研究及び発表論文

研究部・センターの各研究室における研究

物質・生命部門

荒川研究室参照のこと
助教授 染谷 隆夫

分子系超構造の設計と作製(継続)
教授 荒木 孝二[代表者],技術官 吉川 功 大学院学生 高澤 亮一・柳 卓 ・李ジュン
分子間相互作用の階層化という方法論に基づく高次組織構造構築を目指した研究の一環として, アルキルシリル置換ヌクレオシドが塩基間多重水素結合して形成する一次元テープ状ユニットについて検討した. その結果,一元テープ状ユニットが二次元シートを経て階層的に集積した新規な超分子フィルムの作製に成功し,その構造や特性を明らかにした.また一次元テープ状ユニットを擬似高分子鎖とする超分子繊維の開発を昨年に引き続き行い,三重水素結合鎖を持つ新規なトリアミドシクロヘキサン誘導体の超分子繊維を加熱紡糸により作製し,その特性を明らかにするとともに,共重合型擬似高分子鎖の一次配列を立体要因に基づく制御を行い,交互性の高い共重合型擬似高分子を作製した.

光電子機能性有機材料に関する研究(継続)
教授 荒木 孝二[代表者], 助手・特別研究員 務台 俊樹 大学院学生 赤坂 哲郎・岸本章・奥田隆一
光機能性分子素子の開発に向けて,酸化還元応答型分子スイッチ部となるアゾ架橋型ビステルピリジル錯体への光励起エネルギー注入を行う光捕集部位として, フェニル置換ビピリジン錯体やクマリン誘導体を用いた系を設計・合成し,効率の良く明確な方向性を持つエネルギー移動系となることを確認した.またエネルギー移動系に酸化還元およびプロトン応答を示すスイッチングユニットを導入し,光励起エネルギー移動のスイッチングが可能な分子スイッチとして機能することを見出した.また,ポリペプチド鎖を介しての長距離エネルギー移動系を構築し,二次構造相転移によるエネルギー移動のスイッチングが可能であることを明らかにした.さらに応答速度の速い有機フォトリフラクティブ材料などの開発に向けて,非線形光学物質の設計と合成の最適化も行った.

機能性有機蛍光材料の開発(継続)
教授 荒木 孝二[代表者],助手・特別研究員 務台 俊樹 大学院学生 田鎮棟・井関 大
蛍光性を付与して新規な機能性の高い有機蛍光材料を開発する研究を進めており, すでに多点分子間相互作用部位を持つポリピリジル化合物に蛍光性を付与した新規な機能性蛍光物質群の設計・合成に成功している. 本年度は,新規な蛍光性ポリピリジル化合物として,アミノ置換ポリピリジルとブロモ置換ポリピリジルとの反応により得られる各種のビスポリピリジルアミン誘導体を合成し,その蛍光特性や金属配位子としての特性を検討した.その結果,ビステルピリジルアミンが蛍光性を示し,Zn2+やEu3+と2:3のらせん状錯体を形成することを明らかにした.

輸送機能を持つ分子システムの構築(継続)
教授 荒木 孝二[代表者],教授 荒木 孝二, 助手・特別研究員 務台 俊樹, 技術官 吉川 功 大学院学生 張書宏
選択性の高い分離・輸送系や光エネルギー変換系の構築を目的とした研究の一環として, 光やpH差を利用してキャリア分子の基質親和性のスイッチングをおこない, 高効率かつ高選択性の能動輸送系を実現する研究を進めている. 本年度は, 各種アルキルアミンの逆ミセルを用いた超分子キャリアによるプロトン駆動型アニオン能動輸送系で,わずかなpH差で効率の良いアニオン能動輸送が起きる要因が,逆ミセルの形成-破壊に基づくものであることを示し,新しい超分子キャリアを用いる輸送系の高い機能性を明らかにした.

機能性金属錯体に関する研究(継続)
教授 荒木 孝二[代表者],教授 荒木 孝二, 助手・特別研究員 務台 俊樹 大学院学生 川口 聖司
遷移金属触媒による配位性アミド化合物からの効率の良いアミノ酸エステル生成反応について, 生体モデル反応という観点からの研究を行っている. 昨年度に引き続き, テルピリジル配位部位を持つ新規な配位性アミド化合物のCu(II)触媒によるアミド加溶媒反応において, 活性種となる解離型アミド錯体の構造と,反応機構との関連についてさらに詳細に検討し, 常温で極めて効率よく進む要因を解明した.

超格子界面からの電界電子放射に関する研究
教授 岡野 達雄[代表者], 教授 榊 裕之,大学院学生 染谷英行, 助教授 福谷 克之
半導体超格子界面に局在する2次元電子系からの電界電子放射の研究を継続している.本年度は,超高真空雰囲気で多数回へき開が可能な機構を開発した他,半球型電子分光器の整備を行った.明確にヘテロ界面に局在した電子系の電界放射と断定できるデータは,未取得であるが,大気中劈開と超高真空劈開したヘテロ界面からの電子放射の測定に成功した.

放射光励起による内部転換電子放射の研究
教授 岡野 達雄[代表者], 助教授 福谷 克之, 助教授 小田 克郎,技術官 河内泰三,助手(高エネルギー加速器研究機構) 張 小威,研究員(高輝度光科学研究所)依田芳卓
放射光励起内部転換電子放射の研究を進めている.核共鳴前方散乱測定を併用した固体表面の鉄シリサイド膜および物理吸着クリプトンの測定を行った.双方の試料について,核共鳴非弾性散乱スペクトルと時間スペクトルの取得に成功した.また,小田研究室作成のFe4N試料の磁化異方性の測定を行った.

真空工学に関する基礎研究
教授 岡野 達雄[代表者],教授(高エネルギー加速器研究機構) 小林正典
真空工学の基礎となる固体表面と分子の相互作用について研究を進めている.現在取り組んでいる課題は,(1)清浄超平坦化表面での分子散乱の研究を目標とした平坦化薄膜の製作と評価に関する研究,(2)オルソ水素ビームの発生技術の開発,(3)クライオポンプの排気特性に対する分子内部自由度の影響などである.

表面吸着水素の拡散と非局在化に関する研究
助教授 福谷 克之[代表者], 助手 ビルデ マーカス,大学院学生 鈴木涼,技術官 小倉正平, 教授 岡野 達雄,教授(阪大工)笠井秀明
表面に吸着した水素の拡散と非局在性について,窒素イオンと水素との共鳴核反応を利用した研究を進めている.本年度は,W(110)表面における実験を行った.W(110)表面では水素の被覆率が大きくなるにつれて,吸着位置が2配位から3配位へと変化すると予想されている.また被覆率が大きいときには水素の拡散が容易になり,擬似的な液状化相が形成される可能性が指摘されている.ゼロ点振動エネルギーの測定を行ったところ,振動エネルギーは被覆率によってほとんど変化しないことがわかった.吸着位置の変化は起こっておらず,また擬似液状化相も形成されていないと考えられる.

共鳴イオン化法による水素のオルソ・パラ転換過程の研究
助教授 福谷 克之[代表者], 教授 岡野 達雄, 助手 ビルデ マーカス, 助手 松本 益明,大学院学生 伊藤敬洋
固体の表面では水素分子の核スピン状態が1重項から3重項へと転換することが知られており,本研究ではその微視的な機構の解明と新たなスピン計測法の開発を目指して研究を進めている.本年度はAg薄膜表面での光脱離・オルソパラ転換の実験を行った.7Kで作製したAg薄膜にノーマル水素分子を吸着させた後,6.4eVの紫外光を照射して脱離する分子のスピン・回転状態測定を行った.核スピン状態の時間変化から,Ag表面でのスピン転換時間が780sであることを明らかにした.また基盤電子系を介することで,光誘起核スピン反転が起こることを発見した.

単結晶クロム酸化超薄膜の作製とその物性
助教授 福谷 克之[代表者], 助手 ビルデ マーカス,大学院学生 萩原浩樹, 助手 松本 益明, 教授 岡野 達雄
単結晶クロム基板上に膜厚を制御した単結晶超薄膜を作製し,その電子的・光学的性質に関する研究を進めている.昨年度,赤外吸収分光により薄膜の光学フォノンが720cm-1に存在することを見出した.今年度は,吸収スペクトルの温度依存性を測定したところ,300K以上でフォノンの振動数が低波数側にシフトすることを見出した.クロム酸化物のネール点が308Kにあることから,フォノンの変化は磁気相転移に関係していると予想される.磁場依存性を測定したが,1kGまでの低磁場では変化は見られなかった.また,ハーフメタルCrO2薄膜作製の準備を開始した.

絶縁膜/Si基板における水素挙動の研究
助教授 福谷 克之[代表者], 助手 ビルデ マーカス,技術官 小倉正平
SiO2/Si界面およびSiO2膜中に存在する水素がSiデバイスの特性に大きな影響を持つことが知られている.本研究では,核反応を利用して界面水素量を定量しデバイス特性との関連を明らかにすることで,デバイス特性の向上を目指している.本年度は,負電圧温度負荷効果,ポスト酸化加熱効果,酸化膜中への窒素添加効果,と界面近傍の水素量との関連を調べた.負電圧温度負荷をかけることにより,界面近傍に水素が蓄積することを明らかにした.またポスト酸化加熱により,水素の界面への蓄積を抑制できることを明らかにした.

金属超薄膜の電子状態と反応性
助教授 福谷 克之[代表者],技術官 小倉正平, 助手 ビルデ マーカス,助手(阪大理)岡田美智雄
金属超薄膜の電子状態は,膜垂直方向への量子化と配位数減少に伴う局在化という特徴を持つことが期待される.本研究では,走査トンネル顕微鏡と共鳴核反応法に密度汎関数に基づく第一原理電子状態計算を併用することにより,超薄膜電子状態の測定と水素分子反応性に関する研究を進めている.今年度はPt上に作製したAgおよびAu薄膜の反応性を調べ,いずれも単原子層でバルクに近い反応性を持つことを明らかにした.

2次非線形光学効果を用いた超短光パルスのソリトン圧縮
教授 黒田 和男[代表者], 助教授 志村 努, 助手 芦原 聡,大学院学生 藤岡伸英
超短光パルスは高速分光から光通信,光加工まで幅広いニーズがあり,その波長およびパルス波形の制御技術の重要性は疑う余地が無い.我々は2次非線形光学効果を用いた光ソリトン圧縮という,独自のアプローチによる超短光パルスの波長変換およびパルス圧縮の技術を開発している.これは,非線形光学媒質中の自己位相変調効果と群速度分散のバランスによって起こる「ソリトン圧縮」という現象を巧みに利用した方法である.特に,ポンプ波とその第2高調波が同時にパルス圧縮されるという興味深い特徴をもつ.これまでにBBO非線形結晶や周期分極反転ニオブ酸リチウム素子を用いたソリトン圧縮法により,近赤外域で約35フェムト秒へのパルス圧縮に成功している.

光パラメトリック増幅による中赤外超短光パルスの発生
教授 黒田 和男[代表者], 助教授 志村 努, 助手 芦原 聡,大学院学生 池田学
中赤外波長域(2〜10ミクロン)は分子の指紋領域と言われ,種々の分子振動モードが集まっている.我々は特に,分子振動や化学反応の高速分光からその量子制御への応用を目的として,中赤外域超短光パルスの発生を行っている.チタン・サファイアレーザーの再生増幅パルスをポンプ光とし,当研究室で作製した周期分極反転ニオブ酸リチウム素子を波長変換素子とした光パラメトリック増幅法を用いた.素子温度を制御することにより,中心波長3.5ミクロン,スペクトル幅0.7ミクロン,パルス幅66フェムト秒の超広帯域コヒーレント中赤外光の発生に成功した.

強誘電体分極反転素子の開発
教授 黒田 和男[代表者], 助教授 志村 努, 助手 芦原 聡,技術官 千原正男,技術官 小野英信,大学院学生 池田学・藤岡伸英
われわれは高調波発生や光パラメトリック増幅などの波長変換技術とパルス圧縮を組み合わせた新しい超短光パルス波長変換法を開発している.そのキーデバイスは,大きな非線形感受率と設計自由度をあわせもつ,強誘電体分極反転素子である.われわれはこのようなデバイスの設計および作製を行っている.ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムの単結晶から,電子線リソグラフィー技術および電界印加法により3〜20ミクロンの微細分極反転構造を有する素子を作製している.

光暗号化ディジタルホログラムを用いた3次元ディスプレイ
教授 黒田 和男[代表者], 助教授 志村 努,助手・特別研究員 的場修,技術官 千原正男・小野英信
光暗号化された3次元物体像をディジタルホログラムとして記録し,光学的に再生する方法について研究を行った.暗号化像のディジタルホログラムおよび鍵となるホログラムは送信可能であり,実時間記録・再生が可能なデータ保護機能を有する3次元ディスプレイへの応用が期待できる.提案するシステムは,暗号化された3次元物体の複素振幅分布をホログラムとして記録する系とJoint Transform Correlator(JTC)を用いた再生光学系からなる.計算機実験および光学実験により,正しい鍵ホログラムを用いた場合に,元の3次元像が再生されることを確認した.

窒化物半導体量子井戸構造を用いた光デバイスの研究
教授 黒田 和男[代表者], 教授 荒川 泰彦, 助教授 志村 努, 助手 芦原 聡,助手 西岡政雄,大学院学生 野村政宏・有田宗貴
InGaN/GaN量子井戸構造内には,格子不整合に起因する大きなピエゾ電場が存在し,内部電場の遮蔽によって吸収スペクトルが変化することが知られている.このことを利用して紫色領域で動作する光デバイスの開発を目指して研究を行っている.今年度は,420nm近傍に吸収端を持ち,井戸幅の異なるInGaN/InGaN多重量子井戸素子をMOCVD法により作製した.そして,井戸内に高密度の電子・正孔対を励起することで内部電場が遮蔽され,キャリアの緩和によって吸収スペクトルが時間変化する様子をフェムト秒ポンププローブ分光法によって観測した.

半導体ナノ構造の研究(1)−電子状態と物性の解明と制御−
教授 榊 裕之[代表者], 教授 荒川 泰彦, 教授 平川 一彦, 助教授 高橋 琢二,助教授(東京大物性研)秋山 英文,助手 野田 武司,技官 川津 琢也,博士研究員 M. Lachab,学術支援研究員 近藤 直樹,大学院学生 松岡 和,大学院学生 秋山 芳広,大学院学生 大森 雅登,協力研究員 井下 猛,協力研究員 田中 一郎,協力研究員 小柴 俊,協力研究員 Ph. Lelong,協力研究員 山内 美如 ,教授(カリフォルニア大)S.J. Allen,主任研究員(仏CNRS-ENS)G. Bastard
10nm(ナノメートル)級の半導体超薄膜を積層化したヘテロ構造やSiMOS構造内の極薄チャネルでは, 電子の量子的波動性が顕在化し, 新しい物性や機能が現われるので, 種々のデバイスの高性能化や高機能化に利用できる. 本グループは, これら超薄膜に加え, 量子細線や量子箱(ドット)構造を対象に, 電子の制御法の高度化と新素子応用の探索を進めている. 特に, 超薄膜の端面に形成するエッジ細線や, 結晶の微傾斜面上の原子ステップを活用した量子細線に加えて, 自己形成法で得られるInAs量子箱やナノ探針で誘起したドットなどを中心に, 電子の量子状態を理論解析するとともに, CWおよび時間分解レーザ分光・フーリエ分光・容量電圧分光・サイクロトロン共鳴による解明を進めている.低次元の電子や励起子の量子状態, 電子の散乱・拡散・トンネル透過・緩和などの過程や, 電子正孔対の束縛・解離・再結合過程の特色や制御法に関し, 新しい知見を得た.特に,正孔を捕えたドットの周辺を電子がリング状に周回する系の特色を明らかにした.

半導体ナノ構造の研究(2)−高性能ヘテロFET・超微細MOSFETと新電界効果素子−
教授 榊 裕之[代表者],助手 野田 武司,技術官 川津 琢也,大学院生 秋山芳広,教授(フィンランド国立技研(VTT))J. Ahopelto,大学院生(フィンランド国立技研(VTT))M. Prunilla
AlGaAs/GaAsなどのヘテロ構造を用いた超高速FETとSiO2/Si 構造を用いたMOSFETは, 電子工学の最重要素子のひとつである. これらの10nm(ナノメートル)級の伝導層を用いたFETと関連素子の高機能化と高性能化の研究を進めている. 特に, ヘテロ系FETに関しては, チャネル近傍に電子を捕縛する量子箱を埋め込んだ素子のメモリー機能や電子散乱の解明, 傾斜基板上のステップに沿う結合量子細線をチャネルとするFETの開発, さらにInGaAsやGaAs系ダブルヘテロ系FETの容量・電圧特性や移動度に関する研究を進めた. また, 絶縁基板上の Si 超薄膜をチャネルとするSOI型MOSFETや窒化物を用いたFETや速度変調トランジスタ(VMT)についても, 電子や正孔の量子状態や界面凹凸散乱などを明らかにする研究を行っている.

半導体ナノ構造の研究(3)−トンネル伝導素子および単電子素子−
教授 榊 裕之[代表者],助手 野田 武司,技術官 川津 琢也,大学院生 秋山芳広,大学院生 大森雅登,協力研究員 田中一郎,教授(カリフォルニア大)S. J. Allen
トンネル障壁を2重に設けた素子構造では, (1)特定波長の電子波が共鳴的にトンネル透過したり,(2)2枚の障壁間に蓄積される電子の静電的な作用で伝導が抑制される.この現象の素子応用可能性を探っている.特に, 自己形成InAs量子箱を埋め込んだGaAs/AlGaAs二重障壁ダイオードを対象として零次元電子の関与した共鳴トンネル効果を調べるとともに, ヘテロFETのチャネルの近傍にInAs量子箱を埋め込んだ素子において, 単一の電子の捕捉の関与したメモリー現象と光検出器応用の検討を進め,その高性能化の研究を進めている. また, 20 nm程の周期の界面凹凸を持つヘテロ接合に量子ポイント構造を作り込み,弾道伝導が量子化コンダクタンスと大きくずれることについて,その起源を調べている. さらに, 収束形の静電界の作用で量子井戸中に零次元状態や一次元状態を誘起した時の電子の量子状態とそれを介する伝導の特色を理論実験の両面から調べている.

半導体ナノ構造の研究(4)−光学的性質の探求とフォトニクス素子応用−
教授 榊 裕之[代表者],助手 野田 武司,学術研究支援員 近藤 直樹,大学院学生 松岡 和,大学院学生 秋山芳広,大学院学生 大森雅登,助教授(東京大物性研)秋山 英文,博士研究員 M. Lachab,協力研究員 井下 猛,協力研究員 小柴 俊,協力研究員 天内 英隆,教授(カリフォルニア大)S. J. Allen,主任研究員(仏CNRS-ENS)G. Bastard,教授(フィンランド国立技研)J.Ahopelto
先端的な光エレクトロニクス素子用の材料として注目されている量子井戸, 量子細線, 量子箱について, その光学特性を調べ, その素子応用を探索している. 特に, 10 nm級の寸法のInAs量子箱に赤外光を照射した時の電子の占有状態の変化を調べ, 光書き込みメモリーや光検出器としての特性の検討を続け,単一光検出のための素子設計を進めている.また, 各種の量子箱構造について光吸収や蛍光スペクトルとその電界依存性を解析し, 光変調器への応用可能性を探っている.さらに,テラヘルツ光照射時の歪誘起量子箱の蛍光特性の特異な変化から, 箱内の準位間の緩和過程を議論した. さらに量子井戸の端面に形成したGaAs/AlGaAs系のT型量子細線やステップ型量子細線の理論計算と光学計測により, 一次元励起子の束縛エネルギーや不均一性の効果および磁場やピエゾ電界の影響などの研究を進めた.

半導体ナノ構造の研究(5)−形成技術と構造評価法の開発−
教授 榊 裕之[代表者], 助教授 高橋 琢二,助手 野田 武司,技術官 川津 琢也,技術官 島田 祐二,学術支援研究員 近藤 直樹,大学院学生 秋山 芳広,大学院学生 大森 雅登,協力研究員 小柴 俊,協力研究員 田中 一郎
nm級の超薄膜に加えて, 量子細線や量子箱構造を分子線エピタキシーや先端リソグラフィ法で形成し, その形状や組成を原子スケールで評価し, 新しい電子材料・光学材料としての可能性を探索している. 特に, 結晶の(111)主軸から傾斜させた基板上での多段原子ステップの形成とそれを用いたInGaAs/GaAsおよびGaAs/AlGaAs多重量子細線構造の形成とその構造評価, また, GaAs/AlGaAsヘテロ構造内にInAsやInAlAsの島状結晶を埋め込み, 10 nm級の量子箱を形成し, FETメモリーや光素子への応用可能性を調べている. これらの構造を評価するために, 原子間力顕微鏡, 蛍光線の線幅や電子移動度および磁気抵抗振動の計測と解析を進め,総合的な知見を確立しつつある.

バイオマスを基盤とする石油製品代替品の開発
教授 迫田 章義[代表者], 教授 畑中 研一, 助手 下ケ橋 雅樹,技術官 奥山光作
バイオマスの大規模・大容量処理によって製造した工業原料を用いて,今日,石油化学製品によって提供されている機能を代替できる製品を合成する.

水中溶存オゾンの吸着を利用する新しい水処理技術の開発
教授 迫田 章義[代表者], 助手 下ケ橋 雅樹,技術官 藤井隆夫,迫田研 大学院学生 藤田洋崇,迫田研 大学院学生 白石賢治
シリカ系吸着剤には水中溶存オゾンに高い吸着性を有するものがある. しかも, 吸着されたオゾン分子は自己分解が抑制されることから, バルク水中よりもはるかに高密度で長時間の貯蔵が可能である. また, 有機物とオゾンが高濃度に濃縮されて共吸着する場合には, バルク水中に比べて非常に大きな有機物の酸化速度となる. これら現象の基礎と水処理への応用の検討を行っている.

新しい水処理のためのCarbon Whisker膜の開発
教授 迫田 章義[代表者], 助手 下ケ橋 雅樹,迫田研 大学院学生 べー尚大
Whisker膜(CWM)の開発を行っている. この新規の機能性炭素系膜は, セラミックス等の単体の上に炭素の膜が形成され, さらに設計した面密度で直径数ミクロンの炭素のヒゲを有している. このような構造から, 例えば水中の揮発有機物(VOC)の除去や微生物分離等の新しい水処理技術への応用が有望と考えられ, 材料とプロセスの同時開発を進めている.

吸着式天然ガス貯蔵のための技術開発
教授 迫田 章義[代表者],技術官 藤井隆夫,迫田研 大学院学生 福田剛之
エネルギー供給の効率化や石油代替エネルギーの利用が重要となっており, 簡便かつ有効な新規のエネルギー環境技術の開発が急務となっている. 本研究の目的は, 天然ガス導入を促進するために, 従来の天然ガス貯蔵方法よりも高密度かつ安全な貯蔵方法を提案・開発することである. 本年度, 新規合成吸着剤の製造ならびにその性能評価を開始した.

高温高圧水処理による未利用素材の資源化
教授 迫田 章義[代表者], 助手 下ケ橋 雅樹
生産活動から環境への汚濁負荷の削減と資源の有効利用の観点から, 廃棄物を「ごみ」として処分するのではなく「未利用素材」として有効に利用する技術の確立が望まれている. ここでは, 各種未利用素材からの有用物質の合成・抽出に対し, 水熱反応に代表される高温高圧(超/亜臨界)水反応の利用を目的として, 種々の原料および反応条件に対する生成物・素反応に関するデータベースの構築を行ない, 反応残滓を含めた用途開拓を試みることでトータルとしての再資源化に関する検討を行なっている. また, 水熱反応と物理的な粉砕の双方が期待できる蒸煮爆砕処理の導入や大量処理を念頭に置いた超/亜臨界水連続処理プロセスの開発を連携することで, 未利用素材の資源化プロセスの設計・構築に資する知見の集積を行なっている.

廃植物油を原料としたバイオディーゼル生成プロセスの確立
教授 迫田 章義[代表者], 助手 下ケ橋 雅樹,迫田研 大学院学生 張妍
石油基盤型社会からバイオマス基盤型社会への変換において,燃料製造プロセスの開発は重要である.本研究では特に食品用途のない低純度廃植物油を原料としたバイオディーゼル製造プロセスを設計・確立し,さらにその燃料としての質や環境影響を評価することを目的としている.

ニトロ多環芳香族化合物の気相吸着に関する研究
教授 迫田 章義[代表者], 助手 下ケ橋 雅樹,技術官 藤井隆夫,迫田研 大学院学生 藤田洋崇
焼却炉などからの排出が問題視されているニトロ多環芳香族化合物の除去法として,活性炭などを用いた吸着除去方法が注目されている.本研究では,同プロセスの設計上重要な知見となる,高温雰囲気下における各種ニトロ多環芳香族の活性炭などへの吸着挙動を明らかにすることを目的としている.

圧力スウィング吸着分離法を利用した同位体分離に関する研究
教授 迫田 章義[代表者],技術官 藤井隆夫,迫田研 大学院学生 藤田洋崇
安定同位体は医薬・医療産業等で重要な役割を担っており,更にその利用を拡大するためには有効な濃縮・分離手法の開発が必要となる.現在,精密蒸留法や化学交換法が安定同位体の主流な分離・濃縮手法となるが,コスト的問題を抱えるなど改善の余地は大きい.PSA法(圧力スウィング吸着法)は既に空気分離等で実証されているように優れた気体分離性能,処理容量を示すことから,新しい同位体分離手法としての期待は大きい.本研究では最適吸着剤,最適操作方法等について検討を行うと共に,その適用可能性と限界について明確化する.

巨大分子の水溶液吸着時の構造変化に関する研究
教授 迫田 章義[代表者],迫田研 大学院学生 木塚里子
タンパク質,ポリペプチド,合成ポリマーといった巨大分子の液相吸着現象は,工学,生化学,医学等の多くの分野で利用されているものの,その吸着挙動には未解明な部分が多いのが現状である.その理由として分子が大きいため吸着分子間の相互作用が大きいことや,吸着に伴って配向や構造が変化することなどが挙げられる.特に巨大分子の表面吸着時の構造に関する研究は今日までに種々行われているが,吸着構造を一般的,理論的に解明する手法はまだ確立されていない.そこで本研究では,分子の構造変化に伴う系のエネルギー変化に着目した.すなわちエネルギー変化として唯一測定可能である熱の測定を行い,その結果から巨大分子の吸着時の構造変化を推測することを目的とした.

フォノンスペクトロスコピーと物性研究
教授 高木 堅志郎[代表者], 助教授 酒井 啓司, 助手 坂本 直人,大学院学生 畠山丈司
光散乱法,パルス法などの手法を用いて物質中のフォノンの位相速度と減衰を測定し,液晶・溶液・ゲル・生体系など複雑流体のダイナミックな物性の研究を行っている.本年度は当研究室で独自に開発した光ビート分光ブリュアン散乱装置を応用した新しい分子緩和測定手法の開発に着手した.これは分子の内部自由度が熱揺動によって運動する際に弾性歪みとカップリングする効果を光散乱法により直接観察するものである.これにより従来多くの超音波測定手法を相補的に組み合わせて得ていた弾性緩和スペクトルを一度の測定で観察することができる.分子会合によるMHz域の緩和を示す液体について測定されたスペクトルは,理論計算から予想される結果とよく一致した.

リプロンスペクトロスコピーと液体表界面の物性研究
教授 高木 堅志郎[代表者], 助教授 酒井 啓司, 助手 坂本 直人,大学院学生 本多浩大
液体表面を伝搬する高周波表面波の挙動を広い周波数帯域にわたって測定することにより,表・界面の動的な物性を調べることができる.この技術をリプロンスペクトロスコピーと呼んでいる.本年度はサーマルリプロンを測定する広帯域リプロン光散乱法をさらに高性能化し,純水などの単純液体表面で40MHzを超える周波数領域でのリプロン測定を可能にした.これは我々自身が持つ記録を一桁近く拡張する世界最高性能の装置である.また光ヘテロダイン信号の処理に大容量メモリと相関計算を導入することにより,高い時間分解能でのリプロンスペクトルを得ることが可能になった.これによりmsのオーダーで刻々変化する液体表面分子の状態を実時間でモニターすることができる.

音響位相共役波の研究
教授 高木 堅志郎[代表者], 助教授 酒井 啓司,技術専門官 小久保旭
弾性波と電場の非線形相互作用を利用した音響位相共役波の発生,およびそのデバイスへの応用の研究を行っている.位相共役波とは,任意の入射波に対して周波数と位相を保存し,伝搬方向を逆転させた波である.光学における位相共役波の研究は非常に盛んであるが,超音波の位相共役波についての研究はまだ例が限られている.我々はセラミック圧電材料を用いることにより音響位相共役波を高効率で発生させることに成功している.本年度は,新しい位相共役鏡の材料としてレラクサー強誘電体結晶に着目し,音響位相共役波への変換効率の評価を行った.これにより従来のセラミクス素子より1桁高い効率が期待できる.

超音波精密計測に関する研究
教授 高木 堅志郎[代表者], 助教授 酒井 啓司,技術専門官 小久保旭
液体および固体中の超音波に関する新しい計測法と映像法の研究を行っている.薄膜中の音波伝搬測定のために,新しい計測法であるパルス・スペクトラム法の開発を行った.またゼロクロス追尾法を利用して,細管に用いる超音波微小流量計を開発している.特に今年度はアガロースなどのゲル状物質において,表面波とバルクのずり波の結合モードが伝搬する様子を可視化することに成功した.

液体のガラス転移現象と水の熱力学異常の理論的研究(継続)
教授 田中 肇
液体はこれまで密度という秩序変数のみにより記述されると信じられてきたが, 我々は, 液体が局所的にエネルギーの低い構造(局所安定構造)を形成することを記述するために, 新しい秩序変数(ボンド秩序変数)の導入が必要であることを主張している. この液体の2秩序変数モデルは, 水の様々な熱力学異常を説明できるばかりでなく, 液体のガラス化とランダム磁性体のスピン・グラス化の間にアナロジーが成り立つことを示唆しており, 現在, 理論・数値シミュレーションの各面から研究を行っている.

計算機シミュレーションを用いた複雑流体の相分離現象(継続)
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭
当研究室において, 高分子溶液系などの動的に非対称な系特有の全く新しい相分離様式が観測されることが実験的に見出され, それを粘弾性相分離現象と名付けた. この現象の起源や相分離メカニズムを明らかにするため, 粗視化した濃度場に対する相分離モデルを作成し, 数値シミュレーションを行った. その結果, 実験的に観測された相分離パターンの時間発展を定性的に再現することに成功し, その時間発展機構を明らかにした. その他, コロイド分散系や液晶系等に対する数値視ミュレーションも行っており, 複雑流体を用いた材料開発において, 有益な知見を与えるものと期待している.

位相コヒーレント光散乱法を用いた複雑流体の動的物性(継続)
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭,博士研究員 高木晋作
媒質中に励起された様々なモードの熱ゆらぎによって散乱された光を分光する従来の動的光散乱法では, 熱励起ゆらぎの位相がランダムなためパワースペクトル(強度の情報)しか得られず, 位相の情報は失われる. 我々の開発した位相コヒーレント光散乱法では, 熱励起揺らぎに代わる様々なモードをレーザー光によってコヒーレントに励起し, 散乱光を位相も含めて検出するため, 実部と虚部からなる複素スペクトルを観測することができる. この手法を用いて, 液体二硫化炭素において, 7.6GHzという高周波の超音波を励起し, この超音波からの複素ブリュアン・スペクトルを観測することに成功した. この励起原理は他のモードにも容易に応用が可能で, 干渉縞にコヒーレントな温度分布の励起, あるいは偏光方向の変化による異方性分子の配向のコヒーレントな制御から, 対応するモードの複素スペクトルを観測できる.

高分子混合系相分離現象における粘弾性効果(継続)
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭,博士研究員 小山 岳人
これまで, 高分子混合系における相分離現象は, 流体モデルに属するものと言われてきた. しかしながら, 相図上深く温度クエンチした場合など, そのモデルでは説明できない相分離様式が現れることを新たに発見し, それが二つの成分間の粘弾性的性質の違い(動的非対称性)に起因するものと考え粘弾性相分離現象と名付けた. 現在, その相分離パターンの時間発展の分子量依存性やクエンチ温度依存性を中心にその構造形成の機構の解明を行っている. 実験手段としては, 顕微鏡像に対するデジタル画像解析法, 時分割光散乱法などを用いている.

レーザトラッピング法を用いた局所物性測定法の開発と応用(継続)
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭,大学院学生 岩下 靖孝
生物分野で知られるレーザーピンセットの原理はレーザーが屈折率の異なる微粒子を通過する際の運動量変化を反映した放射圧が微粒子に働く現象を利用したものである. 本研究ではこの技術を用いて高分子・液晶などのソフトマテリアルの局所的な力学的性質を探索するシステムを構築することを目的としている. 例えば, トラッピングビームのスキャンを用いて, 試料中に置かれた微粒子を振動させることにより, 試料のローカルなずり弾性率の測定を行うことができる. さらには2本のビームをコントロールすることにより, 界面張力, クーロン力などの測定等も試みる予定である.

過冷却液体におけるドメイン形成
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭,大学院学生 栗田 玲
Triphenyl Phosphiteは, 融点19〜23℃, ガラス転移点−90℃前後の物質である. この物質を−60〜−50℃に急冷し過冷却状態にし放置すると, Glacial phaseと呼ばれる相が形成される. この相に関しては, アモルファス相説や微結晶説などの様々な説があるが, いまだ解明されていない点が多い. 我々は, 顕微鏡観察や透過光強度測定により, この相が光学的異方性を持つことをから, アモルファス相ではないことを示した.

高速三次元共焦点レーザ走査顕微鏡を用いたコロイド分散系の凝集過程の研究
教授 田中 肇[代表者], 助手 荒木 武昭,大学院学生 西川 裕也
粘弾性相分離の三次元構造とその普遍性とを明らかにすべく最も単純な動的に非対称な混合系であるコロイド分散系の凝集過程についての研究を行った.3次元系における構造形成ダイナミクスを調べるために,高速レーザ走査顕微鏡を用いた実時間3次元構造解析法を確立し,過渡的ゲル形成の素過程を明らかにするとともに,粘弾性相分離で形成されるスポンジ状の構造のトポロジー的特徴とその時間発展を位相幾何学的側面から明らかにする.

軟X線磁気円二色性を使った磁気構造の研究(継続)
教授 七尾 進[代表者],助手(生研)現在JASRI研究員 中村哲也,博士研究員 宮川勇人
磁気異方性は磁性材料の機能を制御する上で最も重要な性質である.磁気モーメントの軌道成分は磁気異方性の起源であり磁性材料設計に非常に重要な要素であるが,従来の実験手法では磁気モーメント全体から軌道成分の寄与を分離評価することはできなかった.磁性材料として重要な2種類の希土類ー遷移金属合金(DyCo5, SmFe2)について行った軟X線磁気円二色性の実験結果を精密に解析し,その軌道成分の大きさを決定することに成功し,これらの合金の磁気構造パラメータを得た.

X線MCDによるDyCo5の元素選択磁化 <新規>
教授 七尾 進[代表者],助手(生研)現在JASRI研究員 中村哲也,博士研究員 小路博信
スピン再配列によってNon-Collinearな磁気秩序相(NC相)を持つことが知られるフェリ磁性体DyCo5において,Dy磁化とCo磁化の分離を試み元素選択磁化に関する詳細な知見を得ることを目的としてXMCDによる元素選択磁化を測定した.その結果印加磁場 5 T 付近での元素選択磁化の絶対値が減少することを初めて実験的に検証した.これは,5 T 以上でスピン再配列によってNC相となるために,Dy磁化とCo磁化,それぞれのX線波数ベクトルへの射影成分が減少することが反映された結果である.

準結晶の高分解能コンプトン散乱測定(継続)
教授 七尾 進[代表者], 助手 渡辺 康裕,大学院生 岡田純平
コンプトン散乱測定は物質中の伝導電子に関する定量的な測定が可能な唯一の測定手法である.SPring-8,BL08Wにおいて準結晶の伝導電子に関するコンプトン散乱測定を系統的に行っており,これまでに,Cd系,Al系準結晶の測定を終えた.これまでの成果は,@d-AlNiCo準結晶はHume-Rothery則から外れる合金系であること,A[11000]入射及び[00002]入射のコンプトン散乱プロファイル間に異方性が現れ,この起源はフェルミ面と擬ブリルアンゾーンの相互作用から理解できること,Bsp-d混成を反映する特徴的なプロファイルをi-CdYb準結晶コンプトン散乱測定で初めて観測したこと,である.

