遅くSiの歩留が低いなどの問題がある.本研究では,高真空下における電子ビーム溶解によるSi中Bの除去の可能性を探査している.

熱応力によるスクラップシリコンの破砕技術
教授 前田 正史[代表者], リサーチフェロー S.V.Gnyloskurenko, 民間等共同研究員 山内 則近, 大学院学生 山形 晃一
半導体産業から排出されるスクラップシリコンを電子ビーム溶解法により精製し,半導体原料として再資源化する研究が行われている.このプロセスでは,電子ビーム溶解前にシリコンインゴットを十分に破砕しておくことが高効率化のために必要である.本研究では,不純物を混入させずにシリコンを破砕する技術として,ガスバーナーによる加熱後に水中で急冷し熱応力を導入する方法を検討している.最適な熱処理条件を確立するために,シリコンインゴット中の熱伝導を測定するとともに,熱流体解析ソフトを用いたシミュレーションを行っている.

電子ビーム溶解装置を用いたシリコン精製に関する研究
教授 前田 正史[代表者], 民間等共同研究員 山内 則近, 大学院学生 山形 晃一
スクラップシリコンを出発原料とした,シリコン精製に関する研究を行っている.半導体や太陽電池に使用されるシリコンは,半導体でイレブン9,太陽電池でセブン9の純度が必要だといわれている.また,シリコンは活性が高く,精製が難しいため,一部条件の良い場合を除いて,リサイクルされていない.千葉実験所に設置した,最大出力400kWの特殊電子ビーム溶解装置を用いて,スクラップシリコンの精製に関する研究を準商業規模で行っている.スクラップシリコンを出発原料とした精製により,30kg太陽電池級シリコンインゴットの作製に成功した.また,同技術を発展させ,半導体級純度への精製法および周辺技術について研究している.

ニッケル水素電池の電極材料のアンモニア−アルカリ浸出
教授 前田 正史[代表者], 研究実習生 井上 優理子, 助手 三宅 正男
ハイブリッド自動車や携帯電子機器などに用いられるニッケル水素電池は,急速な普及により,今後,使用済み電池が大量に排出されることが予想される.ニッケル水素電池には,ニッケル,コバルト,希土類元素が主成分として含まれるものの現状のリサイクル技術を活用してもこれらを経済的に回収することは困難である.本研究では,電極材料に対してアンモニア−アルカリ浸出を行い,正極材の水酸化ニッケルを水溶液中に溶解させるとともに,負極材の水素吸蔵合金を酸化させることなく,合金状態のまま効率良く分離・回収する技術の開発を行っている.

問題物質の適正処理に関する研究
教授 前田 正史[代表者], 技術専門職員 木村 久雄, 助手 三宅 正男
クロム,ひ素,ふっ素,ほう素,りんなどは,その有害性ゆえに社会的に問題物質とされる.それらの物質は,製品の製造過程から製品寿命終了後の過程において発生し,その多くは経済的価値がなく環境負荷の大きい不要物である.持続可能な循環型社会を実現し,サスティナブル社会を形成するためには,環境と経済の両面の発展と協調が必要であり,社会的に容認される方法での問題物質の適正処理が重要となる.問題物質は,その化合物形態や,周囲の環境によって物質として安定化し無害な物となる可能性がある.本研究は,土壌汚染対策法での溶出試験法を適用し,問題物質の適正な処理の可能性を探求し,その技術的評価可能なシステムを検討する.

問題物質処理における社会技術に関する研究
教授 前田 正史[代表者], 教授(東北大) 中村 崇, 民間等共同研究員 森 実
サステイナブルな循環社会を構築するためには材料が行われるサステイナブル材料を中心とする社会技術が確立される必要がある.本研究では処理が困難であったり,材料の供給に伴う副産物にしてその発生量が多大であったり,社会的に広く拡散するためにその循環に著しい困難を伴うような問題物質を取り上げる.これら問題物質の処理における,社会的コストを含めた最良のソリューションを得るための社会技術について研究している.本年度は年数回の研究会を開催し,広くその意義の認識を高め,多くの人材をこの問題に向かわせるよう勤めた.

金属多層膜の輸送的性質に関する研究
教授 山本 良一[代表者],神子 公男, 大学院学生 千早宏昭, 大学院学生 五來 敦
金属多層膜の輸送的性質に関する研究 Fe/Cr等の金属多層膜は巨大磁気抵抗効果を示すことが発見され, すでにハードディスク用の磁気ヘッドへの応用が始まっている. スパッタ法によって作成したCu/Co多層膜の磁気抵抗効果の大きさは最大で30%以上の値を示し, Cu層厚の関数として振動する. MBE法によって作成したCu/Co多層膜および合金薄膜についても研究を行っており, そのメカニズムについて研究中である.

金属ナノ薄膜の結晶成長の初期過程に関する研究
教授 山本 良一[代表者],神子 公男, 大学院学生 千早宏昭, 大学院学生 五來 敦
金属多層膜は巨大磁気抵抗効果や垂直磁気異方性などの興味深い物性を示すが, これらの物性は異種金属界面の構造に非常に敏感である. そこで, 多層膜の界面構造を制御することを目的として, 結晶成長の初期過程に関する研究を行っている. これまでに, 金属薄膜のナノ構造を,人工的に自己組織化させるサーファクタントエピタキシー法に関する研究を行っている.

ライフサイクルアセスメントの材料への応用
教授 山本 良一[代表者], 大学院学生 本田智則, 大学院学生 Nguyen Hong Xuan, 大学院学生 永島康一
環境負荷を総合的かつ定量的に評価することが低環境負荷材料を開発する上で重要な用件である. LCAはその中でも最も注目を集めている評価法である. しかし, LCAのデータベースおよびインパクト分析について, 各製品を構成する材料の組成および特性まで着目した評価を行うことは困難であり, このような方法は未だに確立されていない. 本研究では環境負荷の評価を, より詳細かつ正確に行うため, 製品の前段階である材料および素材のLCAを開発し, 実際に既存材料, 新材料等に適用することを目的とする. また, 材料特性の一つとして環境調和性を組み込むことを大きな特徴としている.

サブハライド(低級塩化物)を用いたチタンの高速還元法の開発
助教授 岡部 徹[代表者], 大学院学生(岡部研) 竹田 修
現在のチタンの量産プロセスであるクロール法は,確実に高純度のチタンが得られる点で優れているが,原料としてTiCl4を利用するため還元プロセスにおける反応熱が非常に大きく,最新鋭の大型設備を用いても生産速度が1t/day・reactorと非常に遅い.さらに,プロセスの連続化が困難で,反応容器からの鉄などの汚染の防御も困難である.このような背景から,現行のチタンの製造プロセスが抱える本質的な問題からの脱却を目指し,マグネシウム熱還元法を基盤にチタンの低級塩化物(サブハライド)を原料として用いる新しいタイプの高速還元法の開発を行っている.高温でも凝縮相であるサブハライドを原料として用いてチタンを製造する反応は,反応密度を大幅に増大できるだけでなく,クロール法に比べて反応生成熱が半分以下と小さいため,還元プロセスの高速化に適している.さらに,反応容器としてチタンを利用できるため,鉄などの汚染を効果的に防御することも可能である.

溶融塩中で酸化物を還元してチタンを製造する方法
助教授 岡部 徹[代表者], 大学院学生(岡部研) 柿平 貴仁, 大学院学生(岡部研) 尾花 勲, 研究実習生(岡部研) 平賀 健太
電気化学的な手法を用い,溶融塩中で酸化チタンを直接還元して金属チタンを製造する基礎実験を行っている.具体的には原料のTiO2を焼結し電極として成形後,カソード(陰極)として溶融CaCl2中に浸漬し,金属還元剤(Ca)が放出する電子により酸化物原料を還元し金属チタンを直接製造する方法(EMR)について検討している.チタンの鉱石は酸化物として産出するため,本プロセスが確立されれば原料の製造工程が簡略化され,プロセスが連続化できる利点があり,チタンの新製錬法として発展する可能性があるが,実際には得られるチタンの純度や溶融塩の分離方法の確立,還元剤Caの効率の良い電解製造法の開発等,解決しなくてはならない点が多い.最近は,溶融塩電解による金属カルシウムの製造に関する研究に注力している.

原料成形体の金属熱還元によるレアメタル粉末の製造
助教授 岡部 徹[代表者], 助教授 光田 好孝, (株)CBMMアジア 今葷倍 正名, 大学院学生(岡部研) 袁 勃艶, 研究実習生(岡部研) 藤田 康平, 研究実習生(岡部研) 伊藤 洋正
原料を含む成形体(プリフォーム)をあらかじめ作製し,これを還元剤の蒸気で還元することにより,均一な粉末を効率よく製造する新しいプロセスについて検討している.このプロセスは原料成形体と反応容器との接触部位を限定し,還元剤の蒸気を用いる還元手法であるため,反応容器や還元剤からの汚染を効果的に防止できる.また,この方法は,還元プロセスの(半)連続化・大型化が容易に達成できるので,次世代のレアメタルの粉末製造法として発展する可能性がある.このプリフォーム還元法(PRP)を用いてチタン,ニオブ,タンタル粉末の製造を試みた結果,還元時の熱処理条件や原料成形体に加えるフラックスを変化させることにより,均一で高純度の金属粉末を製造できることが明らかとなった.さらに,フラックスの種類や量を変化させることにより得られる金属粒子の粒径を制御できることがわかった.最近は,還元剤として液体合金を用いて反応系内の還元剤の蒸気圧を制御することにより,得られる金属粉末の純度や粒度を制御する新しい手法の開発を行っている.

電子材料スクラップからのレアメタルの回収
助教授 岡部 徹[代表者], 大学院学生(岡部研) 峯田 邦生, 大学院学生(岡部研) 松岡 良輔, 大学院学生(岡部研) 大川 ちひろ
希土類金属,タンタル,ニオブ,チタン,貴金属などのレアメタルは,磁石や電子材料用素材としてその需要が急速に増大している. 一例を挙げると,IT革命により高性能コンデンサであるタンタルコンデンサは需要が急増し,タンタル素材の価格は急騰する事態にも直面した.このような背景からタンタルコンデンサのスクラップからタンタルを効率良く分離・回収する新しいプロセスの開発を行っている.また,タンタルに限らず貴金属などの各種有価レアメタルの環境調和型リサイクルプロセスの設計と反応解析を行っている.

溶融塩電解を利用するニオブ・タンタル粉末の製造
大学院学生(岡部研) 袁 勃艶 [代表者], 助教授 岡部 徹
タンタルは,コンデンサなどの電荷デバイス材料用素材としてその需要が急速に増大している. 一例を挙げると,情報通信機器の小型化・高性能化が飛躍的に進み高性能コンデンサであるタンタルコンデンサの需要が急増した結果,タンタル素材は逼迫し価格が急騰したこともあった.タンタルの代替品としてニオブ粉末の製造プロセスの確立が重要となっているため,当研究室では,アルミニウム熱還元法により製造された安価なニオブ(ATR-Nb)を利用し,電気化学的な手法を用いて溶融塩中でニオブ粉末を製造する新しいプロセスの開発を行っている.この方法を利用すれば,純度が低いバルク(塊)状のニオブから,直接,高純度の粉末状のニオブを製造できるため,新しいタイプの低コスト製造プロセスとして期待される.

塩化物廃棄物の有効利用法の開発
大学院学生(岡部研) 鄭 海燕[代表者], 大学院学生(岡部研) 松岡 良輔, 大学院学生(岡部研) 大川 ちひろ, 大学院学生(岡部研) 竹田 修, 助教授 岡部 徹
チタン製錬などの塩化製錬プロセスから発生する塩化物廃棄物を有効利用する環境調和型のプロセス開発を行っている.塩化製錬から発生する塩化物廃棄物は,プロセスの塩素ロスの主たる原因となっているが,現状ではこのロスを補償するため,外部から塩素ガスを新たに購入している.また,我が国の環境規制は厳しいため,多大なコストと手間をかけて発生する塩化物廃棄物は処理されている.このような背景から,塩化物廃棄物中のFeClxなどの塩化物を塩化剤として有効利用する新規プロセスの開発を行っている.一例として,塩化物廃棄物を塩化剤として利用してチタンスクラップを塩化し,有価な塩化物原料(TiCl4)を製造すると同時に,廃棄物中の塩素量を低減する新しいプロセスの開発を行っている.また,貴金属などのレアメタル化合物の塩化反応への利用も検討している.

チタン鉱石からの脱鉄と反応解析
大学院学生(岡部研) 鄭 海燕[代表者], 大学院学生(岡部研) 松岡 良輔, 大学院学生(岡部研) 尾花 勲, 研究実習生(岡部研) 伊藤 洋正, 助教授 岡部 徹
チタン鉱石中の主な不純物は鉄であり,今後,チタン鉱石の品位は低下する傾向にあるため効率のよい脱鉄プロセスの開発は重要である.このため,鉱石から効率良く脱鉄し,高純度の酸化物チタン原料を製造する各種プロセスの開発を行っている.現在,研究を行っている脱鉄手法は,高温でチタン鉱石と塩化物を反応させる選択塩化法であり,脱鉄後得られた酸化チタン原料は,電気化学的な手法やプリフォーム還元法により直接,金属チタンに還元することを計画している.脱鉄反応により生成する塩化鉄の有効利用,さらには電気化学的な手法を用いた選択脱鉄反応についても検討を行っている.

貴金属の新規・高効率回収法の開発
大学院学生(岡部研) 大川 ちひろ[代表者], 助教授 岡部 徹
自動車排ガスの世界的な規制強化により貴金属を含む排ガス触媒の需要が急増している.また,燃料電池などの新エネルギーデバイスの開発の進展に伴い,白金などの貴金属の需要は今後もさらに増大することが予想される.貴金属は,原料となる鉱石の品位が非常に低いため採取・製錬が困難であるため,抽出には時間と多大なコストがかかるだけでなく,地球環境に多大な負荷を与える.このため,触媒などのスクラップから高い収率で貴金属を回収することは重要な課題であるが,現時点では効率の良いプロセスは開発されていない.本研究室では,活性金属蒸気を利用してスクラップから効率良く目的の貴金属を溶解・抽出する新しい溶解・分離プロセスの開発を行っている.また,塩化物などを利用することにより,強力な酸化剤を含まない溶液を用いて貴金属を溶解・回収する環境調和型の新規プロセスの開発を目指した研究も行っている.

テキスタイル材料の強度信頼性評価
助教授 吉川 暢宏[代表者], 助手 桑水流 理
高機能繊維束により成形されたテキスタイル材料の強度評価方法を検討している.平織布対応の有限要素を開発し,コンピュータシミュレーションを積極的に利用する,Simulation Integrated Experimentの方法論を検討した.また,柔軟な平織布の破壊試験を行うための冶具を開発し,強度評価実験を行った.

生体材料の力学モデル構築
助教授 吉川 暢宏[代表者], 助手 桑水流 理, 大学院学生 川山 高寛, 大学院学生 葛上 昌司, 大学院学生 サウトン ジャリヤポーン
人体の有限要素解析を行う上で不可欠の,材料モデルの構築を試みている.in vivoでの生体材料特性を,非侵襲で測定するため,X線CT画像から得られる三次元データから,変位場を同定する方法を開発した.また,軟組織の材料構成則モデルを,ミクロ組織の情報を反映できるチェーンモデルに基づき提示した.

有限要素離散化による実空間第一原理計算
助教授 吉川 暢宏[代表者], 助手 桑水流 理, 大学院学生 椎原 良典
1000原子以上の大規模系に関する量子力学計算を高速化し,コモディティの高い計算機資源と,現実的な計算時間で実行するため,有限要素離散化による実空間法の適用可能性を検討している.シリコン結晶の解析をはじめ,単純な系で初歩的計算を行い,適用可能性が高いことを示した.

セラミクス/金属界面のマルチスケール解析
助教授 吉川 暢宏[代表者], 物材機構 ドミトリエフ セルゲイ, 群馬大 半谷 禎彦
ナノ構造,ミクロ構造に支配されるセラミクス/金属界面の強度を的確に評価するため,ナノ−ミクロ−メゾ−マクロに連なるマルチスケール解析手法を検討している.原子モデルを機軸として,ナノスケールを扱う第一原理計算と,ミクロスケールを扱う分子動力学法,およびマクロスケールを扱う準連続体有限要素法の連携方法を提示した.

