研究及び発表論文

研究部・センターの各研究室における研究

物質・生命部門

MEMS-フォトニック結晶デバイスの設計と作製
講師 岩本 敏[代表者], 教授 荒川 泰彦, 助教授 年吉 洋, 教授 藤田 博之
フォトニック結晶の特性をMEMSを利用し制御することで,光スイッチ,波長可変光源,チューナブルフィルタなどを実現できる.大型計算機を駆使した数値解析に基ずく設計と新機能の探索を進めている.また藤田・年吉研究室と共同で作製技術の確立を進めている

量子ドットとフォトニック結晶の融合〜次世代ナノ光デバイスの実現を目指して〜
講師 岩本 敏[代表者], 教授 荒川 泰彦
量子ドットとフォトニック結晶を融合することで,電子系と光子系の相互作用を増強することができ,電子と光子を同時に制御した究極のナノ光デバイスを実現できると期待できる.このような強い相互作用を実現するため,フォトニック結晶構造を用いた高Q-微小共振器の設計と作製光学評価を進めている.また,量子ドットと共振器モードの結合を利用した高効率単一光子光源などの検討も進めている.

分子系超構造の設計と作製(継続)
教授 荒木 孝二[代表者],技術官 吉川 功 大学院学生 李ジュン・高山 曜
分子間相互作用の階層化という方法論に基づく高次組織構造構築を目指した研究の一環として,非共有結合で形成された柔軟なアルキルシリル置換ヌクレオシドの超分子フィルム作製に成功した.アルキルシリル基の構造とアルキル基末端に導入するオキシエチレン鎖の長さについて検討した結果,核酸塩基間の水素結合をオキシエチレンユニットが阻害しないように分子構造を最適化とすると,塩基間多重水素結合で形成された一次元テープ状ユニットが,さらにテープ間水素結合で結合した二次元シートとなり,オキシエチレン鎖同士の極性相互作用によりシート間が集積して,柔軟性のある超分子フィルムが得られることを明らかにした.また一次元テープ状ユニットを擬似高分子鎖とする超分子繊維の開発を引き続き行い,三重水素結合鎖を持つ新規なトリアミドシクロヘキサンおよびトリアミドベンゼン誘導体の超分子繊維を加熱紡糸により作製し,その特性を明らかにするとともに,共重合型擬似高分子鎖の一次配列を立体要因に基づき制御する方法論を確立した.

光電子機能性有機材料に関する研究(継続)
教授 荒木 孝二[代表者], 助手・特別研究員 務台 俊樹 博士研究員 赤坂 哲郎 大学院学生 奥田隆一・張 書宏・吉原慎治
光機能性分子素子の開発に向けて,ポリペプチド鎖を介しての長距離エネルギー移動系を構築し,二次構造相転移によるエネルギー移動のスイッチングが可能であること,およびその機構を明らかにした.また,優れたフォトクロミック材料であるジアリールエテン誘導体を用い,光伝導特性の光制御に向けた基礎的な検討を進めるとともに,新しい光機能素子への応用を検討した.さらに,応答速度の速い有機フォトリフラクティブ材料などの開発に向けて,非線形光学物質の設計と合成の最適化を行った.

機能性有機蛍光材料の開発(継続)
教授 荒木 孝二[代表者],助手・特別研究員 務台 俊樹 大学院学生 田鎮棟・田中 亮
新規な機能性の高い有機蛍光材料を開発する研究を進めており,多点分子間相互作用部位を持つポリピリジル化合物に蛍光性を付与した新規な機能性蛍光物質群の設計・合成に成功している. 本年度は, これら化合物を用いて,結晶や固体中でのクロモフォアの相対位置をはじめとするナノ集積様式を制御し,単分子系とは異なる多様な超分子発光特性の発現を目指した.その結果,結晶構造の違いにより,発光色が青から緑まで変化するだけでなく,発光効率にも大きく影響することを見いだし,結晶中の複素環相互の配列と関連づけて理解できることを明らかにした.また,新規な蛍光性ポリピリジル化合物であるアミノ置換ポリピリジルのオリゴマーの分子設計と合成を行い,その光特性および金属との錯体形成挙動を明らかにした.

機能性金属錯体に関する研究(継続)
教授 荒木 孝二[代表者],助手・特別研究員 務台 俊樹 研究生 川口 聖司
遷移金属触媒による配位性アミド化合物からの効率の良いアミノ酸エステル生成反応について, 生体モデル反応という観点からの研究を行っている. 昨年度に引き続き, テルピリジル配位部位を持つ新規な配位性アミド化合物のCu(II)触媒によるアミド加溶媒反応において, 活性種となる解離型アミド錯体の構造と,反応機構との関連についてさらに詳細に検討し, 常温で極めて効率よく進む要因を解明した.

放射光励起による内部転換電子放射の研究
教授 岡野 達雄[代表者],技術官 河内泰三,助手(高エネルギー加速器研究機構) 張 小威,研究員(高輝度光科学研究所) 依田芳卓, 助教授 福谷 克之, 助手 松本 益明
SPring-8およびKEK-ARにおいて,放射光により励起される原子核の緩和過程を,主として,内部転換電子放射により研究している.57FeをSi(111)表面上に20nm積層した試料において,内部転換電子の時間スペクトルに,核共鳴X線散乱のは異なる振動構造を見出した.また,物理吸着83Krについて核共鳴励起エネルギーの精密測定を行った.

超伝導体からの電界電子放射に関する研究
教授 岡野 達雄[代表者],岡野研 大学院学生 吉野 学, 助手 松本 益明,技術官 河内泰三
Nb製電界放射陰極からの電子放射に関する研究をスタートした.放射電子の時間相関分析を目標にして,超高真空装置内で使用しうるヘリウム冷却システムやコインシデンス検出システムの開発を進めた.

水素ビーム源に関する研究
教授 岡野 達雄[代表者], 助教授 福谷 克之,岡野研 大学院学生 二木かおり,福谷研 大学院学生 中井康太, 助手 松本 益明
前年に引き続き,低温吸着・脱離を利用したオルソ水素源の開発を進めた.機械式冷凍機を利用し,吸着・脱離プロセスを繰り返し行うことのできる純化装置を開発した.本年度新たに,低速水素原子線源の開発に着手し,RF放電解離型原子状水素源と6極磁場レンズを製作した.

真空工学に関する基礎研究
教授 岡野 達雄[代表者], 助手 松本 益明,技術官 河内泰三,岡野研 大学院学生 伊藤敬洋
真空工学の基礎となる固体表面と分子の相互作用について研究を進めている.現在取り組んでいる課題は,(1)清浄超平坦化表面での分子散乱の研究を目標とした平坦化薄膜の製作と評価に関する研究,(2)マイクロ空間における圧力測定技術,(3)クライオポンプ内部での水素分子の挙動の解明などである.

擬似位相整合と群速度整合の両立によるフェムト秒波長変換
教授 黒田 和男[代表者], 助教授 志村 努, 助手 芦原 聡,大学院生 藤岡 伸秀
フェムト秒レーザー技術が成熟し,超短光パルスの分光・加工・通信分野での有用性が明らかになるにつれ,その波長変換技術の重要性が高まっている.我々は,人工的な周期構造を有する非線形光学結晶結晶を利用したフェムト秒光パルスの波長変換技術を研究している.特に,ポンプ光と信号光との群速度不整合という本質的な問題に対する解決法として,擬似位相整合素子の非平行配置を用いた群速度整合第2高調波発生法を考案した.今年度は,電子ビームリソグラフィー技術および電界印加法により,周期分極反転ニオブ酸リチウム素子を作製し,近赤外域での第2高調波発生実験を行った.その結果,50% という極めて高い変換効率で,時間幅110fsの第2高調波パルス発生に成功した.

2次非線形光学効果を用いた超短光パルスのソリトン圧縮
教授 黒田 和男[代表者], 助教授 志村 努, 助手 芦原 聡,大学院生 藤岡 伸秀,大学院生 太田 隆之
超短光パルスは高速分光から光通信,光加工まで幅広いニーズがあり,その波長およびパルス波形の制御技術の重要性は疑う余地が無い.我々は2次非線形光学媒質中のソリトン効果を利用した,超短光パルスの波長変換およびパルス圧縮の研究を行っている.これまでに,擬似位相整合素子を用いたソリトン圧縮法により,近赤外域で約35フェムト秒へのパルス圧縮に成功している.さらに,時空間ソリトンの生成やソリトン生成効率の向上などの検討を行っている.

中赤外超短光パルスの発生と波形制御
教授 黒田 和男[代表者], 助教授 志村 努, 助手 芦原 聡
中赤外波長域(2〜10ミクロン)は分子の指紋領域と言われ,種々の分子振動モードが集まっている.我々は特に,分子振動や化学反応の高速分光からその量子制御への応用を目的として,中赤外域超短光パルスの発生を行っている.チタン・サファイアレーザーの再生増幅パルスをポンプ光とし,当研究室で作製した周期分極反転ニオブ酸リチウム素子を波長変換素子とした光パラメトリック増幅法を用いた.そして, 中心波長3.5ミクロン,スペクトル幅0.7ミクロン,パルス幅66フェムト秒の超広帯域コヒーレント中赤外光の発生に成功した.さらに,空間光変調器を利用した中赤外域での光パルス波形制御の検討を行っている.

強誘電体分極反転素子の開発
教授 黒田 和男[代表者], 助教授 志村 努, 助手 芦原 聡,技術官 千原 正男,技術官 小野 英信,大学院生 藤岡 伸秀,大学院生 太田 隆之
当研究室では高調波発生や光パラメトリック増幅などの波長変換技術とパルス圧縮を組み合わせた新しい超短光パルス波長変換法を開発している.そのキーデバイスは,大きな非線形感受率と設計自由度をあわせもつ,強誘電体分極反転素子である.われわれはこのようなデバイスの設計および作製を行っている.ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムの単結晶から,電子線リソグラフィー技術および電界印加法により3〜20ミクロンの微細分極反転構造を有する素子を作製している.

窒化物半導体を用いた光デバイスの研究
教授 黒田 和男[代表者], 教授 荒川 泰彦, 助教授 志村 努, 助手 芦原 聡,助手 西岡 政雄,大学院生 野村 政宏,大学院生 有田 宗貴
InGaN量子井戸,薄膜内に存在する内部電場を利用することで外部電圧不要の紫色領域で動作する光デバイスの開発を目指して研究を行っている.InGaN量子井戸,薄膜をMOCVD法によって作製し過渡吸収分光測定によりキャリアダイナミクスを調べた.また光誘起吸収変化の膜厚依存性を調べ,薄膜構造では低強度の連続光励起によってパルス光励起と同規模の大きな吸収変化を誘起できることを明らかにした.

半絶縁性窒化物半導体のフォトリフラクティブ効果
教授 黒田 和男[代表者], 教授 荒川 泰彦, 助教授 志村 努, 助手 芦原 聡,大学院生 野村 政宏,大学院生 印南 岳晴
半導体はフォトリフラクティブ材料の中でも高速な応答を示す材料である.われわれは窒化物半導体を用いることで,青紫色領域で動作する高速なフォトリフラクティブ素子の実現を目指し,窒化ガリウム半導体(GaN)を用いて研究を進めている.プロトン,ヘリウムイオン,鉄イオンなど加速器を用いてGaNに注入し,フォトリフラクティブセンターとなる準位を導入した.これまでに,ヘリウムイオンを注入した半絶縁性鉄ドープGaNにおいて,紫外レーザーにより格子が形成されていることを確認した.

半導体ナノ構造の研究(1)−電子状態と物性の解明と制御−
教授 榊 裕之[代表者], 教授 荒川 泰彦, 教授 平川 一彦, 助教授 高橋 琢二,助教授(東大)秋山英文,技術官 川津琢也,技術官 柴田憲治,博士研究員 鳥井康介,博士研究員 C.Jiang,学術研究支援員 M.Lachab,学術研究支援員 近藤直樹,榊研 大学院学生 秋山芳広,榊研 大学院学生 大森雅登,榊研 大学院学生 小林茂樹,榊研 大学院学生 山崎融,協力研究員 井下猛,協力研究員 田中一郎,協力研究員 小柴俊,教授(カリフォルニア大)S.J.Allen,主任研究員(CNRS-ENS) G.Bastard
10nm(ナノメートル)級の半導体超薄膜を積層化したヘテロ構造やSiMOS構造内の極薄チャネルでは, 電子の量子的波動性が顕在化し, 新しい物性や機能が現われるので, 種々のデバイスの高性能化や高機能化に利用できる. 本グループは, これら超薄膜に加え, 量子細線や量子箱(ドット)構造を対象に, 電子の制御法の高度化と新素子応用の探索を進めている. 特に, 超薄膜の端面に形成するエッジ細線や, 結晶の微傾斜面上の原子ステップを活用した量子細線に加えて, 自己形成法で得られるInAs量子箱やナノ探針で誘起したドットなどを中心に, 電子の量子状態を理論解析するとともに, CWおよび時間分解レーザ分光・フーリエ分光・容量電圧分光・サイクロトロン共鳴による解明を進めている.低次元の電子や励起子の量子状態, 電子の散乱・拡散・トンネル透過・緩和などの過程や, 電子正孔対の束縛・解離・再結合過程の特色や制御法に関し, 新しい知見を得た.特に,正孔を捕えたGaSb系ドットやリング状構造の電子状態の特異性を明らかにした.

半導体ナノ構造の研究(2)−高性能ヘテロFET・超微細MOSFETと新電界効果素子−
教授 榊 裕之[代表者],技術官 川津琢也,技術官 柴田憲治,博士研究員 C.Jiang,榊研 大学院学生 秋山芳広,協力研究員 野田武司,教授(Finland VTT)J. Ahopelto,大学院生(Finland VTT)M.Prunilla
AlGaAs/GaAsなどのヘテロ構造を用いた超高速FETとSiO2/Si 構造を用いたMOSFETは, 電子工学の最重要素子のひとつである. これらの10nm(ナノメートル)級の伝導層を用いたFETと関連素子の高機能化と高性能化の研究を進めている. 特に, ヘテロ系FETに関しては, チャネル近傍に電子を捕縛するInAsやGaSbの量子箱を埋め込んだ素子のメモリー機能や電子散乱の解明, 傾斜基板上のステップに沿う結合量子細線をチャネルとするFETの開発, さらにInGaAsやGaAs系ダブルヘテロ系FETの容量・電圧特性や移動度に関する研究を進めた. また, 絶縁基板上の Si 超薄膜をチャネルとするSOI型MOSFETや窒化物を用いたFETや速度変調トランジスタ(VMT)についても, 電子や正孔の量子状態や界面凹凸散乱などを明らかにする研究を理論実験の両面から進めた.

半導体ナノ構造の研究(3)−トンネル伝導素子および単電子素子−
教授 榊 裕之[代表者],技術官 川津琢也,技術官 柴田憲治,榊研 大学院学生 秋山芳広,榊研 大学院学生 大森雅登,協力研究員 田中一郎,教授(カリフォルニア大)S.J.Allen
トンネル障壁を2重に設けた素子構造では, (1)特定波長の電子波が共鳴的にトンネル透過したり,(2)2枚の障壁間に蓄積される電子の静電的な作用で伝導が抑制される.この現象の素子応用可能性を探っている.特に, 自己形成InAs量子箱を埋め込んだGaAs/AlGaAs二重障壁ダイオードを対象として零次元電子の関与した共鳴トンネル効果を調べるとともに, ヘテロFETのチャネルの近傍にInAs量子箱を埋め込んだ素子において, 単一の電子の捕捉の関与したメモリー現象と光検出器応用の検討を進め,その高性能化の研究を進めている. また, 20 nm程の周期の界面凹凸を持つヘテロ接合に量子ポイント構造を作り込み,弾道伝導が量子化コンダクタンスと大きくずれることについて,その起源を調べている. さらに, 収束形の静電界の作用で量子井戸中に零次元状態や一次元状態を誘起した時の電子の量子状態とそれを介する伝導の特色を理論実験の両面から調べている.

半導体ナノ構造の研究(4)−光学的性質の探求とフォトニクス素子応用−
教授 榊 裕之[代表者],博士研究員 鳥井康介,学術研究員 M. Lachab,学術研究支援員 近藤直樹,榊研 大学院学生 松岡和,榊研 大学院学生 秋山芳広,榊研 大学院学生 大森雅登,榊研 大学院学生 小林茂樹,榊研 大学院学生 山崎融,助教授(東大)秋山英文,協力研究員 井下猛,協力研究員 小柴俊,教授(カリフォルニア大)S.J.Allen,主任研究員(仏CNRS-ENS) G.Bastard,教授(フィンランド国立技研)J. Ahopelto
先端的な光エレクトロニクス素子用の材料として注目されている量子井戸, 量子細線, 量子箱について, その光学特性を調べ, その素子応用を探索している. 特に, 10 nm級の寸法のInAsやGaSb系の量子箱に赤外光を照射した時の電子の占有状態の変化を調べ, 光書き込みメモリーや光検出器としての特性の検討を続け,単一光検出のための素子設計を進めている.また, 各種の量子箱構造について光吸収や蛍光スペクトルとその電界依存性を解析し, 光変調器への応用可能性を探っている.さらに,テラヘルツ光照射時の歪誘起量子箱の蛍光特性の特異な変化から, 箱内の準位間の緩和過程を議論した. さらに量子井戸の端面に形成したGaAs/AlGaAs系のT型量子細線やステップ型量子細線の理論計算と光学計測により, 一次元励起子の束縛エネルギーや不均一性の効果および磁場やピエゾ電界の影響などの研究を進めた.

半導体ナノ構造の研究(5)−形成技術と構造評価法の開発−
教授 榊 裕之[代表者], 助教授 高橋 琢二,技術官 川津琢也,技術官 柴田憲治,技術官 島田祐二,博士研究員 C.Jiang,学術研究支援員 近藤直樹,榊件 大学院学生 秋山芳広,榊研 大学院学生 大森雅登,榊研 大学院学生 小林茂樹,榊研 大学院学生 山崎融,協力研究員 野田武司,協力研究員 小柴俊,協力研究員 田中一郎
nm級の超薄膜に加えて, 量子細線や量子箱構造を分子線エピタキシーや先端リソグラフィ法で形成し, その形状や組成を原子スケールで評価し, 新しい電子材料・光学材料としての可能性を探索している. 特に, 結晶の(111)主軸から傾斜させた基板上での多段原子ステップの形成とそれを用いたInGaAs/GaAsおよびGaAs/AlGaAs多重量子細線構造の形成とその構造評価, また, GaAs/AlGaAsヘテロ構造内にInAsやInAlAsの島状結晶を埋め込み, 10 nm級の量子箱を形成し, FETメモリーや光素子への応用可能性を調べている. これらの構造を評価するために, 原子間力顕微鏡, 蛍光線の線幅や電子移動度および磁気抵抗振動の計測と解析を進め,総合的な知見を確立しつつある.

可搬式過熱水蒸気バイオマスリファイナリプロセスに関する研究
教授 迫田 章義[代表者], 助手 下ケ橋 雅樹,大学院生 宮坂宜孝,大学院生 大須賀隆太
バイオマスリファイナリーを基盤とした地域物質循環をめざし,未利用バイオマスのオンサイトモバイル変換プロセスのひとつとして,過熱水蒸気を用いた可搬式オンサイト反応プロセス(モバイルファクトリー)の開発を行っている.過熱水蒸気存在下でのバイオマスの反応・気化特性の評価のほか,生成タールの低減或いはその資源化に関しての検討を行っている

バイオマスを基盤とする石油製品代替品の開発
教授 迫田 章義[代表者], 教授 畑中 研一, 助手 下ケ橋 雅樹,技術官 奥山光作
バイオマスの大規模・大容量処理によって製造した工業原料を用いて,今日,石油化学製品によって提供されている機能を代替できる製品を合成する.

水中溶存オゾンの吸着を利用する新しい水処理技術の開発
教授 迫田 章義[代表者], 助手 下ケ橋 雅樹,技術官 藤井隆夫,研究員 泉順,大学院生 藤田洋崇,大学院生 白石賢司
シリカ系吸着剤には水中溶存オゾンに高い吸着性を有するものがある. しかも, 吸着されたオゾン分子は自己分解が抑制されることから, バルク水中よりもはるかに高密度で長時間の貯蔵が可能である. また, 有機物とオゾンが高濃度に濃縮されて共吸着する場合には, バルク水中に比べて非常に大きな有機物の酸化速度となる. これら現象の基礎と水処理への応用の検討を行っている.

新しい水処理のためのCarbon Whisker膜の開発
教授 迫田 章義[代表者], 助手 下ケ橋 雅樹,準博士研究員 べー尚大
Whisker膜(CWM)の開発を行っている. この新規の機能性炭素系膜は, セラミックス等の単体の上に炭素の膜が形成され, さらに設計した面密度で直径数ミクロンの炭素のヒゲを有している. このような構造から, 例えば水中の揮発有機物(VOC)の除去や微生物分離等の新しい水処理技術への応用が有望と考えられ, 材料とプロセスの同時開発を進めている

吸着式天然ガス貯蔵のための技術開発
教授 迫田 章義[代表者], 助手 下ケ橋 雅樹,技術官 藤井隆夫,大学院生 福田剛之
エネルギー供給の効率化や石油代替エネルギーの利用が重要となっており, 簡便かつ有効な新規のエネルギー環境技術の開発が急務となっている. 本研究の目的は, 天然ガス導入を促進するために, 従来の天然ガス貯蔵方法よりも高密度かつ安全な貯蔵方法を提案・開発することである.

高温高圧水処理による未利用素材の資源化
教授 迫田 章義[代表者], 客員助教授 望月 和博, 助手 下ケ橋 雅樹,助手 佐藤伸明
生産活動から環境への汚濁負荷の削減と資源の有効利用の観点から, 廃棄物を「ごみ」として処分するのではなく「未利用素材」として有効に利用する技術の確立が望まれている. ここでは, 各種未利用素材からの有用物質の合成・抽出に対し, 水熱反応に代表される高温高圧(超/亜臨界)水反応の利用を目的として, 種々の原料および反応条件に対する生成物・素反応に関するデータベースの構築を行ない, 反応残滓を含めた用途開拓を試みることでトータルとしての再資源化に関する検討を行なっている. また, 水熱反応と物理的な粉砕の双方が期待できる蒸煮爆砕処理の導入や大量処理を念頭に置いた超/亜臨界水連続処理プロセスの開発を連携することで, 未利用素材の資源化プロセスの設計・構築に資する知見の集積を行なっている.

廃植物油を原料としたバイオディーゼル生成プロセスの確立
教授 迫田 章義[代表者], 助手 下ケ橋 雅樹,大学院生 張妍
石油基盤型社会からバイオマス基盤型社会への変換において,燃料製造プロセスの開発は重要である.本研究では特に食品用途のない低純度廃植物油を原料としたバイオディーゼル製造プロセスを設計・確立し,さらにその燃料としての質や環境影響を評価することを目的としている.

ニトロ多環芳香族化合物の気相吸着に関する研究
教授 迫田 章義[代表者], 助手 下ケ橋 雅樹,技術官 藤井隆夫
焼却炉などからの排出が問題視されているニトロ多環芳香族化合物の除去法として,活性炭などを用いた吸着除去方法が注目されている.本研究では,同プロセスの設計上重要な知見となる,高温雰囲気下における各種ニトロ多環芳香族の活性炭などへの吸着挙動を明らかにすることを目的としている.

圧力スウィング吸着分離法を利用した同位体分離に関する研究
教授 迫田 章義[代表者],技術官 藤井隆夫,研究員 泉順,大学院生 藤田洋崇
安定同位体は医薬・医療産業等で重要な役割を担っており,更にその利用を拡大するためには有効な濃縮・分離手法の開発が必要となる.現在,精密蒸留法や化学交換法が安定同位体の主流な分離・濃縮手法となるが,コスト的問題を抱えるなど改善の余地は大きい.PSA法(圧力スウィング吸着法)は既に空気分離等で実証されているように優れた気体分離性能,処理容量を示すことから,新しい同位体分離手法としての期待は大きい.本研究では最適吸着剤,最適操作方法等について検討を行うと共に,その適用可能性と限界について明確化する.

フォノンスペクトロスコピーと物性研究
教授 高木 堅志郎[代表者], 助教授 酒井 啓司,酒井研 大学院生 畠山丈司,高木研 大学院生 与儀剛史
光散乱法,パルス法などの手法を用いて物質中のフォノンの位相速度と減衰を測定し,液晶・溶液・ゲル・生体系など複雑流体のダイナミックな物性の研究を行っている.本年度は当研究室で独自に開発した光ビート分光ブリュアン散乱装置を応用した新しい分子緩和測定手法の開発に着手した.これは分子の内部自由度が熱揺動によって運動する際に弾性歪みとカップリングする効果を光散乱法により直接観察するものである.これにより従来多くの超音波測定手法を相補的に組み合わせて得ていた弾性緩和スペクトルを一度の測定で観察することができる.分子会合によるMHz域の緩和を示す液体について測定されたスペクトルは,理論計算から予想される結果とよく一致した.またガラス転移に伴う粘性の増加によって予想される「伝搬しないフォノン」の観察に初めて成功した.

リプロンスペクトロスコピーと液体表界面の物性研究
教授 高木 堅志郎[代表者], 助教授 酒井 啓司, 助手 美谷 周二朗
液体表面を伝搬する高周波表面波の挙動を広い周波数帯域にわたって測定することにより,表・界面の動的な物性を調べることができる.この技術をリプロンスペクトロスコピーと呼んでいる.本年度はサーマルリプロンを測定する広帯域リプロン光散乱法をさらに高性能化し,純水などの単純液体表面で40MHzを超える周波数領域でのリプロン測定を可能にした.これは我々自身が持つ記録を一桁近く拡張する世界最高性能の装置である.また光ヘテロダイン信号の処理に大容量メモリと相関計算を導入することにより,高い時間分解能でのリプロンスペクトルを得ることが可能になった.これによりmsのオーダーで刻々変化する液体表面分子の状態を実時間でモニターすることができる.

音響位相共役波の研究
教授 高木 堅志郎[代表者], 助教授 酒井 啓司,技術専門官 小久保旭
弾性波と電場の非線形相互作用を利用した音響位相共役波の発生,およびそのデバイスへの応用の研究を行っている.位相共役波とは,任意の入射波に対して周波数と位相を保存し,伝搬方向を逆転させた波である.光学における位相共役波の研究は非常に盛んであるが,超音波の位相共役波についての研究はまだ例が限られている.我々はセラミック圧電材料を用いることにより音響位相共役波を高効率で発生させることに成功している.本年度は,新しい位相共役鏡の材料としてレラクサー強誘電体結晶に着目し,音響位相共役波への変換効率の評価を行った.これにより従来のセラミクス素子より1桁高い効率が期待できる.

超音波精密計測に関する研究
教授 高木 堅志郎[代表者], 助教授 酒井 啓司,技術専門官 小久保旭
液体および固体中の超音波に関する新しい計測法と映像法の研究を行っている.薄膜中の音波伝搬測定のために,新しい計測法であるパルス・スペクトラム法の開発を行った.またゼロクロス追尾法を利用して,細管に用いる超音波微小流量計を開発している.特に今年度はアガロースなどのゲル状物質において,表面波とバルクのずり波の結合モードが伝搬する様子を可視化することに成功した.

液体のガラス転移現象と水の熱力学異常の理論的研究(継続)
教授 田中 肇
液体はこれまで密度という秩序変数のみにより記述されると信じられてきたが,我々は,液体が局所的にエネルギーの低い構造(局所安定構造)を形成することを記述するために,新しい秩序変数(ボンド秩序変数)の導入が必要であることを主張している.この液体の2秩序変数モデルは,水の様々な熱力学異常を説明できるばかりでなく,液体のガラス化とランダム磁性体のスピン・グラス化の間にアナロジーが成り立つことを示唆しており,現在, 理論・数値シミュレーションの各面から研究を行っている.

計算機シミュレーションを用いた複雑流体の相分離現象(継続)
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭
当研究室において,高分子溶液系などの動的に非対称な系特有の全く新しい相分離様式が観測されることが実験的に見出され,それを粘弾性相分離現象と名付けた.この現象の起源や相分離メカニズムを明らかにするため,粗視化した濃度場に対する相分離モデルを作成し,数値シミュレーションを行った.その結果,実験的に観測された相分離パターンの時間発展を定性的に再現することに成功し,その時間発展機構を明らかにした.その他,コロイド分散系や液晶系等に対する数値視ミュレーションも行っており,複雑流体を用いた材料開発において,有益な知見を与えるものと期待している.

コヒーレント光散乱法を用いた複雑流体の動的物性(継続)
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭,博士研究員 高木晋作
高濃度コロイド分散系のような白濁した試料では,光の多重散乱が起こる.従来の動的光散乱法では,多重散乱光を単一散乱光と分離できないため,スペクトルに重大な変形を生じる.我々の開発した位相コヒーレント光散乱法では,熱励起揺らぎに代わってレーザー光によってコロイドの濃度変調をコヒーレントに励起し,散乱光を位相も含めて検出するため, 多重散乱光と単一散乱光とを分離することができる.この方法で,従来法では不可能であった白濁試料中での粒子拡散モード光散乱スペクトルの分光に成功した.この励起原理は他のモードにも容易に応用が可能で,干渉縞にコヒーレントな超音波や温度分布の励起,あるいは偏光方向の変化による異方性分子の配向のコヒーレントな制御から,対応するモードの複素スペクトルを観測できる.

高分子混合系相分離現象における粘弾性効果(継続)
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭,博士研究員 小山 岳人
高分子溶液系では粘弾性相分離現象という,これまで知られてきた理論的モデルでは説明できない相分離現象が現れる.その特異性は構造的特徴に現れ,高分子が非常に希薄でありながら高分子濃厚相が細く連結するというものである.このような新たな特徴を有する相分離現象の基礎と応用に関し,直接重要な知見を得るためには,構造形成の発現条件とその過程の時間的・空間的特徴との関係をを明確にする事が必須である.このような観点から研究を行ってきており,現在のところこうした粘弾性相分離現象の発現条件が,分子量によらない表式で統一的に表現できるという知見を得ている.

過冷却液体の長距離密度揺らぎの研究
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭,博士研究員 小林美加
ガラス形成物質では,構造緩和と呼ばれる緩和現象が最も遅い時間スケールをもつと一般的には考えられており,その特徴的長さはナノメーター程度であるとされている.ところが一方で,理論的予測よりもはるかに大きいレイリー散乱の散乱強度が観測されることが知られており,この波数依存性から数百ナノメーター程度の極めて長い相関長の存在が示唆されている.また,その時間スケールは構造緩和時間よりも3〜5桁も長い.こうした長距離の空間相関はFischer clusterと呼ばれているが,その正体はいまだわかっていない.そこで,以上の現象の起源を解明するため,様々な過冷却液体に対して,光散乱法などを用いた研究を行っている.

レーザ・トラッピング法を用いた局所物性測定法の開発と応用(継続)
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭,大学院学生 岩下 靖孝
生物分野で知られるレーザピンセットは,透明媒質内の物体を自由に非破壊・非接触で操作する技術である.これは屈折率の高い物質が電場の強いところ,この場合は集光されたレーザに引き寄せられるという現象を利用したものである.本研究ではこの技術を用いて高分子・液晶などのソフトマテリアルの局所的な力学物性を解明することを目的としている.これまでに界面活性剤系液晶に対してプローブ粒子を用いた微小構造のパターニング,局所粘性率測定を実現しており,またトラッピングビームをスキャンし試料中の微粒子を強制振動させることによる,試料のマイクロレオロジー測定等にも成功している.今後は2本のビームでプローブ粒子をコントロールすることによる,流体や配向場などを介したソフトマテリアル内での複雑な2体間相互作用の解明などにも取り組む予定である.

分子性液体における液体・液体相転移
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭,大学院学生 栗田 玲
Triphenyl Phosphite(TPP)という典型的な分子性液体において,過冷却液体とも結晶とも異なったGlacial相と呼ばれる相がKivelsonらによって発見された.この相に対して様々な研究者がX線やNMRといった微視構造解析手法を用いて研究した結果,微結晶説や柔粘性結晶説など様々な結論に至ってしまい,実際のところGlacial相の正体は不明のままであった.そこで,Glacial相のパターン形成に注目し顕微鏡や熱量測定,力学測定を行った.その結果,TPPは液体・液体相転移することを発見し,Glacial相は第2液体のガラス状態であることが明確にわかった.このことから,初めて分子性液体において液体・液体相転移を観察したといえる.これまで観察された液体・液体相転移は原子性液体であったので,高温・高圧という条件でしか相転移は起こらず,そのキネティクスを調べることは出来なかった.今回発見したTPPにおける液体・液体相転移は常温・常圧であるので,相転移のキネティクスを詳細に調べることが出来た.その結果,初めて液体・液体相転移の連続転移を発見した.

コロイド分散系・リゾチーム溶液における粘弾性相分離
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭,大学院学生 西川 裕也
我々の研究室では,高分子溶液系のような大きな分子と小さな分子を混ぜた動的に非対称な混合系において,これまでに知られている相分離様式では説明できない新しいタイプの相分離現象(粘弾性相分離)を見出した.粘弾性相分離の本質的な起源が成分間の動的な非対称性にあるという我々の主張が正しければ,高分子特有の粘弾性をもたない動的非対称な系であるコロイド分散系やリゾチーム溶液においても,同様に粘弾性相分離が観察されるはずであると考え,粘弾性相分離現象の普遍性を検証するため,これらの系における相分離について研究をしている.手法としては,三次元系における構造形成のダイナミクスを観察するために,共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて実験した.そして,これらの系の相分離において,コロイドやリゾチームが溶媒に対して少数相となる領域で,これらの相が系全体に連結したネットワーク構造を形成し,その後ネットワークが切れることにより粗大化が起こることが観察された.このように少数相により過渡的ゲルが形成されることは粘弾性相分離特有の特徴であり,コロイド分散系やリゾチーム溶液においても粘弾性相分離が起こることを強く示唆する結果となっている.

セッケン2分子膜系における流動誘起トポロジー転移
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭,大学院学生 宮澤秀之
セッケンは日常生活において様々な場面で活躍しているが,これは一分子内に親水性,疎水性をあわせ持っているためである.このような両親媒性分子は水溶液中においてミセルや2分子膜などの様々な会合体を形成することが知られているが,本研究室では2分子膜に流動場をかけたときの影響に注目している.2分子膜には,高温領域における膜がランダムに結合したスポンジ相と低温領域における膜が球状に重なったオニオン相(低濃度では平行配向したラメラ相)が存在する.一般的にスポンジ相から降温するとオニオン相に転移し粘性率が増加することが知られているが,流動場をかけた場合ある大きさ以上の流動場においては粘性率の減少する転移が観察された.現在,この粘性率の差をもたらすオニオン相の構造差,流動場の臨界値と濃度の関係などについて研究中である.

相互作用にフラストレーションを導入した過冷却液体・ガラス転移の数値シミュレーション
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭,大学院学生 新谷寛
球状の分子からなる系において,結晶構造的に許される配置よりも,局所的には正二十面体構造の方がエネルギー的に安定であることが指摘されている.液体中にはこのような局所構造が存在しており,液体がガラス化する際には,結晶構造の対称性とそれと相容れない局所構造の対称性の競合が重要な役割を果たすという考えに基づき,我々は二秩序変数モデルを提案してきた.そこでこの考え方の妥当性を検証する目的で,局所構造を反映する(結晶構造に対してフラストレーションを生ずる)異方的な変調をLJ(Lenard-Jones)ポテンシャルに掛けたポテンシャルを用いて2次元MDシミュレーションを行った.その結果フラストレーションの強度(変調の強度)を変化させると,2次元単一粒子系でガラス化が起こることが示された.今後は変調強度が液体の緩和,結晶化,ガラス化等にどのような影響を及ぼすかを研究していく予定である.

準結晶の高分解能コンプトン散乱測定(継続)
教授 七尾 進[代表者], 助手 渡辺 康裕
コンプトン散乱は物質中の伝導電子に関する定量的な測定が可能な唯一の測定手法であり,伝導電子に関する貴重な情報を得ることができる.我々はSPring-8,BL08Wにおいて準結晶の伝導電子に関する測定を系統的に行っている. 本年度は正二十面体CdYb合金の高分解能測定を行ない,CdのspバンドとYb の 5dバンドの混成が,Hume-Rothery 的な安定機構とともに,擬ギャップの形成に寄与していることを見出した.

(Fe,Mn)4N磁性薄膜の作製と評価(継続)
教授 七尾 進[代表者], 助手 渡辺 康裕
Fe-N系化合物のうちのひとつであるFe4Nは高い飽和磁化を持つ優れた軟磁性材料であり,機械的強度も高く磁気ヘッド材料として有望である.この合金を出発点とし更なる特性向上を目指し,スパッタリング法によりMnを添加した合金磁性薄膜の作製とその特性の変化を研究した.その結果Fe の一部を Mn で置換すると,配向性が著しく向上することを確認した.

電解コンデンサ用ニオブおよび合金電極材料の研究(継続)
教授 七尾 進[代表者], 助手 渡辺 康裕
現在タンタルコンデサが高性能電解コンデンサとして使用されているが,タンタルは高価である上に資源的な不安定要素を抱えている.タンタルを代替する電解コンデンサ電極材料としてニオブが注目を集めているが,その誘電体被膜には温度的,耐電圧的不安定要素が存在し本格的実用化に至っていない.この欠陥を克服すべく,ニオブに第2元素を添加した合金を作成することにより,新しい電極材料が耐電圧特性,耐温度サイクル特性に優れることを明らかにした.また,Nb 自体の基礎的研究として,Nb 箔の表面状態と電気化学的特性の関連,表面構造の変化などを調べた.

準結晶の磁気コンプトン散乱測定(新規)
教授 七尾 進[代表者], 助手 渡辺 康裕
磁気コンプトン散乱は,磁性体の磁化に寄与する電子のスピン磁気モーメントの大きさとその運動量分布との相関を測定する手段である. 正十角形相の Al-Mn-Fe-Ge 合金は大きな磁化(鉄の1/10程度)をもつ2次元準結晶で,ab 面内では準周期的,それと垂直な方向では周期的な構造をもっている.この系の全磁化測定では,磁化方向によって異方性は認められなかった.しかし,磁気コンプトン測定では,準周期方向と周期方向で明確な異方性が観測された.通常2次元の準結晶でも電子スペクトルの異方性は非常に小さいが,磁気コンプトン散乱法よって磁性を担う3d電子のみのスピン依存運動量分布を測定したので,その異方性をはじめて検知しえたものと考えられる.

X線発光分光法によるPt有機クラスターの研究(新規)
教授 七尾 進[代表者], 教授 溝部 裕司, 助手 渡辺 康裕
X線発光分光法とは試料にX線を照射し,内殻電子を励起させ,安定状態に戻るときに試料が発光するX線を分光して,試料の電子状態を調べる新しい測定手段である.とくに,入射X線のエネルギーを特定元素の吸収端近傍で走査することによって,試料中の特定元素の電子状態に関する詳細な情報が得られる.新しく合成された,Pt有機クラスター( |NEt4||Tp*WS3(PPh3)| および |NEt4||Tp*WS3(Cl2)| ) は触媒の基礎構成材料としても有力な物質であるが,そのなかで重要な役割を演じる Pt の電子状態についてはほとんど知られていない.の Lα1 発光を調べることにより,その価数を決定したことをはじめとして,電子状態に関する新しい情報を得た.

軟X線磁気円二色性および硬X線発光磁気円二色性を使った磁気構造の研究(新規)
教授 七尾 進[代表者], 助手 渡辺 康裕
磁気モーメントの軌道成分は磁気異方性の起源であり磁性材料設計に非常に重要な要素であるが,従来の実験手法では磁気モーメント全体から軌道成分の寄与を分離評価することはできなかった.また,合金の構成元素の磁気特性への寄与を評価することも困難であった.磁性材料として重要な希土類−遷移金属合金およびFe4N,(FeMn)4Nについて行った軟X線磁気円二色性の実験結果を精密に解析し,成分別磁気特性および軌道成分の大きさを評価することに成功した.

元素選択XAFS分光法と寿命幅フリーXAFS分光法の開発(新規)
教授 七尾 進[代表者], 助手 渡辺 康裕
X線吸収微細構造(XAFS)は,元素選択性をもった局所構造および電子構造の研究手段として極めて有用であるが,原子の酸化数や局所的な結合状態が異なる状態に関して平均化された情報しか得られない.特定の蛍光X線エネルギー領域をモニターしながら励起スペクトルを測定する方法はXAFSに状態選択性を付与することができる.この方法を選択的XAFS分光法と呼ぶ.新たに開発した共鳴X線非非弾性散乱測定装置を用いて,最も代表的な混合原子価化合物のひとつであるGaCl2を試料として,現在の技術で状態選択XAFSが極めて有効に測定できることを明らかにした.また,CuOの共鳴X線非非弾性散乱を測定し発光の2次元プロファイルから,寿命幅フリーXAFSが導出できることを明らかにした.

体外循環による血中病原性微粒子除去システムの開発
教授 畑中 研一[代表者], 助手 粕谷 マリアカルメリタ,畑中研 大学院学生 宮川淳,畑中研 大学院学生 中根正之
血液透析膜を用いて血中の病原性細菌やウイルスを選択的に吸着・除去する装置を開発することを目的としている.具体的には,化学合成した糖質高分子や細胞を用いて合成したオリゴ糖鎖(病原性微生物や病原性たんぱく質に特異的に結合するもの)を元に調製される糖質高分子を中空糸に固定化し,血液の体外循環によって,血中の病原性微粒子濃度を著しく低下させる装置を開発している.血中の病原体数を減少させることにより,その後の治療効果を上げると考えられ,抗生物質の過大投与を避けることも可能となる.

糖鎖プライマーを用いた細胞による糖鎖生産
教授 畑中 研一[代表者], 助手 粕谷 マリアカルメリタ,畑中研 大学院学生 室塚淑美
長鎖アルキルアルコールのグリコシド(糖鎖プライマー)を培地中に添加して細胞を培養すると, 糖鎖プライマーは細胞の中に取り込まれ, 糖鎖伸長を受けた後に培地中に出てくる. 本研究では, 長鎖アルキルの末端にアジド基や二重結合などの官能基を導入した糖鎖プライマーを用いて, 細胞内における糖鎖伸長を観察し, 糖質高分子の構築を試みている.

ヌクレオシドを有するポリマーと細胞膜表面の糖転移酵素との相互作用
教授 畑中 研一[代表者], 助手 粕谷 マリアカルメリタ,畑中研 大学院学生 岩本邦彦,畑中研 大学院学生 堀池由浩
糖転移酵素は糖ヌクレオチドの糖鎖部分を受容体糖鎖上に転移する. 本研究では, 細胞膜表面のガラクトース転移酵素を利用して, ウリジン, ガラクトース, N−アセチルグルコサミンを有するポリマー上への特異的な細胞接着および細胞移動などに関して調べている.

生分解性プラスチックの設計と合成
教授 畑中 研一[代表者], 助手 粕谷 マリアカルメリタ,畑中研 大学院学生 田村潔
目的に合った物質特性を有する高分子材料に生分解性を付与していこうとする積極的な立場で新素材開発に取り組んでいる. 本研究では, 種々の高分子材料の分子鎖中にオリゴ糖鎖を組み込み, 材料本来の物性を損なうことなく分解性を付与していくことを目標としている.

糖鎖合成における含フッ素化合物の利用
教授 畑中 研一[代表者], 助手 粕谷 マリアカルメリタ,畑中研 大学院学生 クシリューベン
糖鎖合成には,化学合成,酵素合成,細胞内合成などがあるが,フッ素を含む化合物を用いて,化学反応の制御や含フッ素溶媒による抽出などを行い,糖鎖合成の簡略化を目指す.

抗体を結合したMRI増感剤の調製
教授 畑中 研一[代表者], 助手 粕谷 マリアカルメリタ
動脈硬化部位をMRIで観察することを目的とする.化学修飾した多糖誘導体で被覆した金属粒子に動脈硬化部位指向性抗体を結合させることにより,動脈硬化部位をMRIで測定するときの増感剤として開発する.

多糖高分子化合物の物性研究
教授 畑中 研一[代表者], 助手 粕谷 マリアカルメリタ
化学的手法および物理的手法を用いて,薬剤の開発に必要な天然多糖DDS化合物(多糖の化学修飾によって得られる高分子に薬理活性物質を結合させたもの)の構造解析を行い,天然多糖DDS化合物に観察される物性変化現象を解明する.

糖鎖を含有するブロック・グラフト重合体の合成
教授 畑中 研一[代表者],畑中研究室 技術官 奥山光作
新規な材料開発を目的として,糖鎖ポリマーへのブロック重合反応およびグラフト重合反応を行い,ブロック共重合体,グラフト共重合体を合成している.

ウイルス除去フィルターの作成
教授 畑中 研一[代表者],畑中研 技術官 奥山光作
糖鎖の相互作用などを利用してインフルエンザなどのウイルスを除去するフィルターを作成している.

天然多糖の修飾による高機能材料化
教授 畑中 研一[代表者], 助手 粕谷 マリアカルメリタ
ヘパリンやコンドロイチン硫酸,ヒアルロン酸やコロミン酸などの天然の機能性多糖に様々な官能基を導入することによって,新しい機能を持った新材料を開発使用としている.

サーメットの核/縁組織に関する考察
教授 林 宏爾
Fe-Si系合金における包析反応が著しく遅いことの機構として,「核-縁組織における拡散寄与型原子空孔の枯渇説」を提唱し,既にFe-Si合金については実験的に検証した.本年度は,前年度に引き続いてTiC-Mo2C-Niサーメットの核/縁組織について詳細に調べ,同組織はFeSi縁/FeSi2 縁組織と異なり,消滅すること,これは,平衡組織となるための原子の拡散方向が,後者では縁から核の方向であるのに対して,前者では,核から縁への方向であるために核内部で原子空孔は枯渇しないためであることを明らかにした.

硬質材料の破壊強度を破面面積から見積る新方法の開発
教授 林 宏爾
超硬合金などの硬質材料については,切欠き無しの試片を破壊させると,一試片の破片数は,(1)同一材料では破壊強度の大なるほど多数となる,(2)同一強度の下では,破壊靭性が低い材料ほど多数となる,などの現象を発見・解析し,破壊靭性は,切欠き無しの試片の破面面積と破壊強度によって定量的に表示できること,およびこの表示式を用いて破壊靭性の新見積り法を開発した.本年度は,工具鋼について適用できるかどうかを詳細に検討した.

超微粒超硬合金のWC/CO界面高分解能TEM組織
教授 林 宏爾
超微粒超硬合金には,粒成長抑制剤としてVCがドープされる.このVCはWC/Co界面に偏析していることが報告されているが,この偏析が平衡偏析によって生じたのか,あるいは焼結後の析出によって生じたのかは明らかでなかった.焼結後の冷却速度が異なる合金の同組織をHRTEMにより観察し,後者の機構により生じることを明らかにした.

時間分解テラヘルツ分光法を用いた半導体中のキャリアダイナミクスの解明
教授 平川 一彦[代表者], 助手 大塚 由紀子, 助手 関根 徳彦,科学技術振興特任研究員 近藤孝志,協力研究員(産総研)島田洋蔵,平川研 大学院学生 村瀬成康
フェムト秒レーザパルスを用いた時間分解テラヘルツ(THz)分光法を用いて,半導体中のキャリアの超高速運動が放出するTHz電磁波を実時間領域で検出することにより,キャリアのダイナミックな伝導現象を解明することを目的に研究を行っている.本年度は,電気光学サンプリング法により,高電界を印加したガリウムひ素中を伝導する電子が放射するTHz電磁波を検出し,電子の過渡速度の温度依存性を実験的に明らかにするとともに,フォノン散乱の影響を考察した.

半導体超格子中の電子のミニバンド伝導とその応用
教授 平川 一彦[代表者], 助手 関根 徳彦,研究員(産総研)島田洋蔵,科学技術振興特任研究員 近藤孝志,ポスドク(科学技術振興機構)Sang Haiyu
時間分解テラヘルツ(THz)分光法を用いて,半導体超格子中のミニバンドを伝導する電子が放出するTHz電磁波を実時間領域で検出することにより,超格子中のキャリアダイナミクス,およびブロッホ振動を用いたTHz電磁波の発生・増幅・検出の可能性について探索を行っている.本年度は,(1)THz電気光学サンプリング法を用いて,放射されたTHz電界波形を測定することにより,伝導率の実部と虚部を独立に測定することに成功し,ブロッホ振動する電子の利得スペクトルを求めることに初めて成功した.(2)ブロッホ振動する電子の散乱機構が,界面凹凸散乱と合金散乱であることを明らかにした.(3)ブロッホ利得の最高周波数を制限しているジーナートンネル効果について検討し,THz電磁波の強度測定より,第3ミニバンドまでへのトンネルを確認した.

自己組織化量子ドットを用いた超高感度赤外光検出器の開発
教授 平川 一彦[代表者], 教授 榊 裕之,平川研 大学院学生 Jung Minkyung,瀬上剛
自己組織化InAs量子ドット構造の特異な電子状態を利用して,超高感度の赤外光検出器を実現することを目的として研究を行っている.特に,自己組織化量子ドットと高移動度変調ドープ量子井戸を組み合わせた横方向伝導型量子ドット赤外光検出器を提案・試作し,その評価を行った.本年度は,(1)光励起キャリアの寿命の温度依存性から,支配的な散乱機構を明らかにするとともに,素子構造との関連を明らかにした.(2)光電流スペクトルの半値幅より,s準位とp準位の波動関数の空間的広がりに関する知見を得た.

量子ナノ構造の超微細加工プロセス
教授 平川 一彦[代表者],科学技術特任研究員 赤坂哲郎,平川研 大学院学生 Jung Minkyung,梅野顕憲
量子力学的によく制御された系は,単一量子の発生・検出や,コヒーレンスを用いた計算・通信などの技術分野で,ますますその重要性を増しつつある.我々は,半導体表面・ヘテロ接合界面におけるミクロな電子構造の解明と制御,また原子レベルでの超微細加工プロセスの研究を行っている.本年度は,(1)単一自己組織化InAs量子ドットに電極を形成し,単一電子トンネル作製するとともに,そのコンダクタンスに量子ドットの殻構造を観測することができた.(2)単一分子エレクトロニクスを視野に入れた超微細電極作製の検討を開始し,エレクトロマイグレーション効果を用いたブレークジャンクション法や極微めっき法などを用いることにより,原子レベルで金属電極間のギャップを制御する技術を確立しつつある.

先端MOSトランジスタ中のキャリア伝導に関する研究
教授 平川 一彦[代表者],平川研 大学院学生 Park Kyunghwa,船尾大輔,教授(東大,MIRAIプロジェクト)高木信一
近年Si MOSトランジスタの微細化,高性能化が急速に進められている.特に,極薄酸化膜構造やひずみSi/SiGe系MOSFETにおいては,新しい物性がその動作に影響を与えることが予想されている.本研究においては,先端MOSFET中のキャリア輸送に関する物理を明らかにすることを目指している.本年度は,シュブニコフ・ドハース振動を用いて,極薄酸化膜を有するSi MOS構造中のキャリアの有効質量を測定し,チャネル中の電子とゲート中の正電荷の相互作用によると思われる有効質量の増大を観測した.

分子線エピタキシーを用いた高純度半導体へテロ構造の成長
教授 平川 一彦[代表者], 助手 関根 徳彦,技術員(科学技術振興機構)上田剛慈,平川研 大学院生 Jung Minkyung,瀬上 剛,小林秀央
分子線エピタキシーを用いて,原子レベルで精密に制御された半導体へテロ構造の作製を行っている.特に,今年度は,赤外単一光子検出のための高移動度ヘテロ構造二次元電子系や自己組織化量子ドットの成長,さらに量子カスケードレーザを目指した構造の成長を行った.