準結晶のBreak Junction によるトンネル分光測定(継続)
教授 七尾 進[代表者], 助手 渡辺 康裕,大学院生 岡田純平
準結晶研究の大きな目標は「準結晶の特質は何か」を明らかにすることである.準結晶は準周期性で特徴付けられる原子構造を持つ.では準結晶の電子構造の特質は何か,すなわち準周期性は電子構造にどのように反映されるのか,という問題は極めて重要な問題でありながら,未だに本質的な答えは得られていない.本研究の目的は,この問題に対して実験的に手がかりを得ようとすることである. 最近行ったi-Al64Cu23Fe13準結晶のBreak Junction Spectroscopyではフェルミ準位近傍の幅数meVの擬ギャップ的な電子構造を明瞭に捉えることに世界で初めて成功した.この結果はスパイク構造の一部を捉えている可能性が高く,現在,他の準結晶合金系の結果とあわせて解析中である.

3次元準結晶合金のX線構造解析(継続)
教授 七尾 進[代表者], 助手 渡辺 康裕,大学院生 岡田純平,博士研究員 宮川勇人
Al-Cu-Ru系,Al-Pd-Re系,Zn-Mg-Ho系F型3次元準結晶の単結晶を用いて放射光を用いたX線構造解析を行った.昨年までにそれぞれRu,Pd,Ho吸収端におけるX線異常散乱実験を行い,通常の散乱の数%しかない異常散乱効果を精度良く測定した.現在,この結果を基にLow Density Elimination 方による位相問題の決定を進め,構造の決定を進めている.

準結晶合金の高温回折測定(継続)
教授 七尾 進[代表者], 助手 渡辺 康裕,大学院生 岡田純平
準結晶の安定性の起源として,ランダムタイリングモデルがひとつの有力なモデルとして提唱されている。このモデルを検証するために,Debye-Waller因子の温度依存性を測定した。 Al-Cu-Ru系では,粉末の高温回折実験で相変態が観測されていないにもかかわらず,500℃から600℃の間で熱ヒステリシスをともなう変化が観察された。 ランダムタイリングでは説明できない何らかの新しい相変化が起こっていると考えられる。また,本年度は実験室系での単結晶の高温回折実験を目指して新しい試料ホルダーを設計製作した.

電解コンデンサ用ニオブおよび合金電極材料の研究(継続)
教授 七尾 進[代表者], 助手 渡辺 康裕,大学院生 平井栄樹,大学院生 高野剛次
現在タンタルコンデサが高性能電解コンデンサとして使用されているが,タンタルは高価である上に資源的な不安定要素を抱えている.タンタルを代替する電解コンデンサ電極材料としてニオブが注目を集めているが,その誘電体被膜には温度的,耐電圧的不安定要素が存在し本格的実用化に至っていない.この欠陥を克服すべく,ニオブに第2元素を添加した合金を液体急冷法・スパッタ法によって作成し,新しい電極材料の研究を行っている.

Fe4N磁性薄膜の作製と改質(新規)
教授 七尾 進[代表者],助手(生研)現在JASRI研究員 中村哲也, 助手 渡辺 康裕,大学院生 平井栄樹,大学院生 高野剛次
近年の磁気記録媒体の大容量化に伴う磁気記録密度の著しい増大に伴う磁気記録材料の高保磁力化に対応するため,磁気ヘッド用材料として高飽和磁化を持つ軟磁性材料が求められている.Fe-N系化合物のうちのひとつであるFe4Nは軟磁性であり,高い飽和磁化を持つ.さらに機械的強度も高く,磁気ヘッドに要求される特性の面において優れている.そこで,この物質を出発点とし更なる特性向上を目指し,スパッタリング法により合金磁性薄膜の作製を行った.

体外循環による血中病原性微粒子除去システムの開発
教授 畑中 研一[代表者], 助手 粕谷 マリアカルメリタ,大学院学生 宮川淳
血液透析膜を用いて血中の病原性細菌やウイルスを選択的に吸着・除去する装置を開発することを目的としている.具体的には,化学合成した糖質高分子や細胞を用いて合成したオリゴ糖鎖(病原性微生物や病原性たんぱく質に特異的に結合するもの)を元に調製される糖質高分子を中空糸に固定化し,血液の体外循環によって,血中の病原性微粒子濃度を著しく低下させる装置を開発している.血中の病原体数を減少させることにより,その後の治療効果を上げると考えられ,抗生物質の過大投与を避けることも可能となる.

糖鎖プライマーを用いた細胞による糖鎖生産
教授 畑中 研一[代表者], 助手 粕谷 マリアカルメリタ,大学院学生 渡邉洋介
長鎖アルキルアルコールのグリコシド(糖鎖プライマー)を培地中に添加して細胞を培養すると, 糖鎖プライマーは細胞の中に取り込まれ, 糖鎖伸長を受けた後に培地中に出てくる. 本研究では, 長鎖アルキルの末端にアジド基や二重結合などの官能基を導入した糖鎖プライマーを用いて, 細胞内における糖鎖伸長を観察し, 糖質高分子の構築を試みている.

ヌクレオシドを有するポリマーと細胞膜表面の糖転移酵素との相互作用
教授 畑中 研一[代表者], 助手 粕谷 マリアカルメリタ,大学院学生 岩本邦彦
糖転移酵素は糖ヌクレオチドの糖鎖部分を受容体糖鎖上に転移する. 本研究では, 細胞膜表面のガラクトース転移酵素を利用して, ウリジン, ガラクトース, N−アセチルグルコサミンを有するポリマー上への特異的な細胞接着および細胞移動などに関して調べている.

生分解性プラスチックの設計と合成
教授 畑中 研一[代表者], 助手 粕谷 マリアカルメリタ,大学院学生 田村潔
目的に合った物質特性を有する高分子材料に生分解性を付与していこうとする積極的な立場で新素材開発に取り組んでいる. 本研究では, 種々の高分子材料の分子鎖中にオリゴ糖鎖を組み込み, 材料本来の物性を損なうことなく分解性を付与していくことを目標としている.

糖鎖合成における含フッ素化合物の利用
教授 畑中 研一[代表者], 助手 粕谷 マリアカルメリタ,大学院学生 クシ リューベン
糖鎖合成には,化学合成,酵素合成,細胞内合成などがあるが,フッ素を含む化合物を用いて,化学反応の制御や含フッ素溶媒による抽出などを行い,糖鎖合成の簡略化を目指す.

抗体を結合したMRI増感剤の調製
教授 畑中 研一[代表者], 助手 粕谷 マリアカルメリタ
動脈硬化部位をMRIで観察することを目的とする.化学修飾した多糖誘導体で被覆した金属粒子に動脈硬化部位指向性抗体を結合させることにより,動脈硬化部位をMRIで測定するときの増感剤として開発する.

多糖高分子化合物の物性研究
教授 畑中 研一[代表者], 助手 粕谷 マリアカルメリタ
化学的手法および物理的手法を用いて,薬剤の開発に必要な天然多糖DDS化合物(多糖の化学修飾によって得られる高分子に薬理活性物質を結合させたもの)の構造解析を行い,天然多糖DDS化合物に観察される物性変化現象を解明する.

焼結硬質材料の破壊靭性と破壊強度を破面面積から見積る新方法の提唱(継続) 教授 林 宏爾,技術官 簗場 豊
教授 林 宏爾
焼結硬質材料に重要な性質は,硬さと破壊強度(抗折力)の他に,破壊靭性(KIC)がある.KICの標準測定法は,寸法Cの切欠きを付けた試片の破断応力σを測定し,K2=ψσC1/2の式を用いて算出される.これに対して,本研究では,(1)破壊靭性(KIC)は,切欠き無しの通常の試片を曲げ破壊して生じる破片の破面の総面積(Smf)および曲げ強さ(sm)との間に,sm=yK2Smf1/2の関係(y;係数)にあることを理論的に導出するとともに,(2)各種の硬質材料について同式が成り立つことを示した.そして,(3)この式を用いて,一本の切欠き無しの試片からKICを見積れる新方法を提唱すると共に,(4) 破損している試片すなわち破片を用いて,その試片の破壊荷重が不明の場合でも,破壊強度が見積もることが出来る新方法も考案している.本年度は,高強度・高度鋼について検討し,考察した.

新仮説「核/縁組織内の拡散寄与型原子空孔の枯渇」の提唱 (継続) 教授 林 宏爾,技術官 簗場 豊
教授 林 宏爾
二珪化鉄FeSi2は高温用熱電材料として注目されている.このFeSi2は,FeSiとFe2Si5とが約980oC以下の温度での包析反応によりFeSi2はFeSi粒子を包み込むように成長する.このため,FeSi粒子を核とし,生成したFeSi2を縁とする組織となる.FeSi核は,加熱すると平衡状態ではなくなるはずものであり,また熱電特性上もなくなることが望ましいが,実際には長時間加熱してもなくなり難い.この現象は,従来,FeSi2縁が,包析反応の進行と共に厚くなる結果,反応に必要なSi原子の拡散距離(FeSi2縁の厚さ)が増大することにより,反応が遅滞すると,考えられていた.これに対して,我々は,新仮説「核/縁組織における拡散寄与型原子空孔の枯渇」を提唱している.本年度は,この説を,「TiC-Mo2C-NiサーメットにおけるTiC核/(Ti,Mo)C縁組織におけるTiC核が同様に消滅しない」ことに適用し,検討した.

新金属炭窒化物Me(C,N)の生成と機構に関する研究(継続) 教授 林 宏爾,技術官 田中和彦
教授 林 宏爾
周期律表IVおよびV族の遷移金属であるTi, Zr, Hf, V, NbおよびTaの窒化物と炭窒化物は合成・市販され,硬質材料の原料として使用されている.しかし,VI族の遷移金属のMoとWの炭窒化物は従来合成されたことが無い.これは,MoNとWNは原子の拡散が活発となる高温では常圧下で分解してしまう不安定な化合物であることに基づく.本研究では,Le Chatelier Principle, Ostwald's Step Rule for Chemcal ReactionおよびVirtual-Pressure Conceptなどに基づくと,W(C,N),Mo(C,N)およびこれらの複炭窒化物(W,Mo)(C,N){一般表示:Me(C,N)}は,(1)Me+C混合粉末の高圧窒素中加熱,および(2)Me粉末の常圧CH4+NH3混合ガス中加熱により,いずれも合成可能であると予測し,実際に合成可能であること,(3)Me(C,N)中のN量は高圧法と常圧法でほぼ同じであること,などを明らかにした.本年度は,これら2つの方法における炭窒化物の生成過程について原子論的モデルの構築を試みた.

高配向性三角板状WC粒を含む新型超硬合金の研究(継続) 教授 林 宏爾
教授 林 宏爾
通常原料のWC+Co混合粉の代わりにW+C+Co混合粉を用いると,加圧焼結などの特別な方法でなく通常の製造プロセスを用いても,高アスペクト比の三角板状WC粒が高度に配向したWC-Co超硬合金が得られること,が最近明らかにされていたが,本研究では,(1)この新型の超硬合金は通常の低アスペクト比WC無配向超硬合金に比べ優れた機械的性質を示すこと,(2)高アスペクト比の三角板状WC粒の生成の機構と配向の機構などを明らかにしている.本年度は,その粒成長機構について検討した.

時間分解テラヘルツ分光法を用いた半導体中のキャリアダイナミクスの解明
教授 平川 一彦[代表者], 助手 大塚 由紀子, 助手 関根 徳彦,研究員(産総研) 島田洋蔵,ポスドク(科学技術振興事業団) Sang Haiyu,平川研 大学院生 村瀬成康
フェムト秒レーザパルスを用いた時間分解テラヘルツ(THz)分光法を用いて, 半導体中のキャリアの超高速運動が放出するTHz電磁波を実時間領域で検出することにより, キャリアのダイナミックな伝導現象を解明することを目的に研究を行っている.本年度は, 電気光学サンプリング測定により, 半導体空乏層を伝導する電子が放出するTHz電磁波を検出し, 電子の過渡速度を実験的に決定した.特に,短チャネルトランジスタ中における過渡速度の評価を行った.

半導体超格子中の電子のミニバンド伝導とその応用
教授 平川 一彦[代表者], 助手 関根 徳彦,研究員(産総研) 島田洋蔵,ポスドク(科学技術振興事業団) Sang Haiyu,平川研 大学院生 長嶋知行
時間分解テラヘルツ分光法を用いて, 半導体超格子中のミニバンドを伝導する電子が放出するテラヘルツ電磁波を実時間領域で検出することにより, 超格子中のダイナミクス, およびブロッホ振動を用いたテラヘルツ電磁波の発生・増幅・検出の可能性について探索を行っている. 本年度は, (1)放射されたテラヘルツ電磁波スペクトルが電子の伝導度スペクトルに等しいことを発見し,超格子中をブロッホ振動する電子が電磁波に対する利得を持つことを実験的に示した.(2)ジーナートンネルがブロッホゲインの最高周波数を制限していることを明らかにした.(3)ボルツマン輸送方程式を用いた解析により,超格子中のキャリアが放射するテラヘルツ電磁波のスペクトルを定量的によく説明できることがわかった.

自己組織化量子ドットを用いた超高感度赤外光検出器の開発
教授 平川 一彦[代表者], 教授 榊 裕之,学術研究支援員 李 承雄,平川研 大学院生 Jung Minkyung,瀬上 剛
自己組織化InAs量子ドット構造の特異な電子状態を利用して, 超高感度の赤外光検出器を実現することを目的として研究を行っている. 特に, 自己組織化量子ドットと高移動度変調ドープ量子井戸を組み合わせた横方向伝導型量子ドット赤外光検出器を提案・試作し, その評価を行った. 本年度は, (1)従来問題であった活性層への電極作製のプロセスを改善し,寄生抵抗の影響を低減することができた,(2)光励起キャリアの寿命の温度依存性から,支配的な散乱機構を明らかにするとともに,素子構造との関連を明らかにした.

量子ナノ構造の超微細加工プロセス
教授 平川 一彦[代表者],平川研 大学院学生 Jung Minkyung,梅野顕憲
量子ナノ構造電子材料系は, 高性能光・電子デバイスの根幹となる材料系であり, ますますその重要性を増しつつある. 我々は, 半導体表面・ヘテロ接合界面におけるミクロな電子構造の解明と制御, また原子レベルでの超微細加工プロセスの研究を行っている. 本年度は, (1)自己組織化InAs単一量子ドットに電極を形成し,単一電子トンネル効果を観測することができた,(2)単一分子エレクトロニクスを視野に入れた超微細電極作製の検討を開始し,エレクトロマイグレーション効果を用いたブレークジャンクション法や極微めっき法などを検討している.

先端MOSトランジスタ中のキャリア伝導に関する研究
教授 平川 一彦[代表者],平川研 大学院生 Park Kyunghwa,グループリーダー(MIRAIプロジェクト) 高木信一
近年Si MOSトランジスタの微細化,高性能化が急速に進められている.特に,ひずみSi/SiGe系MOSFETにおいては,格子のひずみ効果がバンド構造,有効質量,散乱機構,飽和速度などに大きな影響を与えることが予想されている.本研究においては,先端MOSFET中のキャリア輸送に関する物理を明らかにすることを目指している.本年度は,(1)キャリアの有効質量を測定するためのサイクロトロン共鳴測定のセットアップを行った,(2)酸化膜厚の異なるSi MOSFETの閾値付近の伝導特性の評価を開始した.

サブ10nm極限CMOSデバイスに関する研究
教授 平本 俊郎[代表者],助手 更屋拓哉 博士研究員 Anil Kumar
最近のVLSIデバイスの微細化は凄まじく,すでにMOSFETのゲート長は量産レベルで60nm程度まで微細化している.このままの勢いで微細化が進むと10nmに数年のうちに到達する.本研究では,10nmスケール以下の超低消費電力極限MOSFETを実現するためのデバイスビジョンを確立することを目的とする.ナノスケール領域で超低消費電力とばらつき抑制を達成するためには,基板バイアス効果の利用が必須である.そこで有限の基板バイアス効果を有し,しかも短チャネル効果に強いデバイスとして,セミプレーナーSOI MOSFETを提案している.例としては,三角形細線MOSFETやアスペクト比の低いFinFETが挙げられる.シミュレーションにより,これらのデバイスの有効性を示すとともに,三角形細線MOSFETについては試作も行い,有限の基板バイアス効果と良好な短チャネル効果を実証した.

完全空乏型SOI MOSFETの基板バイアス効果を利用した高性能化と低消費電力化
教授 平本 俊郎[代表者],助手 更屋拓哉 平本研大学院学生 南雲俊治
完全空乏型SOI MOSFETは将来の低消費電力デバイスとして有望である.本研究では,本デバイスの特徴を引き出すため,基板バイアス効果を積極的に利用した高性能化と低消費電力化とについて検討している.高性能化については,電子の反転層容量とゲート空乏化の影響で劣化するドレイン電流を,正に基板バイアスを印加することで回復する全く新しい手法を提案し,実験とシミュレーションによりその有効性を実証した.また,低消費電力化については,基板バイアス効果でしきい値電圧が制御できる範囲が埋込酸化膜厚には依存せず,シリコン層厚さに依存することを解析的手法,シミュレーション,および実験により明らかにし,スタンバイ電力を効果的に抑制するにはシリコン層を薄膜化することが必須であることを示した.

0.5V動作超低消費電力VLSIデバイスに関する研究(継続)
教授 平本 俊郎[代表者], 教授 桜井 貴康,平本研大学院学生 劉 慶艶
携帯機器の普及により,VLSIチップの低消費電力化は必須の課題である.本研究は,0.5Vという低電圧で動作し,超低消費電力と高駆動力を両立させるデバイスを実現することを目的とする.今年度は,しきい値電圧をダイナミックに制御できるVariable Threshold Voltage CMOS (VTCMOS)に加えて,Drain Induced Barrier Lowering(DIBL)によるスタンバイ電力低減手法について検討した.MOSFETに印加するドレイン電圧が下がるとDIBLが緩和されしきい値電圧が上昇する.したがってスタンバイ時に電源電圧を下げれば,スタンバイ電力を大幅に削減することが可能となる.本方式で最も効果的に電力を削減できる最適デバイスについて検討し,最適デバイスを決定する臨界電圧が存在することを明らかにした.一方,ドレイン電流のゲート電圧依存性のモデリングなどの研究も行っている.

極微細シリコンMOSFETにおける量子力学的効果の研究(継続)
教授 平本 俊郎[代表者],平本研大学院学生 齋藤真澄,筒井 元 平本研研究実習生 齋藤裕太
シリコンMOSFETは性能向上のため微細化が続いているが,そのサイズがナノメートルオーダーになると量子効果が顕著に特性に影響を及ぼす.本研究では,極めて細いチャネルをもつMOSFETにおける量子力学的効果を実験とシミュレーションにより検証している.実際にチャネル幅が10nm以下のMOSFETを試作し,しきい値電圧が線幅の減少とともに上昇する量子力学的狭チャネル効果を観測することに成功している.また,量子効果の異方性により,チャネル方向が<110>方向の方が<100>方向の場合より移動度が電子,正孔とも高くなることをシミュレーションにより示している.本年度は,量子効果の異方性に注目し,チャネル方向が<110>方向だけでなく,<100>方向の場合でも量子効果によるしきい値電圧の上昇が起こることを実験的に確認した.

シリコン単電子トランジスタにおける物理現象の探究(継続)
教授 平本 俊郎[代表者],平本研大学院学生 齋藤真澄 平本研研究実習生 村上 祐
シリコンにおける単電子帯電効果を明らかにすることは,VLSIデバイスの性能限界を決める上で必須であるとともに,新しい概念をもつデバイスを提案する上でも極めて重要である.本研究では,Siにおいて極微細構造を実際に作製し,単一電子現象の物理の探究を行っている.これまでに,VLSI互換プロセスを用い室温でクーロンブロッケード振動を示す単電子トランジスタの作成に成功している.本年度は,室温動作単電子トランジスタのナノスケール幅のチャネル中に自己形成されるシリコンドットの形成機構について検討した.n型およびp型の両方のソース・ドレインを有する単電荷トランジスタにおいて,単正孔トランジスタの方が単電子トランジスタより大きな振動を示すことから,伝導帯より価電子帯でより小さなドットが電気的に形成されることおよび単正孔トランジスタで室温でより大きな振動が得られる可能性があることを示した.

シリコン量子ドットを浮遊ゲートとするMOSFETメモリ
教授 平本 俊郎[代表者],博士研究員 Julien Brault 研究員 金一權 平本研大学院学生 齋藤真澄 平本研研究実習生 柳平康輔
シリコンドットを浮遊ゲートとするメモリは,現在のフラッシュメモリに代わる不揮発性メモリとして有望であり,近年盛んに研究されている.本研究では,シリコンドットメモリの性能向上,電子数の制御,および集積化の研究を行っている.本年度は,シリコンドット中の電荷を検出するMOSFETのチャネル幅をナノスケールまで微細化することによる性能向上について実験を行った.チャネル幅を10nm以下まで微細化すると,しきい値電圧シフトが増大し,保持時間も改善する.この性能向上は,ドット中の電子の影響がチャネル全体に及ぶボトルネック効果と,チャネル中の電子の基底準位が上昇する量子閉じ込め効果によって説明できることを明らかにした.この成果は,2002年12月の国際電子デバイス会議(IEDM)にて発表を行った.

新規遷移金属反応場の高効率分子変換への利用
教授 溝部 裕司[代表者],助手 清野秀岳,技官 大西武士,大学院学生 羽生竜平
有機金属錯体はその金属の種類や酸化状態, 金属中心を取りまく配位子の立体的および電子的効果などにより, その金属サイト上で多彩な化学反応を促進できる. 本研究では, 単核から多核にわたる様々な金属錯体について新規に設計・合成を行い, これら錯体上で進行する高効率・高選択的反応を検討することにより次世代の触媒の開発を試みる.

遷移金属−カルコゲニドクラスターの合成と利用
教授 溝部 裕司[代表者],助手 清野秀岳,大学院学生 長尾正顕 大学院学生 篠崎 綾 大学院学生 藤村友子 大学院学生 網塚貴彦 研究実習生 斉藤晃宏 研究実習生 齋藤伸之
カルコゲン元素(第16族元素)配位子により架橋された強固な骨格をもつ遷移金属クラスターは, 生体内酵素活性部位モデル, 高活性触媒, 高機能性材料などとして幅広い学術的および工業的用途が期待される. 本研究では, 多様な遷移金属-カルコゲニドクラスターの一般性ある合成法を確立するとともに, 得られた新規化合物の詳細な構造と反応性の検討を行い, その高い機能の利用法を開発する.

遷移金属カルコゲニドクラスターを担持した新規固体触媒の開発
教授 溝部 裕司[代表者],技官 大西武士 助手 清野秀岳 大学院学生 鈴木鋼一
分子性の遷移金属クラスターについては,合成化学的手法を用いて望み通りの構造と組成をもつ多核構造を構築することが可能である.本研究では,架橋カルコゲニド配位子により強固に連結された金属多中心をもつクラスターを,その特異な骨格構造を保持したままで担体上に担持することにより,高い反応性を有する新規触媒の開発を目指す.

転位の基礎的性質に関する研究
助教授 枝川 圭一
結晶転位の芯構造や動力学的性質に関する計算機を用いた研究を引き続いて行っている. 今年度は, 以下の研究を行った. 1)転位のパイエルス機構による運動を遷移経路計算法を用いて調べることにより, パイエルス・ポテンシャルを仮定して外応力の効果をwork-done項の形で取り込む従来の扱い方の妥当性を検討した. 2)bcc金属中のらせん転位の芯構造を等価型電子顕微鏡を用いた高分解能観察法で特定できる可能性について検討した.

準結晶のSTMおよびSTS
助教授 枝川 圭一
特殊な構造秩序をもつ準結晶表面について走査トンネル顕微鏡観察(STM)および走査トンネル分光(STS)を行った. これまで準結晶構造を直接観察する方法としては高分解能電子顕微鏡法が使われてきたが, この方法は電子線入射方向の平均構造を反映した像となるためその解釈に難点がある. この点STM法では表面一層の原子配列を観察できるため有利である. 本年度は昨年度に引き続きAl-Ni-Co正10角形準結晶について10回対称面, 2回対称面のSTMおよびSTSを行った. 両面とも原子分解能の像を得ることに成功した. 2回対称面の観察から層間のフェイゾン欠陥が極端に少ないことを初めて明らかにした. またSTSにより表面電子状態を調べた.

準結晶のフェイゾン弾性
助教授 枝川 圭一
準結晶にはその特殊な構造秩序を反映してフェイゾンとよばれる特殊な弾性自由度が存在する. 準結晶のフェイゾン弾性は, そもそも準結晶構造秩序がなぜ安定に存在しうるかといった基本的な問題と深く関係しており, また準結晶の電子物性, 熱物性, 力学物性の特殊性の源とも考えられている. 従ってその性質を明らかにすることは重要である. 本年度は, 準結晶中のフェイゾンの熱的ゆらぎを初めて高分解能電子顕微鏡を用いて直接観察することに成功した. また, 昨年度に続きフェイゾン弾性に起因した比熱の変化をDSC法により実験的に調べた.

巨大磁気抵抗効果を示すペロブスカイト型酸化物の電磁気特性
助教授 小田 克郎
ペロブスカイト型結晶構造を持つLaMn系酸化物は磁場を印加することにより巨大な磁気抵抗(GMR)効果を引き起こす.このGMR効果は電子のスピンによるキャリアーの散乱に関連したものであるため,電気伝導を磁場でコントロールできる.この特性から次世代のMR素子や磁場制御機能性材料への応用面に期待をもたれ,同時に基礎物性の面では3d遷移金属酸化物における磁性と伝導の複合した物質として注目を浴びている.LaMn系酸化物における伝導バンドのフィリング制御にはMn4価はキャリアーを担う重要なファクターであると考えられる.LaMn系酸化物中の既存の研究の多くはLaサイトを他の2価金属イオンで置換したもので行われている*1.それに対して本研究ではBサイトのMnをNiで一部置換した試料を作製しMn4価量と電気的性質の相関を調べた.

巨大磁気抵抗効果を示すペロブスカイト型Mn酸化物薄膜の作製
助教授 小田 克郎
本研究ではヘリコンスパッタ法を用いて結晶配向性の揃った[RE](Mn,Met)O3ペロブスカイト型Mn酸化物薄膜[RE:希土類金属,Met:3d金属]を作製してそのGMR効果を調べることを目的とする.特に,薄膜を作製する際に酸素のアシストガンを併用した"基板上反応性スパッタ法"を用いて,高品質の結晶配向性の揃った薄膜の作製を狙うのが独創的な点である.この方法では複数のヘリコンガンでメタルのターゲットをたたいて酸化物を校正する金属イオンを基板へ跳ばし,基板上に別のアシストガンからラディカルな酸素原子を入射して基板上で酸化反応を起こさせるガンへの投入エネルギーと酸素の入射エネルギーを調節してペロブスカイト型構造の結晶配向性を制御する.

磁性強誘電体薄膜の作製とその物性
助教授 小田 克郎
強誘電体の磁気特性についてはバルク材について少し調べられているが,薄膜についてはほとんど調べられてきていない.本研究ではこのような強磁性と強誘電性を組み合わせた新しい電磁気機能性を持つペロブスカイト型結晶構造の薄膜の作製し,その薄膜の強誘電,強磁性特性を調べることを目的とする.薄膜の作製方法としては優れた強誘電特性を得るためには必要不可欠な結晶配向性のそろった薄膜を作製するのに適したイオンビームスパッタリング法を用いる.

結晶配向性の揃ったFe4N窒化物薄膜の作製
助教授 小田 克郎
Fe4N高い内部磁場を持ち,次世代の磁性材料として有望視されている.本研究では結晶配向性の揃ったFe4N薄膜を作製して,結晶配向性とともに,磁化の方位も揃えて垂直磁化異方性膜の作製を目指している.

RC構造の能動的破壊制御のための埋め込み型人工デバイスの開発
助教授 岸 利治[代表者],教授(東大) 前川 宏一,大学院学生 田中 泰司
コンクリート部材にとって致命的なせん断破壊を,あらかじめ部材内に埋め込んだ装置により人工的に誘発される亀裂によって制御できる見込みが既往の研究から得られている.この結果を受けて,ねじりを含む任意方向からの荷重入力に対する装置の信頼性や施工におけるシステムの実現可能性を考慮した最適な人工デバイスの開発に取り組んでいる.主として実験的な検討を行い,破壊制御による安全性能の向上と同時に,装置による破壊の誘発といった危険性も合わせて検討している.

膨張コンクリートのひび割れ抵抗機構の解明とその評価
助教授 岸 利治[代表者],大学院学生 Raktipong Sahamitmongkol
膨張コンクリートの優れた特徴である高いひび割れ抵抗性や変形性をもたらす機構の本質をとらえ,その定量的な評価を行うことを目指している.膨張コンクリートの汎用化へ理論的裏付けを与えることで,コンクリート構造物の高機能・長寿命化と信頼性向上に貢献することがねらいである.膨張材量一定の条件下で鉄筋比を変化させることにより,膨張コンクリートに蓄積された圧縮力であるケミカルプレストレスと拘束鋼材の伸びひずみであるケミカルプレストレインが,CPRCのひび割れ抵抗性に与える影響について検討を行っている.また,乾燥環境下での,CPRCのひび割れ抵抗性の変化について検討を行っている.

膨張コンクリートと鉄筋の付着特性に関する研究
助教授 岸 利治[代表者],大学院学生 田中 泰司
膨張コンクリートと鉄筋の付着性状に関しては,コンクリートの膨張によって鉄筋との付着が緩むのではないかという感覚的な懸念があり,膨張コンクリート構造の性能を適切に評価するためには,未だ明確にされていない膨張コンクリートと鉄筋の付着性状を明らかにする必要がある.そこで,膨張コンクリート構造の付着性能を定量的に把握することを目的とし,普通コンクリートおよび膨張コンクリートを用いた比較的大型の供試体による鉄筋の引き抜き試験を行い,荷重−すべり関係および付着応力−すべり関係について検討を行っている.

低品質再生骨材の改質による解体コンクリートのリサイクルに関する研究
助教授 岸 利治[代表者],大学院学生 Abu Zakir Morshed・樫村 能成
持続可能な社会システム実現の一環として,解体コンクリートの再資源化をコンクリートの改質に関する技術開発によって達成することを目指している.今後ますます増加していくことが予想される解体コンクリートの資源化を促進するためには,再生骨材を低品質なまま用いることを可能とする技術の開発も必要と考えられる.そこで,低水セメント比配合をベースとして,再生モルタルの強度特性に着目した研究開発を行っている.特に,硬化過程における水分,イオンおよび水和生成物の相互移動に着目した機構解明と改質技術の実現可能性について検討している.

電気的手法による構造信頼性評価法の提案および高信頼化法の開発
助教授 岸本 昭[代表者],岸本研 大学院学生 関寿毅
セラミックス材料は,高温強度,耐腐食性などに優れる反面,強度のばらつきが大きいという欠点を持つ.強度分布を部材使用前に把握するために,従来は煩雑な力学測定を行う必要があった.当研究室では,絶縁性セラミックスの電気的破壊が,機械的破壊源と同種の欠陥に左右されることを見出し,機械強度分布の簡便代替評価法としての絶縁試験法を提案している.この方法を種々の組成,微細組織を有する絶縁性セラミックスに適用し,評価法としての妥当性を検証した.また,機械強度分布幅を小さくして信頼性を向上させるため,従来は製品に対して応力を印加し,脆弱部材を取り除いていたが,上記評価法を応用して,高強度部材のみを電気的に選別するスクリーニング法の開発も試みている.これらは,従来法に比べ,簡便で資源を有効活用する手法といえる.

自己破壊検知機能を有するセラミックスの設計
助教授 岸本 昭[代表者],岸本研 大学院学生 沼田喜光
複合材料作製の主要な目的は力学特性の向上であり,種々の物質間の組み合わせが試みられている.複合材料に使われる個々の物質にはそれぞれ固有の電磁気特性を有しており,複合化により新しい特性の出現が期待されるにも関わらず,ほとんど省みられることはなかった.当研究室では,異種物質複合という一つの手法で力学特性向上と機能性付与という複数の利点を構造材料に与えるための研究を行っている.特に後者が力学特性に対応して変化する系では,材料自身が破壊や損傷の検知機能を有するインテリジェントな材料となりうる.具体的には,添加物の相対位置変化に伴う電気抵抗変化によりセラミックスに生じた歪みを検出できる材料の開発を行っている.また,無負荷時の残留抵抗変化による損傷検知が可能な系を提案している.

トータルパフォーマンスに優れたセラミックス材料の開発
助教授 岸本 昭[代表者],岸本研 大学院学生 川上洋介,岸本研 大学院学生 川野誠,岸本研 外部研究生 岡田朋美
多様な電磁気特性を有するセラミックスを機能材料として利用する際,化学的および熱的安定性はその利用域を広範なものとしている.しかしながらこれらの利点は,製造に高温を必要とする,不使用時の解体が困難,等の問題点につながる.セラミックスを実用化するには,その物理的および化学的安定性を高め利用域を更に広げるとともに,製造からリサイクルまでを考慮した総合的な材料設計が必要となる.これを考慮した研究として,隔壁とイオン伝導層を兼ね備えた用途に適合するよう,イオン伝導度を低下させないセラミックスの強化法を開発している.また,比較的低温で大気中成膜できる自己制御ヒーター(PTC材料)の作製に成功している.更に,供用時には高い信頼性を有し,不要時には強度を低下させることができるリサイクル性に優れた材料の提案を行っている.

新規多座配位子を用いた触媒的有機合成反応(継続)
助教授 工藤 一秋[代表者],大学院学生 伊藤 敦史
我々は, 酸素, 窒素, リンの3種の異なる元素を配位座として持つような新規不斉配位子の設計・合成を行い, その不斉触媒反応への適用を行ってきている. 本年度は,これまでとは異なる骨格を有する新たな配位子を設計・合成し,その触媒能について検討した。

イタコン酸類の合成化学的利用に関する研究(継続)
助教授 工藤 一秋[代表者],教務職員 高山 俊雄,大学院学生 久保 聡宏, 中尾 元,研究実習生 坂本 勝義
イタコン酸誘導体とシクロペンタジエンとのDiels-Alder反応生成物から容易に得られる三環性スピロ二酸無水物の合成素子としての利用を検討している. これまでに,この二酸無水物の特異な反応性を利用して,2種のジアミンを用いてone potで交互共重合ポリイミドを作ることに成功している.今回は,これをデンドリマーポリイミドの合成,ならびに光機能性ポリイミドの合成へと展開している他,de novoペプチド合成におけるターンモチーフとしての機能の検討も行っている.

水系触媒として機能するα-ヘリックスペプチドの開発
助教授 工藤 一秋[代表者],助手 坂本 清志,大学院学生 小中 隆太,村上 淳平,研究実習生 池田 絵梨子
これまでに,両末端付近にHisをもつ両親媒性のα-ヘリックスペプチドに加水分解触媒能があることを見出してきている.今回は,触媒能の向上を目的として,加水分解反応の条件検討ならびにペプチドの改良を行ない,これまでの2倍程度の活性を得ることに成功した.また,分子動力学計算によりペプチドの会合状態での挙動を推測した.

リラクサー系強誘電結晶のフォトリフラクティブ効果
助教授 志村 努[代表者], 教授 黒田 和男, 助教授 小田 克郎,技術官 千原正男,技術官 小野英信,技術官 片倉智,志村研 大学院学生 安倍里織,黒田研 大学院学生 藤村隆史,志村研 大学院学生 佐藤裕広
リラクサー系強誘電材料0.91Pb(Zn1/3Nb2/3)O3-0.09PbTiO3結晶がもつ非常に大きな圧電効果を利用し,大きな電気光学効果及びフォトリフラクティブ効果を得ようと研究を行なっている.我々は昨年度この結晶において初めてフォトリフラクティブ効果を観測した.本年度は,0.91PZN-0.09PT単結晶(ドープなし)とFeドープした結晶とをフラックス法で作製し,フォトリフラクティブ特性を調べた.ポーリングの方向を[110]方向とすることで,[111]方向に比べて光学試料の透過率が向上した.波長488 nmのアルゴンイオンレーザー(異常光)で2光波混合を行い,ゲインの最大値 21 cm-1 (Fe:PZN-PT),11 cm-1 (PZN-PT)という大きな値を得た.