海中工学研究センター

高度な知的行動をおこなう海中ロボットの研究開発と海域展開
教授 浦 環[代表者], 教授 浅田 昭, 客員教授 高川 真一, 助教授 藤井 輝夫, 助手 能勢 義昭, 技術職員 坂巻隆, 特任研究員 金岡秀, 学術研究支援員 杉松治美, 民間等研究員 小原敬史
これまで開発してきた海中ロボットの成果を踏まえて,深度4,000mの高い水圧環境下にある深海を潜航し,熱水地帯を観測することのできる高度に知能化された信頼性の高い小型海中ロボットの研究開発を進めている.大深度熱水地帯の火山海域を活動する必要があるためそのための展開技術も研究している.2004年5月,ロボットはマリアナ熱水地帯へ潜航.マグマ活動が活発化している北西ロタ第一海底火山に潜航し,搭載するマンガン硫黄濃度計により熱水の湧出を裏付ける箇所を発見し,TVカメラによる熱水プルームのビデオ撮影に成功した.来年度は,伊豆小笠原背弧海盆に潜航,銅やニッケルを含む熱水鉱床の観測をおこなう予定であり,現在,これまでの実海域試験による工学的成果を次のロボット展開に活かすべくデータ解析等を進めている.

海中ロボットの自律航行に関する基礎研究
教授 浦 環[代表者], 助教授 藤井 輝夫, 助手 能勢 義昭, 技術職員 坂巻隆, 研究員 川口勝義, 研究員 黒田洋司, 研究員 石井和男, 研究員 近藤逸人, 特任研究員 金岡秀, 大学院学生(浦研) 野瀬浩一, 大学院学生(浦研) 坂田雅雄, 大学院学生(浦研) 巻俊宏, 大学院学生(浦研) 矢野正人, 大学院学生(浦研) 中谷武志, 大学院外国人研究生 Blair Thornton, 大学院外国人研究生 Epars Yann, 大学院外国人研究生 Nicola Rohrseitz, 外国人協力研究員 Florian Marty, 研究実習生 栗本陽子
海中ロボットのより高い自律性を確保するためには,取り扱いやすいテストベッドが必要である.テストベッドは浅い海域やプールでの航行試験を通じて,ソフトウェアが開発される.外環境に対する多くのセンサを持ち,運動自由度の大きな推進器群を装備する海中ロボットを製作し,その上に分散型運動制御システムを構築して海中ロボットの自律性の研究を行っている.自律性の一環として,2自由度のマニピュレータを「Twin Burger 2」に取付け,水中に浮遊したターゲットを捕獲するシステムを構築している.

画像を用いた海中での行動決定機構に関する研究
教授 浦 環[代表者], 研究員 近藤逸人, 大学院外国人研究生 Epars Yann, 外国人協力研究員 Florian Marty, 研究実習生 栗本陽子
ヴィジョンシステムを用いた信頼できるロボットの行動決定機構とフイードバック機構を研究開発している.画像情報は多くの情報を含むが,水中では,マリンスノーの散乱や,照明むらなど処理しなければならない外乱が多い.しかし,ケーブルのトラッキング,狭い空間の通り抜けあるいは魚類の追跡など,画像を用いなければできないミッションも多い.ここでは,自律型海中ロボットのテストベッド「Twin Burger 2」と「Tam Egg1」を使ってこうしたミッションを確実に遂行できるシステムを構築している.

ニューラルネットによるシステム同定の研究
教授 浦 環[代表者], 研究員 石井和男
複数入力複数出力で,非線形性が強く,相互干渉の大きいロボットシステムをニューラルネットによって実現する手法を開発している.本システムを用いて航行型海中ロボットの定高度維持航行あるいは有索潜水機の運動の制御を行っている.

海中ロボットによる港湾施設の観察
教授 浦 環[代表者], 助手 能勢 義昭, 技術職員 坂巻隆, 研究員 石井和男, 研究員 近藤逸人, 大学院学生(浦研) 巻俊宏
港湾における海中施設を自動的に観察点検するシステムを「Tri-Dog1」をプラットフォームとして研究開発している.そこから得られたデータを用いて3次元GISを形成し,津波や地震などの災害時における復旧に役立てようとしている.港湾空港研究所などと共同で,2004年10月ロボットを釜石湾口大深度防波堤に潜航させ,ケーソンの壁面と捨石マウンド上面を観察することに成功している.

深海調査ロボットの研究開発
教授 浦 環[代表者], 助教授 藤井 輝夫, 助手 能勢 義昭, 技術職員 坂巻隆, 研究員 浅川賢一, 研究員 近藤 逸人, 大学院学生(浦研) 中谷武志, 研究実習生 栗本陽子
大深度海底に沈没した船舶や航空機を簡便に探査できるロボットシステムを,海上技術安全研究所および民間の研究機関と共同で開発している.当面のターゲットとしては2500m級の大深度に沈没した船舶の主船体部分の探査を想定.ケーブルに拘束されるROVは複雑な形状を持つ観測対象物には適さないが,情報の少ない未知の環境下においてロボットが全自動で行動するのは極めて困難である.そこで機能性を重視した小型軽量システムを選択,音響通信を利用した遠隔操縦によりテレビカメラで観測をおこなう半自動プロトタイプロボット「 Tam-Egg1」号を2003年1月に建造,2004年には全面的な改造をおこない自律機能を向上させた.さらに,本格的大深度調査用ロボット「WREF」の建造に取り組んでいる.

自律型海中ロボットを用いた鯨類観測システムに関する研究
教授 浦 環[代表者], 客員教授 バール ラジェンダール, 助手 能勢 義昭, 技術職員 坂巻隆, 研究員 浅川賢一, 研究員 白崎勇一, 学術研究支援員 杉松治美, 大学院学生(浦研) 坂田雅雄, 大学院学生(浦研) 中谷武志, 研究実習生 穂積大輔
鯨類の多くは鳴音と呼ばれる声を出す.ザトウクジラの雄の鳴音は複雑なフレーズを形成しており,マッコウクジラの鳴音はクリック音と呼ばれる.それぞれの鯨類に特有な鳴音をそれに適合する手法により解析し,その音響特性を利用してまったくパッシブな方法で音源を特定する小型音響装置を開発し,これをAUVなどに装着して展開,鯨類の位置情報(方位,深度)を得ることで,個体識別および個体数などのデータを取得するシステムを開発している.2004年9月に小笠原海域でAUVによるマッコウクジラの追跡ソフトの起動試験をおこない,実験後のデータ解析により,AUVによるクジラ追跡が可能であることが示された.今後は,クジラ出現のタイミングとAUV展開のタイミングの問題,母船の機械ノイズの問題などの課題を解決し,鯨類の3次元的観測の実用化に向けた改良を進める.

高周波鳴音を利用した小型歯鯨類の自律的水中観測システムの研究開発
教授 浦 環[代表者], 客員教授 バール ラジェンダール, 大学院学生(浦研) 矢野正人
小型歯鯨類は,80〜160kHzの高周波数の鳴音特性を持つ.本研究ではこれに着目し,小型歯鯨類が発する音を利用し,それを自動的に観測できる音響装置を用いたパッシブなシステムを開発し,実際の調査観測により検証していく.具体的なターゲットは,近年の環境汚染により絶滅が危惧されている揚子江カワイルカ,ガンジスカワイルカなどのカワイルカ類だが,まず,カワイルカ同様の高周波鳴音を持ちガンジス川,揚子江そして日本沿岸域にも棲息しているスナメリを対象にその音源位置を求めることができる装置を開発,伊豆三津浜や銚子沖で試験をおこない,データ解析を進めている.

内部アクチュエータによる海中ロボットの自由方向制御
教授 浦 環[代表者], 助手 能勢 義昭, 大学院外国人研究生 Blair Thornton
内部アクチュエータ"single gimbal Control Moment Gyro (CMG)"を用いることによりAUVの自由方向制御の可能性を検討している.CMGはフライホイールとモーター付きジンバルにより構成され,ジンバルを回転させることで,内部運動量交換によりジャイロモーメントを発生させ,AUVの姿勢を制御する.プロペラやフィンとは異なり,外部の流体と無関係に直接モーメントを得るため,機敏な運動制御が可能になる.また,浮心と重心が同位置のAUVに用いた場合には,自由方向制御が可能になる.このようなAUVはスラスタ,センサを効率的に使えるため,部品の必要最小限化が進むとともに,これまで不可能だったミッションもおこなえる.現在,CMGとAUVを統合した運動モデルとフィードバック制御法則を求め,CMGの特異点を抽出,微分幾何学を基にリアルタイムで正確に使える特異姿勢回避方法を編み出し,プロトタイプロボットを製作中である.

湖沼調査ロボットを用いた湖沼環境調査システムに関する研究
教授 浦 環[代表者], 技術職員 坂巻隆, 研究員 黒田洋司
生活に密着した湖沼の環境調査にあたっては,移動ロボットをプラットフォームとして用いて自動的かつ定期的に調査をおこなえば,空間的時間的な分解能が向上する.本研究では湖沼調査を専用とする自律型潜水ロボットの研究開発を琵琶湖研究所他と共同でおこない,2000年3月には琵琶湖専用ロボット「淡探」が完成.これを用いて継続的に琵琶湖で観測をおこないデータを収集,得られたデータを基に新たな工学的湖沼環境調査システムの構築を研究開発している.

粉粒体の輸送の研究
教授 浦 環[代表者], 研究員 太田進
微粉精鉱・微粉炭・粉炭などの輸送は穀類などのばら積み貨物輸送とは同等に扱えない.こうした粉粒体の動力学ならびに安全でかつ経済性を重視した輸送工学の研究をおこなっている.

海事の安全に関する研究
教授 浦 環
海難事故は,当事者のみならず,第三者にも大きな影響を及ぼす.タンカーの衝突による原油の流出はその代表である.流出するのは貨物のみならず,燃料油も問題である.ハードウェアとしての船舶,船具,運行者,あるいはそれを取り巻く国際規則は,こうした海洋環境の維持に関係する.これらの大きなシステムを健全に維持するには,旧態然とした考え方ではできることが限られる.そこで,人的な要因の究明と除去や旗国の管理を含めた新たな海事の安全に関する枠組みを研究している.

船舶のライフサイクル・アセスメント
教授 浦 環[代表者], 大学院学生(浦研) 加藤陽一
船舶は,NOxを大気中に放出する大きな要因である.燃料消費も多大であり,解徹は多くの産業廃棄物を生む地球環境のなかで,船舶あるいは船舶輸送がどのように影響を与えているか,他の輸送手段と比較すると優劣はどうか,あるいは,どう改良すべきかなどは,船舶の一生を通じた評価が必要である.これを環境に関する思想の面から研究している.

海溝型地震発生の謎を探る海底地殻変動観測ネットワークシステム
教授 浅田 昭
海溝型巨大地震は陸上から離れた海底下で起こり,その発生メカニズムの解明には,海底の地殻変動を検出し,モニターするシステムの開発が望まれるので,海上保安庁海洋情報部と共同で,従来に比べ格段に優れたセンチメートルレベルの超高精度海底測地手法の開発など,観測システムの研究を行っている.

新しい3次元航海支援ソフトウエアシステム
教授 浅田 昭
通行する他船の情報を利用するAIS(Automatic Identification System)表示機能とDGPSの中波ビーコンによる気象情報の表示機能により,船舶間,船舶と海底および航路標識との空間位置関係を正しく視覚的に把握でき,また気象海況も把握できる,より安全な航海を可能とするこれまでに無い新しい総合情報航海支援ソフトウェアシステムを開発し,実用化研究を進めている.

深海底の超微細地形計測システム:インターフェロメトリソーナーと合成開口
教授 浅田 昭
サイドスキャンソーナーを利用し,インターフェロメトリという位相差計測を行う装置を付加して,海底の起伏を正確に計測する研究開発を行っている.

捉え難い浮泥層を計測する探査装置
教授 浅田 昭
多周波の音響パルスを使い,浮泥層の音響的特性を明らかにしながら,効果的に定量計測・分布密度計測を行う研究開発を行っている.

3次元魚群探査ソフトウエア
教授 浅田 昭
魚探のGPS位置,海底の水深を自動的に読み取り,オリジナルの3次元海底地形モデルを構築する支援ツールと,オリジナルの海底地形(マイチャート)を3次元表示し,重ねて魚影を音響ビームの走査スクリーン上に写し,加えて時間軸,情報を3次元空間上に書き込み管理,表示するソフトウエアを開発を行っている.

複合ソーナーによる藻場の3次元音響計測
教授 浅田 昭
米国ワシントン大学で開発された超高性能の最新の音響ビデオカメラDIDSONを使用し,音響計測として難しい面を持っていたアマモ・カジメ類の固体識別,個体の生育状況を計測し,小型船を使用し効率的に広範囲の区域を調査する手法の開発を行っている.

超高性能音響ビデオカメラを使った水中音響探査,観測,セキュリティ監視技術
教授 浅田 昭
米国ワシントン大学で開発された超高性能の最新の音響ビデオカメラDIDSONに,GPS測位,方位センサーを組み合わせ,映像の高精度モザイク,3次元形状の計測,水中のセキュリティ観測を行えるよう応用システム化の研究開発を行っている.

最先端マルチビーム音響測深機を使ったダムの堆砂経年変化の高精度計測
教授 浅田 昭
蓮ダムに流入した土砂の量を,2年度にわたって2回マルチビーム音響測深機を使い測量した.2次元のKGPS測位法を開発し,3つの衛星でも数10cmの測位精度を達成し,全域での高精度測位を実現した.その他,マルチビーム測深の誤差要因である,GPS情報の正確な時間遅れ補正,磁気コンパスと光ファイバージャイロの精度評価,水底への音響ビームの入射角と測深誤差,動揺計測のバイアス変動などの計測評価の研究を行い,従来に無い高精度のマルチビーム測深技術を開発を行っている.

トルクバランスケーブルの捻れに関する理論的研究
客員教授 高川 真一
深海調査用によく用いられる内外2層を互いに逆方向に撚って捻れトルクをバランスさせた長大ケーブルの滑車における捻れ特性については,昨年までの研究の結果,その原因も解明でき,捻れの発生しないケーブルの製作方法も示すことができた.今年からは3層以上の多層ケーブルの滑車における捻れ特性とそれへの対応策について検討を進めている.層が増えるに従って屈曲に対しての抵抗が小さくなる,すなわち柔らかいケーブルにすることができ,扱いが容易になるからである. 2層の場合は内外それぞれの素線の弾性伸びを考慮しなくても良く,軌道変更に伴う軌道長の違いから直接ケーブルの捻れが算出できた.またこの値は実際のケーブル捻れと良く一致した.しかし3層以上となると,滑車における軌道変更に伴う軌道長の違いに加えて各素線の弾性伸びも考慮しなければならなくなる. これらのパラメーターを取り入れた式を構築し,シミュレーション計算結果と実海域におけるデータとの比較を今後行っていく.

セラミクス製耐圧球体による浮力材の開発
客員教授 高川 真一
現状の大水深用の浮力材は直径0.1mm程度のガラスマイクロバルーンを樹脂で固めていて比重は0.5〜0.6程度であるが,より軽比重のものが求められており,この達成のために直径10cm程度のセラミクス球を用いる方法を検討している.過去に実施されたことがあるが,誘爆の恐れからまだ実用化されていない.昨年は試作したセラミクス半球の形状計測を行い,約15年前の試作品と比べて格段に形状が真球に近くなったことを確認したが,やはり焼成の際の支持部材による変形の跡がわずかながら残っている.このような変形は極力排除することが今後の研究課題であるが,とりあえず今年は試作した二つの半球を結合して球体としての形状を計測し,圧壊圧力を107MPaと推定した.今後は圧壊試験で強度を確認するとともに,より高い真球度のセラミック球製作手法の確立に向けての研究を遂行する.

超長距離航走AUV用エネルギー源の検討
客員教授 高川 真一
北極海は地球環境問題の上からも非常に重要な場所であるが,海中観測は非常に困難である.ここを調査するにはアラスカ北端から対岸のスカンジナビア半島北端までの約4500kmを潜航したまま走破する能力がAUVに求められる.本研究ではこれを実現するために全体的なAUVの寸法,形状を検討し,併せて航走に必要なエネルギー源としてどのような形式が良いか検討を進めている.エネルギー源としては,低温液化気体や高圧気体あるいは合金吸蔵も候補ではあるが,常温で液体の燃料や酸化剤が取り扱い上柔軟性があって有望である.具体的には燃料としてはアルコールであり,酸化剤としては過酸化水素の利用が考えられる.エンジンとしてはいろいろな形式が考えられるが,メチルアルコールを燃料とする燃料電池も有望である.外燃機関のスターリングエンジンも有望である.熱電発電素子の活用は廃熱利用には当然用いるものの,むしろ主発電素子となるべく熱効率の改善が求められる.一方,内燃機関は不活性ガスの処理の問題から適用は困難と思われる.