サブ10nm極限CMOSデバイスに関する研究
教授 平本 俊郎[代表者],助手 更屋拓哉,平本研 大学院学生 南雲俊治,平本研 大学院学生 宮地幸祐,平本研 大学院学生 橘 文彦
最近のVLSIデバイスの微細化は凄まじく,すでにMOSFETのゲート長は量産レベルで60nm程度まで微細化している.このままの勢いで微細化が進むと10nmに数年のうちに到達する.本研究では,10nmスケール以下の超低消費電力極限MOSFETを実現するためのデバイスビジョンを確立することを目的とする.ナノスケール領域で超低消費電力とばらつき抑制を達成するためには,基板バイアス効果の利用が必須である.そこで有限の基板バイアス効果を有し,しかも短チャネル効果に強いデバイスとして,セミプレーナーSOI MOSFETを提案している.例としては,三角形細線MOSFETやアスペクト比の低いFinFETが挙げられる.シミュレーションにより,これらのデバイスの構造や形状による低消費電力化・ばらつき低減の効果を実証するとともに,試作も行っている.

完全空乏型SOI MOSFETの基板バイアス効果を利用した高性能化と低消費電力化
教授 平本 俊郎[代表者],助手 更屋拓哉,博士研究員 Anil Kumar,平本研 大学院学生 南雲俊治,平本研 大学院学生 三島正寛,平本研 大学院学生 大藤 徹
完全空乏型SOI MOSFETは将来の低消費電力デバイスとして有望である.本研究では,本デバイスの特徴を引き出すため,基板バイアス効果を積極的に利用した高性能化と低消費電力化とについて検討している.本年度は,回路の動作時と待機時で基板バイアス定数を変化させる全く新しいデバイスを提案した.SOI基板の空乏層容量がバイアスとともに変化する効果を利用する.動作時には基板バイアス定数を小さくし,大きなオン電流を得て高速化を達成する.一方,待機時は基板バイアス定数を大きくしてしきい値電圧を大きく変化させ,オフ電流を低減する.本デバイスの有用性をデバイスシミュレーションにより実証した.また,実験によりSOIの基板容量の変化により基板バイアス定数を変調できることを示した.

極微細シリコンMOSFETにおける量子力学的効果の研究
教授 平本 俊郎[代表者],平本研 大学院学生 齋藤真澄,平本研 大学院学生 筒井 元
シリコンMOSFETは性能向上のため微細化が続いているが,そのサイズがナノメートルオーダーになると量子効果が顕著に特性に影響を及ぼす.本研究では,極めて細いチャネルをもつMOSFETにおける量子力学的効果を実験とシミュレーションにより検証している.実際にチャネル幅が10nm以下のMOSFETを試作し,しきい値電圧が線幅の減少とともに上昇する量子力学的狭チャネル効果を観測することに成功している.また,量子効果の異方性により,チャネル方向が<110>方向の方が<100>方向の場合より移動度が電子,正孔とも高くなることをシミュレーションにより示している.本年度は,極めて薄いSOI MOSFETにおいて,量子効果により基板バイアス効果によるしきい値電圧可変範囲が大きくなることなどを実験的に明らかにするとともに,量子効果が起こっている場合のキャリア散乱機構について詳細な評価を行った.

シリコン単電子トランジスタにおける物理現象の探究
教授 平本 俊郎[代表者],平本研 大学院学生 齋藤真澄,平本研 研究実習生 村上 祐,平本研 研究実習生 原田英浩
シリコンにおける単電子帯電効果を明らかにすることは,VLSIデバイスの性能限界を決める上で必須であるとともに,新しい概念をもつデバイスを提案する上でも極めて重要である.本研究では,Siにおいて極微細構造を実際に作製し,単一電子現象の物理の探究を行っている.これまでに,VLSI互換プロセスを用い室温でクーロンブロッケード振動を示す単電子トランジスタの作成に成功している.本年度は,シリコンドットのサイズを更に微細化するプロセス技術を開発し,室温において山谷比約40という大きなクーロンブロッケード振動を得ることに成功した.この振動は,単一ドットのシリコン単電子トランジスタでは世界最大である.また,ドット径が2nmと小さいため量子効果も発現し,山谷比11という大きな負性部分コンダクタンスを室温で観測した.この山谷比もシリコンプレーナデバイスでは世界代々である.これらを組み合わせ,室温においてデバイス1個で論理動作を実現することに成功した.この成果は,2003年12月の国際電子デバイス会議(IEDM)にて発表を行った.

シリコン量子ドットを浮遊ゲートとするシリコン微結晶メモリ
教授 平本 俊郎[代表者],博士研究員 Julien Brault,研究員 金 一權,平本研 大学院学生 齋藤真澄,平本研 研究実習生 柳平康輔
シリコンドットを浮遊ゲートとするシリコン微結晶メモリは,現在のフラッシュメモリに代わる不揮発性メモリとして有望であり,近年盛んに研究されている.本研究では,シリコンドットメモリの性能向上,電子数の制御,および集積化の研究を行っている.本年度は,最新のDRAMプロセスを利用してシリコン微結晶メモリを集積化することに成功した.セルサイズは0.077平方ミクロンであり,シリコン微結晶メモリでは世界最小である.また,局所的なホットキャリア注入により1つのセルで2ビットを記憶できる.また,信頼度と保持時間向上のため,プロセス中にフッ素を導入する手法を提案し,実験によりその効果を実証した.この成果は,2003年12月の国際電子デバイス会議(IEDM)にて発表を行った.

新規遷移金属反応場の高効率分子変換への利用
教授 溝部 裕司[代表者], 助手 清野 秀岳,技術官 大西武士,溝部研 大学院生 岩佐健太郎,溝部研 大学院生 羽生竜平,溝部研 大学院生 権藤寿美恵
有機金属錯体はその金属の種類や酸化状態, 金属中心を取りまく配位子の立体的および電子的効果などにより, その金属サイト上で多彩な化学反応を促進できる. 本研究では, 単核から多核にわたる様々な金属錯体について新規に設計・合成を行い, これら錯体上で進行する高効率・高選択的反応を検討することにより次世代の触媒の開発を試みる.

遷移金属カルコゲニドクラスターの合成と利用
教授 溝部 裕司[代表者], 助手 清野 秀岳,溝部研 博士研究員 長尾正顕,溝部研 大学院生 網塚貴彦,溝部研 大学院生 五味田里美,溝部研 大学院生 越川壮一,溝部研 研究実習生 斉藤晃宏,溝部研 研究実習生 小島愛子,溝部研 研究実習生 柴田梨江
カルコゲン元素(第16族元素)配位子により架橋された強固な骨格をもつ遷移金属クラスターは, 生体内酵素活性部位モデル, 高活性触媒, 高機能性材料などとして幅広い学術的および工業的用途が期待される. 本研究では, 多様な遷移金属-カルコゲニドクラスターの一般性ある合成法を確立するとともに, 得られた新規化合物の詳細な構造と反応性の検討を行い, その高い機能の利用法を開発する.

遷移金属クラスターを担持した新規固体触媒の開発
教授 溝部 裕司[代表者],技術官 大西武士, 助手 清野 秀岳,溝部研 研究実習生 屋代顕史
分子性の遷移金属クラスターについては,合成化学的手法を用いて望み通りの構造と組成をもつ多核構造を構築することが可能である.本研究では,架橋カルコゲニド配位子により強固に連結された金属多中心をもつクラスターを,その特異な骨格構造を保持したままで担体上に担持することにより,高い反応性を有する新規触媒の開発を目指す.

ガラス中のイオン伝導機構の解明
助教授 井上 博之
ガラスは結晶質とは異なり,明確な原子配列あるいは原子位置が特定できない.このようなガラスにおいても,比較的イオンの動きやすい組成があることが知られているが,原子位置や配列が特定できないために,その伝導イオン種や機構が明確にわかっていない.本研究では,このようなガラスの中のイオン伝導機構や伝導パスの解明を行い,さらに伝導度の高いガラスの開発を試みる.

ガラス中の微細組織の形成
助教授 井上 博之
ガラス中のナノレベルの微細な組織の形成は,ガラスに新たな特性を付与することが期待される.本研究では,酸化物ガラス中に微細なハロゲン化物の相を析出させる.この相の析出過程を調べ,また,制御することにより,機能を持たせることを目指している.

ガラス中の希土類イオンの発光設計
助教授 井上 博之
希土類イオンは,その発光特性が利用されている.本研究では,ガラス中の希土類イオンの周囲の原子配列とその発光特性の関係を明らかにすることを目的としている.これにより,希土類イオンの発光スペクトルから,種々のガラス中における原子配列を解析することや希土類イオンの光学的特性を把握して,その特性を設計することを目指している.

転位の基礎的性質に関する研究
助教授 枝川 圭一
結晶転位の芯構造や動力学的性質に関する計算機を用いた研究を引き続いて行っている. 今年度は, 以下の研究を行った. 1)bcc金属中転位のパイエルス機構による運動を遷移経路計算法を用いて調べた. 2)bcc金属中のらせん転位の芯構造を透過型電子顕微鏡を用いた高分解能観察法で特定できる可能性について像シミュレーションを行って検討した.また,Moについて対応する実験を行っている.

準結晶のSTMおよびSTS
助教授 枝川 圭一
特殊な構造秩序をもつ準結晶表面について走査トンネル顕微鏡観察(STM)および走査トンネル分光(STS)を行った. これまで準結晶構造を直接観察する方法としては高分解能電子顕微鏡法が使われてきたが, この方法は電子線入射方向の平均構造を反映した像となるためその解釈に難点がある. この点STM法では表面一層の原子配列を観察できるため有利である. 本年度は昨年度に引き続きAl-Ni-Co正10角形準結晶について主にSTS測定を行った.これにより特殊な表面準位の存在を明らかにした.

準結晶のフェイゾン弾性
助教授 枝川 圭一
準結晶にはその特殊な構造秩序を反映してフェイゾンとよばれる特殊な弾性自由度が存在する. 準結晶のフェイゾン弾性は, そもそも準結晶構造秩序がなぜ安定に存在しうるかといった基本的な問題と深く関係しており, また準結晶の電子物性, 熱物性, 力学物性の特殊性の源とも考えられている. 従ってその性質を明らかにすることは重要である. 本年度は, 準結晶中のフェイゾン歪の緩和課程を高分解能電子顕微鏡を用いて直接観察した.このときフェイゾン・フリップが直線的に伝播する様子を世界で初めて観察した.

アモルファス金属の塑性
助教授 枝川 圭一
金属ガラスは,合金系によらず,ビッカース硬さとヤング率の比がほぼ0.06となることが実験的に示されている.このことは系によらない金属ガラス共通の塑性変形機構の存在を示唆するものである.また,金属ガラスの変形がすべりによることが多くの系で見出されており,このことは変形がある種の転位の運動によって起こることを示唆するものである.本研究では,計算機上に金属ガラスの構造モデルを作製し,これに転位を導入し,その転位の動力学的性質を調べることにより,金属ガラス共通の塑性変形機構を明らかにすることを目的としている.

巨大磁気抵抗効果を示すペロブスカイト型酸化物の電磁気特性
助教授 小田 克郎
ペロブスカイト型結晶構造を持つLaMn系酸化物は磁場を印加することにより巨大な磁気抵抗(GMR)効果を引き起こす.このGMR効果は電子のスピンによるキャリアーの散乱に関連したものであるため,電気伝導を磁場でコントロールできる.この特性から次世代のMR素子や磁場制御機能性材料への応用面に期待をもたれ,同時に基礎物性の面では3d遷移金属酸化物における磁性と伝導の複合した物質として注目を浴びている.LaMn系酸化物における伝導バンドのフィリング制御にはMn4価はキャリアーを担う重要なファクターであると考えられる.LaMn系酸化物中の既存の研究の多くはLaサイトを他の2価金属イオンで置換したもので行われている*1.それに対して本研究ではBサイトのMnをNiで一部置換した試料を作製しMn4価量と電気的性質の相関を調べた.

巨大磁気抵抗効果を示すペロブスカイト型Mn酸化物薄膜の作製
助教授 小田 克郎
本研究ではヘリコンスパッタ法を用いて結晶配向性の揃った[RE](Mn,Met)O3ペロブスカイト型Mn酸化物薄膜[RE:希土類金属,Met:3d金属]を作製してそのGMR効果を調べることを目的とする.特に,薄膜を作製する際に酸素のアシストガンを併用した"基板上反応性スパッタ法"を用いて,高品質の結晶配向性の揃った薄膜の作製を狙うのが独創的な点である.この方法では複数のヘリコンガンでメタルのターゲットをたたいて酸化物を校正する金属イオンを基板へ跳ばし,基板上に別のアシストガンからラディカルな酸素原子を入射して基板上で酸化反応を起こさせるガンへの投入エネルギーと酸素の入射エネルギーを調節してペロブスカイト型構造の結晶配向性を制御する.

磁性強誘電体薄膜の作製とその物性
助教授 小田 克郎
強誘電体の磁気特性についてはバルク材について少し調べられているが,薄膜についてはほとんど調べられてきていない.本研究ではこのような強磁性と強誘電性を組み合わせた新しい電磁気機能性を持つペロブスカイト型結晶構造の薄膜の作製し,その薄膜の強誘電,強磁性特性を調べることを目的とする.薄膜の作製方法としては優れた強誘電特性を得るためには必要不可欠な結晶配向性のそろった薄膜を作製するのに適したイオンビームスパッタリング法を用いる.

結晶配向性の揃ったFe4N窒化物薄膜の作製
助教授 小田 克郎
Fe4N高い内部磁場を持ち,次世代の磁性材料として有望視されている.本研究では結晶配向性の揃ったFe4N薄膜を作製して,結晶配向性とともに,磁化の方位も揃えて垂直磁化異方性膜の作製を目指している.

自由水粉体比に基づくフレッシュモルタルの流動性に関する一般化理論の構築
助教授 岸 利治
配合条件の異なるモルタルに遠心力を与え,浮き水量を測定し,この浮き水量を自由水量とし,粉体容積で除した百分率を自由水量粉体容積比(WfP)と定義する.フローの広がりから得られる変形性の指標は,WfPと高性能AE減水剤(SP)の添加量によって,定式化可能であることを明らかにした.最終的には,自由水粉体比に基づくフレッシュモルタルの流動性に関する一般化理論を構築することを目標としている.

RC構造の能動的破壊制御のための埋め込み型人工デバイスの開発
助教授 岸 利治[代表者],教授(東大) 前川宏一,岸研 大学院学生 田中泰司
コンクリート部材にとって致命的なせん断破壊を,あらかじめ部材内に埋め込んだ装置により人工的に誘発される亀裂によって制御できる見込みが既往の研究から得られている.この結果を受けて,ねじりを含む任意方向からの荷重入力に対する装置の信頼性や施工におけるシステムの実現可能性を考慮した最適な人工デバイスの開発に取り組んでいる.主として実験的な検討を行い,破壊制御による安全性能の向上と同時に,装置による破壊の誘発といった危険性も合わせて検討している.

膨張コンクリートのひび割れ抵抗機構の解明とその評価
助教授 岸 利治[代表者],岸研 大学院学生 Raktipong Sahamitmongkol
膨張コンクリートの優れた特徴である高いひび割れ抵抗性や変形性をもたらす機構の本質をとらえ,その定量的な評価を行うことを目指している.膨張コンクリートの汎用化へ理論的裏付けを与えることで,コンクリート構造物の高機能・長寿命化と信頼性向上に貢献することがねらいである.膨張材量一定の条件下で鉄筋比を変化させることにより,膨張コンクリートに蓄積された圧縮力であるケミカルプレストレスと拘束鋼材の伸びひずみであるケミカルプレストレインが,CPRCのひび割れ抵抗性に与える影響について検討を行っている.また,乾燥環境下での,CPRCのひび割れ抵抗性の変化について検討を行っている.

複合水和発熱モデルの一般化と高度化
助教授 岸 利治[代表者],岸研 大学院生 小田部裕一
コンクリート構造物の高機能化に伴い, 自己充填コンクリートや高強度コンクリート等の低水セメント比配合のコンクリートを使用する事例が増えている.また,複数の混和材を多量に添加する混合セメントの使用事例も増えている. 一方, 性能照査型の設計体系への移行に伴い, 設計耐用期間におけるコンクリート構造物の挙動を精度良く予測し, 構造物の健全性を確実に担保することが求められている. そこで, 本研究では, 解析と実験の両面から微視的機構の解明を試み, 構成モデルの高度化による数値解析手法の一般化を図ることを目的としている.

新規多座配位子を用いた触媒的有機合成反応(継続)
助教授 工藤 一秋[代表者],研究実習生 上村 稔
これまでに,酸素, 窒素, リンの3種の異なる元素を配位座として持つ新規不斉配位子の設計・合成を行ってきている.本年度はこの配位子の種々の触媒反応への応用を検討した.その結果,本配位子が全くタイプの異なるいくつかの金属触媒反応に有効にはたらき,好収率で生成物を与えることを見い出した.不斉収率には改善の余地があるものの,本配位子が多用途に使用可能であることを明らかにできた.

新規な電子機能有機材料の創製
助教授 工藤 一秋[代表者],教務職員 高山 俊雄, 助手 坂本 清志,大学院学生 室田 和敏
Alq3は有機電界発光(有機EL)素子にしばしば用いられ,優れた電子輸送性材料であることが知られている.一方,湿式で扱えるため素子作製が容易な高分子有機EL材料が近年注目されている.これらの背景のもと,Alq3誘導体を側鎖にもつ高分子の合成を行った.一般にAlq3部位をもつ高分子は,溶液中で容易に配位子交換して架橋・不溶化し,湿式プロセスに適用できなくなることが知られているが,適当な誘導体を用いることで架橋を回避し,可溶性の高分子錯体を得た.この他,導電性高分子の1つであるポリチオフェンの構造制御を目的として,生体分子をテンプレートとするポリチオフェン合成の試みを行った.

機能性交互共重合ポリイミドの合成と物性評価
助教授 工藤 一秋[代表者],大学院学生 濱田 崇,久保 聡宏
これまでに,当研究室で開発した三環性スピロ二酸無水物と2種のジアミンを用いてone potで交互共重合ポリイミドを作ることに成功している.今回は,ドナーとアクセプターなど,互いに逆の性質を示す2種のジアミンを用いて交互共重合ポリイミドを合成し,その構造に由来する固有の物性の発現を目指した.

リラクサー系強誘電結晶のフォトリフラクティブ効果
助教授 志村 努[代表者], 教授 黒田 和男, 助教授 小田 克郎,助手 藤村隆史,技術専門職員 千原正男,技術官 小野英信,技術官 片倉智,大学院学生 佐藤裕広,大学院学生 藤澤俊幸
リラクサー系強誘電材料0.91Pb(Zn1/3Nb2/3)O3-0.09PbTiO3結晶がもつ非常に大きな圧電効果を利用し,大きな電気光学効果及びPR効果を得ようと研究を行なっている.ドープなしの0.91PZN-0.09PT単結晶とFeをドープした結晶とをフラックス法で作製し,PR特性を調べた.Feのドープ量を最適化することで,吸収が小さく,かつ低強度の光でも大きいPR効果(波長488 nmで,2光波混合ゲインの最大値 21 cm-1)が得られた.また,この材料のPR特性を理解するため,フォトクロミズムや光伝導度の測定を行った.

フォトリフラクティブポリマーの高機能化
助教授 志村 努[代表者], 教授 黒田 和男, 教授 荒木 孝二, 助手 務台 俊樹, 助手 芦原 聡,助手 藤村隆史,技術専門職員 千原正男,技術官 小野英信,大学院学生 丁景福,研究実習生 吉田正史
我々は,PVK系ポリマー・フォトリフラクティブ材料を中心に,分子の構造設計により大きな屈折率変化と高速化を両立させた材料を開発している.側鎖の付加により,従来より3桁の高速化を達成した.また,フォトリフラクティブ特性の温度依存性,特にガラス転移温度との温度差と,応答速度の関係について調べた.今年はPVK系に加えてTPD系ポリマーによる材料も検討し,電荷移動速度の向上を実現した.電荷発生,電荷移動,非線形光学効果,の総合的な効果についての検討も進めている.

フォトリフラクティブ効果を用いた不揮発性ホログラフィック光メモリの研究
助教授 志村 努[代表者], 教授 黒田 和男,助手 藤村隆史,技術専門職員 千原正男,技術官 小野英信
フォトリフラクティブ効果を用いたホログラフィック光メモリには読み出し時に記録した情報が消えていくという大きな問題点がある.本研究では,ダブルドープ2波長記録方法を用いた高速かつ高効率書き込み可能な不揮発記録材料の開発を行っている.今年度は,Ru:LiNbO3結晶における不揮発記録のメカニズムについて研究を行い,わずかに混入してしまうFeイオンが重要な役割を果たしていることを明らかにした.またFeイオンを積極的に添加したRu,Fe:LiNbO3結晶において,Ru:LiNbO3結晶よりも高い記録感度を持つ不揮発記録が可能であることを示した.

ソフトマテリアルを用いた機能光学素子
助教授 志村 努[代表者], 教授 黒田 和男, 教授 田中 肇, 助手 芦原 聡,大学院学生 林靖之
ソフトマテリアルは外部からの制御により,あるいは外的な条件の設定により自己組織的な周期構造を作ることがあり,しかもその構造を変化させることができる.この周期構造を光の波長程度にすることにより,光学的な機能を持つ素子を作ることができる.現在,レーザー色素を含んだ微小球を光の干渉縞により整列させ,分布帰還形のレーザー発振およびランダムレーザー発振を試みている.

表面近傍量子ナノ構造の走査トンネル分光
助教授 高橋 琢二[代表者],技術官 島田 祐二,高橋研 大学院学生 屋鋪 大輔
表面近傍に二重障壁や量子ドット構造などの量子ナノ構造を埋め込んだ半導体試料において,走査トンネル顕微鏡/分光(STM/STS)計測を行い,二重障壁による共鳴電流や埋め込み量子ドットを介して流れる電流などをナノメートルスケールの分解能で測定して,それらナノ構造に起因する電子状態変調効果を調べている.さらに,5K程度の極低温,10T程度の強磁場中でのSTS計測を通じて,ナノ構造中の電子状態を明らかにすることを目指している.

ケルビンプローブフォース顕微鏡によるInAs微細構造の表面電位計測
助教授 高橋 琢二[代表者],高橋研 大学院学生 小野 志亜之
導電性探針を有する原子間力顕微鏡(AFM)において,探針−試料間に電圧を印加した際に働く静電引力の印加電圧極性依存性がなくなるように直流バイアスを重畳して試料表面ポテンシャルを計測する,いわゆるケルビンプローブフォース顕微鏡(KFM)モードを利用して,InAs薄膜・細線の表面ポテンシャルの計測を行った.これまでに,InAs薄膜の表面電位(フェルミレベル)が膜厚に依存して変化すること,InAs微細構造の形状,例えば細線構造によって表面電位が変調されること,などを明らかにしている.

ケルビンプローブフォース顕微鏡による表面電位計測の確度に関する検討
助教授 高橋 琢二[代表者],高橋研 大学院学生 小野 志亜之
ケルビンプローブフォース顕微鏡(KFM)で計測される表面電位の値が,動作モードや探針形状から受ける影響について二次元電界シミュレーションを用いて理論的に解析し,その空間分解能や測定される値の確からしさについて検討した.また,探針−試料間距離の変動に伴って現れる静電引力のビート信号を利用して,静電引力の距離依存性を実験的に確かめた.

磁気力顕微鏡(MFM)を用いた非接触・微小電流計測
助教授 高橋 琢二[代表者],高橋研 大学院学生 才田 大輔
ナノ構造中を流れる電流を被測定系への擾乱を避けながら測定するために,電流の作る磁場を検出できる磁気力顕微鏡(MFM)を用いた非接触電流測定系の構築を目指している.これまでに,幅数μm程度のGaAs/AlGaAsメサストライプ中量子井戸に10 μA程度以下の交流電流を流した時に生じる磁場を測定し,静電引力の影響を排除することで磁気力信号が明確に得られること,磁気力信号が交流電流の大きさおよびMFM探針磁化方向に依存することを見い出している.

自己変位検知カンチレバーAFMを用いた局所的光吸収計測
助教授 高橋 琢二[代表者],高橋研 大学院学生 増田 裕之
変位検出用レーザが不要である自己変位検出カンチレバーAFMを用いて,単一量子ナノ構造の光吸収特性の評価を行っている.これまでに,GaAs微傾斜基板上InAs単一量子細線において凹凸像と同時に光応答電流像が得られること,またその光応答電流が照射レーザ光の波長に依存して変化することを見出している.それらの結果から,InAs中で発生した光キャリアの散逸過程などについても検討を加えている.

極低温・強磁場環境下での走査トンネルスペクトロスコピー
助教授 高橋 琢二[代表者],技術官 島田 祐二,高橋研 大学院学生 村中 雅幸
電子エネルギの熱によるぼけを防ぐために,5K程度の極低温環境下で動作する走査トンネル顕微鏡(STM)を用いたトンネルスペクトルの計測を行っている.特に,量子細線や量子ドットなど多次元量子閉じ込め構造中の電子系に対して,10T程度の強磁場を印加しながらトンネルスペクトルを測定することで,サイクロトロン運動との競合関係を通じてポテンシャル閉じ込めの強さを明らかにすることを目指している.

二重バイアス変調を利用した新しい走査トンネル分光法の開発
助教授 高橋 琢二[代表者],高橋研 大学院学生 村中 雅幸
走査トンネル顕微鏡によるトンネル分光計測において問題となるいくつかの不安定要素を効果的に取り除き,安定した計測を可能とする手法として,二重バイアス変調を用いた微分コンダクタンス分光法を新しく提案するとともに,自己形成InAs量子ドットに対する分光測定を行って,その有効性を確認している.

マイクロヒータとfL容器を用いたF1モーターの研究
助教授 野地 博行, 助教授 竹内 昌治[代表者], 教授 藤田 博之,藤田研 大学院学生 新田 英之
ナノバイオテクノロジーにおいて,生体分子の活性のOn/Offは必須の技術である.このために,局所的に温度を制御し生体分子活性を制御する為のマイクロヒーターの開発し,fLの極微小容器中で化学活性計測を試みている.

磁気ピンセットを用いたF1モーターの活性化
助教授 野地 博行[代表者],原陽子 学術振興事業団特別研究員(SPD),石塚康司 学生 (東京工業大学),吉田賢右 教授 (東京工業大学)
1分子操作による酵素活性の制御に関する研究

F1モーターの回転ポテンシャル測定
助教授 野地 博行[代表者],黒田綾 学術研究支援員
F1モーターの静止トルクを1分子単位で計測することで,その回転ポテンシャルがATP加水分解反応に伴い変化する様子を測定している.

プロトン駆動モーターの回転1分子観察
助教授 野地 博行[代表者],田端和仁 産学官連携研究員,山田康之 産学官連携研究員,井出徹 さきがけ研究員 (科学技術振興機構),矢部勇 助手 (東京大学分生研),中嶋貴子 学術研究支援員
顕微鏡下でATP合成酵素を再構成させた平面膜を作成し,これが外部電圧によって回転する様子を1分子観察する.

非エルミート量子力学とその応用
助教授 羽田野 直道
量子力学では通常,ハミルトニアンはエルミート演算子とされる.それを,ある特殊な形(虚数ベクトルポテンシャルを導入する形)で非エルミート演算子に拡張したモデルを研究している.このモデルは,アンダーソン局在状態や共鳴状態の探査に便利である.ただし,その際に巨大非エルミート行列のスペクトルを求める必要がある.そのようなアルゴリズムの研究も行っている.

経済現象の物理的モデリング
助教授 羽田野 直道
外国為替相場の揺らぎは,相転移点直上の揺らぎと共通しているという点から,物理的興味を持たれています.我々は,その揺らぎの特徴を捉えるため,複数の為替相場の相互作用を考慮した新しいモデルを提唱しました.そのモデルによるシミュレーション結果は実データをよく再現します.

非平衡ダイナミクスと非エルミート行列の固有値分布
助教授 羽田野 直道
非平衡モデルの時間発展は非エルミート行列で表現されます.我々は,非エルミート行列の固有値分布を計算する新しいアルゴリズムを使って,非平衡ダイナミクスと,時間発展演算子の固有値分布の関係を議論します.

表面吸着水素の拡散と非局在化に関する研究
助教授 福谷 克之[代表者], 教授 岡野 達雄, 助手 ビルデ マーカス, 助手 松本 益明,技術官 小倉正平,大学院学生 鈴木 涼,教授(阪大)笠井秀明,助手(阪大)岡田美智雄,
表面に吸着した水素の拡散と非局在性について,窒素イオンと水素との共鳴核反応を利用した研究を進めている.本年度は,Ir(111)表面における実験と第一原理計算に基づくダイナミクス解析を行った.理論計算では従来の系とは異なり,配位数の少ないトップサイトが安定になることがわかった.しかしゼロ点振動エネルギーの測定を行ったところ,垂直方向・水平方向ともに60meV程度となり,これまでに報告されている電子エネルギー損失分光の結果を考慮するとポテンシャルが調和近似から大きくはずれていることを示唆している.

共鳴イオン化法による水素のオルソ・パラ転換過程の研究
助教授 福谷 克之[代表者], 教授 岡野 達雄, 助手 ビルデ マーカス, 助手 松本 益明,岡野研大学院学生 伊藤敬洋,岡野研大学院学生 二木かおり
固体の表面では水素分子の核スピン状態が転換することが知られており,本研究ではその微視的な機構の解明と新たなスピン計測法の開発を目指して研究を進めている.本年度はまず水素の同位体である重水素分子の共鳴核反応法の開発を行い,これを用いてAg薄膜表面での重水素分子の光脱離・オルソパラ転換の実験を行った.重水素分子の回転スペクトルの測定に成功し,回転温度の見積もりを行った.さらに7Kで作製したAg薄膜にノーマル重水素分子を吸着させた後,6.4eVの紫外光を照射して脱離する分子のスピン・回転状態測定を行った.水素分子に比べて重水素分子の方が転換時間が遅いことを見いだした. また純オルソ水素源の設計・開発を進めた.

単結晶クロム酸化超薄膜の作製とその物性助教授 福谷克之・教授 岡野達雄・助手(特別研究員) Markus Wilde・助手(特別研究員) 松本益明・大学院学生 萩原浩樹
助教授 福谷 克之[代表者], 教授 岡野 達雄, 助手 ビルデ マーカス, 助手 松本 益明,技術官 小倉正平,大学院学生 萩原浩樹
単結晶クロム基板上に膜厚を制御した単結晶超薄膜を作製し,その電子的・光学的性質に関する研究を進めている.昨年度,赤外吸収分光により薄膜の光学フォノンが720cm-1に存在することを見出した.今年度は,吸収スペクトルの温度依存性を測定したところ,300K以上でフォノンの振動数が低波数側にシフトすることを見出した.クロム酸化物のネール点が308Kにあることから,フォノンの変化は磁気相転移に関係していると予想される.磁場依存性を測定したが,1kGまでの低磁場では変化は見られなかった.また,ハーフメタルCrO2薄膜作製の準備を開始した.

金属超薄膜の電子状態と反応性
助教授 福谷 克之[代表者],技術官 小倉正平,助手(阪大理)岡田美智雄
金属超薄膜の電子状態は,膜垂直方向への量子化と配位数減少に伴う局在化という特徴を持つことが期待される.本研究では,走査トンネル顕微鏡と共鳴核反応法に密度汎関数に基づく第一原理電子状態計算を併用することにより,超薄膜電子状態の測定と水素分子反応性に関する研究を進めている.今年度はPt上に作製したAgおよびAu薄膜の反応性を調べ,いずれも単原子層でバルクに近い反応性を持つことを明らかにした.

金属薄膜の水素化と物性変化に関する研究
助教授 福谷 克之[代表者], 助手 ビルデ マーカス, 助手 松本 益明,大学院学生 鈴木 涼
希土類金属には水素化によりその物性が金属から絶縁体に変化し,同時に光学的性質も変化し金属ミラーから透明なガラスへ変化する場合がある.本研究では希土類薄膜の水素化と物性変化に関する研究を進めている.本年度は,W(110)表面にY超薄膜をエピタクシャル成長させ,共鳴核反応法を用いて薄膜の水素化過程について詳細な研究を行った.薄膜を10-4Pa程度の水素に曝露すると,速やかにα相が成長し,その後ゆっくりとβ相が成長することがわかった.β相の成長には六方最密充填構造から面心立方格子への格子変形が必要であり,これが成長の律速となっているためと考えられる.

絶縁膜/Si基板における水素挙動の研究
助教授 福谷 克之[代表者], 助手 ビルデ マーカス
SiO2/Si界面およびSiO2膜中に存在する水素がSiデバイスの特性に大きな影響を持つことが知られている.本研究では,核反応を利用して界面水素量を定量しデバイス特性との関連を明らかにすることで,デバイス特性の向上を目指している.本年度は,高誘電率を有する絶縁膜材料として有望視されているHfO膜中の水素量の測定を行った.HfOは吸湿性が高いため,それに伴う水素がSiO2膜に比べて多く存在することを明らかにした.また水素アニールにより,界面近傍に水素が導入されることを見いだした.

H11円筒共振器型マイクロ波プラズマ装置によるダイヤモンド膜のCVD形成
助教授 光田 好孝[代表者],光田研 大学院学生 柿木充,技術官 葛巻徹
当研究室で開発してきたH11円筒共振器型マイクロ波プラズマ装置では,およそφ100mm程度の均一なプラズマ発生が可能である.基板温度の均一加熱を併用して,CH4-H2プラズマ,およびCH4-O2プ-H2ラズマによるダイヤモンド薄膜ののCVD形成を行っている.これまでに,投入電力の95%程度をプラズマに投入可能となりエネルギー効率が向上を行い,プロセスの最適化を図ってきた.本年度は,プラズマ条件による堆積するダイヤモンドの配向性を制御することを目的とする. 炭素源濃度と気体温度を変数として,堆積時間に対する(100),(111)成長面の大きさの変化から,<100>,<111>方向優先成長条件のマッピンッグを行った.この結果を用いて,表面が(100)もしくは(111)面が支配的となるダイヤモンド膜の堆積が可能となった. また,in-situな基板前処理法であるバイアス核形成(BEN)プロセスを用いて,ダイヤモンドの配向成長条件に加えて,配向核生成条件についても現在確認中である.

微細デバイス作製のためのダイヤモンド表面終端構造制御
助教授 光田 好孝[代表者],研究員 川原田 洋,技術官 葛巻徹
ダイヤモンド表面の電気物性は, 表面に化学吸着するHやOなどの原子種に大きく依存し, 高い絶縁性から良好なp型半導体特性にまで変化する. H原子で終端された場合に形成されるp型表面伝導層を利用すれば, 新たな半導体電子デバイスの可能性が開ける. そこで, CVD合成ダイヤモンド表面の終端構造を任意に制御する手法, 得に, H原子終端とO原子終端構造とを互いに変換するプロセスを構築することを目的とした.この終端原子変換プロセスをモデル化した実験を超高真空下でCVD合成多結晶ダイヤモンドを用いて行った. H原子およびO原子の試料表面への吸着は,加熱した試料に対してH2分子およびO2分子を一定圧力下で一定時間吹き付けることにより行った. 非晶質成分を若干でも含むダイヤモンド膜では,1000Kに加熱された未吸着面へのH原子のドース中に最表面がグラファイト化する可能性が示唆された.一方,結晶性の高いダイヤモンド膜では水素雰囲気中での加熱でグラファイト化は進行せず水素が吸着することが明らかとなった.ドースに要した水素分圧の高さと時間から,1000Kでの水素の原子への分解反応が遅いことに加えて,原子状水素の化学吸着効率は非常に低いと推測される.これに対して,高結晶性のダイヤモンド膜に対する酸素の化学吸着効率は,水素の吸着効率に比べて4桁以上高いことが明らかとなった.

カーボンナノチューブの曲げ変形挙動と電気伝導性のその場測定
助教授 光田 好孝[代表者],技術官 葛巻徹
透過電子顕微鏡内でのナノプローブマニピュレーション技術を適用し,カーボンナノチューブの電気的特性と原子構造との関連を調べている.カーボンナノチューブの電気伝導は弾性限内での変形では可逆的に変化するが,弾性限を超える変形によって構造欠陥を生じさせると電気伝導性が低下し,応力を除いても初期電流値には回復しないことが判明した.カーボンナノチューブの電気的特性に影響を及ぼす構造因子や欠陥構造を形成するしきい応力を定量的に評価することによって,カーボンナノチューブの歪ゲージやスイッチング素子等への応用が開ける.現在,マニピュレーションユニットの改造による微小変形応力の実測に向けた研究を継続している.

ナノプローブマニピュレーションTEMによるCNT複合材料のナノダイナミックス評価
助教授 光田 好孝[代表者],技術官 葛巻徹, 助教授(東工大) 大竹尚登,助手(東工大) 安原鋭幸
カーボンナノチューブ(CNT)をはじめとするナノ炭素系繊維の大量合成法の開発を背景に,これらを樹脂基複合材料の強化繊維とする応用研究に取り組んでいる.これまでのところナノ炭素系繊維の複合では十分な強化効果が得られていない.我々はこの原因を繊維の特性と複合組織に求め,ナノスケールでの解析を進めている.本研究では,CVD法で製造した各種繊維材料の構造と力学的性質をナノプローブマニピュレーターを内蔵した試料ホルダーを使用し,透過電子顕微鏡内で動的に評価した.CVDで作製したCNTはアーク放電法で作製したCNTとは異なり,極度の曲げ変形により脆性的に破壊することが判明した.また,CNT/樹脂複合材料では引張破断時に樹脂マトリックスからのCNTの引抜けが観察された.これらの動的観察から,使用するナノ炭素繊維の力学的性質の定量評価,及び,繊維/マトリックス界面の結合強度の向上が樹脂基複合材料実現のための最重要課題であることがわかった.

微生物由来ポリエステルの構造・物性解析とその材料設計への応用
助教授 吉江 尚子
微生物由来ポリエステルの構造を徹底解析し,その物性との相関を調べ,材料設計へと応用する。特に,微生物由来共重合ポリエステルは,一般の化学合成高分子と比較して化学組成分布が非常に広い,アイソモルフィズムと呼ばれる稀有な結晶構造をもつなどの特徴があり,構造-物性相関研究の対象として非常に興味深い。

生分解性プラスチックの分解メカニズムの解析
助教授 吉江 尚子
本研究では,環境中でのプラスチック分解に重要な役割を果たすと考えられるPHB分解酵素による生分解反応は,従来考えられてきたような「酵素のプラスチック表面への吸着」と「分子鎖切断」の二段階反応ではなく,「吸着」・「高分子鎖結晶の溶融」・「分子鎖切断」の三段階反応であることを明らかにした。このとき,PHB分解酵素を構成するプラスチック吸着部位と反応活性部位のうち,「分子鎖切断」段階には活性部位の基質特異性が,一方,「吸着」・「高分子鎖結晶の溶融」段階には吸着部位の特異性が重要な役割を果たしていると推測される。

共重合ポリエステルの微細構造の徹底解析
助教授 吉江 尚子
ある種の脂肪族共重合ポリエステルがアイソモルフィズムと呼ばれる稀有な結晶構造をとることを明らかにし,その結晶化機構の詳細を検討している。また,この共重合ポリエステルでは,化学組成の変化により,これまで知られていなかっら新たな構造転移が観測されることを明らかにし,その転移を説明するモデルとしてサンドイッチラメラモデルを提案し,その有用性を検討している。

自己集積型金属錯体からなる微粒子の構造・形態制御
講師 北條 博彦
有機分子と金属イオンの自発的な高次構造形成能を利用して,さまざまなナノ・メソスケール構造体を創製することを目的としている.有機分子を適切に設計することにより,構造体の形態を制御する技術の開発を目指す.

情報・システム部門

脳における情報表現および情報処理の数理モデルの研究
教授 合原 一幸
脳における情報表現が神経細胞の発火率のみによるのか,あるいは発火の同期性や時間相関も重要なのかは,神経科学の中心的な問題の一つである.本研究では,発火率による符号化と同期性による符号化を使い分けるデュアルコーディング仮説を提唱した.また同期発火が神経細胞集団間を連鎖して伝播する現象に関して,側抑制の効果を取り入れてモデル化を行い,信号の位置と強度を同時に符号化できることを示した.

遺伝子・生化学ネットワークにおける確率性の数理解析
教授 合原 一幸
最近,遺伝子発現および生化学反応において確率的揺らぎが無視できないことが実験的に示されている.これまでの決定論的な解析方法ではこのような揺らぎを含む現象は記述できず,また揺らぎにかかわるネットワークの機能の考察は不可能である.本研究では,従来の決定論的な手法に対し,このような確率性を取り込んだ評価・解析を可能にするための数理的手法を構築し,遺伝子・生化学ネットワークにおいて揺らぎがどのように抑えられ,また利用されているかを明らかにすることを目的としている.

カオスネットワークの非線形ダイナミクス
教授 合原 一幸
本研究は,複数のカオス素子が結合した複雑カオス系の時空間ダイナミクスの解明およびその計算理論等への応用を目的とする.このようなシステムは,低次元でも複雑な,しかし高次元系とも共通する興味深い性質を示す.

文化財のサイバー化(形や見えのモデル化)
教授 池内 克史
日本には数多くの文化財が存在しています.それらは,いつ何時火災,地震などの災害のため失われてしまうかも知れません.これらの貴重な文化財をコンピュータビジョンの最新の技術を使用して,サイバー化する研究をおこなっています.主な研究テーマは,形のモデル化,見えのモデル化,環境のモデル化などです.最近,鎌倉や奈良の大仏をモデル化しました.

無形文化財のデジタル化(動きのモデル化)
教授 池内 克史
日本には,仏像や建築物などの「静的」文化遺産と同様に,民族舞踊などの「動き」による形の無い文化遺産も各地に存在しています.しかし後継者不足などの理由から,これらの貴重な文化遺産が失われている事も事実です.我々の研究は,これら失われつつある無定形文化財を計算機内にデジタル保存し,いつでも再現・人に後継できる手法を構築することを目指しています.具体的な研究テーマとしては,・ 人の動きの入力方法とその解析・ 動きのシンボル化・ シンボル化された動きの編集と生成・ CGやロボットによる動きの再現などが挙げられます.

ロボットによる匠の技の学習(動きの実現)
教授 池内 克史
幼児の学習の大部分は,親の行動を見て真似ることから始まります.我々の研究室では人間の行動を見て,これを理解し,同じ行動を行うロボットプログラムを生成する研究を行っています.この研究を行うことで人間の行動学習過程のヒントが得られればと考えています.さらに,人間国宝の業をロボットに再現させることで,貴重な匠の業を永久保存したいと考えています.

高度交通システム(ITS:状況の認識とモデル化)
教授 池内 克史
21世紀に向けて高度交通システムの開発が盛んです.そこでは,車は, 運転者やその周辺の車の行動を見て,その状態を理解し, 周辺の道路環境を比較しながら, さらに上位のコントロール系からの情報にもとづいて, 最適な行動が取れる必要があります. こういったシステムのために,人間の行動を連続的に観測した画像列から行動を理解する手法, 地図情報と周辺の状況から現在の位置を決定する手法, 位置情報, 地図情報を現在の実画像上に付加する手法などを研究しています.

核物質防護制度に関する研究
教授 板倉 周一郎
原子力施設に対する不法行為である核物質の盗取及び妨害破壊行為を阻止するための対策である核物質防護措置に関して,昨今のテロリズムの活発化を踏まえ,防護システムの評価の手法に関する研究を行う.

単純かつ証明可能安全なパスワード認証された鍵交換方式
教授 今井 秀樹[代表者], 助手 古原 和邦
説明 鍵交換や鍵配送を行う方式としては,従来よりPKI(Public-Key Infrastructure)を使う方法が知られている.しかしながら,PKIを用いる方法は証明書の検証や鍵の管理が必要となるため使い勝手は必ずしもよくない.一方,パスワードのみを用いる方式は,IPsecのPre-Shared Secret方式がそうであるようにオフラインで行われる全探索に弱い.これに対して,我々は,非常に単純な方式であるにも関わらずパスワードのみを用いてオフラインの全探索に対して安全性を証明できる方式を提案した.

非静的ネットワークに対応可能な匿名通信路構成方式
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 大学院学生 山中晋爾
匿名通信路を構成する方法のひとつとして,メッセージを複数のノードを経由させて,さらにそのルーティング情報を隠すことにより,送信者と受信者のつながりを切る方法がある.しかしながら,従来の手法ではメッセージを流すネットワーク基盤は静的,すなわちネットワークトポロジが変化しないことを前提としていた.このため,近年注目されているP2Pやアドホックネットワークのようにネットワークトポロジが動的に変化する通信路においては,それを直接利用することは困難であった.これに対し我々は,予備的なルーティング情報を付加することにより,非静的ネットワークにも対応可能な匿名通信路構成方式を提案した.

巡回型モデルにおける定数回通信マルチパーティ計算
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 大学院学生 古川潤
任意の関数を複数の計算者が協力して計算するマルチパーティ計算において, 各計算者の必要な通信回数が定数回であり, 計算者の過半数が結託しても個々の計算者の秘密の入力を復元できず, かつ計算結果の正当性を証明できるような方法で, 従来よりも効率的な方法を提案した.

Provably Secure Public Key Encryption Conversion and Its Application
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 大学院生 崔洋
Since provably secure and practical public key encryption primitive is rare, we build 3 novel generic conversions to enhance almost all non-deterministic primitives to the strongest security level, furthermore, we make our conversions as the most compact, provided that the input message is large. We also consider applications in the onion routing and other networks for size efficiency.

Application of Trust-Metrics for Evaluating Performance System in Ad-hoc Networks with Privacy
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 大学院生 田村仁
Ad-hoc networks are usually constructed with a lot of nodes managed by unknown users and have a vague reliability level. In order to establish a reliable connection with a target node, users somehow need to evaluate nodes and connection paths as correctly as possible. One of the solutions to this problem is to employ the Trust-Metrics to the node-and-path evaluation of the ad-hoc network. The Trust-Metrics are mainly used to evaluate the reliability (validity) of the public-keys of unknown users, e.g. in PGP. We, however, point out that there are some drawbacks when applying the ever known metrics to the node-and-path evaluation of the ad-hoc networks. We show that they are either Low Privacy - High Utility or High Privacy - Low Utility. To overcome these disadvantages, we propose how to realize High Privacy - High Utility trust metrics and finally we made its application for evaluating node's performances in Ad-hoc Networks (electronic power consumption, transmission speed, etc).

A New Anonymous Routing Scheme and its Aptitude for Ad-hoc Networks
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 大学院生 田村仁
The protection of privacy is considered as one of the most important issues on not only the wired networks but also the Ad-hoc (wireless peer-to-peer multi-hop) networks. A number of protocols have been proposed for anonymous network communication, but their performances in Ad-hoc Networks are doubtful. In this paper, we discuss some existing major schemes (Crowds, Mix net, Onion Routing) and their drawbacks in Ad-hoc Networks. We also propose one scheme, Sliced Onion Routing, and show its beneficial superiority compared to Onion Routing in Ad-hoc Networks.

A Simple Leakage-Resilient Authenticated Key Establishment Protocol, Its Extensions, and Applications
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 大学院生 辛星漢
Authenticated Key Establishment (AKE) protocols enable two entities, say a client (or a user) and a server, to share common session keys in an authentic way. As a recent research, we reviewed the previous AKE protocols under the realistic assumptions: (1) High-entropy secrets that should be stored on devices may leak out due to accidents such as bugs or mis-configureations of the system; (2) The size of human-memorable secret, i.e. password, is short enough to memorize, but large enough to avoid on-line exhaustive search; (3) TRM (Tamper-Resistant Modules) used to store secrets are not perfectly free from bugs and mis-configurations; (4) A client remembers only one password, even if he/she communicates with several different servers. Then, we proposed a simple AKE protocol that has immunity to the leakage of stored secrets from a client and a server (or servers), respectively, where the client keeps one password in mind and stores one secret value on devices. And we extended our protocol to be possible for updating secret values registered in server(s) or password remembered by a client. Some applications and the formal security proof in the standard model of our protocol were also provided.

Space-Time Block Codes and LDPC codes
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 大学院研究生 Galindo Tapia Jose Antonio
The area of research that I am doing is related to error correcting codes. The information capacity of wireless communication systems increases dramatically by employing multiple transmit and receive antennas. An effective approach is to employ coding techniques appropriate to multiple transmit antennas, namely space-time coding. Space-Time Block Codes introduce temporal and spatial correlation into signals transmitted from different antennas in order to provide diversity at the receiver over an uncoded system without sacrificing the bandwidth. The spatial-temporal structure of these codes can be exploited to further increase the capacity of wireless systems with a relatively simple receiver structure. But because Space-Time Block Codes do not provide code gain, I would like to work in a project that could involve comparing the following two family of important codes, namely the Turbo and Low Density Parity Check (LDPC) or Gallager codes, in order to concatenate Space-Time Block codes with Turbo Codes or Low Density parity Check Codes and get code gain. I would like to research on improvements of those codes in order to get a better performance in the combination of these codes. This is an important research topic where current developers will consider this family of codes to be exploited in the 4th Generation.

Efficient and Provably secure Broadcast Encryption Schemes
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 大学院学生 Attrapadung Nuttapong
Broadcast Encryption allows a broadcaster to broadcast an encrypted message so that only a dynamically changing designated group of users can decrypt it. The stateless setting considers the case where the private key at each user is never updated. We present various efficient generic stateless schemes based on many cryptographic primitives.

再送方式に適したRate-Compatible LDPC符号の構成法
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 共同研究者 松本渉
通信システムには様々な機能ブロックが存在するが,受信パケットに誤りが生じた場合に,通信品質を維持するのに必要な機能として再送方式が挙げられる.従来この再送方式に対してターボ符号を用いたパンクチャリングによるHybrid ARQ 方式が有効であることが知られているが,広い符号化率に対して通信路容量に接近する性能を示すまでに至っていない. 我々は,広い符号化率に対して通信路容量に接近する性能を示す再送方式を実現する為にRate-Compatible LDPC符号構成法とその設計法を提案した.この符号を用いたHybrid ARQ方式によりLDPC符号単体の性能を上回る誤り訂正能力を示す事を確認しており,通信路容量へ近づく通信システムの一方式を示した.

RFIDにおけるプライバシ保護
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 大学院学生 劉鼎哲
RFID(Radio Frequency Identification)の低コスト化と普及にともなって,RFIDに関するプライバシの問題が浮上してきている.実際,大手会社のRFID導入に対し,プライバシ問題を指摘する消費者団体が不買運動を起こし,導入が中止される事例も出てきている.プライバシ問題は,対応を間違えれば深刻な問題になり得る.現在までにいくつかのRFIDプライバシ解決方法が提案されているが,コストや利便性などの面で考慮すべき点が存在する.本研究では,比較的低機能(低コスト)なタグを利用し,プライバシの保護とRFIDの活用を両立するためのシステムを考え,既存方式と比較しながら,その安全性と利便性に関する考察を行う.

On the Security of Multiple Encryptions
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 大学院学生 張鋭
In a practical system, a message is often encrypted more than once by different encryptions, here called multiple encryption, to enhance its security. Additionally, new features may be achieved by multiple encrypting a message, such as the key-insulated cryptosystems and anonymous channels.Intuitively, a multiple encryption should remain "secure", whenever thereis one component cipher unbreakable in it. In NESSIE's latest Portfolio ofrecommended cryptographic primitives (Feb. 2003), it is suggested to usemultiple encryption with component ciphers based on different assumptions toacquire long term security. However, in this paper we show this needscareful discussion, especially, this may not be true according to adaptivechosen ciphertext attack (CCA), even with all component ciphers CCA-secure.We formalize an extended model of (standard) CCA called chosen ciphertextattack for multiple encryption, then apply analysis the security of multipleencryption. We also apply these results to key-insulated cryptosystem.