フォトリフラクティブポリマーの高機能化
助教授 志村 努[代表者],荒木研 研究実習生 小澤舞, 教授 黒田 和男, 教授 荒木 孝二,助手 的場修,技術官 千原正男,技術官 小野英信,志村研 大学院学生 丁景福,荒木研 大学院学生 赤坂哲郎
我々は,PVK系ポリマーPVK:DMNPAA:BisCzPro:TNFで非線形分子DMNPAAの構造を変えることにより大きな屈折率変化と高速化を両立させたフォトリフラクティブポリマー材料を開発した.側鎖 C3H7-C4H9 を導入した非線形分子BNPAPB(4-butoxy-3-propyl-1-(p-nitrophenylazo)benzene)で電場配向時間が19ms(@54V/m)となり,DMNPAAに比べて2300倍の高速化を達成した.本研究では,PVK:BNPAPB:BisCzPro:TNFのフォトリフラクティブ特性の温度依存性を評価した.温度上昇によって回折効率の立ち上がり速度は速くなるが,回折効率は減少することがわかった.回折効率の減少は熱励起による干渉縞の可視度が低下したためであると考えられる.

フォトリフラクティブ効果を用いた不揮発性ホログラフィック光メモリの研究
助教授 志村 努[代表者], 教授 黒田 和男,助手 的場修,技術官 千原正男,技術官 小野英信,黒田研 大学院学生 藤村隆史
フォトリフラクティブ効果を用いたホログラフィック光メモリには読み出し時に記録した情報が消えていくという大きな問題点がある.本研究では,ダブルドープ2波長記録方法において,高速かつ高効率書き込み可能な不揮発記録材料の開発を行っている.今年度は,Ru,Pr:SBN, Ru,Pr:LN, Ru:LN結晶において初めて不揮発記録に成功し,その不揮発記録特性とフォトクロミズムについての研究を行った.

表面近傍量子ナノ構造の走査トンネル分光
助教授 高橋 琢二[代表者],技術官 島田 祐二,高橋研 大学院学生 屋鋪 大輔
表面近傍に二重障壁や量子ドット構造などの量子ナノ構造を埋め込んだ半導体試料において,走査トンネル顕微鏡/分光(STM/STS)計測を行い,二重障壁による共鳴電流や埋め込み量子ドットを介して流れる電流などをナノメートルスケールの分解能で測定して,それらナノ構造に起因する電子状態変調効果を調べている.さらに,5K程度の極低温,10T程度の強磁場中でのSTS計測を通じて,ナノ構造中の電子状態を明らかにすることを目指している.

ケルビンプローブフォース顕微鏡によるInAs微細構造の表面電位計測
助教授 高橋 琢二[代表者],高橋研 大学院学生 小野 志亜之
導電性探針を有する原子間力顕微鏡(AFM)において,探針−試料間に電圧を印加した際に働く静電引力の印加電圧極性依存性がなくなるように直流バイアスを重畳して試料表面ポテンシャルを計測する,いわゆるケルビンプローブフォース顕微鏡(KFM)モードを利用して,InAs薄膜・細線の表面ポテンシャルの計測を行った.これまでに,InAs薄膜の表面電位(フェルミレベル)が膜厚に依存して変化すること,InAs微細構造の形状,例えば細線構造によって表面電位が変調されること,などを明らかにしている.

表面電位計測精度向上を目指した高真空中非接触ケルビンプローブフォース顕微鏡の構築
助教授 高橋 琢二[代表者],高橋研 大学院学生 小野 志亜之
表面電位計測が可能なケルビンプローブフォース顕微鏡(KFM)では,長距離力である静電引力を利用している.その電位決定精度向上には測定時の探針−試料間隔を低減することが重要であることを電界シミュレーションによって明らかにするとともに,走査中の探針−試料間隔を低減できる高真空中非接触モードで動作するKFMシステムを実際に構築し,精度向上効果の実証を目指している.

レーザ光照射走査トンネルスペクトロスコピーによる単一量子細線の光吸収計測
助教授 高橋 琢二[代表者],高橋研 大学院学生 高田 幹
単一量子ナノ構造の光吸収特性を評価するために,レーザ光照射STMによるトンネルスペクトロスコピーを行っている.これまでに,照射レーザ光の波長に依存してトンネルコンダクタンスが変化することを確認し,またその変化分を通常のSTM凹凸像と同時に取得することにより,GaAs微傾斜基板上InAs単一量子細線での光吸収効果の可視化に成功している.

磁気力顕微鏡(MFM)を用いた非接触・微小電流計測
助教授 高橋 琢二[代表者],高橋研 大学院学生 才田 大輔
ナノ構造中を流れる電流を被測定系への擾乱を避けながら測定するために,電流の作る磁場を検出できる磁気力顕微鏡(MFM)を用いた非接触電流測定系の構築を目指している.これまでに,幅15 μmのGaAs/AlGaAsメサストライプ中量子井戸に10 μA程度以下の交流電流を流した時に生じる磁場を測定し,静電引力の影響を排除することで磁気力信号が明確に得られること,磁気力信号が交流電流の大きさおよびMFM探針磁化方向に依存することを見い出している.

極低温・強磁場環境下での走査トンネルスペクトロスコピー
助教授 高橋 琢二[代表者],技術官 島田 祐二,高橋研 大学院学生 村中 雅幸
電子エネルギの熱によるぼけを防ぐために,5K程度の極低温環境下で動作する走査トンネル顕微鏡(STM)を用いたトンネルスペクトルの計測を行っている.特に,量子細線や量子ドットなど多次元量子閉じ込め構造中の電子系に対して,10T程度の強磁場を印加しながらトンネルスペクトルを測定することで,サイクロトロン運動との競合関係を通じてポテンシャル閉じ込めの強さを明らかにすることを目指している.

自己変位検知カンチレバーAFMを用いた局所的光吸収計測
助教授 高橋 琢二[代表者],高橋研 大学院学生 増田 裕之
変位検出用レーザが不要である自己変位検出カンチレバーAFMを用いて,単一量子ナノ構造の光吸収特性の評価を行っている.これまでに,GaAs微傾斜基板上InAs単一量子細線において凹凸像と同時に光応答電流像が得られること,またその光応答電流像が照射レーザ光の波長に依存して変化することを見出している.

マイクロヒータを用いたF1モーターの研究
助教授 野地 博行, 講師 竹内 昌治[代表者], 教授 藤田 博之
ナノバイオテクノロジーにおいて,生体分子の活性のOn/Offは必須の技術である.このために,局所的に温度を制御し生体分子活性を制御する為のマイクロヒーターの開発を行なっている.

分子モーターを操作する磁気ピンセットの開発
助教授 野地 博行
顕微鏡下で回転分子モーターを分子単位で操作するために,顕微鏡ステージ上で均一かつ水平な磁場を,任意の強度と任意の角度で発生する磁気ピンセットを開発している.

分子モーター内部における分子間ポテンシャルの1分子測定
助教授 野地 博行
回転分子モーターは,エネルギー分子であるATPの加水分解状態にともない,分子間ポテンシャルの形を逐次変化させることで一方向の運動を実現している.したがって,このポテンシャルの実測は,モーターの駆動原理の理解の本質である.我々は,F1モーターを磁気ピンセットで操作し,各角度におけるトルクを測定することでポテンシャルを実測している.

外力による酵素反応の活性化
助教授 野地 博行
F1モーターは,回転する「活性状態」と停止した「不活性状態」の間を遷移する.最近,我々は,磁気ピンセットを用いてモーターを押すことで,「不活性状態」のF1モーターを「活性状態」に戻せることを見出した.これは,酵素活性を外力で活性化した初めての事例である.この分子メカニズム解明に取り組んでいる.

Foモーターの回転の1分子観察
助教授 野地 博行[代表者], 講師 竹内 昌治
ATP合成酵素のFoモーターは,プロトン流で駆動する回転モーターである.プロトンの濃度差だけでも駆動できる為,これまで精力的に研究されてきたATP駆動モーターとは大きく異なり,純粋なブラウニアンモーターとして働けることが予想され,その1分子観察が切望されている.本研究の目的は,これを実現する実験系の構築である.

マイクロチャンバーを用いたF1モーターの研究
助教授 野地 博行[代表者], 講師 竹内 昌治, 教授 藤田 博之
F1モーターは,生体内ではFoモーターによって逆回転させられることでATP合成を行なっていると思われている.これを実証し,さらにそのエネルギー変換効率を求める為には,実際にF1モーターを逆回転させ,合成されたATP濃度を求める必要がある.このために,F1モーターを微小空間に閉じ込めて,磁気ピンセットを用いて逆回転させ,合成されたATP分子を効率的に検出することを目指している.

生化学チップを用いたF1モーターの研究
助教授 野地 博行[代表者], 助教授 藤井 輝夫,山本 貴富喜,研究機関研究員 Eric Leclerc
生体分子の1分子観察では,分子の活性を保ったまま基板上に固定化することが重要である.このために,F1モーターをマイクロ・ナノタワー構造の頂上に固定化し,その機能を計測している.また,蛋白質合成チップを改良して,蛋白質合成・精製・活性測定が集積化されたチップの開発を行なっている.

非エルミート量子力学とその応用
助教授 羽田野 直道
量子力学では通常,ハミルトニアンはエルミート演算子とされる.それを,ある特殊な形(虚数ベクトルポテンシャルを導入する形)で非エルミート演算子に拡張したモデルを研究している.このモデルは,アンダーソン局在状態や共鳴状態の探査に便利である.ただし,その際に巨大非エルミート行列のスペクトルを求める必要がある.そのようなアルゴリズムの研究も行っている.

共鳴核反応を用いたダイヤモンド表面および内部の水素原子密度測定(継続)
助教授 光田 好孝[代表者], 助教授 福谷 克之, 助手 ビルデ マーカス
ダイヤモンドの表面物性は表面終端元素により大きく変化し, 通常の気相合成時にはH原子で終端されてると云われている. ダイヤモンド膜デバイスの作製には, 表面終端H原子密度および薄膜内部のH原子濃度の測定法が重要であるが, H原子の表面や内部の密度を精緻に測定することが難しい. そこで, 15N2+イオンを用いた共鳴核反応により, ダイヤモンド表面近傍のH原子濃度の測定を行った. これまでに, Si基板上多結晶膜,およびIr基板上ヘテロエピタキシャル成長膜,高圧合成(001)Ib基板上ホモエピタキシャル膜について測定を行ってきた.今年度は,燃焼炎法において作製された,カソードルミネッセンスにおいてエキシトン発光のみを示す高品質ホモエピタキシャル膜について,内部水素量の高感度測定を新たに試みた.今回の高感度測定によってこれまでよりも微量の内部水素量の検出が可能となった.通常のマイクロ波CVD法において形成したホモエピタキシャル膜と同様に,今回の試料でも内部に存在するH原子は非常に微少量であることが判明したが,基板である高圧合成単結晶基板よりも内部水素量は若干多いことが明らかとなった.単結晶性が高く水素量が少ない単結晶基板ではエキシトン発光よりもバンドAが明瞭であることから,燃焼炎形成されたダイヤモンド中の水素の存在位置が高圧合成法とは異なることが推測される.

H11円筒共振器型マイクロ波プラズマ装置によるダイヤモンド膜のCVD形成
助教授 光田 好孝[代表者],光田研 大学院学生 柿木充
当研究室で開発してきたH11円筒共振器型マイクロ波プラズマ装置では,およそφ100mm程度の均一なプラズマ発生が可能である.基板温度の均一加熱を併用して,CH4-H2プラズマ,およびCH4-O2プ-H2ラズマによるダイヤモンド薄膜ののCVD形成を行っている.しかし,投入するマイクロ波電力のうち80%程度という低い割合しかプラズマへ投入することができず,エネルギー効率が低いという問題があった.これは,マイクロ波電源から矩形導波管-矩形円筒モード変換器-円筒導波管を通してプラズマまでマイクロ波が伝搬するため,伝搬中の特異点において異なるモードのマイクロ波が発生し伝搬を乱していたためと考えられる.そこで,今年度は,矩形及び円筒導波管の長さを調整しモード乱れを最小化することを試みた.その結果,投入電力の95%程度をプラズマに投入可能となりエネルギー効率が向上した. また,新たにin-situな基板前処理法であるバイアス核形成(BEN)プロセスが可能となるように,直流並びに高周波バイアスが基板に印加可能とする基板ホルダ−の改良を実施した.現在,基板に直流負バイアスを印加することによる,核形成密度の増加効果について確認している.

微細デバイス作製のためのダイヤモンド表面終端構造制御(継続)
助教授 光田 好孝[代表者],研究員 川原田 洋
ダイヤモンド表面の電気物性は, 表面に化学吸着するHやOなどの原子種に大きく依存し, 高い絶縁性から良好なp型半導体特性にまで変化する. H原子で終端された場合に形成されるp型表面伝導層を利用すれば, 新たな半導体電子デバイスの可能性が開ける. そこで, CVD合成ダイヤモンド表面の終端構造を任意に制御する手法, 得に, H原子終端とO原子終端構造とを互いに変換するプロセスを構築することを目的とした.この終端原子変換プロセスをモデル化した実験を超高真空下でCVD合成多結晶ダイヤモンドを用いて行った. H原子およびO原子の試料表面への吸着は,加熱した試料に対してH2分子およびO2分子を一定圧力下で一定時間吹き付けることにより行った. 未吸着面へのO原子の吸着では,昨年度までに1000Kの試料表面にはO原子は安定吸着せず,600Kの表面には吸着することがわかっている.1000Kの表面では吸着ではなくエッチングがおこるものと考えられていた.しかし,酸素吹付け前には明瞭なRHEED像が,吹き付け後には回折強度が低下しぼやけてくることなどから,表面原子構造がアモルファス化している可能性があることが明らかとなった.また,600Kの表面に酸素の吹付け後の熱脱離スペクトルでは,COとして酸素が脱離し,脱離ピークが930K前後であることなどが,明らかとなった.

ダイヤモンド表面の電子物性解析へのin-situ TEM法の適用
助教授 光田 好孝[代表者],技術官 葛巻徹
本研究は電界中や電子線照射時にダイヤモンド表面で起こる物理的・化学的現象と表面電子物性とを高分解能透過電子顕微鏡下でのin-situ観察技術を駆使して同時に計測し,表面原子構造や表面電子物性の制御と設計に関する新しい知見を得ようとするものである.特に,電子物性の評価が可能なピエゾ駆動型試料ホルダーを作製・使用することで,電界中での表面原子・電子構造の変化挙動の有無と対応する表面電気伝導特性との関連や電子放出サイトを明らかにする.同時に,原子スケールの表面加工が導電性に与える影響を表面近傍の電子状態と関連付けて定量的に評価する.本年度は,in-situ TEM法を適用可能な試料の形成について検討を加え,CVD形成したダイヤモンド多結晶膜および孤立多結晶粒子,あるいは高圧合成1bダイヤモンド単結晶を用いた試料作製を行った.

ダイヤモンドCVD形成におけるバイアス印加核生成処理環境のプラズマ診断
助教授 光田 好孝[代表者],技術官 葛巻徹
ダイヤモンドを高配向成長させるために,堆積初期時に基板に負バイアスを印加し配向核を高密度に生成させる技術が1990年代初頭に開発されている.本技術を用いることで,これまでにSi,SiC,Ir上にほぼヘテロエピタキシャルにダイヤモンド膜をφ10mm程度の面積に成長可能であることが判明している.しかし,バイアス印加によって堆積環境がどのように変化しているかは不明のままである.そこで,本研究では,バイアス印加処理中のプラズマ環境を発光分光学的に診断することを目的とする. 発光強度の強いH原子バルマー系列およびC2分子スワンバンドについて,発光スペクトルの微細構造解析を行った.H原子の発光については,強度,エネルギー分布ともほとんど変化せず,負バイアス印加とは独立であることが明らかとなった.一方,負バイアスの印加に伴い,C2分子の振動および回転温度は上昇し,一定以上の負バイアス値では飽和する傾向が観測された.このとき,C2分子のバンドヘッド(0,0)の絶対強度は低下し,同じ負バイアス値以上では一定となった.以上のことから,バイアス印加は環境中のC2分子の解離を促進する効果があるものと考えられる.

非晶質硬質炭素膜の反応性スパッタリング形成(継続)
助教授 光田 好孝[代表者],研究員 鈴木哲也
非晶質硬質炭素a-C膜は硬さ・平滑性に優れているため, ダイヤモンドに代わる表面処理材料として利用されている. しかし,低い密着性のために,高負荷がかかる機械部品への適用ができない現状にある.そこで, 成長表面へのイオン照射の効果が期待できる,炭素固体ターゲットを原料とした拡散磁場型のターゲット電極を用いたスパッタリング法によって,a-C超薄膜の形成を試みた. このとき, C原子の結合をsp3化するため微量H2の雰囲気中への導入も同時に行った. ダイナミック硬度試験機を用いて,得られた100nm程度の超薄膜の硬さ測定を試みた.超薄膜表面から10nm程度の押し込みでは,堆積後大気中分子が表面に吸着するため,測定位置により大きなばらつきを示す結果となった.膜厚にほぼ等しい押し込みでは,基板であるSiを上回る硬さを示したものの,報告されているa-C:H膜の硬さや膜厚500nm以上の膜の硬さなどと比較して著しく低い値を示した.これは,基板の硬さや弾性の影響を受けたためと考えられ,超薄膜の硬さを押し込みではなくひっかき試験等の別の方法で評価する必要性が明らかとなった.

情報・システム部門

文化財のサイバー化(形や見えのモデル化)
教授 池内 克史
日本には数多くの文化財が存在しています.それらは,いつ何時火災,地震などの災害のため失われてしまうかも知れません.これらの貴重な文化財をコンピュータビジョンの最新の技術を使用して,サイバー化する研究をおこなっています.主な研究テーマは,形のモデル化,見えのモデル化,環境のモデル化などです.最近,鎌倉や奈良の大仏をモデル化しました.

無形文化財のデジタル化(動きのモデル化)
教授 池内 克史
日本には,仏像や建築物などの「静的」文化遺産と同様に,民族舞踊などの「動き」による形の無い文化遺産も各地に存在しています.しかし後継者不足などの理由から,これらの貴重な文化遺産が失われている事も事実です.我々の研究は,これら失われつつある無定形文化財を計算機内にデジタル保存し,いつでも再現・人に後継できる手法を構築することを目指しています.具体的な研究テーマとしては,・ 人の動きの入力方法とその解析・ 動きのシンボル化・ シンボル化された動きの編集と生成・ CGやロボットによる動きの再現などが挙げられます.

ロボットによる匠の技の学習(動きの実現)
教授 池内 克史
幼児の学習の大部分は,親の行動を見て真似ることから始まります.我々の研究室では人間の行動を見て,これを理解し,同じ行動を行うロボットプログラムを生成する研究を行っています.この研究を行うことで人間の行動学習過程のヒントが得られればと考えています.さらに,人間国宝の業をロボットに再現させることで,貴重な匠の業を永久保存したいと考えています.

高度交通システム(ITS:状況の認識とモデル化)
教授 池内 克史
21世紀に向けて高度交通システムの開発が盛んです.そこでは,車は, 運転者やその周辺の車の行動を見て,その状態を理解し, 周辺の道路環境を比較しながら, さらに上位のコントロール系からの情報にもとづいて, 最適な行動が取れる必要があります. こういったシステムのために,人間の行動を連続的に観測した画像列から行動を理解する手法, 地図情報と周辺の状況から現在の位置を決定する手法, 位置情報, 地図情報を現在の実画像上に付加する手法などを研究しています.

計算量的な困難性の仮定を必要としない匿名暗号・認証方式
教授 今井 秀樹[代表者],博士研究員 花岡悟一郎
電子投票システムなど利用者のプライバシー保護が必要なアプリケーションにおいて,匿名通信路が需要な要素技術となっている.また,これまでにもさまざまな匿名通信路の構成方法が提案されている.しかし,これらの方式を用いたとしても,送信される情報自体に送信元を特定可能な情報が記載されている場合,匿名通信路の利用はもはや意味をなさなくなる.とくに,長期的な安全性の保証が要求されるようなアプリケーションにおいては,この問題への対処方法はこれまで明らかではなかった.これに対し,我々は,計算量的な仮定を排除した場合における,上記の問題の背後にある基盤的な理論を整理し,また,さらに具体的な実現方法を示した.なお,提案方式に必要となる記憶容量は理論上最適であることも示されている

Information theoretical reductions and constructions for cryptographic primitives.
教授 今井 秀樹[代表者],大学院学生 Anderson C. A. Nascimento
Cryptographic primitives are the basic building block of cryptography. Frequently, the security of complicated protocols can be reduced to the security of a few basic cryptographic primitives such as bit commitment and oblivious transfer. In our research, we look for information theoretically secure constructions for cryptographic primitives (that is, constructions which the security does not rely on unproven complexity assumptions) and information theoretically reductions among primitives. Among our research achievements, we proposed a Shannon theoretical treatment of bit commitment protocols based on noisy channels and secure two-party computations and bit commitments based on pre-distributed data.

バイオメトリクスを利用した復号鍵隔離・更新システム
教授 今井 秀樹[代表者],大学院学生 山中晋爾
ネットワーク上で情報をやり取りする際に,通信内容の秘密保持や完全性を維持するために公開鍵暗号方式が利用されている.公開鍵暗号方式におけるもっとも重大な脅威のひとつは秘密鍵の漏洩である.この対処法として,鍵隔離型・鍵更新システムが存在する.同システムでは,秘密鍵を使用期間が決められている復号用のユーザ鍵と,耐タンパデバイスに格納するユーザ秘密鍵更新用のヘルパー鍵とに分離している.そして,一定期間ごとにヘルパー鍵から更新情報を作成し,これをベースにユーザ鍵を更新した後古いユーザ鍵を破棄する.その結果,たとえある時点におけるユーザ鍵が漏洩しても,その前後の期間における暗号の安全性が保たれる.我々は,ヘルパー鍵をバイオメトリクス情報から作成する耐タンパデバイスを必要としない新しい鍵隔離型・鍵更新システムを提案した.

共通鍵ブロック暗号の安全性評価に関する研究
教授 今井 秀樹[代表者],共同研究員 盛合志帆
共通鍵ブロック暗号は,多くの暗号システムにおいて最も重要な要素技術の一つである.共通鍵ブロック暗号の主な機能は秘匿であるが,疑似乱数生成器やストリーム暗号,メッセージ認証コードを構成するビルディングブロックとしても利用されている.代表例として米国標準暗号AES,Camelia,MISTYが知られている.多くの公開鍵暗号が,計算量的に困難とされている問題に帰着することで,その安全性を証明しているのに対し,共通鍵ブロック暗号についての体系的な安全性証明理論は未だ確立していない.本研究では既存の共通鍵ブロック暗号の安全性評価や新しい安全性評価手法の確立,および共通鍵ブロック暗号の利用モードに関する研究を行なう.

署名つき文書の不正流出問題に関する研究
教授 今井 秀樹[代表者],大学院学生 米澤祥子
電子署名技術は情報化社会において重要な技術であるが,署名つき文書が署名者の意図する範囲を超えて不当に流出した場合署名者に対し甚大な被害が及ぶおそれがある.このような問題への対策には2種類の方法が考えられる.ひとつは,署名の検証を特定のエンティティに限定し他者による署名検証を禁止する方式であり,もうひとつは,署名つき文書を不正流出させたエンティティに対し何らかのペナルティを課すことにより不正流出を抑止する方式である.本研究ではこれら2つのアプローチに基づく署名方式の提案および研究を行う.

Efficient Broadcast Encryption Schemes
教授 今井 秀樹[代表者],大学院学生 Nuttapong Attrapadung
A broadcast encryption scheme allows the sender to securely distribute data to a dynamically changing set of users over an insecure channel. One of the most challenging problems is to reduce the number of secret storage keys at user as well as the number of ciphertexts needed to broadcast. I proposed two schemes, both requires zero broadcast message and especially the second one requires only one user key.

決定論的な非正則LDPC符号の構成法とその符号を用いた量子鍵配送への応用
教授 今井 秀樹[代表者],受託研究員 松本渉
ユークリッド幾何符号,および整数ラティス構造の符号をベースに,パリティ検査行列の次数分布の最適化を行い,任意の符号化率と任意の次数分布に対し決定論的に構成できる符号の構成法を提案した.また,その構成法による非正則LDPC符号の誤り率特性が実用的な符号長においてシャノン限界に近づく事を示した.さらに,量子通信路により鍵情報を送信し古典通信路において誤り訂正情報を通信することによりBB84をベースにして量子鍵配布するシステムにおいて,特に量子通信路に誤りがある通信路を想定し,その誤り訂正に上記提案の非正則LDPC符号を用いる提案を行なった.この提案方式により誤り訂正処理のみならず誤りビットの特定,誤り率の推定,秘匿性増強のための鍵圧縮等の処理が情報量的安全性を確保しながら実現できる事を証明した.

必須処理付きアクセス制御モデルに関する研究
教授 今井 秀樹[代表者],受託研究員 工藤道治
近年,個人や企業において,情報資源に対するセキュリティポリシー,(例えば,電子商取引におけるプライバシーポリシー,デジタルメディア使用権ポリシーなど)を使用する場面がますます増えてきている.ところが,同じようなポリシーを異なる書式で記述したり,同じ書式に異なる意味を持たせてしまうような問題が発生しており,セキュリティポリシーの記述,解釈,執行において統一的な手法が求められている.セキュリティポリシーのための統合的な枠組みを提供することを目的とした,必須処理付きアクセス制御モデルについての研究を行っている.これは,従来のアクセス制御モデルに新しく必須処理という概念を組み込むことで,システムで執行される多様なセキュリティポリシーを,アクセス制御モデルの下で統一的に表現し,それをシステムが執行できるようにするものである.

コンテンツの不正配布を考慮したBroadcast Encryption方式
教授 今井 秀樹[代表者],大学院学生 金 美羅
送信される暗号化データに対して,有効な鍵を持つ受信者のみがそのデータを復号できるBroadcast Encryption方式は,コンテンツの暗号化および再生機器内の鍵の漏洩に対処できても,復号されたコンテンツの不正な二次配布には対処できない.このために,従来よりコンテンツの受信者ごとに異なる情報を埋め込むFingerprinting方式が知られている.しかしながら,Broadcast Encryptionでは同一のデータを受信者に送信するため,送信者側でコンテンツにFingerprintを埋め込むことは難しい.そこで,我々は送信者側でFingerprintの埋め込みを行うために,およそ半分の受信者が効率良く無効化できるBroadcast Encryption方式を提案した.

情報量的に安全な地域内公開検証可能秘密分散法
教授 今井 秀樹[代表者],大学院学生 鬼頭大介
暗号学における基本プリミティブとしてPVSS(Publicly Verifiable Secret Sharing)がある.従来提案されているPVSSでは秘密の安全性が,離散対数問題等の数学的に解くことが困難な問題が解けないという計算量的想定に基づいている.これは秘密の暗号化に公開鍵暗号を用いているためである.これに対して我々は新たな概念LPVSS(Local PVSS)を導入し,RivestのTrusted Initializerモデル,有限体上のベクトル空間による秘密分散法を用いることで,如何なる計算量的な想定も必要としない情報量的に安全な方式を提案した.

パーソナルエントロピーの抽出に関する研究
教授 今井 秀樹[代表者],大学院学生 赤尾雅人
生体情報を認証に用いる研究は数多くなされている.しかし登録フェーズで参照データとなるテンプレートを作成し,認証フェーズで入力した生体情報をテンプレートと照合する手法がほとんどである.これらの重大な問題点は,プライバシー情報が含まれるテンプレートをサーバに保存する必要があるために,情報漏洩の恐れがあることである.そこでプライバシー情報を含むテンプレートを用いない手法が必要である.そのためには毎回入力する生体情報から固定値を抽出するのが効果的であり,この固定値は暗号鍵として利用できる.このように生体情報を鍵管理の観点から評価する研究は十分でなく,既存の暗号システムと組み合わせることで応用範囲の広い技術となり得る.そこで一例として特に手書き入力情報を用いて固定値を抽出する手法を提案し,評価を行った.

Security of Multiple Encryptions
教授 今井 秀樹[代表者],大学院学生 張鋭
Multiple encryption is expected to increase the security of a single-layered encryption scheme, however, in some model, we show it is not easy to claim multiple encryption can be secure. The answer should depend on a lot offactors as the definition of security and attack model. More generally, the design of a multiple encryption will greatly vary the secruity. Interesting applications can be some threshold systems either with time span or servernumber threshold.

証明可能安全な公開鍵暗号方式
教授 今井 秀樹[代表者],大学院学生 崔洋
公開鍵暗号と署名方式としては,今まで様々提案されたのに,すべての環境で安全性が保障できず,パフォーマンスも違います.1994年からBellare氏たちの強い安全性を実現できる暗号方式(OAEP)を提案されてから,強い安全性を証明できると実現できるな暗号および署名方式は期待されています.一方,スビート早いな方式がありますが,暗号文のサイズは大きいです.これに対して,我々は強い安全性を示明し,よりコンパクトの暗号方式を提案しました.

量子鍵配布の実用化とその安全性評価
教授 今井 秀樹[代表者],研究機関研究員 萩原学
量子暗号の代表的プロトコルとして量子鍵配布プロトコルが幾つか知られている.それは,量子力学に依存し理論上完全な安全性が保障されている.その一方,現実世界においてはその安全性は装置の性能にも依存する.例えば雑音の問題や偏光を決定する装置の問題,単光子の生成装置の精度の問題,検出器の精度の問題などにより安全性は劣化する.この研究では,現実的な装置を用いても尚,無条件に安全性を保障する量子鍵配布理論を構築していく.

Interference Cancellation in CDMA Cellular Systems(継続)
教授 今井 秀樹[代表者],大学院生 Jonas Karlsson
Code Divison Multiple Access(CDMA)is going to be used in many of next generation of cellular systems.Next generation of cellular system will provide services with a wide range of demands.From low rate voice services to high rate videoservices. To increase the capacity in these kind ofsistems, interference cancellation is one promising method. Our research aims to find methods applicable in particular to the next generation of cellular system, based on the so-called Wideband CDMA(WCDMA)standard. The current direction of the research is to adopt so-called single-userdetectors(SUD)to the WCDMA standard and finding suitable algorithms around the core algorithm. This includes rithms for channel estimation, rate detection, tracking, and so on.

Study of the security aspects of mobile communications
教授 今井 秀樹[代表者],大学院学生 Mohammad Ghulam Rahman
Security is a critical issue in mobile radio applications. The integration of the security features into wireless communication must take into account restrictions that may apply such as mobility, limited processing and storage capacity of the mobile terminal, low communication bandwidth high transmission costs and real time constraints. An essential function for achieving security in mobile communication is reliable authentication employing appropriate cryptographic algorithms. Another concern is to keep the identity and location of the user secret. Session key establishment for communication is also an important concern. To achieve all this features in a single security protocol an anonymous authenticated key agreement protocol for mobile communication has to be developed. Multi-party communication is also becoming popular due to the advance in distributed communication system. To achieve a conference setting in mobile environment with multi-party authentication and conference key establishment is also the goal of this research. Other security features like domain boundary crossing, device vulnerability etc. will also be studied.

誤り訂正符号推定
教授 今井 秀樹[代表者],共同研究員 穴田啓晃
総務省その他で電波の利用状況を監視する目的で,電波を傍受し情報を抽出するシステムの開発が必要となっている.最近のデジタル情報通信に対してこれを行うには,誤り訂正符号化されたビット列を復号処理しなければならない.すなわち,誤り訂正符号の未知のパラメータ値を推定しなければならない.本研究の目標は,未知のパラメータ値を,精度良く効率良く推定する方法を考案することである.現段階で,具体的には,RS符号と非組織的畳み込み符号について,全探索法をベースにして改良を行い,1秒から1時間程度で推定する方法を考案している.

Boolean Expression of Subtree in Secure Broadcasting
教授 今井 秀樹[代表者],外国人博士研究員 Wang Jian
A binary-tree based subset-cover revocation framework has been proposed in Crypto 2001 to provide solution to secure broadcasting.A binary-tree based subset-cover revocation framework has been proposed in Crypto 2001 to provide solution to secure broadcastingRecently, a modified algorithm has been proposed to further reduce the key size associated witheach subscriber. In this paper, we show the relations between Boolean functions and the subset-cover algorithm. Boolean expression is used to reduce the computational complexity to find the collection of subsets.

Hierarchical Key Management for Secure Multicast
教授 今井 秀樹[代表者],外国人博士研究員 Wang Jian
Hierarchical Key Management for Secure Multicastabstract:Scalable key management for multicast application has been studied extensively. Most schemes only consider key update upon membership change; but lack ofdiscussion on how to distribute secret keys to all users during the initial phase. In the paper, we propose a static hierarchical architecture for key distribution, and discuss how toaccommodate dynamical structure of each secure multicast session based on the constructed static architecture. The proposed architecture can support wide range of keymanagement applications in a secure multicast session, including key distribution during the initial phase, accommodating various types of membership such as very large or highlydynamic membership, making use of network resources and accommodating network change. We also include some issues of key management. Comparisons with other schemes arealso included

An Efficient and Flexible Anonymous Channel Scheme hiding End Server
教授 今井 秀樹[代表者],大学院生 辛 星漢
Until recently, a variety of anonymous channel schemes have been proposed to guarantee anonymity of message sender. Unfortunately, all the existing schemes cannot satisfy the following properties at the same time: efficiency, network flexibility and destination privacy. This paper presents practical and provably secure anonymous channel schemes, which provide the above properties simultaneously.

楕円曲線暗号の実装方式
教授 今井 秀樹[代表者],大学院生 小林鉄太郎
素因数分解系の公開鍵暗号に代わる方式として,楕円曲線暗号が注目されている.鍵長が短く処理が高速であり,ICカードやモバイル端末などに適するといわれている.我々は楕円曲線暗号の応用分野を広げるために,楕円曲線演算の処理に工夫をおこない,世界最高速の楕円曲線暗号実装法を研究している.

認証付き暗号の安全性
教授 今井 秀樹[代表者],受託研究員 草刈 敏幸
暗号及び認証手法の組み合わせにより文書の完全性と守秘性を満たす方式に認証付き暗号(Authenticated Encryption)がある.これは現在インターネットで広く使われているプロトコル(SSL/TLS, IPSec, SSH)にて導入されている.組み合わせのケースにより安全性が異なる事から我々は,どの様な条件の下で安全になるかを検討し提案した.

暗号認証プロトコルに関する研究
教授 今井 秀樹[代表者],共同研究員 阿部 正幸
暗号および認証プロトコルの定式化,具体的方法の考案,計算量モデルに基づく安全性の評価を行っている

An Anonymous Loan System
教授 今井 秀樹[代表者],共同研究者 繁富利恵
Recently, paper based transactions are being replaced by digitized transactions in a rapid pace. These kinds of digitized data are useful compared to paper based data in the sense of the flexibility of the data. Loan services, (for example, Library, Rental video, debt etc., ) are among the services that makes use of sophisticated digitized transactions. Loan services handle a lot of personal information, which enables the analysis of personal hobby and tastes, or even life style. Hence, administrators who control the loan information are able to obtain personal information of customers, which leads to a large privacy problem. We have examined a way to avoid this privacy problem. One solution is to use "An Anonymous Loan" that the user can be anonymous while borrowing and returning, but the anonymity is unveiled only after the due date without return

情報量的安全性に基づく署名方式の安全性の概念について
教授 今井 秀樹[代表者],協力研究員 四方順司
情報量的安全性に基づく署名方式に対して,安全性の概念の理論構築を行うと共に,効率の良い実現方法を提案することを目的として研究活動を行った.ここで,情報量的に安全性が保証される署名方式とは,文字通りその安全性が情報理論の立場から完全に保証される署名方式を意味し,したがってそれは素因数分解問題のような,いかなる数学的問題の困難性にも依拠しない形で原理的に安全であると言える方式である.本研究活動の成果としては,情報量的安全性に基づく認証・署名方式に対して,これまでに提案されていた安全性の概念よりも真に強い概念を新たに提唱できたこと,及び,この意味で安全な方式(つまり,現時点で最強の安全性をもつ署名方式)を実際に実現できたことが挙げられる.