Classification and AUV-based tracking of Sperm Whales
客員教授 バール ラジェンダール[代表者], 教授 浦 環, 大学院学生(浦研究室) 坂田 雅雄, 研究実習生(浦研究室) 穂積 大輔
A new method for classification of sperm whales based on the direct and surface reflected clicks received on only two hydrophones has been developed. An experiment was designed to use an AUV for tracking and following diving sperm whales, based on the previously developed classification and tracking techniques. The first sea trials using AUV (Aqua Explorer 2000) were conducted off Ogasawara islands using R/V Kairei of JAMSTEC during September 2004.

Acoustic Survey of Marine Mammals
客員教授 バール ラジェンダール[代表者], 教授 浦 環, 大学院学生(浦研) 矢野 正人
Vocalizing and diving marine mammals can be effectively surveyed using acoustic techniques. Development of compact, automatic and efficient methods to conduct acoustic survey of marine mammals has been explored. A system is being designed for survey of dolphin and porpoise populations in selected regions.

マイクロチャネル構造における細胞培養に関する研究
助教授 藤井 輝夫[代表者], 助教授 酒井 康行,博士研究員 Serge Ostrovidov
マイクロチャネル構造を用いると,従来ペトリディッシュ上で行ってきた培養系に比べて,栄養供給や酸素供給のための流れを強制的に与えることができるので,細胞の外部刺激に対する応答の観察や培養による組織構築などに利用できる可能性がある.本研究では,PDMSを材料としたマイクロチップ上にチャネル構造や膜構造を形成し,その内部で各種の細胞組織を培養する方法について検討を行っている.

光ファイバを用いるオンチップ検出機構の開発
助教授 藤井 輝夫
生化学反応や分析の検出には,一般に蛍光や発光など光を用いた検出手法が用いられる.反応や分析に用いるマイクロ流体デバイス上に,こうした機能を集積化できれば,従来,外部に用意しなければならなかった蛍光観察のための大規模な装置を必要としなくなる.本研究では,マイクロ流体デバイス内部にマイクロレンズ構造を集積化し,これを介してデバイスに光ファイバを接続することによって,蛍光の励起及び観察を行う方法について研究を進めている.

マイクロ流体光制御の研究
助教授 藤井 輝夫
マイクロ流路内における層流現象を利用して,異なる屈折率を有する流体によって流路内に層流状態を形成し,それらの流量比を制御することによって,光ファイバを用いて導入する光の光路制御を行う方法について研究を進めている.この技術により,大がかりなセットアップを用いずに,流路内部において光ピンセットなどの機能が実現可能である.

微小スケール反応・分析システムに関する基礎研究
助教授 藤井 輝夫[代表者],山本 貴富喜, 技術専門職員 瀬川 茂樹
マイクロファブリケーションによって製作した微小や容器や流路内を化学反応や分析に利用すると,試薬量や廃棄物の量が低減できるだけでなく,従来の方法に比べて高速かつ高分解能の処理が可能となる.本研究では,そうした処理を実現する反応分析用マイクロデバイスの製作方法の基礎研究を行うと同時に,微小空間に特有の物理化学現象について基礎的な検討を行っている.

マイクロ流体デバイスを用いた現場微生物分析システムの開発
助教授 藤井 輝夫[代表者],山本 貴富喜, 博士研究員 福場 辰洋, 大学院学生 松永 真之, 助教授(広島大学) 長沼 毅
海中あるいは海底面下に存在する微生物の性質を調べるためには,サンプリングした海水や海底泥を地上で分析するだけでなく,例えば現場での遺伝子の発現状態を把握することが重要である.本研究では,マイクロ流体デバイスによる分析技術を応用して,海底大深度掘削孔内や自律海中ロボットなどの移動プラットフォームに搭載可能な小型の現場微生物分析システムの実現を目指している.本年度は,フロースルー型遺伝子増幅(PCR)デバイスを完成させ,深海と同様の高圧環境下における動作確認を行った.

分子計算用マイクロ流体デバイスの研究
助教授 藤井 輝夫[代表者], 大学院学生 金田 祥平, 助教授(東工大) 山村 雅幸, 助教授(東工大) 村田 智, 教授(東大) 萩谷 昌巳
分子計算は主としてDNAを情報担体とし,分子そのものの超並列性を利用して,従来の計算手法では計算が困難であった問題を解こうとする新しい計算パラダイムである.本研究では,これまでに試験管等を用いて行われてきた計算のための反応や分離,DNAナノ構造の構築操作等をマイクロ流体デバイス上で実現することによって,分子計算の新しい実装技術の実現を試みている.

マイクロ流体デバイスを用いた現場化学センシングに関する研究
助教授 藤井 輝夫[代表者], 博士研究員 福場 辰洋, 大学院学生 高木 尚哉, 外国人協力研究員 Andreas Imhof, 助手(京大) 岡村 慶
海水のpHや微量金属イオン濃度を現場で計測することは,深海の熱水活動を把握する上できわめて重要である.本研究では,マイクロ流体デバイス技術を用いて,そのような計測を実現し,従来のシステムに比べて小型かつ多項目の計測が可能なシステムの実現を目指している.具体的には,マンガンイオンをマイクロ流体デバイス上で化学発光によって分析する方法やpHを蛍光色素を用いて計測する方法などについて検討を進めている.

電界効果トランジスタを用いた現場型pHセンサの特性に関する研究
助教授 藤井 輝夫[代表者], 博士研究員 福場 辰洋, 主任研究員(電中研) 下島 公紀, 研究副主幹(海洋研究開発機構) 許 正憲, Senior Scientist Peter van del Wal, 教授(Univ. of Neuchatel) Nico de Rooij
海水のpHを現場で計測可能なセンサを用いれば,深海から噴出する熱水プルームの構造や海洋隔離されたCO2の拡散状況などを把握する上できわめて有用なデータが得られる.本研究では電界効果トランジスタ(ISFET)を用いた現場型pHセンサについて,深海における性能を評価する目的で,その温度と圧力に対する特性変化を詳細に調べている.

マイクロ流体デバイスにおける分子及び培養組織のインピーダンス計測
助教授 藤井 輝夫[代表者],山本 貴富喜, 共同研究員(CNRS) Vincent Senez, 博士研究員 Erwan Lennon, 大学院学生 木村 啓志, 大学院学生 Sang Wook Lee
半導体微細加工技術を利用すると数十ミクロン〜百ミクロン程度のサイズの流路を製作することができる.本研究では,そのような流路の内部に集積化した電極構造を形成し,DNAや培養組織などのインピーダンス計測を行うことにより,それら分子や組織の性質や状態を見分ける方法について検討を進めている.

細胞の局所的化学刺激応答計測のためのマイクロ流体デバイスの開発
助教授 藤井 輝夫[代表者], 助教授(Univ. of Groningen) Sander Koster, 助教授(早稲田大学) 高松 敦子, 教授(Univ. of Groningen) Sabeth Verpoorte, 教授(Univ. of Neuchatel) Nico de Rooij
培養した細胞に対して,局所的に化学刺激を与えながら,その応答を計測するためのマイクロ流体デバイスの開発を行った.具体的には,マイクロ領域における層流現象を利用して,比較的大きな寸法(cmオーダー)の培養チャンバにおいて,薬物等の化学物質を含む微小な線状流れを形成し,これによって培養された細胞の一部にのみ化学物質を作用させるものである.実際にデバイス内部に粘菌変形体を導入し,その一部のみを不活化することに成功した.

マイクロ流体デバイスにおける生体粒子の付着パターンに関する研究
助教授 藤井 輝夫[代表者], 博士研究員 岡本 拓士, 助教授(早稲田大学) 高松 敦子, 研究実習生 金子 直嗣
マイクロ流体デバイス内部において細胞培養を行う場合,導入する細胞等の生体粒子の付着を制御する必要がある.本研究では,現実のマイクロ流体デバイスにおける粒子付着のパターンを調べ,その基礎的な知見を流路設計に反映することを目的としている.具体的には,マイクロ流路内に円柱等の簡単な構造物を作り,粒子を導入した際にどのような挙動や付着パターンを示すかについて観察,解析を進めている.

マイクロ波リモートセンシングによる海面計測
助教授 林 昌奎
海面は海上風,波浪,潮流などの環境要因により常に変動する.海面計測には主に,定点ブイ,漂流ブイ,観測船あるいは海底設置超音波機器など現地設置型計測機器が用いられている.しかし,現地設置型計測機器の設置・運用には,気象および地理条件による様々な制約や困難が伴う.本研究では,自然条件に制約されることなく海面計測が可能な能動型マイクロ波センサーであるマイクロ波散乱計,合成開口レーダーを用いたリモートセンシングによる海面計測手法の開発を行っている.現在は,実験水槽にて生成した模擬海面によるマイクロ波散乱の直接計測,数値生成海面を用いたマイクロ波散乱の理論解析を行い,海面生成要因とマイクロ波散乱との因果関係の解明を行っている

氷海域における流出油拡散・移動シミュレーションモデルの開発
助教授 林 昌奎
海氷が水面を覆う氷海域での流出油は,油が海氷の下に隠れるなどにより,その流出範囲の特定及び回収は非常に困難である.氷海域での流出油は流氷と共に移動し,その範囲を広げる.回収のは長い時間を要し,その間,周辺海域の環境に及ぼす影響は計り知れない.海洋モデルとの連成を考慮した氷海域における流出油の中長期拡散・移動シミュレーションモデルを開発した.

合成開口レーダ(SAR)画像による波浪情報導出アルゴリズムの開発
助教授 林 昌奎
合成開口レーダ画像データは,海面におけるマイクロ波後方散乱の強さの平面分布を表す.海面でのマイクロ波散乱は,海洋の海上風,海流,波浪などに大きく影響される.特に,マイクロ波散乱における波浪の影響は,水面傾斜によるマイクロ波の局部入射角の変化,水粒子運動速度の相違による高周波波面形状の変化として現れる.波浪による局部的なマイクロ波散乱の変化は,シマウマ模様の合成開口レーダ画像を作り出す.そのシマウマ模様の合成開口レーダ画像データから,海面形状とマイクロ波散乱との関係を用い,海洋の波浪情報を導出するアルゴリズムの開発を行っている.

大水深ライザーの動的応答特性に関する研究
助教授 林 昌奎
ライザーは比較的単純な構造物であるにもかかわらず,作用する流体外力,構造自体の応答特性も一般に非線形である.また,外部流体および内部流体は,密度や流速さらには構造の変形に応じて複雑な力を構造に及ぼす.これらの問題は,対象となる水深が深くなりライザーが長大になるに従い,強度が相対的に低下したり,ライザー自体が相対的に柔軟になり動的挙動が顕著になることにより,強度設計,安全性確保の観点からより重要になる.そのため,これらの応答特性を正確に把握し,諸課題を解決することが大水深掘削システムを実現する上で重要となる.現在は,海洋ライザーに働く流体力を推定する手法の開発を行っている.

マイクロメカトロニクス国際研究センター

半導体微細加工による並列協調型マイクロ運動システム(継続)
教授 藤田 博之[代表者],安宅 学, 大学院学生(藤田研) 福田 和人, 外国人客員研究員(藤田研) イブ アンドレ シャピュイ
半導体マイクロマシーニング技術の利点の一つである, 「微細な運動機構を多数同時に作れる」という特徴を生かして, 多数のマイクロアクチュエータが協調してある役割を果たす, 並列協調型マイクロ運動システムを提案した. アレイ状に並べた多数のアクチュエータでシリコン基板の小片を運ぶことができる. 制御回路とアクチュエータを含むモジュールを平面的に並べ, 物体の形状による分別を行う機構の設計と制御法と制御アルゴリズムを開発した. 流体マイクロアクチュエータのアレイを歩留まりよく作るプロセスを考案し,搬送動作を確認した.今後は,別途作ったVLSIチップと一体化することを試みる

マイクロアクチュエータの応用(継続)
教授 藤田 博之[代表者], 助教授 年吉 洋, 技術専門職員(藤田研) 飯塚 哲彦, 協力研究員(年吉研) 三田 信, 受託研究員(藤田研) アレクシス ドゥブレー, 博士研究員(藤田研) ニコラ ティエレスラン
VLSI製造用の種々の微細加工技術によって可能となった, 微細な電極パターンや高品質の絶縁薄膜を利用して, 静電力や電磁力などで駆動する超小型アクチュエータを開発し, 種々の応用デバイスを試作している. 半導体レーザや発光ダイオードと光ファイバの光軸合わせ用微動機構, マイクロ光スキャナ, ハードディスク装置の微細トラッキング用マイクロアクチュエータ, マイクロ機構による乱数発生デバイスなどを対象に研究を進めている.

真空トンネルギャップ中の極限物理現象の可視化観測(継続)
教授 藤田 博之[代表者], 助教授 年吉 洋, 助教授(香川大) 橋口 原, 協力研究員(年吉研) 三田 信, 博士研究員(年吉研) 角嶋 邦之, 大学院生(藤田研) 石田 忠
マイクロマシニング技術を用いて, 走査トンネル顕微鏡の(STM)の探針とそれを動かすマイクロアクチュエータを一体で製作している. 断面の寸法が数十ナノメートルのナノ探針を安定して作製できるようになった. このマイクロSTMを, 電子位相検出方式の超高分解能透過電子顕微鏡(TEM)の試料室に入れ, トンネル電流の流れるギャップを直視観察する計画である. 電界電子放出デバイスについて,電流電圧測定と針先形状観察を同時に行い,ある電圧で針先が丸くなるとともに電流が急に減少する現象を見いだした.また,対向針を接触させ融着した後,伸張してナノブリッジを形成し,その破断までをTEMで可視化観察した.

マイクロマシーニングによる微小光学システム(継続)
教授 藤田 博之[代表者], 助教授 年吉 洋,ティクシェ アニエス, 協力研究員(年吉研) 三田 信, 大学院生(年吉研) 肥後 昭男
光路に対して垂直に動く微小ミラーのアレイを用いた光マトリックススイッチを作り, 良好な性能を得た. また, 3次元的にチップを組み立て, 光ファイバー, 光マイクロマシン, レーザ等をマイクロシステムに組み込む技術を開発した. さらに, 並列可変光インタコネクションの実現を目指し, 2次元走査可動レンズのアレイの製作を試みている.

マイクロマシニング技術のバイオ工学への応用(継続)
教授 藤田 博之[代表者], 助教授 年吉 洋,ティクシェ アニエス, 助教授(香川大) 橋口 原, 外国人客員研究員(藤田研) フィリップ コケ, 大学院学生(藤田研) 横川 隆司, 大学院学生(藤田研) 田 宗勲, 大学院学生(藤田研) 新田 英之, 大学院学生(藤田研) 田村 一紀
バイオ工学のツールをマイクロマシニングで作る研究を行っている. 特定のタンパクを認識する分子を固定したパッチのアレイを作り, そこに細胞を選択的に吸着することができた. また, マイクロ構造内でニューロンを培養し, 人工的結合をさせることも試みている. チップ上に生体分子モータを固定し, その回転が温度により変化する様を一分子レベルで観察した. また, リニア分子モータによりマイクロ構造をマイクロ・ナノ流路内で望みの方向に搬送できた. 更にDNA分子を可動マイクロ構造で把持した

生体分子用特異結合ナノ標識
教授 藤田 博之[代表者],ティクシェ アニエス, 助手(医学部廣川研) 岡田 康志, 外国人協力研究員(藤田研) アンドレア レイン
シリコンのナノ加工を利用し,細長い標識の一端のみに金を付加して生体分子への特異的結合を可能とした構造を作った.

シリコンマイクロマシニングによる微小振動子の製作に関する研究
教授 川勝 英樹
100MHzレンジの高い周波数で振動するメカニカル共振器をシリコンマイクロマシニングで製作する方法を検討した.

ナノ振動子とマルチカンチレバーアレーの作製
教授 川勝 英樹
シリコンの異方性エッチングを用いて探針を有する微小なカンチレバーを作製した.小型化により固有振動数を高めるとともに,使用目的に応じたバネ定数を実現することに成功した.質量や力の検出分解能を高める上で重要な,振動子のQ値を向上させるための処理方法や,振動子の設計を行った.

ナノメートルオーダの3次元構造物の動的機械特性の計測
教授 川勝 英樹
10nmオーダの3次元構造物の固有振動数や振動のQ値を光学的方法により計測する方法の研究を行っている.現在100MHz,10pmの計測が可能で,現在,1GHzまでの計測を計画している.

ナノメートルオーダの3次元構造物の特性評価と応用
教授 川勝 英樹
ナノメートルオーダの機械振動子などの. 3次元構造物の機械・電気特性の測定と. その応用の研究を行っている. そのために. 走査型電子顕微鏡内にマウントする走査型プローブ顕微鏡を実現している.