非対話な鍵更新が可能なID-ベース暗号方式
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 日本学術振興会特別研究員 花岡悟一郎
ID-ベース暗号においては,利用者の公開鍵として利用者の識別情報(ID)を利用できるため,従来の公開鍵暗号にみられた鍵証明書の取得・検証処理が必要とはならず,通信・計算コストを大幅に削減することができる.しかし,ID-ベース暗号においては,復号鍵の漏洩にともなう公開鍵の更新が困難であるため,実用システムへの応用については問題を残していた.本研究では,妥当な仮定のもとで,この問題を解決し,実用的なID-ベース暗号の構成方法を明らかにした.

パーソナルエントロピーの抽出とその応用に関する研究
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 大学院学生 赤尾雅人
生体情報を認証に用いる研究は多いが,登録フェーズで参照データ(テンプレート)を作成し,認証フェーズで入力した生体情報と照合する手法がほとんどである.これらの問題点はプライバシー情報を含むテンプレートが漏洩する恐れがあることである.そこでテンプレートを用いずに,毎回入力する生体情報から固定値を抽出するのが効果的であり,この固定値は暗号鍵として利用できる.このように生体情報を鍵管理の観点から評価する研究は十分でなく,応用範囲の広い技術となり得る.一方で最近は鍵漏洩は不可避だとして被害の最小化を狙う暗号系の研究が盛んであり,情報漏洩への特別な配慮が必要な生体鍵の応用先として最適であると考えられる.そこで鍵隔離型暗号への応用を目指し,一例として手書き入力情報を用いて固定値を抽出する手法を提し,評価を行った.

IPトレースバック技術のパケット変換に対する耐性
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 技官 細井琢朗
インターネット環境においては,通常,発信者アドレスの真偽に関係なく宛先へパケットが送られる.そのため,他人への成り済ましが容易にできる.IPトレースバック技術は,パケットの受信者が実際の発信者を特定できる,逆探知手法である.残念ながら,既存の方法の殆どでは,転送経路上でパケットの変換があった場合,それが正規のものであっても,逆探知が不可能か,著しく非効率になる.我々は,パケット変換が正規のものの場合には,効率的に逆探知ができる方法がないか研究している.

量子情報理論・古典情報理論共に安全な量子鍵配布システム
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 学術研究支援員 萩原学
量子鍵配送方式は古典経路の安全性を仮定した上で,量子論的な安全性が証明されてきた.また,誤り訂正・秘匿性増強・個人認証については,安全なものが具体的に示されていなかった.本研究では,量子論的な安全性を保たせる古典暗号を具体的に提案し,さらに,実用面も含めベストな方式が何か求めることを目的とする.現在までに,誤り訂正・秘匿性増強に関し,実用的な最良と思われる方式を提案した.

より強力な攻撃者に対するブラックボックス追跡
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 大学院学生 松下達之
コンテンツ配信者が暗号化したディジタルコンテンツをサービス加入者(ユーザ)に同報通信路を利用して配信するシステムにおいて,不正に作成された復号器の入出力を観測することのみにより,その復号器の作成に加担した不正ユーザを特定することをブラックボックス追跡と呼ぶ.公開鍵方式に基づく従来方式であるKurosawa-Desmedtの手法やBoneh-Franklinの手法では,ブラックボックス追跡の処理ステップ数が莫大であるという問題があった.この他に,秘密分散を応用した方式が知られているが,より強力な攻撃者(不正復号器)を想定した場合,ブラックボックス追跡が不可能である.我々は,Kurosawa-Desmedtの手法に基づいた,効率的な処理ステップ数での,より強力な攻撃者に対するブラックボックス追跡方式を提案した.

衝突困難なハッシュ関数を利用したソフトウェア電子透かし
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 大学院学生 吉本晴洋
ソフトウェアの盗用,不正コピーなどを防止する技術であるソフトウェアプロテクションの一つとしてソフトウェア電子透かしが挙げられる.本稿においてはソフトウェアの入出力関係に電子透かしを埋め込むことでソフトウェアの難読化などの意味論的変換に対して耐性を持つソフトウェア電子透かしを提案した.

Improving a Computationally Secure Quantum Bit Commitment Protocol
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 大学院学生 中根美沙
Bit commitment schemes have several applications in the field of cryptographic protocols. Although quantum bit commitment has been proved not to be unconditionally secure, Dumais et al. introduced a quantum bit commitment protocol based on quantum one-way permutations. If used with perfect apparatus and a noiseless channel, their protocol was proved to be secure. However, it was stated as an open problem to modify the protocol which is robust against noisy quantum transmissions and multi-photon pulses. In this paper, we show an approach to make the protocol robust even in the presence of noise and multiple-photons.

開示条件を制御可能な電子文書墨塗り技術
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 大学院学生 宮崎邦彦
署名つき電子文書は,必ずしも署名したときのまま利用されるとは限らない.たとえば,行政文書が情報公開制度に基づき開示されるときには,そこに記述された個人情報や国家安全情報は,通常「墨塗り」された上で開示される.この一連の手続きを従来の電子署名技術を使って実現しようとした場合,保管時に付与した署名が,文書の一部が墨塗りされたことにより,検証できなくなる可能性がある.この問題への対策技術として,電子文書墨塗り技術が提案されている.われわれは,開示部分に対する追加的な墨塗りの可否を制御可能な電子文書墨塗り技術を提案した.

Incorporating Digital Rights Management in Mobile Communications
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 大学院学生 Mohammad G. Rahman
The incredibly increasing popularity of mobile terminals also causes dramatic increase in the number and variety of mobile content delivery services. While the growth of interest in mobile services is highly encouraging problems have also arisen - namely, corruption, unauthorized copying etc. In order to stem the illegal and unauthorized access to the digital contents, Digital Rights Management (DRM) technology has been evolved. DRM has also been considered in Mobile environments with the increment in mobile digital contents. Unfortunately the current mobile DRM (MDRM) is not so mature in implementation. Our goal is to analyze the limitations and extra requirements for DRM in mobile communications and also to develop a model with a view of providing flexibility and usability to the client while enforcing the rights for digital contents.

Intrusion detection systems, Modeling and Privacy
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 Abdulrahman ALHARBY
Intrusion detection systems (IDS) becomes a corner stone incomputers networks security, which help to maintain networks securityagainst any possible vulnerabilities. Usually, users worry about theirprivate data to be attacked. In our research, we try to build more efficientdetection models, beside studying how to protect users privacy against anypossible violations caused by IDS systems.

Quantum Bit Commitment without Quantum Memory
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 大学院学生 中根美沙
Bit commitment has many applications in the field of cryptographic protocols. Although quantum bit commitment has been proved not to be unconditionally secure, there exists a quantum bit commitment protocol based on quantum one-way permutations which is computationally binding and unconditionally concealing. In this paper, we propose a modified protocol to cope with the problem of decoherence by the notion of "weak commitment" and prove its security.

Bit Commitment Robust against Noise and Multiple-photons
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 大学院学生 中根美沙
Bit commitment schemes have several applications in the field of cryptographic protocols. Although quantum bit commitment has been proved not to be unconditionally secure, computationally binding and unconditionally concealing protocol based on quantum one-way permutations exists. However, the protocol is no longer secure if executed with noisy quantum transmissions or multi-photon pulses. In this paper, by applying the notion of weak commitment to the quantum bit commitment, we construct two protocols that are secure even in the presence of crucial ingredients for the security, (e.g. noise in the quantum channel, the emission of multiple-photons) and prove their security.

量子論に基づいた暗号プロトコルの研究
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 研究機関研究員 今福健太郎
情報論的に安全な暗号プロトコルのためのリソースとしてある種の量子系が利用できることが指摘されて以来,いわゆる量子暗号は注目を集めている.この分野では,暗号理論としての解析的研究から実装に向けた技術的研究まで,非常に広範な研究が行われている.本研究では,産学協同プロジェクトに参加し,新たな機能を持つ暗号プロトコルの考察とその安全性の評価,さらにはそれらの実現性の評価等を行っている.

Advanced Methods for Security Evaluation of Certain Stream Ciphers
教授 今井 秀樹[代表者],Miodrag Mihaljevic
The main goal is developing and evaluation of the improved methodsfor cryptanalysis of certain stream ciphers based on the algebraic and thecorrelation approaches. The consideration originates from identificationof cryptanalyutical significance of particular characteristics of the involvedfinite state machines. Employment of these characteristics yield appropriatetrade-off mainly between the required sample and the complexity of cryptanalysis within the frameworks of the algebraic and fast correlation attacks.

Advanced Methods for the Key Management
教授 今井 秀樹[代表者],Miodrag Mihaljevic
The main goal further development of the recently reportedkey management schemes based on the sectioned and reconfigurable approaches.Particular attention is focused on suitable underlying structures andthe related cryptographic primitives (one-way hash functions and pseudorandom number generators. An additional goal is consideration of the applications ofthese techniques for the digital rights management and related issues.

A New Anonymous Routing Scheme and its Aptitude for Ad-hoc Networks
教授 今井 秀樹[代表者],今井研 大学院学生 田村仁
The protection of privacy is considered as one of the most important issues on not only the wired networks but also the Ad-hoc (wireless peer-to-peer multi-hop) networks. A number of protocols have been proposed for anonymous network communication, but their performances in Ad-hoc Networks are doubtful. In this paper, we discuss some existing major schemes (Crowds, Mix net, Onion Routing) and their drawbacks in Ad-hoc Networks. We also propose one scheme, Sliced Onion Routing, and show its beneficial superiority compared to Onion Routing in Ad-hoc Networks.

イオン・電子マルチ収束ビームによる表面・局所分析法の開発(継続)
教授 尾張 真則[代表者],研究担当 坂本 哲夫,尾張研 大学院学生 大崎真由子,尾張研 大学院学生 森田能弘
固体材料の微小領域や粒径数ミクロン以下の単一微粒子に対する三次元分析法の確立を目的として,複数のGa収束イオンビーム(Ga-FIB)と高輝度電子ビーム(EB)を用いた,新しい表面局所分析法を開発した.具体的には,(1)Ga-FIB加工断面のEB励起オージェ分析や,(2)加工断面の飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)法による微小領域三次元分析などが挙げられる.また,本法を半導体素子やボンディングワイヤ接合部あるいは電池材料微粒子などに適用し,固体内部の精密な三次元構造を明らかにした.

超臨界流体抽出法を用いた環境汚染物質分析法の研究(継続)
教授 尾張 真則[代表者],研究担当 坂本哲夫,尾張研 大学院学生 宮澤慎介
超臨界流体は温度と圧力を変えることにより流体密度,すなわち溶解力を制御できるという特長をもつ.本研究では,多様な混合物である環境汚染有機物質を迅速に固体から抽出し,かつ,超臨界流体の密度(温度,圧力)をコントロールすることにより,従来の有機溶媒による一括抽出ではなく,分析目的物質のみを選択的に抽出・回収する新しい分析前処理技術を開発している.これまでに,フライアッシュ試料から,n-アルカン,クロロベンゼン類,PAH類をそれぞれ選択的に抽出することに成功している.

化学実験のダウンサイジング(継続)
教授 尾張 真則[代表者],研究担当 坂本哲夫,尾張研 大学院学生 金 朋央
研究上行われる化学実験は新たな情報を得るためになされるものであり,量的生産を目指しているものではない.したがって,実験に用いる試薬の量は,必要最小限であるべきである.本研究は,従来のリットル,ミリリットル,グラムレベルの試薬を用いた化学実験を,得られる情報量を損なうことなくその10の分の1から100分の1以下の試薬により行う実験システムの開発を目指すものである.

局所分析法を用いた大気浮遊粒子状物質の起源解析(継続)
教授 尾張 真則[代表者],研究担当 坂本哲夫,研究員 冨安 文武乃進,協力研究員 野島 雅,尾張研 大学院学生 金 朋央,尾張研 大学院学生 大崎真由子
都市大気中の浮遊粒子状物質(SPM)に関する環境・健康影響評価のためには,発生起源や輸送経路の解明が重要となる.またSPM粒子個々の大きさや形,化学組成,粒内元素分布などの情報が必要となる.本研究では沿道や都市人工空間などで捕集されたSPMに対して,マイクロビームアナリシス法を用いて粒別分析し,得られた粒別平均化学組成に基づくクラスター分析を行ない,起源解析・環境評価などを行なっている.さらに,大気汚染の都市間比較に関する検討やSPM表面に吸着した有害有機物の評価法に関する検討を行なった.

ナノスケール二次イオン質量分析(SIMS)装置の試作(継続)
教授 尾張 真則[代表者],研究担当 坂本哲夫,研究員 冨安文武乃進,協力研究員 野島 雅
二次イオン質量分析(SIMS)法は,深さ方向分析が可能な高感度固体表面分析法である.本研究ではGa収束イオンビーム(Ga-FIB)をSIMS装置の一次ビームに採用し,0.1ミクロン以下の高い面方向分解能を実現した.またマルチチャンネル並列検出システムの開発により,迅速で正確なSIMS分析を可能とした.さらにshave-off分析なる独自の微粒子定量分析法や,Ga-FIBの加工機能を利用した新しい三次元分析法ならびに高精度shave-off深さ方向分析法を確立した.現在は,一次イオンビームのナノビーム化に関する検討・装置化を行っている.

反応性ガス支援高速・微細加工システムの開発(継続)
教授 尾張 真則[代表者],研究担当 坂本哲夫劉静玉,協力研究員 野島 雅,尾張研 大学院学生 劉 玉静,尾張研 大学院学生 岩並 賢
一般に,固体表面局所の微細加工には収束イオンビーム(FIB)が用いられる.しかしながら,従来の微細加工は,主として物理衝突によるスパッターを利用しているため,深さ数10 nmまでの表層に損傷層が形成される.したがって,加工断面でのアモルファス化や格子欠陥の形成,化学状態変化などが問題となる.本研究では,この様な問題を解決するため,断面加工中に反応性ガスの化学的エッチング効果を利用した「高速化」,ならびに反応性ガスと電子ビーム照射による損傷層の選択除去による「低損傷化」を目的とした高速・微細加工システムの開発を行なっている.

光電子スペクトロホログラフィーによる原子レベルでの3次元表面・界面構造解析装置の開発(継続)
教授 尾張 真則[代表者], 助手 石井 秀司,協力研究員 田村圭司,外国人研究員 Wei-Guo CHU
X線光電子回折(XPED)法は,光電子の放出角度依存性や入射エネルギー依存性などから,表面・界面を含めた固体表層原子構造を化学状態別に知ることのできる手法である.我々はこの手法をさらに進めた光電子スペクトロホログラフィー法を提案し,その測定装置・手法の開発を同時に行ってきた.この手法では数種の励起X線の特長を活かすことにより,表面・界面などの構造・状態を3次元的に原子レベルで明らかにできる.光電子スペクトロホログラフィー装置の開発およびそれを用いた超薄膜系の構造解析を行っている.

凍結含水生物試料の局所三次元分析法の研究(新規)
教授 尾張 真則[代表者],協力研究員 野島 雅,尾張研 大学院学生 劉 玉静
組織細胞が含有する化学的成分の局在を形態学的に検索する技術は,組織化学の分野で発達し,現在ではその方法をヒトその他各種の動物,主にラットとマウス等の実験動物の各器官系に応用するにまでいたっている.その中で,組織細胞の断面形態観察は組織・細胞内において特定の元素の局在を明らかにするのに有用である.そこで,軟組織試料の超細密三次元分析法の開発を行っている.

空間データ基盤のデザイン手法
教授 柴崎 亮介
社会的なインフラとして整備の対象となる基盤的な空間データは,できるだけ多くの利用で共通に利用・参照されるものでなければならない.基盤として整備すべきデータの抽出とその費用対効果を明らかにするために,多様な利用者の情報利用行動を調査,分析・整理し,共通に参照される空間データオブジェクトを発見するための手法を開発している.この手法は実際に道路行政のための基盤的道路データの抽出作業や歩行者ITSのための基盤データの抽出作業に適用されている.

地物や空間現象のダイナミックな変化の再現手法
教授 柴崎 亮介
交通や環境など,ダイナミックに変化する空間現象や地物は多い.しかし,時間的,空間的にダイナミックな変化を絶えず網羅的に計測し続けることは多くの場合,きわめて困難であり,結局断片的な観測データから実際に生じているであろう変化を推定することが必要になる.その際,対象地物がそもそもどのように変化するかという知識なども併せて利用することで,推定精度を向上させることができる.観測情報などを表現・管理するデータモデルや曖昧さを持った空間情報の表現モデルの提案に加え,遺伝的アルゴリズムを利用した推定手法を開発している.適用事例には全休・超長期の土地利用変化の再現や都市内における人間移動の再現などがある.

センサ融合による3次元都市空間データの作成技術の開発
教授 柴崎 亮介[代表者],柴崎研 大学院学生 中川雅史,熊谷潤,中村克行,佐々木良典
建物・都市レベルを対象とした3次元空間データの自動構築技術: 建物や都市空間を対象に,3次元空間データの自動的な取得とモデル化を目標として,センサシステムの開発からデータ処理手法の開発までを行っている.センサシステムの開発では,異なるセンサの組み合わせ技術とデータ融合手法の開発を中心に進めている.現在開発を進めているセンサとしては航空機・ヘリ搭載のスリーラインセンサ(TLS),車載のレーザマッピングシステムなどがある.前者は世界に同種のものは一つしかないシステムであり,住友電工と共同出資により会社を設立して開発を進めている.後者の車載システムは世界で唯一のシステムである. データ融合手法は別個に収集されたさまざまなデータを接合したり,そこから建物,道路,樹木などの地物を3次元モデルとして抽出する手法を含んでいる.また,こうした3次元幾何データに加えて,車載ビデオ画像などからフリー走行時に得られるであろうビデオ映像を生成し,空間内に位置づけられたストリームビデオサービスを行う手法も開発している.

空間シミュレーションのための分散型データ管理システムの開発
教授 柴崎 亮介[代表者],柴崎研 研究員 謝榕
人や自動車の移動などをマルチエージェントモデルを利用してシミュレーションするなど,空間シミュレーションへのニーズが急速に高まってきている.空間シミュレーションは計算量が非常に大きいものの,空間的に遠く離れたエージェントやオブジェクトが相互作用をすることはそれほど多くなく,並列処理が大変有効な分野である.そこで,分散空間データ管理手法をAgletを中心にして開発し,空間シミュレーションを分散するPC上で実行できるシステムを開発している.

空間エージェントモデルを用いた商業空間回遊行動モデルの開発
教授 柴崎 亮介[代表者],柴崎研 大学院生 北澤桂,小西勇介,田仲洋之
商業空間における買い物客の回遊行動をエージェントモデルとして表現することで,商業空間における空間設計,情報サービス設計,マーケッティングなどに利用する.今年度は実際の商業空間における買い物客の行動を計測し,同時に買い物客の商品嗜好なども詳細に調べることで,立ち寄る可能性の高い店舗の推定と,回遊行動のモデリングの両方を行った.

レーザとCCDカメラなどを組み合わせた歩行者や車両のトラッキングシステムの開発
教授 柴崎 亮介[代表者],柴崎研 客員助教授 趙卉菁
歩行者や車両などの移動オブジェクトの計測技術: レーザやCCD,位置決め技術などを利用して,人や車両などの軌跡や行動パターンを計測するセンサシステムやデータ処理手法を開発している.

疑似衛星やウェアラブルセンサを利用した人間動作・行動の計測・トラッキングシステムの開発
教授 柴崎 亮介[代表者],柴崎研 大学院生 小西勇介,徐庸鉄,袴田知弘
3次元空間における人間の動作や行動を計測するニーズはコンピュータゲームから,消防などの緊急活動,歩行者ナビなどきわめて多くの分野で必要とされている.しかし,既存のほとんどの手法は,一定の計測エリアの中で動作・行動する人間を計測するためのものであり,広い地域を自由に移動する人間を対象にすることができなかった.そこで,本研究ではGPSと同じシグナルを出す発信機である疑似衛星や,MEMS技術により作成された小型加速度センサなどを組み合わせることにより,空間的な制約なく,都市内のどのような空間でも人間の動作や行動をモニタリングできるシステムを開発する.また同時に,疑似衛星や新しい衛星測位サービス(ガリレオや準天頂衛星)の最適な組み合わせを探るために都市空間における測位シミュレーションを可能にするシステムを開発している.

エージェントモデルとGISの統合によるデジタルランドスケープモデル(Digital Landscape Model)の実現
教授 柴崎 亮介[代表者],柴崎研・研究員 クリシュナ・ラジャン,談国新,余亮,大学院学生 Yan Peng
長い歴史の中で土地景観(ランドスケープ)は人間と自然の相互作用の中で変容してきた.人間活動はさらに巨視的な社会経済条件,技術的な知識の変化によりその姿や強度を変える一方で,自然環境も地球温暖化による気候条件の変化など大きく変動している.人間や自然環境の構成要素(植生,動物など)は変化する巨視的環境,微視的環境の中で,種の保存,生存基盤の確保,経済収益の確保などの目的のために,自らの行動を適用的に変化させていると考えられる.こうした想定に基づき,土地景観を構成する要素(人間を含む)を自律的に行動内容や様式を変化させるエージェントモデルとして表現し,それを空間データベース上でシミュレーションすることで土地景観の変容過程を再現することを目指す.当面,土地利用変化モデル,灌漑などの水需要推定モデルなどにDLMの考え方を応用する.

切削工具の機上再生技術に関する研究(継続)
教授 谷 泰弘[代表者], 助手 柳原 聖,谷研 大学院学生 小塩直紀
切削工具資源の有効利用と,工具交換に伴う切れ刃の取り付け誤差解消を目的に,機上で切削工具のコーティングを再生することを検討している.コーティング膜の形成においては,付帯設備が大がかりでなく,かつ高速な膜の形成が望まれる.そこで,本研究では複合めっき膜をコーティング膜に選択し,超硬工具上に切れ刃として機能できる複合めっき膜が形成できるかどうかを検討している.本年度,機上で利用できる簡易的な装置を開発した.

砥粒付きテーパワイヤを使用した全自動フェルール内径研削盤の開発(継続)
教授 谷 泰弘[代表者],谷研 技術官 上村康幸,谷研 受託研究員 西健一朗,谷研 受託研究員 山口一朗,谷研 受託研究員 塚田桂介
光ファイバの端部にはジルコニアフェルールが取り付けられている.フェルールは外周部がジルコニアセラミックスで形成され中心に光ファイバが挿入されている.この光ファイバが挿入されるジルコニアフェルールの中心穴は,現在遊離砥粒加工により作られているが,加工能率,および形状の高精度化のために固定砥粒化が望まれている.そこで,内径加工用テーパワイヤ工具の開発とそれを用いた全自動研削盤の開発を行っている.本年度は機械の全自動化に取り組んだ.

紫外線硬化樹脂を利用した精密切断ブレードの開発(継続)
教授 谷 泰弘[代表者], 客員助教授 榎本 俊之, 助手 柳原 聖,谷研 研究生 李承福
半導体ウェーハの精密切断には厚さ数十μmの薄刃の砥石が利用されているが. 熱硬化性樹脂を利用しているために焼成工程に時間がかかってしまう. そこで. 紫外線硬化樹脂を利用して精密切断ブレードを大量に短時間に製造する技術を開発した. 本年度はセンサを内蔵したモニタリングブレードの開発を行った.

複合粒子研磨法の開発(継続)
教授 谷 泰弘[代表者], 客員教授 河田 研治, 客員助教授 榎本 俊之, 寄付講座教員 盧 毅申,寄附講座 助手 鈴木真理,谷研 大学院学生 周文軍
鏡面研磨においては研磨布が一般に利用されている. しかし. 研磨布は目づまりや切れ味の劣化を起こしやすく. 研磨加工を安定させる際の足枷となっている. そこで. 研磨布の代わりにポリマー微粒子を添加することで研磨布を利用しない研磨加工複合粒子研磨法の実現を試みている. 本年度は金属石けんを用いてキャリア粒子の滞流性を高めることを検討した.

燃焼合成シリカ砥粒を使用した固定砥粒工具の開発(新規)
教授 谷 泰弘[代表者], 客員助教授 榎本 俊之,谷研 受託研究員 竹之内研二
シリコンウェーハのエッジ加工や光ファイバコネクタ端面の高能率高品位加工が求められている.この実現にはもはや砥粒の固定化を行う以外に飛躍的な進歩は望めない.しかし.加工能率の高い大きな砥粒を固定砥粒加工工具に用いると,所望の粗さは望めず加工面にダメージを生じさせやすい.一方,微細砥粒を固定砥粒加工工具に用いると能率は望めず,また工具は容易に目づまりする. そこで.両者の特徴を併せ持たすことができるように,燃焼合成シリカを用いた固定砥粒加工工具を開発し,光ファイバ加工への適用を検討している.

砥粒入り研磨パッドの開発(新規)
教授 谷 泰弘[代表者], 客員教授 河田 研治, 客員助教授 榎本 俊之, 助手 柳原 聖,谷研 大学院学生 高綺
研磨加工のさらなる高能率化・高品位化のために,加工工具の高機能化が求められている.その実現のためには,加工点付近で効率よく化学的な作用を発現できるかが大きな鍵となっている.本研究では,TiO2を用いて高発泡体を製造することを試みている.

極薄研磨保持具の高速製造法に関する研究(新規)
教授 谷 泰弘[代表者], 助手 柳原 聖,谷研 大学院学生 楠本丈朗
水晶振動子の高周波数化においてはウェーハを薄肉化する必要がある.したがって,水晶を研磨する研磨加工用保持具も薄肉化する必要がある.本研究では電鋳技術やスピンコーティング技術を利用して従来製法では不可能であった超薄型の保持具の製造法を検討する.

ガラス多質体を利用した研削砥石の開発(新規)
教授 谷 泰弘[代表者],谷研 技術官 上村康幸,谷研 大学院学生 奥村暢良
研削加工において均質で多孔質なビトリファイド砥石が製作できれば,加工面粗さ,加工能率の優れた砥石となることが考えられ,硬脆材料の精密仕上げ加工など幅広い分野での需要が期待される.そこで砥石を多孔質にするために発泡性水ガラスが発泡して気孔を形成することに注目し,結合剤として使用しその高機能砥石としての可能性を検討する.

液相の相変化現象における素過程と熱伝達(継続)
教授 西尾 茂文[代表者],西尾研 大学院学生 山神 成正,西尾研 大学院学生 政井 文仁
蒸発・沸騰や凝固・凍結などの液相の相変化現象は, 相変化分子運動論・界線動力学・界面安定性を媒介として異相核生成・異相成長・界面形態形成により異相構造が形成されるため, 物理的に興味深く, またエネルギー・熱制御・素材製造・食品保存などの工学事象とも関連が深いため熱伝達の解明・制御の観点からも重要である. 本研究では, こうした素過程および熱伝達に関する研究を現象の物理的理解を深め,その知見から技術展開を図る研究を継続的に行っている. 本年度は, 1)Landau不安定,2)希薄噴霧冷却における熱伝達特性に関する冷却面姿勢の影響を調べる数値計算および実験を行った.

低温排熱の動力化に関する研究(継続)
教授 西尾 茂文[代表者], 助手 永田 真一,西尾研 大学院学生 廣川 文仁
エネルギー問題は, 石油資源の枯渇を中心とした資源制約と, 地球温暖化を中心とした環境制約との両面を有する. 近未来においていずれが主たる制約となるかについては様々な見解があるが, いずれにしても同一の生産過程などにおけるエネルギー消費を押さえる省エネルギー技術と, 未利用のエネルギーを利用する未利用エネルギー利用技術とは, エネルギー有効利用技術の核である. 本研究では, 後者の中で動力化が難しく熱利用として注目されている低温排熱を再動力化するソフトエンジンシステムの開発を目指している. 本年度は, 地球温暖化に関する実態調査を行うとともに,ガス排熱を対象とし,熱音響エンジンによる動力化の可能性を実験的に調べた.また,熱電素子に注目し,その温度差利用率を飛躍的に高めるための高効率フィン構造を細径ヒートパイプにより構築する研究を行った.

ピエゾアクチュエータを用いた可変摩擦ダンパによる建築構造物のセミアクティブ免震
教授 藤田 隆史[代表者],協力研究員 佐藤 英児
ピエゾアクチュエータを用いた可変摩擦ダンパによって,免震効果を損なうことなく免震構造特有の大きな相対変位を出来るだけ小さくし得るセミアクティブ免震システムの研究を行っている.可変摩擦ダンパとして,ピエゾアクチュエータが作動しない場合でも,大地震時にはダンパとして機能し得るフェールセーフ機能を有した摩擦ダンパを開発している.本年度は,縮尺免震建物モデル(2層鉄骨フレーム構造の上部構造物(総質量6450kg)を4台の転がり支承で支持し,コイルばねで復元力を与える方式の免震構造)に,外形寸法25×25×36mmのピエゾアクチュエータを8個用いた可変摩擦ダンパを用いた実験モデルによって振動制御実験を行なった.本実験により,セミアクティブ免震の良好な性能を確認した.

MR流体を用いた可変粘性ダンパによる建築構造物のセミアクティブ免震
教授 藤田 隆史[代表者],協力研究員 佐藤 英児
MR流体を用いた可変粘性ダンパによって,免震効果を損なうことなく相対変位を出来るだけ小さくし得るセミアクティブ免震システムの研究を行っている.本年度は,MR流体ダンパ(最大減衰力約8kN)の基本特性実験を行い,その解析モデルを構築した.さらに,縮尺免震建物モデル(2層鉄骨フレーム構造の上部構造物(総質量6450kg)を転がり支承で支持し,コイルばねで復元力を与える方式の免震構造)に上記のMR流体ダンパを取り付けた実験モデルによって振動制御実験を行い,良好なセミアクティブ免震性能を確認した.

免震された精密生産施設のためのピエゾアクチュエータを用いた総合的アクティブ微振動制御システム
教授 藤田 隆史[代表者],技術官 嶋ア 守
半導体工場などの精密生産施設には,建物内部の設備機器をも効果的に地震から守るために,免震構造の採用が望ましい.本研究では,4基の多段積層ゴムで支持された2層建物モデル(3m×5m×4mH,総質量6t,免震層と上部構造物の柱と梁にピエゾアクチュエータを装着)を用いて,免震された精密生産施設の,設備機器や人間の歩行によって発生する内生微振動と,地盤振動や風による外来微振動を総合的にアクティブ制御するシステムを研究している.

超磁歪アクチュエータを用いた天井懸架型手術顕微鏡用アクティブ微振動制御装置
教授 藤田 隆史[代表者],技術官 嶋ア 守
脳外科手術や眼科手術では,患部を拡大して見るために最大倍率25倍程度の手術顕微鏡が用いられる.病院によっては,空調機器などの機械や人間の歩行などを振動源とする床の微振動が許容レベルを超え,手術に支障をきたすことが以前から問題になっていた.本研究では,天井懸架型手術顕微鏡を対象として,天井スラブと顕微鏡の間に装着して微振動を絶縁するためのアクティブ微振動制御装置を開発した.本装置には,大きな静的剛性を実現するために超磁歪アクチュエータを採用し,また,顕微鏡は姿勢によって動特性が変化するため,姿勢変化に対してロバストな制御則を採用した.実大の顕微鏡を用いた実験により,本装置が実用し得る性能を有していることを実証した.

リニアモータを用いた単結晶引上げ装置用アクティブ・パッシブ切換え型免震装置
教授 藤田 隆史[代表者],研究員 鎌田 崇義,民間等共同研究員 古川 裕紀,研究実習生 晦日 英明,研究実習生 山本 勇紀
単結晶引上げ装置は,弱地震動によって,機器自体ではなく製造中の単結晶が破損する.本研究は,このような単結晶引上げ装置の地震対策のために,リニアモータを用いたアクティブ・パッシブ切換え型免震装置を開発している.リニアモータを用いることによって,弱地震動に対しては良好なアクティブ免震性能を発揮して単結晶の破損を防止し,強地震動に対してはパッシブ免震によって引上げ装置自体の破損を防止することができると考えられる.本年度は,実験モデルによる振動制御実験を行って,ほぼ満足し得る性能を確認した.

スマート・タイヤモジュールの基礎的研究
教授 藤田 隆史[代表者],助手 大堀 真敬,大学院学生 金澤 篤史,大学院学生 石塚 達也
本研究では,自動車用タイヤのタイヤ発生力を計測し,計測データを無線通信によってリアルタイムに車体側へ伝送するシステムを開発している.タイヤ発生力の計測に関しては,タイヤ・路面間に作用する6分力をホイールのひずみを通して計測する方法を研究している.本システムによって,タイヤ・路面間の力をリアルタイムで直接測定することが可能になれば,車両運動制御システムの性能や信頼性は現在のものより格段に向上すると考えられる.本年度は,タイヤ試験機によってホイールを利用した6分力計測システムの実験を行い,満足し得る結果を得た.

タイヤ発生力の計測による自動車のABS制御に関する研究
教授 藤田 隆史[代表者],研究員 鎌田 崇義,研究実習生 赤澤和哉
本研究では,タイヤ・路面間の力をリアルタイムで直接測定することを前提に,その計測値を用いたABS制御について研究している.本年度は,1輪車モデルによるシミュレーションによって,現行のABSのような車体速度の推定値を用いない,新しい制御則によるABSについて検討した.

電気自動車の制御
教授 堀 洋一
電気モータの高速で正確なトルク発生を生かし,電気自動車で初めて可能になる新しい制御の実現をめざしている.タイヤの増粘着制御に成功すれば,低抵抗タイヤの使用が可能になる.4輪独立駆動車は高性能な車体姿勢制御が実現できる.モータトルクは容易に知れるから路面状態の推定も容易である.インホイルモータ4個を用いた高性能車「東大三月号-II」および「カドウェルEV」を製作し実験を進めている.車体すべり角βの推定,DYCとAFSの非干渉制御,最適速度パターン生成などに力を入れている.

モーション・コントロール
教授 堀 洋一
電気・機械複合系のモーション・コントロールとして,(1)外乱構造に着目した新しいロバストサーボ制御,(2)多重サンプリング制御を用いたビジュアルサーボ系,(3)加速度センサを用いた新しい外乱抑圧制御,(4)加速度変化率の微分を考慮した目標値生成法,(5)非整数次数制御系と係数図法にもとづく制御系設計のためのCADシステム,を行っている.応用としては,多軸ロボット,バックラッシをもつ軸ねじれ系実験装置,ハードディスクドライブ装置である.

福祉制御工学
教授 堀 洋一
福祉分野を想定した独特の制御手法の開発を目論むもので,福祉制御工学という学術領域を作りたいと考えている.現在行っている研究は,(1)カメラ画像情報による非日常性の検出,(2)介護ロボットのためのパワーアシスト技術,(3)新しい制御原理にもとづく動力義足の製作,(4)パワーアシスト車椅子の後方転倒防止制御, (5)機能的電気刺激を用いた歩行支援である.

建設産業のサービスプロバイダー化に関する研究
教授 野城 智也
建物へのニーズが刻々変化する現今の経済社会において,環境負荷やコスト負担を考えると,建替新築によってニーズに対応するのは効率的ではなく,むしろ既存建物をニーズの変化に対して遅滞なく部分更新する方が得策である.本プロジェクトは,こういった認識にたち,多様に特化し,かつ刻々変化する個々のニーズに対応し,建物のインフィルを生体組織的に変容させる技術を開発することを目的とする.

プロジェクトにおける技術癒合に関する研究
教授 野城 智也
建設プロジェクトでは,種々の主体が,技術的詳細を決定に様々な寄与をしている.その寄与のあり方は,プロジェクトの開始時点では必ずしも明確でなく,,契約上で定義された役割とも異なるものである.主体相互間の情報フロー及び意志決定のあり方も非定型的である.にもかかわらず,この技術的融合のあり方が,最終産品(建物)の性能・機能・品質を左右する.本研究はこういった認識に立ち,事例分析を積み上げることにより,プロジェクトにおける技術融合のベストプラクティスモデルを明らかにすることを目的とする

半凝固処理金属の製造技術に関する研究(継続)
教授 柳本 潤[代表者], 助手 杉山 澄雄,大学院学生 李 静媛
金属溶湯にせん断攪拌および急速冷却を加えて半凝固スラリーを連続的に製造する新しい方法として, せん断冷却ロール法(SCR法)を提案し, 各種条件下での製造実験を繰り返しつつ, プロセスの特性解明を進め, 所要の半凝固スラリーを得るのに要する加工条件を探索している. 併せて, 得られた半凝固スラリーの内部構造や凝固終了後の機械的特性について調査を進めている.

高機能圧延変形解析に関する研究
教授 柳本 潤[代表者],研究機関研究員 劉 金山
1990年より供用が開始された圧延加工汎用3次元解析システムは, 多くの事業所・大学に移植され広範囲な圧延加工の変形・負荷解析に利用されている. 種々の圧延プロセスの解析を精度良く行うための改良は現在も継続して行われているが, 同時に本年度より, 財団法人生産技術研究奨励会に設置された特別研究会「高機能圧延変形解析研究会」において, 産学共同による利用技術開発を平行して実施している.

高温変形加工時の材料組織変化に関する研究
教授 柳本 潤[代表者], 助手 杉山 澄雄,技術官 柳田 明,研究機関研究員 劉 金山
熱間加工においては塑性変形により誘起される再結晶を利用した, 結晶構造制御が行われる. この分野は, 加工技術(機械工学)と材料技術(材料工学)の境界に位置しているため, 重要度は古くから認知されてはいたものの理論を核とした系統的な研究が極めて少ない状況にあった. 本研究室では, 再結晶過程についての実験的研究と, FEMを核とした理論の両面からこの問題に取り組んでおり, 既に数多くの成果を得ている.

通電加熱の特性と変形加工への応用
教授 柳本 潤[代表者],技術官 柳田 明,大学院学生 和泉 亮
通電加熱圧延では均一温度分布を得ることが雰囲気加熱に比べ容易であり, 今後変形加工における温度制御手段として有効に機能していくことが予想される. 本年度はステンレス鋼の組織制御のための温度制御手段の確率を目的として, 通電加熱の特性を実験的に検討し, 圧延と組み合わせた組織制御を実施した.

冷間集合組織創成に関する研究
教授 柳本 潤[代表者],外国人客員研究員 李 雪春
冷間プレス加工による成形性を支配する要因は, マクロな視点では金属材料の面内異方性である. 面内異方性はミクロな視点では結晶方位分布により支配されるため, 塑性変形・再結晶・変態による結晶方位分布の変化の定量化は重要な課題である. 本研究では, 冷間集合組織創成メカニズムの検討と, 集合組織創成のための新たな加工機械の開発を目指している.

フレキシブルな素形材製造技術の開発
教授 柳本 潤[代表者],大学院学生 小山田 圭吾
素形材製造プロセスをより柔軟に…というのは永遠のテーマである. 例えば鋼製造プロセスでは数多くの合金成分を成分調整により造り分けているが, 現実には成分調整は転炉容量を最小単位としておりその量は約200トンと巨大である. 約10トンの1コイル毎に, 自在な機械的特性を創り込む技術の開発を目指しつつ, 実験による検討を行っている.

異種材料の常温でのマイクロ固相接合
教授 柳本 潤[代表者], 助手 杉山 澄雄
広範囲な異種材料の接合に利用できる,材料分流を利用した接合方法を提案し,マイクロ部材の接合への適用について基礎研究を行っている.本年度は,サブミリ寸法について検討を行い,健全な接合が可能であることを実験的に明らかにした.

乱流の非等方性効果にもとづくポリマー溶液の抵抗軽減機構の研究
教授 吉澤 徴
ポリマーの添加によって円管での流量は数十パーセント増加することがある.ポリマー添加の影響は,(1)微視的散逸構造の変化による巨視的乱流特性の変化,(2)巨視的の変化による抵抗軽減の発生の2過程に分類できる.本研究では,後者に注目し,乱流理論(TSDIA)を用いて,流れ方向の乱流強度の卓越が 抵抗軽減を引き起こす機構を明らかにした.

ダイナモと乱流輸送抑制の統一的定式化の研究
教授 吉澤 徴[代表者], 助手 横井 喜充
地磁気,太陽磁場,降着円盤磁場などの維持機構(ダイナモ)は個別的見地から研究されてきたが,クロスヘリシティの概念を導入することによって,その役割の変化を通して 統一的に記述できることを示した.さらに,トカマクの高モード閉じ込めにおける乱流熱輸送の抑制機構と乱流燃焼における逆勾配拡散現象に極めて類似の理論的機構があることを示した.本研究はPlasma Physics and Controlled Fusion誌(Institute of Physics, UK)の要請により, 伊藤早苗(九州大学),伊藤公孝(核融合科学研究所)との共同研究として行われた.

非線形渦粘性型乱流モデルの研究
教授 吉澤 徴[代表者],技術官西島勝一
工学的研究でもっとも多用されているK-ε渦粘性乱流モデルを,旋回流の特性が再現できるように改良することを試みている.ヘリシティ(速度と渦土ベクトルの内積)効果を付加し,乱流特性長さスケールを補正することで,旋回特性を定性的に再現できることが可能となった.この K-ε-h3方程式モデルを拡張して,レイノルズ応力表現に変形速度テンソルや渦度テンソルに関する2次,3次の非線形項を組み込み,より適切に特性を差右舷で切るモデルへの発展を試みている.

CED(き裂エネルギ密度)概念による破壊力学の構築(継続)
教授 渡邊 勝彦
現実のき裂端近傍における現象はほぼ例外なく非弾性現象である. 現在広く行われている破壊力学はこの非弾性現象を弾性き裂の力学により評価しようとして来たものであるといえ, そのため種々の限界, 矛盾が生じている. 本研究においては, CED概念を中心とした非弾性き裂の力学とも呼ぶべきものを構成し, その各種破壊問題への適用を通じて従来の破壊力学における限界, 矛盾を克服し, あらゆるき裂問題に適用可能な破壊力学体系の構築を目指して研究を進めている.

異材界面の破壊と強度評価法に関する研究(継続)
教授 渡邊 勝彦[代表者],助手・特別研究員 永井 学志,大学院生 Kim Sang-won
異材界面においては, 弾性解における界面き裂端での応力の振動特異性, 界面端部での応力特異性を見ても分かるように, 均質材では見られない特殊な挙動を示し, その強度評価法の確立に向けて解決さるべき問題が多い. 本研究では上の界面き裂と界面端部の強度評価法の開発・確立に向けての理論的, 実験的研究を進めており, 前者においては, 脆性破壊を対象にした応力拡大係数をパラメータとしての研究, また一般にはき裂端近傍での非弾性挙動を考慮に入れる必要があることから, 弾性から非弾性まで統一的に扱うことを可能にするCEDを中心とした界面き裂パラメータに関する検討を行っている. 後者については軸対称問題, 三次元問題における界面端部,界面コーナー点の特異性について研究している.

混合モードき裂の破壊挙動評価に関する研究(継続)
教授 渡邊 勝彦[代表者],研究員 宇都宮 登雄,技術専門職員 土田 茂宏
き裂の破壊挙動評価は, 混合モードき裂がどの方向に, どのような条件を満たしたときどの破壊モードで起こるかを判断できて初めて完全なものとなる. 本研究ではCEDをパラメータとして用いることにより, 上記の条件を満たす, 脆性破壊から大規模な塑性変形をともなった破壊まで統一的に扱える混合モードき裂破壊挙動評価が可能となることを均質材中き裂について実証してきており, 現在は, 異材界面においては一般に混合モード状態となることから, 本研究での手法の, 降伏応力が異なる同種材料を溶接したときの界面上および界面近傍のき裂問題への適用性につき, 材料の組合せや液体窒素温度から常温までの温度の影響も含め,検討を進めている.

分子動力学法, 個別要素法の破壊問題への適用性に関する研究(継続)
教授 渡邊 勝彦[代表者],元大学院学生 張 万石,研究員 飯井 俊行
本研究は分子動力学法によるシミュレーション, また同法の手法を取り込んだ個別要素法の開発とそれによるシミュレーションを通じて破壊現象の本質に迫り, その理解を深めると共に通常の連続体的強度評価手法の今後の展開に資そうとするものである. 前者においてはbcc Feマトリックス中のCu析出物周りの内部応力評価, 三次元問題を含むいくつかのき裂問題の解析等を進めており, また後者については繊維強化複合材料の衝撃破壊等への適用性についての検討を行っている.

圧電材料の破壊力学に関する研究(継続)
教授 渡邊 勝彦[代表者],大学院学生 南 秉群,助手・特別研究員 永井 学志,技術専門職員 土田 茂宏,大学院学生 西 啓佑,大学院学生 劉 栄豊,大学院学生 月足 繁
圧電材料はセンサーやアクチュエーターとして用いられ, 将来の知的材料の構成要素として期待されているが, その破壊力学的強度評価法は未だ確立されるに至っていない. 本研究はその確立を目指すものであり,切欠き・き裂における特異性, 力学的効果, 電気的効果のカプリングの現れ方等, 基本的性質の把握から始め,圧電材料へのCED概念の導入,それによる破壊クライテリオンの提案,破壊実験法の開発と実験実施による提案クライテリオンの有効性の実証等を進めている.

薄型シリコンチップの強度評価法に関する研究
教授 渡邊 勝彦[代表者],助手・特別研究員 永井 学志,技術専門職員 土田 茂宏,大学院生 林 治宇
ICカードのような電子デバイスに組み込まれる半導体チップには薄さが要求されるために, 数10μm厚のものが開発されつつあるが, 材料である単結晶シリコンは欠陥に対して敏感であることや微小であること等も加わり, 従来の強度評価手法をそのまま適用することは困難となっている. このような現状を踏まえて, この種の材料に対する強度評価手法について検討を行っている.

熱応力下応力拡大係数の特性とその構造物健全性評価への応用(継続)
教授 渡邊 勝彦[代表者],研究員 飯井 俊行
熱サイクルを受ける構造物においては, 熱応力によりいったんき裂が発生, 進展を開始しても, その後停留してしまう場合も多い. これにつき従来, 熱応力下においてはき裂の進展に伴い始め応力拡大係数は増加するがその後減少していくためであろうと概念的に考えられているが, 定量的には殆ど議論されていない. 本研究においては, 各種の熱応力下応力拡大係数を系統的にかつ簡便に評価する手法の開発を行ってき裂停留の本質を明らかにすると共に, 停留現象を構造物のより合理的な, 健全性評価・設計に活かす方法について研究している.

コンクリート材料の圧縮破壊解析のためのイメージベース有限要素法の開発
助手・特別研究員 永井 学志, 教授 渡邊 勝彦[代表者]
建設系の主要な構造材料のひとつであるコンクリート材料は, 微視的に見ると様々な脆性材料から構成される複合材料であるが, 介在物としての骨材が母材の脆性破壊の進行を妨げる働きをするために, 巨視的に見ると擬脆性的な力学挙動を示す. 本研究では, 巨視的な圧縮破壊を微視的な引張による破壊から詳細に説明することを目標として, 母材−介在物−界面の微視構造モデルに変位の不連続性を考慮した三次元イメージベース有限要素解析手法を開発している.

弾性複合材料の分散性を考慮した波動伝播モデルの開発(継続)
助手・特別研究員 永井 学志, 教授 渡邊 勝彦[代表者]
弾性複合材料中を伝播する応力波は, 波長が複合材料の微視構造の特徴長さよりも十分に長い場合には, 等価な均質材料を考えることによりモデル化できる. しかしながら, 波長が短くなるにしたがって, それぞれの微視構造に特有の分散性を示すために, 均質化してモデル化する際にはこの分散性を考慮する必要がある. 本研究では, 多重時間スケールと2つの空間スケールを用いた波動方程式に対する高次均質化法から導出される微視と巨視に関する方程式を基礎として, 波動の分散性を考慮した応答解析のためのモデル化手法を開発している.

既存鉄骨建物の構造耐力性能の診断と改善(継続)
助教授 大井 謙一[代表者],助手 嶋脇與助・技術専門職員 大塚日出夫・大学院学生 藍兆松
阪神・淡路大震災で観察された鉄骨造文教施設の被害像と耐震診断結果とを整合させるための耐震診断法の改善,特に建物のエネルギー吸収能力を表現するじん性指標F値の改善についての研究を行っている.また,既存鉄骨造建物の構造耐力性能を改善する目的で取付けられる軸組筋かい材を対象として,改修時の施工性を重視した改良型接合形式の開発研究や高変形能高力ボルトや形状記憶合金製の超弾性ボルトを用いた接合部,半剛接合部の柱側板要素の補強効果などについて実験的に検討している.

鋼構造骨組のハイブリッド地震応答実験(継続)
助教授 大井 謙一[代表者],助手 嶋脇與助・技術専門職員 大塚日出夫・大学院学生(RA)伊藤拓海
多数の構造部材からなる大規模架構全体の破壊挙動を電算機で追跡しながら,計算された部分構造の変位(または力)を部分構造模型試験体に強制し,また載荷実験で測定された部分構造の挙動情報をリアルタイムで解析にフィードバックさせるというハイブリッド実験システムを開発している.

鉄骨造弱小モデルの地震応答観測(継続)
助教授 大井 謙一[代表者],助手 嶋脇與助・技術専門職員 大塚日出夫
中規模の地震でも損傷が生じるように設計された鉄骨造3階建て弱小モデル2棟の自然地震に対する応答観測を千葉実験所にて継続している.1棟の模型に変形性能に優れた極低降伏点鋼製の履歴ダンパーを設置して,応答観測により履歴ダンパーによる応答低減効果を実証的に調べるとともに,弱小モデルに対するオンライン地震応答実験を行った.また実大構造要素模型の応答観測を目的として,15トン錘を吊った鋼製のブランコ(スチール・スウィング)を建設し,これを利用して露出型柱脚部の地震応答観測を行っている.

鉄骨構造物の複合非線形解析(継続)
助教授 大井 謙一[代表者],助手 嶋脇與助・技術専門職員 大塚日出夫・大学院学生(RA) 伊藤拓海
火力発電所建屋,体育館,工場などの鉄骨造架構は,事務所ビルと異なる形状を有し,筋かい等も不規則に配置されているため,大地震時の挙動には未知の部分が多い.それ故,複雑な部材配置をもつ非整形骨組に対しても設計の段階で容易に用いることのできる非線形解析法が望まれている.本研究では,鉄骨部材の塑性化領域を複数の非線形バネ要素の結合体で近似し,この種の架構の弾塑性挙動を解析している.また骨組の塑性崩壊に対する安全領域を,凸降伏多面体モデルや超楕円体モデルで近似し,省力化地震応答解析法を提案している.

信頼性理論に基く鋼構造物の終局限界状態設計(継続)
助教授 大井 謙一[代表者],助手 嶋脇與助・技術専門職員 大塚日出夫・大学院学生(RA) 伊藤拓海
信頼性理論に基く鋼構造物の終局限界状態設計法に関して解決すべき種々の問題を研究している.線形計画法における制約条件を不確定とした確率極限解析法,複合応力下の部材耐力相関を考慮した極限解析法,設計者の任意の設計戦略を受容できる塑性設計法等の理論的研究を実施しているほか,鉄骨造架構の損傷度についての専門家の意識調査を行い,大震災前に実施した調査結果と比較している.また近似信頼性解析と載荷実験とを結合したハイブリッド実験システムを開発し,鉄骨多層骨組に適用し,地震応答実験結果と照合している.