量子ビットコミットメントに関する研究
教授 今井 秀樹[代表者],大学院学生 中根美沙
量子暗号は量子力学の基本法則を安全性の根拠にしようとする暗号であるが,無条件に安全な量子ビットコミットメントは存在しないことが証明されており,物理的な仮定や計算量的な仮定を用いたプロトコルが提案されている.しかし,それらのプロトコルを実装した場合,単一光子生成器の性能や量子通信路の雑音により安全性が下がってしまうという問題が存在する.そこで本研究では,装置が不完全でも安全性が維持される量子ビットコミットメントが量子一方向性置換を仮定した従来方式から構成可能であることを証明し,そのときの装置の条件を示した.また,コヒーレント観測の難しさを仮定した従来方式が現状の技術ではどのような攻撃をされ,その成功確率はどの程度なのかを示すことで,安全性と効率について新たな評価方法を与えた.

一方向アキュムレータに基づくブラインド署名とその応用に関する研究
教授 今井 秀樹[代表者],大学院学生 Srivanasont Boonying
本研究では,情報セキュリティの基礎知識である電子署名について,電子マネーへの応用に適した秘密鍵の管理する必要がなく,しかもプライバシーを保護できる方式を提案する.そこで,我々は既存の一方向アキュムレータに基づく電子署名に注目して,ユーザの匿名性が保護できるように改良を加えた.その新しい方式にはブラインドアキュムレータという名前をつけた.方式の提案の以外,方式の安全性検証や電子マネーへの応用も行われる.

情報量的に安全な電子現金方式
教授 今井 秀樹[代表者],博士研究員 大塚玲
電子現金は将来のネットワーク社会の貨幣インフラを担うと期待され,盛んに研究が進められている.しかし,過去に提案された方式はすべて計算量的な安全性に基づいており,将来,量子コンピュータが実用化されると,貨幣インフラが致命的な脅威にさらされるリスクがある.これに対して,我々は計算量的な仮定を一切必要としない電子現金方式を提案している.既にそのような方式の存在について理論的には証明できたが,実用化までにはさらなる通信量の削減が必要である.

信頼度の低いインターネット端末を安全に使う方法に関する考察
教授 今井 秀樹[代表者],大学院学生 副島晋
信頼度の低いインターネット端末(例えばインターネットカフェ)からインターネットにアクセスするような場合,通信路の安全性はいつでも確保されているわけではない.SSLなどの暗号技術を利用して通信路の安全をユーザー側のアプリケーションを利用して確保できる場合もあるが,いつでもユーザーがそうしたアプリケーションを持ちあるいているわけではない.そこで,安全性が確保されていない通信路を介して安全に通信を行なうために必要な条件をユーザーの持っている端末の機能によって分類し,ユーザーの持っているものに対して安全に通信するための最善に方法を考察した.

個人情報の保護を考慮したトラストメトリックスの拡張および考察
教授 今井 秀樹[代表者],大学院学生 田村 仁
トラストメトリックスとは,特にWeb of Trustモデルにおける,ユーザにとって信頼情報が分散された中での相手や,相手の鍵の正当性に対する信頼度の指標ともなる信頼の定量化方法についての研究である.以前我々が発表した[TKI02]では,Web of Trust モデルの中でも代表的なBBKモデル([BBK94])とPGPモデル([Zim95],[Web01])に関する長所と問題点を指摘し,さらにBBKモデルにおけるプライバシーの問題(個人情報保護の問題)を改良することで,双方の問題点を補う方式を提案した.本研究においては,[TKI02]の方式に各ユーザがコミットメントをすることにより検算機能を加えることで更なる拡張を行った.その際にRSA関数の準同型の性質を利用した.これにより,個人情報を保護しながらもより確かな計算結果を得られることを可能にする.また,RSA関数へのフォーマットの方法など,実用的な観点から生じる問題(についての考察を行った.

科学技術政策立案プロセスに関する研究
教授 板倉 周一郎
個別の科学技術が,各種境界条件,社会的背景,メリット,デメリット等の種々の要素を勘案して政策化するまでのプロセスについて,安全,リスクに焦点を当てつつ,その構造化を図るための研究を行っている.

研究マネジメントのあり方に関する研究
教授 板倉 周一郎
国立試験研究機関,特殊法人,国立大学など,各種の研究機関が,独立行政法人型組織に移行する中,研究開発活動のミッション設定から評価までの流れを俯瞰しつつ,適切な研究マネジメントの制度,体制等,そのあり方について研究を行っている.

イオン・電子マルチ収束ビームによる表面・局所分析法の開発(継続)
教授 尾張 真則[代表者],研究担当 坂本 哲夫,大学院学生 高梨 和也・田中 祐介・辛島 正俊・柴田 和明
固体材料の微小領域や粒径数ミクロン以下の単一微粒子に対する三次元分析法の確立を目的として,複数のGa収束イオンビーム(Ga-FIB)と高輝度電子ビーム(EB)を用いた,新しい表面局所分析法を開発した.具体的には,(1)Ga-FIB加工断面のEB励起オージェ分析や,(2)加工断面の飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)法による微小領域三次元分析などが挙げられる.また,本法を半導体素子やボンディングワイヤ接合部あるいは電池材料微粒子などに適用し,固体内部の精密な三次元構造を明らかにした.

超臨界流体抽出法を用いた環境汚染物質分析法の研究(継続)
教授 尾張 真則[代表者],研究担当 坂本 哲夫,大学院学生 柴田 和明
超臨界流体は温度と圧力を変えることにより流体密度,すなわち溶解力を制御できるという特長をもつ.本研究では,多様な混合物である環境汚染有機物質を迅速に固体から抽出し,かつ,超臨界流体の密度(温度,圧力)をコントロールすることにより,従来の有機溶媒による一括抽出ではなく,分析目的物質のみを選択的に抽出・回収する新しい分析前処理技術を開発している.これまでに,フライアッシュ試料から,n-アルカン,クロロベンゼン類,PAH類をそれぞれ選択的に抽出することに成功している.

化学実験のダウンサイジング(継続)
教授 尾張 真則[代表者],教授 尾張 真則,研究担当 坂本 哲夫,大学院学生 金 朋央・松原 光宏・武田修一
研究上行われる化学実験は新たな情報を得るためになされるものであり,量的生産を目指しているものではない.したがって,実験に用いる試薬の量は,必要最小限であるべきである.本研究は,従来のリットル,ミリリットル,グラムレベルの試薬を用いた化学実験を,得られる情報量を損なうことなくその10の分の1から100分の1以下の試薬により行う実験システムの開発を目指すものである.

局所分析法を用いた大気浮遊粒子状物質の起源解析(継続)
教授 尾張 真則[代表者],研究担当 坂本 哲夫,技術官 冨安 文武乃進,大学院学生 金 朋央・野島 雅・柴田 和明・大崎真由子
都市大気中の浮遊粒子状物質(SPM)に関する環境・健康影響評価のためには,発生起源や輸送経路の解明が重要となる.またSPM粒子個々の大きさや形,化学組成,粒内元素分布などの情報が必要となる.本研究では沿道や都市人工空間などで捕集されたSPMに対して,マイクロビームアナリシス法を用いて粒別分析し,得られた粒別平均化学組成に基づくクラスター分析を行ない,起源解析・環境評価などを行なっている.さらに,大気汚染の都市間比較に関する検討やSPM表面に吸着した有害有機物の評価法に関する検討を行なった.

ナノスケール二次イオン質量分析(SIMS)装置の試作(新規)
教授 尾張 真則[代表者],教授 尾張 真則,研究担当 坂本 哲夫,技術官 冨安 文武乃進,大学院学生 野島 雅
二次イオン質量分析(SIMS)法は,深さ方向分析が可能な高感度固体表面分析法である.本研究ではGa収束イオンビーム(Ga-FIB)をSIMS装置の一次ビームに採用し,0.1ミクロン以下の高い面方向分解能を実現した.またマルチチャンネル並列検出システムの開発により,迅速で正確なSIMS分析を可能とした.さらにshave-off分析なる独自の微粒子定量分析法や,Ga-FIBの加工機能を利用した新しい三次元分析法ならびに高精度shave-off深さ方向分析法を確立した.現在は,一次イオンビームのナノビーム化に関する検討・装置化を行っている.

反応性ガス支援高速・微細加工システムの開発(継続)
教授 尾張 真則[代表者],研究担当 坂本 哲夫,大学院学生 高梨 和也・田中 祐介・辛島 正俊・柴田 和明・劉静玉
一般に,固体表面局所の微細加工には収束イオンビーム(FIB)が用いられる.しかしながら,従来の微細加工は,主として物理衝突によるスパッターを利用しているため,深さ数10 nmまでの表層に損傷層が形成される.したがって,加工断面でのアモルファス化や格子欠陥の形成,化学状態変化などが問題となる.本研究では,この様な問題を解決するため,断面加工中に反応性ガスの化学的エッチング効果を利用した「高速化」,ならびに反応性ガスと電子ビーム照射による損傷層の選択除去による「低損傷化」を目的とした高速・微細加工システムの開発を行なっている.

光電子スペクトロホログラフィーによる原子レベルでの3次元表面・界面構造解析装置の開発(継続)
教授 尾張 真則[代表者], 助手 石井 秀司,リサーチアソシエート 田村圭司・Wei-Guo CHU
X線光電子回折(XPED)法は,光電子の放出角度依存性や入射エネルギー依存性などから,表面・界面を含めた固体表層原子構造を化学状態別に知ることのできる手法である.我々はこの手法をさらに進めた光電子スペクトロホログラフィー法を提案し,その測定装置・手法の開発を同時に行ってきた.この手法では数種の励起X線の特長を活かすことにより,表面・界面などの構造・状態を3次元的に原子レベルで明らかにできる.光電子スペクトロホログラフィー装置の開発およびそれを用いた超薄膜系の構造解析を行っている

流体の多重スケール・ダイナミックスに関する研究
教授 小林 敏雄
流れにおけるスケールは流れ場の局所パラメータに強く依存し, マクロスケールからミクロスケールまで幅広く分布する. 高精度流体解析手法は流体現象におけるミクロスケールの解明を分担してきた. 本研究ではミクロスケールの現象がどのようにマクロスケールの現象を支配, 影響していくかを解明していく. 本年度は噴流,特に拡散燃焼噴流を対象として, 乱流LESによる数値シミュレーションの精度解析をおこない, 噴流の3次元非定常的な構造を明確にした

流体関連振動の予測と制御に関する研究
教授 小林 敏雄[代表者], 助教授 谷口 伸行,研究員 田中 和博, 協力研究員 小垣 哲也, 技術官 伊藤 裕一
原子力発電プラントなどの大規模エネルギシステムの流体機械設計においては平均的性能の向上と同時に, 流れと構造物とが引き起こす不安定現象の予測や制御が重要な課題である. ここに, 乱流数値シミュレーションを適用して現象解明を図る. 本年度は流れと直角方向に自由に振動する円柱まわりの流れを対象とした乱流LESを試み, 数値予測手法の有効性を検証するとともに, ロッキングイン現象の詳細構造の把握をおこなった. また, 振動する翼まわりの流れ解析を行い, 剥離場の性状および3次元渦運動に対する数値予測の有効性を確かめた

粒子画像流速計の開発
教授 小林 敏雄[代表者], 助手 佐賀 徹雄,技術官 瀬川 茂樹, 受託研究員 國嵜康則
種々の流れ場の定性的/定量的観察に適する可視化手法の開発およびデジタル画像処理技術の利用による可視化結果の自動解析システムの開発に関する研究である. 今年度は昨年開発したステレオPIVシステムを非定常流れに適用し, 瞬時の流れ場の3次元空間構造の変化を詳細に解析することのできるステレオPTVシステムを新たに構成した

自動車の空気力学的特性に関する研究
教授 小林 敏雄[代表者], 助教授 谷口 伸行, 助手 佐賀 徹雄,研究員 鬼頭 幸三
自動車などの車両の定常・非定常空力特性の解明, 乱流騒音の制御, 車室内冷暖房の空気流動の予測と制御に関する基礎研究を行っている. 今年度は, ドアミラーから発生する空力音について模型による実験解析と実車解析とを行った. また, 開発した自動車ヘッドランプ室熱流動解析コードの温度境界条件設定方法に対する詳細な検証を試みた.また, 自動車のヘッドランプ室熱流動解析コードを開発し, 温度分布, 速度分布結果の検証, 境界条件の影響などを検討した.

LES実用化に関する研究
教授 小林 敏雄[代表者], 助教授 谷口 伸行, 助教授 大島 まり,協力研究員 坪倉 誠・小垣 哲也
LESを工業・工学の場で利用するためにはサブグリッド乱流モデルの検討, 一般座標系の導入, 境界条件設定方法の確立, 高速計算手法の検討や数値解析精度の把握が必要である. 今年度は, 昨年度までに開発したコードをガスタービン燃焼器内流れへ適用し,火炎の吹き消えあるいは着火などの限界領域の予測を行った

熱流動場における温度・速度同時計測法の開発
教授 小林 敏雄[代表者], 助手 佐賀 徹雄,技術官 瀬川 茂樹
空間的あるいは時間的な温度変化を伴う流れ場において, 温度と速度の間の相関を知るために, 広い領域の温度情報と相関情報を同時刻に採取する手法の開発が必要である. そこで速度に対してはトレーサ粒子を追跡する方法を, 温度に対してはLIFによる蛍光発光の強度変化を画像処理する方法を開発している. 本年度はこの種の計測における精度評価方法を詳細に検討した.自動車用ヘッドランプ内の温度分布と気流分布について画像処理による計測結果と数値解析による計算結果とを比較し, 両者の相互補充的融合を試みた.

翼まわり流れの数値解析に関する研究
教授 小林 敏雄[代表者],研究員 松宮 W
翼および翼列まわりの流れの非定常特性を数値的に予測する研究である. 本年度は風力発電用風車に使用される低レイノルズ数型翼について, LESを適用し迎え角を種々変えて詳細計算を実施した. その結果, 今まで実験的に予想されていた迎え角によって翼背面に生じる小剥離泡の存在を数値解析によってあきらかにし,その翼性能に及ぼす影響を検討した.

空間データ基盤のデザイン手法
教授 柴崎 亮介
社会的なインフラとして整備の対象となる基盤的な空間データは,できるだけ多くの利用で共通に利用・参照されるものでなければならない.基盤として整備すべきデータの抽出とその費用対効果を明らかにするために,多様な利用者の情報利用行動を調査,分析・整理し,共通に参照される空間データオブジェクトを発見するための手法を開発している.この手法は実際に道路行政のための基盤的道路データの抽出作業や歩行者ITSのための基盤データの抽出作業に適用されている.

地物や空間現象のダイナミックな変化の再現手法
教授 柴崎 亮介
交通や環境など,ダイナミックに変化する空間現象や地物は多い.しかし,時間的,空間的にダイナミックな変化を絶えず網羅的に計測し続けることは多くの場合,きわめて困難であり,結局断片的な観測データから実際に生じているであろう変化を推定することが必要になる.その際,対象地物がそもそもどのように変化するかという知識なども併せて利用することで,推定精度を向上させることができる.観測情報などを表現・管理するデータモデルや曖昧さを持った空間情報の表現モデルの提案に加え,遺伝的アルゴリズムを利用した推定手法を開発している.適用事例には全休・超長期の土地利用変化の再現や都市内における人間移動の再現などがある.

センサ融合による3次元都市空間データの作成技術の開発
教授 柴崎 亮介[代表者],柴崎研・大学院生 中川雅史,熊谷潤,中村克之,佐々木良典
建物・都市レベルを対象とした3次元空間データの自動構築技術: 建物や都市空間を対象に,3次元空間データの自動的な取得とモデル化を目標として,センサシステムの開発からデータ処理手法の開発までを行っている.センサシステムの開発では,異なるセンサの組み合わせ技術とデータ融合手法の開発を中心に進めている.現在開発を進めているセンサとしては航空機・ヘリ搭載のスリーラインセンサ(TLS),車載のレーザマッピングシステムなどがある.前者は世界に同種のものは一つしかないシステムであり,住友電工と共同出資により会社を設立して開発を進めている.後者の車載システムは世界で唯一のシステムである. データ融合手法は別個に収集されたさまざまなデータを接合したり,そこから建物,道路,樹木などの地物を3次元モデルとして抽出する手法を含んでいる.また,こうした3次元幾何データに加えて,車載ビデオ画像などからフリー走行時に得られるであろうビデオ映像を生成し,空間内に位置づけられたストリームビデオサービスを行う手法も開発している.

空間シミュレーションのための分散型データ管理システムの開発
教授 柴崎 亮介[代表者],柴崎研大学院生 謝榕
人や自動車の移動などをマルチエージェントモデルを利用してシミュレーションするなど,空間シミュレーションへのニーズが急速に高まってきている.空間シミュレーションは計算量が非常に大きいものの,空間的に遠く離れたエージェントやオブジェクトが相互作用をすることはそれほど多くなく,並列処理が大変有効な分野である.そこで,分散空間データ管理手法をAgletを中心にして開発し,空間シミュレーションを分散するPC上で実行できるシステムを開発している.

空間エージェントモデルを用いた商業空間回遊行動モデルの開発
教授 柴崎 亮介[代表者],柴崎研大学院生 北澤桂,小西勇介,田仲洋之
商業空間における買い物客の回遊行動をエージェントモデルとして表現することで,商業空間における空間設計,情報サービス設計,マーケッティングなどに利用する.今年度は実際の商業空間における買い物客の行動を計測し,同時に買い物客の商品嗜好なども詳細に調べることで,立ち寄る可能性の高い店舗の推定と,回遊行動のモデリングの両方を行った.

レーザとCCDカメラなどを組み合わせた歩行者や車両のトラッキングシステムの開発
教授 柴崎 亮介[代表者],柴崎研・博士研究員 趙卉菁
歩行者や車両などの移動オブジェクトの計測技術: レーザやCCD,位置決め技術などを利用して,人や車両などの軌跡や行動パターンを計測するセンサシステムやデータ処理手法を開発している.

疑似衛星やウェアラブルセンサを利用した人間動作・行動の計測・トラッキングシステムの開発
教授 柴崎 亮介[代表者],柴崎研大学院生 小西勇介,徐 庸鉄,袴田知弘
3次元空間における人間の動作や行動を計測するニーズはコンピュータゲームから,消防などの緊急活動,歩行者ナビなどきわめて多くの分野で必要とされている.しかし,既存のほとんどの手法は,一定の計測エリアの中で動作・行動する人間を計測するためのものであり,広い地域を自由に移動する人間を対象にすることができなかった.そこで,本研究ではGPSと同じシグナルを出す発信機である疑似衛星や,MEMS技術により作成された小型加速度センサなどを組み合わせることにより,空間的な制約なく,都市内のどのような空間でも人間の動作や行動をモニタリングできるシステムを開発する.また同時に,疑似衛星や新しい衛星測位サービス(ガリレオや準天頂衛星)の最適な組み合わせを探るために都市空間における測位シミュレーションを可能にするシステムを開発している.

エージェントモデルとGISの統合によるデジタルランドスケープモデル(Digital Landscape Model)の実現
教授 柴崎 亮介[代表者],柴崎研・博士研究員 クリシュナ・ラジャン,談国新,客員研究員 余亮,大学院生 Yan Peng
長い歴史の中で土地景観(ランドスケープ)は人間と自然の相互作用の中で変容してきた.人間活動はさらに巨視的な社会経済条件,技術的な知識の変化によりその姿や強度を変える一方で,自然環境も地球温暖化による気候条件の変化など大きく変動している.人間や自然環境の構成要素(植生,動物など)は変化する巨視的環境,微視的環境の中で,種の保存,生存基盤の確保,経済収益の確保などの目的のために,自らの行動を適用的に変化させていると考えられる.こうした想定に基づき,土地景観を構成する要素(人間を含む)を自律的に行動内容や様式を変化させるエージェントモデルとして表現し,それを空間データベース上でシミュレーションすることで土地景観の変容過程を再現することを目指す.当面,土地利用変化モデル,灌漑などの水需要推定モデルなどにDLMの考え方を応用する.

紫外線硬化樹脂を利用した精密切断ブレードの開発(継続)
教授 谷 泰弘[代表者], 客員助教授 榎本 俊之, 助手 柳原 聖,谷研 大学院生 李 承福
半導体ウェーハの精密切断には厚さ数十μmの薄刃の砥石が利用されているが, 熱硬化性樹脂を利用しているために焼成工程に時間がかかってしまう. そこで, 紫外線硬化樹脂を利用して精密切断ブレードを大量に短時間に製造する技術を開発した. 本年度はスピンコータを利用した極薄ブレードの製造方法について検討した.

複合粒子研磨法の開発(継続)
教授 谷 泰弘[代表者], 客員教授 河田 研治, 客員助教授 榎本 俊之, 寄付講座教員 盧 毅申, 助手 柳原 聖,谷研 大学院生 周 文軍
鏡面研磨においては研磨布が一般に利用されている. しかし, 研磨布は目づまりや切れ味の劣化を起こしやすく, 研磨加工を安定させる際の足枷となっている. そこで, 研磨布の代わりにポリマー微粒子を添加することで研磨布を利用しない研磨加工複合粒子研磨法の実現を試みている. 本年度はこの複合粒子研磨法で使用するのに適した工具プレートやポリマー微粒子について検討した.

固定砥粒ワイヤ工具の開発(継続)
教授 谷 泰弘[代表者], 客員助教授 榎本 俊之, 助手 柳原 聖
8インチ以上の大口径シリコンインゴットの切断にはこれまでの内周刃切断にかわってワイヤソー切断が採用されている. しかし, ワイヤソー切断は低作業能率, 悪作業環境, 加工後の洗浄が困難という問題を有する. したがって固定砥粒ワイヤ工具の開発が望まれているが, 砥粒をワイヤに電着する電着工程の短縮が問題となっている. これまでレジンボンドダイヤモンドワイヤ工具の開発に着手してきたが, 今年度はメタルボンドダイヤモンドワイヤ工具の高速製造法について検討した.

高機能研磨加工工具の開発(新規)
教授 谷 泰弘[代表者], 客員教授 河田 研治, 客員助教授 榎本 俊之, 助手 柳原 聖,谷研 大学院生 高 綺 ,谷研 大学院生 立石智隆
研磨加工のさらなる高能率化・高品位化のために,加工工具の高機能化が求められている.その実現のためには,加工点付近で効率よく化学的な作用を発現できるかが大きな鍵となっている.本研究では,研磨パッドにKOHやTiO2などの化学的作用の強い物質を含有させて,エッチング作用や光触媒反応を援用することを試みている.

切削工具の機上再生技術に関する研究(新規)
教授 谷 泰弘[代表者], 助手 柳原 聖,谷研 大学院生 倉橋一豪
切削工具資源の有効利用と,工具交換に伴う切れ刃の取り付け誤差解消を目的に,機上で切削工具のコーティングを再生することを検討している.コーティング膜の形成においては,付帯設備が大がかりでなく,かつ高速な膜の形成が望まれる.そこで,本研究では複合めっき膜をコーティング膜に選択し,超硬工具上に切れ刃として機能できる複合めっき膜が形成できるかどうかを検討している.

二焦点レンズを利用したシリコンウェーハの厚み計測(継続)
教授 谷 泰弘[代表者],谷研 技術官 上村康幸
シリコンウェーハの製造工程において. その厚み測定には表面と裏面の変位量から算出される手法が用いられており. 片面からの計測で厚みを計測する手法が望まれている. そこで. 赤外線がシリコン単結晶を透過するという性質を利用して. あらかじめ焦点距離のわかった二焦点レンズを用いながらウェーハ表面での反射波と裏面での反射波を捉えることで厚さを計測する方法を開発した. 本年度は被測定物の表面粗さや表面品質が測定結果に及ぼす影響について検討した.

超微細シリカ凝集砥粒を使用した固定砥粒工具の開発(継続)
教授 谷 泰弘[代表者], 客員助教授 榎本 俊之,谷研 受託研究員 竹ノ内研二,谷研 大学院生 宇川有人
シリコンウェーハのエッジ加工や光ファイバコネクタ端面の高能率高品位加工が求められている.この実現にはもはや砥粒の固定化を行う以外に飛躍的な進歩は望めない.しかし.加工能率の高い大きな砥粒を固定砥粒加工工具に用いると,所望の粗さは望めず加工面にダメージを生じさせやすい.一方,微細砥粒を固定砥粒加工工具に用いると能率は望めず,また工具は容易に目づまりする. そこで.両者の特徴を併せ持たすことができるように,超微細シリカを凝集させて凝集砥粒とし,これを用いた固定砥粒加工工具を開発し,光ファイバ加工への適用を検討している.

砥粒付きテーパーワイヤを使用した全自動フェルール内径研削盤の開発(新規)
教授 谷 泰弘[代表者],谷研 技術官 上村康幸,研究員 西 健一朗,研究員 山口一朗,研究員 塚田桂介
光ファイバの端部にはジルコニアフェルールが取り付けられている.フェルールは外周部がジルコニアセラミックスで形成され中心に光ファイバが挿入されている.この光ファイバが挿入されるジルコニアフェルールの中心穴は,現在遊離砥粒加工により作られているが,加工能率,および形状の高精度化のために固定砥粒化が望まれている.そこで,内径加工用テーパーワイヤ工具の開発とそれを用いた全自動研削盤の開発を行っている.

液相の相変化現象における素過程と熱伝達(継続)
教授 西尾 茂文[代表者],教授 西尾 茂文, 大学院学生 田中 宏明
蒸発・沸騰や凝固・凍結などの液相の相変化現象は, 相変化分子運動論・界線動力学・界面安定性を媒介として異相核生成・異相成長・界面形態形成により異相構造が形成されるため, 物理的に興味深く, またエネルギー・熱制御・素材製造・食品保存などの工学事象とも関連が深いため熱伝達の解明・制御の観点からも重要である. 本研究では, こうした素過程および熱伝達に関する研究を現象の物理的理解を深め,その知見から技術展開を図る研究を継続的に行っている. 本年度は, 1)高熱流束沸騰のモデルの提案,2)希薄噴霧冷却における熱伝達特性に関する冷却面姿勢の影響を調べる実験を行った.

電子機器の統合冷却システム
教授 西尾 茂文[代表者],教授 西尾茂文,助手 永田真一,技術官 上村光宏,大学院生 吉田大輔,岩上健,多田佳弘
高集積化・高密度実装により発熱密度が急増しているLSIチップについては, notebook PCに代表されるように空冷が基本となるが, 発熱密度は在来の空冷技術で処理できる範囲を超えつつある. そこで, 本研究では, (a)チップからの発熱を再電力化し放熱負荷を低減する要素, (b)放熱面積の拡大要素, (c)高性能なヒートシンク要素, (d)導入空気の低温化要素を総合・統合した冷却技術, すなわち統合熱制御システムを提案し, 要素開発を開始した. 本年度は, 放熱面積の拡大要素として, 1)加振機構を内蔵したCOSMOS heat pipe型ヒートスプレッダーの熱伝導率を最大にする最適条件の解析的導出および振動流駆動仕事の実験的把握, 2)SEMOS heat pipeの最大熱輸送量の測定および内径0.5mmのSEMOS heat pipeの試作とその動作確認, 3)マイクロチャネル型ヒートシンクの最適化計算と熱伝達特性の測定,4)JT膨張を利用したマイクロミニチュアスポット冷却器の検討などを行なった.

低温排熱の動力化に関する研究(継続)
教授 西尾 茂文[代表者],教授 西尾 茂文, 助手 永田真一,大学院学生 田中久嗣,研究生 内山直和
エネルギー問題は, 石油資源の枯渇を中心とした資源制約と, 地球温暖化を中心とした環境制約との両面を有する. 近未来においていずれが主たる制約となるかについては様々な見解があるが, いずれにしても同一の生産過程などにおけるエネルギー消費を押さえる省エネルギー技術と, 未利用のエネルギーを利用する未利用エネルギー利用技術とは, エネルギー有効利用技術の核である. 本研究では, 後者の中で動力化が難しく熱利用として注目されている低温排熱を再動力化するソフトエンジンシステムの開発を目指している. 本年度は, 地球温暖化に関する実態調査を行うとともに,ガス排熱を対象とし,熱音響エンジンによる動力化の可能性を実験的に調べる準備を行った.また,熱電素子に注目し,その温度差利用率を飛躍的に高めるための高効率フィン構造を細径ヒートパイプにより構築する研究を開始した.

ピエゾアクチュエータを用いた可変摩擦ダンパによる建築構造物のセミアクティブ免震
教授 藤田 隆史[代表者],協力研究員 佐藤 英児
ピエゾアクチュエータを用いた可変摩擦ダンパによって,免震効果を損なうことなく免震構造特有の大きな相対変位を出来るだけ小さくし得るセミアクティブ免震システムの研究を行っている.可変摩擦ダンパとして,ピエゾアクチュエータが作動しない場合でも,大地震時にはダンパとして機能し得るフェールセーフ機能を有した摩擦ダンパを開発している.本年度は,外形寸法25×25×36mmのピエゾアクチュエータを8個用いた実験モデルによって可変摩擦ダンパの基本特性実験を行った.また,得られた基本特性に基づくシミュレーションによってセミアクティブ免震システムの予測解析を行い,良好な性能を確認した.

MR流体を用いた可変粘性ダンパによる建築構造物のセミアクティブ免震
教授 藤田 隆史[代表者],協力研究員 佐藤 英児
MR流体を用いた可変粘性ダンパによって,免震効果を損なうことなく相対変位を出来るだけ小さくし得るセミアクティブ免震システムの研究を行っている.本年度は,シミュレーションによって,MR流体ダンパの解析モデル,LQ制御理論に基づくセミアクティブ制御則,瞬時最適制御理論を用いたセミアクティブ制御則に関する検討を行った.

免震された精密生産施設のためのピエゾアクチュエータを用いた総合的アクティブ微振動制御システム
教授 藤田 隆史[代表者],技術官 嶋ア 守
半導体工場などの精密生産施設には,建物内部の設備機器をも効果的に地震から守るために,免震構造の採用が望ましい.本研究では,4基の多段積層ゴムで支持された2層建物モデル(3m×5m×4mH,総質量6t,免震層と上部構造物の柱と梁にピエゾアクチュエータを装着)を用いて,免震された精密生産施設の,設備機器や人間の歩行によって発生する内生微振動と,地盤振動や風による外来微振動を総合的にアクティブ制御するシステムを研究している.

超磁歪アクチュエータを用いた天井懸架型手術顕微鏡用アクティブ微振動制御装置
教授 藤田 隆史[代表者],大学院学生 山田 直秀・技術官 嶋ア 守
脳外科手術や眼科手術では,患部を拡大して見るために最大倍率25倍程度の手術顕微鏡が用いられる.病院によっては,空調機器などの機械や人間の歩行などを振動源とする床の微振動が許容レベルを超え,手術に支障をきたすことが以前から問題になっていた.本研究では,天井懸架型手術顕微鏡を対象として,天井スラブと顕微鏡の間に装着して微振動を絶縁するためのアクティブ微振動制御装置を開発している.本装置には,大きな静的剛性を実現するために超磁歪アクチュエータを採用している.

リニアモータを用いた単結晶引上げ装置用アクティブ・パッシブ切換え型免震装置
教授 藤田 隆史[代表者],研究員 鎌田 崇義・受託研究員 古川 裕紀・研究実習生 櫻木 七平・研究実習生 晦日 英明
単結晶引上げ装置は,弱地震動によって,機器自体ではなく製造中の単結晶が破損する.本研究は,このような単結晶引上げ装置の地震対策のために,リニアモータを用いたアクティブ・パッシブ切換え型免震装置を開発している.リニアモータを用いることによって,弱地震動に対しては良好なアクティブ免震性能を発揮して単結晶の破損を防止し,強地震動に対してはパッシブ免震によって引上げ装置自体の破損を防止することができると考えられる.本年度は,実験モデルを製作し,振動台による地震波加振実験を行って,ほぼ満足し得る性能を確認した.

自動車用タイヤの総合的状態モニタリングに関する基礎的研究
教授 藤田 隆史[代表者],助手 大堀 真敬・大学院学生 吉田 英樹・大学院学生 金澤 篤史
本研究では,自動車用タイヤの空気圧,温度,タイヤ発生力を計測し,計測データを無線通信によってリアルタイムに車体側へ伝送するシステムを開発している.タイヤ発生力の計測に関しては,タイヤ・路面間に作用する6分力をホイールのひずみを通して計測する方法を研究している.本システムによって,タイヤ・路面間の力をリアルタイムで直接測定することが可能になれば,車両運動制御システムの性能や信頼性は現在のものより格段に向上すると考えられる.本年度は,無線通信システムの改良とホイールを利用した6分力計測システムの実験を行った.

タイヤ発生力の計測による自動車のABS制御に関する研究
教授 藤田 隆史[代表者],研究員 鎌田 崇義・研究実習生 福留秀樹
本研究では,タイヤ・路面間の力をリアルタイムで直接測定することを前提に,その計測値を用いたABS制御について研究している.本年度は,1輪車モデル/2輪車モデルのシミュレーション・モデルを構築し,現行のABSのような車体速度の推定値を用いない,新しい制御則によるABSについて検討した.

電気自動車の制御
教授 堀 洋一
電気モータの高速で正確なトルク発生を生かし,電気自動車で初めて可能になる新しい制御の実現をめざしている.タイヤの増粘着制御に成功すれば,低抵抗タイヤの使用が可能になる.4輪独立駆動車は高性能な車体姿勢制御が実現できる.モータトルクは容易に知れるから路面状態の推定も容易である.インホイルモータ4個を用いた高性能車「東大三月号-II」を製作し実験を進めている.車体すべり角βの推定,DYCとAFSの非干渉制御,ハイブリッドABS,最適速度パターン生成,動的駆動力配分などにも力を入れている.

モーション・コントロール
教授 堀 洋一
電気・機械複合系のモーション・コントロールとして,(1)外乱構造に着目した新しいロバストサーボ制御,(2)多重サンプリング制御を用いたビジュアルサーボ系,(3)加速度センサを用いた新しい外乱抑圧制御,(4)加速度変化率の微分を考慮した高速位置決めのための目標値生成法,(5)非整数次数制御系と係数図法にもとづく制御系設計のためのCADシステム,(6)無駄時間系のLMI制御を行っている.応用としては,2リンクロボット,バックラッシをもつ軸ねじれ系実験装置,ハードディスクドライブ装置である.

福祉制御工学
教授 堀 洋一
福祉分野を想定した独特の制御手法の開発を目論むもので,福祉制御工学という学術領域を作りたいと考えている.(1)カメラ画像情報による非日常性の検出,(2)介護ロボットのためのパワーアシスト技術,(3)新しい制御原理にもとづく動力義足の製作,(4)電動車椅子によるウィリー動作(段差越え補助)の補助である.また,(5)自律分散制御(魔法の絨毯)の研究を行っている.マイクロマシンなど多数エレメントが自律分散的に協調して動くために,場理論を用いた制御アルゴリズムの提案と実現をめざしている.

建設産業のサービスプロバイダー化に関する研究
教授 野城 智也[代表者],教授 野城智也,教授(東大)冨山哲男
建物へのニーズが刻々変化する現今の経済社会において,環境負荷やコスト負担を考えると,建替新築によってニーズに対応するのは効率的ではなく,むしろ既存建物をニーズの変化に対して遅滞なく部分更新する方が得策である.本プロジェクトは,こういった認識にたち,多様に特化し,かつ刻々変化する個々のニーズに対応し,建物のインフィルを生体組織的に変容させる技術を開発することを目的とする.

プロジェクトにおける技術癒合に関する研究
教授 野城 智也[代表者],教授 野城智也(代表者),教授(東大)馬場靖憲,教授 児玉文雄・助教授 曲渕英邦
建設プロジェクトでは,種々の主体が,技術的詳細を決定に様々な寄与をしている.その寄与のあり方は,プロジェクトの開始時点では必ずしも明確でなく,,契約上で定義された役割とも異なるものである.主体相互間の情報フロー及び意志決定のあり方も非定型的である.にもかかわらず,この技術的融合のあり方が,最終産品(建物)の性能・機能・品質を左右する.本研究はこういった認識に立ち,事例分析を積み上げることにより,プロジェクトにおける技術融合のベストプラクティスモデルを明らかにすることを目的とする

質量加重平均にもとづく乱流統計理論と乱流燃焼における逆勾配拡散機構の研究
教授 吉澤 徴
密度変動が大きい乱流場の取り扱いには 質量加重平均操作を用いることが不可欠であるが,同平均操作にもとづく乱流理論は従来定式化されておらず,このことが 乱流燃焼等の研究において大きな障害となってきた.本研究では質量荷重揺らぎの概念を新しく導入することによって,質量加重平均にもとづく乱流統計理論を構成した.この理論を用いて 乱流燃焼における逆勾配拡散の理論的説明を行った.