ナノメートルオーダの機械振動子による質量と場の計測
教授 川勝 英樹
サブミクロンの機械振動子を作製し,それをAFMの探針に用いて力や質量の検出を行う.現在,大きさ2ミクロン,バネ定数10N/m程度,固有振動数40MHz,Q値8000のものを作製している.計測には,高真空用ヘテロダインレーザドップラー振動計を組み込んだAFMヘッドを用いた.

100万本の原子間力顕微鏡カンチレバーのパラレル検出の研究
教授 川勝 英樹
各カンチレバーと基板の構成するフィーゾー干渉計マイクロキャビティの輝度をCCDカメラ等の受像器に導くことにより,各カンチレバーの変位や振幅を計測する研究を行っている.液中応用を目的に,倒立顕微鏡にカンチレバーアレーと光学顕微鏡,干渉計を組み込んだ.

結晶格子を基準としたリニアエンコーダ
教授 川勝 英樹
走査型トンネル顕微鏡や. 走査型力顕微鏡を用いて結晶の周期性を読み出してリニアエンコーダのスケールとして用いる研究を行っている. 大気中において黒鉛の結晶周期を反映した鋸波形を接触モードの走査型力顕微鏡により読み出しながら,同時に結晶を固定した試料台の変位をレーザー干渉計で測定したところ,レーザー半波長分の変位に対応する鋸波の数は,黒鉛の格子間隔から計算される数よりも3割多かった.この違いの主な要因は格子列の読み外しと考えている.幅を持った範囲を観察することにより,格子列の読み外しを検出・補正した上で,精度検証を行う予定である.

走査型力顕微鏡の探針の軌跡の計測
教授 川勝 英樹
本研究は走査型力顕微鏡探針のxyz空間内での動きを原子レベルの分解能で求めることを目的としている. 装置構成としては. 光てこ2個を用いてカンチレバーの異なる2点での傾きを求めた. その結果. 探針の試料面内方向の変位と法線方向の変位を分離することが可能となり. より正確な探針の軌跡を求めることが可能となった. この測定法は原子レベルの摩擦現象を可視化するのに有効であると伴に. 走査型力顕微鏡を用いた形状計測の精度向上に役立つものである.

走査型力顕微鏡のカンチレバーのねじれ固有振動の自励を用いた探針の面内位置変調と,それによる散逸のマッピング
教授 川勝 英樹
走査型力顕微鏡のカンチレバーのねじれ振動を自励により励起し,それにより探針の面内位置変調を実現した.一定の加振力でねじれ振動を励起し,ねじれ量を検出することにより,試料の場所によるダンピングを検出した.ねじれの自励を実現したことにより,固定周波数励起による,コントラストの反転等の問題点が解消された.

結晶格子を基準とした位置決め
教授 川勝 英樹
結晶格子の規則正しい原子のならびを走査型トンネル顕微鏡の探針でサーボトラッキングすることによって. 結晶構造を2次元的な動きとして取り出し. xyステージの位置決め制御に用いることが可能となる. 現在. ミクロンオーダの範囲での変位制御を目指している.

「マイクロメカトロニクス国際研究センターの項目を参照」
教授 増沢 隆久

Hole Area Modulation 法による3Dマイクロ加工
教授 増沢 隆久[代表者],藤野 正俊
マスクパターンに加工深さ情報を入れ込んで,単純な操作により三次元形状のマイクロ加工が行える新しい手法,Hole Area Modulation (HAM) 法を考案し,エキシマレーザによる方法と,化学エッチングによる方法の開発を進めている.

生体細胞を操作,計測するポリマーマイクロプローブ製作に関する研究
助教授 金 範兌代表者], 教授 藤田 博之, 教授 コラール ドミニク, フランスCNRS-IEMN ブシャイオ リオネル, 大学院学生 趙 永学
マイクロ流体構造の基板上に構築した,電極を持つポリマーのマイクロプローブアレーを製作し,バイモルフ式熱膨張の駆動により自己位置制御を行い単一細胞の操作と捕捉手法を確立し,生体細胞を計測( 電気的・物理的)するマイクロデバイスの設計や製作に関する研究を行う.,構造の駆動条件を確認し,マイクロカンチレバーの作動の数値解析を行い,実際そのセンサアレイの駆動と変位,温度分布などを調べた.

単一細胞の電気及び物理的特性を測るMEMSデバイスの開発に関する研究
助教授 金 範兌代表者], 教授 藤田 博之, 助教授 藤井 輝夫, 助教授 酒井 康行, 大学院学生 趙 永学,山本 貴富喜
単一細胞(赤血球)の変形と電気的特性の関係について調べる.そのために細胞の濾過用のマイクロチャンネルと単一細胞の電気的特性の測定用のツインマイクロカンチレバーアレイを持つ新しいバイオMEMSデバイスを開発した.

ヒト臨床応用のためのバイオ人工肝臓システムの開発
助教授 酒井 康行,教授(東大医)幕内雅敏[代表者],助手(東大医)成瀬勝俊
実際のヒト臨床応用に耐え得るような高機能かつ管理の容易なバイオ人工肝臓システムの開発に関する研究を行っている.前臨床試験として,ポリエステル不織布充填型バイオリアクターと血しょう分離器・酸素冨化器などからなるバイオリアクターシステムを構築し,肝不全ブタ・イヌ・サル等の灌流治療実績を積み重ねている.

新陳代謝可能な細胞集積型材料システムの開発
助教授 酒井 康行, 大学院学生(山口猛研) 岡島 周平, 助教授(東大) 山口 猛央[代表者]
バイオリアクターやバイオ人工臓器などの人工材料と,生体内の決定的な違いは新陳代謝が不可能なことであり,細胞死を起こすと,外に漏れ出した炎症性物質が周辺に傷害を及ぼし,組織レベルの炎症が起きて長期使用が困難となっている.そこで,本研究では膜上に細胞を培養し,細胞死という情報を膜界面が認識することによって選択的に炎症部を排除する新陳代謝が可能なシステムを考案した.排除された空間は,細胞が増殖することによって自己修復する,自己修復型細胞集積材料システムである.新規材料として非常に有用性が高いと考え,研究を進めている.

マイクロパターン技術による保存可能な機能的プロテインチップの開発
助教授 金 範兌代表者], 助教授 白樫 了, 助教授 竹内 昌治, 助教授 野地 博行
本研究では,今後のプロテインチップ開発に不可欠な「生理活性を長期間維持したままタンパク質を基板上にマイクロパターニングする技術」を開発することを目標とする.

層流を用いた電気鍍金法によるマイクロ構造物の製作
助教授 金 範兌代表者],マイクロメカトロニクス国際研究センター
マイクロ水流と電気めっき法を融合さ,マイクロチューブ,またはナノパターニングを持つ金属薄膜といったマイクロ・ナノ構造物を製作・複製した.

機能性自己組織化単分子膜を用いたマイクロ・ナノコンタクトプリンティング
助教授 金 範
最近, サブマイクロメータースケールでのパターニングは, マイクロ電子回路, デジタル記憶媒体, 集積化マイクロ・ナノシステム, バイオ・有機材料デバイス等の数多くの応用にとって重要である.本研究は, 機能性自己組織化単分子膜(Self-assembled Monolayer: SAM) をサブマイクロメータースケールでパターニングするための,新しいマイクロ・ナノコンタクトプリンティング法を開発する.

機能性自己組織化単分子膜を用いた新しいナノパターン,ナノ構造の製作に関する研究
助教授 金 範
本研究の目的は,高い装置などを使えずにより簡単な方法で機能性自己組織化単分子膜(Self-assembledMonolayer:SAM) をサブマイクロメータースケールでパターニングする新しい方法を提案し,その方法を用いてナノ構造を製作,さらにナノ機構自体(例え,ナノカンチレバー)をツールとして各種の生体蛋白分子らの結合や反応を直接観察できるバイオセンサーを製作することである.

シャドウマスクを用いた多機能マイクロパターニング装置の開発
助教授 金 範兌代表者], 教授 藤田 博之,マイクロメカトロニクス国際研究センター
従来のリソグラフィ法においてプロセスの複雑さ,材料の選択性等の観点から見るとシャドーウマスクを用いた直接パターンする方法は優れている.マイクロマシン加工を応用した多機能パターンの装置の製作に関するもので,MEMS 技術を用いた微細シャドウマスクと多機能噴射システムの設計と製作に関する技術開発を行う.

静電スプレーによるタンパク質薄膜とSU8 カンチレバーを用いた新しいバイオセンサー
助教授 金 範兌代表者], 教授(東大) 樋口 俊郎, 研究員(理研) 山形 豊, 大学院学生 金 俊元
タンパク質とそのリガンドの結合を測定するためにエレクトロスプレーデポジション(ESD) により形成されたタンパク質薄膜とSU8 で形成されたカンチレバーを融合した新たなバイオセンサーを提案する.本研究では感度向上のためSU-8 ポリマーからなる柔らかいカンチレバーを用い,更にESD 法による多孔性の厚いタンパク質膜の形成とその活性化の評価を行った.

膜タンパク質チップ
助教授 竹内 昌治[代表者],鈴木 宏明, 助教授 野地 博行
マイクロ・ナノ加工技術を利用した膜たんぱく質の高効率機能解析のためのマイクロチップの研究

タンパク質のマイクロパターニング
助教授 竹内 昌治[代表者],鈴木 宏明, 民間等との共同研究員 熱田京子
プラスチックフィルムによるたんぱく質のパターニング法の研究

フレキシブル神経インターフェース
助教授 竹内 昌治[代表者], 特任講師(東大) 鈴木隆文, 産学官連携研究員 ドミニクジグラー
低侵襲を実現する微軟微小電極を作成し,人工心臓などの制御性を向上させる研究

リポソームハンドリングシステム
助教授 竹内 昌治
脂質二重膜で構成されたマイクロカプセルを製作し,マイクロ流体デバイス内でハンドリングし,マイクロ生化学リアクタなどへ応用する研究

細胞融合システム
助教授 竹内 昌治
マイクロ流体デバイス内で,細胞を固定し,リポソームなどを電気融合させることで,人工物や生体分子を細胞内へ効率よく導入するための研究

人工膜作成マイクロデバイス
助教授 竹内 昌治
微細加工により製作されたデバイス中で,平面や球形の脂質2重膜を効率よく安定して再構成するためのデバイスの研究

分子モータの機能的パターニング
助教授 竹内 昌治
微小管,キネシン,ATP合成酵素などの生体分子モータを基板上へ効率よく微細パターンし,制御する研究

液滴反応デバイス
助教授 竹内 昌治
マイクロチップ内で,微少量の液体をハンドリングするための研究

MEMSとフォトニック結晶の融合
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之, 教授 荒川 泰彦, 講師 岩本 敏, 大学院学生 肥後 昭男
フォトニック結晶導波路上にMEMSデバイスを集積化して,超微細な光変調器を製作する.

静電アクチュエータの設計に関する研究
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之, 技官 高橋 巧也, 大学院学生 肥後 昭男, 大学院学生 山下 清隆, 大学院学生 山内 木綿子, 大学院学生 高橋 一浩
シリコンマイクロマシニング技術を用いて静電アクチュエータを設計する際に重要となるプロセスウィンドウについて理論的に考察する静電アクチュエータの設計に関する研究

高電圧回路とMEMSの集積化に関する研究
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之, 大学院学生 高橋 一浩
MEMSアクチュエータとそれを駆動する高耐圧ドライバ回路をシリコン基板にモノリシック集積化する技術を研究する.

静電駆動型マイクロレンズスキャナに関する研究
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之, 大学院学生 高橋 一浩,Ho Nam KWON
シリコン製の微小なレンズをマイクロアクチュエータで駆動して赤外光の偏向角度を制御し,光ファイバスイッチに応用する.

光照射による静電アクチュエータの駆動原理に関する研究
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之, 学振博士研究員 角嶋 邦之, 大学院学生 肥後 昭男, 大学院学生 山内 木綿子
静電アクチュエータとフォトダイオードをシリコン基板上に集積化して,光照射によってアクチュエータの動作を制御する.

静電駆動型可変光アッテネータ
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之, サンテック株式会社 諫本 圭司
波長多重光ファイバ通信用に多用される可変光減衰器をシリコンマイクロマシニング技術を用いて製作し,その実用化に成功した.

櫛歯型静電アクチュエータの安定化に関する研究
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之, 光伸光学工業株式会社 山野井 俊雄, 光伸光学工業株式会社 小尾 浩志
高電圧印加時でも横方向プルイン不安定を生じない櫛歯型静電アクチュエータの電極パターンに関する研究を行った.

圧電薄膜アクチュエータの光学応用
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之, スタンレー電気株式会社 谷 雅直
酸化亜鉛圧電薄膜をアクチュエータ駆動源に用いた光スキャナをマイクロマシニング技術で製作し,プロジェクション型のディスプレーに応用する研究を行った.

MEMS技術の高周波デバイス応用
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之, ヒロセ電機株式会社 飛騨 浩平
マイクロ可動構造をシリコンマイクロマシニング技術を用いて製作し,それらを高周波導波路スイッチや周波数可変フィルタに応用する研究を行った.

赤外線天文台望遠鏡用のマイクロシャッタアレイ
助教授 年吉 洋[代表者], 技官 高橋 巧也,東京大学理学部天文センター
赤外分光を行う天文台望遠鏡の時間利用効率を高めるため,一度に数十個の星のスペクトルを観測できるように,マイクロマシニング技術を用いて可動シャッタアレイを製作している

真空マイクロエレクトロニクスとMEMSの融合
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之, 大学院学生 山下 清隆, 学振外国人特別研究員 Winston SUN
微小な真空管をMEMS技術によって製作し,高周波通信機器用の周波数フィルタなどに応用する.

マイクロメカニル振動ジャイロの製作
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之, 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部宇宙探査工学研究系 三田 信
航空宇宙慣性航法用の高精度ジャイロスコープをマイクロメカニカル振動子として製作する方法について検討した.

マイクロメカニカル乱数発生器
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之, 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部宇宙探査工学研究系 助手 三田 信
静電アクチュエータのプルイン不安定性現象を利用して,予測不可能な機械的動作から乱数を発生する機構を開発する.

マイクロメカニカルローバー
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之, 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部宇宙探査工学研究系 助手 三田 信
シリコン静電アクチュエータを利用して,2次元平面上で自走する微小な機械構造を製作した.

都市基盤安全工学国際研究センター(ICUS/INCEDE)

補修を行ったコンクリート構造物の耐久性評価に関する研究
教授 魚本 健人[代表者], 助教授 岸 利治, 講師 加藤 佳孝,民間等共同研究員伊藤正憲 斉藤仁 渡部正, 元売正美 竹田宣典 ,平間昭信 河原崎広 伊藤学, 深津章文 松田敏,森本丈太郎 椎名貴快 弘中義昭, 小川彰一 槇島修,宇野祐一 里隆幸 北澤英宏, 榊原弘幸 戸田勝哉,技術官 星野富夫,
劣化した鉄筋コンクリート構造物を断面修復材によって補修する場合,補修材料の耐久性に関わる要求品質が明らかでなく,使用される材料や施工方法によって耐久性がまちまちである.そのため,特定の材料や施工方法によって補修を行った場合に,補修した構造物の耐久性を予測することができないのが現状である.そこで,補修した鉄筋コンクリート構造物の耐久性を評価することを目的として,断面修復工法を対象に,補修材料の耐久性を明確にし,施工方法が耐久性に与える影響についても明らかにする.

コンクリート構造物の次世代型非接触・非破壊検査手法に関する調査研究
教授 魚本 健人[代表者], 講師 加藤 佳孝,魚本研 大学院生 金田尚志, 加藤研 研究実習生 小根澤淳志
これまでにも,超音波,AE法,レーダ法など様々な非破壊検査が,構造物の現状の性能を把握するツールとして用いられてきた.しかし,提案されている手法のほとんどがひび割れ,内部空洞などに代表される欠陥検知であり,コンクリート構造物の耐久性能の低下を予測する情報としては不足しているのが現状である.これまでは,情報の補完のために局部破壊検査を実施している.局部破壊検査は,コンクリートの現状を精度良く評価することはできるが,あくまでも局部的な情報であるため構造物全体の性能を評価するには多大な労力を必要とする.このような現状に対して,本研究では鉄筋コンクリート構造物の代表的な劣化現象である鋼材腐食の支配因子である塩害・中性化に着目し,検査の効率性を重要視した非接触かつ非破壊で検査する新たな手法を確立することを目的としている.