食品凍結・乾燥における溶液系材料の凍結現象シミュレーションモデルの構築と実証(継続)
助教授 白樫 了[代表者],教授(東大)相良 泰行
食品の凍結乾燥は, 食材本来の品質を維持しつつ保存のきく加工法であることから, 高品位の乾燥保存食品として利用されつつある. しかしながら, 最終的な製品の品質が, 凍結時に生成する氷晶の形態の影響を大きくうけることから, 凍結操作の制御法や氷晶構造の予測がもとめられている. 本研究では, 食材の性状としてコーヒーや果実汁等の溶液系材料を対象として, 凍結速度や凍結方法に依存して変化する氷晶のサイズや分布等を定量的に予測するためのシミュレーションを構築し, 実験により実証することを目的としている.

生体・食品凍結保存における糖類が細胞内外凍結に及ぼす影響
助教授 白樫 了[代表者], 助手 高野 清
一部の糖類は,凍結保護効果をもつことが近年の研究で知られつつある.本研究では,糖類が細胞膜透過や細胞内核生成に及ぼす影響を定量的に明らかにすることで,極めて生体適合性の高く,幅広い凍結・解凍条件で高品位の生体・食品を保存する可能性を検討する.

細胞内への糖類等分子の細胞膜輸送量の計測・解析に関する研究
助教授 白樫 了[代表者],(Uni. Wuerzburg) V. L. Sukhorukov,(Uni. Wuerzburg) U. Zimmermann
細胞のelectroporation等の能動的な膜輸送促進や体積制御による膜輸送は,細胞内外の物質の組成が異なる場合,細胞膜を介して物質の交換輸送を行う.本研究では,これらの物質輸送量や膜輸送特性値を簡便な実験により推定する解析方法の開発を目指している.

食品冷凍における氷晶形態の非破壊推定法の開発
助教授 白樫 了[代表者],教授(東大)相良泰行
生鮮食品の保存や凍結乾燥を行う食品では,冷凍した際に内部の氷晶のサイズがその後の食品の品質をほぼ決定してしまう.このような氷晶の状態を非破壊的に計測することができれば,実用の食品加工プロセスや冷凍保存過程に適用できるができる.本研究では,食品の誘電物性を利用した簡便な非破壊検査法について原理検証と実際の凍結対象での実験を行っている.

非ホロノミック自由関節マニピュレータに関する研究
助教授 鈴木 高宏[代表者], 助手 新谷 賢,Prof. Alessandro De Luca (Universita di Roma &quot;La Sapienza&quot;) ,Prof. Giuseppe Oriolo (Universita di Roma &quot;La Sapienza&quot;)
従来から行っている自由関節マニピュレータの研究について,2003年度においては文部科学省在外研究員制度による滞在を利用し,ローマ大学工学部におけるPendubot実験装置を利用して研究を行った.特に,非線形制御理論に基づき,重力下での振動入力による傾斜平衡点への可到達性・安定性の解析や,平均化法による系の近似軌道の定式化などを行っている.

メカトロニック人工食道の開発
助教授 鈴木 高宏[代表者],助手(東大医) 成瀬 勝俊, 助手 新谷 賢
柔軟ロボティック・メカトロニックシステムの応用の一つとして,食道の蠕動による咀嚼物搬送機能を機械的機構に代替する,メカトロニック人工食道の開発を行っている. 今年度においては,昨年度開発した密閉型駆動機構および柔軟螺旋スクリュー翼を備えた試作実験機を用いて,様々な粘度の対象物の搬送などの実験を行い,搬送能力の計測等を行った.

超柔軟マニピュレータに関する研究
助教授 鈴木 高宏[代表者], 助手 新谷 賢
従来の柔軟系に関する研究と異なり,弾性の存在を必ずしも前提とせず,系の動力学的挙動を考慮して新しいロボットマニピュレーションを考えようという,超柔軟マニピュレータに関する研究を行っている.今年度においては,ローマ大学におけるPendubotを利用した自由関節マニピュレータの研究と並行して,超柔軟機構を利用した新しいロボットシステムの検討を行った.

マルチモーダルGIS
助教授 瀬崎 薫[代表者],瀬崎研 大学院学生 任 明
音声,画像,触覚等多様なモダリティを活用することにより,空間情報の認知と操作の改善を図ることを試みている.本年度は,3次元空間上のデータ表現の情報ある種の操作においては触覚情報を加えることにより,操作効率が改善される場合があることの確認を行った.

触覚メディアの研究
助教授 瀬崎 薫[代表者],瀬崎研大学院学生 有本 勇,瀬崎研研究実習生 引地 謙治
覚・力覚を新しいメディア・インタフェースとして捉え,このネットワーク上を伝送を利用するための諸問題を多様な観点から検討している.具体的には,ネットワーク上での情報量削減とパケットロス対策としてのdead reckoningの手法,メディア同期の枠組み,帯域圧縮,力覚ストリームとオブジェクト情報ストリームの制御,異種インタフェース間の連携等について主観評価実験と理論的考察の両面から検討を行っている.

アドホックネットワーク
助教授 瀬崎 薫[代表者],瀬崎研 大学院学生 黄楽平,瀬崎研 研究実習生 竹内 彰次郎,瀬崎研 大学院学生 天野 啓
アドホックネットワーク構築のための諸課題の検討を行っている.本年度は,IEEE802.11bを用いた実アドホックネットワーク環境を10台以上のPCを用いて実現し,既に我々が提案した数々のアルゴリズムの実証実験を行った.また消費電力を節約するルート構築法,アドホックネットワークとインターネットの連携手法についての検討を行った.

センサネットワークの研究
助教授 瀬崎 薫[代表者],瀬崎研究室 大学院学生 Niwat Thepvilojanapong,瀬崎研究室 大学院学生 関根 理敏
環境情報,コンテクスト情報を取得する基盤となるセンサネットワークについての研究を行っている.本年度は,従来のDHTより効率的なデータ集約方法を提案した.また,セキュリティ強化の方策の検討を行った.

LBSの研究
助教授 瀬崎 薫[代表者],瀬崎研 大学院学生 山崎 浩輔,瀬崎研 大学院学生 Creixell Werner
位置依存型サービス(LBS)提供に向けた諸課題の検討を行っている.本年度は,実データに基づいてユーザの将来の位置を予測するモデル構築の可能性について検討を行った.また,位置をキーとする新たなアドレッシング体系についての検討を行った.

コンテンツ配信手法の研究
助教授 瀬崎 薫[代表者],瀬崎研 大学院学生 角田 忠信 ,瀬崎研 大学院学生 松井 祐馬
アドホックネットワークのような不安定な経路上,あるいは異種ネットワークが同時に使用可能な環境において分散的にコンテンツを配信することの有効性について検討を行った.

高機能バイオセンサーの開発
助教授 立間 徹[代表者],助手 高田主岳,立間研 博士研究員 野津英男,立間研 大学院学生 四反田功,立間研 大学院学生 佐藤健,立間研 研究生 小森喜久夫
酵素や酵素のモデル系の選択的触媒活性に基づくバイオセンサーを開発している.同時に複数の情報を得られる多重応答取得型バイオセンサーや,酵素-電極間の効率的な電子移動を可能にするセルフワイヤリング法などを中心に開発・研究している.また,細胞を利用したバイオセンサーによる毒性評価法も研究している.

バイオキャタリストの活性制御
助教授 立間 徹[代表者],立間研 研究生 小森喜久夫
酵素のモデル系を電極上に載せ,その活性中心構造の可逆な制御に基づく活性の制御を試みている.実際には,ペルオキシダーゼのモデル分子であるヘムペプチドとその阻害剤であるイミダゾールを用い,相転移ポリマーを用いて阻害作用の可逆な制御を行った.このようなシステムは,活性を自律制御する触媒システムや,測定対象に応じて感度やダイナミックレンジを自律制御するセンサーに発展するものと期待される.

金属ナノ粒子を用いたプラズモン光電気化学とマルチカラーフォトクロミズム
助教授 立間 徹[代表者],立間研 共同研究員 大古善久,立間研 外国人博士研究員 田陽,立間研 大学院学生 直井憲次,立間研 大学院学生 川原敬祐
金属ナノ粒子と半導体を用いて,プラズモン共鳴に基づく光電気化学反応とそれを利用したエネルギー変換および情報変換材料・デバイスを開発している.特に,照射した光と同様の色を発色し,様々な応用が可能なマルチカラーフォトクロミズムについて研究している.

エネルギー貯蔵型光触媒の開発
助教授 立間 徹[代表者],助手 高田主岳,立間研 受託研究員 齋藤修一,立間研 大学院学生 Pailin Ngaotrakanwiwat,立間研 大学院学生 高橋幸奈
酸化チタン光触媒は,光励起により生じる還元力と酸化力により,有害物質の分解,抗菌,金属の防食などの機能を示すが,光照射下でしか機能しない.この問題点を克服するため我々は,酸化チタンと他の金属酸化物を組み合わせた新しい材料を開発した.この材料では,酸化チタンの光励起に基づく還元エネルギーを日中,金属酸化物に貯蔵し,そのエネルギーを夜間に利用することができる.すでに,防食効果や抗菌効果を夜間も維持できることが明らかになっている.

光触媒リソグラフィー法の開発
助教授 立間 徹[代表者],立間研 博士研究員 野津英男,立間研 大学院学生 久保若奈
新しく見出された酸化チタン光触媒による非接触酸化反応の機構について研究するとともに,この現象を固体表面の二次元パターニングに応用する光触媒リソグラフィー法の開発と評価を行う.すでにマイクロメートルレベルの解像度を実現している.バイオチップやケミカルチップへの応用についても検討する.

機械エネルギーの電気化学的変換
助教授 立間 徹[代表者],助手 高田主岳,立間研 大学院学生 田中信宇
種々の電気化学活性ゲルやポリマーなどを合成し,これらを用いて,機械エネルギーと電気エネルギーまたは化学エネルギーとの相互変換について研究している.ソフトアクチュエーターや圧力電池などへの応用をめざしている.

次世代流体解析システムの開発
助教授 谷口 伸行[代表者], 教授 加藤 千幸, 助教授 大島 まり, 助手 佐賀 徹雄,アドバンスソフト(株) 張会来,東北大学流体科学研究所 客員教授 寺坂春夫 ,トヨタ自動車(株) 山田敏生,東京理科大学 助教授 山本誠,宇宙航空研究開発機構 松尾裕一,名古屋工業大学 助教授 森西洋平,電気通信大学 助教授 坪倉誠,アドバンスソフト(株) 山出吉伸,計算科学技術連携研究センター 産学官連携研究員 井田真人,計算科学技術連携研究センター 産学官連携研究員 Ashraf Md. Uddin,計算科学技術連携研究センター 産学官連携研究員 王 宏,計算科学技術連携研究センター 産学官連携研究員 郭 陽,計算科学技術連携研究センター 産学官連携研究員 畝村毅,計算科学技術連携研究センター 産学官連携研究員 山田英助,計算科学技術連携研究センター 産学官連携研究員 鳥井亮,計算科学技術連携研究センター 産学官連携研究員 姜玉雁,谷口研 技術官 伊藤裕一,大島研 技術官 大石正道,谷口研 大学院学生 冨永卓司
実用的な流れ数値解析のためには,流れ場の複雑さに応じて数理モデルや解析手法を合理的に選択あるいは併用することが必要である.本研究では,複雑形状の非圧縮性流れ場の解析を主な対象として,異なる数理モデルや解析手法に基づく複数の計算コードを開発し,それらの相互比較による相互検証,および,それらの高度な解析法の開発を行う.平成14年度からは,文部科学省ITプログラム「戦略的基盤ソフトウェアの開発」と連携して,汎用乱流解析プログラム開発における計算法,解析モデルの改良,検証を行う.今年度は,特に,LESモデルの数値不安定性に関する基礎研究,燃焼・混相流れの解析モデルの開発検証,ボイラーフィードポンプの流体構造連成問題の実証計算などを進めた.

燃焼反応を伴う乱流の数値解析モデリング
助教授 谷口 伸行[代表者],谷口研 技術官 伊藤裕一,谷口研 大学院学生 冨永卓司
工業的に用いられるスケールの火炉バーナやタービン燃焼器などの燃焼反応は流れ場やその乱れ特性に大きく依存しており, 特にNOx制御や異常燃焼抑制の合理的な設計には燃焼乱流場の非定常現象を直接的に予測できる手法が求められている. 本研究では, flameletの概念に基づく乱流火炎モデルの開発を進めている. 今年度は特に, スプレー燃焼や,ガスタービン燃焼器の燃焼振動への応用拡張を検討した.

粒子混相乱流の数値解析モデリング
助教授 谷口 伸行[代表者], 助手 佐賀 徹雄,谷口研 技術官 伊藤裕一
スプレーやエンジン・インジェクションに際して分散粒子を含む流れの予測制御が重要な設計要件となるが, 工学問題において流れの乱れ特性との相互作用は十分解明されていない. 本研究では乱流の非定常構造の解析に有効なラージ・エディ・シミュレーション(LES)に基づき分散粒子と乱れの相互作用の数値モデルを構築して, 粒子混相乱流の数値予測シミュレーション法の開発する. 本年度は,液滴燃料のスプレー燃焼流れの解析モデル開発,乱流中への噴霧拡散挙動の可視化実験解析などを試みた.

自動車の空気力学的特性に関する研究
助教授 谷口 伸行[代表者], 助手 佐賀 徹雄,谷口研 研究員 鬼頭幸三,東京理科大学 助教授 山本誠,日本自動車研究所 所長 小林敏雄
自動車などの車両の定常・非定常空力特性の解明, 乱流騒音の制御, 車室内冷暖房の空気流動の予測と制御に関する基礎研究を行っている.今年度は, ドアミラーから発生する空力音についての実験解析および数値解析,自動車床下流れの数値予測に関する基礎研究などを行った.

分散型センサーネットワークの基盤技術とその応用
助教授 谷口 伸行[代表者],谷口研 大学院学生 猿渡俊介
MEMS技術および半導体技術の発展に伴い,小型化されたセンサ,アクチュエータ,プロセッサ,通信システムなどを具備した微小機器を空間や身の回りの家電などいたるところに組み込んでりようするといったことが注目され始めている.プロセッサや通信システムを備えた微小機器はただ単に見た目が小さいというだけでなく,想定される利用形態が,数が膨大,低通信速度,低消費電力,低計算能力などの特徴を持ち,これまでパーソナルコンピュータを中心として栄えてきたソフトウェア技術やネットワーク技術の高速通信,高速計算を追い求めていたパラダイムとは異なる.この新しいパラダイムにのっとったソフトウェアアーキテクチャ,ネットワークアーキテクチャの研究開発は今後のコンピュータ技術やネットワーク技術に対してきわめて重要であり,これに向けた実験環境や開発環境の整備は急務である.今年度は,特に,多数の分散型マイクロセンサによる計測システムなどを想定し,センサ同士で無線ネットワークを構築するための基盤ソフトウェア「PAVENET」の開発を行った.

超音波モータを利用した超高真空対応回転導入器の研究
助教授 新野 俊樹
半導体技術やナノテクノロジーは近年目覚ましい進展を遂げており,今後,更なる微細構造物の加工や観察が必要となる.微細構造物の加工や観察には超高真空状態などコンタミネーションの少ない環境が求められるが,そのような環境下で動作する機械要素はあまりない.微細構造の加工や観察には電子線を用いた機器を使用することが多くみられ,それらの電子線は磁場などの影響を受けやすい.しかし,超高真空状態を保ち,電子線に影響を与えないというような機械要素はほとんどみられない.そこで,本研究室ではダイレクトドライブによる低速高トルク,ブレーキレス(静止状態で保持力を持つ)かつ非磁性である超音波モータに着目して超高真空状態に対応する回転導入器の開発を目指している.本年真空度の向上をおこない,5x10-8Paの超硬真空環境下での130時間以上の駆動に成功した.

超高真空対応テレスコピック形Stick-Slipアクチュエータの開発
助教授 新野 俊樹
半導体技術やナノテクノロジーは近年目覚ましい進展を遂げており,今後,更なる微細構造物の加工や観察が必要となる.微細構造物の加工や観察には超高真空状態などコンタミネーションの少ない環境が求められるが,そのような環境下で動作する機械要素はあまりない.微細構造の加工や観察には電子線を用いた機器を使用することが多くみられ,それらの電子線は磁場などの影響を受けやすい.しかし,超高真空状態を保ち,電子線に影響を与えないというような機械要素はほとんどみられない.本研究室では,超高真空環境下に試料を導入したり,パラレルメカニズムを駆動できるアクチュエータとして,元の長さ100mm程度から最長300mm程度まで伸長することができ,なおかつオングストロームオーダの分解能を有するアクチュエータをめざし,テレスコピック形Stick-Slipアクチュエータを開発した.これまでに非運転時に3x10-8の超高真空圧力に到達することに成功し,2x10-7程度の高真空環境下での駆動に成功した..

知的制御システムに関する研究
助教授 橋本 秀紀
知的制御システムは「環境を理解し, それに応じた制御構造を自己組織化する能力を有するもの」と考えることができ, 新しいパラダイムへつながるものである. このパラダイムを確立するために, 柔軟な情報処理能力を有する Artificial Neural Networks, Fuzzy等の Computational Intelligence の利用および数理的手法に基づいた適応能力の実現による制御系のインテリジェント化を進めている.

Networked Robotics に関する研究
助教授 橋本 秀紀
人間中心の機械システム実現のため,「人間自身の理解」と「人間と機械の双方が理解する,共通概念の構築」を目指し, 高速広域ネットワークを利用した人間機械協調系:Networked Robotics の構築を目標に研究を行っている. ネットワークを介して分散しているロボットが, システムとして高度な機能を実現するには, ロボット間の知的ネットワーク通信が必須の条件であり, そのためのネットワーク, プロトコルの開発が重要となる. 本研究では, ロボットのためのプロトコルの研究を通して, Networked Robotics の問題へアプローチする.

分散されたデバイスと相互作用し賢くなる知的空間
助教授 橋本 秀紀[代表者],橋本研 大学院学生 森岡 一幸,橋本研 大学院学生 セメシュ ペーター,橋本研 大学院学生 山下 祥宏,橋本研 大学院学生 井須 寛之,橋本研 研究実習生 新妻 実保子
人間を観測し, その意図を把握して適切な支援を提供する人工的な空間の創造を目指す. 具体的には, その空間内に分散配置された多数のデバイスがネットワーク化され, 人間から得られる多様なデータの取得手法とその情報化および知能化を検討し, データの持つ意味を抽出して適切な支援を発現する仕組みを提案する.

分散配置された知的センサによる空間認識に関する研究
助教授 橋本 秀紀[代表者],橋本研 大学院学生 森岡 一幸,橋本研 研究実習生 高塚 壮介,橋本研 研究実習生 黒田 陽一
多数のネットワーク化された知的センサを環境に分散配置し空間を知能化するには, 空間認識のためのセンシング技術が必要である. 現在, 知的センサとして, CCDカメラに空間認識のためのアルゴリズムを埋め込んだモジュールを使用して, 空間知能化の基礎研究を行なっている. 本研究では, 各知的センサが獲得した画像情報から, 人間やロボットなどの位置情報, 動作情報などを知るための情報処理方法を検討する. 主に,空間内オブジェクトのモデルの自動学習,オブジェクト領域の追跡方法などについて検討している.

知的空間におけるユビキタスハプティックインターフェースの行動計画に関する研究
助教授 橋本 秀紀[代表者],橋本研 大学院学生 セメシュ ペーター
インテリジェントスペースの中でユーザに対しより高度なサービスを提供するために, インタフェースデバイスに移動プラットフォームを付加した, ユビキタスハプティックインタフェースを提案している. 本研究ではユーザである人間の歩行特性を空間側に設置されたセンサにより取得し,その歩行状態を学習することで移動プラットフォームの動作計画を行うことで,物理的コミュニケーション支援ツールとしての移動インターフェースの検討を進める.

非線形確率推定アルゴリズムの研究
助教授 橋本 秀紀[代表者],橋本研 研究生 ワダマサキ
本研究では実システムへの応用を念頭に,確率理論を用いた非線形推定アルゴリズムについて,特にシステムのモデルや特徴等既知な情報を簡単に応用・表現するために必要な推定や学習理論に着目している.まず大量のデータ収集が可能であり状態方程式が定まるが,必要なパラメータが未知または一部しか既知でないシステムのために学習と選択を含めたモデリング・推定枠組みの提案を行った.さらにリアルタイム性を考慮したRao-Blackwellisationによる新しい非線型・非ガウス型モデルを扱えるフィルタリング手法を提案し検討している.このアルゴリズムを様々な分野へ応用することで,近年飛躍的に高まった計算能力,センサデータ収集能力,ネットワーク化による情報収集能力等を活用しより精密でロバストなシステムを実現することが期待されている.

GPSによる高精度位置推定システムを用いたオフロード移動体に関する研究
助教授 橋本 秀紀[代表者],橋本研 大学院学生 茅旭初,橋本研 大学院学生 金聖植
手軽で信頼性の高い測位システムとして,GPS (Global Positioning System)がカーナビゲーションの主要技術として急速に普及してきている.受信システムの新たな構成を提案し非線形フィルタを導入することでシステムの信頼性と精度の向上を実現することが可能である.GPSベース位置推定への現代非線形フィルタ技術の応用に関して,本年度は非線形フィルタに基づくGPS信号処理のためのモデルと推定アルゴリズムの構築と実装を行なった.今後は新しいアルゴリズムに基づいたGPSレシーバー信号処理の部分の検討及びオフロード移動体の車両状態推定のための応用に関して研究を進めていく.

高精度微細作業や微細組立てのためのマイクロマニピュレータに関する研究
助教授 橋本 秀紀[代表者],橋本研 大学院学生 黄吉卿
マイクロロボットの製作や微細部品の加工, 検査を目的とした遠隔微細作業支援システムに関する研究を行っている.本システムは微細作業を行う独自の6自由度パラレルリンクマニピュレータと,オペレータが操作するハプティックインターフェースおよび視覚インターフェースにより構成されるバイラテラル・テレオペレーションシステムで構成される.オペレータに対し微細作業環境を視覚的,力覚的に拡大提示することにより,作業が困難な微細作業を誰にでも違和感無く行うことができ,作業効率を高めるシステムを目指している.現在,複数個のマニピュレータの協調作業の自動化を目指し,教示やエラー発生時だけ人間が介在するようなスーパーバイザリ型の微細作業システムや微細構造の組立てシステムへの拡張を行っている.

ハイブリッド乱流モデルの研究
助教授 半場 藤弘
高レイノルズ数の壁乱流のラージ・エディー・シミュレーションを行うには,格子点数の制約から滑りなし条件が困難なため壁面モデルが必要となる.レイノルズ平均モデルと組み合わせるハイブリッド型の計算が精度のよい壁面モデルとして期待される.しかし単純に二つのモデルを組み合わせてチャネル流の計算を行うと平均速度分布に人工的な段差が生じることがわかった.そこで本研究では,段差の原因を調べそれを取り除く数値計算法を提案し,チャネル流に適用して検証した.さらに乱流モデル方程式の融合法に着目し改良を進めている.

乱流中の非局所的なスカラー輸送
助教授 半場 藤弘
乱流による熱や物質の輸送の計算に必要なスカラーフラックスの乱流モデルとして局所的な渦拡散近似がよく用いられるが,熱対流乱流など大規模な対流渦を含む流れ場では局所近似がよくないことが知られている.本研究ではグリーン関数を用いて厳密な非局所的渦拡散表現を導出し,チャネル乱流の直接数値計算を行って検証した.また,非局所的な拡散係数のモデル化の試みを行っている.

回転球殻の電磁流体ダイナモ
助教授 半場 藤弘
地球磁場は地球外核の溶融鉄の熱対流運動によって駆動され維持されている.本研究では電磁流体の乱流モデルを用いて回転球殻の磁場分布を計算し,ダイナモ効果による磁場の維持の考察を行った.特に実現性条件を考慮して乱流起電力のモデルの改良を行い,高回転系での計算を可能にした.さらに境界条件の非定常性に着目し磁場反転の再現を試みている.

回転系の乱流熱対流の数値計算
技術官 小山 省司, 助教授 半場 藤弘[代表者]
地球や太陽の磁場は天体内部の電導性流体の熱対流運動によって維持されていると考えられている.このような電磁流体乱流ではヘリカルな乱流運動がどのように生成され,磁場にどのような影響を及ぼすかを調べることが重要である.本研究ではその第一歩として,回転系における熱対流の乱流場の解析を数値計算を用いて行っている.本年度は計算で得られた統計量を用いてレイノルズ平均モデルの検証を行った.特に熱フラックスや乱流拡散項のモデルにおける浮力項の重要性について考察した.

分散サービス妨害攻撃対策技術
助教授 松浦 幹太[代表者],技術官 細井琢朗, 大学院学生 古谷隆行
盗聴やなりすましのような狭義のセキュリティ的脅威だけでなく, ネットワーク社会では嫌がらせも問題となる. 例えば, 安全な通信のための「相手を確認する作業」を次から次へと行わせて計算機資源を枯渇させるサービス妨害攻撃は大きな脅威である. 我々は, サービス妨害攻撃を抑止するために攻撃者へ負荷を負わせる技術を開発し, 同技術を安全性証明可能な鍵共有プロトコルへ応用することに成功した. さらに, 複数の攻撃拠点から同時に妨害攻撃を仕掛ける分散型の攻撃に対しても, 情報理論を巧みに応用してその攻撃を検知する技術や, 攻撃の発信元を追跡する技術を開発している.

電子証拠物工学の研究
助教授 松浦 幹太[代表者],大学院学生 小森 旭, 大学院学生 森垣 努
完全に実時間の信頼できる分散ディレクトリは原理的に不可能なため, ネットワークセキュリティ技術で対策を講じても, 何らかの紛争が発生し得る. 我々は, その紛争処理において有効な資料となる「電子証拠物」の概念を提唱し, 証拠物生成の要素技術を研究している. 例えば, 電子マネーのユーザが秘密データの搾取にあってそれを悪用されても, 「悪用されたのだ」ということを第三者に証明できる技術を開発した. また, 単一機関に頼らず電子取引時刻を保証する電子時刻印システムにおいて, 精度を従来の「日」のオーダーから「秒」のオーダーへ飛躍的に高める技術を開発し, そのプロトタイプを示した.

セキュリティマネジメントと情報経済工学
助教授 松浦 幹太[代表者],助教授(東大)田中秀幸,大学院学生 江波戸 謙
情報セキュリティの惨事の多くは, 不十分な経済的動機付けに起因する管理の甘さや対策不徹底によって発生する. 多くの不安は, 結局経済的にどのようなリスクを負っているのかが不確かであることによっている. 根深い問題の多くは, 経済学的に分析でき, 改善策を提示できる可能性を秘めている. 我々は, 法と経済学の観点から情報セキュリティリスク定量化の意義を理論化し, それを根拠とした政策提言を行い, 政府の情報セキュリティ総合戦略に盛り込んでいる. また, その定量化を実現し応用する保険実証研究や, 情報金融理論研究を行っている. さらに, 産学連携分析に着目した 経済産業論的実証研究により, 情報セキュリティの技術革新を促すために有効な施策を明らかにしている.

研究促進技術と学術情報データベースセキュリティ
助教授 松浦 幹太[代表者],大学院学生 安東 学
ネットワーク上の経済活動のために情報セキュリティ技術が重要であることは, 周知の事実である. 我々は視点を変え, 研究用ディジタルデータを流通させる「非営利研究促進事業」に役立つ情報セキュリティ技術を研究している. すなわち, 知的所有権やプライバシー保護, 信頼性を考慮してネットワークを介した安全な共同研究活動をサポートする技術に取り組んでいる. 具体的には, データアクセスに伴うセキュリティ上の必須処理の概念を応用し, セキュリティ的に無矛盾なシステム設計のための技術を考案している. また, グループで秘密鍵を共有する際の確認作業を安全に実施するプロトコルなど, より高い安心感を得るための要素技術を開発している.

固体強度のマルチスケール解析に関する研究
助教授 吉川 暢宏[代表者], 助手 桑水流 理,吉川研 機関研究員 半谷禎彦,吉川研 大学院学生 椎原良典
ナノ構造,ミクロ構造に支配される異種材料界面の強度を的確に評価するため,ナノ−ミクロ−メゾ−マクロに連なるマルチスケール解析手法を検討している.ナノスケールを扱う第一原理計算に関して,計算の高速化を目指して強連成実空間有限要素法による定式化を行い,実用性の検討を行った.ミクロスケールを扱う分子動力学法とマクロスケールを扱う連続体有限要素法をつなぐメゾスケール解析法として,Quasi-continuum (QC)法の適用可能性を検討した.

X線CTを用いた生体内力学場計測に関する研究
助教授 吉川 暢宏[代表者], 助手 桑水流 理,吉川研 大学院学生 川山高寛
人体の有限要素解析における,材料モデルの確度を上昇させるために行う,in vivo試験方法を検討している.力学負荷時のX線CT画像と,初期無負荷時の画像から,変位場,すなわち物理的対応点の移動量を評価するアルゴリズムを開発したが,計算機負荷が膨大となっていた.変位場規定する関数形の設定方法を検討し,高速化を図った.

テキスタイル材料の強度信頼性評価に関する研究
助教授 吉川 暢宏[代表者], 助手 桑水流 理
高機能テキスタイル材料の強度評価方法を検討している.コンピュータシミュレーションを積極的に利用する,Simulation Integrated Experimentの方法論を構築するため,経糸と緯糸のミクロ構造を考慮した有限要素モデルを開発した.シミュレーションを援用する試験方法の検討と,試験機の製作を行い,強度評価実験を行った.

インフォ−ギャップモデルに基づくロバスト最適設計
助教授 吉川 暢宏[代表者],吉川研 大学院学生 ストルツ ジャスティン
不確定なパラメータの変動を凸包に限り,その中での最悪状態と限界状態の余裕度をパラメータとする,インフォ−ギャップモデルを最適設計に導入し,パラメータの不確定変動に対して抗耐性を有する最適設計を決定する手法を検討した.トポトジー最適設計問題に対して手法を適用し,その有効性を確認した.

人間・社会部門

自然雷の研究
教授 石井 勝[代表者],技術官 斎藤 幹久,技術官 藤居 文行,協力研究員 奥村 博,協力研究員 Syarif Hidayat
自然雷の放電機構, 雷放電のパラメ−タに関する研究を, おもに電磁界による観測を通じて行っている. また, 雷放電位置標定システムの精度向上, VHF帯およびMF帯電磁波の多地点での高精度時刻同期観測による雷雲内放電路の3次元位置標定, 静的電界変化の多地点観測による雷雲内電荷分布の研究を行っている. 冬季に多い正極性落雷の発生様相の解明を進めた.

電磁界パルス(EMP)の研究
教授 石井 勝[代表者],石井研 大学院学生 宮嵜 悟,協力研究員 馬場 吉弘
雷放電や, 高電圧回路のスイッチングに伴って発生する電磁界パルス(EMP)のモデリング, 伝搬に伴う変歪, 導体系との結合などについて研究を進めている. 周波数領域の3次元過渡電磁界解析コードの利用に加え, 時間領域コードを適用することによって, 非線形要素を含む送配電線における雷サージ電圧の解析を行った. また電磁界変化波形の多地点測定データにもとづき, 帰還雷撃放電路のモデリングを試みている.

電力系統における雷サージに関する研究
教授 石井 勝[代表者],石井研 大学院学生 伊藤 直史,石井研 大学院学生 村上 恭基,協力研究員 馬場 吉弘
3次元過渡電磁界解析コードと回路解析コードにより, 送電線に落雷が生じた時に鉄塔を含む立体回路に発生する雷サージを計算し, 大地導電率や雷放電路の特性が雷サージ波形に及ぼす影響を調べている. また発生する雷サージ波形は波尾の短い非標準波形になるため,数十cm級気中ギャップの非標準波形電圧による絶縁破壊特性を実験的に検討している.

インパルス高電圧計測の精度向上に関する研究
教授 石井 勝[代表者],協力研究員 馬場 吉弘
抵抗分圧器を使用したインパルス高電圧計測を, モーメント法またはFDTD法による3次元過渡電磁界解析手法で数値的に模擬し, 種々のパラメータが測定精度に及ぼす影響を検討している. この手法を用いて, 測定系の接地の構成が測定結果に及ぼす影響, 抵抗分圧器の設計法などについて研究を進めた.

流体騒音の発生機構の解明とその制御に関する研究(継続)
教授 加藤 千幸[代表者],大学院学生 鈴木康方,技術官 鈴木常夫,研究実習生 小久保あゆみ,研究実習生 辻廣祐
流体機械の小型高速化や鉄道車両の高速化に伴い,流れから発生する騒音,即ち,流体騒音の問題が顕在化しつつあり,その予測や低減が大きな課題となりつつある.本研究では,翼周りの流れなどを対象として,流れと騒音の同時詳細計測により,流体騒音の発生機構を解明し,得られた知見に基づいて,騒音制御・低減方法を開発することを最終的な目標として進めている.本年度は,翼周りの音源をLDVにより計測し,流体騒音の発生機構を明らかにした.

単独翼周りの乱流境界層と発生する空力騒音のLES解析(継続)
教授 加藤 千幸[代表者],大学院学生 宮澤真史
LES(Large Eddy Simulation)は,乱流の非定常な変動を計算可能な次世代の乱流解析手法としてその実用化が期待されているものであり,比較的レイノルズ数が低い,大規模にはく離する流れに対しては,既に実用計算に使用されつつあるが,翼周りの流れへの適用に関しては未解決の問題が多く,LES実用化の大きな課題となっている.前記課題を解決し,LES解析の新たな展開の可能性を探索すべく,研究を進めている.

圧縮性遷移翼列流れのLES解析
教授 加藤 千幸[代表者],大学院学生 松浦一雄
低圧タービンや小型タービンにおいては流れのレイノルズ数が10の3乗から5乗のオーダーとなり,翼面周りの境界層は遷移領域となる.このような翼列流れに対してはその予測・設計手法が確立されておらず,これらの機械の性能向上を図る上で大きな課題となっている.そこで,本研究では圧縮性遷移翼列流れの高精度な予測を目指して,Large Eddy Simulation (LES)による解析を行っている.今年度はLES解析コードの開発とその検証を実施した.

小型ラジアルガスタービンに関する研究(継続)
教授 加藤 千幸[代表者], 助手 西村 勝彦,技術官 鈴木常夫,大学院学生 松浦一雄,大学院学生 金澤純太郎,大学院学生 サプコタ・ラジェシュ,大学院学生 山本,研究実習生 鈴木聡史
マイクロガスタービンや自動車用エンジンとして小型ラジアルガスタービンの利用が活発化してきた.このラジアルガスタービンの高性能化のため,ラジアルタービン動翼内の3次元流体解析法の開発を行っている.また,サージ余裕の改善のため遠心圧縮機の入口案内翼後流の不安定流れの実験的研究などを行っている.さらに,モバイル型電源等として期待される超小型ガスタービンの開発のための基礎研究を行っている.

プロペラファンから発生する空力騒音の数値シミュレーション(継続)
教授 加藤 千幸[代表者],大学院学生 藤井亮輔
本研究は, このプロペラファンから発生する空力騒音の数値的予測手法を開発し, さらに, 低騒音ファンの設計指針を確立することを最終的な目的として,民間企業と共同で行っているものである.今年度は,ファンの仕切り板の位置や形状の変化が空力特性や騒音特性に与える影響を,流れの渦構造の変化と関連付けて検討している.

自動車用ドアミラーから発生する空力騒音の研究(継続)
教授 加藤 千幸[代表者],技術官 鈴木常夫,研究実習生 小熊信慶,大学院学生 鈴木康方,研究実習生 辻廣祐
運転者や同乗者に快適な車室内環境を実現するためには,ドアミラーやフェンダーから発生する空力騒音の低減が益々重要となっている.そこで,ドアミラーから空力的に発生する不快な異音に関して民間企業と共同で研究を進めている.昨年度までの研究により,異音が発生する原因をほぼ解明することができたが,今年度は異音の発生条件やその抑制方法に関して,更に詳細な研究を行っている.

非定常キャビテーション流れのLES解析
教授 加藤 千幸[代表者],協力研究員 山出吉伸,産学官連携研究員 郭陽,宇宙航空研究開発機構 山西伸宏
流れの圧力が低下することにより発生するキャビテーションは,ターボ機械の性能を低下させるだけではなく,機械の破損や損傷の原因となることもあるが,未解明な課題も多く残させている.本研究では,宇宙航空研究開発機構と共同で,キャビテーション流れの非定常挙動を解明することを目的に,数値解析プログラムの開発を進めている.今年度は解析プログラムの開発をその基礎検証を実施した.

ファン騒音低減技術開発プロジェクト
教授 加藤 千幸[代表者],大学院学生 井原慎一郎,教授(阪大) 辻本良信,教授(佐賀大) 金子賢二,助教授(九大) 古川雅人,取締役(荏原総研) 後藤彰
プロペラファンの低騒音化設計技術を確立することを目標として,5つの研究機関,15の民間企業と共同でコンソーシアム形式で推進している,プロジェクト研究である.各研究機関では,空力特性・騒音特性の計測,空力音源の実験計測,数値解析,空力騒音のモデル化,及び,最適設計を担当している.

多段遠心ポンプの流体構造連成解析
教授 加藤 千幸[代表者],教授(東大)吉村忍,産学官連携研究員 王宏,協力研究員 山出吉伸,産学官連携研究員 郭陽,産学官連携研究員 Md Ashrat Uddin
火力発電所用の給水ポンプを対象に,流体加振を源とし,機械内を固体伝播し発生する騒音の数値解析に取り組んでいる.文科省ITプログラム「戦略的基盤ソフトウエアの開発」の実証テーマの一つとして,産学連携により進めているものであうる.これまでに,流体加振の変動スペクトルをLES解析により定量的に予測できることを確認した.

環境感性工学の開発(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,宋 斗三,大学院学生 梁禎訓
環境感性工学開発の第一段階として,空調による室内温熱環境における適用を検討する.室内の温熱環境シミュレーションシステムに,環境からの刺激に対して,環境に対し能動的に反応する人間要素を組み込み,環境制御のため投入したエネルギー量と人間の環境に対する不満足度を最小化するよう,環境−人間系システムを最適化する.この検討により,省エネルギーかつ,人間の感性に沿った空調システムを発見,選択することが可能となる.本年度も昨年に引き続き,サーマルマネキン(人体の放射性状をシミュレートするマネキン)を用いて様々な空間の温熱環境を計測,評価し,環境−人間系システムを検討した.

室内の換気・空調効率に関する研究(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,研究員 吉野博,協力研究員 金泰延,協力研究員 伊藤一秀
室内の空気温熱環境の形成に預かっている各種要因とその寄与(感度)を放射および室内気流シミュレーションにより解析する.これにより一つの空調吹出口や排気口,また温熱源などが,どのように室内の気流・温度分布の形成に関わっているか,またこれらの要素が多少変化した際,室内の気流・温度分布がどのように変化するかを解析する.これらの解析結果は,室内の温熱空気環境の設計や制御に用いられる.本年度は暖房室内で開放型灯油ストーブを燃焼させた際の室内空気質の濃度分布性状について検討した.

数値サーマルマネキンの開発(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,研究員 田辺新一,大学院学生 梁禎訓
本研究は,サーマルマネキン等を用いた実験に基づいて行われている人体とその周辺の環境場との熱輸送解析を,対流放射連成シミュレーション,さらには湿気輸送シミュレーションとの連成により,数値的に精度良くシミュレートすることを目的とする.本年度は四肢と顎部,胸部などの局部形状を詳細にモデル化した人体モデルを作成し,この人体モデルを用いたCFD解析により,人体局所形状の影響を考慮して,人体吸気領域の検討を行った.

室内温熱環境と空調システムに関する研究(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,宋 斗三,研究員 近本智行,協力研究員 金泰延
良好な室内環境を得るための最適な空調システムに関して,模型実験・数値シミュレーションにより研究している.中でも放射パネルを用いた冷房方式は,全空気方式に比べ冷風吹出しによるドラフトリスクが軽減される等の有利な点を持つ方式である.本年度も前年度に引き続き,オフィス空間を対象として,冷房しながら自然換気を行った場合(自然換気併用ハイブリッド空調)の有効性と理想的な空調拡散のあり方についてCFDにより解析を行っている.今年度は夏季のような厳しい外気条件の下での室の天井高の違いや放射パネル高さの違いが温熱環境性状および冷房負荷に与える影響について検討した.

室内気流の乱流シミュレーションとレーザー可視化,画像処理計測手法の開発研究(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,協力研究員 伊藤一秀
室内気流を対象とした乱流シミュレーション・可視化計測による流れ場,拡散場の予測,解析,制御のための手法の開発を行う.特に,レーザー光を用いた流れの可視化による定性的な把握とともに,定量的な計測を行うシステムの開発研究に重点を置く.模型実験での可視化により得られた流れ性状を数値化してシミュレーション結果と比較し,その精度向上に務めた.

流体数値シミュレーションにおける超並列計算システム(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,協力研究員 飯塚悟
超並列計算機による流体シミュレーションの検討課題を明らかにし,その基礎的検討を行う.本年度も昨年に引き続き並列計算を実行する基礎コードとして,コロケーション格子を採用した3次元一般曲線座標系コードを基に,並列処理および大規模計算に欠かすことのできないマルチブロックシステムを導入してChannel Flowおよび室内の流れ場解析を行った.

室内化学物質空気汚染の解明と健康居住空間の開発(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,研究員 伊香賀俊治,研究員 田辺新一,研究員 近藤靖史,協力研究員 伊藤一秀,外国人特別研究員 朱清宇
建築物・住宅内における化学物質空気汚染に関する問題を解明し,健康で衛生的な居住環境を整備する.研究対象物質としてホルムアルデヒド,VOC,有機リン系農薬及び可塑材に着目する.これら化学物質の室内空間への放散及びその活性化反応を含めた汚染のメカニズム,予測方法,最適設計・対策方法を解明すること,その情報データベースの構築を目的とする.本年度も昨年度に引き続き,建築生産の現場で頻繁に使用されるペイント類に着目し,ペイントからの化学物質放散性状について検討した.また,室内居住域の化学物質濃度を健康で衛生的な範囲内に留めるための多岐にわたる建材使用の条件,室内換気方法,除去分解方法を具体的に提案する.

高密度居住区モデルの開発研究(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,宋 斗三,研究員 伊香賀俊治
人口爆発を止めることは困難であり,人類は好むと好まざるに拘らず,都市において高密度居住の道を選ばざるを得ない.高密度居住を積極的に利用して,効率的で,高いサステナビリティ性を備えた,そして環境負荷の少ない居住区モデルを開発する.本研究では,都市負荷の最小化を目指して高密度居住区を計画し,その環境負荷削減効果を明らかにするとともに食料生産,ヒーリング等のための耕地地区,緑地地区と高密度居住地内のバランスのとれた配置計画方法を提案する.本年度は劣悪な室内温熱環境を改善する方法の一つとして考えられている通気層を有する二重屋根についてその改善効果を検討した.また,外部環境を効率的に室内に取り組み省エネルギー的に室内環境を調整しうるポーラス型建物モデルを提案し,その有効性について検討した.

風洞実験・室内気流実験で用いる風速並びに風圧変動測定方法の開発に関する研究(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,研究員 小林信行,研究員 近藤靖史,技術専門職員 高橋岳生
建物周辺気流に関する風洞実験や室内気流実験で用いる平均風速,風速変動の3次元計測が可能な風速測定器の開発・実用化および変動風圧の測定法等の開発に関し,研究を進めている.本年度も前年度に引き続き,PIV流速計により等温室内気流,および非等温室内気流の乱流統計量を測定し,その特性を解析した.

風力発電の立地選択のためのCFDに基づく風況予測手法の開発と検証(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,研究員 持田灯,技術専門職員 高橋岳生,大学院学生 Mohamed Fathy Yassin
風力発電サイトの最適な立地地点を選定するために,広範な観測を実施することは困難である.そこで,数値モデルによる風況予測を行わざるを得ないが,日本の地形は起伏に富んでおり,既存の線形風況予測モデルの適用限界を超えている.本研究の目的は,傾斜勾配が5%を越える地域にも利用でき,風車立地候補地点近傍の正確な予測を行える局所的風況予測モデルを開発することである.本年度は,二次元丘陵モデルならびに段丘モデル周囲の気流性状について風洞模型実験並びにCFDによる検討を行った.

CFD解析に基づく室内温熱環境の自動最適設計手法の開発(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,協力研究員 金泰延
本研究は,室内環境CFD(Computational Fluid Dynamics)解析シミュレーションに基づく室内温熱・空気環境の自動最適設計手法を開発することを目的とする.これは室内の環境性状を設計目標値に最大限近づけさせるための室内の物理的な境界条件を求める手法,すなわち逆問題解析による環境の自動最適化設計手法の基礎的な検討を行うものである.本年度はGA(遺伝的アルゴリズム Genetic Algorithm)を導入し,より少ない計算量で広範な条件から複数の最適条件候補を探索する手法を検討した.

衛星マイクロ波センサによる地表面水文量の推定
教授 虫明 功臣[代表者], 助教授 沖 大幹,技官 小池雅洋,技官 弘中貞之,大学院学生 瀬戸心太,大学院学生 谷口親吾
TRMM(熱帯降雨観測衛星)に搭載されているPR(降雨レーダ)が観測する地表面散乱の強度から,表層の土壌水分を推定するための研究を行っている.PRは,SAR(合成開口レーダ)にない直下視に近い角度で観測が行える点で,土壌水分観測に有利である.本研究から,入射角12°付近での観測がグローバルスケールに混在する様々な植生分布とその時間変化の影響を最小限に抑え,土壌水分の変動を抽出するのに有利であることが分かった.アルゴリズムの改良,現地観測土壌水分データとの比較を行いながら,1998-2000年の3年分について熱帯域を中心とした表層土壌水分データを日単位で作成・公開する準備をすすめている.時間解像度の向上には,観測幅の広いTMI(マイクロ波放射計)を併用するのが有利であるため,TMIを利用した表層土壌水分推定アルゴリズムについて開発した.また,衛星観測を,表層から1m程度の土壌水分鉛直プロファイルの推定に応用するための土壌水分同化モデルについても基礎的な研究を進めている.

東南アジアモンスーン地域の水文環境の変動と水資源への影響
教授 虫明 功臣[代表者],大学院学生 ChayanisManusthiparom,大学院学生 大楽浩司,博士研究員 宮崎真,博士研究員 安形康, 助教授 沖 大幹,助教授(京大) 里村雄彦,助教授(東大) 松本淳,教授(神戸大) 山中大学,教授(東大) 鈴木雅一,講師(東大) 蔵治光一郎,助教授(京大) 大手信人,大学院学生 芳村圭, 助教授 鼎 信次郎
世界気候研究計画(WCRP)の一部として,また東南アジア各国と日本との共同研究として,熱帯雨林気候から乾季のある熱帯気候までを覆うインドシナ半島を対象として, 当該地域のアジアモンスーンにおける役割を解明すること, および当該地域の降水と水資源の季節予報を向上させることを目的としている. 本研究は1. 地表面熱・水フラックス観測, 2. 熱帯大気構造の解明, 3. 東南アジア気候・水文データ収集と解析, 4. 衛星リモートセンシング研究, 5. 領域気候モデルと水循環モデル開発の5つのサブ研究グループと総括班によって, 1996年のプロジェクト開始以来, 精力的に進められてきた. 本年度は, 前年度末に行われたこれまでのまとめを受けて,新段階(Phase2)へ向けての科学的目標策定,これまでの基礎科学の応用としての水資源アセスメント研究に特に力を入れた.その中で「モンスーンフェノロジー」という新科学用語を創生し,新たな研究会を立ち上げるにいたった.

帆による非係留型メガフロート(巨大海洋構造物)の位置保持に関する研究
教授 木下 健
大型浮体であるメガフ ロートは,現在のところ,比較的静謐な海域に係留設置することをベースに開発されているが,波浪や風の影響下で非係留で自律的位置決め機能が不可欠と考えられる系については,まだ未検討である.自動位置決めの方式,それに適した浮体形式の初期的検討と,その有力候補である帆による自動航行の概念設計を行う.

競漕用シェル艇の性能向上(継続)
教授 木下 健[代表者],技術官板倉博,助手(東大)小林寛
ボート競技に用いられる用具の改良,開発と,漕法の研究を行っている.ブレードに働く流体力の非定常性を考慮した推定法と,実際の模範的な漕手の体重移動をモデル化した艇速予測プログラムを完成し,それによる評価を目的にしたブレード形状の回流水槽を用いた計測を行った.

係留浮体の長周期運動に関する研究(継続)
教授 木下 健[代表者],助手・特別研究員 鮑(佐野)偉光,木下研大学院学生 吉田基樹,助教授(東海大学) 研究員 砂原俊之
係留浮体は入射波の中を係留系の共振周期でゆっくりと運動する.この係留浮体の一般的状態を,浮体と共に移動する座標系と,入射波の波傾斜と共振周波数の2つの微小パラメーターにより摂動法を用いて定式化し,各オーダーの問題の解法を示した.それにより求めた波漂流付加質量を実験と比較し良い対応を得た.

砂礫の変形・強度特性の研究(継続)
教授 古関 潤一[代表者], 助手 佐藤 剛司,研究担当 龍岡 文夫・大学院学生 Sajjad Maqbool・大学院学生 Munene Karimi・大学院学生 Alonso Builes
砂を用いた大型の供試体で弾性波速度を測定する際の加振位置,測定位置や加振波形の影響について検討し,得られた弾性波速度を微小ひずみレベルの繰返し載荷で求めた弾性的な変形特性と比較した.

中空ねじり三軸試験による砂質土のせん断挙動の研究(継続)
教授 古関 潤一[代表者],助手 佐藤 剛司・大学院学生 Nguyen Hong Nam・大学院学生 Nalin De Silva
硬質地盤材料の中型中空円筒供試体を用いてねじり三軸試験を高精度に行える試験装置を新規製作した.

自然堆積軟岩及びセメント改良土の変形・強度特性の研究(継続)
教授 古関 潤一[代表者],研究担当 龍岡 文夫・助手 佐藤 剛司・大学院学生 並河努・大学院学生 甲元信宏
セメントを混合した再構成粘性土の三軸圧縮試験を行い,養生中の応力条件と応力経路が強度変形特性に及ぼす影響を明らかにした.

擁壁・土構造物の地震時安定性に関する研究(継続)
教授 古関 潤一[代表者],研究担当 龍岡 文夫・助手 佐藤 剛司・大学院学生 中島進
前年度に開発した擁壁と補強土擁壁の地震時残留変位評価手法が,実験条件の異なる模型振動実験結果にも適用できることを明らかにした.また,この方法を用いて実物大セル式護岸の地震時変位量の試計算を実施した.

社会基盤施設の地震断層に対する防災性向上の研究(継続)
教授 小長井 一男[代表者], 教授 古関 潤一, 助教授 目黒 公郎,教授 (東大地震研究所) 堀宗朗
1999年トルココジャエリ地震や台湾集集地震は地震断層の変位が社会基盤施設に甚大な被害を与えたものとして特筆すべき地震であった.一方わが国は,大幅な都市域が断層に対する明確な規制を伴わないまま発展している.地震断層に対処するための工学的,行政的な対応について,土木学会,地盤工学会に関連委員会を組織し研究を進めている.

フィルダムの耐震性に関する研究(継続)
教授 小長井 一男[代表者],小長井研 協力研究員 松島亘志
粒径の大きな岩石を積み上げたフィルダム斜面の動的安定性をLATによる可視化模型実験やDEMによる数値シミュレーションで検討している. 斜面がその安定の限界に達するまでに必要とされるエネルギーについての研究を中心に進めている.

レーザー光シートによる粒状材料よりなる構造の模型内部の動的挙動の可視化とその応用(継続)
教授 小長井 一男[代表者],小長井研 協力研究員 松島亘志
粒状材料よりなる構造の模型をガラス粒子で作製し, これを同じ屈折率の液体中に浸漬し, レーザー光シートを照射して, シート面上にある粒子の挙動を可視化あうる手法(Laser-Aided Tomography: LAT)で, 水中の粒状体構造物の耐震性を研究している. 本年度は一昨年度に構築したLAT/平面ひずみ試験システムを用いて, 引き続き供試体の光学的切断面を多数撮影し, 三次元粒状体内部のあらゆる粒子の3次元画像画像から, これがせん断変形する場合の粒子パラメータを統計的に処理して, 全体変形に与える粒子ミクロ構造の影響を検討した.