ポロイダルプラズマ流と密度揺らぎにもとづくトカマク熱輸送障壁の研究
教授 吉澤 徴
トカマクにおけるプラズマ閉じ込めにブレイクスルーをもたらした方式として,高モード閉じ込めがある.同モードではプラズマ端に径電場が発生し,これとトロイダル磁場によって局所的なポロイダル流が生じる.この局所的流れのシェアが乱れを分断し,熱の乱流輸送障壁を形成すると従来考えられてきたが,密度揺らぎを考慮するとポロイダル流れの向心力,すなわちバルクな流れが 熱輸送障壁形成に重要な役割を演じることが初めて示された.

質量加重平均乱流理論による非中性プラズマにおける熱輸送および乱流抑制の研究
教授 吉澤 徴[代表者],助手・特別研究員 横井 喜充
トカマクの高モード閉じ込めにおける径電場と輸送抑制の直接的関連を見るために,質量加重平均にもとづく乱流理論を用いて非中性プラズマ中の乱流生成および熱輸送生成を解析した.径電場のシェアが熱輸送および乱流生成の抑制に密接に関係すると従来考えられてきたが,径電場の曲率がこれらの抑制作用に強く結びついていることが指摘された.

非線形渦粘性乱流モデルの研究
教授 吉澤 徴[代表者],技術官 西島 勝一
変形速度および渦度テンソルに関する2次,3次の非線形渦粘性乱流モデルは矩形管内乱流の2次流の再現,一様剪断乱流における乱流エネルギーの過剰生成の抑制,回転円管内乱流の軸流特性の再現等に有効であることが確認されている.同モデルを旋回乱流特性の解析においても有効なモデルとするために,ヘリシティ効果および圧力速度相関に対する平均流効果の組み込みを研究している.

ヘリシティを用いた旋回乱流の変分解析
教授 吉澤 徴[代表者],助手・特別研究員 横井 喜充
旋回乱流の変分解析結果を利用し,旋回中心付近で逆流が発生する条件を解析的に導出した.逆流が生じるための,平均流ヘリシティに関する「臨界ヘリシティ」を求めた.さらに,旋回流の代表的実験をヘリシティの観点から整理し,臨界ヘリシティと実験値との比較,検討を行った

CED(き裂エネルギ密度)概念による破壊力学の構築(継続)
教授 渡邊 勝彦
現実のき裂端近傍における現象はほぼ例外なく非弾性現象である. 現在広く行われている破壊力学はこの非弾性現象を弾性き裂の力学により評価しようとして来たものであるといえ, そのため種々の限界, 矛盾が生じている. 本研究においては, CED概念を中心とした非弾性き裂の力学とも呼ぶべきものを構成し, その各種破壊問題への適用を通じて従来の破壊力学における限界, 矛盾を克服し, あらゆるき裂問題に適用可能な破壊力学体系の構築を目指して研究を進めている.

異材界面の破壊と強度評価法に関する研究(継続)
教授 渡邊 勝彦[代表者],助手・特別研究員 永井学志, 大学院学生 Kim Sang-won
異材界面においては, 弾性解における界面き裂端での応力の振動特異性, 界面端部での応力特異性を見ても分かるように, 均質材では見られない特殊な挙動を示し, その強度評価法の確立に向けて解決さるべき問題が多い. 本研究では上の界面き裂と界面端部の強度評価法の開発・確立に向けての理論的, 実験的研究を進めており, 前者においては, 脆性破壊を対象にした応力拡大係数をパラメータとしての研究, また一般にはき裂端近傍での非弾性挙動を考慮に入れる必要があることから, 弾性から非弾性まで統一的に扱うことを可能にするCEDを中心とした界面き裂パラメータに関する検討を行っている. 後者については軸対称問題, 三次元問題における界面端部,界面コーナー点の特異性について研究している.

混合モードき裂の破壊挙動評価に関する研究(継続)
教授 渡邊 勝彦[代表者],研究員 宇都宮 登雄, 技術専門職員 土田 茂宏
き裂の破壊挙動評価は, 混合モードき裂がどの方向に, どのような条件を満たしたときどの破壊モードで起こるかを判断できて初めて完全なものとなる. 本研究ではCEDをパラメータとして用いることにより, 上記の条件を満たす, 脆性破壊から大規模な塑性変形をともなった破壊まで統一的に扱える混合モードき裂破壊挙動評価が可能となることを均質材中き裂について実証してきており, 現在は, 異材界面においては一般に混合モード状態となることから, 本研究での手法の, 降伏応力が異なる同種材料を溶接したときの界面上および界面近傍のき裂問題への適用性につき, 材料の組合せや液体窒素温度から常温までの温度の影響も含め,検討を進めている.

分子動力学法, 個別要素法の破壊問題への適用性に関する研究(継続)
教授 渡邊 勝彦[代表者],大学院学生 張 万石, 研究員 飯井俊行
本研究は分子動力学法によるシミュレーション, また同法の手法を取り込んだ個別要素法の開発とそれによるシミュレーションを通じて破壊現象の本質に迫り, その理解を深めると共に通常の連続体的強度評価手法の今後の展開に資そうとするものである. 前者においてはbcc Feマトリックス中のCu析出物周りの内部応力評価, 三次元問題を含むいくつかのき裂問題の解析等を進めており, また後者については繊維強化複合材料の衝撃破壊等への適用性についての検討を行っている.

圧電材料の破壊力学に関する研究(継続)
教授 渡邊 勝彦[代表者],助手・特別研究員 永井 学志, 大学院学生 南 秉群
圧電材料はセンサーやアクチュエーターとして用いられ, 将来の知的材料の構成要素として期待されているが, その破壊力学的強度評価法は未だ確立されるに至っていない. 本研究はその確立を目指すものであり,切欠き・き裂における特異性, 力学的効果, 電気的効果のカプリングの現れ方等, 基本的性質の把握を, 評価法の有限要素解析による妥当性の検証と平行して進めている.

薄型シリコンチップの強度評価法に関する研究
教授 渡邊 勝彦[代表者],助手・特別研究員 永井 学志, 技術専門職員 土田 茂宏, 大学院学生 中野大里
ICカードのような電子デバイスに組み込まれる半導体チップには薄さが要求されるために, 数10μm厚のものが開発されつつあるが, 材料である単結晶シリコンは欠陥に対して敏感であることや微小であること等も加わり, 従来の強度評価手法をそのまま適用することは困難となっている. このような現状を踏まえて, この種の材料に対する強度評価手法について検討を行っている.

熱応力下応力拡大係数の特性とその構造物健全性評価への応用(継続)
教授 渡邊 勝彦[代表者],研究員 飯井 俊行
熱サイクルを受ける構造物においては, 熱応力によりいったんき裂が発生, 進展を開始しても, その後停留してしまう場合も多い. これにつき従来, 熱応力下においてはき裂の進展に伴い始め応力拡大係数は増加するがその後減少していくためであろうと概念的に考えられているが, 定量的には殆ど議論されていない. 本研究においては, 各種の熱応力下応力拡大係数を系統的にかつ簡便に評価する手法の開発を行ってき裂停留の本質を明らかにすると共に, 停留現象を構造物のより合理的な, 健全性評価・設計に活かす方法について研究している.

コンクリート材料の圧縮破壊解析のためのイメージベース有限要素法の開発
助手・特別研究員 永井 学志, 教授 渡邊 勝彦[代表者]
説明 建設系の主要な構造材料のひとつであるコンクリート材料は, 微視的に見ると様々な脆性材料から構成される複合材料であるが, 介在物としての骨材が母材の脆性破壊の進行を妨げる働きをするために, 巨視的に見ると擬脆性的な力学挙動を示す. 本研究では, 巨視的な圧縮破壊を微視的な引張による破壊から詳細に説明することを目標として, 母材−介在物−界面の微視構造モデルに変位の不連続性を考慮した三次元イメージベース有限要素解析手法を開発している.

弾性複合材料の分散性を考慮した波動伝播モデルの開発
助手・特別研究員 永井 学志, 教授 渡邊 勝彦[代表者]
弾性複合材料中を伝播する応力波は, 波長が複合材料の微視構造の特徴長さよりも十分に長い場合には, 等価な均質材料を考えることによりモデル化できる. しかしながら, 波長が短くなるにしたがって, それぞれの微視構造に特有の分散性を示すために, 均質化してモデル化する際にはこの分散性を考慮する必要がある. 本研究では, 多重時間スケールと2つの空間スケールを用いた波動方程式に対する高次均質化法から導出される微視と巨視に関する方程式を基礎として, 波動の分散性を考慮した応答解析のためのモデル化手法を開発している.

既存鉄骨建物の構造耐力性能の診断と改善(継続)
助教授 大井 謙一[代表者],助手 嶋脇與助・技術専門職員 大塚日出夫・大学院学生 藍兆松
阪神・淡路大震災で観察された鉄骨造文教施設の被害像と耐震診断結果とを整合させるための耐震診断法の改善,特に建物のエネルギー吸収能力を表現するじん性指標F値の改善についての研究を行っている.また,既存鉄骨造建物の構造耐力性能を改善する目的で取付けられる軸組筋かい材を対象として,改修時の施工性を重視した改良型接合形式の開発研究も行っており,今年度は高変形能高力ボルトや形状記憶合金製の超弾性ボルトを用いた接合部,半剛接合部の柱側板要素の補強効果などについて実験的に検討している.

鋼構造骨組のハイブリッド地震応答実験(継続)
助教授 大井 謙一[代表者],助手 嶋脇與助・技術専門職員 大塚日出夫・大学院学生(RA)伊藤拓海・外国人協力研究員 李玉順
多数の構造部材からなる大規模架構全体の破壊挙動を電算機で追跡しながら,計算された部分構造の変位(または力)を部分構造模型試験体に強制し,また載荷実験で測定された部分構造の挙動情報をリアルタイムで解析にフィードバックさせるというハイブリッド実験システムを開発している.今年度は,超弾性接合された鉄骨架構や,不均等質量分布を有する多層骨組,履歴型ダンパー付き鉄骨架構の地震応答実験を行っている.

鉄骨造弱小モデルの地震応答観測(継続)
助教授 大井 謙一[代表者],助手 嶋脇與助・技術専門職員 大塚日出夫
中規模の地震でも損傷が生じるように設計された鉄骨造3階建て弱小モデル2棟の自然地震に対する応答観測を千葉実験所にて継続している.1棟の模型に変形性能に優れた極低降伏点鋼製の履歴ダンパーを設置して,応答観測により履歴ダンパーによる応答低減効果を実証的に調べるとともに,弱小モデルに対するオンライン地震応答実験を準備中である.また実大構造要素模型の応答観測を目的として,15トン錘を吊った鋼製のブランコ(スチール・スウィング)を新しく建設し,これを利用して露出型柱脚部の振動実験を行っている.

鉄骨構造物の複合非線形解析(継続)
助教授 大井 謙一[代表者],助手 嶋脇與助・技術専門職員 大塚日出夫・大学院学生(RA) 伊藤拓海
火力発電所建屋,体育館,工場などの鉄骨造架構は,事務所ビルと異なる形状を有し,筋かい等も不規則に配置されているため,大地震時の挙動には未知の部分が多い.それ故,複雑な部材配置をもつ非整形骨組に対しても設計の段階で容易に用いることのできる非線形解析法が望まれている.本研究では,鉄骨部材の塑性化領域を複数の非線形バネ要素の結合体で近似し,この種の架構の弾塑性挙動を解析している.また骨組の塑性崩壊に対する安全領域を,凸降伏多面体モデルや超楕円体モデルで近似し,省力化地震応答解析法を提案している.

信頼性理論に基く鋼構造物の終局限界状態設計(継続)
助教授 大井 謙一[代表者],助手 嶋脇與助・技術専門職員 大塚日出夫・大学院学生(RA) 伊藤拓海
信頼性理論に基く鋼構造物の終局限界状態設計法に関して解決すべき種々の問題を研究している.線形計画法における制約条件を不確定とした確率極限解析法,複合応力下の部材耐力相関を考慮した極限解析法,設計者の任意の設計戦略を受容できる塑性設計法等の理論的研究を実施しているほか,鉄骨造架構の損傷度についての専門家の意識調査を行い,大震災前に実施した調査結果と比較している.また近似信頼性解析と載荷実験とを結合したハイブリッド実験システムを開発し,鉄骨多層骨組に適用し,地震応答実験結果と照合している.

食品凍結・乾燥における溶液系材料の凍結現象シミュレーションモデルの構築と実証(継続)
助教授 白樫 了[代表者],助教授(東大)相良 泰行
食品の凍結乾燥は, 食材本来の品質を維持しつつ保存のきく加工法であることから, 高品位の乾燥保存食品として利用されつつある. しかしながら, 最終的な製品の品質が, 凍結時に生成する氷晶の形態の影響を大きくうけることから, 凍結操作の制御法や氷晶構造の予測がもとめられている. 本研究では, 食材の性状としてコーヒーや果実汁等の溶液系材料を対象として, 凍結速度や凍結方法に依存して変化する氷晶のサイズや分布等を定量的に予測するためのシミュレーションを構築し, 実験により実証することを目的としている.

氷スラリーを用いた高効率冷熱利用技術の研究開発(継続)
主任研究官(産総研)稲田孝明, 助教授 白樫 了[代表者],助手(東大生研)高野 清
氷表面への分子吸着効果を持つ環境負荷のちいさい添加物を探索し, これを氷スラリーに加えることにより, 氷の再結晶及び壁面付着を防止する効果を発現させ, 氷スラリーの輸送技術を確立する. また, 交流電場や交番磁場が過冷却水及び氷に及ぼす影響を利用して, 氷に選択的にエネルギーを吸収させる氷の凍結・解凍制御技術を確立する. 本年度は,氷核生成制御の設計の基礎となる氷の磁気共鳴・緩和の磁気物性と結晶粒界の影響を測定する装置を作製した.

生体・食品凍結保存における糖類が細胞内外凍結に及ぼす影響
助教授 白樫 了[代表者],助手(東大生研)高野 清
一部の糖類は,凍結保護効果をもつことが近年の研究で知られつつある.本研究では,糖類が細胞膜透過や細胞内核生成に及ぼす影響を定量的に明らかにすることで,極めて生体適合性の高く,幅広い凍結・解凍条件で高品位の生体・食品を保存する可能性を検討する.

超柔軟マニピュレータに関する研究
助教授 鈴木 高宏[代表者],講師(防衛大) 望山 洋, 助手 新谷 賢
従来の柔軟系に関する研究と異なり,弾性の存在を必ずしも前提とせず,系の動力学的挙動を考慮して新しいロボットマニピュレーションを考えようという,超柔軟マニピュレータに関する研究を行っている. 今年度においては,これまでの受動関節リンク系による離散系モデルに基づいた解析を一般化し,インピーダンス制御による外力に対する受動挙動の制御法を構築したほか,実験装置を製作し,これまでの提案の検証を行った. また,連続無限次元系としてのモデル化も行い,従来の連続モデルに比べ,マニピュレータ離散系モデルとの接続が容易な動力学モデルを構築し,解析を行っている.

メカトロニック人工食道の開発
助教授 鈴木 高宏[代表者],助手(東大医) 成瀬 勝俊, 助手 新谷 賢
柔軟ロボティック・メカトロニックシステムの応用の一つとして,食道の蠕動による咀嚼物搬送機能を機械的機構に代替する,メカトロニック人工食道の開発を行っている. 今年度においては,密閉型駆動機構および柔軟螺旋スクリュー翼を備えた試作実験機を製作し,様々な粘度の対象物の搬送などの実験を行い,基本的な機能の確認を行った.

非ホロノミック自由関節マニピュレータに関する研究
助教授 鈴木 高宏[代表者], 助手 新谷 賢
自由関節を持つマニピュレータは,その拘束が動力学的な2階微分方程式となり,一般に不可積分となるため,2階非ホロノミック系の代表例として知られている.また,その非ホロノミック性から,少ない入力自由度(アクチュエータの数)でより多い次元の一般化座標(関節の数)を制御できる可能性を持つ,劣駆動系(underactuated system)として,最小1つのアクチュエータでも多次元を制御できる,究極の劣駆動系としての可能性を持っている.そうした性質を利用することで,従来にない,非常に軽量かつシンプルな構造で,同時に大きな自由度を持つ,マニピュレータをはじめとするロボット・機械システムを創造することが,本研究の目的である.今年度においては,根元の関節のみが駆動され,他の関節は全て自由関節である,1駆動n自由関節マニピュレータ実験装置(超柔軟マニピュレータ実験装置)を開発し,いくつかの基礎的実験を行なった.この実験装置は,最大12関節まで有し超柔軟系の離散力学モデルとしての実験が行なえることと,水平から垂直まで傾斜角を変えることで,系に働く重力係数を変えた実験が可能であることが大きな特徴である.

触覚メディアの研究
助教授 瀬崎 薫[代表者],大学院学生 有本 勇, 研究実習生引地 謙治
触覚・力覚を新しいメディア・インタフェースとして捉え,このネットワーク上を伝送を利用するための諸問題を多様な観点から検討している.具体的には,ネットワーク上での情報量削減とパケットロス対策としてのdead reckoningの手法,メディア同期の枠組み,帯域圧縮,力覚ストリームとオブジェクト情報ストリームの制御,異種インタフェース間の連携等について主観評価実験と理論的考察の両面から検討を行っている.

アドホックネットワークとセンサネットワーク
助教授 瀬崎 薫[代表者],大学院学生 黄楽平, 関根 理敏, 研究実習生 竹内 彰次郎
アドホックネットワーク構築のための諸課題の検討を行っている.本年度は,実観測データに基づき歩行者端末のモビリティモデルの提案を行った.また,消費電力を節約するルート構築法の性能改善を行うと共に,実システムでの検証を行うためのプロトタイプ構築に着手した.またセンサネットワークについては,自立的な負荷分散手法についての検討を行った.

コンテクストアウエアサービスの研究
助教授 瀬崎 薫[代表者],大学院学生 山崎 浩輔
ユーザのおかれている状況を先取りして汲み取った上でサービスを提供するコンテクストアウエアサービスを柔軟に提供する機構についての研究を行っている.特に,実空間における「ユーザの物理的位置」は最も重要なコンテクストであるので,このために必要となるルーチング手法,アドレッシング手法の検討を行っている.

分散共有環境
助教授 瀬崎 薫[代表者],大学院学生 兼安 祐介,大学院学生 角田 忠信
Shared Virtual Enviroment(SVE)やNetworked Virtual Environment(NVR)とも呼ばれる分散共有環境構築の際には, スケーラビリティの確保, ネットワーク遅延, パケット欠落に対する補償法, ユーザレベルでの品質確保, サーバ配置方法など総合的な検討が必要となる. 本年度はSCTPとFECを組み合わせた手法の提案を行い,その性能をシミュレーションにより評価した.

WDMネットワークプラニング
助教授 瀬崎 薫[代表者],徐 蘇鋼(早大)
WDM技術の進展と共にネットワークプラニングにも今までもと異なった新しい技法が求められている. 今年度は, レイヤ間の連携手法について検討を行った.また,光パス割り当て問題の高速化手法の改良を図ると共に,リアルタイムのトラヒックエンジニアリングへの応用可能性の検討を図った.

ネットワーク測定とモデル化
助教授 瀬崎 薫[代表者],大学院学生 Niwat Thepvilojanapong
ネットワークの様々な挙動を観測し,それをモデル化することはプロトコルの設計やアプリケーション品質の補償に役立つ.本年度は,ネットワーク上の遅延を精密に測定ために,国際的な共同研究プロジェクトであるRIPEに参加し,国際間トラヒックの片道遅延の測定を行った.またpacket pairにより,ボトルネック帯域を推定する手法の改良を行った.更に,ルート変更を検出する手法を提案し,これをRIPEの実データにより検証した.

高能率画像符号化に関する研究
助教授 瀬崎 薫[代表者], 助手 小松 邦紀
高能率画像符号化に関する研究を従来にひき続いて行っている. 本年度は,JPEG2000を用いたロスレス/ロッシー統一符号化において,高ビットレートで圧縮効率が低いという問題を解決するために最適なロッシー再生方式を明らかにした.また,ノンロスレス回転変換と互換性の高い周期的構造を有するロスレス回転変換を提案した.

マルチモーダルGIS
助教授 瀬崎 薫[代表者],大学院学生 任 明
音声,画像,触覚等多様なモダリティを活用することにより,空間情報の認知と操作の改善を図ることを試みている.本年度は,ある種の操作においては触覚情報を加えることにより,操作効率が改善される場合があることの確認を行った.

バイオセンサーの開発
助教授 立間 徹[代表者],立間研 研究機関研究員 野津英男,立間研 大学院学生 岡村 圭,立間研 大学院学生 佐藤 健
酵素や酵素のモデル系の選択的触媒活性に基づくバイオセンサーを開発している.同時に複数の情報を得られる多重応答取得型バイオセンサーや,酵素-電極間の効率的な電子移動を可能にするセルフワイヤリング法などを中心に開発・研究している.

バイオキャタリストの活性制御
助教授 立間 徹[代表者],立間研 研究生 小森 喜久夫
酵素のモデル系を電極上に載せ,その活性中心構造の可逆な制御に基づく活性の制御を試みている.実際には,ペルオキシダーゼのモデル分子であるヘムペプチドとその阻害剤であるイミダゾールを用い,相転移ポリマーを用いて阻害作用の可逆な制御を行った.このようなシステムは,活性を自律制御する触媒システムや,測定対象に応じて感度やダイナミックレンジを自律制御するセンサーに発展するものと期待される.

エネルギー貯蔵型光触媒の開発
助教授 立間 徹[代表者],立間研 大学院学生 Pailin Ngaotrakanwiwat,立間研 大学院学生 高橋 幸奈
酸化チタン光触媒は,光励起により生じる還元力と酸化力により,有害物質の分解,抗菌,金属の防食などの機能を示すが,光照射下でしか機能しない.この問題点を克服するため我々は,酸化チタンと酸化タングステンを組み合わせた新しい材料を開発した.この材料では,酸化チタンの光励起に基づく還元エネルギーを日中,酸化タングステンに貯蔵し,そのエネルギーを夜間に利用することができる.すでに,防食効果を夜間も維持できることが明らかになっている.

光触媒リソグラフィー法の開発
助教授 立間 徹[代表者],立間研 大学院学生 久保 若奈
酸化チタン光触媒による非接触酸化反応の機構について研究すすとともに,この現象を固体表面の二次元パターニングに応用する光触媒リソグラフィー法の開発と評価を行う.

非圧縮性流れ解析コードの開発と応用
助教授 谷口 伸行[代表者], 助教授 大島 まり,研究員 寺坂春夫,研究員 松尾裕一,技術官 伊藤裕一,大学院生 冨永卓司
実用的な流れ数値解析のためには,流れ場の複雑さに応じて数理モデルや解析手法を合理的に選択あるいは併用することが必要である.本研究では,複雑形状の非圧縮性流れ場の解析を主な対象として,異なる数理モデルや解析手法に基づく複数の計算コードを開発し,それらの相互比較による相互検証,および,それらの高度な解析法の開発を行う.現在,差分法による構造型格子コード,および,有限要素法による非構造型格子コードの検証と改良を進め,その成果であるプログラムソースや数値検証データを公開している.今年度は特に,1000万点規模の大規模LESのための並列計算コードの開発,脳動脈血流解析のための形状抽出と境界条件設定などの手法開発などを進めた.

粒子混相乱流の数値解析モデリング
助教授 谷口 伸行[代表者],技術官 伊藤裕一
スプレーや微粉炭燃焼に際して分散粒子を含む流れの予測制御が重要な設計要件となるが, 工学問題において流れの乱れ特性との相互作用は十分解明されていない. 本研究では乱流の非定常構造の解析に有効なラージ・エディ・シミュレーション(LES)に基づき分散粒子と乱れの相互作用の数値モデルを構築して, 粒子混相乱流の数値予測シミュレーション法の開発する. 本年度は,液滴燃料のスプレー燃焼流れ,壁噴流における固気混相流への応用を試みた.

燃焼反応を伴う乱流の数値解析モデリング
助教授 谷口 伸行[代表者],技術官 伊藤裕一,大学院生 冨永卓司
工業的に用いられるスケールの火炉バーナやタービン燃焼器などの燃焼反応は流れ場やその乱れ特性に大きく依存しており, 特にNOx制御や異常燃焼抑制の合理的な設計には燃焼乱流場の非定常現象を直接的に予測できる手法が求められている. 本研究では, flameletの概念に基づく乱流火炎モデルの開発を進めている. 今年度は特に, ガスタービン燃焼器の多段着火や火炉バーナの吹き上がり火炎に実用的に適用できる手法として特性スカラー輸送モデルを構築し,数値検証を示した.また,NOなど反応生成物質の予測や,スプレー燃焼への拡張を検討した.

超音波モータを利用した超高真空対応回転導入器の研究
助教授 新野 俊樹
半導体技術やナノテクノロジーは近年目覚ましい進展を遂げており,今後,更なる微細構造物の加工や観察が必要となる.微細構造物の加工や観察には超高真空状態などコンタミネーションの少ない環境が求められるが,そのような環境下で動作する機械要素はあまりない.微細構造の加工や観察には電子線を用いた機器を使用することが多くみられ,それらの電子線は磁場などの影響を受けやすい.しかし,超高真空状態を保ち,電子線に影響を与えないというような機械要素はほとんどみられない.そこで,筆者らはダイレクトドライブによる低速高トルク,ブレーキレス(静止状態で保持力を持つ)かつ非磁性である超音波モータに着目して超高真空状態に対応する回転導入器の開発を目指している.本年真空度の向上をおこない,3x10-7Paの超硬真空環境下での連続駆動に成功した.

SLS法によって製作されたパーツの後処理に関する研究
助教授 新野 俊樹
光造形法は,現在国内でもっとも普及している,ラピッドプロトタイピング手法であり,精度・微細性の面で,他の方法よりも優れている.一方,粉末を順次積層してレーザによって選択的に焼結するSLS法は,精度の面では光造形法に劣るがオ,ーバハング形状作製の容易さ,ワックス,プラスチック,金属など材料選択の自由度の高さが注目されている.本研究では,SLS法によって作製された部品を高沸点液体の飽和蒸気中で高速再加熱することにより,表面粗度の改善を目指し,1割から2割程度の改善を確認した.

知的制御システムに関する研究
助教授 橋本 秀紀
知的制御システムは「環境を理解し, それに応じた制御構造を自己組織化する能力を有するもの」と考えることができ, 新しいパラダイムへつながるものである. このパラダイムを確立するために, 柔軟な情報処理能力を有する Artificial Neural Networks, Fuzzy 等の Computational Intelligence の利用および数理的手法に基づいた適応能力の実現による制御系のインテリジェント化を進めている.

分散されたデバイスと相互作用し賢くなる知的空間
助教授 橋本 秀紀
人間を観測し, その意図を把握して適切な支援を提供する人工的な空間の創造を目指す.具体的には, その空間内に分散配置された多数のデバイスがネットワーク化され, 人間から得られる多様なデータの取得手法とそ,の情報化および知能化を検討し, データの持つ意味を抽出して適切な支援を発現する仕組みを提案する.

分散配置された知能センサによる環境知能化に関する研究
助教授 橋本 秀紀[代表者],研究員 李 周浩, 安藤 慶昭, 大学院学生 森岡 一幸, セメシュ ペーター, 山下 祥宏, 上村 聡志, 研究生 黄 吉卿
21世紀には少子高齢化が進み人手がかかる福祉労働需要が高まることが予想されるが, 労働人口の減少で十分な労働力を割くことが困難になると考えられる. 工学にはこの問題を解決するために福祉労働の代替システムの開発が求められる. 現在では生活環境での活用のためのロボット開発が盛んに行われており, 特に空間内を状況を把握する画像センサなどは最も重要な部分である. 本研究では人間行動認識とデータベース化に基づくセンサシステムのインテリジェント化により室内状態の推定を行い, 人間を介さずに価値ある情報を自動生成することを目的としている.

インテリジェントスペースにおけるロバストな物体位置同定システムに関する研究
助教授 橋本 秀紀[代表者],研究員 李 周浩, 大学院学生 山下 祥宏
インテリジェントスペースでは空間に存在する視覚, 聴覚などのさまざまな情報を知覚, 統合化することによって空間内の人, 物, 情報を融合し, 空間内に新たな高付加価値情報を生成し環境知能化を図ることが可能である. 本研究では, コア技術となる人, 物の位置同定に関し, 物体の形状の複雑さに着目した「フラクタル次元解析手法」による新しい位置同定システムを提案し, 知的画像処理による空間情報のサンプリング技術を確立する. また, この位置同定処理の稼動プラットフォームとなるDIND(Distributed Intelligent Network Device)のアーキテクチャに関する汎用化検討を実施し, 様々な産業への導入を考慮したデバイスとして仕様策定を行っていく.

分散配置された知的センサによる空間認識に関する研究
助教授 橋本 秀紀[代表者],研究員 李 周浩, 安藤 慶昭, 大学院生 森岡 一幸
多数のネットワーク化された知的センサを環境に分散配置し空間を知能化するには, 空間認識のためのセンシング技術が必要である. 現在, 知的センサとして, CCDカメラに空間認識のためのアルゴリズムを埋め込んだ一つのモジュールを使用して, 空間知能化の基礎研究を行なっている. 本研究では, 各知的センサが獲得した画像情報から, 人間やロボットなどの位置情報, 動作情報などを知るための情報処理方法を検討する. 主として, 空間内オブジェクトの色情報を用いたロバストなトラッキング手法を開発中である.

インテリジェントスペースにおける人間追従ロボットに関する研究
助教授 橋本 秀紀[代表者],研究員 李 周浩, 安藤 慶昭, 大学院学生 森岡 一幸
インテリジェントスペースは様々な電子機器・メカトロニクス機器のプラットフォームである. この中で移動ロボットは人間に対してサービスを提供する物理エージェントであり, 人間との密接なインタラクションを行い, 空間知能による人間の意図理解を補助するための存在と定義される.ロボットのために用意された空間ではなく, 人間が生活する日常的な空間で, ロボットが人間と共存するためには様々な困難が伴う. これを, インテリジェントスペースのロボットのためのプラットフォーム機能を用いることで, 人間・ロボットの3次元位置同定情報に基づき, 移動ロボットの人間追従制御を行い, 人間の自然な歩行を間合いを保ちつつ追従する移動ロボットシステムを構築している.

インテリジェントスペース・シミュレータに関する研究
助教授 橋本 秀紀[代表者],研究員 李 周浩, 大学院学生 森岡 一幸, 研究生 黄 吉卿
インテリジェント・スペースは部屋全体を取り囲むシステムであり, 現在の「開発-実験-問題分析」のループでは効率的なシステム開発が非常に困難である. この問題を克服し, 効率的な開発を図るために開発ループを「開発-シミュレーション-問題分析」に変え, 大掛りだった実権準備などの作業を省くため, 実際の環境をシミュレーショタで実現する. このシミュレーションでは実際のシステムを同じ処理プログラムモジュールがそのまま動き, 実際の環境と同じ結果が出るようにし, シミュレーションによって開発された新たな機能などがそのまま実際のシステムに実装されるようにする.

インテリジェントスペースにおけるハプティック・インターフェースを用いた人に優しいインタフェースに関する研究
助教授 橋本 秀紀[代表者],研究員 李 周浩, 安藤 慶昭, 大学院学生 セメシュ ペーター, 上村 聡志
近年のネットワークの発達により, ロボットのネットワーク応用が進んでいる. そこで次世代のサービスロボットには, 人間同士がロボットを介することで, 現在の電話のような音声だけではなく, 様々な情報をやり取りするコミュニケーション支援ツールとしての可能性も期待できる.このような背景から, インテリジェントスペースにおける物理エージェントの一つとして, 人間追尾ロボットにハプティック・インターフェース取り付け, 触覚, 力覚に基づく物理的情報の提供に関する研究を進めている. 今後, 認知工学等の他分野の知見も取り入れ, ハプティック・インターフェースを用いたインテリジェントスペース, 人間, ロボットを結ぶ新しいコミュニケーション方法について検討する.

インテリジェントスペースにおける非ホロノミック移動体の経路計画に関する研究
助教授 橋本 秀紀[代表者],研究員 李 周浩, 大学院学生 セメシュ ペーター, 上村 聡志
インテリジェントスペースの中でユーザに対しより高度なサービスを提供するために, インタフェースデバイスに移動プラットフォームを付加した, 移動ハプティックインタフェースを提案している.移動プラットフォームはその駆動部アーキテクチャから動きに制限性が生じる.本研究では上述の目的を達するために, 非ホロノミック制限をもつ移動プラットフォームを独自の経路生成アルゴリズムにより制御する研究を行っている.

移動物体分離のための環境変化に対して強い背景更新法
助教授 橋本 秀紀[代表者],研究員 安藤 慶昭, 大学院学生 森岡 一幸, 研究実習生 高塚 壮介
インテリジェントスペース内においては, 内部の人間やロボットがどのような経路を移動したか, どのぐらいの時間滞在したかなどの動的状況変化を継続的に把握する必要がある.ビジョンによる移動物体の検出技術の一つに背景差分法がある. 動的な環境において画像内の移動物体を背景差分により抽出するためには, 比較対象となる背景画が必要であり, 本研究では, 環境が変化する状況にも対応できるような背景画の更新手法を提案する.

非線形フィルタに関する研究
助教授 橋本 秀紀[代表者],研究生 ワダ マサキ
近年飛躍的に高まった計算機能力, センサデータ収集能力によって非線形フィルタを航行, 計量経済, 医療計測システム等様々な分野で応用可能になりつつある.フィルタ(推定アルゴリズム)はシステムモデルを用いてシステムの状態変数を演算するが, これを応用する際には, システムパラメータ決定, リアルタイム性等の問題を解決する必要がある.本研究では非線形システムのパラメータをデータから学習するアルゴリズムの提案と応用の検討を進めている.また高い計算機能力を前提とした非線形非ガウス形フィルタリングアルゴリズムが提案されているが, 高次元なモデルの場合, この手法を直接利用してリアルタイムフィルタリングを実現することは困難である.本研究ではリアルタイム性を考慮した Rao-Blackwellisation による新しいシステムモデルフィルタリング手法の提案と検討も行っている.

非線形フィルタを用いた高速度GPS信号処理に関する研究
助教授 橋本 秀紀[代表者],大学院学生 茅 旭初, 研究生 ワダ マサキ
手軽で信頼性の高い測位システムとして, GPS (Global Positioning System) が近年カーナビゲーションの主要技術として急速に普及してきている. 受信システムの新たな構成を提案して非線形フィルタを導入することでシステムの信頼性と精度の向上を実現することが可能である.GPSベース位置推定への現代非線形フィルタ技術の応用に関して, 本年度は非線形フィルタに基づくGPS信号処理のためのモデルと推定アルゴリズムの構築と実装を行なった. 今後は新しいアルゴリズムに基づいたGPSレシーバー信号処理の部分の検討を中心に研究を進めていく.

車輪型オフロードロボットの高精度位置推定システムに関する研究
助教授 橋本 秀紀[代表者],大学院生 金 聖植, 茅 旭初, 研究生 ワダ マサキ
近年, 地雷探知等の複雑なタスクを実現するためオフロード自律移動ロボットの研究が注目されている. 本研究では地雷探知や危険地域の調査等で求められる高信頼性, 高精度センシングシステムの提案, 設計, 構築を行う.本年度は GPSとジャイロ を含めた車両状態推定システムの提案と初期実験を行なった. また GPS (Global Positioning System), ジャイロ, 加速度センサー, 車輪エンコーダ等のデータ融合を行なうため非線形フィルタを用いたアルゴリズムについての検討とシステム設計, 実験を進めている.