コンクリート橋のモニタリングに関する研究
教授 魚本 健人[代表者], 講師 加藤 佳孝, 受託研究員(魚本研) 恒國光義, 大学院学生(魚本研) 岡崎慎一郎, 博士研究員(岸研) Phan Quoc Hou Duy
コンクリート橋のモニタリングによる維持管理の高度化および効率化をはかるため,各種センサーを搭載した実橋のモニタリングを実施している.上部工のたわみ,変形,振動等をレーダー,光ファイバー,加速度計等で計測すると同時に,モデルに基づいた限界値との対比から安全性を照査する手法を開発している.

個別要素法を用いたコンクリート等輸送装置の性能評価に関する研究
教授 魚本 健人[代表者], 講師 加藤 佳孝, 魚本研 大学院生 奥地 美涼
現在,建設現場におけるコンクリートや土砂の輸送は,ベルトコンベヤやダンプトラック等で行われている.しかし,ベルトコンベヤは傾斜角度に限界があり,またダンプトラックでは迂回する道路が必要となり,いずれの工法も設備規模が大きくなることや,コスト,自然環境面で問題があることが指摘されている.この様な現状に対して,共同研究組織は急傾斜地でのコンクリート輸送を可能となる装置を開発し,実証実験によってその有効性を確認している.しかし,実証実験を基礎としているため,必ずしも施工性能の評価が十分でなく,検証した範囲内での性能保証しかできないのが現状である.本共同研究では,この実証実験結果を活用し個別要素法を用いた数値解析により試験装置の施工状況を表現するとともに,施工性能の評価(適用限界等)を解析的に検討するものである.前述したように,本装置は建設現場における自然環境を破壊することなく,コンクリートや土砂を効率的に輸送することが可能であり,極めて有効な輸送手段である.

マルチスペクトル法のコンクリート構造物劣化調査への応用
教授 魚本 健人[代表者], 魚本研 大学院生 金田尚志
コンクリート構造物の劣化調査は一般に,外観調査等の目視点検,コア等を採取し,コンクリート中の成分を測定する方法,コンクリートのかぶりをはつり,内部の鋼材の腐食状況の確認,自然電位法による腐食の推定等が行われている.また,一部破壊型調査ではなく,各手法による非破壊検査も行われている.本研究では,ハイパースペクトルリモートセンシングの技術を用い,非接触でコンクリート表面の劣化因子物質の検出を試みる.本手法の適用により,短時間,大断面の診断が可能になり,調査費用の低減が期待できると考えられる.

コンクリートの品質に対する化学混和剤の作用効果に関する研究
教授 魚本 健人[代表者], 共同研究員 杉山知巳
コンクリートの品質,特に硬化コンクリートの耐久性を論じうる上で,使用材料や配合条件がコンクリートの空隙構造に与える影響を検討することは非常に重要である.また,近年コンクリート製造に欠かせない材料の一つになっている化学混和剤に関しては,空隙構造に対する作用効果が明確になっていない. そこで,化学混和剤の持つ種々の特性が,硬化コンクリートに及ぼす影響を明らかにすることを目的とし,様々な化学混和剤,中でも最も頻繁に用いられている減水剤系の混和剤を中心に,減水性,凝結遅延性,空気連行性等の特性が,硬化体の空隙構造形成過程に与える影響を明確にする

コンクリート構造物の常時モニタリング手法の開発 (継続)
教授 魚本 健人[代表者], 魚本研 大学院生 岡崎慎一郎
日本の社会基盤整備における重要な課題は,供用されている既存構造物をいかに効率よく維持管理を行うことである.今後,人口減少期に入り建設分野の技術者も減少していくと考えられるが,建設後数10年が経過し補修,補強を必要とする構造物が増加していくため,従来の技術者による点検では限界がある.高い信頼性を有する常時モニタリング手法の開発がこの問題を解決する一歩である.光ファイバー網等の利用により,大量のデータを遠隔地にリアルタイムで転送できるようになり,常時モニタリングの環境構築は容易になってきた.本研究ではコンクリート構造物を対象とし,高精度,高耐久性,低コストのセンサー,常時モニタリング手法について検討する.

高炉セメントを用いた鉄筋コンクリートの腐食性状に関する研究
教授 魚本 健人[代表者], 魚本研 大学院生 パカワット サンチャラン
アルカリ骨材反応などを防止するために高炉セメントが多用されるようになったが,高炉セメントは耐塩化物イオンに対しては効果があるもののアルカリ性が低いため鉄筋の腐食が懸念されている.本研究は,塩分浸透と中性化が進行した場合,コンクリート中の鉄筋腐食にどのような影響を及ぼすかを明らかにし,より望ましいコンクリート構造物とする事を目的として実施した.

コンクリート構造物の耐凍結融解性に関する研究
教授 魚本 健人[代表者], 魚本研 大学院生 ビシュヌイ シャシャンク
寒冷地では凍結融解によりコンクリートが著しく劣化するが,断面寸法等が異なると劣化状況が大きく変化する.本研究ではコンピュータシュミレーションおよぎ実験からそのメカニズムを明らかにすることを目的として実施した.

アルカリ骨材反応を生じたコンクリート構造物の鉄筋破断に関する研究
教授 魚本 健人[代表者], 魚本研 技術官 西村次男
アルカリ骨材反応を生じたコンクリート橋脚等において鉄筋破断が報告されている.この原因として鉄筋の品質と曲げ加工時の塑性加工が問題と考えられる.脆性破壊現象がなぜ生じるかを明らかにし,その対策を考案することを目的とした研究である.

損傷を受けたエポキシ樹脂塗装鉄筋の耐久性に関する研究
教授 魚本 健人[代表者], 魚本研 技術官 星野富夫
エポキシ樹脂塗装鉄筋は塩害に対し高い耐久性を有しているが,塗膜が損傷を受けると耐久性が損なわれる.どの程度の損傷が問題になるかを明らかにするため,海洋暴露試験を実施し継続的な調査を行っている.

アジアにおけるメガシティ化の評価とその対策に関する研究
教授 魚本 健人[代表者], 教授 安岡 善文, 助教授 大岡 龍三, 講師 須崎 純一, (助手) 遠藤 貴宏,落合 達也,青木 久,瀬戸島 政博,船橋 学,岡田 敬一,川村 哲也,中井 秀信,高田 励,中嶋 まどか,炭谷 稔
東京を始めとするアジア地域におけるメガシティが有する様々な問題点を評価する手法の開発を行い,それを用いたよりよい都市を創造するための対策について検討している.具体的には,都市が供給する生活品質と都市が地球環境に及ぼす負荷について,それぞれを評価する環境指標を構築し,それにより様々な都市のもつ問題点を抽出するとともに,具体的な対策を提案している.

大規模災害に対する防災対策の研究
教授 魚本 健人[代表者], 教授 目黒 公郎, 客員教授 天野 玲子, 助手 吉村 美保,二木 重博,今村 遼平,三富 創,加藤 康広,深沢 哲也,山崎 淳,高橋 郁夫,平間 敏彦,田中 芳行,松本 由美子,高田 励,貫井 泰,福島 誠一郎,山田 哲也
地震や台風などの自然災害は都市基盤の安全性を脅かす驚異の一つである.このような大災害に対する減災の観点から,災害のシミュレーション等に活用可能なデータベースの構築に向けた検討,都市における住宅の耐震補強促進のためのビジネスモデルの作成と検証を行っている.

老朽化構造物の調査
教授 魚本 健人[代表者], 講師 加藤 佳孝,小林 公一,滝川 正則,菅野 安男,天野 勲,岡本 卓慈,羅 黄順,藤田 久和,菊池 禎二,石田 辰英,山根 立行 ,寺田 晃,佐藤 登,柴 慶治,栗田 守朗,安藤 慎一郎,和田 直也,肥田 研一,山本 郁夫,玉置 一清
老朽化構造物の効果的・効率的な維持管理方法の確立を目指し,実行力のある維持管理カルテの作成を実施している.

地下の地震断層変位が地表地盤に与える影響度評価
教授 目黒 公郎[代表者], 大学院生 WORAKANCHAN Kawin
1999年に発生したトルコ・コジャエリ地震や台湾・集集地震では, 地震断層運動による表層地盤の変状が, 多くの土木構造物や建築構造物に甚大な被害を与えた. 本研究は, 破壊現象を高精度に追跡できるAEM(Applied Element Method)を用いたシミュレーションから, 地下の断層運動が表層地盤に与える影響を分析するものである.

地震災害環境のユニバーサルシミュレータの開発
教授 目黒 公郎
本研究の目的は「自分の日常生活を軸として」,地震発生時から,時間の経過に伴って,自分の周辺に起こる出来事を具体的にイメージできる能力を身につけるためのツールの開発と環境の整備である.最終的には,地震までの時間が与えられた場合に,何をどうすれば被害の最小化が図られるかが個人ベースで認識される.地震災害に関係する物理現象から社会現象にいたるまでの一連の現象をコンピュータシミュレーションすることをめざしている.前者の物理現象編は,AEMやDEMなどの構造数値解析手法と避難シミュレーションを中心的なツールとして,後半の社会現象編は,災害イマジネーションツール(目黒メソッド)や次世代型防災マニュアルを主なツールとしている.

衝突や火災による構造物の崩壊過程のシミュレーション解析
教授 目黒 公郎[代表者], 博士研究員 ELKHOLY Said Abd Elfattah Said
米国同時多発テロ事件では,ニューヨーク市のマンハッタンにある110階建てのWTCビル2棟が旅客機の衝突とそれを原因とする炎上で,完全に崩壊した.この崩壊で消火活動及び避難誘導をしていた消防士を含め,2800余の尊い人命が奪われた.この事件は,高層ビルの崩壊過程の解明の重要性を強く認識させた.本研究は衝突や火災による高層建築物の破壊挙動を,時間的・空間的な広がりを考慮した上で再現するシミュレーション手法を開発している.この手法とは,目黒研究室で開発した応用要素法(AEM)を大規模で複雑な部材断面を有する構造物に適用しても大幅な自由度の増大なしに解析を行えるように改良を加えたものである.そしてこの改良型AEMを用いて衝突や火災から高層ビルの完全崩壊を防ぐ対策を探っている.

構造物の地震時崩壊過程のシミュレーション解析
教授 目黒 公郎[代表者], 博士研究員 MAYORCA ARELLANO Julisa Paola,ELKHOLY Said Abd Elfattah Said, 大学院学生 伊東 大輔
平成7年1月17日の兵庫県南部地震は, 地震工学の先進国と言えども構造物の崩壊によって多数の犠牲者が発生しうることを明らかにした. 本研究は地震による人的被害を軽減するために, 地震時の構造物の破壊挙動を忠実に(時間的・空間的な広がりを考慮して)再現するシミュレーション手法の研究を進めている. すなわち, 破壊前の状態から徐々に破壊が進行し, やがて完全に崩壊してしまうまでの過程を統一的に解析できる手法を開発し, 様々な媒質や構造物の破壊解析を行っている. そして解析結果と実際の地震被害の比較による被害発生の原因究明と, コンピュータアニメーションによる地震被害の再現を試みている.

非連続体の挙動シミュレーションに関する研究
教授 目黒 公郎[代表者], 大学院学生 織田 浩平
少し離れた位置からは「連続体の挙動」のように見えるが, 実はばらばらなある大きさの運動単位が, 適当な約束(必ずしも物理的な法則のみではない)に従って, 全体として挙動している現象が多く見られる. 砂時計の砂の運動や朝夕の通勤客, 自動車の流れなどはその典型である. これらの「挙動」は, 連続体の運動として近似できる場合もあるが, 適当な大きさの非連続な物体の集合体の挙動として扱わないと, その現象を適切に理解することはできないことも多い. 本研究室では物理的な約束に支配される現象の代表として, 「土石流」や「砂地盤の液状化現象」, 「地震時の家具の動的挙動」を非連続体解析手法を用いてシミュレーションしメカニズムを研究している. 避難行動など人間に絡んだ挙動については, 「災害時の避難行動特性のシミュレーションと空間の安全性評価」を参照されたい.

地域特性と時間的要因を考慮した停電の都市生活への影響波及に関する研究
教授 目黒 公郎[代表者], 大学院学生 山口 紀行,飯田 亮一
近年, 都市生活の電力への依存が高まる一方で, 自然災害や事故などの様々な原因による停電被害が発生し, 都市機能に大きな影響を及ぼしている. 停電の影響は, 電力供給システムの構造から, 配電所の供給エリアを単位として相互に影響し合い, しかもエリアごとの「電力需要状況・住民特性・産業構成などの地域特性」「停電の原因となる災害の規模」「停電発生時刻や継続時間などの停電特性」等によって, 大きく変化する. そこで本研究では, 配電所の供給エリアを単位とした地域特性と, 停電の発生時刻・継続時間を考慮した都市生活への停電の影響評価法の研究を進めている. 今年度は, 地理情報システムを用いて, 東京23区の314箇所の配電用変電所の電力需要と地域特性のデータベースの構築とその分析を行い, 供給エリア内の大口需要家の影響を含めた考慮した地域特性と, 停電の発生時刻・継続時間を考慮した停電の影響評価モデルの構築を進めている.

電力供給量の変化を用いた地震被害状況と復旧状況の把握に関する研究
教授 目黒 公郎[代表者], 大学院学生 山口 紀行,飯田 亮一
地震直後の被災地域の特定と被害量の把握は, 防災関連機関の初動を決定する上で極めて重要である. 本研究は地震前後の電力供給データを用いて, 地域ごとの被害推定を試みるものである. すなわち, 配電用変電所の供給エリアを地域単位として, 地震前の電力需要から地域特性を把握するとともに, 地震後の電力供給量の落ち込み具合から供給エリア内の建物被害を推定する手法を提案するとともに, 両者の関係について分析している. 分析結果からは, 地震後の電力供給量の低下は地域の建物被害と高い相関を持つことが確認されるとともに, 提案手法が, リアルタイム評価が可能, 新たな設備投資がほとんど不要, 天候や時刻に左右されない観測が可能, など有利な点を多く有し, 実用に向けて大きな可能性があることが示されている.

効果的な地震対策支援システムの開発に関する研究
教授 目黒 公郎[代表者], 助手 吉村 美保, 大学院学生 近藤 伸也, 客員教授 高橋 健文
兵庫県南部地震以降, 「雨後の竹の子」的に全国の自治体を中心として様々な「地震防災システム」が生まれた. しかしこれらの多くは, 既存のシステムを(ブラックボックス的に?)違う場所に適用しただけの早期地震被害予測システムであり, 地域の地震防災力を高めることに具体的に貢献するとは思えないものもである. このような状況を踏まえ, 本研究では効果的で投資効果の高い地震対策を講じるための地震対策支援システムの開発を進めている. 地震防災システムが持つべき機能の整理に基づいて, 地域の弱点の抽出や異なる事前対策に対する投資効果の評価が可能であるなどの機能を有する「最適事前対策立案支援ツール」の開発を行っている.

実効力のある次世代型防災マニュアルの開発に関する研究
教授 目黒 公郎[代表者],大学院学生 近藤 伸也, 客員教授 林 省吾, 客員教授 高橋 健文
本研究は地域や組織の防災ポテンシャルを具体的に向上させる機能を持つマニュアルを開発するものである. 具体的には, 現状のマニュアルの性能分析機能, 目的別ユーザ別編集機能, 当事者マニュアル作成支援機能などを有したマニュアルである. このマニュアルによって, 災害発生以前に地域や組織が有する潜在的危険性の洗い出し, その回避法, 事前対策の効果の評価などが可能となる. このコンセプトを用いた防災マニュアルの作成を,内閣府,首都圏の自治体,東京大学生産技術研究所を対象として進めている.

組積造構造物の経済性を考慮した効果的補強手法の開発
教授 目黒 公郎[代表者], 博士研究員 Mayorca Arellano Julisa Paola, 大学院学生 NAVARATNARAJAH Sathiparan,GURAGAIN Ramesh
世界の地震被害による犠牲者の多くは,耐震性の低い組積造構造物の崩壊によって生じている.本研究の目的は,耐震性の低い既存の組積造構造物を,それぞれの地域が持つ技術と材料を用いて,しかも安く耐震化できる手法を開発することである.防災の問題では,「先進国の材料と技術を使って補強すれば大丈夫」と言ったところで何ら問題解決にはならないためだ.一つの目的は,上記のような工法や補強法を講じた構造物とそうでない構造物の地震時の被害の差を分かりやすく示すシミュレータの開発であり,建物の耐震化の重要性を一般の人々に分かりやすく理解してもらうための環境を整備するためのものである.