軟弱地盤中のトンネルの地震時挙動に関する研究
教授 小長井 一男[代表者],小長井研 技官 片桐俊彦
軟弱地盤中に建設されているトンネルについて, 地震観測によって地震時の加速度応答, トンネル覆工のひずみを調べている. 本年度は昨年度に引き続き, 地震時に覆工に発生するひずみを軽減するために, トンネル覆工と周辺地盤の間に挿入する柔らかい免震材料の効果について理論的, 実験的な検討を行った.

アースダムの地震時における動的性状に関する研究(継続)
教授 小長井 一男[代表者],小長井研 技官 片桐俊彦,小長井研 大学院学生 福永勇介
実在のアースダム(山王海ダム)で地震観測を継続している. これまでにこのダムで様々な記録が得られたが, 現在このダムの上にさらに積み上げる形で新しいロックフィルダムが建設されたため, 上流側斜面の旧堤体と新堤体の境界部に新たに埋設型の地震計を設置し,ISDNによる遠隔管理システムで観測を継続している.本年度は7月に発生した宮城県沖地震の記録が収録され旧ダムと新ダムの複合構造の震動モードを確認できた.

地震地すべりの調査と地盤大変形の解析(継続)
教授 小長井 一男[代表者],助手 Jorgen JOHANSSON
火山屑砕物の堆積した斜面の崩壊は,その流下距離の大きいことで知られ,極めて悲惨な災害に繋がる.2001年1月13日に発生したエルサルバドル地震では,この地震の被害者の半分以上がLas Colinas一箇所の地すべりによるものである.この被害の実態を現地で調査するとともに,詳細な解析を新たな大変形解析手法(LPFDM)で実施している.今年度は間隙水圧の影響を取り込み,地すべり土塊の液状化過程を表現した.また7月の宮城県沖地震で発生した築館地滑りの崩壊機構を調査した.

歴史地震痕跡の工学的評価手法の開発
教授 小長井 一男[代表者], 客員教授 寒川 旭,小長井研 大学院学生 伊藤寛倫
遺跡で発見される地震の痕跡を用いて,地震の発生時期(時には時刻)や当時の人々への影響などを考えるという寒川によって始められた研究手法は「地震考古学」と呼ばれている.地震痕跡として頻繁に見つかるものには(a)液状化痕跡,(b)地すべり痕跡,(c)地震断層痕跡がある.これらの工学的パラメータの計測,解析手法を開発し,年間数千ヶ所に及ぶ遺跡の発掘が行われているわが国で,(1)地震の発生時期,に加えて (2)地震動の強さの広域分布を客観的な指標を持って示すこと,を目的に調査・研究を進めている.今年度は慶長伏見地震で発生したと見られる今城塚古墳の地すべりを調査し,その地震動の規模を工学的手法で推定した.

音響計測法に関する研究
教授 橘 秀樹[代表者], 助教授 坂本 慎一,研究員 矢野博夫,研究員 佐藤史明,協力研究員 横田考俊,大学院学生 平野 仁
建築音響・騒音制御の分野における計測法の開発および精度向上を目的とした研究として,音響インテンシティ計測法による音響パワーレベルおよび音響透過損失の測定方法に関する研究を継続的に行っている.本年度は,可動間仕切り壁や窓サッシ等の遮音性能測定に対する音響インテンシティ法の適用性,特に別遮音性能の計測方法に重点を置いた実験的検討および遮音性能測定におけるS/N比の改善方法に関する検討などを行った.

交通騒音の予測・評価に関する研究
教授 橘 秀樹[代表者], 助教授 坂本 慎一,研究員 矢野博夫,研究員 吉久光一,研究員 押野康夫,研究員 田近輝俊
道路交通騒音に重点を置いて,騒音の伝搬予測法並びに対策法に関する研究を継続的に進めている.今年度は,等価騒音レベルに基づくエネルギーベースの道路騒音予測計算法の精度向上を目的として,掘割・半地下構造からの騒音放射特性に関する模型実験を行い,その結果を基づいて実用的予測計算法を構築した.

室内音響に関する研究
教授 橘 秀樹[代表者], 助教授 坂本 慎一, 助手 上野 佳奈子,研究員 千住真理子,研究員 矢野博夫,研究員 佐藤史明,協力研究員 横田考俊,協力研究員 横山 栄,大学院学生 金森敬子,大学院学生 穂坂 礼,大学院学生 郷原繁利
ホール・劇場等の室内音響に関する研究を継続的に行っている.ステージの音響特性に関する研究として,昨年に引き続いて二つの実験室を音響的に連結した音場シミュレーション手法を用いて室内楽およびオーケストラ演奏を想定した主観評価実験を行い,演奏者の音場評価に関する検討を行った.また,波動数値解析に基づく音場シミュレーションおよび縮尺模型実験を実際のホールの音響設計に応用し,それらの有効性について検討した.

室内騒音の評価に関する研究
教授 橘 秀樹[代表者], 助教授 坂本 慎一, 助手 上野 佳奈子,研究員 矢野博夫,協力研究員 横山栄,大学院学生 石橋睦美
建物内部における騒音の心理的影響に関して,実験室に構築したシミュレーション音場を用いた聴感評価実験により検討を行っている.前年度に引き続き一般的に用いられている音響性能水準の見直しのための基礎的検討として,道路交通騒音,建築設備騒音,空調騒音,音楽などが単独にある場合と複合した場合の評価に関して,聴覚心理的マスキング効果を考慮した実験的検討を行った.

音場シミュレーション手法の開発およびその応用に関する研究
教授 橘 秀樹[代表者], 助教授 坂本 慎一, 助手 上野 佳奈子,研究員 矢野博夫,研究員 佐藤史明,協力研究員 横山栄,協力研究員 横田考俊,大学院学生 石橋睦美,大学院学生 金森敬子
各種環境騒音の評価,ホール音場における聴感印象の評価などに用いることを目的とした3次元音場シミュレーションシステムの開発および応用に関して継続的に研究を行っている.今年度は,6チャンネル収音・再生システムを用いた応用として,ホール・ステージにおける演奏者の音場評価に関する実験,客席部における聴感評価実験,公共空間における音声情報による避難誘導システムの有効性に関する実験などを行った.

空間骨組構造の順応型有限要素解析手法に関する研究(継続)
教授 都井 裕[代表者],
海洋構造物, 機械構造物, 土木・建築構造物などに見られる大規模・空間骨組構造の様々な崩壊問題に対し, 順応型 Shifted Integration法(ASI法と略称)に基づく合理的かつ効率的な有限要素解析手法を開発し, 静的・動的崩壊を含む各種の非線形問題に応用している. 本年度は, 要素サイズ依存性を除去した弾塑性損傷解析アルゴリズムを確立するための基礎研究を継続した.

機械・構造物の連成力学挙動の有限要素解析に関する研究(継続)
教授 都井 裕[代表者], 助手 高垣 昌和
機械部品,構造物のマルチフィールド下における連成力学挙動の有限要素解析アルゴリズムの構成と応用に関する研究を進めている.本年度は, 電磁場,熱伝導,弾塑性損傷,金属変態を考慮することにより,機械部品の高周波焼入れ過程の有限要素解析用パイロットプログラムを開発し,合理的な解が得られることを確認した.

イオン導電性高分子材料によるアクチュエータ素子の有限要素解析に関する研究(継続)
教授 都井 裕[代表者],大学院学生 姜 成洙
イオン導電性高分子材料(Nafion,Flemionなど)によるアクチュエータ素子の電気化学・力学連成挙動の有限要素解析に関する研究を進めている.本年度は,一方向多極電場あるいはニ方向電場を受けるIPMC(Ionic Conducting Polymer Metal Composite)平板の連成挙動解析プログラムを開発し,試計算により有用性を検証した.

形状記憶合金アクチュエータ素子の有限要素解析に関する研究(継続)
教授 都井 裕[代表者],大学院学生 李 宗賓
形状記憶合金(SMA)アクチュエータ素子の超弾性変形挙動,形状記憶挙動に対する解析ソフトの開発を進めている.本年度は, 強磁性体SMA(FePd)コイルばねに対する磁場・超弾性変形連成解析を実施し,実験結果をほぼ良好に再現した.さらに,SMA板ばねの超弾性変形挙動解析に対する定式化と試計算を行った.

材料破壊の計算メソ力学に関する研究(継続)
教授 都井 裕[代表者],大学院学生 姜 成洙
計算メソ力学モデルによる材料破壊のメソスケール・シミュレーション手法の開発と各種固体材料の構成式挙動および損傷・破壊現象への応用に関する研究を進めている. 本年度は, メッシュレス法の一種である自然要素法(Natural Element Method)に基づくメソ解析アルゴリズムについて総括した.

数値材料試験と構造物の疲労寿命評価への応用に関する研究(継続)
教授 都井 裕[代表者],研究員 岩渕研吾,大学院学生 広瀬智史,技術専門職員 岡田和三
材料の損傷・破断を含む構成式挙動をシミュレートするための連続体損傷力学モデルによる数値材料試験,および有限要素法を併用した局所連成解析法の構造要素・疲労寿命評価への応用に関する研究を行っている.本年度は,アルミニウム材の低サイクル疲労,レール材の3点曲げ疲労破壊,レールのシェリングなどに対する数値材料試験および寿命予測計算を行い,実験結果との比較によりその有用性を検討した.

工学構造体の計算損傷力学に関する研究(継続)
教授 都井 裕[代表者],大学院学生 田中英紀,大学院学生 朴 哉炯
連続体損傷力学に基づく構成式モデルと有限要素法による局所的破壊解析法を各種の工学構造体の損傷破壊挙動に応用するための基礎研究を行っている.本年度は, 炭素繊維シートで補強したRC構造体の疲労強度試験と有限要素解析プログラムの開発,弾粘塑性損傷構成式モデルによる多層塗膜各層の材料特性の同定と横衝撃損傷破壊挙動の有限要素解析を進めた.

建築・都市空間の特性分析(継続)
教授 藤井 明[代表者], 助教授 曲渕 英邦, 助手 林 信昭,共同研究者 及川清昭,特別研究員 Jin Taira Alomso,大学院学生 松田達,大学院学生 宮崎慎也,大学院学生 任貞姫,大学院学生 Golani Solomon Elez,大学院学生 浅野元樹,大学院学生 吉田昌平
本研究は建築・都市空間を構成する形態要素とその配列パターンを分析指標として空間特性を記述することを目的としている.本年度は,都市を<イメージ>の集合として捉え,都市空間の体験者の視点から,その視覚的特徴や場所の特異性を記述した.

空間の構成原理に関する実証的研究(継続)
教授 藤井 明[代表者], 助教授 曲渕 英邦,助手 橋本憲一郎,技官 小駒幸江,大学院学生 王マ,大学院学生 朴正a,大学院学生 佐々木一晋,大学院学生 永井秀幸,大学院学生 田中陽輔,大学院学生 松村永宣,大学院学生 真鍋展仁
伝統的な集落や住居に見出される空間の構成原理は,今日の居住計画を再考する上で重要な示唆に富んでいる.本研究室では過去25年以上にわたって世界の伝統的集落の調査を継続しているが,本年度はベトナム北部とフィンランドの伝統的住居を対象とした調査を行った.その結果に基づき,境界付けによる領域分化という観点から集落空間の構成を考察した.また,韓国の集落に見られる「マダン」の制度的な構成因を分析した.

地域分析の手法に関する研究(継続)
教授 藤井 明[代表者], 助教授 曲渕 英邦,共同研究者 大河内学,大学院学生 山雄和真,大学院学生 岡部友彦
地域空間の構造を的確に把握することは,地域性を積極的に組み入れてゆくという計画学的な視点からも非常に重要である.本年度は,世界の都市の持つ属性を,様々な取り出し方でヴィジュアライズすることにより,地域の直感的な把握が可能となる手法を開発した.

計算幾何学に関する研究(継続)
教授 藤井 明[代表者], 助教授 曲渕 英邦, 助手 今井 公太郎,共同研究者 郷田桃代,大学院学生 Yim Kevin,大学院学生 狩野朋子,大学院学生 Napong Nopaket,大学院学生 Bonfiglio Alvaro Mauro,大学院学生 金谷恵子
本研究は都市・地域解析への適用を目的とした計算幾何学的な手法の開発を行うものである.本年度は,HSIカラーモデルを用いて,都市の連続立面画像から,街路景観の特徴を抽出する手法を開発し,東京のいくつかの街路の景観を分析した.また,ネットワークの計算幾何学的な分析を行い,現実の配置計画・都市計画の評価を行った.

歴史および自然環境に配慮した建築設計の研究(継続)
教授 藤森 照信
歴史と自然の環境に適合した建造物とその住まい方については,特に近年社会的関心が高い.こうした社会的要請にも応えるべく,従来からの同テーマにつき更に調査研究を進めるとともに,タンポポハウス, ニラハウス, 天竜市秋野不矩美術館, 一本松ハウス, 熊本農業大学学生寮, 椿の家,茶室(矩庵-京都市,一夜城-湯河原町)などの建築設計を行い,実際の成果,成立条件の確認作業も行っている.

戦後建築家に関する基礎的研究(継続)
教授 藤森 照信
日本の建築は, 第二次世界大戦後半世紀の間に大いに発展した. 現代では, 世界の建築界のリーダーシップをとるまでになっている. 戦後50年経った時期を迎えて, 戦後をリードした建築家たちの事跡については, あるものは, ほとんど資料も残さないまま, あるものは重要な建築的出来事に立ち会いながら何の記録も回想も残すことなく, 没してしまっている. 早速にこの時期についての資料収集と分析に着手する必要があり, 戦後建築総体の基本資料を得ることを目的として研究を進めている.

日本近代産業施設の発達と遺構の生産技術史的研究(継続)
教授 藤森 照信
わが国の産業施設の発達過程は, 変化があまりにも急速である. その歴史が記述される前に, 肝心な生産施設そのものが取り壊される傾向にある. この現状を踏まえ, 全国の生産施設, 土木, 工場施設についても順次研究を進めている.

日本の近代都市形成史の研究(継続)
教授 藤森 照信
日本の近代都市の発達を歴史的にとらえるため, 江戸から東京への変化の過程を明らかにする. これについては, 明治期に関する限り, ほぼ全容を明らかにすることができた. また引き続き大正期から戦前についてまでも解明を進め, 郊外住宅の開発の経緯と, その日本的特徴をつかみ, 都市環境開発などの問題点なども指摘, 研究を進めている.

東京における町屋建築の研究(継続)
教授 藤森 照信[代表者],藤森研 学術研究支援員 丸山雅子
日本の近代建築の発展過程の中で庶民生活を支えてきた下町の建物(看板出桁建築, 長屋)は近年都市開発によって取り壊しが急速に進み, その数が減少している. また, 建設当時の状況や当時の生活を知る居住者の高齢化も進んでいる. その現存状況を調査し, 職住が一緒の建築空間にあって職別の(銭湯, 床屋, 酒屋, 豆腐屋, 饅頭屋, 金物屋など)間取りの特徴を, 居住者のヒヤリングにより, 都市空間, 居住空間, 住環境, 生活史など, 多角的に研究を進め成果を上げている. 江戸東京博物館たてもの園への移築保存へも貢献している.

多民族化及び西洋化による都市と建築の近代化に関する研究 ―内蒙古フフホト市を中心に(継続)
教授 藤森 照信[代表者],助手 村松 伸, 外国人特別研究員 包 慕萍
本研究は少数民族地域の近代都市, 建築西洋化, 漢風化, 多民族化などによって, どのように影響を受け, 近代化が形成されたのか, これまでの学習モデルの欧米近代建築史研究の視点とは異なるアジア独自の特徴などを内モンゴル・フフホト市を中心に調査, 分析, 明らかにすべく研究を進めている.

アジアの近代的歴史的建物および都市空間の復元的・再生的研究(継続)
教授 藤森 照信[代表者],助手 村松 伸,大学院学生 谷川 竜一
アジア各国では都市化が進み, 都市に残る近代的建築と研究保存・再生が求められている. 本研究は, アジア各研究者とネットワークを築き, 研究, 保存再生についてマニュアルを作成し, 連帯して進む道を考える.

東アジアと日本の建築近代化の比較研究(継続)
教授 藤森 照信[代表者],研究員 西澤 泰彦, 助手 村松 伸, 大学院学生 鄭 昶源・陳 正哲・谷川 竜一
19世紀における西欧列強の東アジアの進出の軌跡は, 東アジアに登場する近代建築の歴史的展開と符号する. 近代日本における近代化遺産も, この歴史的展開の中で行われたといえる. 本研究は, こうしたグローバルな視点から, 東アジアと日本の近代建築の発生とその展開を比較研究し, 建築近代化過程の本質的問題を考察している. また, 同時に現存する遺構調査, この地に活躍した欧米人, 及び日本人建築家の活動 に関する研究も進めており, すでに一部を研究成果として報告している.

能舞台の歴史的変遷及び, 能的建築空間設計手法の研究(継続)
教授 藤森 照信[代表者],協力研究員 奥冨 利幸
我が国独自の「能舞台」は, 最近富に伝統文化の象徴として, 新たな能舞台が各地に建築されている. 能舞台の歴史的変遷過程と, 現存する能舞台の把握, 実測調査により, 設計方法の踏襲部分や建築空間の調査研究, 併せて現代建築の能空間的設計手法及び, 日本人に潜在的に好まれてきている能的思考の文化意識を考察研究する.

集合住宅の研究−日本・韓国・台湾・中国の住宅営団に関する研究(継続)
教授 藤森 照信[代表者],協力研究員 冨井 正憲
本研究は, 国策住宅供給機関として1940年代に設立された, 東アジア4ケ国(日本, 韓国, 台湾, 中国)の住宅営団の組織の成立過程, 及び各国公共集合住宅, 近代住宅計画成立過程を調査, 比較検討し, 併せて東アジア4ケ国の居住空間の文化的特質を分析も研究する.

ベトナム都市における近代建築の保存と再生(継続)
教授 藤森 照信[代表者],助手・特別研究員 村松 伸, 協力研究員 大田 省一
ベトナム都市のハノイ・ホーチミン等には, フランス植民地時代の建築物が多く残り, 都市基盤施設, 建築物は当時のものそのまま利用している. ただしすでに半世紀以上経ちち半世紀以上経ち, 老巧が進み, また近年の開放政策から急激な都市環境の変化がみられるため, 近代建築の現存リストを作成, かなりの成果を上げた. これに基づきその利用と, 保存・再生とする都市計画を提示し, その実現のためのベトナム側との共同研究を進めている.

お雇い外国人建築技師に関する研究
教授 藤森 照信[代表者],藤森研 学術研究支援員 丸山雅子
明治政府のお雇い外国人建築技師たちは,日本人建築家が十分に育つ前の日本で,国家的なプロジェクトを次々と任され,日本の近代化に大きく貢献した.しかし彼らの多くについては,その素性も,来日の経緯も,離日後の消息も不明なままである.彼らのバックグラウンドと国内外における活動を明らかにすることによって,明治初期の日本建築界の世界的な位置を探る.

貴金属の回収・分離・精製における新規プロセスの開発
教授 前田 正史[代表者],大学院生 萱沼 義弘,研究実習生 平山千由希,助手 三宅正男
貴金属はその特異な物理的化学的特徴から,宝飾品から工業用途まで幅広く使われている.このような製品の廃棄物から,貴金属を回収する試みが古くから行われてきたが,貴金属の用途がますます多様化するなか,複雑な組成・構造の廃棄物から貴金属を効率よく回収するプロセスが望まれている.本研究では,廃棄物からの貴金属の回収プロセスの最適化を目指し,その一環として化合物生成反応を利用した分離プロセスの検討を行っている.

質量分析法を用いたりん・カルシウム酸化物の熱力学
教授 前田 正史[代表者],大学院生 韓 雄煕,
我が国ではふっ化物の地表面の排出規制が予定されている.そのため,溶銑処理で多用されているCaO-CaF2系フラックスを鉄酸化物系で置換しようという傾向がある.そこで,CaO-P2O5系を想定し,溶銑処理の脱りん,脱硫プロセスについて熱力学的な研究を行っている.

電子ビーム真空溶解によるSi中PおよびSbの除去
教授 前田 正史[代表者],大学院生 平松 智明,大学院生 藤田 耕太郎
太陽電池には主として結晶系Siが基板として用いられている.半導体用Siに要求される純度が11 Nであるのに対し太陽電池用Siは5〜6 Nであるため,半導体用Siの規格外品の中で太陽電池としての許容抵抗値(>1.0 Ωcm)を満足する高純度の上級スクラップが太陽電池に利用されている.しかし急激な需要の増加に対応するため,不純物を多く含み許容抵抗値を満たさない低級スクラップを再生利用することも必要となる。そこで本研究室では低級スクラップSiの電子ビームを用いた真空溶解による精製の可能性を検討し,特にN型シリコンの主な不純物であるPおよびSbを除去する新しいプロセスを確立することを目的とする研究を行っている.

Si中のPおよびBの熱力学
教授 前田 正史[代表者],大学院生 山形晃一,大学院生 平松智明,大学院生 藤田耕太郎
近年,太陽電池需要が拡大する中,原料の供給が逼迫している.現在では利用されていないドーパント濃度が高いスクラップ(P: 50〜200 ppm, B: 10〜50 ppm)から不純物を除去できれば安価な原料確保ができる.Si中の不純物であるPおよびBの除去は蒸発除去が有効だが,その蒸発過程は十分に解明されていない.本研究では,クヌーセンセル質量分析法により,Si中のPおよびBの熱力学的諸量を求め,蒸発過程の解明を行っている.

熱応力によるスクラップシリコンの破砕技術
教授 前田 正史[代表者],リサーチフェロー S.V.Gnyloskurenko,民間等共同研究員 山内近則,
半導体産業から排出されるスクラップシリコンを電子ビーム溶解法により精製し,半導体原料として再資源化する研究が行われている.このプロセスでは,電子ビーム溶解前にシリコンインゴットを十分に破砕しておくことが高効率化のために必要である.本研究では,不純物を混入させずにシリコンを破砕する技術として,ガスバーナーによる加熱後に水中で急冷し熱応力を導入する方法を検討している.最適な熱処理条件を確立するために,シリコンインゴット中の熱伝導を測定するとともに,熱流体解析ソフトを用いたシミュレーションを行っている.

電子ビーム溶解装置を用いたシリコン精製に関する研究
教授 前田 正史[代表者],民間等共同研究員 山内近則,
スクラップシリコンを出発原料とした,シリコン精製に関する研究を行っている.半導体や太陽電池に使用されるシリコンは,半導体でイレブン9,太陽電池でセブン9の純度が必要だといわれている.また,シリコンは活性が高く,精製が難しいため,一部条件の良い場合を除いて,リサイクルされていない.千葉実験所に設置した,最大出力400kWの特殊電子ビーム溶解装置を用いて,スクラップシリコンの精製に関する研究を準商業規模で行っている.スクラップシリコンを出発原料とした精製により,30kg太陽電池級シリコンインゴットの作製に成功した.また,同技術を発展させ,半導体級純度への精製法および周辺技術について研究している.

使用済みニッケル水素電池からの水素吸蔵合金の分離・回収
教授 前田 正史[代表者],助手 三宅正男
ハイブリッド自動車や携帯電子機器などに用いられるニッケル水素電池は,急速な普及により,今後,廃電池が大量に発生することが予想される.ニッケル水素電池には,ニッケル,コバルト,希土類元素が主成分として含まれるものの現状のリサイクル技術を活用してもこれらを経済的に回収することは困難である.本研究では,電池負極材の水素吸蔵合金を,酸化させることなく,合金状態のまま効率良く分離・回収する技術の開発を行っている.

問題物質の適正処理に関する研究
教授 前田 正史[代表者],技術官 木村久雄,助手 三宅正男
クロム,ひ素,ふっ素,ほう素,りんなどは,その有害性ゆえに社会的に問題物質とされる.それらの物質は,製品の製造過程から製品寿命終了後の過程において発生し,その多くは経済的価値がなく環境負荷の大きい不要物である.持続可能な循環型社会を実現し,サスティナブル社会を形成するためには,環境と経済の両面の発展と協調が必要であり,社会的に容認される方法での問題物質の適正処理が重要となる.問題物質は,その化合物形態や,周囲の環境によって物質として安定化し無害な物となる可能性がある.本研究は,土壌汚染対策法での溶出試験法を適用し,問題物質の適正な処理の可能性を探求し,その技術的評価可能なシステムを検討する.

グローバルな水の間接消費(Virtual Water)の解明
助教授 沖 大幹[代表者],大学院学生 佐藤未希,大学院学生 河村愛
穀物生産や畜産,工業製品の生産には水資源が大量に消費される.それを輸入して日本国内で消費するということは,仮想的な水を輸入し間接的に他国の水資源を消費していることと同じである.この実態を解明するため,灌漑プロセスに基づく農業生産における水消費原単位推定,その結果を利用しつつ配合飼料等の割合を考慮して作製した畜産における水消費原単位,そして,工業統計に基づく工業用水の出荷額あたりの水消費原単位を定め,穀物,食肉,工業製品の主要品目について,もし日本において生産したとするならばどの程度の水資源が必要であったか,という間接消費の流れを抑えた.さらに今年度は,昨年度までと比較して,プロセスに立ち戻ることによって算定手法の精度の向上を行い,一つの確定した水の間接消費原単位データセットを構築した.続いて,世界各国における輸出入量,反収,生産量などのデータセットを基に,農業生産物のみが対象ではあるが,世界のVirtual Waterの国際フラックスと,その数十年間の経年変動を算定した.

地球温暖化等気候変動下における水循環の変動
助教授 沖 大幹[代表者],大学院学生 平林由希子,大学院学生 樫田爽,大学院学生 山田朋人, 助教授 鼎 信次郎
最新の温暖化予測結果によると,地球温暖化により水循環が強化されて,現在降水量の多いところでは降水強度も増えるのではないか,と懸念されている.また一方で,大洪水の増加,半乾燥地帯での渇水期間の延長なども危惧されている.本研究では,日本における明治時代からの長期時間降水量データをマイクロフィルムからデジタル化し,長期トレンドや各種の振動を検討した.わずかながら温暖化あるいは都市化と推測され得なくもない傾向が見られたものの,同時に,より顕著なものとして1930年代から40年代と最近との二つの顕著なピークが見出され,その原因を求めるために,海面水温変動から太陽活動変化まで様々な要因に関して分析を行っている.この観測データ分析は地球温暖化シミュレーションの結果と比較する予定である.また洪水・渇水の変化の予測のために,1900年から2100年までの統一した形式での河川流量推定へのチャレンジを開始した.そのためには,気候モデルシミュレーション結果とグローバル観測データセットとの高度複合利用が必要となるが,本年度はデータ収集,データ翻訳とシステム作成を精力的に進めた.

グローバルな水資源アセスメント
助教授 沖 大幹[代表者],地球環境システム工学研究グループ, 教授 虫明 功臣,博士研究員 安形康,博士研究員 宮崎真,大学院学生 Chayanis Manusthiparom,大学院学生 Asif Aslam,大学院学生 花崎直太,大学院学生 柳沢宏之,大学院学生 須賀可人, 助教授 鼎 信次郎
世界の水危機が叫ばれているが,現在巷間に溢れている情報はほとんど欧米発信である.これに対し,日本独自のグローバルな水資源アセスメントをきちんと行なって世界に発信するべく研究を進めている.これまでは自然系のグローバルな河川流量シミュレーションのみが主流であったが,そこに人間活動の影響,特に貯水池操作の影響を入れた地球陸域水循環シミュレーションを行った.一方で,水需要の変動,特にこれから近い将来アジアを中心として深刻になると想定される都市用水の需要(利用)予測が可能となる様に世界の国別統計値,都市別統計値(日本,米国,中国)の分析を進めた.世界規模での灌漑用水需要のモデル化も進めているが,少々手法を変えても必ずインド付近の過剰推定が問題となることが分かりつつある.さらに,グローバル推定の検証として,タイやパキスタンといった地域レベルでの詳細な水資源アセスメント検証を進めており,今年度は,これまで世界的にもほとんど未検証の領域であったパキスタンの地域的な現地水関連データを大量に取得することに成功し,データベース化に着手した.

水の安定同位体比を用いた水循環過程の解明
助教授 沖 大幹[代表者],技術官 小池雅洋,大学院学生 芳村圭
水の安定同位体比には,海水面から蒸発して地球を循環するその水の経路と履歴の積分情報が含まれているとされてきた.本研究では,タイでサンプリングされた雨水ならびに流水の安定同位体比を精密に計測し,そのデータベースを構築中である.これら計測の途上で行われた世界コンテストでは,酸素同位体測定精度が世界5位という高成績を修めた.また全球規模気象解析値上にレイリー型同位体循環モデルをカップルした同位体循環モデルを世界で初めて開発し,これによって地球規模で,かつ日日の変動までを含んだ,水の安定同位体比の世界分布を算定しVisualizeすることに成功した.

分子動力学法による材料・プロセス設計法の研究
教授 安井 至[代表者], 助手 宇都野 太,大学院学生 川原実,大学院学生 吉川由
コンピュータシミュレーション法の一種である分子動力学法を用いて, 熱膨張係数の結晶方位依存性, 酸素イオンの拡散, 欠陥構造の予測, 薄膜合成プロセスの予測, 結晶成長過程などを行っており, より効率的な材料設計の方法論を探っている. また, ガラス溶融プロセスにおける酸化還元の原子機構の検討を行っている.

ライフサイクルアセスメントによる環境調和性の判定
教授 安井 至[代表者],(科学技術振興事業団)中澤 克仁,(科学技術振興事業団)小倉 礁,(科学技術振興事業団)錫木 圭一郎,(科学技術振興事業団)二上 俊郎
すべての材料, 製品などの環境調和性は, ライフサイクルアセスメントによって, 表現が可能である. しかし, その廃棄過程をどのように設計するかによって, 環境負荷は大きく異なる. そこで, 廃棄過程をさまざまに変化させたときの環境負荷がどのようになるか, より定量的にする方法論を含めて検討を行っている.

産業の環境パフォーマンスに関する研究
教授 安井 至[代表者],安井研 大学院生 鳩山 宜伸
日本の産業における物質収支を解析し, より環境調和型産業に変貌させるには, どのような方法があるか, 次世紀にはどのような物質収支が予想され, その産業規模がどのようなものになるか, などを環境負荷軽減効果の観点から予測し, モデル化を行っている.

新規機能性構造を有するセラミック薄膜の合成
教授 安井 至[代表者], 助手 宇都野 太,大学院学生 安藤雅俊,大学院学生 中島 智明,大学院学生 原田 智子,大学院学生 福島 敦
多結晶およびアモルファス薄膜の高機能性構造を有するための新しい合成手法の確立を目指している.アモルファス薄膜からの結晶化・分相制御によるナノ構造化,またはレーザー照射による微細構造の制御を検討している.

結晶化ガラスの極限的特性の探求
教授 安井 至[代表者], 助手 宇都野 太,大学院学生 留野 暁
ガラスを結晶化すると,ガラスの持つ特性に新たに析出させた結晶の特性が付加される.その析出する結晶相の制御方法,ガラス−結晶の微細組織制御の方法の構築を目指し,より高機能な材料の開発を検討している.

血流-血管壁の相互作用を考慮した数値解析
助教授 大島 まり[代表者],研究員 鳥井 亮
心疾患あるいは脳血管障害などの循環器系疾患においては,血流が血管壁に与える機械的なストレスが重要な要因と言われている.本研究においては血流が血管壁に与える機械的なストレスに対して血管壁の変形が与える影響を解析するため,血流- 血管壁の連成問題に対する数値解析手法の開発を行ってきた.開発した数値解析手法を用いて実形状の脳動脈瘤をはじめ,幾通りかの血管形状について数値解析を行い,血管壁の変形が血管内の血流および血管壁面上のストレスの分布に影響を与えるメカニズムを解析している.

高速度PIVを用いた血管モデル内の可視化計測
助教授 大島 まり[代表者],技術官 大石 正道
脳動脈瘤が比較的できやすいと言われる内頚動脈の湾曲部においては,強い二次流れと非定常性により,局所的な壁面せん断応力が加わる.その湾曲を模した血管モデル内の流れを可視化計測することにより,曲がりと流速の影響を考察することを目的としている. 非侵襲計測法であるPIV(Particle Image Velocimetry:粒子画像流速測定法)は瞬時流れ場の速度分布を調べる方法として最も進化したレーザ計測法ではあるが,振動や脈動等の非定常現象を対象とするには時間分解能が不足していた.そこで近年開発された高速度カメラを用いて,時間分解能を改善した高速度 PIVシステムを構築し,時系列速度分布の取得を行っている.

Micro PIVによるマイクロチップ内流れの可視化計測
助教授 大島 まり[代表者], 助教授 藤井 輝夫,大島研 大学院学生 木下晴之,藤井研 大学院学生 金田祥平,藤井研 技術官 瀬川茂樹
MEMS技術を利用した生化学システムはマイクロ化により,反応および拡散が促進されるといった利点を持っている.しかし,マイクロ流路内の流れの物理については不明な点が多い.そこで,マイクロチャネル内で生じる電気浸透流について,これを蛍光粒子を用いて顕微鏡下で可視化し,どのような現象が起こりうるかについて詳しい観察計測実験を進めている.また,それらの観察・計測結果に基づき,材料の種類や溶媒のpHなどに応じて変化するチャネル壁の表面電位と電気浸透流との関係について,詳細な考察を行っている.

Image-Based Simulationにおける脳血管形状の血行力学に与える影響の考察
助教授 大島 まり[代表者],研究員 鳥井亮,大学院学生 庄島正明,講師(帝京大) 高木 清
重大な脳疾患であるくも膜下出血に対して,その主要因の脳動脈瘤の破裂に関連する手術ガイドライン作成が求められている.そこで,本研究では脳血管の血流を数値シミュレーションし,動脈瘤の発生,破裂のメカニズムの解明をめざしている.シミュレーションに用いる3次元血管モデルについて,CT画像から血管抽出および,3次元構築の手法の問題点と解決法を述べる.さらに,モデルの中心線を抽出することにより形状をパラメータ化し,モデルをパラメトリックに変形して血管形状の血行力学に与える影響を考察する.

医用画像に基づくWillis動脈輪の3次元モデリングと大規模シミュレーション
助教授 大島 まり[代表者],研究員 鳥井亮,大学院学生 小野広一郎
脳動脈の発症について起きやすい家系があり,また,発症部位も同じところにできる傾向があることが報告されている.そこで,同じ家系から幾つかの症例を取り出し,好発部位を含むWillis動脈輪をMRAから抽出し,3次元モデリングする手法の開発を行った.この際に,血管の形状を表すパラメータを自動抽出するような導出方法を開発した.さらに,大規模シミュレーションを行うことより,血管形状が血行力学に与える影響を検証した.

脳動脈血管モデル内のステレオPIV計測
助教授 大島 まり[代表者],技術官 大石正道,大学院学生 明渡 佳憲
脳動脈内の流れは3次元の複雑な流れを示しており,in vitroにおける速度3成分を求める計測手法は流動現象を把握するうえで重要である.そこで,本研究ではCT画像を元に構築した脳動脈瘤の3次元モデルを光造形により作成し,瘤内の流れのステレオPIV計測を行った.その際に必要となるキャリブレーション手法として,キャリブレーションプレートを用いずに行うことのできる新しい手法の開発を行った.

PIVによる矩形管内の脈動流解析
助教授 大島 まり[代表者], 助教授 谷口 伸行, 助手 佐賀 徹雄,大学院学生 上田敏之
超音波流量計は非侵襲計測でダイナミックレンジが広く,比較的精度が高いため,多くの産業における流体計測に適用されている.この計測原理は,超音波を流れの上流側と下流側から交互に打ち込み,超音波の伝播時間の差を測ることで流量を計測するものである.その際,流速プロファイルと流量とに関係する検定曲線の定義が必要である.しかし,定常流速で定義された検定曲線しか現在のところなく,定常時の検定曲線をそのまま管路内に圧力脈動が励起された場合に適用することは問題である.そこで,本研究では圧力脈動場内の流動特性を詳細に理解するために,アスペクト比α=1の矩形管内脈動流に対し,PIV(Paerticle ImageVelocimetry)を適用して計測し,計測制度の評価とLES(Large Eddy Simulation)による数値計算結果の比較・検討を行った.

溶融塩中で酸化物を還元してチタンを製造する方法
助教授 岡部 徹[代表者],岡部研 大学院学生 安孫子貴,岡部研 大学院学生 柿平貴仁
電気化学的な手法を用い,溶融塩中で酸化チタンを直接還元して金属チタンを製造する基礎実験を行っている.具体的には原料のTiO2を焼結し電極として成形後,カソード(陰極)として溶融CaCl2中に浸漬し,金属還元剤(Ca)が放出する電子により酸化物原料を還元し金属チタンを直接製造する方法(EMR)について検討している.チタンの鉱石は酸化物として産出するため,本プロセスが確立されれば原料の製造工程が簡略化され,プロセスが連続化できる利点があり,チタンの新製錬法として発展する可能性があるが,実際には得られるチタンの純度や溶融塩の分離方法の確立等,解決しなくてはならない点が多い.

原料成形体の金属熱還元によるレアメタル粉末の製造
助教授 岡部 徹[代表者], 助教授 光田 好孝,教授(工学院大) 小野幸子,(株)CBMMアジア 研究開発部長 今葷倍正名,岡部研 大学院学生 松岡良輔,岡部研 研究実習生 真下雄一,岡部研 研究実習生 河本隼
原料を含む成形体(プリフォーム)をあらかじめ作製し,これを還元剤の蒸気で還元することにより,均一な粉末を効率よく製造する新しいプロセスについて検討している.このプロセスは原料成形体と反応容器との接触部位を限定し,還元剤の蒸気を用いる還元手法であるため,反応容器や還元剤からの汚染を効果的に防止できる.また,この方法は,還元プロセスの(半)連続化・大型化が容易に達成できるので,次世代のレアメタルの粉末製造法として発展する可能性がある.このプリフォーム還元法(PRP)を用いてチタン,ニオブ,タンタル,ニオブ粉末の製造を試みた結果,還元時の熱処理条件や原料成形体に加えるフラックスを変化させることにより,均一で高純度の金属粉末を製造できることが明らかとなった.さらに,フラックスの種類や量を変化させることにより得られる金属粒子の粒径を制御できることがわかった.

電子材料スクラップからのレアメタルの回収
助教授 岡部 徹[代表者],岡部研 大学院学生 峯田邦生
希土類金属,タンタル,ニオブ,チタンなどのレアメタル金属は,磁石や電子材料用素材としてその需要が急速に増大している. 一例を挙げると,IT革命により高性能コンデンサであるタンタルコンデンサは需要が急増し,タンタル素材の価格は急騰する事態にも直面した.このような背景からタンタルコンデンサのスクラップからタンタルを効率良く分離・回収する新しいプロセスの開発を行っている.また,タンタルに限らず各種有価レアメタルの環境調和型リサイクルプロセスの設計と反応解析を行っている.

シェルと立体構造物に関する研究
助教授 川口 健一
シェル構造及び立体空間構造を対象として継続的に研究を行っている.今年度は(1)プレキャストポストテンション型シェルモデルの実大モデルの解析,テンション導入実験の検証解析,(2)ケーブルドーム構造の変位応力制御解析法を用いた張力導入モデル実験の検証(3)実大空気膜ドームの改良と施工実験,を行った.

大スパン構造物の災害時性能に関する研究
助教授 川口 健一
多数の人命を収容する大スパン建築構造物の災害時における挙動の検討に対して,必ずしも共通した設計思想は無い.本研究では,建築基準法の予想を越えた外乱による構造挙動,及びその結果生じる災害や内部空間の状況について調査研究している.本年度は,大スパン構造の制振手法の開発を目的として有限要素法汎用コードによる数値解析,MTMDを用いた制振装置の可能性調査,非構造材と設置高さの調査,設計におけるゾーニング手法の検討などを行った.

開閉式屋根構造システムに関する研究
助教授 川口 健一
開閉式屋根構造の発想は古来よりあるが,実際の応用技術は余り洗練されていない.本研究では,従来の剛な屋根構造に切断を設ける方法から離れ,構造的な合理性を保ったまま開閉の行える屋根構造システム開発のための基礎的な研究を行っている.

社会的ストックとしての大規模構造物に関する研究
助教授 川口 健一
高度成長時代からバブル期を経て今日に至るまで,日本には数多くの大規模構造物が建設されている.日本は元来,木材などの軽量な材料によりスクラップアンドビルドの文化によって自然災害と共存しながら発展してきた.今日,日本が抱える大規模構造物は耐用年数の様々な材料によって構成されており,今後,日本はかつて無い量の社会的ストックの維持管理の問題を抱えることになると考えられる.本研究では,日本の例と海外の例とを比較しながら,日本の社会的ストックとしての大規模構造物のあるべき姿について研究調査する.

大空間構造物の波動伝播特性に関する研究
助教授 川口 健一[代表者], 助手 宮崎 明美
説明 大スパン構造物は広大な広がりを持つ構造であり,そのスパンが大きくなるほど,地震や風,飛来物などによる衝撃荷重などに対する挙動として,波動伝播特性が無視できなくなってくる.また,テロなどによる爆破攻撃などの衝撃荷重時における大スパン構造物の挙動については不明な点が多い.本研究では,実験的手法と数値解析的手法の両面から,大空間構造物の波動伝播特性に関する研究を行っている.本年は,免震構造を用いて振動台実験を実施し,その結果を解析評価した.

立体構造システムを利用した振動制御方法に関する研究
助教授 川口 健一[代表者],技術官 大矢俊治,川口研 大学院学生 田村淳一,所外協力者 吉中進, 助手 宮崎 明美
大スパン構造物は屋根構造だけでなく,近年は広大なオフィスフロアなどでも頻繁に用いられるようになり,屋根構造の地震時や大風時の振動制御や,オフィスフロアの環境振動など,面外方向の振動の制御が必要となってきている.また,地震を対象とした振動制御方法は,免震,耐震,制震の3つに大別できる.本研究では,構造システムの3次元的な動きや立体構造システムの利点を生かし,従来の方式以上効果的な振動制御方法を開発することを目的としている.本年は,住宅等の軽量な構造体の為の免震装置として提案している「ハイブリッド・ロッキングカラム装置」の実験及び実験結果の解析,考察を行った.また,多重型及びMTMD制振装置の大スパン構造への効果,応用の可能性と配置問題に関する研究調査を行った.

軽量大空間構造システムの開発
助教授 川口 健一[代表者],技術官 大矢俊治,川口研 大学院生 鈴木悠介
無柱大空間建築構造は現在約200m級のものが技術的に可能であり,300m級のものも設計されるようになりつつある.しかし,さらに大きな大空間建築を目指すには自重の軽量化以外にも技術的な飛躍が必要となってくると考えられる.本研究では,大空間建築の新たな付加価値も含め,従来の構造システムの検証,新しい大空間構造システムの開発を継続的に行っている.本年度は,張力型空間構造の解析手法の開発,実大モデルの観測を行なった.更に,実大空気膜ドームの施工実験を行った.

スマート材料の空間構造物への応用に関する研究
助教授 川口 健一[代表者],川口研 大学院生 牧田瑞記
スマート材料とは種々の機能を持った材料の総称である.近年,種々のスマート材料が提案されており,これらを建築構造物へ応用する試みが各地でなされている.本研究では,スマート材料の大空間構造システムへの応用に関する調査を行い,実際にその新しい可能性を研究する.本年度は形状記憶合金を張力構造の張力材として利用する方法について,実験的手法により調査し,可能性の調査を行った.

空間構造の形態形成の数理解析
助教授 川口 健一[代表者],川口研 大学院生 高田雅之,川口研 大学院生 鈴木悠介,川口研 大学院生 牧田瑞記
空間構造において,形態が形成される,あるいは,決定される過程(形態形成過程)を数理解析の立場から調査している.本年度は,空気膜構造(インフレータブル構造)の解析手法として分子数を制御した空気膜構造のインフレート解析手法の開発を継続,実大モデルのインフレート実験を実施した.さらに,ケーブルドーム構造の形態応力制御を目標として線形逆解析手法を用いた解析,及び簡単な実験を行った.

構造物の畳み込み・展開に関する研究
助教授 川口 健一[代表者],技術官 大矢俊治,川口研 大学院学生 永井彰,所外協力者 頴原正美
構造物を平面や点に畳み込む,あるいは,畳み込まれた構造物を展開して広がりのある構造物を築くという手法は建物の合理的な建設解体工法,展開・可変型構造物への適用等様々な応用が考えられる.本研究では,(1)骨組み構造の畳み込み経路における分岐経路の考察,(2)骨組み構造物の最適畳み込み経路のモデル実験と解析との比較,(3)膜構造の畳み込み解析法の基礎的研究,(4)展開型接合部の開発等を実施している.本年度はガウス曲率の異なる曲面のシザーズ部材による構成の調査,とアルミによる単層ラチス型展開骨組モデルの載荷実験を行った.

地下水湧出が富山湾生態系に及ぼす影響について
講師 北澤 大輔[代表者],助教授(東大)徳永朋祥,助教授(東大)多部田茂
地下水は,長期間にわたって地下を流動しているため,高濃度の栄養塩類を含んでいる.従って,地下水の海底からの湧出量は河川流入量よりもはるかに少ないものの,地下水経由の物質負荷は河川経由のそれと匹敵すると考えられている.そこで,富山湾をモデルケースとして,地下水湧出が生態系,特に一次生産に及ぼす影響を定量的に評価する.地下水からの湧出水は淡水であるため,地下水が湧出する海域の近傍では3次元計算,その周辺海域では従来から用いられてきた静水圧近似計算を行い,両者を結合する.

有明海における貧酸素水塊と赤潮の数値シミュレーション
講師 北澤 大輔[代表者],助教授(東大)佐藤徹,佐藤研学部学生斎藤周
近年,有明海では,貧酸素水塊の発生によりアサリが死滅したり,赤潮によってノリの養殖が被害を受けるなど,漁獲量が減少傾向にある.その原因としては,諫早湾干拓事業に加え,近年の気候変化や汚濁物質負荷量の増大が挙げられている.そこで,有明海における貧酸素水塊と赤潮の発生へのこれらの要因の寄与について,生態系モデルを用いた数値シミュレーションにより明らかにする.また,水質浄化装置を設置した場合の効果を予測する.

バイオアッセイを活用する廃棄物最終処分場の管理
助教授 酒井 康行[代表者], 教授 迫田 章義,(埼玉県環境科学国際センター)小野雄策,(国環研)毛利紫乃,(国環研)山田正人,助教授(東京高専)庄司良,技術官 藤井隆夫
廃棄物最終処分場から何らかの理由で漏出する化学物質の生態系やヒトへの影響が懸念されている.しかし化学分析で同定できる物質は,例えば有機物についてはわずか1%以下であると報告されている.そこで,生態系の一次生産者としての藻類の増殖阻害試験,ヒト影響評価のための肝細胞生存阻害試験や多環芳香族類検出のための肝細胞解毒酵素誘導試験などのバイオアッセイと,主要物質に関する化学分析のデータを総合することで,最も緊急に管理を必要とする物質群を同定したり,効果的な浸出水処理手法を提案したりすることを目指し,検討を行っている.

ヒト環境応答評価のためのin vitro臓器システムモデル
助教授 酒井 康行[代表者], 教授 迫田 章義,助手 小島伸彦,酒井康行研 大学院生 西川昌輝
既存の単一培養細胞からなる毒性評価系では,吸収・代謝・分配といった人体内での毒性発現に至までのプロセスが考慮されない.そこで,これらを考慮する実験系として,膜上に培養された小腸上皮細胞,同じく膜上に培養された肺気道・肺胞上皮細胞,担体内に高密度培養された肝細胞および標的臓器細胞(腎臓・肺など)などの個別のモデル臓器コンパ−トメントを開発すると共に,これらを生理学的な培養液灌流回路で接続する新しい毒性評価システムを開発し,毒物経口摂取後の血中濃度と毒性発現を速度論的に再現することを目指している.

三次元造型技術と肝幹細胞の増幅技術を用いた肝組織in vitro再構築
助教授 酒井 康行[代表者],日本学術振興会外国人特別研究員 姜金蘭,助手 小島伸彦,教授(分生研)宮島篤,教授(東大医)幕内雅敏,助手(東大医)成瀬勝俊
将来,移植にも耐え得るような肝組織をin vitroで再構築するために,多面的な技術開発を行っている.具体的には,複雑な内部構造を持つ生体吸収性樹脂担体の光重合・機械加工積層造型法に関する検討や,増殖能と臓器再構築能に優れたマウスやヒトの胎児由来肝細胞のin vitro増幅技術の開発,などについて研究を進めている.

ヒト臨床応用のためのバイオ人工肝臓システムの開発
助教授 酒井 康行,教授(東大医)幕内雅敏[代表者],助手(東大医)成瀬勝俊
実際のヒト臨床応用に耐え得るような高機能かつ管理の容易なバイオ人工肝臓システムの開発に関する研究を行っている.前臨床試験として,ポリエステル不織布充填型バイオリアクターと血しょう分離器・酸素冨化器などからなるバイオリアクターシステムを構築し,肝不全ブタ・イヌ・サル等の灌流治療実績を積み重ねている.

サブストラクチャ・オンライン地震応答実験の精度向上に関する研究(継続)
助教授 中埜 良昭[代表者], 助手 真田 靖士,技術官 山内成人,中埜研 大学院学生 楊元稙,中埜研 大学院研究生 朴珍和
サブストラクチャ・オンライン地震応答実験(SOT)法は構造物全体の応答性状を直接実験的に評価することが困難な構造物に対して極めて有効な実験手法の一つである. 本手法では解析部分の部材に対し既存の数式モデルを設定するのが通例であるが, この場合SOT法の最大のメリット, 即ち履歴特性をモデル化することなく, 動的挙動を直接的にシミュレートできるという利点を最大限には生かせない. しかしながら, もし解析部分で用いる履歴特性を実験から得られる特性に基づき推定することが可能となれば, SOT法のメリットを最大限に生かすことができる. 本年度は実際にニューラルネットワークを応用したSOT法による構造実験を行い,本手法の妥当性を検証した.

鉄骨系架構により補強された鉄筋コンクリート造骨組のねじれ応答性状に関する研究(継続)
助教授 中埜 良昭[代表者], 助手 真田 靖士,技術官 山内成人,研究機関研究員 藤井賢志,中埜研 大学院学生 上田芳郎
本研究では, 昨年度に引き続きRC造壁および鉄骨系架構により耐震補強された鉄筋コンクリート造骨組を対象に, その捩れ応答性状に着目して次のような検討を行った. 1. 縮小立体試験体の振動台による動的実験の計測装置として,立体架構を形成する各平面架構のせん断力を個別に計測するシステムを開発した.2. 本計測システムを用いて縮小立体試験体の振動台による動的実験を行った.その結果,異なる方法で耐震補強された架構の地震応答性状の違いが実験的に明らかとなった.