Networked Robotics に関する研究
助教授 橋本 秀紀[代表者],研究員 安藤 慶昭
人間中心の機械システム実現のため,「人間自身の理解」と「人間と機械の双方が理解する,共通概念の構築」を目指し, 高速広域ネットワークを利用した人間機械協調系:Networked Robotics の構築を目標に研究を行っている. ネットワークを介して分散しているロボットが, システムとして高度な機能を実現するには, ロボット間の知的ネットワーク通信が必須の条件であり, そのためのネットワーク, プロトコルの開発が重要となる. 本研究では, ロボットのためのプロトコルの研究を通して, Networked Robotics の問題へアプローチする.

ハプティック・インターフェースを用いた遠隔微細作業支援システムの開発
助教授 橋本 秀紀[代表者],研究員 安藤 慶昭
マイクロロボットの製作や微細部品の加工, 検査を目的とした遠隔微細作業支援システムに関する研究を行っている. 本システムは微細作業を行う独自の6自由度パラレルリンクマニピュレータと, オペレータが操作するハプティックインターフェース, および視覚インターフェースにより構成されるバイラテラル・テレオペレーションシステムである. オペレータに対し微細作業環境を視覚的, 力覚的に拡大提示することにより, 作業が困難な微細作業を誰にでも違和感無く行うことができ, 作業効率を高めるシステムを目指している. 本システムはさらに将来想定されるマイクロファクトリにおいても, 人間の知性を介在させることができるツールとしてとらえることができる. 今後ネットワーク利用により人間の知性と情報世界との融合を図り, 高付加価値マイクロ生産システムを提案していく.

マイクロ/ナノ世界でのマニピュレーションに関する研究
助教授 橋本 秀紀[代表者],研究員 安藤 慶昭, 大学院学生 Baris Aruk
近年, フラーレン, カーボンナノチューブなどのナノスケールの新素材の発見に伴って, 超微粒子を位置決めする技術の需要が高まっている. そのため, 微小物体の力学的挙動の解明やそれに基づいたツールの開発が行われており, さまざまな操作手法や機構が提案され研究レベルで用いられている. 本研究では, テレオペレーション及びロボット制御技術を核として, 原子間力顕微鏡 (Atomic Force Microscope:AFM) をスレーブマニピュレータとして使用した, 10〜100nmサイズのナノ粒子操作を行うシステム構築を目指す. AFMをスレーブに使用する場合はマニピュレータとビジョンセンサの役割をプローブが担うため, AFMに特化したユーザインタフェースが必要となり, 現在開発を行っている. この研究によって, ナノ世界の物理学の理解を深めることができ, 最終的にはマイクロデバイスの組み立てといった産業応用や遺伝子操作といった自然科学研究への応用も期待できる.

ハイブリッド乱流モデルの研究
助教授 半場 藤弘
高レイノルズ数の壁乱流のラージ・エディー・シミュレーションを行うには,格子点数の制約から滑りなし条件が困難なため壁面モデルが必要となる.レイノルズ平均モデルを組み合わせるハイブリッド型の計算が精度のよい壁面モデルとして期待される.しかし単純に二つのモデルを組み合わせてチャネル流の計算を行うと平均速度分布に人工的な段差が生じることがわかった.そこで本研究では,段差の原因を調べそれを取り除く数値計算法を提案した.新しい方法をチャネル流に適用し平均速度やレイノルズ応力などの分布を求めて検証し,乱流モデルの融合法の改良を進めている.

乱流中の非局所的なスカラー輸送
助教授 半場 藤弘
乱流による熱や物質の輸送の計算に必要なスカラーフラックスの乱流モデルとして局所的な渦拡散近似がよく用いられるが,熱対流乱流など大規模な対流渦を含む流れ場では局所近似がよくないことが知られている.本研究ではグリーン関数を用いて厳密な非局所的渦拡散表現を導出し,チャネル乱流の直接数値計算を行って検証した.また,非局所的な拡散係数のモデル化の試みを行っている.

地球磁場の電磁流体ダイナモ
助教授 半場 藤弘
地球磁場は地球外核の溶融鉄の熱対流運動によって駆動され維持されている.本研究では電磁流体の乱流モデルを用いて流体運動と磁場分布を計算し,ダイナモ効果による地球磁場の維持の考察を行う.特に実現性に着目し乱流起電力のモデルの改良を行い,閉じたモデル方程式系でのダイナモ現象の計算を行っている.

回転系の乱流熱対流の直接数値計算
技術官 小山 省司, 助教授 半場 藤弘[代表者]
地球や太陽の磁場は天体内部の電導性流体の熱対流運動によって維持されていると考えられている.このような電磁流体乱流ではヘリカルな乱流運動がどのように生成され,磁場にどのような影響を及ぼすかを調べることが重要である.本研究ではその第一歩として,回転系における熱対流の乱流場の解析を直接数値計算を用いて行っている.本年度は回転系の流れ場の壁面近くに発達するEkman層について解析した.特にEkman層に対する熱の補正項に着目し,直接数値計算のデータを用いて考察した.

半凝固処理金属の製造技術に関する研究(継続)
教授 柳本 潤[代表者],助手 杉山 澄雄,大学院学生 李 静媛
金属溶湯にせん断攪拌および急速冷却を加えて半凝固スラリーを連続的に製造する新しい方法として, せん断冷却ロール法(SCR法)を提案し, 各種条件下での製造実験を繰り返しつつ, プロセスの特性解明を進め, 所要の半凝固スラリーを得るのに要する加工条件を探索している. 併せて, 得られた半凝固スラリーの内部構造や凝固終了後の機械的特性について調査を進めている.

高機能圧延変形解析に関する研究
教授 柳本 潤[代表者],研究機関研究員 劉 金山
1990年より供用が開始された圧延加工汎用3次元解析システムは, 多くの事業所・大学に移植され広範囲な圧延加工の変形・負荷解析に利用されている. 種々の圧延プロセスの解析を精度良く行うための改良は現在も継続して行われているが, 同時に本年度より, 財団法人生産技術研究奨励会に設置された特別研究会「高機能圧延変形解析研究会」において, 産学共同による利用技術開発を平行して実施している.

高温変形加工時の材料組織変化に関する研究
教授 柳本 潤[代表者],助手 杉山 澄雄, 技術官 柳田 明, 研究機関研究員 劉 金山
熱間加工においては塑性変形により誘起される再結晶を利用した, 結晶構造制御が行われる. この分野は, 加工技術(機械工学)と材料技術(材料工学)の境界に位置しているため, 重要度は古くから認知されてはいたものの理論を核とした系統的な研究が極めて少ない状況にあった. 本研究室では, 再結晶過程についての実験的研究と, FEMを核とした理論の両面からこの問題に取り組んでおり, 既に数多くの成果を得ている.

通電加熱の特性と変形加工への応用
教授 柳本 潤[代表者],技術官 柳田 明
通電加熱圧延では均一温度分布を得ることが雰囲気加熱に比べ容易であり, 今後変形加工における温度制御手段として有効に機能していくことが予想される. 本年度はステンレス鋼の組織制御のための温度制御手段の確率を目的として, 通電加熱の特性を実験的に検討し, 圧延と組み合わせた組織制御を実施した.

冷間集合組織創成に関する研究
教授 柳本 潤[代表者],外国人客員研究員 李 雪春
冷間プレス加工による成形性を支配する要因は, マクロな視点では金属材料の面内異方性である. 面内異方性はミクロな視点では結晶方位分布により支配されるため, 塑性変形・再結晶・変態による結晶方位分布の変化の定量化は重要な課題である. 本研究では, 冷間集合組織創成メカニズムの検討と, 集合組織創成のための新たな加工機械の開発を目指している.

フレキシブルな素形材製造技術の開発
教授 柳本 潤[代表者],大学院学生 石塚 基
素形材製造プロセスをより柔軟に…というのは永遠のテーマである. 例えば鋼製造プロセスでは数多くの合金成分を成分調整により造り分けているが, 現実には成分調整は転炉容量を最小単位としておりその量は約200トンと巨大である. 約10トンの1コイル毎に, 自在な機械的特性を創り込む技術の開発を目指しつつ, 実験による検討を行っている.

異種材料の常温でのマイクロ固相接合
教授 柳本 潤[代表者],大学院学生 堅田直人
広範囲な異種材料の接合に利用できる,材料分流を利用した接合方法を提案し,マイクロ部材の接合への適用について基礎研究を行っている.本年度は,サブミリ寸法について検討を行い,健全な接合が可能であることを実験的に明らかにした.

テキスタイル複合材料の強度信頼性評価に関する研究
助教授 吉川 暢宏[代表者], 助手 桑水流 理
成形性の向上と強度に関する高信頼性化を目指して,高機能繊維をテキスタイル化して強化材とする複合材料の利用が検討されている.その実用化にあたっての最大の課題である強度評価を適切に行うため,コンピュータシミュレーションを積極的に利用する,Simulation Integrated Experimentの方法論を構築している.すなわち,経糸と緯糸の微視構造までを考慮した有限要素を開発し,試験結果とシミュレーション結果の間で逆問題を構成し,強度を的確に評価する手法を開発している.

X線CTを用いた生体内力学場計測に関する研究
助教授 吉川 暢宏[代表者], 助手 桑水流 理,吉川研 大学院学生 中本与一
疾病の予測,治療の方針決定,あるいは事故時の傷害予測のため,人体の有限要素解析が行われている.解析の確度を上昇させるためには,不均質で柔軟な生体組織の材料モデル化を非侵襲試験に基づいて行う必要がある.そのための有力なツールとなる,X線CT画像に基づく生体内力学場計測手法を開発している.力学負荷時のCT画像と,初期無負荷時の画像から,変位場,すなわち物理的対応点の移動量を評価するアルゴリズムを開発した.試験片レベルの実験により,その妥当性を検証した.

高圧燃料自動車用FRP容器の最適構造設計に関する研究
助教授 吉川 暢宏[代表者],吉川研 技術官 佐藤佳代,吉川研 大学院学生 ストルツジャスティン
更なる普及を目的に,圧縮水素燃料電池自動車用では70MPaの高圧燃料容器が,圧縮天然ガス自動車用でも350MPaの容器が要求されるに至っている.容器の強度と軽量化のトレードオフを解決するため,金属製あるいはプラスチック製ライナーにFRPをフィラメントワインディングする複合容器の最適設計を行っている.FRP層を直交異方性材料としてモデル化し,等方性材料であるライナーと積層して有限要素化を行う.有限要素感度解析に基づき構造パラメータ決定方程式を導出し,最適構造パラメータを得る.ドーム部形状の有限要素モデルにおける設計パラメータとしての表現方法について検討を行った.

固体強度のマルチスケール解析に関する研究
助教授 吉川 暢宏[代表者],吉川研 期間研究員 半谷禎彦,吉川研 大学院学生 三井康行, 助手 桑水流 理
ナノ構造,ミクロ構造に支配される異種材料界面の強度を的確に評価するため,ナノ−ミクロ−メゾ−マクロに連なるマルチスケール解析手法を検討している.ナノスケールを扱う第一原理計算に関して,計算の高速化を目指して実空間有限要素法による定式化を行い,実用性の検討を行った.ミクロスケールを扱う分子動力学法とマクロスケールを扱う連続体有限要素法をつなぐメゾスケール解析法として,Quasi-continuum (QC)法の適用可能性を検討した.

X線CTを用いた生体内力学場計測に関する研究
助手 桑水流 理, 助教授 吉川 暢宏[代表者]

固体強度のマルチスケール解析に関する研究
助手 桑水流 理, 助教授 吉川 暢宏[代表者]

人間・社会部門

自然雷の研究
教授 石井 勝[代表者],技術官 齋藤 幹久・藤居 文行, 協力研究員 奥村 博・Syarif Hidayat
自然雷の放電機構, 雷放電のパラメ−タに関する研究を, おもに電磁界による観測を通じて行っている. また, 雷放電位置標定システムの精度向上, VHF帯およびMF帯電磁波の多地点での高精度時刻同期観測による雷雲内放電路の3次元位置標定, 静的電界変化の多地点観測による雷雲内電荷分布の研究を進めている. 冬季に多い正極性落雷の発生様相を一部明らかにした.(一部受託研究費)

電磁界パルス(EMP)の研究
教授 石井 勝[代表者],大学院学生 Ramesh K. Pokharel・宮嵜 悟・林 敏, 協力研究員 馬場 吉弘
雷放電や, 高電圧回路のスイッチングに伴って発生する電磁界パルス(EMP)のモデリング, 伝搬に伴う変歪, 導体系との結合などについて研究を進めている. 周波数領域の3次元過渡電磁界解析コードの利用に加え, 時間領域コードを適用することによって, 非線型要素を含む送配電線における雷サージ電圧の解析を行った. また電磁界変化波形の多地点測定データにもとづき, 帰還雷撃放電路のモデリングを試みている.

電力系統における雷サージに関する研究
教授 石井 勝[代表者],大学院学生 Ramesh K. Pokharel・狼 智久,協力研究員 馬場 吉宏
3次元過渡電磁界解析コードと回路解析コードにより, 送電線に落雷が生じた時に鉄塔を含む立体回路に発生する雷サージを計算し, 大地導電率や雷放電路の特性が雷サージ波形に及ぼす影響を調べている. また発生する雷サージ波形は波尾の短い非標準波形になるため,数十cm級気中ギャップの非標準波形電圧による絶縁破壊特性を実験的に検討している.(一部受託研究費)

インパルス高電圧計測の精度向上に関する研究
教授 石井 勝[代表者],協力研究員 馬場 吉弘
抵抗分圧器を使用したインパルス高電圧計測を, モーメント法またはFDTD法による3次元過渡電磁界解析手法で数値的に模擬し, 種々のパラメータが測定精度に及ぼす影響を検討している. この手法を用いて, 実験室構成の測定結果への影響, 抵抗分圧器の設計法などについて研究を進めた.

環境感性工学の開発(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,宋 斗三,大学院学生 梁禎訓, 富永正道
環境感性工学開発の第一段階として,空調による室内温熱環境における適用を検討する.室内の温熱環境シミュレーションシステムに,環境からの刺激に対して,環境に対し能動的に反応する人間要素を組み込み,環境制御のため投入したエネルギー量と人間の環境に対する不満足度を最小化するよう,環境−人間系システムを最適化する.この検討により,省エネルギーかつ,人間の感性に沿った空調システムを発見,選択することが可能となる.本年度も昨年に引き続き,サーマルマネキン(人体の放射性状をシミュレートするマネキン)を用いて様々な空間の温熱環境を計測,評価し,環境−人間系システムを検討した.

室内の換気・空調効率に関する研究(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,研究員 吉野博,協力研究員 金泰延, 伊藤一秀
室内の空気温熱環境の形成に預かっている各種要因とその寄与(感度)を放射および室内気流シミュレーションにより解析する.これにより一つの空調吹出口や排気口,また温熱源などが,どのように室内の気流・温度分布の形成に関わっているか,またこれらの要素が多少変化した際,室内の気流・温度分布がどのように変化するかを解析する.これらの解析結果は,室内の温熱空気環境の設計や制御に用いられる.本年度は暖房室内で開放型灯油ストーブを燃焼させた際の室内空気質の濃度分布性状について検討した.

数値サーマルマネキンの開発(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,研究員 田辺新一,大学院学生 梁禎訓, 富永正道
本研究は,サーマルマネキン等を用いた実験に基づいて行われている人体とその周辺の環境場との熱輸送解析を,対流放射連成シミュレーション,さらには湿気輸送シミュレーションとの連成により,数値的に精度良くシミュレートすることを目的とする.本年度は四肢と顎部,胸部などの局部形状を詳細にモデル化した人体モデルを作成し,この人体モデルを用いたCFD解析により,人体局所形状の影響を考慮して,人体吸気領域の検討を行った.

室内温熱環境と空調システムに関する研究(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,宋 斗三,協力研究員 近本智行,金泰延,博士研究員 張賢在
良好な室内環境を得るための最適な空調システムに関して,模型実験・数値シミュレーションにより研究している.中でも放射パネルを用いた冷房方式は,全空気方式に比べ冷風吹出しによるドラフトリスクが軽減される等の有利な点を持つ方式である.本年度も前年度に引き続き,オフィス空間を対象として,冷房しながら自然換気を行った場合(自然換気併用ハイブリッド空調)の有効性と理想的な空調拡散のあり方についてCFDにより解析を行っている.今年度は夏季のような厳しい外気条件の下での室の天井高の違いや放射パネル高さの違いが温熱環境性状および冷房負荷に与える影響について検討した.

室内気流の乱流シミュレーションとレーザー可視化,画像処理計測手法の開発研究(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,協力研究員 伊藤一秀
室内気流を対象とした乱流シミュレーション・可視化計測による流れ場,拡散場の予測,解析,制御のための手法の開発を行う.特に,レーザー光を用いた流れの可視化による定性的な把握とともに,定量的な計測を行うシステムの開発研究に重点を置く.模型実験での可視化により得られた流れ性状を数値化してシミュレーション結果と比較し,その精度向上に務めた.

流体数値シミュレーションにおける超並列計算システム(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,協力研究員 飯塚悟
超並列計算機による流体シミュレーションの検討課題を明らかにし,その基礎的検討を行う.本年度も昨年に引き続き並列計算を実行する基礎コードとして,コロケーション格子を採用した3次元一般曲線座標系コードを基に,並列処理および大規模計算に欠かすことのできないマルチブロックシステムを導入してChannel Flowおよび室内の流れ場解析を行った.

室内化学物質空気汚染の解明と健康居住空間の開発(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,研究員 伊香賀俊治, 田辺新一, 近藤靖史,協力研究員 伊藤一秀,外国人特別研究員 朱清宇
建築物・住宅内における化学物質空気汚染に関する問題を解明し,健康で衛生的な居住環境を整備する.研究対象物質としてホルムアルデヒド,VOC,有機リン系農薬及び可塑材に着目する.これら化学物質の室内空間への放散及びその活性化反応を含めた汚染のメカニズム,予測方法,最適設計・対策方法を解明すること,その情報データベースの構築を目的とする.本年度も昨年度に引き続き,建築生産の現場で頻繁に使用されるペイント類に着目し,ペイントからの化学物質放散性状について検討した.また,室内居住域の化学物質濃度を健康で衛生的な範囲内に留めるための多岐にわたる建材使用の条件,室内換気方法,除去分解方法を具体的に提案する.

高密度居住区モデルの開発研究(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,宋 斗三,研究員 伊香賀俊治,大学院学生 上原瞳
人口爆発を止めることは困難であり,人類は好むと好まざるに拘らず,都市において高密度居住の道を選ばざるを得ない.高密度居住を積極的に利用して,効率的で,高いサステナビリティ性を備えた,そして環境負荷の少ない居住区モデルを開発する.本研究では,都市負荷の最小化を目指して高密度居住区を計画し,その環境負荷削減効果を明らかにするとともに食料生産,ヒーリング等のための耕地地区,緑地地区と高密度居住地内のバランスのとれた配置計画方法を提案する.本年度は劣悪な室内温熱環境を改善する方法の一つとして考えられている通気層を有する二重屋根についてその改善効果を検討した.また,外部環境を効率的に室内に取り組み省エネルギー的に室内環境を調整しうるポーラス型建物モデルを提案し,その有効性について検討した.

風洞実験・室内気流実験で用いる風速並びに風圧変動測定方法の開発に関する研究(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,研究員 小林信行, 近藤靖史,技術専門職員 高橋岳生
建物周辺気流に関する風洞実験や室内気流実験で用いる平均風速,風速変動の3次元計測が可能な風速測定器の開発・実用化および変動風圧の測定法等の開発に関し,研究を進めている.本年度も前年度に引き続き,PIV流速計により等温室内気流,および非等温室内気流の乱流統計量を測定し,その特性を解析した.

風力発電の立地選択のためのCFDに基づく風況予測手法の開発と検証(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,研究員 持田灯,技術専門職員 高橋岳生,大学院学生 Mohamed Fathy Yassin
風力発電サイトの最適な立地地点を選定するために,広範な観測を実施することは困難である.そこで,数値モデルによる風況予測を行わざるを得ないが,日本の地形は起伏に富んでおり,既存の線形風況予測モデルの適用限界を超えている.本研究の目的は,傾斜勾配が5%を越える地域にも利用でき,風車立地候補地点近傍の正確な予測を行える局所的風況予測モデルを開発することである.本年度は,二次元丘陵モデルならびに段丘モデル周囲の気流性状について風洞模型実験並びにCFDによる検討を行った.

CFD解析に基づく室内温熱環境の自動最適設計手法の開発(継続)
教授 加藤 信介[代表者], 助教授 大岡 龍三,協力研究員 金泰延
本研究は,室内環境CFD(Computational Fluid Dynamics)解析シミュレーションに基づく室内温熱・空気環境の自動最適設計手法を開発することを目的とする.これは室内の環境性状を設計目標値に最大限近づけさせるための室内の物理的な境界条件を求める手法,すなわち逆問題解析による環境の自動最適化設計手法の基礎的な検討を行うものである.本年度はGA(遺伝的アルゴリズム Genetic Algorithm)を導入し,より少ない計算量で広範な条件から複数の最適条件候補を探索する手法を検討した.

帆走艇の運動性能向上に関する研究(継続)
教授 木下 健[代表者],堀内浩太郎,GHクラフト 鵜沢 潔,GHクラフト 加藤 誠,木下研大学院学生 須藤康広,木下研大学院学生 二瓶泰範
操船の容易な双胴型水中翼船ヨットの開発研究を引き続きプロトタイプについて実海面と試験水槽で行っている.本年度は主翼を一つ,前翼を二つ新たに設計し,製作,実験した.

競漕用シェル艇の性能向上(継続)
教授 木下 健[代表者],木下研大学院学生 小林 寛
ボート競技に用いられる用具の改良と開発を行っている. 既存優秀艇の曳航試験を行い, 抵抗成分を分離し検討をくわえ, 新型リガー, 舵, フィン, ボディーフェアリングの開発を行った. 本年度はシングルスカルの実艇実験により求めたオールに加わる流体力のモデル化と漕手の動きのモデル化を行い,艇速予測プログラム(VPP)を完成した.これにより機械効率の良い器具と漕法の研究を行う.

係留浮体の長周期運動に関する研究(継続)
教授 木下 健[代表者],研究員 砂原俊之
波浪中の長周期運動は係留浮体の設計上で, 最も基本的かつ重大な課題の一つであるが, 非線形性が強く重要な研究課題が数多く残されている. 波漂流力と波漂流減衰力の推定はほぼ完了したので現在は波漂流附加質量の実験と理論計算を行っている.計算結果を水槽試験結果と比較し, 理論の妥当性を検証している.

波浪中の任意形状浮体に働く非線形流体力の理論計算(継続)
教授 木下 健[代表者],木下研大学院学生 吉田基樹,木下研大学院学生 二瓶泰範
海洋に係留された浮体は係留系との同調により長周期運動, スプリンギングさらにはリンギングと呼ばれる非線形振動をする. その起振力となる流体力を波傾斜を微小量とする摂動法により精度良く計算する研究を行っている.

レーザー光シートによる粒状材料よりなる構造の模型内部の動的挙動の可視化とその応用(継続)
教授 小長井 一男[代表者],協力研究員 松島 亘志
粒状材料よりなる構造の模型をガラス粒子で作製し, これを同じ屈折率の液体中に浸漬し, レーザー光シートを照射して, シート面上にある粒子の挙動を可視化あうる手法(Laser-Aided Tomography: LAT)で, 水中の粒状体構造物の耐震性を研究している. 本年度は一昨年度に構築したLAT/平面ひずみ試験システムを用いて, 引き続き供試体の光学的切断面を多数撮影し, 三次元粒状体内部のあらゆる粒子の3次元画像画像から, これがせん断変形する場合の粒子パラメータを統計的に処理して, 全体変形に与える粒子ミクロ構造の影響を検討した.

フィルダムの耐震性に関する研究(継続)
教授 小長井 一男[代表者],教授 小長井 一男, 協力研究員 松島 亘志
粒径の大きな岩石を積み上げたフィルダム斜面の動的安定性をLATによる可視化模型実験やDEMによる数値シミュレーションで検討している. 斜面がその安定の限界に達するまでに必要とされるエネルギーについての研究を中心に進めている.

軟弱地盤中のトンネルの地震時挙動に関する研究
教授 小長井 一男[代表者],技術官 片桐 俊彦
軟弱地盤中に建設されているトンネルについて, 地震観測によって地震時の加速度応答, トンネル覆工のひずみを調べている. 本年度は昨年度に引き続き, 地震時に覆工に発生するひずみを軽減するために, トンネル覆工と周辺地盤の間に挿入する柔らかい免震材料の効果について理論的, 実験的な検討を行った.

アースダムの地震時における動的性状に関する研究(継続)
教授 小長井 一男[代表者],技術官 片桐 俊彦
実在のアースダム(山王海ダム)で地震観測を継続している. これまでにこのダムで様々な記録が得られたが, 現在このダムの上にさらに積み上げる形で新しいロックフィルダムが建設されたため, 上流側斜面の旧堤体と新堤体の境界部に新たに埋設型の地震計を設置し,これまでの研究を活かした新たな観測を継続している.本年度はISDNによる遠隔管理システムを導入した.

地盤の大変形の解析手法の開発(継続)
教授 小長井 一男[代表者],大学院学生 Jorgen Johansson・Sadr Amir
地盤の大変形解析のためのLPFDM(ラグランジアン・ポイント有限差分法)を開発した. これは有限差分法のスキームでの時刻歴解析法で, 解析対象となる物質はラグランジアン・ポイントと呼ばれる点の集合で表現される. 1回のタイムステップで更新されたラグランジアン パラメータはバックグラウンドであるEuler座標上にマッピングされ, 次のステップの計算に移行する. したがって, 本手法はSulskyらが開発したラグランジアン・ポイント法(LPM)にFLACなどと共通する有限差分法のスキームを反映したもので, 両者の特徴を反映し, 大変形解析を, 少ない計算負荷で行うことを可能にする.本年度は間隙水圧の変化が断層による地盤変形に与える影響などを検討し,模型実験によってその妥当性を検証した.

地震地すべりの調査と地盤大変形の解析(継続)
教授 小長井 一男[代表者],大学院生 Jorgen Johansson, 沼田 宗純
火山屑砕物の堆積した斜面の崩壊は,その流下距離の大きいことで知られ,極めて悲惨な災害に繋がる.2001年1月13日に発生したエルサルバドル地震では,この地震の被害者の半分以上がLas Colinas一箇所の地すべりによるものである.この被害の実態を現地で調査するとともに,詳細な解析を新たな大変形解析手法(LPFDM)で実施している.今年度は擬似三次元的な解析手法の開発に成功し,地すべり土塊の厚みの変化と到達距離の関係を検討した.

歴史地震痕跡の工学的評価手法の開発
教授 小長井 一男[代表者], 客員教授 寒川 旭,小長井研 大学院学生 伊藤寛倫
遺跡で発見される地震の痕跡を用いて,地震の発生時期(時には時刻)や当時の人々への影響などを考えるという寒川によって始められた研究手法は「地震考古学」と呼ばれている.地震痕跡として頻繁に見つかるものには(a)液状化痕跡,(b)地すべり痕跡,(c)地震断層痕跡がある.これらの工学的パラメータの計測,解析手法を開発し,年間数千ヶ所に及ぶ遺跡の発掘が行われているわが国で,(1)地震の発生時期,に加えて (2)地震動の強さの広域分布を客観的な指標を持って示すこと,を目的に調査・研究を進めている.

自然災害の科学的, 社会経済的起源の研究(継続)
教授 須藤 研[代表者],教授 須藤 研,・助教授 A. S. Herath, 目黒 公郎・助手 D. Dutta
地学現象が人間の経済社会活動に負の影響をもたらすとき自然災害が発現する. この負の影響の大きさは幾つかの変数の関数で表現される. それらは地学現象そのものの大きさ, 経済社会構造, 及び防災施策である. 本研究ではこの関数の構造を解析し, 主として途上国での防災に関する長期的施策の立案に資する.

強地震動の空間分布予測の研究(継続)
教授 須藤 研[代表者],教授 須藤 研, 助教授 目黒 公郎
ある地点での地震動は震源での岩盤の破壊過程と震源とその地点間の物理的性質によって決まってくるグリーン関数が与えられることで数値的に算出できる. しかし地震工学で対象とする地震動はその波長の短さ故に空間的に互いにその様相を異にする. 本研究では存否法, ウエーブレット解析を適用した新しい予測法を開発し, 空間的に密な観測が不可能である途上国での震動予測に資する.

音響計測法に関する研究(継続)
教授 橘 秀樹[代表者], 助教授 坂本 慎一,研究員 山崎芳男,研究員 矢野博夫,協力研究員 佐藤史明,協力研究員 横田考俊,橘研 大学院学生 廉成坤,橘研 大学院学生 川崎寛
建築音響・騒音制御の分野における計測法の開発および精度向上を目的とした研究として,音響インテンシティ計測法による音響パワーレベルおよび音響透過損失の測定方法,衝撃性音源の音響エネルギーの定量化および測定方法などに関する研究を継続的に行っている.本年度は,各種信号処理技術を用いて,遮音性能測定における暗騒音の影響の低減方法,時変性音場における音響伝搬測定方法などに関して理論的・実験的検討を行った.

室内音響に関する研究(継続)
教授 橘 秀樹[代表者], 助手 上野 佳奈子,研究員 山崎芳男,研究員 矢野博夫,協力研究員 佐藤史明,協力研究員 園田有児,協力研究員 横田考俊,橘研 大学院学生 飯塚美奈,坂本研 大学院学生 六反田素子,坂本研 大学院学生 金森敬子
室内音響に関する研究として,今年度はホール・ステージ上で演奏者がアンサンブルを行う場合の音響評価要因に着目し,ステージ上の物理特性の測定と評価指標の検討,二つの実験室を音響的に連結した音場シミュレーション手法の開発およびそれを用いた演奏者を対象とした主観評価実験を行った.またホール客席部における各種音響指標の測定方法に関する検討,ホールの室形状および壁面形状と音場拡散効果・音圧分布特性の関係に関する数値解析および聴感評価実験などを行った.

交通騒音の予測・評価に関する研究(継続)
教授 橘 秀樹[代表者], 助教授 坂本 慎一,研究員 矢野博夫,研究員 吉久光一,研究員 押野康夫,研究員 田近輝俊,橘研 大学院学生 成栄慶
道路交通騒音に重点を置いて,騒音の伝搬予測法並びに対策法に関する研究を継続的に進めている.今年度は,昨年度に引き続いて道路交通騒音予測計算法を環境騒音のモニタリング手法として適用する可能性について検討を行った.また,等価騒音レベルに基づくエネルギーベースの道路騒音予測計算法の改良を目的として,各種断面形状をもつ防音塀の騒音低減効果,掘割・半地下構造からの騒音放射特性とそのモデル化に関する数値解析および模型実験による検討,市街地における建物群背後への騒音伝搬の推計方法などについて研究を進めた.

室内騒音の評価に関する研究(継続)
教授 橘 秀樹[代表者], 助教授 坂本 慎一, 助手 上野 佳奈子,研究員 矢野博夫,橘研 大学院学生 横山栄,橘研 大学院学生 石橋睦美
建築物内外における騒音が室内居住者に及ぼす影響に関して,実験室に構築したシミュレーション音場を用いた聴感評価実験により検討を行っている.本年度は,建築実務において一般的に用いられている音響性能水準の見直しのための基礎的検討として,聴覚マスキング機能を考慮した都市複合騒音の評価に着目し,生活行動に対する騒音の影響を実験的に調べるための心理実験手法の検討並びに試験音サンプルの収集を行った.

教育施設の音環境に関する研究(継続)
教授 橘 秀樹[代表者], 助教授 坂本 慎一, 助手 上野 佳奈子,協力研究員 園田有児,橘研 大学院学生 澤谷郁子
教育施設に求められる音響性能及びそれを実現するための音響設計手法の提案を目的として研究を進めている.本年度は,建築設計者と連携して事例調査を行い,学校建物における建築音響性能と実際の使用状態における音環境の実測調査を実施し,多様化する教育活動を建築的・環境工学的にサポートするための方法について基礎的検討を行った.また,これまでに行ってきた小学校の音環境に関する調査研究の成果を踏まえて,隣接教室間の音の伝搬が問題とされているオープンプラン型小学校の設計実務に参加した.

空間骨組構造の順応型有限要素解析手法に関する研究(継続)
教授 都井 裕[代表者],
海洋構造物, 機械構造物, 土木・建築構造物などに見られる大規模・空間骨組構造の様々な崩壊問題に対し, 順応型 Shifted Integration法(ASI法と略称)に基づく合理的かつ効率的な有限要素解析手法を開発し, 静的・動的崩壊を含む各種の非線形問題に応用している. 本年度は, 要素サイズ依存性を除去した弾塑性損傷解析アルゴリズムを確立するための基礎研究を継続した.

機械・構造物の連成力学挙動の有限要素解析に関する研究
教授 都井 裕[代表者], 助手 高垣 昌和
機械部品,構造物のマルチフィールド下における連成力学挙動の有限要素解析アルゴリズムの構成と応用に関する研究を進めている.本年度は, 熱伝導,弾塑性損傷,液体金属脆化の連成した三次元有限要素解析プログラムにより,溶融亜鉛めっきを受ける鋼構造部材の亜鉛脆化割れ挙動解析を実施し,合理的な結果を得た.さらに,金属変態を考慮することにより,機械部品の高周波焼入れ解析への拡張を進めている.

イオン導電性高分子材料によるアクチュエータ素子の有限要素解析に関する研究
教授 都井 裕[代表者],大学院学生 姜 成洙
イオン導電性高分子材料(Nafion,Flemionなど)によるアクチュエータ素子の電気化学・力学連成挙動の有限要素解析に関する研究を進めている.本年度は,一方向の電場を受けるIPMC(Ionic Polymer Metal Composite)はりおよび平板の連成挙動解析プログラムを開発し,試計算により有用性を検証した.さらに,より一般的な電場下の解析に拡張している.

形状記憶合金アクチュエータ素子の有限要素解析に関する研究(継続)
教授 都井 裕[代表者],大学院学生 李 宗賓
形状記憶合金(SMA)アクチュエータ素子の超弾性変形挙動,形状記憶挙動に対する解析ソフトの開発を進めている.本年度は, ニッケル・チタン系SMAより成るコイルばねの超弾性変形挙動に対する計算を行い,実験結果と良好に対応することを確認した.また,強磁性体SMA(FePd)コイルばねに対する磁場・超弾性変形連成解析法について検討し,試計算により計算アルゴリズムを検証した.

材料破壊の計算メソ力学に関する研究(継続)
教授 都井 裕[代表者],大学院学生 姜 成洙
計算メソ力学モデルによる材料破壊のメソスケール・シミュレーション手法の開発と各種固体材料の構成式挙動および損傷・破壊現象への応用に関する研究を進めている. 本年度は, メッシュレス法の一種である自然要素法(Natural Element Method)に基づくメソ解析アルゴリズムを,多数のボイドを有する固体の,ボイド結合を考慮した延性破壊解析に適用し,その有用性を実証した.

数値材料試験と構造物の疲労寿命評価への応用に関する研究(継続)
教授 都井 裕[代表者],研究員 岩渕研吾,大学院学生 広瀬智史,技術専門職員 岡田和三
材料の損傷・破断を含む構成式挙動をシミュレートするための連続体損傷力学モデルによる数値材料試験,および有限要素法を併用した局所連成解析法の構造要素・疲労寿命評価への応用に関する研究を行っている.本年度は,アルミニウム材の低サイクル疲労,レール材の3点曲げ疲労破壊,レールのシェリングなどに対する数値材料試験および寿命予測計算を行い,実験結果との比較によりその有用性を検討した.

工学構造体の計算損傷力学に関する研究(継続)
教授 都井 裕[代表者],研究員 田中英紀,大学院学生 朴 哉炯
各種の工学構造体の損傷破壊挙動に対する連続体損傷力学モデルの構成と有限要素法に基づく局所的破壊解析への応用に関する研究を行なっている. 本年度は, RC構造の損傷力学モデルについて検討するとともに,炭素繊維シートで補強したRC構造体の疲労強度試験を実施し,有限要素解析プログラムの開発に着手した.また,層分割Timoshenkoはり要素による弾塑性損傷解析アルゴリズムについての検討を進めた.