既存不適格構造物の耐震改修を推進させる制度/システムの研究
教授 目黒 公郎[代表者], 助手 吉村 美保, 客員教授 林 省吾, 客員教授 天野 玲子, 客員教授 高橋 健文
我が国の地震防災上の最重要課題は,膨大な数の既存不適格構造物の耐震補強(改修)対策が一向に進展していないことである.既存不適格建物とは,最新の耐震基準で設計/建設されていない耐震性に劣る建物であり,これらが地震発生時に甚大な被害を受け,多くの人的・物的被害を生じさせるとともに,その後の様々な2次的,間接的な被害の本質的な原因になる.このような重要課題が解決されない大きな理由は,震補強法としての技術的な問題と言うよりは,市民の耐震改修の重要性の認識度の低さと,耐震補強を進めるインセンティブを持ってもらう仕組みがないことによる.本研究は,行政と市民の両者の視点から見て耐震補強をすることが有利な制度,実効性の高い制度を提案するものである.

途上国の地震危険度評価手法の開発
教授 目黒 公郎[代表者], 助手 吉村 美保, 博士研究員 Mayorca Arellano Julisa Paola
世界の地震被害による犠牲者の多くは,途上国に集中している.この大きな原因の1つに,政府や中央省庁の高官達をはじめとして,多くの人々が地域の地震危険度を十分に把握していないことが挙げられる.この研究は,そのような問題を解決するために,簡便な方法で対象地域の地震危険度,予想される被害状況,経済的なインパクトなどを評価する手法を構築するものである.イランやトルコ,ミャンマーやバングラデシュなどを対象として,研究を進めている.

リモートセンシングによる環境・災害評価手法の研究
教授 安岡 善文[代表者], 助手 遠藤 貴宏, 博士研究員 Tran Hung,Jan Kucera,Baruah Pranab Jyoti,Guo Tao,竹内 渉, 大学院学生 大吉 慶,佐々木 学,山岸 陽介,赤塚 慎,山路 毅彦
人工衛星からのリモートセンシングデータを利用して,地表面の被覆状況,植生分布などを計測し,都市・地域スケールから大陸・地球スケールまでを対象として,環境・災害に関する各種のパラメータを評価する手法を開発する.2004年においては,既設のNOAA/AVHRR,TERRA/MODISの受信システムに加えて,新たに地球観測衛星AQUA/MODISデータの受信・処理設備を設置し,東アジアの衛星観測ネットワークを構築した.さらに,これらのデータを利用して,シベリア地域の湿原,アジアの水田からのメタン発生量の推定,シベリア森林地域における火災による温暖化ガス放出量の評価等を行った.また,都市スケールでは高解像度衛星データ等を利用した都市の3次元構造の計測,アジア諸都市のヒートアイランドの評価等を行った.

ハイパースペクトル計測による生態系パラメータの計測手法の開発
教授 安岡 善文[代表者], 助手 遠藤 貴宏, 大学院学生 高橋 俊守
陸域生態系による光合成能や二酸化炭素の吸収・放出量を評価することを目的として,高い分解能で計測対象物のスペクトル特性(分光特性)を計測するハイパースペクトル計測により,植物の光合成速度,クロロフィル,リグニン,セルロース,水分含有量などの生物・生理パラメータを計測する手法を開発する.2004年は,実験室レベル,フィールドレベルで,植生の光合成速度,クロロフィル量等を画像観測するハイパースペクトルイメジャーを開発し,植物の機能パラメータを評価した.

ハイパースペクトル計測によるコンクリート劣化の非破壊計測手法の開発
教授 安岡 善文[代表者], 助手 遠藤 貴宏, 大学院学生 中島 貴司
トンネルや高架橋のコンクリート劣化度を評価することを目的として,高い分解能で計測対象物のスペクトル特性(分光特性)を計測するハイパースペクトル計測により,中性化,塩化,硫化などによるコンクリート劣化を非破壊で計測する手法を開発する.2004年は,実験室レベルで,中性化,塩化によるコンクリートの劣化深さやコンクリート塗膜の状態を計測する手法を開発した.さらに,これらの劣化をコンクリートの汚れなどによる変化と判別する手法の検討を行った.

水幕式火災防災システムの開発
客員教授 天野 玲子
都市再生を目指した大深度地下利用法の施行に伴い,地下空間の利用の可能性が高まっている.地下空間を利用するに際しては,火災防災システムを確立することが求められている.このため,水幕による火災防災システムを開発する.

都市温暖化予測及び対策手法の開発
客員教授 天野 玲子
近年の,地球温暖化現象に加えて,都市のヒートアイランド現象が都市環境へ及ぼす影響が懸念されている.このため,都市温暖化予測手法を開発して将来予測を行うとともに,その将来の都市温暖化への対策手法も併せて開発する.

屋外温熱環境の最適設計手法に関する研究(継続)
助教授 大岡 龍三[代表者], 教授 加藤 信介,大学院学生 陳宏
屋外放射解析をCFD解析に基づき,屋外の温熱環境の最適設計を行う手法について検討を行う.本年度は景観,温熱環境,経済などの要因を含めて,樹木配置に関する多目的最適化問題について検討した.

基礎杭利用による地中熱空調システムの実用化に関する研究(継続)
助教授 大岡 龍三[代表者], 教授 加藤 信介,協力研究員 関根賢太郎, 大学院学生 黄錫鎬
基礎杭を利用した地中熱利用空調システムの実用化に向けて,実大実験装置などを用いて研究し,システムの有効性・省エネルギー性・環境負荷低減効果等の研究を行い,設計手法などを構築する.本年度は,事務所ビルでの空調運転を想定したヒートポンプの運転を行い,場所打ち杭を用いた地中熱利用空調システムの地中熱採熱量等の検討を行った.

都市のヒートアイランド緩和手法に関する研究(継続)
助教授 大岡 龍三[代表者], 教授 加藤 信介,助手 黄弘,大学院学生 川本陽一, 客員教授 瀬戸島 政博
メソスケールモデルと精緻なGISデータを利用した都市気候解析モデルを開発・利用し,各種ヒートアイランド緩和手法の効果について検討を行う.本年度は2020年度までの東京都区部の将来人口予測を基に同地区の建物延床面積の増加率を推定し,その結果から人工排熱量の増加を算出することにより,それが都市気候変化に及ぼす影響について検討した.

建物周辺の乱流構造に関する風洞模型実験と数値シミュレーションによる解析(継続)
助教授 大岡 龍三[代表者], 教授 加藤 信介,技術専門職員 高橋岳生,協力研究員 飯塚悟
建物周辺で発生する強風や乱れの構造に関して,風洞実験や数値シミュレーションにより検討している.建物のようなbluff body周りの複雑な流れ場を予測する場合,標準k-εモデルは種々の問題を有する.特に,レイノルズ応力等の渦粘性近似は流れ場によりしばしば大きな予測誤差の原因となる.本年度は,境界層流中に置かれた高層建物モデル周辺気流の解析にLK型をはじめ,各種のk-εモデルや応力方程式モデルによる解析を行い,その予測精度を比較,検討した.

火災煙流動数値解析手法の開発(継続)
助教授 大岡 龍三[代表者], 教授 加藤 信介, 助手 黄弘,研究員 林吉彦,大学院学生 蒋太峰
建築物,地下街,船舶等における火災時の煙流動の数値解析手法を開発している.本年度も昨年に引き続き,都市火災の伝搬要因の一つである火の粉飛散による飛び火現象の物理モデルを作成し,建物周辺の風の流れを再現するCFD解析と火の粉飛散を連成させて都市火災伝搬を解析した.特に,火の粉が完全な球状であると仮定した時の火の粉の粒子の流体力学直径を,実スケール火災風洞実験において生成された火の粉を対象として測定実験を行った.

東南アジアモンスーン地域の水文環境の変動と水資源への影響
助教授 沖 大幹[代表者], 助教授 鼎 信次郎, 助手 芳村 圭, 博士研究員 宮崎 真, 大学院学生 趙 在一
熱帯雨林気候から乾季のある熱帯気候までを覆うインドシナ半島を対象として, 当該地域のアジアモンスーンにおける役割を解明すること, および当該地域の降水と水資源の季節予報を向上させることを目的とし,タイに設置した100mの熱・エネルギー・二酸化炭素フラックス観測タワーを用いた観測,及び地表面過程のモデリングを中心に研究を進めている.

グローバルな水の間接消費(Virtual Water)の解明
助教授 沖 大幹
穀物生産や畜産,工業製品の生産には水資源が大量に消費される.それを輸入して日本国内で消費するということは,仮想的な水を輸入し間接的に他国の水資源を消費していることと同じである.この実態を解明するため,灌漑プロセスに基づく農業生産における水消費原単位推定,その結果を利用しつつ配合飼料等の割合を考慮して作製した畜産における水消費原単位,そして,工業統計に基づく工業用水の出荷額あたりの水消費原単位を定め,穀物,食肉,工業製品の主要品目について,もし日本において生産したとするならばどの程度の水資源が必要であったか,という間接消費の流れを抑えた.さらに今年度は,昨年度までと比較して,プロセスに立ち戻ることによって算定手法の精度の向上を行い,一つの確定した水の間接消費原単位データセットを構築した.続いて,世界各国における輸出入量,反収,生産量などのデータセットを基に,農業生産物のみが対象ではあるが,世界のVirtual Waterの国際フラックスと,その数十年間の経年変動を算定した.

全球土壌水分プロジェクトICC/DDCの構築
助教授 沖 大幹[代表者], 大学院学生 花崎 直太
本研究グループが中心となって進めている,同一の地表面気象状態において世界各研究機関の地表面過程モデルがどのように応答するのかといった特徴を抽出・比較するための全球土壌水分プロジェクト(GSWP)について,Web上において入力・出力データの品質管理及び比較検討用GUIを提供する相互比較センター(Inter-Comparison Center)及びデータダウンロードセンター(DDC)の構築を行った.現在, http://gswp2.tkl.iis.u-tokyo.ac.jp/GSWP2/において運用されており,プロジェクトメンバーを始め多数の研究者に利用されている.

グローバルな水資源アセスメント
助教授 沖 大幹[代表者], 助教授 鼎 信次郎, 大学院学生 花崎 直太, 博士研究員 Sirajul Islam, 博士研究員 沈 彦俊
世界の水危機が叫ばれているが,現在巷間に溢れている情報はほとんど欧米発信である.これに対し,日本独自のグローバルな水資源アセスメントをきちんと行なって世界に発信するべく研究を進めている.これまでは自然系のグローバルな河川流量シミュレーションのみが主流であったが,そこに人間活動の影響,特に貯水池操作の影響を入れた地球陸域水循環シミュレーションを行った.世界規模での灌漑用水需要のモデル化も進めているが,少々手法を変えても必ずインド付近の過剰推定が問題となることが分かりつつある.さらに,グローバル推定の検証として,タイやパキスタン,イランといった地域レベルでの詳細な水資源アセスメント検証を進めている.また,全球土壌水分推定プロジェクトの推進とともに利用可能となった複数の全球地表面過程モデルデータを用い,モデル平均的な地球水循環システムの全体像を描出した.

リアルタイム河川流量予測システムの構築に向けて
助教授 沖 大幹[代表者], 大学院学生 岡澤 毅, 大学院学生 花崎 直太
2004年は,洪水が多発した年であった.その被害を軽減することを目標に,信頼できる予報システムの構築を目指した.具体的には,現在活用されている日本域気象予報システムの出力データを用いて,尤もな地表面過程を考慮した上で降水流出を算出し,さらに高解像度日本域河川流路モデルを用いて河川流量を求めるシステムである.ここでのポイントは,日本域の全河川の流量が同時に予測されるということであり,そのようなシステムはかつて存在していなかった.本研究も,まだ過去の予測データを用いた検証段階ではあるが,まずまずの精度があることが確認されている.今後は,リアルタイム予報シミュレーションシステムの構築と,その情報提供システム・ポリシの構築を進めていく.

水の安定同位体比を用いた水循環過程の解明
助教授 沖 大幹[代表者], 技術官 小池 雅洋, 助手 芳村 圭, 大学院学生 石崎 安洋, 大学院学生 高垣 佳永子
水の安定同位体と呼ばれる重水素と重酸素を含む水分子(HDO,H2-18O)は,地球を循環するその水の経路と相変化の履歴の生気分情報が含まれている,とされている.本グループは,タイを中心とした東南アジア地域において降水同位体の観測ネットワークを構築し,その時間・空間変動が指し示すアジアモンスーンのメカニズムについて研究している.本年度は,観測ネットワークの拡充を図り,その数は12となった.また観測だけでなく,モデル開発も精力的に行われており,二次元同位体輸送モデル,同位体大気大循環モデル,及び同位体地表面過程モデルが並行して開発されている.それらを用いた予測結果と観測結果を比較することにより,モデルの性能や気象外力の精度を評価することが可能となった.特に,再解析気象データを二次元同位体輸送モデルを用いて評価したところ,アメリカの研究機関による気象データには,ヨーロッパ域を中心にして問題があることが判明した.

地球温暖化等気候変動下における水循環の変動
助教授 沖 大幹[代表者], 助教授 鼎 信次郎, 助手 芳村 圭, 大学院学生 山田 朋人, 大学院学生 小久保 武, 大学院学生 斎田 渉
複数の大循環モデルを用い,陸面状態を固定した数値実験を行うことによって,陸面が大気に及ぼす影響の大きい地域を抽出することに成功した.サヘル地域やアメリカ南西部といった,半乾燥地域がそれにあたり,そのような地域では,陸面状態の観測を強化することによって降水の予測可能性が上がることが考えられている.この結果は,Science誌に掲載された.また,現在の温暖化シミュレーションモデルに内在する時間・空間バイアスを除去した,より『現実的な』温暖化予測結果の抽出手法を構築した.具体的には観測データとシミュレーションデータの固有振動(EOF)パタンを様々な形で組み合わせることによって,例えば,観測に含まれる振幅の大きな年々変動が,シミュレーションによる将来の降水増加トレンドに加味される,というような結果が得られた.さらに,現在から将来に向けて大雨の頻度はどのように変化するのか,についても研究した.その結果,例えば東京については,平均降水量の若干の増加に加え,変動振幅の増大により,現在30年に一度の降水はそれよりも高頻度で訪れる,ということが分かった.

降水量時間・空間ダウンスケーリング手法の開発と極値統計への適用
助教授 沖 大幹[代表者], 助教授 鼎 信次郎, 大学院学生 Cusit Apirumanekul
近年,全球及び長期間での降水量データが入手可能であるが,例えば,洪水を引き起こす直接の原因となる年最大時間雨量などを求める際など,目的に応じてそれらの高解像度化を図る必要がある.本研究では,マルチフラクタル理論を用いた降水量データの時空間ダウンスケーリング手法の開発を行った.タイにおいて2.5度グリッド・5日単位スケールの降水量データのダウンスケールを試みたところ,現地での雨量観測データによる降水生起頻度と多くの地点において一致した結果が得られた.そのようして生成された現実的なピークを持つ時空間降水データを用いることにより,多くの災害の要因となる降水極値に関する知見が得られるようになった.

タイ,バンコクにおける破局的洪水リスク解析(2004-2005)(研究代表者:国連大学コア研究基金)
助教授 デュシュマンタ ダッタ
本プロジェクトでは,タイ,バンコク市を対象に,破局的な都市洪水による影響をリスク解析により明らかにすることにある.具体的には,最大可能降雨量によりもたらされる破局的な洪水のシミュレーションから,バンコクで最も洪水に対して脆弱な地域において現存の都市洪水リスク評価モデルを用いた洪水による社会経済的インパクトの評価までを対象としている.また,現存の社会経済状況下で破局的な洪水現象をシミュレーションするためにGISを活用した危険度マップが用意されている.

タイ,チャオプラヤ川流域における洪水予測と意思決定支援システム(2004-2006)(共同研究者,タイNECTEC研究プロジェクト助成金)
助教授 デュシュマンタ ダッタ
本プロジェクトの目的は,東京大学で開発された物理則に基づく分布型水循環モデルとAITで開発された氾濫原ハイドロダイナミックモデルを統合することにより,タイ,チャオプラヤ川流域のリアルタイム洪水予測と意思決定支援システムを構築することである.

南,南西アジアの海岸都市における気候変動に伴う洪水による社会経済的インパクトの評価(研究代表者,アメリカNSF,APNプロジェクト研究助成金)
助教授 デュシュマンタ ダッタ
本プロジェクトの目的は,ある考えられた気候変動と社会経済的シナリオ条件下での洪水特性を理解することにある.そのためには,現有のデータ,情報,結果を統合し,洪水挙動とそのインパクトをシミュレーションするためのツールを使い解析を行うことが必要である.本プロジェクトの対象は,バングラデシュ,インド,パキスタン,スリランカ,タイあるいはヴェトナムといった低地に位置する大都市に限定される.また,地方の人々の生活を改善するためのより良い意思決定ができる提案を行うことも目的のひとつである.