韓国の鉄筋コンクリート造建物の耐震性能に関する研究(継続)
助教授 中埜 良昭[代表者], 助手 真田 靖士,技術官 山内成人,中埜研 大学院学生 崔琥,中埜研 大学院学生 望月司,中埜研 大学院研究生 朴珍和
韓国における地震活動は日本と比べてさほど活発ではないため, これまで地震防災に対する意識はあまり高くはなかったが, 近年韓国においても中・小規模の地震が頻発していること, また隣国の日本では1995年阪神・淡路大震災を, 台湾では1999年台湾集集地震を経験したことなどから, 同国における既存建築物の耐震改修の重要性が強く認識されてきている. 本研究では昨年までに日本の耐震診断手法を韓国の建物に適用するにあたって生じると考えられる問題点の整理を行った. その結果,韓国の学校建物で多用されるブロック造壁の耐震性能の評価方法に関する問題が明らかとなった. そこで, 本年度はブロック造壁が設置された鉄筋コンクリート造骨組の実大載荷実験を行い,本構造の地震時の耐力, 変形性能をはじめとする耐震性能に関する基礎的なデータを収集した.

高靭性繊維補強セメント系複合材料を用いた簡易震動実験手法の開発研究(継続)
助教授 中埜 良昭[代表者], 助手 真田 靖士,技術官 山内成人,中埜研 大学院学生 徳井紀子,筑波大学 境有紀,独立行政法人建築研究所 福山洋,国土交通省国土技術政策総合研究所 諏訪田晴彦
本研究は, 鉄筋コンクリート造建築構造物の模型震動実験に伴う試験体製作の労力と経費を大幅に節減できる簡易震動実験手法の開発を目的とする実験研究である. 具体的には, 1.現在までに鉄筋コンクリート部材の曲げ復元力特性を高靭性繊維補強セメント系複合材料と主筋のみで模擬する超小型試験体(30×30×180o)の作製方法を開発し,2.本年度は上記の超小型試験体を用いて震動実験および静的加力実験を実施し, 本試験体の有効性を実験的に検証した.

耐震壁を有する鉄筋コンクリート造ピロティ建物の応答性状に関する研究(継続)
助教授 中埜 良昭[代表者], 助手 真田 靖士
鉄筋コンクリート造ピロティ建物の合理的な耐震設計法を提案することを目的として, 実験的, 解析的, 理論的なアプローチから一連の研究を実施している. 本研究では, とくに1階に耐震壁を有するピロティ建物(1階の耐震壁が局部的に取り除かれた耐震壁フレーム構造)を対象に, 部材を構成する材料の復元力特性に基づく解析モデルを用いたフレーム解析を通じて, その応答性状の把握, 設計手法の構築を行っている.

弱小モデルによる地震応答解析(継続)
助教授 中埜 良昭[代表者], 助手 真田 靖士,技術官 山内成人
小さな地震でも損傷が生じるように, 通常の建物より意図的に弱く設計された縮尺率1/4程度の鉄筋コンクリート造5階建て建物2体(柱崩壊型モデル, 梁崩壊型モデル)を千葉実験所に設置し, 地震応答観測を行っている. 1983年8月の観測開始以来, 千葉県東方沖地震をはじめ, 200以上の地震動に対する建物の応答を観測することができた. 本年度は観測システムの内, PCによるデータベースシステムの改良, 更新を行った. また, これらの蓄積された観測結果の分析・解析を行うとともに, ニューラルネットワークを利用した履歴推定手法の教師データとして利用している.

隣接建物の衝突および連結が建物の応答性状に与える影響に関する研究(継続)
助教授 中埜 良昭[代表者], 助手 真田 靖士
過去の地震における構造物被害の要因の一つとして, 隣接建物間の衝突が報告されている. その解決策として, 慣用的にしばしば近接建物同士を連結する手法が用いられるが, 建物の衝突がその応答性状に与える影響, 建物の連結による耐震性能改善効果, 連結部の具体的な設計手法については必ずしも明確ではないのが実状である. そこで, 本研究では建物の衝突, 連結がその応答性状に与える影響を解明することを目的として, 解析的, 理論的な検討を行っている.

空間の生成プロセスに関する研究(継続)
助教授 曲渕 英邦[代表者], 教授 藤井 明, 助手 今井 公太郎,助手 橋本憲一郎,大学院学生 ElezGolani,大学院学生 張希実子,大学院学生 任貞姫,大学院学生 田村順子,大学院学生 成瀬友梨,大学院学生 合屋統太
建築・都市空間を構築するための設計プロセスの研究は,その基礎論としての空間の生成プロセスを把握することが肝要である.本年度は,日本の各都市における,音楽のヒットチャートや車の販売実績データなどのランキングデータを使って,都市のコンステレーションを描く手法の検討を行った.これにより,各都市の類似性と差異性を明らかにするとともに,時間とともに移り変わる都市の様相を分析した.

文化としての空間モデルの計画的研究(継続)
助教授 曲渕 英邦[代表者], 教授 藤井 明,共同研究者 郷田桃代, 助手 今井 公太郎,助手 橋本憲一郎,大学院学生 鍋島憲司,大学院学生 松岡聡,大学院学生 宮崎慎也,大学院学生 岡野道子,大学院学生 永井秀幸,大学院学生 佐々木一晋,大学院学生 成瀬友梨
建築・都市空間は時代精神や場所性に根ざす文化の表現であり,21世紀に向けて新たな空間モデルを提案することは,今日の重要な計画的課題であるといえる.数年にわたり,「高温多湿気候に適応する環境負荷低減型高密度居住区モデルの開発」という課題を設定し,建物内部に十分なヴォイドを確保した「ポーラス型居住区モデル」の提案を行ってきた.これまでに,対象敷地として東京とベトナム・ハノイを想定した2つの具体的なモデルを作成している.ハノイモデルは,ハノイ建設大学との共同研究として位置付けられ,ハノイ旧市街地の伝統的な街並み保存を考慮しつつ,環境負荷低減型の高密度住居を実現する方法を求めるものである.本年度は,このハノイ実験住宅の基本・実施設計を行い,ハノイ建設大学内の敷地内に着工,2003年6月に完成した.

都市空間構成の形態学的研究(継続)
助教授 曲渕 英邦[代表者], 教授 藤井 明, 助手 今井 公太郎,助手 橋本憲一郎,大学院学生 Adriana Shima Iwamizu,大学院学生 松田聡平,大学院学生 河合麦,大学院学生 翁長元
本研究は都市空間を構成する形態的要素に着目し,その空間的特性を記述する手法の開発を行うものである.本年度は,都市空間の中で,建物や構築物などのヒューマンスケールな境界横断について,検討した.具体的には,ある特定の個人が体験しうるすべての境界抽出を行いこれをカード化して分析を行い,境界横断が持つ「閾」としての特性を明らかにして,分類した.

都市空間の計画学的研究(継続)
助教授 曲渕 英邦[代表者], 教授 藤井 明, 助手 今井 公太郎,助手 橋本憲一郎,助手 王笑夢,大学院学生 鳥居斎,大学院学生 Dietrich Bollmann,大学院学生 謝宗哲,大学院学生 東辻賢治郎,大学院学生 高濱史子
本研究は都市空間の形成に関与すると考えられる「物理的な環境」と「活動の主体としての人間」について,計画学的な立場から,個別の分析を行うと同時に両者の統合を目指すものである.本年度は,新古典主義の類型学者カトルメール・ド・カンシーの「type」に関する理論に基づき,形態がコンセプトとしての「type」より生成されることに注目し,アルガンやアルド・ロッシの類推的都市など,都市の建築が生成される媒介としての類型に関して考察,分析した.

都市ライフライン・交通システムの早期地震被害推定と影響波及
助教授 山崎 文雄[代表者], 特別研究員 小檜山 雅之,山崎研 大学院学生 丸山喜久
地震による都市ガス供給網の二次災害防止のため,大規模な地震動モニタリング基づく早期被害推定システムの開発と,緊急対応の方法について研究を行っている.今年度は,その要素技術である被害評価のために,数値シミュレーションにより被害と相関の高い地震動指標についての検討を行った.また,高速道路網などの交通システムに関しても,地震計ネットワークからの情報を用いて被害推定を行う研究を行っている.今年度は,高速道路網における地震計設置位置の地震動評価を地震動記録と常時微動観測に基づいて評価した.

地理情報システムを利用した都市災害機構の分析
助教授 山崎 文雄[代表者], 特別研究員 小檜山 雅之,研究員 若松加寿江 協力研究員(筑波大学)村尾修 山崎研 大学院学生 石原裕紀
地理情報システム(GIS)を用いて,地域住民や防災関係者が具体的な地震被害イメージを持てるような微視的な地域情報データベースの構築,地盤ゾーニングと地震動強度の推定,さらに建物地震被害の予測など,総合的な地域地震被害想定システムの構築に取り組んでいる.また,東京の住宅地を対象に,建物の耐震性を簡易的に評価し,地震保険料率の細分化に役立てるための研究を行っている.その一環として,姫路市で実施された木造建物に対する耐震診断データを収集し,この結果と横浜市の耐震診断結果などを比較し,地域による建物耐震性の違いなどを検討している.

地震動のアレー観測と地震動記録の工学的評価
助教授 山崎 文雄[代表者], 特別研究員 小檜山 雅之,山崎研 博士研究員 Kazi Rezual Karim 山崎研 大学院学生 Gabriel Calle
千葉実験所では高密度の地震動アレー観測を17年以上継続しており,その記録をデータベース化して公開するとともに,地震動の空間変動や増幅特性に関する解析を行っている.また,防災科学技術研究所のK-NETなどにより得られた強震動記録を用いて,最大地動や応答スペクトルなどの距離減衰式の構築,地震動と地盤特性の関係の評価,地震動強さ指標と構造物の地震被害との相関についての分析などを行っている.また,駒場リサーチキャンパスに設置した地盤地震動と建物応答の観測システムにより得られた記録について,解析を行っている.

構造物-地盤系の地震観測と地震応答解析
助教授 山崎 文雄[代表者], 特別研究員 小檜山 雅之,山崎研 博士研究員 Kazi Rezual Karim 山崎研 大学院学生Gabriel Calle
構造物-地盤系の地震時挙動に関して,地震観測,常時微動観測,さらに有限要素法を用いた地震応答解析を行っている.対象とする構造物としては,千葉実験所および台湾花蓮の鉄筋コンクリート製タワー模型,東神戸大橋,駒場新営建物などがある.これらの構造物で観測された地震記録を数値解析で再現することにより,手法やモデル化の検証,および実用的解析法の提案を行っている.さらに,RC橋脚,多径間橋梁,木造家屋,RC建物などの構造物の弾塑性応答解析を行い,数値解析による被害関数の構築も行っている.

ドライビングシミュレータを用いた高速道路通行車両の地震時走行安定性に関する研究
助教授 山崎 文雄[代表者], 特別研究員 小檜山 雅之,山崎研 大学院学生 丸山喜久
高速道路の地震時通行規制基準の見直しについて研究を行っているが,構造物被害の観点のみからは,現状の基準値をかなり引上げてよいことになる.しかし実際に強い地震を体験したドライバーは,「タイヤがパンクしたと思った」「ハンドル操作が出来なくなった」などと証言しており,事故を起こす危険性が指摘される.そこで,地震の揺れが高速道路の走行安定性にどのような影響を与えるか,数値モデルにより検討している.また,駒場リサーチキャンパスに導入された6軸アクチュエータを有する本格的なドライビングシミュレータを用いて,これに地震動を加える被験者実験を行い,模擬的に地震動下での運転車の反応・挙動を調べている.

ドライビングシミュレータを用いた高速道路通行車両の地震時走行安定性に関する研究
助教授 山崎 文雄[代表者], 特別研究員 小檜山 雅之,山崎研 大学院学生 丸山喜久
高速道路の地震時通行規制基準の見直しについて研究を行っているが,構造物被害の観点のみからは,現状の基準値をかなり引上げてよいことになる.しかし実際に強い地震を体験したドライバーは,「タイヤがパンクしたと思った」「ハンドル操作が出来なくなった」などと証言しており,事故を起こす危険性が指摘される.そこで,地震の揺れが高速道路の走行安定性にどのような影響を与えるか,数値モデルにより検討している.また,駒場リサーチキャンパスに導入された6軸アクチュエータを有する本格的なドライビングシミュレータを用いて,これに地震動を加える被験者実験を行い,模擬的に地震動下での運転車の反応・挙動を調べている.

計測技術開発センター

光合成反応中心の分子構築解明
教授 渡辺 正[代表者], 助手 吉田 章一郎,COE特任研究員 仲村亮正
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を基本とした生体機能分子の高感度・迅速計測手法を用い,超高速・高効率の光→電子(化学)エネルギー変換を行う光合成反応中心の分子メカニズム解明を目指している.還元力を生む光化学系I反応中心について,一次電子ドナーP700がクロロフィルaとa'のヘテロ二量体である事実を確認したのち,一部の生物では二次電子受容体が既知のフィロキノンではなく極性のより高いナフトキノン類であることを見出し,質量分析などでその構造を確定した.また,人工色素を用いるP700活性の分光増感を試みたところ,いくつかの色素が天然の光電荷分離活性を10%ほど向上させることを確認した.

直接ボルタンメトリーによる光合成反応中心のレドックス電位計測
教授 渡辺 正[代表者], 助手 吉田 章一郎,COE特任研究員 仲村亮正,大学院学生 雪平聖道
光合成反応中心におけるレドックス電位チューニングの実態を解明すべく,メディエーターを用いないボルタンメトリーによる電位計測を試みた.緑藻Chlamydomonas reinhardtii および好熱性ラン藻 Thermosynechococcus elongatus の光化学系 I 標品を試料とし,(1) ジメチルアミノエタンチオールまたは (2) プロパンチオール/ヘキサデカンチオール(50/1)で表面化学修飾した金電極を用いる方形波ボルタンメトリー(SWV)により,+440 mV vs. SHE 付近に明確なレドックス波を観測できた.ほかの電子伝達タンパク質への応用も検討中.

光合成電子伝達分子の分光電気化学
教授 渡辺 正[代表者], 助手 吉田 章一郎,COE特任研究員 仲村亮正,大学院学生 須澤朋之
光合成光化学系 I 反応中心(P700)のレドックス電位については,過去40年間の報告値に 180 mV 程度の差異が見られる.その一因は測定法(化学的レドックス滴定)の問題だと考え,薄層電解セルを用いる分光電気化学法の計測条件を最適化して検討を行った.ジチオジピリジンで表面修飾した金メッシュを作用極とする薄層セル(容積 0.2 mL 以下)を試作し,メディエーター選択も最適化したところ,ホウレンソウP700 ではきわめて高い精度・再現性(±2 mV,n = 12)をもってレドックス電位(+ 469 mV vs. SHE)が求められた.他の酸素発生型光合成生物の P700 についても検討した結果,約 60 mV のスパンに少なくとも4種類のレドックス電位が存在することを示唆する予備的な知見を得ている.

界面光電気化学プロセスの解析
教授 渡辺 正[代表者], 助手 吉田 章一郎,大学院学生 腹 祐輔
電極表面への吸着が有機色素分子の電子状態に及ぼす作用を明らかにすべく,吸着分子の増感光電流スペクトルと溶液内吸収スペクトルの比較を行っている.酸化スズ電極上のメチレンブルーで実測された両スペクトルの顕著な差異をもとに,吸着による会合(二量化)平衡定数の変化度合いを見積もった.

バクテリオロドプシンの光プロトンポンプ機能解析
教授 渡辺 正[代表者], 助手 吉田 章一郎,大学院学生 小林陽介
高度好塩菌 Halobacterium salinarium の光プロトンポンプ機能を支えるバクテリオロドプシン(bR)につき,プロトンチャネルに付随する金属イオンの役割を解明すべく,金属イオン置換 bR の酸化スズ電極上での光電気化学応答を調べた.その結果,プロトンポンプ活性が金属イオンの種類(とりわけ価数)に大きく依存することと,界面活性剤による脂質の部分的脱離が吸収スペクトルおよび光電気化学的物性を左右すすことを見出した.以上のような挙動は,プロトン輸送にかかわるアミノ酸残基と金属イオンとの静電相互作用,および脂質の負電荷がその相互作用に及ぼす効果をもとに解釈できた.

超純水製造用イオン交換不織布の作用メカニズム
教授 渡辺 正[代表者], 助手 吉田 章一郎
イオン交換不織布を充填した超純水製造システムの動作メカニズム解明を目的に,不織布の種類・充填法を変化させ,脱塩室と濃縮室のpH変化,電流ー時間特性,膜界面のpH変化などを計測した.酸塩基指示薬の色変化から,イオン交換膜と不織布の界面,および異種不織布の界面に生じる強電場が水分子の電離を促進し,それがイオン交換膜を再生することを明らかにした.

音場の数値解析に関する研究
助教授 坂本 慎一[代表者], 教授 橘 秀樹,研究員 矢野博夫,協力研究員 横田考俊,大学院学生 穂坂 礼,大学院学生 山本航介,大学院学生 郷原繁利
各種空間における音響・振動現象を対象とした数値解析手法の開発を目的として, 有限要素法, 境界要素法, 差分法等に関する研究を進めている. 本年度は, 室内外音場予測に対する差分法の精度向上および適用性拡大を目的として,計算スキームに関する理論的検討を行った.それらの計算手法を実物ホールのインパルス応答計算に適用し,手法の妥当性および現状における適用限界の確認を行った.また,実際のホールの設計段階において数値解析手法を用いた音場シミュレーションを行って問題点を確認することにより,室内音響設計における音場シミュレーションの有効性について検討した.

数値シミュレーションに基づく音場の可視化・可聴化技術に関する研究
助教授 坂本 慎一[代表者], 教授 橘 秀樹,協力研究員 横田考俊,大学院学生 穂坂 礼,大学院学生 山本航介
建築音響・騒音制御の分野における各種音場を的確に把握するための表示方法として,数値シミュレーションに基づく音場の可視化・可聴化技術に関する研究を行っている.今年度は,建築音響設計に対する応用として,ホール,学校等の室内を対象に各種パラ目トリックスタディを行い,実際の設計に適用するとともにその有効性について検討した.また騒音制御問題に対する応用として,築堤および掘割・半地下構造からの騒音放射を可視化し,併せて騒音制御効果に関する定量的な検討を行った.

材料界面マイクロ工学研究センター

ナノコーティングのパフォーマンスの評価(継続)
教授 香川 豊[代表者],受託研究員 郭 樹啓
イットリウム酸化物を添加したEB-PVDとCVDジルコニウム酸化物コーティング材料を用い,高温,大気中にて熱暴露および熱繰り返しを行い,コーティング材の高温損傷挙動を調べた.また,高温でコーティング材の相安定性を調べ,コーティング材の相変態を解明した.さらに,高温保持時のボンドコートの酸化による基板とトップコート間に生じたTGO層の残留応力を蛍光分光法で測定し,残留応力と熱暴露時間および熱繰り返し数との依存性を明らかにした.現在,高温熱暴露および熱繰り返しによるコーティング損傷のメカニズムの解明を行っている.

プラズマ溶射遮熱コーティングのTGOの応力分布(新規)
教授 香川 豊[代表者],技術補佐員 田中 誠
プラズマ溶射によるTBCの熱暴露試験を行い,TGOの応力を蛍光分光法により測定してTGOの成長及び形状との関係を調べた.熱暴露時間が増加するに従ってトップコート層内のポアが減少するとともに,TGO層の厚さが増加した.TGO層内の圧縮応力は,熱暴露時間が増加するに従い一旦増加し,その後,微小な亀裂が発生したため圧縮応力は減少する傾向を示した.トップコート層内のトップコートとTGOとの界面近傍の亀裂がTGOの応力状態に影響を及ぼす重要な因子であることが明らかになった.

急速加熱試験による耐熱コーティング健全性評価手法の開発と応用(新規)
教授 香川 豊[代表者],研究員 新見 彰夫
ガスタービン高温部品に使用されるセラミック遮熱コーティング(TBC)の健全性評価法として,水素・酸素混合ガス燃焼炎を用いた急速加熱試験を行い,コーティングの物性変化および亀裂進展挙動を測定した.この結果,急速過熱試験で50サイクル以上剥離しないコーティングにおいて,その物性や組織は最初の数サイクルで大きく変化することが明らかになった.また,剥離亀裂は,最初の数サイクルでは確認されず,それ以降のサイクルで徐々に進展する傾向があることがわかった.

プラズマ溶射熱遮蔽コーティング(TBC)の衝撃損傷挙動(新規)
教授 香川 豊[代表者],機関研究員 Arcan F.Dericioglu
プラズマ溶射TBC材料の衝撃損傷挙動試験を行った.射出物の速度を200m/sまでの範囲で変化させてコーティング表面に衝撃を与え,損傷進展の射出物速度依存性を観察した.TBCの衝撃損傷の進展はボンドコートおよび基材両者に生じた永久ひずみの影響を受けることが明らかとなった.また,150m/sまでの速度ではコーティング層の剥離は観察されなかったが,それ以上の速度では残留痕跡の周りに大きなコーティング層の剥離が生じた.観察結果を用いて,両速度範囲におけるTBCの損傷進展のモデル解析を行った.

高温熱放射ナノマルチレイヤーコーティングの作製と熱反射特性 (継続)
教授 香川 豊[代表者],機関研究員 長沼 環
熱輻射の高温反射特性を定量的に計測可能な装置を開発し,セラミックス熱反射コーティングの高温反射特性を計測した.この装置を用い,輻射熱反射特性の高温挙動を調べることにより,以後,同素材の熱反射コーティングを設計する際,屈折率の温度依存性を考慮するか否かを決定するのに役立つものと考えられた.本研究では,Al2O3,ZrO2,TiO2を用いたセラミックス熱反射コーティングを用い,熱輻射の高温反射特性を1273 Kまで定量的に計測した.その結果,この系においては,高温時の光反射スペクトルは室温時と大きく変化しないことから,素材の屈折率の温度依存性は無視でき,積層構造を室温時の素材の屈折率から設計可能であることが明らかになった.

熱エネルギーウィンドウコーティングの設計(継続)
教授 香川 豊[代表者],大学院学生 池上 将英
高温での熱放射を制御可能なナノマルチレイヤーコーティングを作製し,高温下での熱反射特性を検討した.セラミックス基板上に厚さ数百nmオーダーの積層コーティングを反応性スパッタリング法を用いて作製した.得られた試料において,室温から1273 Kの熱エネルギーに相当する波長1.28〜25 mmの赤外光の反射率を,室温から1273 Kの高温環境下にて測定した.その結果,各層の界面による干渉効果により赤外光の特定波長範囲の光を反射できることが明らかになった.

近接場光学手法によるTBC(EB-PVD)のTGO層中の応力分布の高分解能評価 (継続)
教授 香川 豊[代表者],大学院学生 冨松 透
遮熱コーティング(TBC)技術では,界面に形成するTGO層内部の応力分布が,損傷状態の把握に重要な知見を与える.TGO層中の応力測定法の一つに蛍光分光法が挙げられるが,本研究では,励起光に近接場光を用いた蛍光分光法により,高空間分解能の応力測定を行うことを検討した.これにより,EB-PVD法により作製したTBCのTGO層中の局所的な応力分布を500 nm以下の空間分解能で測定できることが確かめられた.また,TGO層には全域にわたり圧縮応力が働き,応力値はTGO層の幾何学的形状に依存することが明らかになった.

耐熱コーティング材料の電磁波を利用した損傷の検出(継続)
教授 香川 豊[代表者],大学院学生 宮田誠心
耐熱コーティングの損傷を検出する新しい方法として,電磁波特性を利用することを試みている.本年度は,耐熱コーティングに電磁波を照射して,入射波と反射波の変化から,非接触で損傷を検出する装置を設計,試作した.また,耐熱コーティングの電磁波照射自己発熱を利用した損傷検出のシミュレーションを行い,損傷検出可能性を検討するとともに,実験結果との比較を行った.

SiC繊維強化SiC複合材料の高温曝露による酸化損傷の誘電特性による評価(継続)
教授 香川 豊[代表者], 助手 本田 紘一
非酸化物系繊維強化セラミックス複合材料は使用時に酸化劣化を生じることが課題となっている.新たに開発した電磁波を利用した非接触損傷検査装置を用いて,SiC/SiCの酸化損傷を非接触・非破壊で評価することが可能であることを明らかにした.さらに,耐環境コーティング(EBC)を施したSiC/SiCの熱暴露を行ってその誘電特性を測定し,EBCを施した場合でも酸化損傷を評価できることを確認した.

GHzオーダーの電波反射に及ぼす誘電体表面形状の影響(継続)
教授 香川 豊[代表者],大学院学生 熊澤 聡
本研究では,電波の入射面に曲率を持たせることでランダムな方向からの電波の反射を防止し,しかも効率良く電波吸収材料へ導くことを可能とする非電波反射材料を得ることを目的とした.60〜70 GHzのミリ波帯域で電波を効率良く吸収するために,積層誘電体層が曲面を持つ場合を想定し,電磁界シミュレーションを行った.曲面を持つ2層の電波吸収材料では積層構成を工夫することにより,入射電波の一部を材料中への閉じ込めることも可能になる現象が生じる可能性が検証された.

周期的に配列した空孔による散乱を利用した電磁波吸収体(継続)
教授 香川 豊[代表者],受託研究員 成田 毅
電磁波は,適切な構造を持つ材料の内部で,散乱・干渉作用によって,伝播方向が制御され,強度が低減されるので吸収されるという事を18〜40GHz帯域で明らかにしてきた.新たに試作した測定系を用いる事で50〜77GHzにおいても18〜40GHzの場合と同様の効果で電磁波を吸収できる事が明らかとなった.また表面形状による反射波の低減効果を明らかにする事ができた.これにより低損失材料であっても,材料の物性と構造を相互作用させることで電磁波の吸収が可能であり,材料の選択の巾が広がる事を示唆できた.

SiC系繊維を用いた多機能電波吸収材料(新規)
教授 香川 豊[代表者],大学院学生 大黒寛典
電磁波吸収特性と力学特性を兼ね備えた複合材料を実現するためにSiC系繊維強化プラスチック多機能複合材料を用いての素材選択,特性設計および可能性を検討した.SiC繊維を織物状にしたものを用いて18〜40GHzの周波数範囲での電波の反射特性と透過特性をSパラメーター法により測定した.得られた結果からSiC系繊維の電波吸収機構について考察した.

H2Oと電磁波の相互作用(新規)
教授 香川 豊[代表者],大学院学生 井上 基
H2OはGHzオーダーの電磁波と強い相互作用を持つことが知られている.本研究ではH2Oに20〜40 GHzの電磁波を照射した際の反射,吸収特性を実験的に調べ,H2O分子の状態との相関性を考察した.

誘電体粒子を分散させたH2Oの電磁波との相互作用(新規)
教授 香川 豊[代表者],大学院学生 宮崎 暢
H2Oは20 GHz付近の周波数で,極性に起因する分子回転による電波吸収機構が生じることが知られている.本研究ではH2O中へAl2O3粒子を分散させたときに生じる電磁波との相互作用について調べた.Al2O3粒子の体積率を60 %まで変化させて電波反射率・透過率を測定した結果,体積率が増すと電磁波の反射率が減少することが明らかになった.

電磁波照射による材料の電子共振現象(新規)
教授 香川 豊[代表者],特別研究員 松村功徳,大学院学生 溝田 尚
誘電体では誘電率が周波数に応じて変化する誘電分散の現象が起こる.電子分極による分散では電子が共振する周波数の付近,すなわち,プラズマ周波数の付近で誘電率が大きな変化を示す.本研究では材料中で電子による電子による共振が生じる場合の電磁波との相互作用を調べた.

中温度域作動型燃料電池用材料の研究
教授 宮山 勝[代表者],技術官 高野早苗,宮山研 大学院学生 原 晋治,宮山研 大学院学生 堀 幹裕,宮山研 博士研究員 Giuseppe Trunfio
現在適切な材料が見出されていない100〜200℃で作動可能な燃料電池のプロトン伝導性電解質材料として酸化スズ水和物などの金属酸化物水和物に着目し,その物性評価と機構解明を行っている。150℃の温度,高水蒸気分圧下で高いプロトン導電率が得られ,結晶内あるいは表面に強く結合した水和水が必要であること,および低湿度下での導電率維持には表面のマイクロポアが重要であることを確認している。また,メタンおよび空気の混合ガスにより発電が可能な単室型燃料電池を,酸化物イオン伝導性の固体電解質と金属酸化物電極を用いて作製し,優れた発電特性を得た.金属酸化物電極には電子伝導性に加えて酸化物イオン伝導性が重要な要素であることを見出している.

ビスマス層状構造強誘電体における欠陥エンジニアリングによる物性制御
教授 宮山 勝[代表者], 助手 野口 祐二,宮山研 大学院学生 高橋尚武,宮山研 大学院学生 曽我雅之,宮山研 大学院学生 後藤 崇,宮山研 大学院学生 吉村 祥,宮山研 外部研究生 村田紘一朗
ビスマス層状構造強誘電体(BLSF)は,耐疲労特性に優れた不揮発性メモリー材料として知られている.種々の単結晶を作製し,欠陥構造(不定比性を含む)と強誘電ドメイン構造を制御して各種物性(分極特性,導電率)を制御する研究を行っている.希土類置換を行ったチタン酸ビスマス(BIT)系で,微細なドメイン構造,酸素欠損低減による低リーク特性,大きなエネルギーバンドギャップを明らかにしている.また,酸素欠損を低減させたタンタル酸ストロンチウムビスマス(SBT)系単結晶で著しく大きな残留分極を確認している.さらに,第一原理計算による欠陥生成の理論的考察を進めている.

ビスマス交代相構造酸化物の作製と物性評価
教授 宮山 勝[代表者], 助手 野口 祐二,宮山研 大学院学生 原 英和,宮山研 大学院学生 小林 友
異なるペロブスカイトブロックが酸化ビスマス層を介して積層した構造のビスマス交代相構造酸化物では,異なるペロブスカイトブロック間の相互作用により,単一層体から予想されるものとは異なる物性が期待される.このようなビスマス交代相構造酸化物の多結晶体,単結晶を作製し,交代層の形成要因とともにその強誘電物性を調べている.層に平行方向での分極特性が著しく大きな交代層体を始めて確認している.また,ペロブスカイトブロックをMn置換などにより半導体化し,強誘電性/半導性の融合による導電率のメモリー効果を見出している.

電気化学スーパーキャパシタ用電極材料の研究
教授 宮山 勝[代表者],宮山研 大学院学生 鈴木真也,宮山研 大学院学生 木村香里,宮山研 大学院学生 岡田朋美,宮山研 大学院学生 桑原 章
高容量と高速の充放電特性を兼ね備えたスーパーキャパシタは,電気自動車の補助電源などへの応用が期待されている。層状あるいはトンネル構造をもつ酸化バナジウム,リン酸鉄リチウム,チタン酸などの活物質を液層から形成し,電子導電性カーボンの粒子や繊維にコーティングして高表面積複合体とすることにより,リチウム二次電池と同じ機構で上記の特性を示すことを見出している.また,酸化チタンのメソ多孔体を形成することにより,高速リチウムインターカレーションの実現を試みている.

自己組織化プロセスによるイオン伝導性メソ多孔体の作製およびイオン交換による機械特性制御
教授 宮山 勝[代表者], 助手 野口 祐二,宮山研 大学院学生 鈴木智史,宮山研 大学院学生 川野 誠,宮山研 外部研究生 奥村豊旗
界面活性剤の鋳型分子を用いた自己組織化法により数ナノメートルの空隙を持つシリカ系メソ構造体を作製し,その空隙へリチウムイオン伝導性溶液あるいはプロトン伝導性リン酸基を導入させることにより,リチウムあるいはプロトンのイオン伝導性に優れた固体電解質の作製を試みている.また,イオン交換により表面応力を制御し,機械特性を向上させる手法の開発を試みている.

光による分子操作と分子配向素過程の研究
助教授 酒井 啓司[代表者], 助手 美谷 周二朗,酒井研 大学院生 堀井和由,酒井研 大学院生 平野太一
異方形状分子からなる液体について,レーザー光を用いた分子配向制御を試みている.熱平衡状態ではランダムに配向する分子の集団に偏光制御されたレーザーを導入して分子配向秩序をもたらし,その秩序の程度を複屈折計測により定量評価する.本年度は色素の添加による光吸収の増加が,分子配向ダイナミクスと結合するメカニズムを調べるため,色素添加された液晶系について偏光変調による動的光カー効果スペクトルの測定を行った.その結果,これまで知られていなかった光吸収系における液晶等方相−配向相間転移の動的臨界挙動を明らかにすることができた.また光を用いた生体膜構造の非接触マニピュレーション手法の開発に着手し,ミセル系における分子集合体の巨視的配向状態が空間を伝搬して情報を伝達する様子を観察した.

液体表・界面構造と動的分子物性
助教授 酒井 啓司[代表者], 助手 美谷 周二朗,高木研 大学院生 吉武裕美子
液体表面や液液界面など異なる相が接する境界領域での,特異的な分子集合体の構造や現象に関する研究を行っている.本年度は液面光マニピュレーション法を用いた微小領域界面の物性測定手法を開発した.屈折率の異なる媒質間にレーザーを伝搬させると屈折率の小さいほうに向かって放射圧が働き界面が局所的な変形を受ける.このとき液面の変形量が表面張力や粘性と相関を持つために非接触かつ高精度で界面の物性と構造を測定することができる.これを毛管端面に形成された液面の共鳴振動モードの観察に応用すると,微小領域の表面張力を1/1000の精度で測定することが可能となる.またこの方法を高粘性液体表面に適用することにより,1cp〜100,000cpという広いダイナミックレンジにおいてms程度の高時間分解能で粘性測定を行うことに成功した.さらにゾル-ゲル転移に伴う表面物性の変化を高速で解析する手法を開発した.

液体表面における新しい分子物性計測手法の開発
助教授 酒井 啓司[代表者], 助手 美谷 周二朗,酒井研 大学院生 平岡良彦
液体表面の力学的物性,特に分子吸着に伴う表面エネルギーと表面粘弾性の動的変化を調べる新しい手法の開発を行っている.本年度は表面変位の熱ゆらぎを光散乱により測定する「リプロン光散乱システム」において,ゆらぎの信号を実時間で捕らえ,それを逐一相関処理することによってmsの時間分解能でリプロンスペクトルを測定するシステムを開発した.これにより,溶質分子が表面に吸着・脱離する動的過程を高時間分解能で捉えることが可能となった.また局所的な電場印加によって液体表面の変形を励起し,その応答から表面の力学物性を調べる手法を開発した.

多自由度が競合する複雑流体における分子緩和現象の研究
助教授 酒井 啓司[代表者],酒井研 大学院生 堀井和由,酒井研 大学院生 畠山丈司,酒井研 大学院生 平野太一
流れ場に加えて濃度場や分子配向,温度勾配などの自由度が相互にカップルする複雑流体においては,各自由度の緩和過程が他の自由度からの影響を受けて特異なスペクトルを示すことが知られている.この緩和ダイナミクスを精密に観察することにより,各自由度間の結合の起源を分子レベルで明らかにする試みを行っている.本年度は,流体表面を伝搬するさざ波が,直下の媒質のずり流動を介して分子配向と結合する様子を可視化して調べるシステムを開発した.これにより液晶,異方形状ミセルや生体膜における配向秩序形成過程の研究を行った.また異方形状分子からなる流体について,分子回転と並進運動との結合を表す輸送係数を,光散乱法を用いて定量評価した.これにより複数の輸送係数の臨界異常性を分離して評価することが可能となった.

ミクロ不均一系の構造とダイナミクスの研究
助教授 酒井 啓司[代表者], 助手 美谷 周二朗
コヒーレント後方散乱や拡散光波スペクトロスコピー,超音波複屈折法など,ミクロな不均一系の構造とダイナミクスを調べるための新しい光散乱法の開発,およびこれを用いたエマルジョン,コロイド分散系などの不透明な系の研究を行っている.本年度は,溶媒中に分散している楕円球状コロイド粒子が特異な配向緩和現象を示すことを超音波複屈折スペクトロスコピー法によって見出した.現在この現象を粒子の回転と周囲の流れ場の相互作用を考慮して定量的に説明することを試みている.また光ピックアップ法を用いて水/界面活性剤/油が形成するマイクロエマルジョン系の界面測定を行ない,温度と共に界面エネルギーが消滅する界面臨界現象の観察に成功した.現在その臨界異常性について考察を進めている.

2次元凝集体の相転移と臨界現象の研究
助教授 酒井 啓司[代表者],高木研 大学院生 吉武裕美子,酒井研 大学院生 平岡良彦
界面活性剤分子や液晶性分子が液体表面に形成する薄膜は,環境に応じて相転移を起こす.この相転移について,レーザー光による非接触・非破壊観察を行うとともに,薄膜を2次元流体とみなすモデルによる説明を試みている.本年度は液体表面に形成される可溶性単分子膜が,動的な圧縮過程によって示す相変化を相関リプロン光散乱法によって観察した.その結果,2次元膜の圧縮過程において平衡状態では実現できない新しいタイプの相転移現象の可能性を見出した.

セラミックス基複合材料のクリープおよび疲労機構(継続)
助教授 朱 世杰
セラミックス基複合材料はモノリシックなセラミックス材料にくらべ,格段に靭性などの強度特性が改善されるため,有望な高温構造材料として,一部ではすでに実用化が進められている.しかし,実使用環境したではミクロな損傷の累積や酸化損傷により,特性の劣化が生じ残存寿命に影響を与えるという問題がある.ですから,使用時に複合材料中に生じた損傷を定量的に評価し,劣化や残存特性を知り,材料を安全に使いこなす技術の早期の確立が強く求められている.本研究では,SiC/SiC複合材料のクリープおよび疲労試験およびその機構について巨視的ならびに微視的に観察し,微視組織的パラメ−タと力学的特性の関係を確立することである.

金属基複合材料のクリープ変形機構(継続)
助教授 朱 世杰
ナノサイズの粒子およびミクロサイズのセラミックス繊維など強化AlおよびCu基複合材料を用い,引張クリープ試験を行い.高温クリープ変形はしきいクリープ理論より説明し,温度の上昇に伴い,しきい応力は存在しない現象について研究している.その現象について転位は微細粒子から脱離の非熱活性化機構から熱活性化機構へと変化するというモデルを提案する.提案したモデルを利用してクリープひずみ速度を予測する.予測値は実験データと一致することを証明する.

プラズマ溶射熱遮蔽コーティング材料の引張り損傷進展挙動(継続)
助教授 朱 世杰
プラズマ溶射熱遮蔽コーティン材料中のクラックと破壊挙動を,サンドイッチ型試験片を用いて一方向引張り応力下で光顕その場観察を行って調べた.トップコート内に初期クラックが発生し,界面に垂直に進展することがわかった.クラックの数は引張りひずみの増加にともなって急激に増加した後停滞した.その後,クラックはトップコート/ボンドコート界面を通り抜けボンドコート内に進展した.クラックがボンドコート/サブストレート界面に到達したとき界面の剥離が生じた.この破壊挙動を説明するモデルを提案した.

ナノコーティングの損傷評価および寿命予測(継続)
助教授 朱 世杰[代表者], 教授 香川 豊
力学特性および耐酸化性評価方法および技術を開発し,高温で,応力その他の使用環境による過酷な負荷サイクルを含む実使用環境を模擬し,寿命や劣化に及ぼす物理的,化学的因子を定量的に取り扱うことが可能な評価装置を設計・試作する.これにより,現用評価システムよりも短時間で評価可能なシステムを構築する.他方,長時間使用環境模擬試験による基準データも取得し,加速試験との比較検討を行う.これらを通して短時間で劣化や寿命の予測を可能にする総合的なシステムの実現を目指す.

大損傷許容性を有する繊維強化複合材料によるセラミックス材料の新しい表面保護法(継続)
助教授 朱 世杰[代表者], 教授 香川 豊
繊維強化セラミックスの持つ大きな損傷許容性を利用して,薄い複合材料をセラミックスの表面に従来のコーティング材料のかわりに用い,表面の保護を行うメリットを明らかにする.これを通して,脆く損傷を許容しないセラミックス表面に損傷を許容するセラミックス基複合材料を設け,荷重の負担(強度)はセラミックス基材,損傷に対する抵抗は表面の複合材料で受けもつという機能分担を図った材料の可能性を検証する.

海中工学研究センター

海事の安全に関する研究
教授 浦 環
海難事故は,当事者のみならず,第三者にも大きな影響を及ぼす.タンカーの衝突による原油の流出はその代表である.流出するのは貨物のみならず,燃料油も問題である.ハードウェアとしての船舶,船具,運行者,あるいはそれを取り巻く国際規則は,こうした海洋環境の維持に関係する.これらの大きなシステムを健全に維持するには,旧態然とした考え方ではできることが限られる.そこで,人的な要因の究明と除去や旗国の管理を含めた新たな海事の安全に関する枠組みを研究している.具体的にはBridge Resource Management の概念を安全面から見直している.

高度な知的行動をおこなう海中ロボットの研究開発と海域展開
教授 浦 環[代表者], 教授 浅田 昭, 客員教授 高川 真一,教授(東大)玉木賢策,教授(東北大学)藤本博巳,教授(北海道大学)蒲生俊敬, 助教授 藤井 輝夫, 助手 能勢 義昭,技術官 坂巻隆,学術研究支援員 杉松治美,民間等共同研究員 小原敬史,浦研 大学院学生 金岡秀
これまでに開発してきた海中ロボットの成果を踏まえて,深度4,000mの高い水圧環境下にある深海を潜航し,熱水地帯を観測することのできる高度に知能化された信頼性の高い小型海中ロボットの研究開発をおこなっている.ロボットは海底観測ステーションとしての役割も期待されており,このための深海下でのドッキング機能等についての研究もおこなっている.今年7月にはロボットのハードウェアおよび基本ソフトウェアが完成,同月駿河湾および佐渡沖での潜航をおこない,さらに12月には沖縄石垣島南方黒島海丘にて4回潜航した.これらの実海域試験による工学的成果を今後の深度4,000m級の熱水地帯でのロボット展開に活かすべくデータ解析等を進めている.

海中ロボットの自律航行に関する基礎研究
教授 浦 環[代表者], 助教授 藤井 輝夫, 助手 能勢 義昭,技術官 坂巻隆,研究員 川口勝義,研究員 黒田洋司,研究員 石井和男,研究員 近藤逸人,浦研 大学院学生 金岡秀,浦研 大学院学生 柳善鉄,浦研 大学院学生 野瀬浩一,浦研 大学院学生 欒剣,浦研 大学院学生 佐藤哲郎,浦研 大学院学生 坂田雅雄,浦研 大学院学生 巻俊宏,浦研 大学院学生 矢野正人,大学院外国人研究生 Thornton Blair,大学院外国人研究生 Epars Yann,浦研 研究実習生 川崎俊嗣,浦研 研究実習生 栗本陽子,浦研 研究実習生 中谷武志
海中ロボットのより高い自律性を確保するためには,取り扱いやすいテストベッドが必要である.テストベッドは浅い海域やプールでの航行試験を通じて,ソフトウェアが開発される.外環境に対する多くのセンサを持ち,運動自由度の大きな推進器群を装備する海中ロボットを製作し,その上に分散型運動制御システムを構築して海中ロボットの自律性の研究を行っている.自律性の研究の一環として,画像を利用した高度な行動機能の開発を行っている.また,複数ロボットの群行動や遠隔操縦をシュミレーションするシステムによるロボットの行動研究をおこない,開発した複数のテストベッドロボットを用いて協調作業やドッキングシステムの水槽試験をおこなうなど,複数ロボット群行動の研究も進めている.

画像を用いた海中での行動決定機構に関する研究
教授 浦 環[代表者], 助教授 藤井 輝夫,研究員 近藤逸人,浦研 大学院学生 柳善鉄,浦研 大学院学生 野瀬浩一
ロボットの視覚を用いた信頼できる行動決定機構とフイードバック機構を研究開発している.画像情報は多くの情報を含むが,水中では,マリンスノーの散乱や,照明むらなど処理しなければならない外乱が多い.しかし,ケーブルのトラッキングや魚類の追跡など画像を用いなければできないミッションも多い.ここでは,自律型海中ロボットのテストベッド「Twin Burger 2」と「Tri-Dog 1」を使ってこうしたミッションを確実に遂行できるシステムを構築している.

ニューラルネットによるシステム同定の研究
教授 浦 環[代表者],研究員 石井和男
複数入力複数出力で,非線形性が強く,相互干渉の大きいロボットシステムをニューラルネットによって実現する手法を開発している.本システムを用いて航行型海中ロボットの定高度維持航行あるいは有索潜水機の運動の制御を行っている.

海中ロボットによる港湾施設の観察
教授 浦 環[代表者], 助手 能勢 義昭,技術官 坂巻隆,研究員 石井和男,研究員 近藤逸人,浦研 大学院学生 柳善鉄,浦研 大学院学生 巻俊宏
港湾における海中施設を自動的に観察点検するシステムを「Tri-Dog1」をプラットフォームとして研究開発している.そこから得られたデータを用いて3次元GISを形成し,地震時における復旧に役立てようとしている.ロボットを釜石港に潜航させ,ケーソンの壁面を観察することをミッションとするプロジェクトをおこない,ロボットに経験を積ませている.

自律型海中ロボットを用いた鯨類観測システムに関する研究
教授 浦 環[代表者], 客員教授 バール ラジェンダール,助教授(東大)鈴木英之,主任研究官(水産工学研究所)赤松友成, 助手 能勢 義昭,技術官 坂巻隆,研究員 浅川賢一,研究員 白崎勇一,浦研 大学院学生 欒剣,浦研 大学院学生 坂田雅雄,浦研 研究実習生 中谷武志
鯨類の多くは鳴音と呼ばれる声を出す.ザトウクジラの雄の鳴音は複雑なフレーズを形成しており,マッコウクジラの鳴音はクリック音と呼ばれる.それぞれの鯨類に特有な鳴音をそれに適合する手法により解析し,個体識別をおこない,位置を探査し,自律型ロボットが個々のクジラを追跡して観測するためのリアルタイムの自動観測システムの構築をおこなっている.2003年4月には小笠原海域でザトウクジラの鳴音データを収集し個体識別の研究を推進した.またロボットを用いたマッコウクジラの追跡調査の前段階として,小型船2隻に搭載可能な小型のハイドロフォンアレーシステムを構築し,8月に小笠原海域で展開し,高度のコンピュータ処理技術を用いて複数頭のマッコウクジラの航跡および深度情報の解析を進めている.

音響処理装置を用いた揚子江カワイルカの生態の研究
教授 浦 環[代表者], 客員教授 バール ラジェンダール,主任研究官(水産工学研究所)赤松友成,浦研 大学院学生 矢野正人
中国に生息する揚子江カワイルカ(Baiji)は絶滅の危機に瀕しているが,その生態についてはほとんど知られていない.本研究では,Baijiがエコーローケーションのために発する高周波クリック音を解析し,個体を探索・追跡し,その生態を観測するためのリアルタイムの自動観測システムの構築をおこなう.これまで,半自然保護区で録音されたBaijiの音響データからクリック音を抽出し音響解析し,そのユニークな水中行動を解明してきている.解析結果をもとに,今後はインテリジェントブイシステムを用いたBaijiの自動観測と位置測定手法を開発し,実際に揚子江に展開し観測活動をおこなう予定である.

湖沼調査ロボットを用いた湖沼環境調査システムに関する研究
教授 浦 環[代表者],技術官 坂巻隆,研究員 黒田洋司
生活に密着した湖沼の環境調査にあたっては,移動ロボットをプラットフォームとして用いて自動的かつ定期的に調査をおこなえば,空間的時間的な分解能が向上する.本研究では湖沼調査を専用とする自律型潜水ロボットの研究開発を琵琶湖研究所他と共同でおこない,2000年3月には琵琶湖専用ロボット「淡探」が完成.これを用いて継続的に琵琶湖で観測をおこないデータを収集,得られたデータを基に新たな工学的湖沼環境調査システムの構築を研究開発している.

深海調査ロボットの研究開発
教授 浦 環[代表者], 助教授 藤井 輝夫, 助手 能勢 義昭,技術官 坂巻隆,研究員 浅川賢一,研究員 近藤 逸人,研究実習生 栗本陽子
大深度海底に沈没した船舶や航空機を簡便に探査できるロボットシステムを,海上技術安全研究所および民間の研究機関と共同で開発している.当面のターゲットとしては2500m級の大深度に沈没した船舶の主船体部分の探査を想定.ケーブルに拘束されるROVは複雑な形状を持つ観測対象物には適さないが,情報の少ない未知の環境下においてロボットが全自動で行動するのは極めて困難である.そこで機能性を重視した小型軽量システムを選択,音響通信を利用した遠隔操縦によりテレビカメラで観測をおこなう半自動プロトタイプロボット「 Tam-Egg1」号が2003年1月に完成.水槽等でのオペレーションをおこない,さらなる機能向上を図っている.

粉粒体の輸送の研究
教授 浦 環[代表者],協力研究員 太田進
微粉精鉱・微粉炭・粉炭などの輸送は穀類などのばら積み貨物輸送とは同等に扱えない.こうした粉粒体の動力学ならびに安全でかつ経済性を重視した輸送工学の研究を,基礎実験を基として実験的・解析的におこない,ニッケル鉱の安全輸送に関するガイドラインなどを作成した.また,新しい貨物を液状化物質として扱うべきかどうかの簡易試験法を開発し,IMO(国際海事機関)で議論を進めている.2001年8月には生産国である南アフリカおよびザンビアを訪問し,問題点を追求した.

船舶のライフサイクル・アセスメント
教授 浦 環[代表者],浦研 大学院学生 加藤陽一
船舶は,NOxを大気中に放出する大きな要因である.燃料消費も多大であり,解徹は多くの産業廃棄物を生む地球環境のなかで,船舶あるいは船舶輸送がどのように影響を与えているか,他の輸送手段と比較すると優劣はどうか,あるいは,どう改良すべきかなどは,船舶の一生を通じた評価が必要である.これを環境に関する思想の面から研究している.

海底測地技術の開発
教授 浅田 昭[代表者], 助手 望月 将志,主任研究官(海上保安庁) 藤田雅之,主任研究官(海上保安庁) 矢吹哲一朗,研究官(海上保安庁) 佐藤まりこ,浅田研究室 技術官 吉田善吾
地震・津波防災対策研究の一環として,海底での長期地殻変動観測を目的とする海上保安庁との共同観測研究プロジェクトを実施.東海,相模,三宅西方,房総から釜石沖の水深400〜2000mの海底に,新開発の海底音響基準局システム14局を設置し,キネマティックGPSとリンクした高精度の海底音響測地手法の開発研究を行なっている.

海底地形の計測技術の高度化
教授 浅田 昭[代表者],浅田研究室 技術官 吉田善吾,浅田研究室 大学院生 小山寿史
航海,海域管理,港湾工事,海底ケーブルやパイプラインの敷設,海洋資源調査,ダム・河川の浸食・堆砂の把握,海洋の地震,津波,火山の防災対策,海洋地球科学などの利用に即した,海底地形調査,解析の研究.AUV搭載型地形計測ソーナーの開発,合成開口ソーナーの開発,マルチビーム音響測深技術の高度化の研究を行なっている.

海底地形情報の解析,利用法
教授 浅田 昭[代表者],浅田研究室 研究員 韓 軍
地形・音響画像情報のビジュアル解析,データ管理手法,地形解析手法の高度化.航海,漁労,海洋工事の新支援システムの開発を行なっている.

トルクバランスケーブルの捻れに関する理論的研究
客員教授 高川 真一
内外2層を互いに逆方向に撚って捻れトルクをバランスさせた長大ケーブルが大水深遠隔操縦海中ロボットに用いられるが,このケーブルは滑車を通ると概ね1000mにつき数回ないし数十回の割合で回転することが認められている.そして逆に引くと回転方向も逆になる.この原因は過去数十年にわたって皆目見当がつかなかったが,本理論研究の結果,滑車でケーブルが曲げられると強度メンバーの配置が変わり,その軌道の長さが変化するためであることが判ってき た.そしてこの関係を定式化して計算値と実測値を比較した結果,両者は非常によく一致した.この成果を下に,全長7,000mのケーブルを製作中であるが,実験室レベルのサンプル試験の結果ではほとんど捻じれないことを確認している.また併せて,深海用長尺ケーブルは何度も上げ下ろしを繰り返しているとあるとき突然キンクすることが見られるが,この原因がまさにこの滑車による強度メンバーの配置変化が蓄積されたものであることが見出され,従来は経験的に必要として行われていたケーブルの無負荷吊り下ろしによる捻じれ取りは理論的にも正しいことが見出された.