熱・弾塑性損傷・脆化の連成を考慮した鋼構造部材の溶融亜鉛脆化割れに関する損傷解析手法の開発
助手 高垣 昌和, 教授 都井 裕[代表者]
構造物などに熱負荷が加わると熱応力が発生する場合があり,さらに液体金属脆化などの材料劣化の要因が重畳するとき裂などが発生する可能性がある.しかし,損傷が生じるような熱負荷条件における力学的データを実験的に得ることは非常に困難である.本研究では,Lemaitreによるスカラー損傷変数発展則ならびにクリープ塑性等方硬化理論を適用した粘塑性損傷則を拡張することにより熱弾粘塑性損傷解析法がすでに提案されている.本報告では新たに損傷による影響を考慮した熱伝導解析を導入,さらに液体金属脆化を考慮するために粒界拡散説をもとにその効果を損傷解析部に組み込んだ連成解析手法を開発し,その妥当性について検証した.

生体分子モータを用いたハイブリッドナノマシン
講師 竹内 昌治
生体分子モータである,アクチン-ミオシン,微小管-キネシン,ATP合成酵素などのタンパク質と人工のMEMS/NEMSデバイスを組み合わせた,マイクロナノシステムの構築を目指している.用いるタンパク質はどれも10nm程度のサイズであり,生体内で一分子単位の搬送や反応を実現している.このような生体機能をもつタンパク質を人工的に制御し,マイクロ・ナノ物質の搬送や操作に利用する研究を行なっている.現在までに,微小管を基板上にパターニングし,この上をキネシン修飾したシリコンマイクロデバイスを搬送することに成功している.また,これらの技術を,一分子観察の研究分野へ展開することを試みている.例えば,一分子の温度特性を調べるためのマイクロヒータ,化学物質に対する反応を評価するためのナノチャンバ,プロトン駆動型の回転モータの動作観察用のナノ電極アレイなどを,ナノ加工技術を用いて実現することを目指している.生体分子モータである,アクチン-ミオシン,微小管-キネシン,ATP合成酵素などのタンパク質と人工のMEMS/NEMSデバイスを組み合わせた,マイクロナノシステムの構築を目指している.用いるタンパク質はどれも10nm程度のサイズであり,生体内で一分子単位の搬送や反応を実現している.このような生体機能をもつタンパク質を人工的に制御し,マイクロ・ナノ物質の搬送や操作に利用する研究を行なっている.現在までに,微小管を基板上にパターニングし,この上をキネシン修飾したシリコンマイクロデバイスを搬送することに成功している.また,これらの技術を,一分子観察の研究分野へ展開することを試みている.例えば,一分子の温度特性を調べるためのマイクロヒータ,化学物質に対する反応を評価するためのナノチャンバ,プロトン駆動型の回転モータの動作観察用のナノ電極アレイなどを,ナノ加工技術を用いて実現することを目指している.これらは,2部野地助教授,藤井助教授,3部藤田教授,総合文化研究科須藤教授と共同で行なっている.

神経インターフェース
講師 竹内 昌治
人工心臓や義手義足などの人工臓器の制御を,実際の神経電位をモニタしながら行なうための,計測・刺激デバイスと神経とを結ぶインターフェースの構築を目指している.MEMS技術を用いて,ポリイミドやパリレンなどの高分子を加工し,これまで実現の難しかった深さ方向にも複数チャンネルを有するフレキシブルな剣山型多チャンネル微小電極を試作し,脳や神経束の3次元的な神経電位の変化をリアルタイムで記録する研究を行っている.また,神経細胞内の電位記録を実現するために,神経の軸索直径以下であるナノサイズのプローブアレイの研究を行っている.これらは,電子線直接描画や紫外線レーザ描画法によるトップダウン的な方法や集束イオンビーム(FIB)法を用いてボトムアップ的に構造を堆積する方法を駆使することで製作し,実際に脳内に刺入する実験を試みている.これらは,情報理工学研究科満渕教授,鈴木特任講師と共同で実験を進めている.

建築・都市空間の特性分析(継続)
教授 藤井 明[代表者], 助教授 曲渕 英邦,助手 林 信昭,助手 槻橋 修,大学院生 王 笑夢,大学院生 浅野元樹,大学院生 Kevin Yim,大学院生 木村達治
説明本研究は建築・都市空間を構成する形態要素とその配列パターンを分析指標として空間特性を記述することを目的としている.本年度は不動産新聞広告に見られる集合住宅供給の変遷を追い,広告件数の推移と着工件数の比較,また双方の立地分析を行うことにより,メディアの中に表れる都市居住像を明らかにした.

空間の構成原理に関する実証的研究(継続)
教授 藤井 明[代表者], 助教授 曲渕 英邦,助手 槻橋 修,技術官 小駒幸江,大学院生 Jin Taira,大学院生 王 シン,大学院生 永井 秀幸,大学院生 田中陽輔
伝統的な集落や住居に見出される空間の構成原理は,今日の居住計画を再考する上で重要な示唆に富んでいる.本研究室では過去25年以上にわたって世界の伝統的集落の調査を継続しているが,本年度は韓国の伝統的住居を対象とした調査結果をもとに住居内外の領域要素の連結関係に関する分析を行った.特にマダンと呼ばれる韓国住居特有の庭空間に着目し,屋外から屋内へ緩やかに秩序づけられる韓国の伝統的な住空間の構造を明らかにした.

地域分析の手法に関する研究(継続)
教授 藤井 明[代表者], 助教授 曲渕 英邦,助手兼特別研究員 郷田桃代,助手 槻橋 修,大学院生 Erez Golani,大学院生 随 広戦,大学院生 川島洋平,大学院生 山雄和真,大学院生 岡部
地域空間の構造を的確に把握することは,地域性を積極的に組み入れてゆくという計画学的な視点からも非常に重要である.本年度は都市活動の重要な部分を担っているサービス事業に着目し,東京における各種のサービス拠点を鉄道・地下鉄のネットワークを併せて分類し,サービスへのアクセシビリティから捉えた東京の姿を捉えることを試みた.

計算幾何学に関する研究(継続)
教授 藤井 明[代表者], 助教授 曲渕 英邦,助手兼特別研究員 大河内学,助手 槻橋 修,大学院生 狩野朋子,大学院生 Napong Nopaket,大学院生 佐々木一晋,大学院生 金谷恵子
説明本研究は都市・地域解析への適用を目的とした計算幾何学的な手法の開発を行うもので,本年度は都市の空撮写真のように,曖昧で分節を見出しにくい画像の分析に対して考案した「スケールテクスチャ」という指標を応用し,建造物が密集する都心部における領域構造の抽出を行い,離散的な事象の集積によって,都市に連続的な肌理の変化をもたらされていることが明らかになった.

日本近代建築の地域性に関する研究(継続)
教授 藤森 照信
日本の近代建築が地域性を持つか否かは, 日本近代建築史の大きな論点の一つであった. この点を究明するために, 各地に残る建築遺構の写真撮影, 資料収集を行い, その比較調査を続行している. その成果として, これまで文明開化式建築の東日本偏在現象を発見した. その原因として, 港ヨコハマの影響および江戸期の過剰装飾の影響などを指摘することができた. 開化式の中でスタイルに地域性が見られ, 細部について調査を進めている.

日本の近代都市形成史の研究(継続)
教授 藤森 照信
日本の近代都市の発達を歴史的にとらえるため, 江戸から東京への変化の過程を明らかにする. これについては, 明治期に関する限り, ほぼ全容を明らかにすることができた. また引き続き大正期から戦前についてまでも解明を進め, 郊外住宅の開発の経緯と, その日本的特徴をつかみ, 都市環境開発などの問題点なども指摘, 研究を進めている.

日本近代産業施設の発達と遺構の生産技術史的研究(継続)
教授 藤森 照信
わが国の産業施設の発達過程は, 変化があまりにも急速である. その歴史が記述される前に, 肝心な生産施設そのものが取り壊される傾向にある. この現状を踏まえ, 全国の生産施設, 土木, 工場施設についても順次研究を進めている.

歴史および自然環境に配慮した建築設計の研究(継続)
教授 藤森 照信
歴史と自然の環境にマッチした建物は, 大きなテーマとなっている. こうした社会時代的な要請に答えるべく, これまで長く歴史的環境との調和のための研究をしてきたが, 現在は, 自然環境に力点を入れ, <自然と人工>をキイワードに調査研究を進め, 実験のための実際に, タンポポハウス, ニラハウス, 天竜市秋野不矩美術館, 一本松ハウス, 熊本農業大学学生寮, 椿の家などの建築設計でさまざまな試みを開始している.

東京における町屋建築の研究(継続)
教授 藤森 照信[代表者],博士研究員 丸山 雅子, 技術官 中川 宇妻
日本の近代建築の発展過程の中で庶民生活を支えてきた下町の建物(看板出桁建築, 長屋)は近年都市開発によって取り壊しが急速に進み, その数が減少している. また, 建設当時の状況や当時の生活を知る居住者の高齢化も進んでいる. その現存状況を調査し, 職住が一緒の建築空間にあって職別の(銭湯, 床屋, 酒屋, 豆腐屋, 饅頭屋, 金物屋など)間取りの特徴を, 居住者のヒヤリングにより, 都市空間, 居住空間, 住環境, 生活史など, 多角的に研究を進め成果を上げている. 江戸東京博物館たてもの園への移築保存へも貢献している.

歴史的建造物及び都市空間の復元的研究(継続)
教授 藤森 照信[代表者],研究員 時野谷 茂, 協力研究員 青木 信夫
都市の歴史への関心が高まっており, とりわけ東京がいかに近代化したかへの関心は高く, その一環として明治期の都市空間の復元的研究が求められている. 戦前の西洋館, 近代住宅を現代都市の中で再利用することは近年大きなテーマとなっており, その手法の研究を進めている. その成果は, 最近地方都市においても近代建築への関心が高く, 建物の価値評価, 保存再利用に向けての手法が多く求められている.

ベトナム都市における近代建築の保存と再生(継続)
教授 藤森 照信[代表者],助手・特別研究員 村松 伸, 協力研究員 大田 省一
ベトナム都市のハノイ・ホーチミン等には, フランス植民地時代の建築物が多く残り, 都市基盤施設, 建築物は当時のものそのまま利用している. ただしすでに半世紀以上経ちち半世紀以上経ち, 老巧が進み, また近年の開放政策から急激な都市環境の変化がみられるため, 近代建築の現存リストを作成, かなりの成果を上げた. これに基づきその利用と, 保存・再生とする都市計画を提示し, その実現のためのベトナム側との共同研究を進めている.

戦後建築家に関する基礎的研究(継続)
教授 藤森 照信[代表者],技術官 中川 宇妻
日本の建築は, 第二次世界大戦後半世紀の間に大いに発展した. 現代では, 世界の建築界のリーダーシップをとるまでになっている. 戦後50年経った時期を迎えて, 戦後をリードした建築家たちの事跡については, あるものは, ほとんど資料も残さないまま, あるものは重要な建築的出来事に立ち会いながら何の記録も回想も残すことなく, 没してしまっている. 早速にこの時期についての資料収集と分析に着手する必要があり, 戦後建築総体の基本資料を得ることを目的として研究を進めている.

集合住宅の研究−日本・韓国・台湾・中国の住宅営団に関する研究(継続)
教授 藤森 照信[代表者],協力研究員 冨井 正憲
本研究は, 国策住宅供給機関として1940年代に設立された, 東アジア4ケ国(日本, 韓国, 台湾, 中国)の住宅営団の組織の成立過程, 及び各国公共集合住宅, 近代住宅計画成立過程を調査, 比較検討し, 併せて東アジア4ケ国の居住空間の文化的特質を分析も研究する.

能舞台の歴史的変遷及び, 能的建築空間設計手法の研究(継続)
教授 藤森 照信[代表者],協力研究員 奥冨 利幸
我が国独自の「能舞台」は, 最近富に伝統文化の象徴として, 新たな能舞台が各地に建築されている. 能舞台の歴史的変遷過程と, 現存する能舞台の把握, 実測調査により, 設計方法の踏襲部分や建築空間の調査研究, 併せて現代建築の能空間的設計手法及び, 日本人に潜在的に好まれてきている能的思考の文化意識を考察研究する.

近代日本の土木デザインに関する歴史的研究(継続)
教授 藤森 照信[代表者],大学院学生 佐々 暁生
近年の調査で分かってきたことだが, 戦前の土木においては, 経済性を年頭におきながらも工夫を凝らし, 個性あふれるデザインが多数生み出された. これらは将来の土木設計を考える上で学ぶべき点が極めて多い. しかし, 建築と違って歴史研究が市民権を得てこなかった土木においては, そのデザインがどのような変遷を辿ってきたのか, ほどんど明らかにされていない. そこで本研究は, 建築家や建築デザイン, 海外土木などとのデザイン的接点に着目してその影響関係を探り, 土木デザインの潮流の全体像提示を試みる. (H12年度科学研究費補助金・特別研究員費奨励費)

東アジアと日本の建築近代化の比較研究(継続)
教授 藤森 照信[代表者],研究員 西澤 泰彦 助手・特別研究員 村松 伸, 大学院学生 鄭 昶源・陳 正哲・谷川 竜一
19世紀における西欧列強の東アジアの進出の軌跡は, 東アジアに登場する近代建築の歴史的展開と符号する. 近代日本における近代化遺産も, この歴史的展開の中で行われたといえる. 本研究は, こうしたグローバルな視点から, 東アジアと日本の近代建築の発生とその展開を比較研究し, 建築近代化過程の本質的問題を考察している. また, 同時に現存する遺構調査, この地に活躍した欧米人, 及び日本人建築家の活動 に関する研究も進めており, すでに一部を研究成果として報告している.

アジアの近代的歴史的建物および都市空間の復元的・再生的研究(継続)
教授 藤森 照信[代表者],助手・特別研究員 村松 伸,大学院学生 谷川 竜一
アジア各国では都市化が進み, 都市に残る近代的建築と研究保存・再生が求められている. 本研究は, アジア各研究者とネットワークを築き, 研究, 保存再生についてマニュアルを作成し, 連帯して進む道を考える.

多民族化及び西洋化による都市と建築の近代化に関する研究 ―内蒙古フフホト市を中心に(継続)
教授 藤森 照信[代表者],助手・特別研究員 村松 伸, 大学院学生 包 慕萍
本研究は少数民族地域の近代都市, 建築西洋化, 漢風化, 多民族化などによって, どのように影響を受け, 近代化が形成されたのか, これまでの学習モデルの欧米近代建築史研究の視点とは異なるアジア独自の特徴などを内モンゴル・フフホト市を中心に調査, 分析, 明らかにすべく研究を進めている.

貴金属の回収・分離・精製における新規プロセスの開発
教授 前田 正史[代表者],大学院学生 萱沼 義弘
貴金属はその特異な物理的化学的特徴から,宝飾品から工業用途まで幅広く使われている.このような製品の廃棄物から,含まれる貴金属を回収する試みが古くから行われてきたが,貴金属の用途がますます多様化するなか,複雑な組成・構造の廃棄物から貴金属を効率よく回収するプロセスが望まれている.本研究では,廃棄物からの貴金属の回収プロセスの最適化を目指し,その一環として化合物生成反応を利用した分離プロセスの検討を行っている.

質量分析法を用いたりん・カルシウム酸化物の熱力学
教授 前田 正史[代表者],大学院学生 韓 雄煕
我が国ではふっ化物の地表面の排出規制が予定されている.そのため,溶銑処理で多用されているCaO-CaF2系フラックスを鉄酸化物系で置換しようという傾向がある.そこで,CaO-P2O5系を想定し,溶銑処理の脱りん,脱硫プロセスについて熱力学的な研究を行っている.

アジア太平洋を統一的に扱う水文・水資源学的フレームワークの提唱
教授 虫明 功臣
アジア太平洋域,特にアジア域はモンスーンよる湿潤気候条件と変動帯という地質的条件が合わさることにより,世界でもっとも人口密度が高く生産密度も高い,また同時に水に関する災害の起き易い地域となっている.ともすれば欧米主導の科学技術発展の中で置き去りにされやすいこの地域の水問題に焦点を当て,来たるこれからの数十年を念頭におき,比較水文学視点からその世界の中での特殊性と地域の中での普遍性を明らかにし,国際共同のフレームワークを提唱した.これがアジア太平洋水文・水資源協会設立へと繋がった.

衛星マイクロ波センサによる地表面水文量の推定
教授 虫明 功臣[代表者], 助教授 沖 大幹,技官 小池雅洋,技官 弘中貞之,大学院学生 瀬戸心太,大学院学生 谷口親吾
TRMM(熱帯降雨観測衛星)に搭載されているPR(降雨レーダ)が観測する地表面散乱の強度から,表層の土壌水分を推定するための研究を行っている.PRは,SAR(合成開口レーダ)にない直下視に近い角度で観測が行える点で,土壌水分観測に有利である.本研究から,入射角12°付近での観測がグローバルスケールに混在する様々な植生分布とその時間変化の影響を最小限に抑え,土壌水分の変動を抽出するのに有利であることが分かった.アルゴリズムの改良,現地観測土壌水分データとの比較を行いながら,1998-2000年の3年分について熱帯域を中心とした表層土壌水分データを日単位で作成・公開する準備をすすめている.時間解像度の向上には,観測幅の広いTMI(マイクロ波放射計)を併用するのが有利であるため,TMIを利用した表層土壌水分推定アルゴリズムについて開発した.また,衛星観測を,表層から1m程度の土壌水分鉛直プロファイルの推定に応用するための土壌水分同化モデルについても基礎的な研究を進めている.

都市の水循環とそのモデル化に関する研究
教授 虫明 功臣[代表者], 助教授 HERATH Anura,技術官 小池 雅洋,教務技官 弘中貞之,助手 Dushmantha Dutta
自然系と人工系水循環要素が複雑に交錯している都市化流域の水循環機構を明らかにし, 今後の水循環系の保全策を研究するために, 海老川流域(千葉県)を対象に水循環のモニタリングとモデリングを行っている.

東南アジアモンスーン地域の水文環境の変動と水資源への影響
教授 虫明 功臣[代表者],大学院学生 ChayanisManusthiparom,大学院学生 大楽浩司,博士研究員 宮崎真,博士研究員 安形康, 助教授 沖 大幹,助教授(京大) 里村雄彦,助教授(東大) 松本淳,教授(神戸大) 山中大学,教授(東大) 鈴木雅一,講師(東大) 蔵治光一郎,助教授(京大) 大手信人,大学院学生 芳村圭, 助教授 鼎 信次郎
世界気候研究計画(WCRP)の一部として,また東南アジア各国と日本との共同研究として,熱帯雨林気候から乾季のある熱帯気候までを覆うインドシナ半島を対象として, 当該地域のアジアモンスーンにおける役割を解明すること, および当該地域の降水と水資源の季節予報を向上させることを目的としている. 本研究は1. 地表面熱・水フラックス観測, 2. 熱帯大気構造の解明, 3. 東南アジア気候・水文データ収集と解析, 4. 衛星リモートセンシング研究, 5. 領域気候モデルと水循環モデル開発の5つのサブ研究グループと総括班によって, 1996年のプロジェクト開始以来, 精力的に進められてきた. 本年度は, 前年度末に行われたこれまでのまとめを受けて,新段階(Phase2)へ向けての科学的目標策定,これまでの基礎科学の応用としての水資源アセスメント研究に特に力を入れた.その中で「モンスーンフェノロジー」という新科学用語を創生し,新たな研究会を立ち上げるにいたった.

分子動力学法による材料・プロセス設計法の研究
教授 安井 至[代表者],助手 宇都野 太, 大学院学生 川原 実, 吉川 由
コンピュータシミュレーション法の一種である分子動力学法を用いて, 熱膨張係数の結晶方位依存性, 酸素イオンの拡散, 欠陥構造の予測, 薄膜合成プロセスの予測, 結晶成長過程などを行っており, より効率的な材料設計の方法論を探っている. また, ガラス溶融プロセスにおける酸化還元の原子機構の検討を行っている.

ライフサイクルアセスメントによる環境調和性の判定
教授 安井 至[代表者],(科学技術振興事業団)中澤 克仁・船越 誠・山田 耕平
すべての材料, 製品などの環境調和性は, ライフサイクルアセスメントによって, 表現が可能である. しかし, その廃棄過程をどのように設計するかによって, 環境負荷は大きく異なる. そこで, 廃棄過程をさまざまに変化させたときの環境負荷がどのようになるか, より定量的にする方法論を含めて検討を行っている.

産業の環境パフォーマンスに関する研究
教授 安井 至[代表者],大学院学生 鳩山 宜伸・原 美奈子・国分 政秀
日本の産業における物質収支を解析し, より環境調和型産業に変貌させるには, どのような方法があるか, 次世紀にはどのような物質収支が予想され, その産業規模がどのようなものになるか, などを環境負荷軽減効果の観点から予測し, モデル化を行っている.

新規機能性構造を有する薄膜の合成
教授 安井 至[代表者],助手 宇都野 太, 大学院学生 森 恒・城石 健・安藤 雅俊・中島 智明
多結晶およびアモルファス薄膜の高機能性構造を有するための新しい合成手法の確立を目指している.アモルファス薄膜からの結晶化・分相制御によるナノ構造化,またはレーザー照射による微細構造の制御を検討している.

結晶化ガラスの極限的特性の探求
教授 安井 至[代表者], 助手 宇都野 太,大学院生 留野 暁
ガラスを結晶化すると,ガラスの持つ特性に新たに析出させた結晶の特性が付加される.その析出する結晶相の制御方法,ガラス−結晶の微細組織制御の方法の構築を目指し,より高機能な材料の開発を検討している.

ターボ過給エンジンシステムに関する研究(継続)
教授 吉識 晴夫[代表者], 助教授 加藤 千幸,研究員 田代伸一,助手 西村勝彦,技術官 高間信行,外国人協力研究員 王 威
燃料経済性,排気対策のため,車両用ディーゼル機関のターボ過給化が進められている.容積型のディーゼル機関と速度型のタービンを組み合わせ,しかも排気エネルギーを効率よく利用するためには,タービンを含む吸排気管路とエンジンとを統一的に流動解析する必要がある.この車両用高速ディーゼル機関の過給機駆動用原動機であるラジアル排気タービンは,機関からの脈動排気で駆動される.これまで,エンジン全体を一次元流路と容積でモデル化したシステムの数値解析と実験を行ってきた.現在,広い運転範囲にわたり低NOx排出で高性能となるエンジンシステムの追求を行っている.

ディーゼル機関の吸気特性に関する研究(継続)
教授 吉識 晴夫[代表者], 助教授 加藤 千幸,助手 西村勝彦
ディーゼル機関の出力向上,燃費改善,排気浄化のため,燃焼制御が重要な役割を果たす.燃焼改善のため,吸気に旋回流を与えているが,吸気管形状は経験的に決めることが多く,設計は容易とは言えない.現在,円管内旋回流の基礎データを精度良く測定し,数値解析モデルの構築を行っており,この情報を基に機関設計の効率化を図るための基礎研究を行っている.

小型ラジアルガスタービンに関する研究(継続)
教授 吉識 晴夫[代表者], 助教授 加藤 千幸,研究員 田代伸一,協力研究員 小西奎二,助手 西村勝彦,技術官 高間信行・大学院学生 池田博行,松浦一雄
マイクロガスタービンや自動車用エンジンとして小型ラジアルガスタービンの利用が活発化してきた.このラジアルガスタービンの高性能化のため,ラジアルタービン動翼内の3次元流体解析法の開発を行っている.また,サージ余裕の改善のため遠心圧縮機の入口案内翼後流の不安定流れの実験的研究などを行っている.さらに,モバイル型電源等として期待される超小型ガスタービンの開発のための基礎研究を行っている.

翼及び翼列の非定常流特性に関する研究(継続)
教授 吉識 晴夫[代表者], 助教授 加藤 千幸,技術官 高間信行,大学院学生 宮澤真史
エネルギー問題,環境問題の解決の一方法として,火力発電所のリパワリングが行われている.部分負荷で運転される蒸気タービンでは,翼列は周期的変動流の下で作動することになる.このように流速が時間的に周期的に変動する流れ場に置かれた単独翼及び翼列の特性について,実験と解析の両面より研究を行っている.今年度は,低レイノルズ数域における翼面からの剥離特性を実験的に求めた.

血流-血管壁の相互作用を考慮した数値解析
助教授 大島 まり[代表者], 教授 小林 敏雄,大学院学生 鳥井 亮
心疾患あるいは脳血管障害などの循環器系疾患においては,血流が血管壁に与える機械的なストレスが重要な要因と言われている.本研究においては血流が血管壁に与える機械的なストレスに対して血管壁の変形が与える影響を解析するため,血流- 血管壁の連成問題に対する数値解析手法の開発を行ってきた.開発した数値解析手法を用いて実形状の脳動脈瘤をはじめ,幾通りかの血管形状について数値解析を行い,血管壁の変形が血管内の血流および血管壁面上のストレスの分布に影響を与えるメカニズムを解析している.

Micro PIVによるマイクロチップ内流れの可視化計測
助教授 大島 まり[代表者], 助教授 藤井 輝夫,大学院学生 木下 晴之,大学院学生 金田祥平,技術官 瀬川茂樹
MEMS技術を利用した生化学システムはマイクロ化により,反応および拡散が促進されるといった利点を持っている.しかし,マイクロ流路内の流れの物理については不明な点が多い.そこで,マイクロチャネル内で生じる電気浸透流について,これを蛍光粒子を用いて顕微鏡下で可視化し,どのような現象が起こりうるかについて詳しい観察計測実験を進めている.また,それらの観察・計測結果に基づき,材料の種類や溶媒のpHなどに応じて変化するチャネル壁の表面電位と電気浸透流との関係について,詳細な考察を行っている.

高速度PIVを用いた血管モデル内の可視化計測
助教授 大島 まり[代表者],技術官 大石 正道
脳動脈瘤が比較的できやすいと言われる内頚動脈の湾曲部においては,強い二次流れと非定常性により,局所的な壁面せん断応力が加わる.その湾曲を模した血管モデル内の流れを可視化計測することにより,曲がりと流速の影響を考察することを目的としている. 非侵襲計測法であるPIV(Particle Image Velocimetry:粒子画像流速測定法)は瞬時流れ場の速度分布を調べる方法として最も進化したレーザ計測法ではあるが,振動や脈動等の非定常現象を対象とするには時間分解能が不足していた.そこで近年開発された高速度カメラを用いて,時間分解能を改善した高速度 PIVシステムを構築し,時系列速度分布の取得を行っている.

医用画像に基づいたシミュレーションおよびデータベースシステムの開発
助教授 大島 まり[代表者],講師(帝京大) 高木 清,大学院学生 篠崎 賢太
未破裂動脈瘤の破裂する危険性の予測は, EBM(Evidence Based Medicine)に基づく未破裂動脈瘤の治療ガイドラインを作成していくうえで重要な課題である.脳動脈瘤の破裂は血管や瘤の形状によって変化する血流の流動パターンあるいは血管の壁面応力分布等の流体力学的な(因子が重要な役割を果たしていると考えられる.本研究では,これまでに蓄積された血流シミュレーションシステムを用い,多数の脳動脈瘤症例について実医用画像に基づく血流数値解析を行っている.多変量解析の手法を用いることにより,脳血管形状と,それに起因する血行力学的ストレスとの関連性を考察し,動脈瘤破裂のリスクファクターとなるような形状的特徴を模索する.

Image-Based Simulationにおける脳血管形状の血行力学に与える影響の考察
助教授 大島 まり[代表者], 助教授 吉川 暢宏,大学院学生 一條 裕紀子
重大な脳疾患であるくも膜下出血に対して,その主要因の脳動脈瘤の破裂に関連する手術ガイドライン作成が求められている.そこで,本研究では脳血管の血流を数値シミュレーションし,動脈瘤の発生,破裂のメカニズムの解明をめざしている.シミュレーションに用いる3次元血管モデルについて,CT画像から血管抽出および,3次元構築の手法の問題点と解決法を述べる.さらに,モデルの中心線を抽出することにより形状をパラメータ化し,モデルをパラメトリックに変形して血管形状の血行力学に与える影響を考察する.

マウス鼻腔内の匂い物質の輸送の解析
助教授 大島 まり[代表者],助教授(東京大) 東原 和成,研究員(理化学研究所) 横田 秀夫,大学院学生 高波 延行
マウスの嗅覚の受容機構について,鼻腔内の匂い物質の輸送に着目し,流体力学的に解明を行うことを目的としている.マウスの連続断面画像から鼻腔部の3次元形状モデルを作成し,匂い受容体が限局する4つの嗅粘膜ゾーンにおける匂い物質の濃度変化の解析を行った.

血流シミュレーションにおける境界条件の影響の検討
助教授 大島 まり[代表者],大学院学生 坂井 洋志
血流シミュレーションにおいてはCT画像から3Dデータを構築することで実画像に基づくシミュレーション(IBS:Image-Based Simulation)が広く行われている.だが,脳内の血管の様に形状が複雑で骨と血管が入組んだ部位においては,広範囲の血管の抽出作業は容易ではない.また限られた計算資源や計算時間考慮すると,実用的な面から,特定の血管の抽出を行い数値解析することが望ましい. 一方,脳動脈を対象とした血流シミュレーションにおける流入条件は,MRIや超音波ドップラー計測から得られる流量の値を,流入断面に垂直な速度プロファイルとして与える.また,流出条件は臨床的な値の計測が困難なことから,大気開放的に圧力0の境界条件を課すことが多い. しかし,脳動脈瘤の約20%がその分岐部に発生する中大脳動脈は,その前部に特徴的な屈曲を持つ内頚動脈が存在するため,流入する流体は内頚動脈の屈曲に起因する発達した2次方向速度成分を含むことが考えられる.また,分岐血管を対象とした血流シミュレーションにおいて,出口境界条件が計算結果に与える影響が報告されている.以上から,本研究では中大脳動脈の流入条件と流出条件のモデリングを行い,血流シミュレーションに境界条件が与える影響を検証した.

溶融塩中で酸化物を還元してチタンを製造する方法
助教授 岡部 徹[代表者],博士研究員 朴 日, 大学院学生 安孫子 貴
電気化学的な手法を用い,溶融塩中で酸化チタンを直接還元して金属チタンを製造する基礎実験を行っている.具体的には原料のTiO2を焼結し電極として成形後,カソード(陰極)として溶融CaCl2中に浸漬し,金属還元剤(Ca)が放出する電子により酸化物原料を還元し金属チタンを直接製造する方法(EMR)について検討している.チタンの鉱石は酸化物として産出するため,本プロセスが確立されれば原料の製造工程が簡略化され,プロセスが連続化できる利点があり,チタンの新製錬法として発展する可能性があるが,実際には得られるチタンの純度や溶融塩の分離方法の確立等,解決しなくてはならない点が多い.

原料成形体の金属熱還元によるレアメタル粉末の製造
助教授 岡部 徹[代表者], 助教授 光田 好孝, 教授 前田 正史,工学院大学教授 小野 幸子, 株式会社CBMMアジア 研究開発部長 今葷倍 正名, 大学院学生 岩田 周祐, 研究実習生 小田 尚, 佐藤 尚人
原料を含む成形体(プリフォーム)をあらかじめ作製し,これを還元剤の蒸気で還元することにより,均一な粉末を効率よく製造する新しいプロセスについて検討している.このプロセスは原料成形体と反応容器との接触部位を限定し,還元剤の蒸気を用いる還元手法であるため,反応容器や還元剤からの汚染を効果的に防止できる.また,この方法は,還元プロセスの(半)連続化・大型化が容易に達成できるので,次世代のレアメタルの粉末製造法として発展する可能性がある.このプリフォーム還元法(PRP)を用いてチタン,ニオブ,タンタル,ニオブ粉末の製造を試みた結果,還元時の熱処理条件や原料成形体に加えるフラックスを変化させることにより,均一で高純度の金属粉末を製造できることが明らかとなった.さらに,フラックスの種類や量を変化させることにより得られる金属粒子の粒径を制御できることがわかった.

電子材料スクラップからのレアメタルの回収
助教授 岡部 徹[代表者],大学院学生 峯田 邦生
希土類金属,タンタル,ニオブ,チタンなどのレアメタル金属は,磁石や電子材料用素材としてその需要が急速に増大している. 一例を挙げると,IT革命により高性能コンデンサであるタンタルコンデンサは需要が急増し,タンタル素材の価格は急騰する事態にも直面した.このような背景からタンタルコンデンサのスクラップからタンタルを効率良く分離・回収する新しいプロセスの開発を行っている.また,タンタルに限らず各種有価レアメタルの環境調和型リサイクルプロセスの設計と反応解析を行っている.

グローバルな水の間接消費(Virtual Water)の解明
助教授 沖 大幹[代表者],大学院学生 佐藤未希,大学院学生 河村愛
穀物生産や畜産,工業製品の生産には水資源が大量に消費される.それを輸入して日本国内で消費するということは,仮想的な水を輸入し間接的に他国の水資源を消費していることと同じである.この実態を解明するため,灌漑プロセスに基づく農業生産における水消費原単位推定,その結果を利用しつつ配合飼料等の割合を考慮して作製した畜産における水消費原単位,そして,工業統計に基づく工業用水の出荷額あたりの水消費原単位を定め,穀物,食肉,工業製品の主要品目について,もし日本において生産したとするならばどの程度の水資源が必要であったか,という間接消費の流れを抑えた.さらに今年度は,昨年度までと比較して,プロセスに立ち戻ることによって算定手法の精度の向上を行い,一つの確定した水の間接消費原単位データセットを構築した.続いて,世界各国における輸出入量,反収,生産量などのデータセットを基に,農業生産物のみが対象ではあるが,世界のVirtual Waterの国際フラックスと,その数十年間の経年変動を算定した.

地球温暖化等気候変動下における水循環の変動
助教授 沖 大幹[代表者],大学院学生 平林由希子,大学院学生 樫田爽,大学院学生 山田朋人, 助教授 鼎 信次郎
最新の温暖化予測結果によると,地球温暖化により水循環が強化されて,現在降水量の多いところでは降水強度も増えるのではないか,と懸念されている.また一方で,大洪水の増加,半乾燥地帯での渇水期間の延長なども危惧されている.本研究では,日本における明治時代からの長期時間降水量データをマイクロフィルムからデジタル化し,長期トレンドや各種の振動を検討した.わずかながら温暖化あるいは都市化と推測され得なくもない傾向が見られたものの,同時に,より顕著なものとして1930年代から40年代と最近との二つの顕著なピークが見出され,その原因を求めるために,海面水温変動から太陽活動変化まで様々な要因に関して分析を行っている.この観測データ分析は地球温暖化シミュレーションの結果と比較する予定である.また洪水・渇水の変化の予測のために,1900年から2100年までの統一した形式での河川流量推定へのチャレンジを開始した.そのためには,気候モデルシミュレーション結果とグローバル観測データセットとの高度複合利用が必要となるが,本年度はデータ収集,データ翻訳とシステム作成を精力的に進めた.

グローバルな水資源アセスメント
助教授 沖 大幹[代表者],地球環境システム工学研究グループ, 教授 虫明 功臣,博士研究員 安形康,博士研究員 宮崎真,大学院学生 Chayanis Manusthiparom,大学院学生 Asif Aslam,大学院学生 花崎直太,大学院学生 柳沢宏之,大学院学生 須賀可人, 助教授 鼎 信次郎
世界の水危機が叫ばれているが,現在巷間に溢れている情報はほとんど欧米発信である.これに対し,日本独自のグローバルな水資源アセスメントをきちんと行なって世界に発信するべく研究を進めている.これまでは自然系のグローバルな河川流量シミュレーションのみが主流であったが,そこに人間活動の影響,特に貯水池操作の影響を入れた地球陸域水循環シミュレーションを行った.一方で,水需要の変動,特にこれから近い将来アジアを中心として深刻になると想定される都市用水の需要(利用)予測が可能となる様に世界の国別統計値,都市別統計値(日本,米国,中国)の分析を進めた.世界規模での灌漑用水需要のモデル化も進めているが,少々手法を変えても必ずインド付近の過剰推定が問題となることが分かりつつある.さらに,グローバル推定の検証として,タイやパキスタンといった地域レベルでの詳細な水資源アセスメント検証を進めており,今年度は,これまで世界的にもほとんど未検証の領域であったパキスタンの地域的な現地水関連データを大量に取得することに成功し,データベース化に着手した.