メコン川流域における物理則に基づく表面流モデルを用いた洪水氾濫モデルの開発(2003-2004)(研究代表者,NEWJECとの共同研究)
助教授 デュシュマンタ ダッタ
本研究プロジェクトの目的は,メコン川下流域の洪水氾濫シミュレーションのためのシステムを開発することにある.プロジェクトでは,物理則に基づく表面流モデルによる氾濫原解析に主眼を置いている.システムでは,統合化洪水警報システムを設計するために,飛行機,衛星あるいは数値気象予測モデルの統合化を目指して開発が進められている.

東京湾における統合生態系モデルのための河川分布モデルの統合化と河口域モデルの開発(2003-2004)(共同研究者,文部科学省科学研究費)
助教授 デュシュマンタ ダッタ
河川から東京湾への流入は,生態系システムの水質において重要な役割を演じているので,流量の正確な評価が重要なことは明らかである.本共同研究の目的は,東京大学で開発された分布型水循環モデル(DHM)を潮汐のための3次元海洋環境研究室モデル(MEL3D-tide)に統合することにある.

セメント硬化体の内部組織構造のモデル化
講師 加藤 佳孝
従来,コンクリートの内部組織構造の測定には水銀圧入式ポロシメータが用いられているが,様々な問題があるため真の情報をとらえることができない.そこで,ポロシメータの問題点に関する原理をモデル化し,数値解析することで,実際の内部組織構造の予測を行う

不均一性を考慮したコンクリート中の拡散現象のモデル化
講師 加藤 佳孝
コンクリートは,水,セメント,骨材などの大きさの異なる材料で構成されている.このため,その内部組織構造はきわめて複雑となる.結果として,コンクリート中の拡散現象の取り扱いも極めて難しくなる.本研究では,コンクリートを構成する材料の不均一性を考慮して,コンクリート中の塩化物イオンの拡散現象をモデル化することを目的としている.

不確実情報下における検査情報の価値評価の試み
講師 加藤 佳孝
膨大な社会資本ストックを抱える我が国においては,効率的に構造物の維持管理を行うことが必要不可欠である.本研究では,検査技術の活用により不確実情報を確実情報と変換した場合の効果を,定量的に評価することを試みている.さらに,提案する手法を用いることで,効果的な検査計画の策定を実現することを目指している.

局所的風況・降雨量予測を基にしたコンクリート構造物の劣化ポテンシャルMapの開発
講師 加藤 佳孝[代表者], 大学院学生(加藤佳研) 竹下直樹
コンクリート構造物の劣化速度は,コンクリート中の空隙水の存在・移動に大きく影響され,その空隙水の大部分が降雨によってもたらされている.既存の研究を概観すると,コンクリート自体の水分挙動に関する研究は多いが,境界条件にあたる環境作用を定量的に評価した研究事例は無い.本研究では,降雨・風向・風力・気温・湿度・形状・立地条件などの環境条件を基に,コンクリート構造物の局所的な境界条件を算定するモデルを開発し,最終的に水分供給と劣化速度の因果関係からコンクリート構造物の劣化ポテンシャルMapの開発を目指している.

セメント系材料の凝集構造の形成メカニズムの解明
講師 加藤 佳孝[代表者], 大学院学生(加藤佳研) Muraliev Djanybek
コンクリート構造物を適切に建造するためには,コンクリートのフレッシュ性状を適切に把握し,施工条件に合わせた配合設計を実施することが重要である.これまで,数多くの検討がなされてきてはいるが,根本的にトライアンドエラーを繰り返す配合設計がほとんどである.このような状況となっているのは,コンクリートのフレッシュ性状を支配している,セメント系材料の凝集構造の形成機構が未だ不明であることによる.本研究では,遠心脱水試験を活用して,凝集構造の形成メカニズムを解明することを目的として,研究を実施している.

赤外線法を用いた既設コンクリート構造物の品質評価手法の提案
講師 加藤 佳孝[代表者], 研究実習生(加藤(佳)研) 小根澤淳志
コンクリートの物質移動特性は耐久性能を支配する重要な要因であり,これまで多くの研究がなされている.しかし,既設構造物のコンクリートの品質(例えば水セメント比など)を定量的に把握することが難しいため,既設構造物の物質移動特性を予測する手法が無いのが現状である.そこで,本研究では非破壊試験を活用して既設構造物の物質移動特性を定量的に評価する手法を開発することを目的としている.

計算科学技術連携センター

次世代量子化学計算システムの開発
助教授 佐藤 文俊
密度汎関数法による大規模タンパク質の量子化学計算ソフトウエアを開発し,公開する.すでに開発したプログラムProteinDFに,自動計算法,量子分子動力学法,超大規模タンパク質計算,タンパク質波動関数データベースに関する諸研究開発成果を統括したシステムである.

ナノエレクトロニクス連携研究センター

分子線エピタキシィと走査型プローブ顕微鏡の完全合併装置の開発および本装置による化合物半導体量子ドット成長素過程とその表面構造の解析・制御に関する研究
特任助教授 塚本 史郎
通常はSTMが別容器のため,ドットが発生する瞬間を原子レベルでしかも3D的にその場で観察することは不可能だが,われわれが開発したMBEとSTMを一容器内に完全合併した装置を用いることにより,それが可能となる.またドットを積層することにより不均一性が増大することが知られている.本装置により,そのメカニズムを明らかにすることが出来れば,この不均一性を如何に抑えて積層出来るかがポイントとなっているQDレーザ等のデバイス特性の向上に繋がる.

荏原バイオマスリファイナリー寄附研究ユニット

水熱反応を用いたバイオマス物質変換技術の開発とバイオマスリファナリープロセスの設計
客員助教授 望月 和博[代表者], 寄付講座教員 佐藤伸明, 教授 迫田 章義
バイオマスリファイナリーの創成を目指し,物質変換から分離精製に至る一連の技術開発に取り組んでいる.バイオマス(もみ殻,トウモロコシ茎など)から,バイオマス化学原料(フルフラールなど)を生産するための蒸煮爆砕と膜分離の統合による反応・分離同時プロセスの開発を行なっている.また,そのバイオマス由来副産物に対して物理化学的処理を用いた材料や燃料の製造方法に関する研究も行なっている.これらの技術を統合した生産プロセスの設計をし,バイオマスリファイナリープロセスのフィジビリティに関する評価を行なっている.

水熱炭化反応によるバイオマスの燃料化
客員助教授 望月 和博[代表者], 寄付講座教員 佐藤伸明, 教授 迫田 章義
水熱炭化によるバイオマス炭化物のスラリー燃料化技術の開発を行なっている.本研究では,数種類のバイオマス(スギ,竹,トウモロコシ茎,メタン発酵残渣など)に対して水熱炭化処理を施すことで得られる炭化物の燃焼として評価を行うとともに,反応メカニズムや反応速度の解析を行なっている.また,新しい応用として炭化物材料(活性炭や土壌改良剤など)の製造方法に関する研究も行なっている.

バイオマスタウンモデルの設計手法の開発と物質・エネルギーフローの評価
客員助教授 望月 和博[代表者], 教授 迫田 章義
地域内で必要な製品やエネルギーをバイオマス資源でまかなうことのできる社会「バイオマスタウン」の実現可能性を評価するため,バイオマスタウンモデルの設計手法の開発に取り組んでいる.地域におけるバイオマスの生産量や発生分布などの地域統計データおよびバイオマス利用技術における物質・エネルギー変換効率などの技術データに基づき,物質・エネルギーフローの評価を行うとともに,実際地域におけるバイオマス利用政策を検討するためのシナリオ解析を実施する.また,GISを利用したバイオマス資源の発生分布の整理および収集・輸送を含めた地域の最適化を検討している.

バイオマス多段階利用プロセスの設計および評価
客員助教授 望月 和博[代表者], 教授 迫田 章義, 寄付講座教員 佐藤伸明, 助手 下ケ橋 雅樹
バイオマスリファイナリーの実現には,物質・エネルギーの多段階,カスケード利用が不可欠である.ここでは,バイオガスプラントを中心に,バイオガスの生成設備,発酵残渣の炭化設備,排水の再資源化設備などを組み合わせた統合システムを設計し,実証試験に基づく評価を行うものである.また,プロセスシミュレーションの手法を用い,多段階プロセスの効果の定量化を試みている.

メタン発酵消化液の再資源化プロセスの開発
客員助教授 望月 和博[代表者], 寄付講座教員 佐藤伸明, 教授 迫田 章義
メタン発酵(バイオバスプラント)の問題点の一つに,消化液の処分が挙げられる.消化液は各種栄養成分を含んでいるため,液肥として利用可能であるが,国内,特に都市近郊においては需要先が限られることから,バイオガスプラントとの普及には消化液の有効な利用法が求められている.ここでは,晶析,ストリッピング,膜分離等を利用したN・Pの分離回収や,逆浸透による濃縮液肥の製造および清浄水の再利用などの検討を行っている.

国際・産学共同研究センター

マルチボディ・ダイナミクスによるヴィークル・ダイナミクス(継続)
教授 須田 義大[代表者], 研究員(須田研) 曄道 佳明, 研究員(須田研) 中代 重幸, 協力研究員(須田研) 椎葉 太一, 協力研究員(須田研) 道辻 洋平, 研究機関研究員 竹原 昭一郎, 研究生(須田研) 林世彬
マルチボディ・ダイナミクスによる運動方程式の自動生成, さらにダイナミック・シミュレーションなどの自動化は, 宇宙構造物, バイオダイナミクスなどの複雑な力学系において有用なツールである. 本年度は, リアルタイムシミュレーションを可能とするソフトウエアによるドライビングシミュレータへの実装,評価を行った.

車両・軌道システムにおける運動力学と制御に関する研究(継続)
教授 須田 義大[代表者], 技術職員 小峰 久直, 協力研究員 道辻 洋平, 研究生(須田研) 林世彬, 大学院学生(須田研) 松本 耕輔, 大学院学生(須田研) 王 文軍, 受託研究員 松田 一寿
高速性,安全性,大量輸送性,省エネルギー性などの点で優れている, 軌道系交通システムについて, 主として車両と軌道のダイナミクスの観点から, より一層の性能向上や環境への適用性を改善することを目標に検討している. 本年度は,新方式アクティブ操舵台車, 模型走行実験による曲線通過特性, 摩擦制御,空気ばねの制御手法,一軸台車の防振性能向上の検討を行った.

コルゲーションの成長・減衰機構の研究(継続)
教授 須田 義大[代表者], 研究員(須田研) 曄道 佳明, 技術職員 小峰 久直, 外国人博士研究員(須田研) 張業継
鉄道レール上の発生するコルゲーション現象(波状摩耗), さらに転がり軸受などに発生するコルゲーションについて, 検討を進めた. 実験装置上における生成機構のモデル化およびシミュレーションを行い, 滑りがコルゲーションの発生・成長に与える影響を検討した.

セルフパワード・アクティブ振動制御システムに関する基礎研究(継続)
教授 須田 義大[代表者], 研究員(須田研) 中代 重幸, 研究員(須田研) 中野 公彦, 大学院学生(須田研) 林 隆三
振動エネルギーを回生し, そのエネルギーのみを利用した外部からエネルギー供給の必要のない, 新しいアクティブ制御を実現するセルフパワード・アクティブ制御について, 研究を進めている. 船舶の動揺装置への適用について検討を継続し, 模型船での実証実験にひきつづき,実船におけるシミュレーション評価とエネルギーの一時貯蔵システムについての検討を行った.さらに,新たに新交通システムへの適用についても検討した..

磁気浮上系における浮上と振動の制御(継続)
教授 須田 義大[代表者], 研究員(須田研) 中代 重幸, 協力研究員(須田研) 道辻 洋平
永久磁石を併用した吸引式磁気浮上システムにおいて, 浮上のための電流ゼロ制御と防振制御を両立させる手法について検討を行った. 本年度は, 浮上のロバスト性を向上させるための外乱オブザーバの適用と,動揺制御手法の最適化を図り,実験によりその効果を実証した.

車両空間の最適利用に関する研究(継続)
教授 須田 義大[代表者], 技術職員 小峰 久直, 協力研究員(須田研) 平沢 隆之, 大学院生(須田研) 金保忠正, 民間等との共同研究員 林 哲也
快適で効率のよい公共交通機関の実現には, 走行性能の向上, 振動乗り心地特性の改善とともに, 交通空間の効率のよい利用が大切である. 本年度は, 動揺模擬装置を用いた快適性評価手法の検討,車内の乗客の行動調査などについて検討を進めた.

自動車における電磁サスペンションに関する研究(継続)
教授 須田 義大[代表者], 大学院学生(須田研) 林 隆三, 大学院学生(須田研) 川元 康裕,日比野暢彦
ITSの進展に伴う自動車における電子化, 情報化の背景を踏まえ, サスペンションの機能向上, 性能向上, 乗心地向上, 省エネルギー化などを目標に, 電磁サスペンションの検討を進めた. アクティブ制御系への展開,大型車両への応用,センサー機能に関する検討などを行った.

都市交通向け自転車に関する研究(継続)
教授 須田 義大[代表者], 研究員(須田研) 曄道 佳明, 研究機関研究員 竹原 昭一郎
自転車をエコロジカルな交通システムととらえ,都市交通における公共交通機関との連携を図った新たな自転車の可能性を検討している.本年度は,小径自転車の低速走行時の安定性に着目し,マルチボディダイナミクスによる解析と実験による検討を進めた.

自動車用タイヤの動特性に関する研究(継続)
教授 須田 義大[代表者], 協力研究員(須田研) 椎葉 太一, 研究機関研究員 竹原 昭一郎, 大学院生(須田研) 多加谷敦
走行安全性を向上させるための車両運動制御,ITSに対応した新たな自動車制御のためには,タイヤの動的な特性を詳細に把握することが重要である.本年度は,スリップアングルの動的入力に対する接触力特性に着目し,タイヤ動特性試験を実施し,タイヤの物理パラメータ,タイヤサイズ,グリップ特性の影響を評価するためのモデルの構築を試みた.

バーチャル・ブルービンググラウンドの研究(継続)
教授 須田 義大[代表者], 協力研究員(須田研) 椎葉 太一, 大学院学生(須田研) 田口 貴之, 民間等との共同研究員 大貫 正明, 産学官連携研究員 高橋 良至, 技術職員 小峰 久直
マルチボディ・ダイナミクスの車両運動モデルを用いたドライビングシミュレータによるバーチャル・プルービンググラウンドを提案している.リアルタイムシミュレーション手法の改善,タイヤ試験機との連携,ステアリング特性,ドライバ特性,道路交通環境の高度化などを検討した.

ITS車両による路面情報収集と車両制御に関する研究(継続)
教授 須田 義大[代表者], 技術職員 小峰 久直, 産学官連携研究員 高橋 良至, 大学院学生(須田研) 川元 康裕, 大学院学生(須田研) 多加谷 敦, 協力研究員(須田研) 平沢 隆之
車両の運動性能向上,安全性の向上のためには,路面情報収集が有効である.ITS(高度道路交通システム)への適用として,車両に取り付けたセンサーによる路面情報収集手法を提案し,実車両における走行試験を行い,その手法の評価を行った.

サスペンション系のコントロール・フュージョンに関する研究
教授 須田 義大[代表者], 大学院学生(須田研) 林 隆三, 研究員(須田研) 中代 重幸, 研究員(須田研) 中野 公彦
単一の電磁デバイスを用いて,運動・動揺・振動制御の融合の実現と,センサー・アクチュエータ・スプリング・パッシプダンパ・エネルギー回生などの複数の機能を融合した制御を構築する新たなサスペンション系を実現するため,コントロール・フュージョン,すなわち機能融合制御を提案し,その基礎的,展開的研究を行った.

射出成形における型内樹脂流動計測システムの開発
教授 横井 秀俊[代表者],金藤 芳典, 大学院学生 宿 果英, 外国人客員研究員 陳 静波
基礎計測技術の研究として型内樹脂流動挙動を計測する各手法の開発と成形現象の実験解析を目的としている.本年度は,型内ランナー切替装置を用いて流動中の一部の溶融樹脂を着色する新たな可視化手法を提案し,矩形キャビティ両側壁に沿った特異な端面流れ及びフローフロント領域の樹脂流動挙動を明らかにした.また,PPやGPPSについて昨年度実施した多数個取り金型における充填バランス解析を,本年度はガラス繊維充填樹脂とエラストマーへと拡張し,ランナー内樹脂温度変化との相関解析を実施中である.