セラミクス製耐圧球体による浮力材の開発
客員教授 高川 真一
現状の大水深用の浮力材は直径0.1mm程度のガラスマイクロバルーンを樹脂で固めていて比重は0.5〜0.6程度であるが,より軽比重のものが求められており,この達成のために直径10cm程度のセラミクス球を用いる方法を検討している.過去に実施されたことがあるが,誘爆の恐れからまだ実用化されていない.今回は試作した上で形状(局部曲率半径と板厚)を多数の点で3点法等により丹念に計測した結果,約15年前に試作されたものと比べて曲率半径や板厚のムラが非常に小さくできるようになってきたことを見出した.また併せて,肉眼観察上は分からないがこの計測の結果,焼成過程で必要となる固定治具の跡もこの形状計測から見出されており,よりきれいな真球を目指して加工法等の検討を進めることとしている.

潜航中の複数マッコウクジラのクリック音解析による個体識別および追跡の研究
客員教授 バール ラジェンダール[代表者], 教授 浦 環,浦研 大学院学生 坂田雅雄,浦研 研究実習生 中谷武志
2003年8月小笠原海域において,小型ハイドロフォンアレーを搭載した2隻の船を用いて,マッコウクジラのクリック音のリアルタイム個体認識および追跡システム構築のための実験をおこなった.船間の基線は,RTK-GPSおよびトランスポンダによって得ることができる.実験結果の解析により,潜航中の複数頭のマッコウクジラの深度および航跡について情報を得つつある.

鳴音モデルによるザトウクジラの個体識別の研究
客員教授 バール ラジェンダール[代表者], 教授 浦 環,浦研 大学院学生 欒剣
既存の音響データに加えて2003年4月小笠原海域において取得した新しい音響データをも用いて解析をおこない,ザトウクジラの個体識別のための鳴音モデルを開発した.モデルのパラメータには既存の音響データを活用し最適化をおこない,これを最新の音響データサンプルでテストした結果,85%以上の確率で同一個体の識別に成功した.

音響記録に基づく揚子江カワイルカの水中行動の研究
客員教授 バール ラジェンダール[代表者], 教授 浦 環,浦研 大学院学生 矢野正人
ハイドロフォン一個により録音した揚子江カワイルカ(Baiji)の音響記録を解析することでBaijiの水中行動を解明している.Baijiのクリック音の直達音と表面反射音の時間差を解析した結果,潜水行動,規則的な行動パターンが明らかになった.クリックの頻度が増える時には,Baijiは湖底近くにおり,首振り運動をおこなっている.さらに,Baijiのクリック音の周波数の変動は身体的活動の変化に関連すると思われる.

反応分析用マイクロチップにおける光デバイスの集積化
助教授 藤井 輝夫[代表者],博士研究員 Serge Camou, 教授 藤田 博之, 教授 荒川 泰彦
生化学反応や分析の検出には,一般に蛍光や発光など光を用いた検出手法が用いられる.反応や分析に用いるマイクロチップ上に,光源や光検出の機能を有するデバイスを集積化することができれば,従来,外部に用意しなければならなかった蛍光観察のための大規模な装置類を必要とせず,ワンチップで蛍光の励起及び観察を行うことが可能となる.本研究では,こうした光デバイスをマイクロチップ上に集積化することを目的として,チップの材料であるPDMSによるマイクロレンズ構造の製作や有機半導体材料を用いた光源の集積化について検討を進めている.

微小スケール反応・分析システムに関する基礎研究
助教授 藤井 輝夫[代表者],山本 貴富喜,技術官 瀬川茂樹
マイクロファブリケーションによって製作した微小な容器や流路内を化学反応や分析に利用すると, 試薬量や廃棄物の量が低減できるだけでなく, 従来の方法に比べて高速かつ高分解能の処理が可能となる. 本研究では, そうした処理を実現する反応分析用マイクロチップの製作方法の基礎研究を行うと同時に, 微小空間に特有の物理化学現象について基礎的な検討を行っている.

生化学反応用マイクロリアクターの開発
助教授 藤井 輝夫[代表者],山本 貴富喜
マイクロリアクターはデッドボリュームが小さいために微量のサンプルで反応が行えるだけでなく, その製法上, ヒータやセンサデバイスなどの集積化やリアクターそのものの並列化が容易であるという特徴を持つ. こうした特徴を活かして, ポストゲノムシーケンス時代に要求される大量の遺伝情報の効率的な翻訳を行うシステムとして, 無細胞系の蛋白質合成を行うマイクロリアクターの開発を進めている.本年度は,温度制御性能を向上させた改良型のマイクロリアクターを製作し,蛍光蛋白質の合成に成功した.

マイクロ構造を用いた真正粘菌変形体における振動現象の観察と解析
助教授 藤井 輝夫[代表者],協力研究員 高松敦子
真性粘菌変形体には, その固有の性質として原形質流動に由来する変形体厚みの振動現象が見られる. マイクロ構造内において粘菌変形体を培養し, その形状をパターニングすることによって, 複数の変形体間の結合強度や情報伝達の時間遅れのパラメータを調節することができる. 本研究では, それらのパラメータを変化させることによって, 複数の変形体間の振動の相互引き込み現象を観察すると同時に, 高次の非線形振動子結合系のモデルとして, その解析を進めている.

マイクロチップを用いた現場微生物分析システムの基礎研究
助教授 藤井 輝夫[代表者],山本 貴富喜,大学院学生 福場辰洋,研究実習生 松永真之,研究員 長沼 毅(広島大学)
海中あるいは海底面下に存在する微生物の性質を調べるためには, サンプリングした海底泥を地上で分析するだけでなく, 例えば現場での遺伝子の発現状態を把握することが重要である. 本研究では, マイクロチップによる分析技術を応用して, 海底大深度掘削孔内や自律海中ロボットなどの移動プラットフォームに搭載可能な小型の現場微生物分析システムの実現を目指している. 本年度は, フロースルー型遺伝子増幅(PCR)反応デバイスの圧力試験装置を製作,導入した.

マイクロチャネル構造における細胞培養に関する研究
助教授 藤井 輝夫[代表者],研究機関研究員 Eric Leclerc, 助教授 酒井 康行, 教授 畑中 研一,博士研究員 Serge Ostrovidov
マイクロチャネル構造を用いると,従来ペトリディッシュ上で行ってきた培養系に比べて,栄養供給や酸素供給のための流れを強制的に与えることができるので,細胞の外部刺激に対する応答の観察や培養による組織構築などに利用できる可能性がある.本研究では,PDMSを材料としたマイクロチップ上にチャネル構造や膜構造を形成し,その内部で各種の細胞組織を培養する方法について検討を行っている.

分子計算用マイクロ流体デバイスの研究開発
助教授 藤井 輝夫[代表者],大学院学生 金田祥平,研究実習生 茂木克雄,助教授(東工大)山村雅幸,教授(東大)萩谷昌巳
分子計算は主としてDNAを情報担体とし,分子そのものの超並列性を利用して,従来の計算手法では計算が困難であった問題を解こうとする新しい計算パラダイムである.本研究では,これまで試験管等を用いて行われてきた計算のための反応や分離の操作をマイクロチップ上で実現することによって,分子計算の新しい実装技術の開発を試みている.

マイクロチップを用いた現場化学センシングに関する研究
助教授 藤井 輝夫[代表者],大学院学生 高木尚哉 ,大学院学生 福場辰洋,助手(京大)岡村慶
海水中に含まれる微量金属イオンを現場で計測することは,深海の熱水活動を把握する上で極めて重要である.本研究では,マイクロチップ技術を用いて,そのような計測を実現し,従来のシステムに比べて小型かつ多項目の計測が可能なデバイスの実現を目指している.具体的には,マンガンイオンをマイクロチップ上で化学発光によって計測する方法などについて検討を進めている.

電界効果トランジスタを用いた現場型pHセンサの特性に関する研究
助教授 藤井 輝夫[代表者],研究実習生 円谷晃司,研究員 下島公紀(電中研),研究員 許正憲(海洋科学技術センター),大学院学生 福場辰洋,大学院学生 高木尚哉,大学院学生 松永真之
海水のpHを現場で計測可能なセンサを用いれば,深海から噴出する熱水プルームの構造や海洋隔離されたCO2の拡散状況などを把握する上できわめて有用なデータが得られる.本研究では,電界効果トランジスタ(ISFET)を用いた現場型pHセンサについて,深海における性能を評価する目的で,その温度と圧力に対する特性変化を詳細に調べている.

マイクロ流体デバイスにおける単一細胞のインピーダンス計測
助教授 藤井 輝夫[代表者],客員研究員 Vincent Senez,博士研究員 Erwan Lennon,協力研究員 高松敦子
半導体微細加工技術を利用すると数十ミクロン〜百ミクロン程度のサイズの流路を製作することができるが,細胞のサイズは概ね十ミクロンから数十ミクロンであるため,このような流路を用いれば細胞一つ一つを独立に流路内に導入することができる.本研究では,集積化した電極構造を用いて,微小流路内に交流電界を形成し,単一細胞の単位でインピーダンス計測を行うことにより,細胞の性質や状態を見分ける方法について検討を進めている.

マイクロ波リモートセンシングによる海面計測
助教授 林 昌奎
海面は海上風,波浪,潮流などの環境要因により常に変動する.海面計測には主に,定点ブイ,漂流ブイ,観測船あるいは海底設置超音波機器など現地設置型計測機器が用いられている.しかし,現地設置型計測機器の設置・運用には,気象および地理条件による様々な制約や困難が伴う.本研究では,自然条件に制約されることなく海面計測が可能な能動型マイクロ波センサーであるマイクロ波散乱計,合成開口レーダーを用いたリモートセンシングによる海面計測手法の開発を行っている.現在は,実験水槽にて生成した模擬海面によるマイクロ波散乱の直接計測,数値生成海面を用いたマイクロ波散乱の理論解析を行い,海面生成要因とマイクロ波散乱との因果関係の解明を行っている

氷海域における流出油拡散・移動シミュレーションモデルの開発
助教授 林 昌奎[代表者],教授(東大)山口一
海氷が水面を覆う氷海域での流出油は,油が海氷の下に隠れるなどにより,その流出範囲の特定及び回収は非常に困難である.氷海域での流出油は流氷と共に移動し,その範囲を広げる.回収のは長い時間を要し,その間,周辺海域の環境に及ぼす影響は計り知れない.氷海域における流出油の中長期拡散・移動シミュレーションモデルを開発した.

大水深ライザーの動的応答特性に関する研究
助教授 林 昌奎[代表者],教授(東大)鈴木英之
ライザーは比較的単純な構造物であるにもかかわらず,作用する流体外力,構造自体の応答特性も一般に非線形である.また,外部流体および内部流体は,密度や流速さらには構造の変形に応じて複雑な力を構造に及ぼす.これらの問題は,対象となる水深が深くなりライザーが長大になるに従い,強度が相対的に低下したり,ライザー自体が相対的に柔軟になり動的挙動が顕著になることにより,強度設計,安全性確保の観点からより重要になる.そのため,これらの応答特性を正確に把握し,諸課題を解決することが大水深掘削システムを実現する上で重要となる.

エアクッションに支持浮体の応答特性に関する研究
助教授 林 昌奎[代表者],教授 (日大) 増田光一
浮体の弾性応答低減方法として浮体下面に空気室を設けエアクッション効果を利用する方法がある.エアクッションに支持浮体では浮体下面を空気層とし密閉した自由表面を持たせることにより,波浪が自由表面を伝わり浮体後方まで透過させることができ波漂流力を低減させる.本研究では,エアクッションに支持浮体の空気室特性と浮体の応答との関係を調べている.

マイクロメカトロニクス国際研究センター

半導体微細加工による並列協調型マイクロ運動システム(継続)
教授 藤田 博之[代表者],助手 安宅 学, 外国人客員研究員 イブ アンドレ シャピス・大学院学生 福田 和人
半導体マイクロマシーニング技術の利点の一つである, 「微細な運動機構を多数同時に作れる」という特徴を生かして, 多数のマイクロアクチュエータが協調してある役割を果たす, 並列協調型マイクロ運動システムを提案した. アレイ状に並べた多数のアクチュエータでシリコン基板の小片を運ぶことができる. 制御回路とアクチュエータを含むモジュールを平面的に並べ, 物体の形状による分別を行う機構の設計と制御法と制御アルゴリズムを検討した. 流体マイクロアクチュエータのアレイを歩留まりよく作るプロセスを考案し,搬送動作を確認した.今後は,別途作ったVLSIチップと一体化することを試みる.

DNAピンセット
教授 藤田 博之[代表者],藤田研大学院学生角嶋邦之,助教授(香川大)橋口原
半導体マイクロ加工により10nm程度に尖った針端が対向する構造にマイクロアクチュエータを一体化したツインナノプローブを作った.それを用いて水中のDNA分子を電界の力で引き寄せて,化学的に固定するDNAピンセットを実現した.DNA分子の束を捕獲して,電子顕微鏡で観察した.

2次元光スキャナー
教授 藤田 博之[代表者],藤田研博士研究員NicolasTiercelin
5〜10mm角の鏡を,直交する2軸回りに回転振動する構造をマイクロマシーニングで作った.光を数十度の偏向角で2次元に走査できる.光センサーや自動車衝突防止用レーザレーダなどの応用が考えられる.

細胞操作用マイクロシステム
教授 藤田 博之[代表者],ティクシェ アニエス,藤田研大学院生田宗勳
チップ上にマイクロ流路や電極を作り,その中で細胞を培養したり,遺伝子注入などの細胞操作を行う研究を進めている.

シリコンナノワイヤの製作とバイオ応用
教授 藤田 博之[代表者],ティクシェ アニエス
単結晶シリコンの異方性エッチングで容易に数十nmの太さを持つナノワイヤを作る特許を開発をした.このナノワイヤを生体分子モータに付加し,その動きを観察する研究を進めている.

生体分子モータによる液中マイクロ搬送デバイス
教授 藤田 博之[代表者], 助教授 竹内 昌治,藤田研大学院生横川隆司
キネシン/微小管系のリニア生体分子モータを,マイクロマシンに付加し,水中で微小物体を個別に運ぶことに成功した.エネルギー源であるATPの濃度を変えて,動きを制御した.

静電マイクロモータの動作解析
教授 藤田 博之[代表者],藤田研受託研究員薗部忠
シリコンの深いエッチングで作った,静電ワブルモータの動作特性について,等角射像を用いた数値解析手法を開発した.電極の数ピッチ及び電圧の印加方法について最適化を試みた.

超電導マイクロアクチュエータ
教授 藤田 博之[代表者],藤田研技術専門職員飯塚哲彦
超電導体上に浮上するmmサイズの永久磁石を,微小な配線に流す電流で動かすマイクロアクチュエータを研究している.

ナノ粒子のバイオ応用
教授 藤田 博之[代表者],藤田研外国人客員研究員PhilippeCoquet
金属のナノ粒子を細胞に付加もしくは注入することで,細胞にラベルを付ける研究を行っている.ラベルした細胞の動きを,ナノ粒子のイメジングにより追跡することを目標としている.

ウェリーボンディングによるマイクロバルブの製作
教授 藤田 博之[代表者],藤田研受託研究員AlexisDebray
容器内の圧力と外気圧の差によって自動的に開閉するマイクロバルブを,シリコンの深いエッチングとウェリボンディングにより作る方法を研究している.

マルチナノプローブによるナノリソグラフィー
教授 藤田 博之[代表者],藤田研博士研究員MuratGel, 藤田研大学院生角嶋邦之
マイクロマシーニング加工で作った多数のAFM(原子間力顕微鏡)アレイを用いて,基板やその上の自己組織化単分子膜の電気酸化によるナノリソグラフィーを研究している.

ナノ振動子とマルチカンチレバーアレーの作製
助教授 川勝 英樹
シリコンの異方性エッチングを用いて探針を有する微小なカンチレバーを作製した.小型化により固有振動数を高めるとともに,使用目的に応じたバネ定数を実現することに成功した.質量や力の検出分解能を高める上で重要な,振動子のQ値を向上させるための処理方法や,振動子の設計を行った.

シリコンマイクロマシニングによる微小振動子の製作に関する研究
助教授 川勝 英樹
100MHzレンジの高い周波数で振動するメカニカル共振器をシリコンマイクロマシニングで製作する方法を検討.

ナノメートルオーダの3次元構造物の動的機械特性の計測
助教授 川勝 英樹
10nmオーダの3次元構造物の固有振動数や振動のQ値を光学的方法により計測する方法の研究を行っている.現在100MHz,10pmの計測が可能で,現在,1GHzまでの計測を計画している.

ナノメートルオーダの3次元構造物の特性評価と応用
助教授 川勝 英樹
ナノメートルオーダの機械振動子などの. 3次元構造物の機械・電気特性の測定と. その応用の研究を行っている. そのために. 走査型電子顕微鏡内にマウントする走査型プローブ顕微鏡を実現している.

ナノメートルオーダの機械振動子による質量と場の計測
助教授 川勝 英樹
サブミクロンの機械振動子を作製し,それをAFMの探針に用いて力や質量の検出を行う.現在,大きさ2ミクロン,バネ定数10N/m程度,固有振動数40MHz,Q値8000のものを作製している.計測には,高真空用ヘテロダインレーザドップラー振動計を組み込んだAFMヘッドを用いた.

100万本の原子間力顕微鏡カンチレバーのパラレル検出の研究
助教授 川勝 英樹
各カンチレバーと基板の構成するフィーゾー干渉計マイクロキャビティの輝度をCCDカメラ等の受像器に導くことにより,各カンチレバーの変位や振幅を計測する研究を行っている.液中応用を目的に,倒立顕微鏡にカンチレバーアレーと光学顕微鏡,干渉計を組み込んだ.

結晶格子を基準としたリニアエンコーダ
助教授 川勝 英樹
走査型トンネル顕微鏡や. 走査型力顕微鏡を用いて結晶の周期性を読み出してリニアエンコーダのスケールとして用いる研究を行っている. 大気中において黒鉛の結晶周期を反映した鋸波形を接触モードの走査型力顕微鏡により読み出しながら,同時に結晶を固定した試料台の変位をレーザー干渉計で測定したところ,レーザー半波長分の変位に対応する鋸波の数は,黒鉛の格子間隔から計算される数よりも3割多かった.この違いの主な要因は格子列の読み外しと考えている.幅を持った範囲を観察することにより,格子列の読み外しを検出・補正した上で,精度検証を行う予定である.

結晶格子を基準とした位置決め
助教授 川勝 英樹
結晶格子の規則正しい原子のならびを走査型トンネル顕微鏡の探針でサーボトラッキングすることによって. 結晶構造を2次元的な動きとして取り出し. xyステージの位置決め制御に用いることが可能となる. 現在. ミクロンオーダの範囲での変位制御を目指している.

走査型力顕微鏡の探針の軌跡の計測
助教授 川勝 英樹
本研究は走査型力顕微鏡探針のxyz空間内での動きを原子レベルの分解能で求めることを目的としている. 装置構成としては. 光てこ2個を用いてカンチレバーの異なる2点での傾きを求めた. その結果. 探針の試料面内方向の変位と法線方向の変位を分離することが可能となり. より正確な探針の軌跡を求めることが可能となった. この測定法は原子レベルの摩擦現象を可視化するのに有効であると伴に. 走査型力顕微鏡を用いた形状計測の精度向上に役立つものである.

走査型力顕微鏡のカンチレバーのねじれ固有振動の自励を用いた探針の面内位置変調と,それによる散逸のマッピング
助教授 川勝 英樹
走査型力顕微鏡のカンチレバーのねじれ振動を自励により励起し,それにより探針の面内位置変調を実現した.一定の加振力でねじれ振動を励起し,ねじれ量を検出することにより,試料の場所によるダンピングを検出した.ねじれの自励を実現したことにより,固定周波数励起による,コントラストの反転等の問題点が解消された

機能性自己組織化単分子膜を用いたマイクロ・ナノコンタクトプリンティング
助教授 金 範
最近, サブマイクロメータースケールでのパターニングは, マイクロ電子回路, デジタル記憶媒体, 集積化マイクロ・ナノシステム, バイオ・有機材料デバイス等の数多くの応用にとって重要である.マイクロコンタクトプリンティング(μCP)は, 多様性を持ち, スループットが高く, かつ低コストにできるmaster & replicationテクニックとして, 最近関心を集めている. 本研究は, 機能性自己組織化単分子膜(Self-assembled Monolayer: SAM)をサブマイクロメータースケールでパターニングするための,新しいマイクロ・ナノコンタクトプリンティング法を開発する.

機能性自己組織化単分子膜を用いた新しいナノパターン,ナノ構造の製作に関する研究
助教授 金 範
本研究の目的は,高い装置などを使えずにより簡単な方法で機能性自己組織化単分子膜(Self-assembled Monolayer:SAM)をサブマイクロメータースケールでパターニングする新しい方法を提案し,その方法を用いてナノ構造を製作,さらにナノ機構自体(例え,ナノカンチレバー)をツールとして各種の生体蛋白分子らの結合や反応を直接観察できるバイオセンサーを製作することである.

静電スプレーによるタンパク質薄膜とSU8カンチレバーを用いた新しいバイオセンサ
助教授 金 範兌代表者],教授 (東大)樋口俊郎,研究員 (理研)山形豊
タンパク質とそのリガンドの結合を測定するためにエレクトロスプレーデポジション(ESD)により形成されたタンパク質薄膜とSU8で形成されたカンチレバーを融合した新たなバイオセンサを提案する.カンチレバー上にタンパク質薄膜の応力がリガンドとの相互作用により変化し,これをカンチレバーの曲げとして検出する.本研究では感度向上のためSU-8ポリマーからなる柔らかいカンチレバーを用い,更にESD法による多孔性の厚いタンパク質膜を利用している.

生体細胞を操作,計測するポリマーマイクロプローブ製作に関する研究
助教授 金 範兌代表者],マイクロメカトロニクス国際研究センター, 教授 コラール ドミニク, 教授 藤田 博之
マイクロ流体構造の基板上に構築した,電極を持つポリマーのマイクロプローブアレーを製作し,バイモルフ式熱膨張の駆動により自己位置制御を行い生物細胞を単細胞レベルでCapture,操作し計測(電気的・物理的)するマイクロデバイスの設計や製作に関する研究を行う.

シャドウマスクを用いた多機能マイクロパターニング装置の開発
助教授 金 範兌代表者],マイクロメカトロニクス国際研究センター
マイクロマシン加工を応用した多機能パターンの装置の製作に関するもので,MEMS技術を用いた微細シャドウマスクと多機能噴射システムの設計と製作に関する技術開発を行う.

神経電位計測用フレキシブルシリコンプローブアレイ
助教授 金 範兌代表者], 助教授 竹内 昌治,マイクロメカトロニクス国際研究センター,教授(東大)満渕邦彦,講師(東大)鈴木隆文
活動中の生体からの神経電位計測を目的とした神経電極を,マイクロ加工技術を用いて製作し,その有用性を評価する.特に,体内への埋め込みを前提とし,生体活動に伴う生体組織の形状変化に追従して変形し,長期間安定した神経電位計測・神経への電気刺激入力を,リアルタイムで行うことが可能なデバイスの製作を行う.

マイクロ・ナノ加工技術を利用した膜タンパク質チップ
助教授 竹内 昌治[代表者], 助教授 野地 博行,助手(東大)鈴木宏明
シリコンマイクロマシンニングによって製作した微小な流体デバイス中に人工脂質膜を形成し,膜中に膜タンパク質を融合させチャンネル電流を計測するシステムの研究

タンパク質のマイクロパターニング
助教授 竹内 昌治[代表者],山崎製パン 熱田京子
マイクロマシンニングを利用して,基板上にリフトオフ的にタンパク質をパターニングする研究

リポソームハンドリングのためのマイクロ流体デバイス
助教授 竹内 昌治[代表者],LIMMS研究員 ギヨーム・トレッセ
リポソーム内に機能素子を閉じ込め,マイクロチップ上でハンドリングする

マイクロ流路付フレキシブル電極
助教授 竹内 昌治[代表者],特任講師(東大) 鈴木隆文,大学院研究生 ドミニク・ジグラー
脳や神経へ薬剤を注入し,電気信号を計測するための柔軟な微小電極

「マイクロメカトロニクス国際研究センターの項目を参照」
教授 増沢 隆久

マイクロ放電加工に関する研究(継続)
教授 増沢 隆久[代表者], 助手 藤野 正俊, 大学院学生 中奥 洋, 山口 美賀
数μmから数百μmの寸法領域の三次元的形状加工において, 放電加工は最も高精度で加工できる方法の一つである. 本研究では, 微細軸加工のために当研究室で開発したワイヤ放電研削法(WEDG)をもとに, 超微細穴加工, マイクロ加工・組立システム, さらに3次元的微細形状加工やマイクロ金型への応用に関する研究を行っている.

機械的マイクロ加工に関する研究(継続)
教授 増沢 隆久[代表者],助手 藤野 正俊・外国人協力研究員 Michaela KNOLL
打ち抜き, 切削, 研削等の機械的加工法は生産性, 加工精度ともに優れた方法であるが, 微細寸法の場合は工具の製作, 調整が容易でない. 本研究では, 工具製作を組込んだシステムにより, 数十μmの寸法の打ち抜き, ドリル加工, エンドミル加工, 超音波加工, 研削などの実用化を進めている. また,切削と電気加工の複合システムの開発を行っている.

三次元的微細形状測定法の開発(継続)
教授 増沢 隆久[代表者],外国人客員研究員Jean Bernard POURCIEL・外国人博士研究員 Laurent JALABERT・助手 藤野 正俊
微細な三次元的形状測定の新しい手法として, 電気的接触検知を用いたバイブロスキャニング法(VS法)及びピエゾ抵抗素子を用いた手法(SDAPPLIN法)を開発し, 細穴内部形状測定等への応用研究を行っている.

電解加工を応用したマイクロ加工の研究(継続)
教授 増沢 隆久[代表者],研究員 酒井 茂紀・ 助手 藤野 正俊
パルス電流による電解加工の応用技術として極短パルスを用いたマイクロ3次元形状加工および微細表面の平滑化の研究を行っている.

Hole Area Modulation 法による3Dマイクロ加工
教授 増沢 隆久[代表者],助手 藤野 正俊・外国人客員研究員 Jean Bernard POURCIEL
マスクパターンに加工深さ情報を入れ込んで,単純な操作により三次元形状のマイクロ加工が行える新しい手法,Hole Area Modulation (HAM) 法を考案し,エキシマレーザによる方法と,化学エッチングによる方法の開発を進めている.

マイクロメカトロニクスとフォトニック結晶の融合
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 荒川 泰彦, 教授 藤田 博之,講師 岩本敏,年吉研 大学院学生 肥後昭男
フォトニック結晶中/上で振動する機械的振動子をマイクロマシニング技術で製作し,新しい方式の光変調器を検討する.

MEMS設計のプロセスウィンドウに関する研究
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之,(大日本印刷)橋本克美,年吉研 技官 高橋巧也,年吉研 大学院学生 猿田訓彦,年吉研 大学院学生 肥後昭男
シリコンマイクロマシニング技術を用いて静電アクチュエータを設計する際に非常に重要となるプロセスウィンドウ(プロセス精度)についてCAD等を用いて理論的に考察した.

マイクロマシニングによる光ファイバスイッチ
助教授 年吉 洋[代表者],光伸光学工業 小尾浩士
光ファイバスイッチの実用化に向けて,マイクロマシニングによる静電駆動型のミラーの光学設計と製作を行い,特性を評価した.

静電駆動型マイクロアクチュエータの解析手法に関する研究
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之,年吉研 技官 高橋巧也
数値演算による静電容量の予測を,静電アクチュエータの変位-電圧解析モデルに組み込む手法の研究.

シリコンマイクロマシニングによる微小振動子の製作に関する研究
助教授 年吉 洋[代表者], 助教授 川勝 英樹, 教授 藤田 博之,JST 小林大
100MHzレンジの高い周波数で振動するメカニカル共振器をシリコンマイクロマシニングで製作する方法を検討した.

マイクロメカニル振動ジャイロの製作
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之,宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部宇宙探査工学研究系 助手 三田 信
航空宇宙慣性航法用の高精度ジャイロスコープをマイクロメカニカル振動子として製作する方法について検討した.

静電駆動型可変光アッテネータ
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之,サンテック株式会社 諫本圭司
波長多重光ファイバ通信用に多用される可変光減衰器をシリコンマイクロマシニング技術を用いて製作し,その実用化に成功した.

圧電薄膜アクチュエータの光学応用
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之,スタンレー電気株式会社 谷雅直
酸化亜鉛圧電薄膜をアクチュエータ駆動源に用いた光スキャナをマイクロマシニング技術で製作し,プロジェクション型のディスプレーに応用する研究を行った.

MEMS技術の高周波デバイス応用
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之,ヒロセ電機株式会社
マイクロ可動構造をシリコンマイクロマシニング技術を用いて製作し,それらを高周波導波路スイッチや周波数可変フィルタに応用する研究を行った.

赤外線天文台望遠鏡用のマイクロシャッタアレイ
助教授 年吉 洋[代表者],年吉研 技官 高橋巧也,東京大学理学部天文センター
赤外分光を行う天文台望遠鏡の時間利用効率を高めるため,一度に数十個の星のスペクトルを観測できるように,マイクロマシニング技術を用いて可動シャッタアレイを製作している.

MEMS設計のプロセスウィンドウに関する研究
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之,(大日本印刷)橋本克美,年吉研 技官 高橋巧也,年吉研 大学院学生 猿田訓彦,年吉研 大学院学生 肥後昭男
シリコンマイクロマシニング技術を用いて静電アクチュエータを設計する際に非常に重要となるプロセスウィンドウ(プロセス精度)についてCAD等を用いて理論的に考察した.

都市基盤安全工学国際研究センター

個別要素法を用いたコンクリート等輸送装置の性能評価に関する研究
講師 加藤 佳孝, 教授 魚本 健人[代表者],魚本研 大学院生 吉国美涼
現在,建設現場におけるコンクリートや土砂の輸送は,ベルトコンベヤやダンプトラック等で行われている.しかし,ベルトコンベヤは傾斜角度に限界があり,またダンプトラックでは迂回する道路が必要となり,いずれの工法も設備規模が大きくなることや,コスト,自然環境面で問題があることが指摘されている.この様な現状に対して,共同研究組織は急傾斜地でのコンクリート輸送を可能となる装置を開発し,実証実験によってその有効性を確認している.しかし,実証実験を基礎としているため,必ずしも施工性能の評価が十分でなく,検証した範囲内での性能保証しかできないのが現状である.本共同研究では,この実証実験結果を活用し個別要素法を用いた数値解析により試験装置の施工状況を表現するとともに,施工性能の評価(適用限界等)を解析的に検討するものである.前述したように,本装置は建設現場における自然環境を破壊することなく,コンクリートや土砂を効率的に輸送することが可能であり,極めて有効な輸送手段である.

マルチスペクトル法のコンクリート構造物劣化調査への応用
教授 魚本 健人[代表者],魚本研 大学院学生 金田尚志
コンクリート構造物の劣化調査は一般に,外観調査等の目視点検,コア等を採取し,コンクリート中の成分を測定する方法,コンクリートのかぶりをはつり,内部の鋼材の腐食状況の確認,自然電位法による腐食の推定等が行われている.また,一部破壊型調査ではなく,各手法による非破壊検査も行われている.本研究では,ハイパースペクトルリモートセンシングの技術を用い,非接触でコンクリート表面の劣化因子物質の検出を試みる.本手法の適用により,短時間,大断面の診断が可能になり,調査費用の低減が期待できると考えられる.

新しいガラス繊維を用いたGFRPロッドの強度と耐久性に関する研究
教授 魚本 健人[代表者],共同研究員 杉山基美
塩化物イオンの影響を受けるコンクリート構造物の多くは,その内部に埋設された鋼材の腐食により著しく劣化している.この問題を抜本的に対処する方法として,塩化物イオンによって腐食を生じない繊維強化プラスチックス(FRP)の利用が注目されてきた.これまでガラス繊維,アラミド繊維,カーボン繊維を用いたFRPロッド(GFRP,AFRP,CFRP)の強度と耐久性に関する多くの研究がなされてきたが,GFRPについてはAFRP,CFRPに比べて耐アルカリ性,疲労特性,クリープ特性が劣り,実用化には大きな課題を残していた.本研究では,従来と異なる新しいガラス繊維を用いたGFRPロッドの耐久性の検討を行っている.

コンクリートの品質に対する化学混和剤の作用効果に関する研究
教授 魚本 健人[代表者],共同研究員 杉山知巳
コンクリートの品質,特に硬化コンクリートの耐久性を論じうる上で,使用材料や配合条件がコンクリートの空隙構造に与える影響を検討することは非常に重要である.また,近年コンクリート製造に欠かせない材料の一つになっている化学混和剤に関しては,空隙構造に対する作用効果が明確になっていない. そこで,化学混和剤の持つ種々の特性が,硬化コンクリートに及ぼす影響を明らかにすることを目的とし,様々な化学混和剤,中でも最も頻繁に用いられている減水剤系の混和剤を中心に,減水性,凝結遅延性,空気連行性等の特性が,硬化体の空隙構造形成過程に与える影響を明確にする.

コンクリート構造物の常時モニタリング手法の開発 (継続)
教授 魚本 健人[代表者],受託研究員 恒国光義,研究実習生 村瀬豊,
日本の社会基盤整備における重要な課題は,供用されている既存構造物をいかに効率よく維持管理を行うことである.今後,人口減少期に入り建設分野の技術者も減少していくと考えられるが,建設後数10年が経過し補修,補強を必要とする構造物が増加していくため,従来の技術者による点検では限界がある.高い信頼性を有する常時モニタリング手法の開発がこの問題を解決する一歩である.光ファイバー網等の利用により,大量のデータを遠隔地にリアルタイムで転送できるようになり,常時モニタリングの環境構築は容易になってきた.本研究ではコンクリート構造物を対象とし,高精度,高耐久性,低コストのセンサー,常時モニタリング手法について検討する.

補修を行ったコンクリート構造物の耐久性評価に関する研究
教授 魚本 健人[代表者], 講師 加藤 佳孝, 助教授 岸 利治,民間等共同研究員伊藤正憲 斉藤仁 渡部正, 元売正美 竹田宣典 ,平間昭信 河原崎広 伊藤学, 深津章文 松田敏,森本丈太郎 椎名貴快 弘中義昭, 小川彰一 槇島修,宇野祐一 里隆幸 北澤英宏, 榊原弘幸 戸田勝哉,技術官 星野富夫,
劣化した鉄筋コンクリート構造物を断面修復材によって補修する場合,補修材料の耐久性に関わる要求品質が明らかでなく,使用される材料や施工方法によって耐久性がまちまちである.そのため,特定の材料や施工方法によって補修を行った場合に,補修した構造物の耐久性を予測することができないのが現状である.そこで,補修した鉄筋コンクリート構造物の耐久性を評価することを目的として,断面修復工法を対象に,補修材料の耐久性を明確にし,施工方法が耐久性に与える影響についても明らかにする.

コンクリート構造物の次世代型非接触・非破壊検査手法に関する調査研究
教授 魚本 健人[代表者], 講師 加藤 佳孝,魚本研 大学院生 金田尚志
これまでにも,超音波,AE法,レーダ法など様々な非破壊検査が,構造物の現状の性能を把握するツールとして用いられてきた.しかし,提案されている手法のほとんどがひび割れ,内部空洞などに代表される欠陥検知であり,コンクリート構造物の耐久性能の低下を予測する情報としては不足しているのが現状である.これまでは,情報の補完のために局部破壊検査を実施している.局部破壊検査は,コンクリートの現状を精度良く評価することはできるが,あくまでも局部的な情報であるため構造物全体の性能を評価するには多大な労力を必要とする.このような現状に対して,本研究では鉄筋コンクリート構造物の代表的な劣化現象である鋼材腐食の支配因子である塩害・中性化に着目し,検査の効率性を重要視した非接触かつ非破壊で検査する新たな手法を確立することを目的としている.

コンクリートの耐硫酸性向上技術に関する研究(継続)
教授 魚本 健人[代表者],魚本研 大学院生 白勢和道
温泉,下水道等は硫酸による構造物劣化が生じやすい.これに対処するため各種セメント,混和材料等を用いることで劣化を防止する方法を考案している.

高炉セメントを用いた鉄筋コンクリートの腐食性状に関する研究
教授 魚本 健人[代表者],魚本研 大学院生 パカワット サンチャラン
アルカリ骨材反応などを防止するために高炉セメントが多用されるようになったが,高炉セメントは耐塩化物イオンに対しては効果があるもののアルカリ性が低いため鉄筋の腐食が懸念されている.本研究は,塩分浸透と中性化が進行した場合,コンクリート中の鉄筋腐食にどのような影響を及ぼすかを明らかにし,より望ましいコンクリート構造物とする事を目的とする.

コンクリート構造物の耐凍結融解性に関する研究
教授 魚本 健人[代表者],魚本研 大学院生 ビシュヌイ
寒冷地では凍結融解によりコンクリートが著しく劣化するが,断面寸法等が異なると劣化状況が大きく変化する.本研究ではコンピュータシュミレーションおよぎ実験からそのメカニズムを明らかにすることを目的とする.

アルカリ骨材反応を生じたコンクリート構造物の鉄筋破断に関する研究
教授 魚本 健人[代表者],魚本研 技術官 西村次男
アルカリ骨材反応を生じたコンクリート橋脚等において鉄筋破断が報告されている.この原因として鉄筋の品質と曲げ加工時の塑性加工が問題と考えられる.脆性破壊現象がなぜ生じるかを明らかにし,その対策を考案することを目的とした研究である.

損傷を受けたエポキシ樹脂塗装鉄筋の耐久性に関する研究
教授 魚本 健人[代表者],魚本研 技術官 星野富夫
エポキシ樹脂塗装鉄筋は塩害に対し高い耐久性を有しているが,塗膜が損傷を受けると耐久性が損なわれる.どの程度の損傷が問題になるかを明らかにするため,海洋暴露試験を実施し継続的な調査を行っている.

コンクリート構造物の劣化診断ソフトの開発
教授 魚本 健人[代表者],清水 隆史, 西川 忠, 高津 忠, 肥田 研一,山下 英俊,田中 英紀,吉田 克弥,守分 敦郎,太田 資郎,笠井 和弘
コンクリート構造物の経年劣化について各種劣化現象のデータを収集しており,そのデータベースを利用してPCによる対話形式の劣化診断システムの構築を目指す.

老朽化構造物の調査
教授 魚本 健人[代表者], 講師 加藤 佳孝,二木 重博,小林 公一,竹内 敏也,岡本 卓慈,羅 黄順,藤田 久和,清水 隆史,山根 立行,虫明 成生.山内 大祐 ,柴 慶治,栗田 守朗,安藤 慎一郎,和田 直也,肥田 研一,丸茂 文夫,赤松 幸生, 助教授 目黒 公郎
老朽化構造物を「技術的側面」「経済的側面」「機能的側面」「制度設計側面」の4つの側面から捉え,各時代における評価を行っている.具体的事例として横浜市にある万国橋を対象としてケーススタディを行った.

自然災害および人為災害に対する防災対策研究
教授 魚本 健人[代表者], 助教授 目黒 公郎, 助手 吉村 美保,柴 慶治,高橋 郁夫,栗田 守朗,福島誠一郎,川村 哲也,二木 重博,今村 遼平,佐藤 幸孝,山本 正直,安藤慎一郎,和田 直也,
台風,地震などの自然災害とテロなどの人為災害はいずれも都市基盤の安全に大きな影響を及ぼす.自然災害に対しては保険,評価等のビジネスモデルの作成を念頭においた調査研究を実施している.人為災害に関しては文献および専門技術者の知見を調査し,どのような対策を講じればよいかについて検討している.

都市温暖化抑制対策手法に関する研究
教授 魚本 健人[代表者], 助教授 大岡 龍三, 教授 安岡 善文, 客員教授 瀬戸島 政博,安岡研助手 遠藤,天野 玲子,椿 治彦,永田 茂,高木 賢二,北田 健介,古市 眞,渡辺 仁,宮坂 聡
都市の温暖化をモニタするために,リモートセンシングデータによる地表面温度,土地被覆状態,NDVI等の分析をおこない,モニタリングデータと気象データを用いた都市温暖化抑制効果の定量化(蒸発散量,顕熱減少量,気温減少量等)ならびにモニタリングデータ等から植物の活性維持による都市温暖化抑制対策機能を検討している.

都市基盤モニタリング技術に関する研究
教授 魚本 健人[代表者], 教授 安岡 善文, 客員教授 瀬戸島 政博, 助教授 デュシュマンタ ダッタ,岡田 敬一,羅 黄順,菅野 安男,野田 典広,山本 郁夫,赤松 幸生,虫明 成生,船橋 学 ,赤池 勝明,吉田 夏樹,二木 重博,滝川 正則,水谷 信之
都市基盤の安全性を確保する方法として,新しいモニタリング技術の開発を行うべく「音波センシング」,「食料供給バランス管理」,「三次元分布,履歴把握」,「プライマー入りコンクリート」,「ユビキタスセンサ」などの技術に関する調査を行っている.

都市におけるCO2排出特性の把握
教授 魚本 健人[代表者], 助教授 大岡 龍三,助手 遠藤貴宏,川村 哲也,中井 秀信,高田 励,赤松 幸生,船橋 学 ,
都市の環境問題に大きな影響を及ぼすCO2がどのように排出されているかを地域ごとあるいは時間軸で評価するための仕組みを考える.

リモートセンシングによる環境・災害評価手法の研究
教授 安岡 善文[代表者],助手 遠藤貴宏,博士研究員 Tran Hung,博士研究員 Jan Kucera,博士研究員 Baruah Pranab Jyoti,博士研究員 Guo Tao,大学院生 竹内渉,大学院生 大吉慶,大学院生 佐々木学,大学院生 山岸陽介
人工衛星からのリモートセンシングデータを利用して,地表面の被覆状況,植生分布などを計測し,都市・地域スケールから大陸・地球スケールまでを対象として,環境・災害に関する各種のパラメータを評価する手法を開発する.2003年においては,既設のNOAA/AVHRR,TERRA/MODISの受信システムに加えて,新たに地球観測衛星AQUA/MODISデータの受信・処理設備を設置し,東アジアの衛星観測ネットワークを構築した.さらに,これらのデータを利用して,シベリア地域の湿原,アジアの水田からのメタン発生量の推定,シベリア森林地域における火災による温暖化ガス放出量の評価等を行った.また,都市スケールでは高解像度衛星データ等を利用した都市の3次元構造の計測,アジア諸都市のヒートアイランドの評価等を行った.

ハイパースペクトル計測による生態系パラメータの計測手法の開発
教授 安岡 善文[代表者],助手 遠藤貴宏,大学院生 高橋俊守
陸域生態系による光合成能や二酸化炭素の吸収・放出量を評価することを目的として,高い分解能で計測対象物のスペクトル特性(分光特性)を計測するハイパースペクトル計測により,植物の光合成速度,クロロフィル,リグニン,セルロース,水分含有量などの生物・生理パラメータを計測する手法を開発する.2003年は,実験室レベル,フィールドレベルで,植生の光合成速度,クロロフィル量等を画像観測するハイパースペクトルイメジャーを開発し,植物の機能パラメータを評価した.

ハイパースペクトル計測によるコンクリート劣化の非破壊計測手法の開発
教授 安岡 善文[代表者],助手 遠藤貴宏,大学院生 中島 貴司
トンネルや高架橋のコンクリート劣化度を評価することを目的として,高い分解能で計測対象物のスペクトル特性(分光特性)を計測するハイパースペクトル計測により,中性化,塩化,硫化などによるコンクリート劣化を非破壊で計測する手法を開発する.2003年は,実験室レベルで,中性化,塩化によるコンクリートの劣化深さやコンクリート塗膜の状態を計測する手法を開発した.さらに,これらの劣化をコンクリートの汚れなどによる変化と判別する手法の検討を行った.

社会基盤施設の地震断層に対する防災性向上の研究(継続)
教授 小長井 一男[代表者], 教授 古関 潤一, 助教授 目黒 公郎,教授 (東大地震研究所) 堀宗朗
1999年トルココジャエリ地震や台湾集集地震は地震断層の変位が社会基盤施設に甚大な被害を与えたものとして特筆すべき地震であった.一方わが国は,大幅な都市域が断層に対する明確な規制を伴わないまま発展している.地震断層に対処するための工学的,行政的な対応について,土木学会,地盤工学会に関連委員会を組織し研究を進めている.

地震災害環境のユニバーサルシミュレータの開発
助教授 目黒 公郎
本研究の目的は「自分の日常生活を軸として」,地震発生時から,時間の経過に伴って,自分の周辺に起こる出来事を具体的にイメージできる能力を身につけるためのツールの開発と環境の整備である.最終的には,地震までの時間が与えられた場合に,何をどうすれば被害の最小化が図られるかが個人ベースで認識される.地震災害に関係する物理現象から社会現象にいたるまでの一連の現象をコンピュータシミュレーションすることをめざしている.前者の物理現象編は,AEMやDEMなどの構造数値解析手法と避難シミュレーションを中心的なツールとして,後半の社会現象編は,災害イマジネーションツール(目黒メソッド)や次世代型防災マニュアルを主なツールとしている.

地下の地震断層変位が地表地盤に与える影響度評価
助教授 目黒 公郎[代表者],博士研究員 RAMANCHARLA Pradeep Kumar
1999年に発生したトルコ・コジャエリ地震や台湾・集集地震では, 地震断層運動による表層地盤の変状が, 多くの土木構造物や建築構造物に甚大な被害を与えた. 本研究は, 破壊現象を高精度に追跡できるAEM(Applied Element Method)を用いたシミュレーションから, 地下の断層運動が表層地盤に与える影響を分析するものである.

衝突や火災による構造物の崩壊過程のシミュレーション解析
助教授 目黒 公郎[代表者],大学院学生 ELKHOLY Said Abd Elfattah Said
米国同時多発テロ事件では,ニューヨーク市のマンハッタンにある110階建てのWTCビル2棟が旅客機の衝突とそれを原因とする炎上で,完全に崩壊した.この崩壊で消火活動及び避難誘導をしていた消防士を含め,2800余の尊い人命が奪われた.この事件は,高層ビルの崩壊過程の解明の重要性を強く認識させた.本研究は衝突や火災による高層建築物の破壊挙動を,時間的・空間的な広がりを考慮した上で再現するシミュレーション手法を開発している.この手法とは,目黒研究室で開発した応用要素法(AEM)を大規模で複雑な部材断面を有する構造物に適用しても大幅な自由度の増大なしに解析を行えるように改良を加えたものである.そしてこの改良型AEMを用いて衝突や火災から高層ビルの完全崩壊を防ぐ対策を探っている.

構造物の地震時崩壊過程のシミュレーション解析
助教授 目黒 公郎[代表者],大学院学生 MAYORCA Paola,ELKHOLY Said Abd Elfattah Said,長島 浩,黒田 武大
平成7年1月17日の兵庫県南部地震は, 地震工学の先進国と言えども構造物の崩壊によって多数の犠牲者が発生しうることを明らかにした. 本研究は地震による人的被害を軽減するために, 地震時の構造物の破壊挙動を忠実に(時間的・空間的な広がりを考慮して)再現するシミュレーション手法の研究を進めている. すなわち, 破壊前の状態から徐々に破壊が進行し, やがて完全に崩壊してしまうまでの過程を統一的に解析できる手法を開発し, 様々な媒質や構造物の破壊解析を行っている. そして解析結果と実際の地震被害の比較による被害発生の原因究明と, コンピュータアニメーションによる地震被害の再現を試みている.

非連続体の挙動シミュレーションに関する研究
助教授 目黒 公郎[代表者],大学院学生 榎本 咲美
少し離れた位置からは「連続体の挙動」のように見えるが, 実はばらばらなある大きさの運動単位が, 適当な約束(必ずしも物理的な法則のみではない)に従って, 全体として挙動している現象が多く見られる. 砂時計の砂の運動や朝夕の通勤客, 自動車の流れなどはその典型である. これらの「挙動」は, 連続体の運動として近似できる場合もあるが, 適当な大きさの非連続な物体の集合体の挙動として扱わないと, その現象を適切に理解することはできないことも多い. 本研究室では物理的な約束に支配される現象の代表として, 「土石流」や「砂地盤の液状化現象」, 「地震時の家具の動的挙動」を非連続体解析手法を用いてシミュレーションしメカニズムを研究している. 避難行動など人間に絡んだ挙動については, 「災害時の避難行動特性のシミュレーションと空間の安全性評価」を参照されたい.

地域特性と時間的要因を考慮した停電の都市生活への影響波及に関する研究
助教授 目黒 公郎[代表者],助教授 山崎 文雄, 学部生 山口 紀行
近年, 都市生活の電力への依存が高まる一方で, 自然災害や事故などの様々な原因による停電被害が発生し, 都市機能に大きな影響を及ぼしている. 停電の影響は, 電力供給システムの構造から, 配電所の供給エリアを単位として相互に影響し合い, しかもエリアごとの「電力需要状況・住民特性・産業構成などの地域特性」「停電の原因となる災害の規模」「停電発生時刻や継続時間などの停電特性」等によって, 大きく変化する. そこで本研究では, 配電所の供給エリアを単位とした地域特性と, 停電の発生時刻・継続時間を考慮した都市生活への停電の影響評価法の研究を進めている. 今年度は, 地理情報システムを用いて, 東京23区の314箇所の配電用変電所の電力需要と地域特性のデータベースの構築とその分析を行い, 供給エリア内の大口需要家の影響を含めた考慮した地域特性と, 停電の発生時刻・継続時間を考慮した停電の影響評価モデルの構築を進めている.

電力供給量の変化を用いた地震被害状況と復旧状況の把握に関する研究
助教授 目黒 公郎[代表者],学部生 山口 紀行
地震直後の被災地域の特定と被害量の把握は, 防災関連機関の初動を決定する上で極めて重要である. 本研究は地震前後の電力供給データを用いて, 地域ごとの被害推定を試みるものである. すなわち, 配電用変電所の供給エリアを地域単位として, 地震前の電力需要から地域特性を把握するとともに, 地震後の電力供給量の落ち込み具合から供給エリア内の建物被害を推定する手法を提案するとともに, 両者の関係について分析している. 分析結果からは, 地震後の電力供給量の低下は地域の建物被害と高い相関を持つことが確認されるとともに, 提案手法が, リアルタイム評価が可能, 新たな設備投資がほとんど不要, 天候や時刻に左右されない観測が可能, など有利な点を多く有し, 実用に向けて大きな可能性があることが示されている.

効果的な地震対策支援システムの開発に関する研究
助教授 目黒 公郎[代表者],大学院学生 吉村 美保,近藤 伸也, 客員教授 高橋 健文
兵庫県南部地震以降, 「雨後の竹の子」的に全国の自治体を中心として様々な「地震防災システム」が生まれた. しかしこれらの多くは, 既存のシステムを(ブラックボックス的に?)違う場所に適用しただけの早期地震被害予測システムであり, 地域の地震防災力を高めることに具体的に貢献するとは思えないものもである. このような状況を踏まえ, 本研究では効果的で投資効果の高い地震対策を講じるための地震対策支援システムの開発を進めている. 地震防災システムが持つべき機能の整理に基づいて, 地域の弱点の抽出や異なる事前対策に対する投資効果の評価が可能であるなどの機能を有する「最適事前対策立案支援ツール」の開発を行っている.