射出成形における溶融樹脂温度分布の計測
教授 横井 秀俊[代表者], 協力研究員 村田 泰彦,阿部 聡
射出成形は,断熱材料である樹脂の溶融・流動・冷却固化プロセスと捉えられ,各過程における温度分布計測は極めて重要である.これまでに流動樹脂内部の温度分布計測を目的として,めっきにより多数の熱電対パターンをポリイミドフィルム上に形成した集積熱電対センサを提案し,ノズルおよびキャビティ内の流動樹脂内部の温度分布計測を行なってきた.本年度は,各種キャビティ条件における型内温度分布計測結果,ならびに矩形キャビティ両端領域の温度分布計測結果を総合し,同領域でのフローフロント先行現象が,三方向を拘束された端面領域でのせん断発熱現象に起因することを具体的に明らかにした.

超高速射出成形現象の実験解析
教授 横井 秀俊[代表者],金藤 芳典, 技術専門職員 増田 範通, 協力研究員 阿部 聡, CCR協力研究員 長谷川 茂,瀬川 憲,原田 知広,山口 城, 研究支援推進員 宮地 智章, 大学院学生 韓 雪,宿 果英,奈良岡 悟,大森 瑛,和知 忠道
本研究では,超高速射出成形現象について多面的に実験解析を行い,不確定因子の多い成形技術,金型技術の確立と新規の高機能・高付加価値成形品の実現に資することを目的としている.本年度は,超高速射出成形における(1)Y字型および十字型ランナー内分岐領域での樹脂流動挙動の可視化,(2)キャビティ中央の50μm極薄肉部への充填特性の検討,(3)微細プリズム転写パターンへの樹脂充填過程の直接可視化解析,(4)微細転写成形における型内離型および突き出し離型プロセスの可視化,についてそれぞれ重点的な検討を行った.

超高速複合射出成形の研究
教授 横井 秀俊[代表者],金藤 芳典, 大学院学生 宿 果英,和知 忠道
本研究では,超高速射出成形を複合射出成形へと適用することにより,超薄肉複合成形品など,これまでの工法では達成できない新しい機能成形品実現の可能性を探索することを目的としている.本年度は,スライドコア方式による薄肉被覆成形,および2基のバルブゲートホットランナを搭載した複合成形用金型による超薄肉サンドイッチ成形実験を実施している.サンドイッチ成形実験では,肉厚0.5mm以下の超薄肉サンドイッチ構造体が実現可能であることを実証するとともに,可視化観察によりコア材の充填挙動を明らかにした.

スクリュ可塑化総合評価システムの研究
教授 横井 秀俊[代表者], 民間等との共同研究員 徐 世中
射出成形におけるスクリュ可塑化過程の研究では,可視化シリンダによる直接観察や樹脂圧力分布計測に加えて,熱流束パターンやスクリュトルク分布,ノズル部樹脂温度分布等の各種計測技術および解析手法の開発が必要である.本研究では,これらの実験解析装置を順次開発し,それらを同時計測システムに統合化した総合スクリュ性能評価システム開発を目指している.本年度は,トルク計測リングを多数装填したトルク分布計測シリンダに基づき,スクリュ形状を変化させて,計量可塑化過程でのシリンダ軸方向トルク分布パターンの変化ならびに加熱シリンダ壁面における熱流束の変化を計測し,可塑化過程に及ぼすスクリュ形状因子の影響を具体的に明らかにした.

LSIの動的IR-Drop評価・抑制技術開発
教授 桜井 貴康
半導体プロセスの微細化に伴って,信号の正当性(シグナルインテグリティ)や電源品質の確保(パワーインテグリティ)を考慮した設計が必要となっている.従来のEDA(コンピューターによる設計支援ソフト)を用いて予測される結果の正当性が疑問視されている現状では,実シリコンを用いた憲章が必要不可欠である.特にLSI動作時における動的な電源変動(IR-Drop)は大きな問題である.そこで,その評価のための要素技術の開発,新たなLSI設計フローの構築および将来の課題の発掘・解決策の提示を行うべく研究を推進している.

超低電力プロセッサの設計
教授 桜井 貴康
技術の進歩にともなってひとつのチップに詰め込まれるトランジスタの数が増え,消費電力を下げる回路技術が重要になってる.桜井研究室では電源電圧を下げることが低消費電力化に効果の高いことに着目し,電源電圧0.5Vという低電圧下において400MHzで動作するプロセッサを設計した.0.25μm,デュアルVTH,完全空乏型SOI技術を使って検証し,電源電圧0.5V世代におけるVLSI設計の一つの方向性を示した. また,ソフトウェアと協調して低電力化を達成する,電圧ホッピング技術の開発も行っている.負荷に応じて電源電圧を動的にコントロールすることにより,携帯電話への応用を視野に入れている.

アクティブリークを削減するナノサーキットの研究
教授 桜井 貴康
トランジスタがオフの時に流れる電流を漏れ電流と呼ぶ.トランジスタの寸法がナノメートル領域に入るにしたがって,漏れ電流が動作時でさえも支配的になってくることがわかった.この漏れ電力を減らすために,統括的設計手法などの設計指針を確立するとともに漏れ電力をカットオフ制御するzigzag方式を提案し,有効性を実証した.

ユビキタスコンピューティングに対応した無線/アナログチップ技術
教授 桜井 貴康
電子システムの複雑化するにつれてLSI間の接続が高速・大容量化している.本研究では,「スーパーコネクト(チップの高性能接続)」を提唱し,15μm角のパッドで5Gbps/1mWを実現し,将来の新しいシステム実装方法を提案した. ユビキタスコンピューティングを実現するために必要な,低コストのアナログ回路や極短距離ワイヤレス回路についても研究をしている.

有機トランジスタのシート型スキャナへの応用
教授 桜井 貴康
現在の電子回路の基本はシリコンで作られた集積回路だが,自由自在に曲げることのできる大面積のセンサーを作ることはできなかった. 本研究では炭素と水素を基調にしたスイッチ(有機トランジスタ)で作られた多数の光学センサーと周辺回路を,柔軟性をもつプラスチックシートに集積し,1インチ当たり数百画素のセンサーを持つシート型スキャナを実現した.透明なフィルムと有機半導体でできたセンサーを曲面に押しつけると,ワインのラベルなど曲面に描かれた画像や文字をゆがみなく読み取れる.

路上駐車車両の交通流に与える影響の分析(継続)
教授 桑原 雅夫[代表者],助手 田中伸治
都市内の道路交通渋滞は依然として大きな問題であり,その主要な原因の一つとして,路上駐車車両による交通容量の低下があげられる.本研究では,包括的な駐車管理施策を実現するための根拠として必要な,路上駐車車両による交通流への影響を定量的に評価することを目的としている.そのため,路上駐車により渋滞が発生している幹線道路における現地観測調査や現行の駐車規制・取締り方法の問題点の把握など,実証面・制度面等様々な角度から検討を行っている.

交通流シミュレータに用いるパラメータの自動調整方法(継続)
教授 桑原 雅夫[代表者],教授(千葉工業大学) 赤羽弘和,助教授(京都大学) 吉井稔雄
交通環境改善施策による効果を事前に評価するツールのひとつとして交通流シミュレータが挙げられる.シミュレータには交通容量に代表されるネットワークパラメータが必要だが,渋滞状況などの交通状況を忠実に再現するためにはパラメータの微妙なチューニング作業が必要となる.チューニング作業では多くのパラメータを人手によって同時に調整しなければならないため,シミュレータ利用者にとって大きな負担となっている.本研究は,ボトルネック容量と旅行時間の関係に着目することにより,パラメータのチューニング作業がシステマティックかつ自動的に進む効率的なアルゴリズムの構築を目的とするものである.

Area wide dynamic road traffic noise simulation(継続)
教授 桑原 雅夫[代表者],教授(東大国際・産学協同研究センター) Edward CHUNG,助手 田中伸治,大学院学生 Ashish Bhaskar
The basic objective of the research is to integrate dynamic area wide traffic simulation into a noise model and; to give comparative overview of noise abatement policies. We develop a tool, DRONE (areawide Dynamic ROad traffic NoisE) simulator, for accurate, efficient and detailed prediction of road traffic noise. DRONE predicts traffic noise not only on spatial scale (area-wide) but also on temporal scale (dynamic). It gives visual representation to traffic noise in the form of area-wide dynamic noise contour maps.

ITSセンシング技術を用いた信号制御アルゴリズムの開発(継続)
教授 桑原 雅夫[代表者],助手 田中伸治,民間等との共同研究員 堀口良太,大学院学生 浅野美帆
日本で現在行われている「プログラム選択方式」の信号制御は,制御パターンをあらかじめ設定しておく必要があり,良好な交通状態を維持するためのコストが大きい.本研究では近年開発されてきた画像処理によるセンサー等を用いて,これまで測定できなかった信号待ちによる各車両の遅れ時間を測定し,その遅れを最小化するよう信号パラメータを自動生成する制御アルゴリズムを開発し,名古屋地区において社会実験を行った.

SHORT-TERM TRAVEL TIME PREDICTION USING TRAFFIC DETECTOR DATA
教授 桑原 雅夫[代表者],助手 田中伸治,大学院学生 Shamas ul Islam Bajwa
A method for predicting travel times on short-term basis for expressways is developed. The method is based on the assumption that traffic patterns are recurrent in nature. The complete model is formulated in this research, which first defines the pattern, and then searches the similar patterns, after searching the similar patterns and filtering the outliers, it predicts the travel times. The model is optimized using genetic algorithms and it is found that optimization enhances the performance of the model by approximately 10%. To validate all the assumptions and fulfillment of objectives, extensive testing of the model is carried out. The testing of model indicates a good performance and provides satisfactory results. The model is proved to predict accurately and is sufficiently robust for real-time applications. One important property of the model is its capability to be transferred from one location to another without any modification, which seems to provide an "off-the-shelf" solution for implementation. The method can predict recurrent congestion with a greater accuracy than non-recurrent congestion as it relies on the recurrence of traffic patterns.

都市街路網の交通流シミュレータの開発(継続)
教授 桑原 雅夫[代表者],助教授(京都大学) 吉井稔雄,民間等共同研究員 堀口良太,助手 田中伸治
本研究では, SOUND (a Simulation model On Urban Networks with Dynamic route choice)とAVENUE (an Advanced & Visual Evaluator for road Networks in Urban arEas)という2種類の交通シミュレーションモデルを開発している.ともに,経路の選択行動を内生化しているモデルで,新たに交通規制・制御などの政策が実施された場合の,利用者の経路の変化を表現できる構造を持つ.また,利用者層を交通情報(旅行時間情報,渋滞情報など)に反応して経路を選択するかどうかによって,いくつかのグループに分けてシミュレーションを実行することができる.SOUNDは,リンク数・ノード数が数百から数千の規模のネットワークに,AVENUEは,リンク数・ノード数が数十から数百の規模のネットワークに適用するモデルである.ともに,数多くの適用事例を通して,その実用性が検証されている.

交通流変化を考慮した自動車排出ガス量評価手法の研究(継続)
教授 桑原 雅夫[代表者],助教授(東京都立大学) 大口敬
本研究では,道路交通による大気環境への影響評価を行うために,道路交通流の渋滞状況や交通量,交通制御(交通信号)などの影響を適切に考慮したNOX,CO2などの自動車排出ガス量の定量的な評価手法を確立する.車両の走行挙動特性と排出ガス量の関係及び道路交通流の状態量と個々の車両の走行挙動特性との関係を分析し,排出ガス量を推定するモデルを構築するとともに,交通シミュレーションモデルへの適用により,交通流改善政策による排出ガス削減効果を評価する.

複数交通機関を考慮した広域交通シミュレーションのフレームワーク構築
教授 桑原 雅夫[代表者], 教授(東大) Edward CHUNG, 助手 田中伸治, 大学院学生 玉本学也
本研究では大規模ネットワークへの交通シミュレーションの適用を目指した.まず,関東一円への交通シミュレーションの適用を試みた.関東一円のリンク数約17万,ゾーン数660の巨大ネットワークの入力データ(道路ネットワーク,ゾーン,OD,評価用データ等)を整備した.そして,パソコン上でSOUNDシミュレーションモデルを用いて実行し,この程度の大きさのネットワークに対しても,交通シミュレーションが適用可能なことを証明した.さらに,交通シミュレーションとともに利用できる鉄道シミュレーションも作成した.このシミュレーションでは関東一円規模4,620リンクの鉄道ネットワークに対して1時間ごとの各鉄道リンクの利用者数を計算することが可能である.

情報学環・学際情報学府

文化財のサイバー化(形や見えのモデル化)
教授 池内 克史
日本には数多くの文化財が存在しています.それらは,いつ何時火災,地震などの災害のため失われてしまうかも知れません.これらの貴重な文化財をコンピュータビジョンの最新の技術を使用して,サイバー化する研究をおこなっています.主な研究テーマは,形のモデル化,見えのモデル化,環境のモデル化などです.最近,鎌倉や奈良の大仏をモデル化しました.

無形文化財のデジタル化(動きのモデル化)
教授 池内 克史
日本には,仏像や建築物などの「静的」文化遺産と同様に,民族舞踊などの「動き」による形の無い文化遺産も各地に存在しています.しかし後継者不足などの理由から,これらの貴重な文化遺産が失われている事も事実です.我々の研究は,これら失われつつある無定形文化財を計算機内にデジタル保存し,いつでも再現・人に後継できる手法を構築することを目指しています.具体的な研究テーマとしては,・ 人の動きの入力方法とその解析・ 動きのシンボル化・ シンボル化された動きの編集と生成・ CGやロボットによる動きの再現などが挙げられます.

ロボットによる匠の技の学習(動きの実現)
教授 池内 克史
幼児の学習の大部分は,親の行動を見て真似ることから始まります.我々の研究室では人間の行動を見て,これを理解し,同じ行動を行うロボットプログラムを生成する研究を行っています.この研究を行うことで人間の行動学習過程のヒントが得られればと考えています.さらに,人間国宝の業をロボットに再現させることで,貴重な匠の業を永久保存したいと考えています.

高度交通システム(ITS:状況の認識とモデル化)
教授 池内 克史
21世紀に向けて高度交通システムの開発が盛んです.そこでは,車は, 運転者やその周辺の車の行動を見て,その状態を理解し, 周辺の道路環境を比較しながら, さらに上位のコントロール系からの情報にもとづいて, 最適な行動が取れる必要があります. こういったシステムのために,人間の行動を連続的に観測した画像列から行動を理解する手法, 地図情報と周辺の状況から現在の位置を決定する手法, 位置情報, 地図情報を現在の実画像上に付加する手法などを研究しています.

物理ベースビジョン(色の解析と見えのモデル化)
教授 池内 克史
現実世界をコンピュータ上の仮想空間に再現する際,現実世界のモデル化や仮想空間とのそれらの融合法など,さまざまな研究課題があります.我々は,現実物体の観察に基づいて,現実感を高める要素となる物体の見えを解析する研究を行っています.具体的な研究テーマとしては,・偏光解析による透明物体の形状モデリング・鏡面反射成分と拡散反射成分の分離・光源色と物体色の分離・3次元モデルへの高精度テクスチャ貼付などが挙げられます.

個人認証とライブネス保証技術
助教授 松浦 幹太[代表者], 大学院学生 黄 興華
理論的に安全な暗号技術や生体認証技術でも, 現実の世界では, 仮定が崩れて秘密鍵や生体特徴が漏洩し, なりすまし攻撃の被害にあうことがある. また, 電子署名が盗まれた秘密鍵によって作られている可能性があるので, 否認防止用の証拠の強化も必要である. 以上の二つの問題に対して, 我々は暗号技術, ライブビデオによる生体認証と生体確認(生体検知)などの技術を組み合わせる強いセキュリティシステムを設計している. 研究の目標と意義は(1)秘密鍵や生体特徴を盗まれても被害が最小限度で済むこと, (2)タイムスタンプと電子署名を付けた, 認証時に録画したライブビデオ画像を, より強い否認防止の証拠とすることができることである.

Voter Verification through Biometric Data
助教授 松浦 幹太[代表者], 大学院学生 ホセ・ルイス・ラクソン
To determine if biometric technology could help eliminate election fraud, we examined the methods used by the Philippine Commission on Elections (COMELEC) to register absentee voters for the 2004 Presidential Elections. We found that non-technological factors reduced the benefits COMELEC intended to gain from using biometric technology. First, COMELEC did not send absentee voters their IDs with biometric identifiers because the confusing registration form caused many registrants to write their addresses incorrectly. Second, COMELEC could not adequately identify voters during the voting period because the inefficient use of control numbers on registration forms caused the absentee voters list to have incomplete biometric identifiers. These findings will be presented to the Philippine Congress and COMELEC for review and action.