実効力のある次世代型防災マニュアルの開発に関する研究
助教授 目黒 公郎[代表者],大学院学生 近藤 伸也, 客員教授 高橋 健文
本研究は地域や組織の防災ポテンシャルを具体的に向上させる機能を持つマニュアルを開発するものである. 具体的には, 現状のマニュアルの性能分析機能, 目的別ユーザ別編集機能, 当事者マニュアル作成支援機能などを有したマニュアルである. このマニュアルによって, 災害発生以前に地域や組織が有する潜在的危険性の洗い出し, その回避法, 事前対策の効果の評価などが可能となる. このコンセプトを用いた防災マニュアルの作成を,内閣府,首都圏の自治体,東京大学生産技術研究所を対象として進めている.

組積造構造物の経済性を考慮した効果的補強手法の開発
助教授 目黒 公郎[代表者],大学院学生 Mayorca Arellano Julisa Paola,Bishnu H.Pandey,黒田 武大,菅野 有美
世界の地震被害による犠牲者の多くは,耐震性の低い組積造構造物の崩壊によって生じている.本研究の目的は,耐震性の低い既存の組積造構造物を,それぞれの地域が持つ技術と材料を用いて,しかも安く耐震化できる手法を開発することである.防災の問題では,「先進国の材料と技術を使って補強すれば大丈夫」と言ったところで何ら問題解決にはならないためだ.一つの目的は,上記のような工法や補強法を講じた構造物とそうでない構造物の地震時の被害の差を分かりやすく示すシミュレータの開発であり,建物の耐震化の重要性を一般の人々に分かりやすく理解してもらうための環境を整備するためのものである.

既存不適格構造物の耐震改修を推進させる制度/システムの研究
助教授 目黒 公郎[代表者], 大学院学生 吉村 美保, 客員教授 高橋 健文
我が国の地震防災上の最重要課題は,膨大な数の既存不適格構造物の耐震補強(改修)対策が一向に進展していないことである.既存不適格建物とは,最新の耐震基準で設計/建設されていない耐震性に劣る建物であり,これらが地震発生時に甚大な被害を受け,多くの人的・物的被害を生じさせるとともに,その後の様々な2次的,間接的な被害の本質的な原因になる.このような重要課題が解決されない大きな理由は,震補強法としての技術的な問題と言うよりは,市民の耐震改修の重要性の認識度の低さと,耐震補強を進めるインセンティブを持ってもらう仕組みがないことによる.本研究は,行政と市民の両者の視点から見て耐震補強をすることが有利な制度,実効性の高い制度を提案するものである.

地震予知情報の工学的な活用法に関する研究
助教授 目黒 公郎[代表者],大学院学生 吉村 美保
我が国では, 1965年以来地震予知研究が行なわれており, 東海地震の危険性が指摘されている東海地域においては, 大規模地震対策特別措置法に基づき地震予知情報を発表する体制が整えられている. しかしこの体制は, 大規模な地震が高い確率で予知されることを前提としているため, 万一予知が空振りに終わった場合にこれらの影響は1日7200億円にものぼると試算されている. 地震予知をとりまくこのような状況は, 結果的に予知の空振りが許容されにくい環境と不確実性の高い情報の公開を困難とする状況を作り出している. 本研究は不確実性を伴った予知情報を防災対策に活用するための考え方, すなわち, 地震発生までの猶予時間とその精度に応じて適正に活用する戦略について研究するものである.

途上国の地震危険度評価手法の開発
助教授 目黒 公郎[代表者],博士研究員 Mehedi A. Ansary, 大学院学生 Mayorca Arellano Julisa Paola,Bishnu H.Pandey,吉村美保
世界の地震被害による犠牲者の多くは,途上国に集中している.この大きな原因の1つに,政府や中央省庁の高官達をはじめとして,多くの人々が地域の地震危険度を十分に把握していないことが挙げられる.この研究は,そのような問題を解決するために,簡便な方法で対象地域の地震危険度,予想される被害状況,経済的なインパクトなどを評価する手法を構築するものである.イランやトルコ,ミャンマーやバングラデシュなどを対象として,研究を進めている.

屋外温熱環境の最適設計手法に関する研究
助教授 大岡 龍三[代表者], 教授 加藤 信介,大学院学生 原山和也, 陳宏
屋外放射解析をCFD解析に基づき,屋外の温熱環境の最適設計を行う手法について検討を行う.

基礎杭利用による地中熱空調システムの実用化に関する研究
助教授 大岡 龍三[代表者], 教授 加藤 信介,宋 斗三,協力研究員 関根賢太郎
基礎杭を利用した地中熱利用空調システムの実用化に向けて,実大実験装置などを用いて研究し,システムの有効性・省エネルギー性・環境負荷低減効果等の研究を行い,設計手法などを構築する.

都市のヒートアイランド緩和手法に関する研究
助教授 大岡 龍三[代表者], 教授 加藤 信介,学術支援研究員 黄弘,大学院学生 原山和也,大学院学生 川本陽一, 客員教授 瀬戸島 政博
メソスケールモデルと精緻なGISデータを利用した都市気候解析モデルを開発・利用し,各種ヒートアイランド緩和手法の効果について検討を行う.

建物周辺の乱流構造に関する風洞模型実験と数値シミュレーションによる解析(継続)
助教授 大岡 龍三[代表者], 教授 加藤 信介,技術専門職員 高橋岳生,協力研究員 飯塚悟
建物周辺で発生する強風や乱れの構造に関して,風洞実験や数値シミュレーションにより検討している.建物のようなbluff body周りの複雑な流れ場を予測する場合,標準k-εモデルは種々の問題を有する.特に,レイノルズ応力等の渦粘性近似は流れ場によりしばしば大きな予測誤差の原因となる.本年度は,境界層流中に置かれた高層建物モデル周辺気流の解析にLK型をはじめ,各種のk-εモデルや応力方程式モデルによる解析を行い,その予測精度を比較,検討した.

火災煙流動数値解析手法の開発(継続)
助教授 大岡 龍三[代表者], 教授 加藤 信介,学術支援研究員 黄弘,研究員 林吉彦,大学院学生 大竹宏,大学院学生 蒋太峰
建築物,地下街,船舶等における火災時の煙流動の数値解析手法を開発している.本年度も昨年に引き続き,都市気候モデルを用いて,阪神・淡路大震災発生時の阪神地方の気象条件を用いて,神戸市のある領域が大火に覆われた場合の広域にわたる熱気流予測を評価した.また,都市火災の伝搬要因の一つである火の粉飛散による飛び火現象の物理モデルを作成し,建物周辺の風の流れを再現するCFD解析と火の粉飛散を連成させて都市火災伝搬を解析した.

l physically based distributed modeling for urban flood risk management(都市洪水の危機管理のための物理則に基づく分布型水循環モデリング)
助教授 デュシュマンタ ダッタ

l Methodology for deriving urban properties from RS data for risk analysis
助教授 デュシュマンタ ダッタ

l Analysis of socio-economic impacts of floods in coastal cities in Asia due to climate change
助教授 デュシュマンタ ダッタ

赤外線法を用いた既設コンクリート構造物の品質評価手法の提案
講師 加藤 佳孝[代表者],研究実習生 芝浦工業大学 小根澤
コンクリートの物質移動特性は耐久性能を支配する重要な要因であり,これまで多くの研究がなされている.しかし,既設構造物のコンクリートの品質(例えば水セメント比など)を定量的に把握することが難しいため,既設構造物の物質移動特性を予測する手法が無いのが現状である.そこで,本研究では非破壊試験を活用して既設構造物の物質移動特性を定量的に評価する手法を開発することを目的としている.

セメント硬化体の内部組織構造のモデル化
講師 加藤 佳孝
従来,コンクリートの内部組織構造の測定には水銀圧入式ポロシメータが用いられているが,様々な問題があるため真の情報をとらえることができない.そこで,ポロシメータの問題点に関する原理をモデル化し,数値解析することで,実際の内部組織構造の予測を行う

不均一性を考慮したコンクリート中の拡散現象のモデル化
講師 加藤 佳孝
コンクリートは,水,セメント,骨材などの大きさの異なる材料で構成されている.このため,その内部組織構造はきわめて複雑となる.結果として,コンクリート中の拡散現象の取り扱いも極めて難しくなる.本研究では,コンクリートを構成する材料の不均一性を考慮して,コンクリート中の塩化物イオンの拡散現象をモデル化することを目的としている.

高耐久コンクリートの限界に関する検討
講師 加藤 佳孝
従来,コンクリートの配合設計は経験則に基づいたものであり,新材料が開発されると,トライアンドエラーにより適切な配合を選定している.本研究では,セメントの充填特性に着目し,新しい配合設計法の提案を行うことを目的としている.さらに,充填特性を用いて,コンクリートの高耐久化の限界に関する検討も行う.

不確実情報下における検査情報の価値評価の試み
講師 加藤 佳孝
膨大な社会資本ストックを抱える我が国においては,効率的に構造物の維持管理を行うことが必要不可欠である.特に,コンクリート構造物は社会資本ストックの多くを占めており,効果的な維持管理手法を構築することが急務であるが,未だ実行力のある手法の提案に至っていないのが現状である.これは,コンクリートが複合材料であること,施工時の全量検査が困難であること,様々な環境条件があること,などの要因により,構造物の劣化予測を精度良く行うことが難しいためであると考えられる.このように,コンクリート構造物の劣化予測は,設計時とは異なる不確実な情報下において実施することが多いため,いつ,どのような,補修・補強(あるいは更新)を実施することが適切であるかの判断が難しくなる.このような問題を解決するためには,実際の構造物の様々な情報を取得し,不確実情報を確実情報に変えていくことが有効な手段であると考えられ,その手段としては目視検査,非破壊検査,破壊検査などが考えられる.検査を実施することで,より正確な予測結果が期待できるが,維持管理しなければならない構造物が膨大にあるため,闇雲に行うことは得策ではないことは言うまでもない.あくまでも,我が国全体のストックを見据え,費用対効果を最大限にする検査を実施することが必要である.本研究では,検査技術の活用により不確実情報を確実情報と変換した場合の効果を,定量的に評価する手法の提案を行うものであり,後述する補修リスクにより定量評価を試みた.

戦略情報融合国際研究センター

NOAA衛星画像データベースシステムの構築(継続)
教授 喜連川 優[代表者],根本 利弘
リモートセンシング画像等の巨大画像の蓄積には巨大なアーカイブスペースが不可欠である. 本研究では, 2テラバイトの超大容量8mmテープロボテックスならびに100テラバイトのテープロボテックスを用いた3次記憶系の構成と, それに基づく衛星画像データベースシステムの構築法に関する研究を行なっている.本年度は, D3から9840なる新たなメディアに変更すると伴に試験的に階層記憶システムの運用を開始しその問題点を明らかにした. 又, 従来データのローディングを継続的に行った.

ファイバチャネル結合型大規模パソコンクラスタによる並列データベース・マイニングサーバの研究(継続)
教授 喜連川 優[代表者],協力研究員 小口正人,喜連川研 大学院生 合田和生
100台のPentium Proマイクロプロセッサを用いたデスクトップパーソナルコンピュータをATMネットワークにより結合した大規模PCクラスタを構築した. パソコン用マイクロプロセッサの性能向上はワークステーション用RISCに匹敵するに到っており, 且つ大幅な低価格化が進んでいる. 本研究ではコモディティのみを利用した超廉価型PCクラスタを用い大規模データマイニング処理を実装し, 大きな価格性能比の向上を達成した. 本年は他のPCから未利用メモリを動的に確保する手法に関し, 手々の手法を実装しその特性を詳細に評価をすすめた.

ファイバチャネル結合型分散ディスクシステムの研究(新規)
教授 喜連川 優[代表者],喜連川研 大学院生 合田和生,喜連川研 大学院生 星野喬
100台のPentium Proマイクロプロセッサを用いたデスクトップパーソナルコンピュータをATMネットワークにより結合した大規模PCクラスタを構築した. パソコン用マイクロプロセッサの性能向上はワークステーション用RISCに匹敵するに到っており, 且つ大幅な低価格化が進んでいる. 本研究ではコモディティのみを利用した超廉価型PCクラスタを用い大規模データマイニング処理を実装し, 大きな価格性能比の向上を達成した. 本年は他のPCから未利用メモリを動的に確保する手法に関し, 手々の手法を実装しその特性を詳細に評価をすすめた.

スケーラブルアーカイバの研究(継続)
教授 喜連川 優[代表者],根本 利弘
現在, 大容量アーカイブシステムは, 導入時にその構成がほぼ静的に決定され,柔軟性が必ずしも高くない. 本研究では, 8mmテープを利用し, 比較的小規模なコモディティロボテックスをエレメントアーカイバとし, それらを多数台並置することで任意の規模に拡張可能なスケーラブルアーカイバの構成法について研究を進めている. 本年度は9840に代表される最近の新しいテープ装置のパラメータを想定しリプリケーション手法に関しシミュレーションを行いその有効性を確認した.さらに ツVDアーカイバへの適用についても検討した.

デジタルアースビジュアリゼーション(継続)
教授 喜連川 優[代表者],喜連川研 博士研究員 生駒栄司
種々の地球環境データを統合的に管理すると共に, 多元的な解析の利便を図るべくVRMLを用いた可視化システムを構築した. 時間的変化を視覚的に与えることにより, 大幅に理解が容易となると共に柔軟な操作が可能となり, ユーザに公開しつつある. 本年度はバーチャルリアリティシアターを用いた大規模視覚化実験を進めた.

バッチ問合せ処理の最適化に関する研究(継続)
教授 喜連川 優[代表者],中野 美由紀
複数の問合せの処理性能を大幅に向上させる主記憶およびI/O共用に基づく新しい手法を提案すると共に, シミュレーションならびに実機上での実装により有効性を明かにした.

サーチエンジン結果のクラスタリング(継続)
教授 喜連川 優[代表者],喜連川研 博士研究員 Yitong Wang
サーチエンジンは極めて多くのURLをそのサーチ結果として戻すことから, その利便性は著しく低いことが指摘されている. ここではインリンク, アウトリンクを用いた結果のクラスタリングによりその質の向上を試みる.いくつかの実験により質の高いクラスタリングが可能であることを確認した.

Webマイニングの研究(継続)
教授 喜連川 優[代表者],喜連川研 大学院生 Iko Pramudiono,喜連川研 大学院生 Praz Bowo,喜連川研 大学院生 高橋克己
WWWのアクセスログ情報を多く蓄積されていることから, WWWログ情報を詳細に解析することにより, ユーザのアクセス傾向, 時間シーケンスによるアクセス頻度などにおける特有のアクセスパターンの抽出を目的としたマイニング手法の開発を試みた.

WWWにおけるコミュニティ発見手法に関する研究(継続)
教授 喜連川 優[代表者],喜連川研 産学官連携研究員 豊田正史,喜連川研 大学院生 藤村滋
全日本ウェブグラフのクローリングにより,我国全体のWEBグラフの抽出を行うと同時に,当該グラフから密な部分グラフを抽出するいわゆるサイバーコミュニティ抽出実験を行い,そのアルゴリズムの有効性を確認した.タギングの質の向上を目指すと同時に,可視化ツールの構築を試みた.

WWWにおける時間経過におけるコミュニティ変化に関する研究(新規)
教授 喜連川 優[代表者],喜連川研 産学官連携研究員 豊田正史,喜連川研 産学官連携研究員 田村孝之
全日本ウェブグラフのクローリングを数ヶ月おきにアーカイブすることにより,それぞれの時点での我国全体のWEBグラフからサイバーコミュニティを抽出し,時間変化によるコミュニティの変化を調べ,WWW上における社会的影響の確認をした.

最大フローアルゴリズムを用いたWeb空間クラスタリング手法の研究(継続)
教授 喜連川 優[代表者],喜連川研 産学官連携研究員 今藤紀子
ウェブコミュニティを抽出する手法として,HITSなどの手法と比較してトピックドリフトのおこりにくい最大フローアルゴリズムを用いたコミュニティ抽出手法の提案を行い,2002年度の日本国内のウェブスナップショットを用いて,提案した手法の特性について調べた.

ウェブコミュニティを用いた大域ウェブアクセスログ解析の研究
教授 喜連川 優[代表者],喜連川研 学術支援研究員 大塚真吾
本研究では類似したウェブページを抽出するウェブコミュニティ手法を用いたパネルログ解析システムの提案を行い,URLを基にした解析では捉え難い大域的なユーザの行動パターンを抽出した.

パブリッシュ・サブスクライブシステムにおけるUB−Treeインデクスに関する研究
教授 喜連川 優[代表者],喜連川研 産学官連携研究員 Botao Wang,喜連川研 大学院生 張旺
多量のデータを扱う高性能なパブリッシュ・サブスクライブのシステムの構築を目指し,イベントマッチングの高速処理を可能とするUB−TREEインデクス処理方式を提案し,シミュレーションを用いてその有効性を調べた.

i-SCSIの研究
教授 喜連川 優[代表者],喜連川研 産学官連携研究員 山口実靖
i-SCSIを用いた二次記憶システムにおける高速アクセス方式について検討を行った.

Peer to Peer環境におけるR−Treeインデクスの研究(新規)
教授 喜連川 優[代表者],喜連川研 学術支援研究員 Anirban Mondal,喜連川研 大学院生 伊利夫
Peer to Peer で構成される大規模分散システムにおける効率のよい負荷分散方式について検討を行い,シミュレーションを用いて提案した方式の有効性にツいて調べた.

ITSにおける安全性確保の研究
教授 坂内 正夫[代表者], 助教授 上條 俊介,坂内研 大学院学生 松下康之,坂内研 大学院学生 松下剛士,坂内研 大学院学生 中島章
次世代道路交通システムのターゲットとして重要な安全性の向上のために,映像による事故検出・認識手法の開発を行っている.合わせて,東京駿河台下交差点のリアルタイム映像を24時間取得するシステムを構成して評価実験を行っている.本年度は,交通事象データベースの形成を行うと共に,24時間・365日の状況に対応できる耐オクルージョン性の高いトラッキング方式のロバスト化,各種事象の認識手法の改良と共に,首都高速道路等での実証実験を行った.

次世代ハイパーメディアプラットホームの開発
教授 坂内 正夫[代表者],坂内研 博士研究員 曹芸芸,坂内研 大学院生 張文利,坂内研 大学院生 武小萌
映像を中心とする幅広い情報をコンピュータを用いて魅力ある形に提供するためのハイパーメディアの新しいプラットホーム開発を行なっている.本年度は,原メディアからのデータモデルの獲得(データベースビジョン),データベース化(ハイパーメディア),そのフレキシブルな利用(プレゼンテーション)を一体化したハイパーメディアの枠組の拡張と,その開発ツール(プラットホーム)の実装,及び研究室に既存の図形・画像認識システムの実装及び各種応用システムの開発を行なっている.

マルチメディア地図の構築と応用に関する研究
教授 坂内 正夫[代表者],協力研究員 大沢裕,助手(埼玉大学) 川崎洋
災害への対応や高度な交通管理,施設管理などにおいて我々の社会活動の基盤である都市の現況情報をリアルタイムに表現,把握することが不可欠である.本研究では,従来の図形ディジタル地図に加えて,リアルタイム映像,航空写真,異形態地図等を統合した拡張された地図(マルチメディア地図)データベースの構築とその応用方式の研究を行っている.本年度は,インターネット上での地図関連情報の収集方式,市街地の3次元モデル形成方式の改良などの研究を行った.

次世代対応型ディジタル放送システムの研究
教授 坂内 正夫[代表者], 助教授 上條 俊介,坂内研 博士研究員 曹芸芸,坂内研 大学院生 張文利,坂内研 大学院生 武小萌
ディジタル化された放送は,高度なサービス提供の可能性を持っている.本研究では,放送映像の構造化フレームワークとそれに基づく放送用ハイパーメディアアーキテクチャ,更には映像認識手段との複合による高度な対話性等を具備したマルチメディア時代のディジタル放送サービス提供技術の開発を行なっている.本年度は,約10数時間分の放送映像に対してネットワーク上での参加型の情報収集と認識技術とに基づく高度な対話性を実現するシステムの実施と有効性の確認を行った.

交通流統計自動解析システムの開発
助教授 上條 俊介
高度交通システムにおいて,安全で効率のよい交通流を実現するためには,正確な交通流統計に基づく交通流制御が不可欠である.そこで,本研究室で開発したオクルージョンにロバストな車両トラッキングアルゴリズムを用い,通過車両台数・速度・走行軌跡などの交通流統計を自動で取得するシステムを開発している.すでに神田駿河台下交差点において,約1年6ヶ月に渡るデータを毎日取得している.さらに,取得した大量の統計データを柔軟に加工・提供するためのデータ構造およびインタフェースを開発中である.

時空間Markov Random Field Modelによる時空間画像の領域分割
助教授 上條 俊介
コンピュータ・ビジョンでは画像上で移動物体同士が重なった場合(オクルージョン)において,個々の物体を分離して追跡することが困難であった.そこで,本研究では,この問題を時空間画像の領域分割と等価であることを明確にし,時空間Markov Random Field Modelを定義した.これにより,オクルージョンが生じている場合でも正確に移動物体を画像上で分離することが可能となった.さらに,本手法は,車両のみならず歩行者等に対しても有効であることが確認され,街角監視や商業地区での行動分析に活用が期待される.

交通可視化システムの開発
助教授 上條 俊介
交差点に進入しようとする車両にとって,前方停止車両等による死角は事故を起こす原因となる.そこで,当該車両の運転者に交差点交通の鳥瞰図等を提供することにより,運転者自らが視覚的に危険を回避すること促すことが事故防止に有効であると考えられる.そこで,本研究室で開発した車両トラッキングアルゴリズムにより認識した車両をモデル化し,視覚的に解りやすい画像を提供するためのシステムを開発している.

ユーザの手指動作の実時間追跡とジェスチャ認識
助教授 佐藤 洋一[代表者],大学院学生 岡兼司
GUIに代表される従来型のヒューマンコンピュータインタフェースの枠組みを越え,実世界におけるユーザのさまざまな活動を効率よく支援するためのインタフェースを実現するためには,実空間内におけるユーザの動作をリアルタイムで計測することが必要不可欠となる.特に本研究題目では,赤外線カメラおよびに画像処理ハードウェアを利用し,机上で作業を進めているユーザの両手指先位置をリアルタイムで安定にトラッキングするための技術を開発している.また得られる複数指先の軌跡からさまざまなジェスチャを安定に認識するための手法を実現する.

ステレオ画像処理によるユーザ視線方向の実時間計測とそのユーザインタフェースへの応用
助教授 佐藤 洋一[代表者],大学院学生 岡兼司
自然なヒューマン・コンピュータ・インタラクションを実現するためには,システムがユーザの行動や意図を理解することが重要となる.本研究では特にユーザの視線情報に着目し,ステレオ画像処理により特別なマーカなどを利用することなくユーザの頭部3次元位置・姿勢を実時間で計測する手法を実現する.また,大型情報ディスプレイへの利用を例としてユーザの視線情報の具体的な利用方法を提案し,ユーザ実験によりその有効性を評価する.

室内環境における複数人物の実時間追跡
助教授 佐藤 洋一[代表者],大学院学生 鈴木達也,協力研究員 杉本晃弘,研究協力員 岩崎慎介
本研究では,室内環境において複数人物を追跡する為の頑健な手法の開発を目指している.特に,環境に分配配置されたセンサ郡からの観測情報を統計的な枠組みで統合することにより,照明条件など動的に変化する環境に対しても安定かつ高精度な追跡を実現する.更に,部屋の詳細な3次元形状などの環境モデルを利用することで,実世界環境における人物の行動パターンをも考慮した手法を検討している.

一般の照明環境下における物体反射率と光源分布の同時推定
助教授 佐藤 洋一[代表者],大学院学生 杜菲,技官 岡部孝弘,協力研究員 杉本晃弘
一般的な照明環境下において撮影された映像をもとにして,物体表面の反射率を推定する手法を開発している.一般に物体からの反射光は,物体表面の反射特性とその物体が置かれた環境における照明条件の両方に依存する.そのため,観察された物体表面の明るさからこれら2つの要因を分離することは困難であり,従来手法では単一の光源のみが存在するなどの特殊な環境を仮定することが必要であった.本研究では,実世界環境における複雑な照明分布と物体表面反射率の両方を同時に推定するアルゴリズムを提案し,その有効性を実験的に検証している.

任意光源下における画像生成:周波数基底画像に基づく実物体のモデル化
助教授 佐藤 洋一[代表者],大学院学生 佐藤いまり,技官 岡部孝弘, 教授 池内 克史
物体表面の明るさや色合いは光源環境の変化により大きく変化する.そのため,物体認識および画像合成の分野では,複雑な光源環境下での物体表面の見えを生成するための物体のモデル化手法が必要とされている.本研究では,光源の入射方向と視線方向により定義される物体表面の双方向反射関数の周波数特性を考慮し,その反射関数を復元するために必要な光源の入射方向を明らかにすることにより,点光源下で観察された物体表面の明るさから物体表面の反射特性を球面調和関数の係数として効率良くモデル化する手法を提案する.提案する手法に基づき物体表面の反射特性を球面調和関数の係数として表現し,全方位画像により計測された光源環境も球面調和関数の係数として表現することにより,この光源環境下で観察されるべき物体の見えを双方の係数の掛け合せに基づいて生成することができる.

実世界指向インタフェースによる効率的なユーザ作業支援
助教授 佐藤 洋一[代表者],研究協力員 杉本晃宏,協力研究員 中西泰人
ユビキタス・コンピューティング環境においてユーザが意識することなく利用できる透明なインタフェースを実現するためには,実世界環境と電子メディアの連携を重視したパラダイムにもとづくインタラクションへのシフトが重要となる.本研究では,マルチメディアコンテンツなどの電子メディアと書類などの実在メディアとの連携に着目し,拡張机型インタフェースによる透明なインタフェースの実現を目指す.具体的には,実世界に埋め込まれたセンサ群からの情報にもとづくユーザの行動およびその意図の理解,実世界におけるさまざまな事象の認識,ユーザの知覚と行動の動的相互作用に関するモデルの獲得,などの面において研究をすすめる.

複合精密加工システム寄附研究部門

複合粒子研磨法の開発
客員教授 河田 研治
従来のポリシング加工で使用していた研磨パッドの代わりに,キャリア粒子と呼ばれるポリマー微粒子を用いる全く新しい発想の研磨法「複合粒子研磨法」を開発した.この研磨法においては,工作物と定盤(工具プレート)との間にキャリア粒子を介在させ,キャリア粒子表面に付着あるいは保持された砥粒の研磨作用により加工が進行する.本研磨法においては,キャリア粒子と砥粒との界面化学的相互作用や,キャリア粒子を加工域に供給し一定時間滞留させるための工具プレートの材質・表面形状(粗さ)などが加工特性を支配する.

ジルコニア凝集砥粒を用いた研磨フィルムの開発
客員助教授 榎本 俊之
従来,光学ガラスやシリコン酸化膜は遊離砥粒による研磨仕上げが行われていたが,加工能率が低く形状精度が劣化しやすいといった問題が生じていた.これらの問題を解決するために様々な固定砥粒加工工具が開発されてきたが,いずれも加工能率と仕上げ面品位の両立した向上を達成することができず実用には至らなかった.そこで超微細なジルコニア粒子を凝集させた粉末を砥粒に用いることで,研磨仕上げ相当の高加工面品位を高い能率で達成することを可能にし,現在は光学ガラスや酸化膜CMPへの適用を検討している.

荏原バイオマスリファイナリー寄附研究ユニット

水熱反応を用いたバイオマス物質変換技術の開発とバイオマスリファナリープロセスの設計
客員助教授 望月 和博[代表者],寄付講座教員(東大 生研)佐藤伸明, 教授 迫田 章義
バイオマスリファイナリーの創成を目指し,物質変換から分離精製に至る一連の技術開発に取り組んでいる.バイオマス(もみ殻,トウモロコシ茎など)から,バイオマス化学原料(フルフラールなど)を生産するための蒸煮爆砕と膜分離の統合による反応・分離同時プロセスの開発を行なっている.また,そのバイオマス由来副産物に対して物理化学的処理を用いた材料や燃料の製造方法に関する研究も行なっている.これらの技術を統合した生産プロセスの設計をし,バイオマスリファイナリープロセスのフィジビリティに関する評価を行なっている.

水熱炭化反応によるバイオマスの燃料化
客員助教授 望月 和博[代表者],寄付講座教員(東大 生研)佐藤伸明, 教授 迫田 章義
バイオマス残渣のスラリー燃料化技術の開発を目的として水熱炭化反応に関する基礎研究を行なっている.この高温高圧水中でのバイオマスの炭化反応は新規的であり,そのメカニズム等は明らかでない.本研究では,数種類のバイオマス(スギ,竹,トウモロコシ茎など)に対して水熱炭化実験を実施し,反応メカニズムや反応速度の解析を行なっている.また,新しい応用として炭化物材料(活性炭や土壌改良剤など)の製造方法に関する研究も行なっている.これらの研究結果をもとに,本技術のフィジビリティに関する評価を行なっている.

バイオマスタウンモデルの設計手法の開発と物質・エネルギーフローの評価
客員助教授 望月 和博[代表者], 教授 迫田 章義
地域内で必要な製品やエネルギーをバイオマス資源でまかなうことのできる社会「バイオマスタウン」の実現可能性を評価するため,バイオマスタウンモデルの設計手法の開発に取り組んでいる.この設計手法は,地域におけるバイオマスの生産量や発生分布などの地域統計データおよびバイオマス利用技術における物質・エネルギー変換効率などの技術データに基づいている.この手法を用いて設計されたバイオマスタウンにおける物質・エネルギーフローの評価を行い,実際地域におけるバイオマス利用政策を検討するためのシナリオ解析を実施する.

計算科学技術連携センター

次世代量子化学計算システム
客員助教授 佐藤 文俊
密度汎関数法による大規模タンパク質の量子化学計算ソフトウエアを開発し,公開する.すでに開発したプログラムProteinDFに,自動計算法,量子分子動力学法,超大規模タンパク質計算,タンパク質波動関数データベースに関する諸研究開発成果を統括したシステムである.

東京大学国際・産学協同研究センター

超低電力プロセッサの設計
教授 桜井 貴康
(東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

アクティブリークを削減するナノサーキットの研究
教授 桜井 貴康
(東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

ユビキタスコンピューティングに対応した無線/アナログチップ技術
教授 桜井 貴康
(東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

有機トランジスタの大面積エリアセンサーへの応用
教授 桜井 貴康
(東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

超低電力プロセッサの設計
教授 桜井 貴康
技術の進歩にともなってひとつのチップに詰め込まれるトランジスタの数が増え,消費電力を下げる回路技術が重要になってる.桜井研究室では電源電圧を下げることが低消費電力化に効果の高いことに着目し,電源電圧0.5Vという低電圧下において400MHzで動作するプロセッサを設計した.0.25μm,デュアルVTH,完全空乏型SOI技術を使って検証し,電源電圧0.5V世代におけるVLSI設計の一つの方向性を示した. また,ソフトウェアと協調して低電力化を達成する,電圧ホッピング技術の開発も行っている.負荷に応じて電源電圧を動的にコントロールすることにより,携帯電話への応用を視野に入れている.

アクティブリークを削減するナノサーキットの研究
教授 桜井 貴康
トランジスタがオフの時に流れる電流を漏れ電流と呼ぶ.トランジスタの寸法がナノメートル領域に入るにしたがって,漏れ電流が動作時でさえも支配的になってくることがわかった.この漏れ電力を減らすために,統括的設計手法などの設計指針を確立するとともに漏れ電力をカットオフ制御するzigzag方式を提案し,有効性を実証した.

ユビキタスコンピューティングに対応した無線/アナログチップ技術
教授 桜井 貴康
電子システムの複雑化するにつれてLSI間の接続が高速・大容量化している.本研究では,「スーパーコネクト(チップの高性能接続)」を提唱し,15μm角のパッドで5Gbps/1mWを実現し,将来の新しいシステム実装方法を提案した. ユビキタスコンピューティングを実現するために必要な,低コストのアナログ回路や極短距離ワイヤレス回路についても研究をしている.

有機トランジスタの大面積エリアセンサーへの応用
教授 桜井 貴康
現在の電子回路の基本はシリコンで作られた集積回路だが,自由自在に曲げることのできる大面積のセンサーを作ることはできない. 本研究では炭素と水素を基調にしたスイッチ(有機トランジスタ)で作られた多数の圧力センサーと周辺回路を,柔軟性をもつプラスチックシートに集積し,数センチメートル角に1000点以上のセンサーを持つシートを実現した.これに感圧ゴムと保護膜を組み合わせることにより,電子的な人工皮膚としての動作を確認した.もうすぐロボットも人のような繊細な皮膚感覚を得られるかもしれない.

車両・軌道システムにおける運動力学と制御に関する研究(継続)
教授 須田 義大[代表者],技術官 小峰久直,大学院学生 道辻洋平 ,大学院学生 松本耕輔,大学院学生 王 文軍
高速性,安全性,大量輸送性,省エネルギー性などの点で優れている, 軌道系交通システムについて, 主として車両と軌道のダイナミクスの観点から, より一層の性能向上や環境への適用性を改善することを目標に検討している. 本年度は,新方式アクティブ操舵台車, 模型走行実験による曲線通過特性, 摩擦制御,空気ばねの制御手法,一軸台車の防振性能向上の検討を行った.

マルチボディ・ダイナミクスによるヴィークル・ダイナミクス(継続)
教授 須田 義大[代表者],研究員 曄道佳昭,研究員 中代重幸 ,協力研究員 椎葉太一,大学院生 道辻洋平,大学院学生 田邉裕介 ,大学院学生 田口貴之
マルチボディ・ダイナミクスによる運動方程式の自動生成, さらにダイナミック・シミュレーションなどの自動化は, 宇宙構造物, バイオダイナミクスなどの複雑な力学系において有用なツールである. 本年度は, リアルタイムシミュレーションを可能とするソフトウエアによるドライビングシミュレータへの実装,評価を行った.

コルゲーションの成長・減衰機構の研究(継続)
教授 須田 義大[代表者], 助手 岩佐 崇史,研究員 曄道佳昭 ,技術官 小峰久直 ,外国人研究員 張継業
鉄道レール上の発生するコルゲーション現象(波状摩耗), さらに転がり軸受などに発生するコルゲーションについて, 検討を進めた. 実験装置上における生成機構のモデル化およびシミュレーションを行い, 滑りがコルゲーションの発生・成長に与える影響を検討した.

セルフパワード・アクティブ振動制御システムに関する基礎研究(継続)
教授 須田 義大[代表者],研究員 中代重幸 ,協力研究員 中野公彦,大学院生 林 隆三
振動エネルギーを回生し, そのエネルギーのみを利用した外部からエネルギー供給の必要のない, 新しいアクティブ制御を実現するセルフパワード・アクティブ制御について, 研究を進めている. 船舶の動揺装置への適用について検討を継続し, 模型船での実証実験にひきつづき,実船におけるシミュレーション評価とエネルギーの一時貯蔵システムについての検討を行った.さらに,新たに新交通システムへの適用についても検討した..

磁気浮上系における浮上と振動の制御(継続)
教授 須田 義大[代表者], 助手 岩佐 崇史,研究員 中代重幸 ,大学院生 道辻洋平
永久磁石を併用した吸引式磁気浮上システムにおいて, 浮上のための電流ゼロ制御と防振制御を両立させる手法について検討を行った. 本年度は, 浮上のロバスト性を向上させるための外乱オブザーバの適用と,動揺制御手法の最適化を図り,実験によりその効果を実証した.

車両空間の最適利用に関する研究(継続)
教授 須田 義大[代表者], 助手 岩佐 崇史,技術官 小峰 久直,大学院学生 平沢 隆之,民間等との共同研究員 林哲也
快適で効率のよい公共交通機関の実現には, 走行性能の向上, 振動乗り心地特性の改善とともに, 交通空間の効率のよい利用が大切である. 本年度は, 動揺模擬装置を用いた快適性評価手法の検討,車内の乗客の行動調査などについて検討を進めた.

自動車における電磁サスペンションに関する研究(継続)
教授 須田 義大[代表者], 助手 岩佐 崇史,大学院生 林 隆三 ,大学院生 川元康裕,大学院生 後藤友伯
ITSの進展に伴う自動車における電子化, 情報化の背景を踏まえ, サスペンションの機能向上, 性能向上, 乗心地向上, 省エネルギー化などを目標に, 電磁サスペンションの検討を進めた. アクティブ制御系への展開,大型車両への応用,センサー機能に関する検討などを行った.

都市交通向け自転車に関する研究(継続)
教授 須田 義大[代表者], 助手 岩佐 崇史,研究員 曄道佳明
自転車をエコロジカルな交通システムととらえ,都市交通における公共交通機関との連携を図った新たな自転車の可能性を検討している.本年度は,小径自転車の低速走行時の安定性に着目し,マルチボディダイナミクスによる解析と実験による検討を進めた.

自動車用タイヤの動特性に関する研究(継続)
教授 須田 義大[代表者],協力研究員 椎葉太一 ,大学院生 後藤友伯,大学院生 田邉裕介
走行安全性を向上させるための車両運動制御,ITSに対応した新たな自動車制御のためには,タイヤの動的な特性を詳細に把握することが重要である.本年度は,スリップアングルの動的入力に対する接触力特性に着目し,タイヤ動特性試験を実施し,タイヤの物理パラメータ,タイヤサイズ,グリップ特性の影響を評価するためのモデルの構築を試みた.

バーチャル・ブルービンググラウンドの研究(継続)
教授 須田 義大[代表者],協力研究員 椎葉太一 ,大学院生 田邉裕介,大学院生 多加谷敦,大学院生 田口貴之,民間等との研究員 大貫正明 ,技術官 小峰久直
マルチボディ・ダイナミクスの車両運動モデルを用いたドライビングシミュレータによるバーチャル・プルービンググラウンドを提案している.リアルタイムシミュレーション手法の改善,タイヤ試験機との連携,ステアリング特性,道路交通環境の高度化などを検討した.

ITS車両による路面情報収集と車両制御に関する研究(継続)
教授 須田 義大[代表者], 助手 岩佐 崇史,技術官 小峰久直 ,大学院生 後藤友伯,大学院生 川元康裕,大学院生 多賀谷敦,大学院生 平沢隆之
車両の運動性能向上,安全性の向上のためには,路面情報収集が有効である.ITS(高度道路交通システム)への適用として,車両に取り付けたセンサーによる路面情報収集手法を提案し,実車両における走行試験を行い,その手法の評価を行った.

サスペンション系のコントロール・フュージョンに関する研究
教授 須田 義大[代表者],須田研 大学院生 林 隆三,須田研 協力研究員 中代重幸,須田研 協力研究員 中野公彦
単一の電磁デバイスを用いて,運動・動揺・振動制御の融合の実現と,センサー・アクチュエータ・スプリング・パッシプダンパ・エネルギー回生などの複数の機能を融合した制御を構築する新たなサスペンション系を実現するため,コントロール・フュージョン,すなわち機能融合制御を提案し,その基礎的,展開的研究を行った.

射出成形における型内樹脂流動計測システムの開発
教授 横井 秀俊[代表者],大学院生 宿 果英
(東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

射出成形における溶融樹脂温度分布の計測
教授 横井 秀俊[代表者],講師 村田泰彦
(東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

超高速射出成形現象の実験解析
教授 横井 秀俊[代表者],講師 村田泰彦,協力研究員 阿部聡,CCR協力研究員 長谷川茂・瀬川憲・須藤克典・原田知広,技術官 増田範通,技術推進員 宮地智章,大学院学生 韓雪・宿果英・中野雄介・高橋辰夫・奈良岡悟
(東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

超高速複合射出成形の研究
教授 横井 秀俊[代表者],講師 村田泰彦,大学院学生 中野雄介・宿果英
(東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

型内圧力計測精度評価システムの研究
教授 横井 秀俊[代表者],大学院学生 永井崇之
(東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

射出成形における型内樹脂流動計測システムの開発
教授 横井 秀俊[代表者],大学院生 宿 果英
基礎計測技術の研究として型内樹脂流動を計測する各種手法の開発と成形現象の実験解析を目的としている.本年度は,多数個取り金型における充填バランスについて,その支配要因を検討するために,各成形条件下のランナー分岐部での樹脂温度変化計測とキャビティ内への流動状況可視化計測を行い,それぞれの相関解析を試みた.その結果から,ランナー内樹脂温度変化が充填バランスを直接支配していることを具体的に明らかにした.また,結晶性樹脂と非晶性樹脂の充填バランスの違いについても相互比較を行った.

射出成形における溶融樹脂温度分布の計測
教授 横井 秀俊[代表者],講師 村田泰彦,協力研究員 阿部聡
射出成形は,断熱材料である樹脂の溶融・流動・冷却固化プロセスと捉えられ,各過程における温度分布計測は,極めて重要である.これまでに樹脂温度分布の計測を目的として,めっきにより多数の熱電対パターンを薄いポリイミドフィルム上に形成した集積熱電対センサを提案し,それにより各種条件下におけるノズル内温度分布,キャビティ内温度分布の計測を行ってきた.本年度は,これまで得られた研究成果の一つである各種キャビティ条件における型内温度分布計測について,論文を想定してのまとめを行った.

超高速射出成形現象の実験解析
教授 横井 秀俊[代表者],講師 村田泰彦,技術官 増田範通,協力研究員 阿部聡,CCR協力研究員 長谷川茂・瀬川憲・須藤克典・原田知広,研究支援推進員 宮地智章,大学院学生 韓雪・宿果英・中野雄介・高橋辰夫・奈良岡悟
本研究では,超高速射出成形現象について多面的に実験解析を行い,不確定因子の多い成形技術,金型技術の確立と新規な高機能・高付加価値成形品の実現に資することを目的としている.本年度は,(1)超高速射出成形条件下でのフローフロント速度変化計測,(2)矩形薄肉キャビティにおける可視化観察(3)バーフロー金型によるガスベント効果の検討,(4)高転写成形の実験解析,についてそれぞれ検討を行った.

超高速複合射出成形の研究
教授 横井 秀俊[代表者],講師 村田泰彦,大学院学生 中野雄介・宿果英
本研究では,超高速射出成形を複合射出成形へと適用することにより,超薄肉複合成形品など,これまでの工法では達成できない新しい機能成形品実現の可能性を探求することを目的としている.ここでは,新たに超高速複合射出成形機を構成し,超高速サンドイッチ成形および多層成形への適用実験を開始している.本年度は,新たにコアバック機構の多層成形用金型を開発し,超高速射出による多層射出成形の予備評価実験を行い,一次成形品の一部分に約150μmまでの二次射出材層が形成された成形品を得ることに成功した.

型内圧力計測精度評価システムの研究
教授 横井 秀俊[代表者],大学院学生 永井崇之
射出成形過程における型内圧力は,成形品品質を決める重要なパラメータの一つである.昨年度においては,樹脂の種類および射出率,金型温度,保圧といった多様な要因と圧力測定値との相関を効率よく測定するために,自動的に計測可能な新しい評価システムの開発を行い,その有効性を実証的に明らかにした.本年度は,引き続き本システムを用いて,エジェクタピン径,樹脂,成形条件が型内圧力計測値に及ぼす影響について検討を行った.その結果,射出率が高くなるに従って突き出し量の変化による型内計測圧力値の変動が小さくなること,結晶性樹脂であるPPでは,ピン突き出し量による型内圧力計測値への影響がほとんどなくなることを明らかにした.

金属多層膜の輸送的性質に関する研究
教授 山本 良一[代表者],神子 公男,山本研 大学院学生 千早宏昭,山本研 大学院学生 五來 敦
金属多層膜の輸送的性質に関する研究Fe/Cr等の金属多層膜は巨大磁気抵抗効果を示すことが発見され, すでにハードディスク用の磁気ヘッドへの応用が始まっている. スパッタ法によって作成したCu/Co多層膜の磁気抵抗効果の大きさは最大で30%以上の値を示し, Cu層厚の関数として振動する. MBE法によって作成したCu/Co多層膜および合金薄膜についても研究を行っており, そのメカニズムについて研究中である.

金属ナノ薄膜の結晶成長の初期過程に関する研究
教授 山本 良一[代表者],神子 公男,山本研 大学院学生 千早宏昭
金属多層膜は巨大磁気抵抗効果や垂直磁気異方性などの興味深い物性を示すが, これらの物性は異種金属界面の構造に非常に敏感である. そこで, 多層膜の界面構造を制御することを目的として, 結晶成長の初期過程に関する研究を行っている. これまでに, 金属薄膜のナノ構造を,人工的に自己組織化させるサーファクタントエピタキシー法に関する研究を行っている.

第一原理計算手法を用いた光ファイバー材料中の点欠陥に関する研究
教授 山本 良一[代表者],山本研 大学院学生 田村友幸,山本研 大学院学生 松井 裕
第一原理分子動力学法を用いてGe添加SiO2ガラス中の点欠陥の原子構造および電子状態に関するシミュレーションを行い,電子論の観点から光誘起屈折率変化を考察することにより,光デバイスプロセス技術の発展に寄与することを目的に研究を行っている.

ライフサイクルアセスメントの材料への応用
教授 山本 良一[代表者],山本研 大学院学生 本田智則,山本研 大学院学生 Nguyen Hong Xuan,山本研 大学院学生 永島康一
環境負荷を総合的かつ定量的に評価することが低環境負荷材料を開発する上で重要な用件である. LCAはその中でも最も注目を集めている評価法である. しかし, LCAのデータベースおよびインパクト分析について, 各製品を構成する材料の組成および特性まで着目した評価を行うことは困難であり, このような方法は未だに確立されていない. 本研究では環境負荷の評価を, より詳細かつ正確に行うため, 製品の前段階である材料および素材のLCAを開発し, 実際に既存材料, 新材料等に適用することを目的とする. また, 材料特性の一つとして環境調和性を組み込むことを大きな特徴としている.

路上駐車車両の交通流に与える影響の分析
教授 桑原 雅夫[代表者],助手 田中伸治
都市内の道路交通渋滞は依然として大きな問題であり,その主要な原因の一つとして,路上駐車車両による交通容量の低下があげられる.本研究では,包括的な駐車管理施策を実現するための根拠として必要な,路上駐車車両による交通流への影響を定量的に評価することを目的としている.そのため,路上駐車により渋滞が発生している幹線道路における現地観測調査や現行の駐車規制・取締り方法の問題点の把握など,実証面・制度面等様々な角度から検討を行っている.

ITSセンシング技術を用いた信号制御アルゴリズムの開発(継続)
教授 桑原 雅夫[代表者],助手 田中伸治,民間等との共同研究員 堀口良太,大学院学生 浅野美帆
日本で現在行われている「プログラム選択方式」の信号制御は,制御パターンをあらかじめ設定しておく必要があり,良好な交通状態を維持するためのコストが大きい.本研究では近年開発されてきた画像処理によるセンサー等を用いて,これまで測定できなかった信号待ちによる各車両の遅れ時間を測定し,その遅れを最小化するよう信号パラメータを自動生成する制御アルゴリズムを開発している.

SHORT-TERM TRAVEL TIME PREDICTION USING TRAFFIC DETECTOR DATA
教授 桑原 雅夫[代表者],助手 田中伸治,大学院学生 Shamas ul Islam Bajwa
A method for predicting travel times on short-term basis for expressways is developed. The method is based on the assumption that traffic patterns are recurrent in nature. The complete model is formulated in this research, which first defines the pattern, and then searches the similar patterns, after searching the similar patterns and filtering the outliers, it predicts the travel times. The model is optimized using genetic algorithms and it is found that optimization enhances the performance of the model by approximately 10%. To validate all the assumptions and fulfillment of objectives, extensive testing of the model is carried out. The testing of model indicates a good performance and provides satisfactory results. The model is proved to predict accurately and is sufficiently robust for real-time applications. One important property of the model is its capability to be transferred from one location to another without any modification, which seems to provide an "off-the-shelf" solution for implementation. The method can predict recurrent congestion with a greater accuracy than non-recurrent congestion as it relies on the recurrence of traffic patterns.

都市街路網の交通流シミュレータの開発(継続)
教授 桑原 雅夫[代表者],助教授(京都大学) 吉井稔雄,民間等共同研究員 堀口良太,助手 田中伸治
本研究では, SOUND (a Simulation model On Urban Networks with Dynamic route choice)とAVENUE (an Advanced & Visual Evaluator for road Networks in Urban arEas)という2種類の交通シミュレーションモデルを開発している.ともに,経路の選択行動を内生化しているモデルで,新たに交通規制・制御などの政策が実施された場合の,利用者の経路の変化を表現できる構造を持つ.また,利用者層を交通情報(旅行時間情報,渋滞情報など)に反応して経路を選択するかどうかによって,いくつかのグループに分けてシミュレーションを実行することができる.SOUNDは,リンク数・ノード数が数百から数千の規模のネットワークに,AVENUEは,リンク数・ノード数が数十から数百の規模のネットワークに適用するモデルである.ともに,数多くの適用事例を通して,その実用性が検証されている.

プローブデータを用いたOD推定と経路同定に関する基礎的研究
教授 桑原 雅夫[代表者],教授(東大国際・産学協同研究センター) Edward CHUNG,助手 田中伸治,大学院学生 石田友隆
プローブデータに含まれる位置情報誤差などの誤差が,OD推定や経路同定の結果にどの程度影響するのかを明らかにする.位置情報誤差と対象ゾーンの大きさとの比がOD推定結果に及ぼす影響や位置情報誤差を含んだ場合の有意なサンプル数の議論,位置情報誤差やデータ送信頻度,ネットワークのリンク密度が経路同定に及ぼす影響などを分析した.

交通流変化を考慮した自動車排出ガス量評価手法の研究(継続)
教授 桑原 雅夫[代表者],助教授(東京都立大学) 大口敬
本研究では,道路交通による大気環境への影響評価を行うために,道路交通流の渋滞状況や交通量,交通制御(交通信号)などの影響を適切に考慮したNOX,CO2などの自動車排出ガス量の定量的な評価手法を確立する.車両の走行挙動特性と排出ガス量の関係及び道路交通流の状態量と個々の車両の走行挙動特性との関係を分析し,排出ガス量を推定するモデルを構築するとともに,交通シミュレーションモデルへの適用により,交通流改善政策による排出ガス削減効果を評価する.

交通流シミュレータに用いるパラメータの自動調整方法(継続)
教授 桑原 雅夫[代表者],教授(千葉工業大学) 赤羽弘和,助教授(京都大学) 吉井稔雄
交通環境改善施策による効果を事前に評価するツールのひとつとして交通流シミュレータが挙げられる.シミュレータには交通容量に代表されるネットワークパラメータが必要だが,渋滞状況などの交通状況を忠実に再現するためにはパラメータの微妙なチューニング作業が必要となる.チューニング作業では多くのパラメータを人手によって同時に調整しなければならないため,シミュレータ利用者にとって大きな負担となっている.本研究は,ボトルネック容量と旅行時間の関係に着目することにより,パラメータのチューニング作業がシステマティックかつ自動的に進む効率的なアルゴリズムの構築を目的とするものである.

Area wide dynamic road traffic noise simulation
教授 桑原 雅夫[代表者],教授(東大国際・産学協同研究センター) Edward CHUNG,助手 田中伸治,大学院学生 Ashish Bhaskar
The basic objective of the research is to integrate dynamic area wide traffic simulation into a noise model and; to give comparative overview of noise abatement policies. We develop a tool, DRONE (areawide Dynamic ROad traffic NoisE) simulator, for accurate, efficient and detailed prediction of road traffic noise. DRONE predicts traffic noise not only on spatial scale (area-wide) but also on temporal scale (dynamic). It gives visual representation to traffic noise in the form of area-wide dynamic noise contour maps.