水の安定同位体比を用いた水循環過程の解明
助教授 沖 大幹[代表者],技術官 小池雅洋,大学院学生 芳村圭
水の安定同位体比には,海水面から蒸発して地球を循環するその水の経路と履歴の積分情報が含まれているとされてきた.本研究では,タイでサンプリングされた雨水ならびに流水の安定同位体比を精密に計測し,そのデータベースを構築中である.これら計測の途上で行われた世界コンテストでは,酸素同位体測定精度が世界5位という高成績を修めた.また全球規模気象解析値上にレイリー型同位体循環モデルをカップルした同位体循環モデルを世界で初めて開発し,これによって地球規模で,かつ日日の変動までを含んだ,水の安定同位体比の世界分布を算定しVisualizeすることに成功した.

プロペラファンから発生する空力騒音の数値シミュレーション(継続)
助教授 加藤 千幸[代表者], 教授 吉識 晴夫,大学院学生 藤井亮輔
プロペラファンは, コンピュータの冷却ファン, エアコンの室内・室外機, ビルなどの換気用ファンに多用されているものであり, 快適なオフィス・居住環境を維持するためにはプロペラファンから発生する空力騒音を出来る限り小さく押さえる必要がある. 本研究は, このプロペラファンから発生する空力騒音の数値的予測手法を開発し, さらに, 低騒音ファンの設計指針を確立することを最終的な目的として,民間企業と共同で行っているものである.今年度は,ファン騒音の低減を目指して研究を進めている.

流体騒音の発生機構の解明とその制御に関する研究(継続)
助教授 加藤 千幸[代表者], 教授 吉識 晴夫,技術官 鈴木常夫,大学院学生 鈴木康方,研究実習生 小久保あゆみ
流体機械の小型高速化や鉄道車両の高速化に伴い,流れから発生する騒音,即ち,流体騒音の問題が顕在化しつつあり,その予測や低減が大きな課題となりつつある.本研究では,翼周りの流れなどを対象として,流れと騒音の同時詳細計測により,流体騒音の発生機構を解明し,得られた知見に基づいて,騒音制御・低減方法を開発することを最終的な目標として進めている.本年度は,翼周りの音源をLDVにより計測した.

自動車用ドアミラーから発生する空力騒音の研究(継続)
助教授 加藤 千幸[代表者], 教授 吉識 晴夫,技術官 鈴木常夫,研究実習生 関俊一
運転者や同乗者に快適な車室内環境を実現するためには,その騒音レベルを出来るだけ低く抑えることが重要である.特に,近年エンジンやトランス・ミッションなどの駆動系騒音が低減されたことに伴い,ドアミラーやフェンダーから発生する空力騒音の低減が益々重要となっている.本研究では,ドアミラーから発生する空力騒音の発生機構の解明とそれに基づく騒音・空力設計手法の開発とを目的とした,民間企業と共同で実施しているものである.今年度は,共鳴音などの異音が発生する原因をほぼ解明した.

単独翼周りの非定常流れのLES解析(継続)
助教授 加藤 千幸[代表者], 教授 吉識 晴夫, 助手 西村 勝彦,大学院学生 宮澤真史
LES(Large Eddy Simulation)は,乱流の非定常な変動を計算可能な次世代の乱流解析手法としてその実用化が期待されているものであり,比較的レイノルズ数が低い,大規模にはく離する流れに対しては,既に実用計算に使用されつつあるが,翼周りの流れへの適用に関しては未解決の問題が多く,LES実用化の大きな課題となっている.本研究では,複合格子を利用することにより,翼周りの乱流境界層の高精度なLES解析が可能であることを示した.

圧縮性遷移翼列流れのLES解析
助教授 加藤 千幸[代表者], 教授 吉識 晴夫,大学院学生 松浦一雄
低圧タービンや小型タービンにおいては流れのレイノルズ数が10の3乗から5乗のオーダーとなり,翼面周りの境界層は遷移領域となる.このような流れに対してはその予測手法が確立されておらず,これらの機械の性能向上を図る上で大きな課題となっている.そこで,本研究では圧縮性遷移翼列流れの高精度な予測を目指して,Large Eddy Simulation (LES)による解析コードの開発に着手した.

シェルと立体構造物に関する研究
助教授 川口 健一[代表者], 助手 宮崎 明美,技術官(東大)大矢俊治, 受託研究員 吉中進, 川口研 大学院生 李炯勲, 川口研 大学院生 手島嘉隆, 川口研 大学院生 藤原啓晴
シェル構造及び立体空間構造を対象として継続的に研究を行っている.今年度は(1)プレキャストポストテンション型シェルモデルの実大モデルの設計と施工,テンション導入実験,(2)ケーブルドーム構造の変位応力制御解析法の開発と張力導入モデル実験(3)生研六本木庁舎屋上ドームを用いた張力安定トラスドーム構造の実大載荷実験結果の解析(4)実大空気膜ドームの施工実験を行った.

大空間構造物の波動伝播特性に関する研究
助教授 川口 健一[代表者], 助手 宮崎 明美,川口研 大学院学生 劉鵬
大スパン構造物は広大な広がりを持つ構造であり,そのスパンが大きくなるほど,地震や風,飛来物などによる衝撃荷重などに対する挙動として,波動伝播特性が無視できなくなってくる.また,テロなどによる爆破攻撃などの衝撃荷重時における大スパン構造物の挙動については不明な点が多い.本研究では,実験的手法と数値解析的手法の両面から,大空間構造物の波動伝播特性に関する研究を行っている.本年は,生研六本木庁舎屋上のドーム構造を用いて実大構造物の波動伝播実験を実施し,その結果を解析評価した.

大スパン構造物の振動制御に関する研究
助教授 川口 健一[代表者],受託研究員 吉中進
大スパン構造物は屋根構造だけでなく,近年は広大なオフィスフロアなどでも頻繁に用いられるようになり,屋根構造の地震時や大風時の振動制御や,オフィスフロアの環境振動など,面外方向の振動の制御が必要となってきている.本研究では,大スパン構造物の振動制御をその振動モードに着目して従来の方式以上効果的な振動制御方法を開発することを目的としている.本年度は,多重型及びマルチ型TMDの過去の研究調査を行った.

軽量大空間構造システムの開発
助教授 川口 健一[代表者], 助手 宮崎 明美,川口研 大学院生 呂振宇, 川口研 大学院生 田村淳一, 川口研 大学院生 鈴木悠介, UROP学部学生 近江屋一朗,技術官 大矢俊治
無柱大空間建築構造は現在約200m級のものが技術的に可能であり,300m級のものも設計されるようになりつつある.しかし,さらに大きな大空間建築を目指すには自重の軽量化以外にも技術的な飛躍が必要となってくると考えられる.本研究では,大空間建築の新たな付加価値も含め,従来の構造システムの検証,新しい大空間構造システムの開発を継続的に行っている.本年度は,軽量張力型空間構造である,テンセグリティ構造の解析手法の開発,実大モデルの構造解析,構造設計さらに実大実験,実構造物の観測を行なった.更に,六本木庁舎屋上ドームを用いたパーツ補剛によるハイブリッド構造の実大載荷実験の結果の解析,実大空気膜ドームの施工実験を行った.

スマート材料の空間構造物への応用に関する研究
助教授 川口 健一[代表者],技術官 大矢俊治, 川口研 大学院生 小林充
スマート材料とは種々の機能を持った材料の総称である.近年,種々のスマート材料が提案されており,これらを建築構造物へ応用する試みが各地でなされている.本研究では,スマート材料の大空間構造システムへの応用に関する調査を行い,実際にその新しい可能性を研究する.本年度は昨年度より継続している,PVDF材料(圧電ポリマー)を膜材の歪センサーとして利用する方法について,実験的手法により調査し,実大膜構造の観測を行った.

空間構造の形態形成の数理解析
助教授 川口 健一[代表者],川口研 大学院生 藤原啓晴, 田村淳一
空間構造において,形態が形成される,あるいは,決定される過程(形態形成過程)を数理解析の立場から調査している.本年度は,従来数値不安定性により困難であった空気膜構造(インフレータブル構造)の解析手法にブレークスルーを作ることを目指し,分子数を制御した空気膜構造のインフレート解析手法の開発を行なった.さらに,ケーブルドーム構造の形態応力制御を目標として線形逆解析手法を用いた解析,及び簡単な実験を行った.

大スパン構造物の災害時性能に関する研究
助教授 川口 健一[代表者],受託研究員 吉中進 川口研 大学院生 藤原啓晴
多数の人命を収容する大スパン建築構造物の災害時における挙動の検討に対しては,必ずしも一般化した設計思想は無い.本研究では,建築基準法の予想を越えた外乱による構造挙動,及びその結果生じる災害や内部空間の状況について調査研究している.本年度は,韓国における100m級ケーブルドームの積雪による事故の解析を行った.また,大スパン構造の制振手法の開発を目的として有限要素法汎用コードによる数値解析,MTMDを用いた制振装置の可能性調査を行った.

開閉式屋根構造システムに関する研究
助教授 川口 健一[代表者],UROP学部学生 三宅博行 所外協力者 頴原正美
課題概要:開閉式屋根構造の発想は古来よりあるが,実際の応用技術は余り洗練されていない.本研究では,従来の剛な屋根構造に切断を設ける方法から離れ,構造的な合理性を保ったまま開閉の行える屋根構造システム開発のための基礎的な研究を行っている.本年度はエキスパンドメタルの概念を利用したポーラス構造物の調査と展開骨組の概念を用いた開閉式屋根モデルの製作を行った.

構造物の畳み込み・展開に関する研究
助教授 川口 健一[代表者],川口研 大学院学生 永井彰
構造物を平面や点に畳み込む,あるいは,畳み込まれた構造物を展開して広がりのある構造物を築くという手法は建物の合理的な建設解体工法,展開・可変型構造物への適用等様々な応用が考えられる.本研究では,(1)骨組み構造の畳み込み経路における分岐経路の考察,(2)骨組み構造物の最適畳み込み経路のモデル実験と解析との比較,(3)膜構造の畳み込み解析法の基礎的研究,(4)展開型接合部の開発等を実施している.本年度は特に,(4)展開型骨組の更なる可変性の開発とその解析,及び(2)折り紙の概念を拡張した展開型立体構造,エバラテトラの追調査(3)展開骨組の概念を用いた開閉式屋根モデルの製作を行った.

立体構造システムを利用した振動制御方法の開発
助教授 川口 健一[代表者], 助手 宮崎 明美,技術官 大矢俊治,川口研 大学院生 田村淳一
地震を対象とした振動制御方法は,免震,耐震,制震の3つに大別できる.本研究では,構造システムの3次元的な動きや立体構造システムの利点を生かした振動制御システムの開発を行う.本年は,住宅等の軽量な構造体の為の免震装置として「ハイブリッド・ロッキングカラム装置」の提案と実験及び実験結果の解析を行った.

砂礫の変形・強度特性の研究(継続)
助教授 古関 潤一[代表者],研究担当 龍岡 文夫・助手 佐藤 剛司・博士研究員 Le Quang Anh Dan・大学院学生 Sajjad Maqbool・大学院学生 橋口智子
砂礫の平面ひずみ圧縮強度に及ぼす締固め密度と中間主応力の制御精度の影響を明らかにした.また,砂を用いた小型の供試体で弾性波速度を精度よく測定する手法について検討し,得られた弾性波速度を微小ひずみレベルの繰返し載荷で求めた弾性的な変形特性と比較した.

中空ねじり三軸試験による砂質土のせん断挙動の研究(継続)
助教授 古関 潤一[代表者],助手 佐藤 剛司・大学院学生 Nguyen Hong Nam
微小ひずみレベルにおける地盤材料の弾性的変形特性をその初期異方性と応力状態依存性を考慮してモデル化し,中型の中空円筒供試体を用いた豊浦砂のねじり三軸試験で得られたヤング率とせん断剛性率およびポアソン比の特性が再現できることを明らかにした.

自然堆積軟岩及びセメント改良土の変形・強度特性の研究(継続)
助教授 古関 潤一[代表者],研究担当 龍岡 文夫・助手 佐藤 剛司・大学院学生 Regina Salas
セメント改良した砂質土の平面ひずみ繰返し圧縮試験を行い,供試体側面で計測した変形画像の分析により局所的なひずみ分布を求めた.その結果,繰返し載荷中にひずみの局所化が進行する場合があることを明らかにした.

擁壁・土構造物の地震時安定性に関する研究(継続)
助教授 古関 潤一[代表者],研究担当 龍岡 文夫・助手 佐藤 剛司・大学院学生 加藤範久
背面地盤へのすべり面の発生の前後で特性が変化することを考慮しながら擁壁と補強土擁壁の地震時残留変位を水平滑動成分と回転成分に分けて評価する手法を開発し,それぞれの成分が卓越して生じるような条件に設定した各2ケースの模型振動実験結果を良好に再現できることを明らかにした.

光による分子操作と分子配向素過程の研究
助教授 酒井 啓司[代表者], 助手 坂本 直人, 助手 美谷 周二朗,大学院学生 堀井和由,大学院学生 平野太一
異方形状分子からなる液体について,レーザー光を用いた分子配向制御を試みている.熱平衡状態ではランダムに配向する分子の集団に偏光制御されたレーザーを導入して分子配向秩序をもたらし,その秩序の程度を複屈折計測により定量評価する.本年度は色素の添加による光吸収の増加が,分子配向ダイナミクスと結合するメカニズムを調べるため,色素添加された液晶系について偏光変調による動的光カー効果スペクトルの測定を行った.その結果,これまで知られていなかった光吸収系における液晶等方相−配向相間転移の動的臨界挙動を明らかにすることができた.また光を用いた生体膜構造の非接触マニピュレーション手法の開発に着手した.

液体表・界面構造と動的分子物性
助教授 酒井 啓司[代表者], 助手 坂本 直人, 助手 美谷 周二朗,大学院学生 山口英,大学院学生 吉武裕美子
液体表面や液液界面など異なる相が接する境界領域での,特異的な分子集合体の構造や現象に関する研究を行っている.本年度は液面光マニピュレーション法を用いた微小領域界面の物性測定手法を開発した.屈折率の異なる媒質間にレーザーを伝搬させると屈折率の小さいほうに向かって放射圧が働き界面が局所的な変形を受ける.このとき液面の変形量が表面張力や粘性と相関を持つために非接触かつ高精度で界面の物性と構造を測定することができる.これを毛管端面に形成された液面の共鳴振動モードの観察に応用すると,微小領域の表面張力を1/1000の精度で測定することが可能となる.またこの方法を高粘性液体表面に適用することにより,1cp〜100,000cpという広いダイナミックレンジにおいてms程度の高時間分解能で粘性測定を行うことに成功した.

液体表面における新しい分子物性計測手法の開発
助教授 酒井 啓司[代表者], 助手 美谷 周二朗,大学院学生 本多浩大
液体表面の力学的物性,特に分子吸着に伴う表面エネルギーと表面粘弾性の動的変化を調べる新しい手法の開発を行っている.本年度は表面変位の熱ゆらぎを光散乱により測定する「リプロン光散乱システム」において,ゆらぎの信号を実時間で捕らえ,それを逐一相関処理することによってmsの時間分解能でリプロンスペクトルを測定するシステムを開発した.これにより,溶質分子が表面に吸着・脱離する動的過程を高時間分解能で捉えることが可能となった.現在,このシステムを用いて界面活性剤溶液における表面緩和スペクトルの測定を行っている.

多自由度が競合する複雑流体における分子緩和現象の研究
助教授 酒井 啓司[代表者],学術研究支援員 細田真妃子,大学院学生 堀井和由,大学院学生 平野太一
流れ場に加えて濃度場や分子配向,温度勾配などの自由度が相互にカップルする複雑流体においては,各自由度の緩和過程が他の自由度からの影響を受けて特異なスペクトルを示すことが知られている.この緩和ダイナミクスを精密に観察することにより,各自由度間の結合の起源を分子レベルで明らかにする試みを行っている.本年度は,流体表面を伝搬するさざ波が,直下の媒質のずり流動を介して分子配向と結合する様子を可視化して調べるシステムを開発した.これにより液晶,異方形状ミセルや生体膜形における配向秩序形成過程の研究を行った.また異方形状分子からなる流体について,分子回転と並進運動との結合を表す輸送係数を,光散乱法を用いて定量評価する試みに着手した.

ミクロ不均一系の構造とダイナミクスの研究
助教授 酒井 啓司[代表者], 助手 美谷 周二朗
コヒーレント後方散乱や拡散光波スペクトロスコピー,超音波複屈折法など,ミクロな不均一系の構造とダイナミクスを調べるための新しい光散乱法の開発,およびこれを用いたエマルジョン,コロイド分散系などの不透明な系の研究を行っている.本年度は,溶媒中に分散している楕円球状コロイド粒子が特異な配向緩和現象を示すことを超音波複屈折スペクトロスコピー法によって見出した.現在この現象を粒子の回転と周囲の流れ場の相互作用を考慮して定量的に説明することを試みている.また光ピックアップ法を用いて,水/界面活性剤/油が形成するマイクロエマルジョン系の界面測定を行い,温度と共に界面エネルギーが消滅する界面臨界現象の観察に成功した.

2次元凝集体の相転移と臨界現象の研究
助教授 酒井 啓司[代表者], 助手 坂本 直人
界面活性剤分子や液晶性分子が液体表面に形成する薄膜は,環境に応じて相転移を起こす.この相転移について,レーザー光による非接触・非破壊観察を行うとともに,薄膜を2次元流体とみなすモデルによる説明を試みている.観察にはリプロン光散乱法とリフレクトメトリを用いている.前者は熱励起表面張力波による光散乱現象を利用して液体表面の動的物性を測定するものであり,薄膜の局所的表面弾性率の測定に利用できる.後者は液体のブリュースター角近傍で入射された光の反射率を測定するものであり,薄膜の厚みに関する情報を得ることができる.ある種の薄膜は,密度を変化させると分子形状変化を伴う相転移を起こすといわれている.そのような相転移であっても2次元流体モデルが適用できるか,また,分子形状変化が薄膜の厚みにどう影響するかについて調べている.

鉄骨系架構により補強された鉄筋コンクリート造骨組のねじれ応答性状に関する研究(継続)
助教授 中埜 良昭[代表者], 助手 真田 靖士,技術官 山内成人,中埜研 大学院学生 藤井賢志,中埜研 大学院学生 上田芳郎
本研究では, 昨年度に引き続き鉄骨系架構により耐震補強された鉄筋コンクリート造骨組を対象に, その捩れ応答性状に着目して次のような検討を行った. 1. 縮小立体試験体の振動台による動的実験の予備解析として, 過去に実施した静加力実験に基いてモデル化したフレームを対象に,耐力低下域までを考慮した非線形解析を行った. 本解析結果に基づき振動台実験の入力計画を検討, 決定した. 2. 偏心を有する建物の実用的な非線形応答評価法として, とくに多層一軸偏心建物の等価1自由度系による非線形応答評価法を提案した. 併せて, 詳細なモデルによる解析結果と比較することにより本手法の妥当性を確認した.

サブストラクチャ・オンライン地震応答実験の精度向上に関する研究(継続)
助教授 中埜 良昭[代表者], 助手 真田 靖士,技術官 山内成人,中埜研 大学院学生 楊元稙
サブストラクチャ・オンライン地震応答実験(SOT)法は構造物全体の応答性状を直接実験的に評価することが困難な構造物に対して極めて有効な実験手法の一つである. 本手法では解析部分の部材に対し既存の数式モデルを設定するのが通例であるが, この場合SOT法の最大のメリット, 即ち履歴特性をモデル化することなく, 動的挙動を直接的にシミュレートできるという利点を最大限には生かせない. しかしながら, もし解析部分で用いる履歴特性を実験から得られる特性に基づき推定することが可能となれば, SOT法のメリットを最大限に生かすことができる. 本年度はニューラルネットワークを応用したSOT法の開発実験の予備解析として, 数式モデルの地震応答をニューラルネットワークにより推定することにより, 本実験手法の実現可能性を確認した.

韓国の鉄筋コンクリート造建物の耐震性能に関する研究(継続)
助教授 中埜 良昭[代表者], 助手 真田 靖士,中埜研 大学院学生 崔琥
韓国における地震活動は日本と比べてさほど活発ではないため, これまで地震防災に対する意識はあまり高くはなかったが, 近年韓国においても中・小規模の地震が頻発していること, また隣国の日本では1995年阪神・淡路大震災を, 台湾では1999年台湾集集地震を経験したことなどから, 同国における既存建築物の耐震改修の重要性が強く認識されてきている. 本研究では昨年までに日本の耐震診断手法を韓国の建物に適用するにあたって生じると考えられる問題点の整理を行った. その結果,韓国の学校建物で多用されるブロック造壁の耐震性能の評価方法に関する問題が明らかとなった. そこで, 本年度はブロック造壁が設置された鉄筋コンクリート造骨組について, 地震時の耐力, 変形性能をはじめとする耐震性能を正しく評価する手法について検討するため, ブロック造壁の有無, スタブの有無, 鉛直軸力, 開口部の有無及び載荷パタンなどをパラメータとする正負繰返し静加力実験を計画した.

隣接建物の衝突および連結が建物の応答性状に与える影響に関する研究(継続)
助教授 中埜 良昭[代表者], 助手 真田 靖士
過去の地震における構造物被害の要因の一つとして, 隣接建物間の衝突が報告されている. その解決策として, 慣用的にしばしば近接建物同士を連結する手法が用いられるが, 建物の衝突がその応答性状に与える影響, 建物の連結による耐震性能改善効果, 連結部の具体的な設計手法については必ずしも明確ではないのが実状である. そこで, 本研究では建物の衝突, 連結がその応答性状に与える影響を解明することを目的として, 解析的, 理論的な検討を行っている.

高靭性繊維補強セメント系複合材料を用いた簡易震動実験手法の開発研究(新規)
助教授 中埜 良昭[代表者], 助手 真田 靖士,技術官 山内成人,中埜研 大学院学生 徳井紀子,東京大学地震研究所 境有紀,独立行政法人建築研究所 福山洋,国土交通省国土技術政策総合研究所 諏訪田晴彦
本研究は, 鉄筋コンクリート造建築構造物の模型震動実験に伴う試験体製作の労力と経費を大幅に節減できる簡易震動実験手法の開発を目的とする実験研究である. 具体的には, 1.鉄筋コンクリート部材の曲げ復元力特性を高靭性繊維補強セメント系複合材料と主筋のみで模擬する超小型試験体(30×30×180o)の作製方法を開発するとともに, 2.超小型試験体が鉄筋コンクリート部材を模擬できることを確認するための震動実験を実施し, 本手法の妥当性の検証を行っている.

弱小モデルによる地震応答解析(継続)
助教授 中埜 良昭[代表者], 助手 真田 靖士,技術官 山内成人
小さな地震でも損傷が生じるように, 通常の建物より意図的に弱く設計された縮尺率1/4程度の鉄筋コンクリート造5階建て建物2体(柱崩壊型モデル, 梁崩壊型モデル)を千葉実験所に設置し, 地震応答観測を行っている. 1983年8月の観測開始以来, 千葉県東方沖地震をはじめ, 200以上の地震動に対する建物の応答を観測することができた. 本年度は観測システムの内, PCによるデータベースシステムの改良, 更新を行った. また, これらの蓄積された観測結果の分析・解析を行うとともに, ニューラルネットワークを利用した履歴推定手法の教師データとして利用している.

耐震壁を有する鉄筋コンクリート造ピロティ建物の応答性状に関する研究(継続)
助教授 中埜 良昭[代表者], 助手 真田 靖士
鉄筋コンクリート造ピロティ建物の合理的な耐震設計法を提案することを目的として, 実験的, 解析的, 理論的なアプローチから一連の研究を実施している. 本研究では, とくに1階に耐震壁を有するピロティ建物(1階の耐震壁が局部的に取り除かれた耐震壁フレーム構造)を対象に, 部材を構成する材料の復元力特性に基づく解析モデルを用いたフレーム解析を通じて, その応答性状の把握, 設計手法の構築を行っている. 本年度は昨年度までの研究成果に基づき, 耐震壁の曲げ降伏後のせん断軟化性状を考慮して, 本構造の終局限界性能を評価する手法を提案し, 精緻なフレーム解析結果と比較することによりその妥当性を検証した.

空間の生成プロセスに関する研究(継続)
助教授 曲渕 英邦[代表者], 教授 藤井 明,助手・特別研究員 郷田桃代, 助手 今井公太郎,大学院学生Erez Golani・張希実子・東辻賢治郎・任貞姫・有山宙
建築・都市空間を構築するための設計プロセスの研究は,その基礎論としての空間の生成プロセスを把握することが肝要である.本年度は,都市空間において人々がリアルタイムの情報を発信,受信することで,コミュニティが形成されるプロセスに着眼した.GPS(グローバルポジショニングシステム)の機能を搭載した携帯電話を利用して,個人から送信されてくる空間情報をリアルタイムで配信するシステムを開発し,これを実験的に稼働して,都市空間ぬおける「モバイル・コミュニティ」の形成過程を分析した.

文化としての空間モデルの計画的研究(継続)
助教授 曲渕 英邦[代表者], 教授 藤井 明,助手・特別研究員 郷田桃代, 助手 今井公太郎, 大学院学生 鍋島憲司・松岡聡・佐々木一晋・成瀬友梨・宮崎慎也
建築・都市空間は時代精神や場所性に根ざす文化の表現であり,21世紀に向けて新たな空間モデルを提案することは,今日の重要な計画的課題であるといえる.数年にわたり,「高温多湿気候に適応する環境負荷低減型高密度居住区モデルの開発」という課題を設定し,建物内部に十分なヴォイドを確保した「ポーラス型居住区モデル」の提案を行ってきた.これまでに,対象敷地として東京とベトナム・ハノイを想定した2つの具体的なモデルを作成している.ハノイモデルは,ハノイ建設大学との共同研究として位置付けられ,ハノイ旧市街地の伝統的な街並み保存を考慮しつつ,環境負荷低減型の高密度住居を実現する方法を求めるものである.本年度は,このハノイ実験住宅の基本・実施設計を行い,ハノイ建設大学内の敷地内に着工,2003年3月末に完成する予定である.

都市空間構成の形態学的研究(継続)
助教授 曲渕 英邦[代表者], 教授 藤井 明,助手 今井公太郎, 大学院学生 Adriana Shima Iwamizu・河合麦・松田聡平・松村永宣
本研究は都市空間を構成する形態的要素に着目し,その空間的特性を記述する手法の開発を行うものである.本年度は,都市空間の中で,建物や構築物などの物体が様々な角度から観察される際の変化に着目して,形態解析を行った.具体的には,はじめに単純な立体図形を取り上げ,様々な角度から2次元平面に投象し,その投象図の面積変化を把握する手法を考案した.次いで,都市に存在するより複雑な立体図形の事例に適用して,その手法の有効性を検証した.

都市空間の計画学的研究(継続)
助教授 曲渕 英邦[代表者], 教授 藤井 明,助手(特別研究員)郷田桃代・大学院学生 鳥居斎・藤川正憲・李東勲・Dietrich Bollmann
本研究は都市空間の形成に関与すると考えられる「物理的な環境」と「活動の主体としての人間」について,計画学的な立場から,個別の分析を行うと同時に両者の統合を目指すものである.本年度は,長崎県佐世保市の都市計画を事例として,都市計画学的な観点からは,マイナス面が強調されがちな米軍・自衛隊の施設所在に着目し,その所在がもたらす影響の評価を行った.

ネットワーク経済政策
助教授 松村 寛一郎
人間活動の影響が大きくなるにつれて,環境問題と経済問題を融合させた仕組みをつくることが求められている.地球温暖化が,各国の経済発展政策に影響を与えている.一方,研究者の世界よりひろがったインターネットは,商用利用が認められたことにより,爆発的な普及を見せている.様々な利用の方法が,日夜実践されている.例えば,世界食料農業機関(FAO)は,世界各国から収集された衛星データ,経済データ等をウエッブ上に公開し,そのデータを提供するだけでなく,特にアフリカ諸国における食料供給の早期警戒システムが構築し,米国の農務省と連携して,アフリカ諸国における飢餓を未然に防ぐ仕組みつくりを行っている.同様の仕組みが,経済発展が特に著しく,世界人口の40%以上を占める中国・インドにおいて,構築することが求められている.一昔前では,夢物語に過ぎなかった仕組みを,構築することが可能な時代が到来した.経済のグローバル化による市場経済の浸透,世界レベルの行過ぎた自由主義経済の弊害,環境・資源リスクを考え,各国が協調して経済活動(人間活動)を誘導することが求められている.人間活動と環境変動の相互作用メカニズムを解明し,経済政策へ反映させるための手法を構築するために必要ことの研究を遂行している.

電子商取引
助教授 松村 寛一郎
銀行のオンラインや,航空機のチケットの予約システムといったものも,電子商取引であるといえる.しかし,これらの取引を使いこなすためには,銀行や代理店など,その取引を行っているところまで,"わざわざ"出かけていく必要があった.パソコン,携帯端末の普及により,電子商取引に,個人が直接,参加できるようになった.その結果,利便性以上に,個人情報の漏洩等,様々な問題が,今後,深刻化してくることが予想される.本講義は,電子商取引を実践している様々な企業の成功事例,失敗事例を紹介しながら,期待される21世紀の電子商取引像について,焦点をあてるものである.

サイバー経済
助教授 松村 寛一郎
世界は,24時間,休みなく経済活動が行われている.米国の軍事気象衛星による夜間地球表面画像は,暗黒の宇宙に浮かび上がる人間活動の影響を捉えている.ネットワーク・情報機器の普及により,国境を超えた経済活動が活発化している.その実態は,表面上は見えないかもしれないが,視点を変えることにより,その活動状況を把握することが可能になるかもしれない.人工衛星技術の発達により,今までとは,まったく違った観点から,人間活動の影響を評価することが可能になったように,従来型の枠組みとはちがった手法を用いて,サイバー経済というものを捉え,それに対して,適切に対応していくための,方法を確立していくための,手法について,情報を提供することを研究の目的としている.

都市ライフライン・交通システムの早期地震被害推定と影響波及
助教授 山崎 文雄[代表者], 特別研究員 小檜山 雅之,山崎研 大学院学生 丸山喜久
地震による都市ガス供給網の二次災害防止のため,大規模な地震動モニタリング基づく早期被害推定システムの開発と,緊急対応の方法について研究を行っている.今年度は,その要素技術である被害評価のために,数値シミュレーションにより被害と相関の高い地震動指標についての検討を行った.また,高速道路網などの交通システムに関しても,地震計ネットワークからの情報を用いて被害推定を行う研究を行っている.今年度は,高速道路網における地震計設置位置の地震動評価を地震動記録と常時微動観測に基づいて評価した.

地理情報システムを利用した都市災害機構の分析
助教授 山崎 文雄[代表者], 特別研究員 小檜山 雅之,研究員 若松加寿江 協力研究員(筑波大学)村尾修 山崎研 大学院学生 石原裕紀
地理情報システム(GIS)を用いて,地域住民や防災関係者が具体的な地震被害イメージを持てるような微視的な地域情報データベースの構築,地盤ゾーニングと地震動強度の推定,さらに建物地震被害の予測など,総合的な地域地震被害想定システムの構築に取り組んでいる.また,東京の住宅地を対象に,建物の耐震性を簡易的に評価し,地震保険料率の細分化に役立てるための研究を行っている.その一環として,姫路市で実施された木造建物に対する耐震診断データを収集し,この結果と横浜市の耐震診断結果などを比較し,地域による建物耐震性の違いなどを検討している.

地震動のアレー観測と地震動記録の工学的評価
助教授 山崎 文雄[代表者], 特別研究員 小檜山 雅之,山崎研 大学院学生 Kazi Rezual Karim 山崎研 大学院学生 Gabriel Calle
千葉実験所では高密度の地震動アレー観測を17年以上継続しており,その記録をデータベース化して公開するとともに,地震動の空間変動や増幅特性に関する解析を行っている.また,防災科学技術研究所のK-NETなどにより得られた強震動記録を用いて,最大地動や応答スペクトルなどの距離減衰式の構築,地震動と地盤特性の関係の評価,地震動強さ指標と構造物の地震被害との相関についての分析などを行っている.また,駒場リサーチキャンパスに設置した地盤地震動と建物応答の観測システムにより得られた記録について,解析を行っている.

構造物-地盤系の地震観測と地震応答解析
助教授 山崎 文雄[代表者], 特別研究員 小檜山 雅之,山崎研 大学院学生 Kazi Rezual Karim 山崎研 大学院学生Gabriel Calle
構造物-地盤系の地震時挙動に関して,地震観測,常時微動観測,さらに有限要素法を用いた地震応答解析を行っている.対象とする構造物としては,千葉実験所および台湾花蓮の鉄筋コンクリート製タワー模型,東神戸大橋,駒場新営建物などがある.これらの構造物で観測された地震記録を数値解析で再現することにより,手法やモデル化の検証,および実用的解析法の提案を行っている.さらに,RC橋脚,多径間橋梁,木造家屋,RC建物などの構造物の弾塑性応答解析を行い,数値解析による被害関数の構築も行っている.

ドライビングシミュレータを用いた高速道路通行車両の地震時走行安定性に関する研究
助教授 山崎 文雄[代表者], 特別研究員 小檜山 雅之,山崎研 大学院学生 丸山喜久
高速道路の地震時通行規制基準の見直しについて研究を行っているが,構造物被害の観点のみからは,現状の基準値をかなり引上げてよいことになる.しかし実際に強い地震を体験したドライバーは,「タイヤがパンクしたと思った」「ハンドル操作が出来なくなった」などと証言しており,事故を起こす危険性が指摘される.そこで,地震の揺れが高速道路の走行安定性にどのような影響を与えるか,数値モデルにより検討している.また,駒場リサーチキャンパスに導入された6軸アクチュエータを有する本格的なドライビングシミュレータを用いて,これに地震動を加える被験者実験を行い,模擬的に地震動下での運転車の反応・挙動を調べている.

リモートセンシング技術を用いた災害把握と都市環境把握
助教授 山崎 文雄[代表者], 特別研究員 小檜山 雅之,協力研究員(EDM) 松岡昌志 山崎研 大学院学生 Miguel Estrada
人工衛星や航空機などからのリモートセンシング技術を用いて,地震などの自然災害の状況把握や建物分布などの都市環境把握に関する研究を行っている.1999年トルコ地震や2000年ペルー地震に関して,人工衛星による地震前後の光学画像を入手し,これらを比較することによって被害状況の把握が可能かどうか検討し,地上踏査による被害調査結果などとの比較を行った.その結果,Landsat衛星によって,地表面の大規模な変状は把握できることが分かった.また,更に解像度の高い衛星画像を用いて,災害危険度評価のための都市被覆・建物データ構築の可能性について研究を行っている.さらに,航空写真を用いて,自動的に建物形状や建物構造を判読する手法の開発を行っている.

計測技術開発センター

光合成反応中心の分子構築解明
教授 渡辺 正
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を基本とした生体機能分子の高感度・迅速計測手法を開発し,超高速・高効率の光→電子(化学)エネルギー変換を行う光合成反応中心の分子メカニズム解明を目指している.数年来の検討により,高等植物(ホウレンソウなど),緑藻(Chlamydomonas reinhardtii など),紅藻(Porphyridium purpureum など),ラン藻(Thermosynechococcus elongatus など)の光化学系I反応中心の一次電子ドナー(P700)がクロロフィル(Chl)a と Chl a' のヘテロ二量体であることを確認した.また,数種の緑藻では,系Iの二次電子受容体が既知のフィロキノンではなく,極性のより高いキノン類であることを見出し,その同定を行っている.

光合成電子伝達分子の分光電気化学
教授 渡辺 正
光合成器官における高効率光変換は,機能分子群の電子エネルギー準位(レドックス電位)の絶妙なチューニングにより実現されていると推定されるが,その実体は解明されているとはいえない.酸素発生型光合成器官の系I反応中心を当面の素材として,一次電子ドナー(P700)や二次電子受容体(キノン類)の in vivo レドックス電位の直接計測を目指し,薄層セルを用いる分光電気化学法で検討している.ラン藻のチラコイド膜については,電位に対するスペクトル変化の測定から,P700 の可逆レドックス電位をおよそ + 350 mV vs. SHE と見積もった.これは,従来レドックス滴定で得られた値とほぼ一致し, Chl a モノマーの電位より 400 mV 以上も負側にある.周縁タンパク質を除いたコア複合体についても同様な計測を検討している.

バクテリオロドプシンの光電気化学
教授 渡辺 正
高度好塩菌 Halobacterium salinarium における光プロトンポンプの中核をなすバクテリオロドプシン(bR)につき,分子機構解明を目指して光電気化学計測を行っている.プロトンチャネルに付随する金属イオンの役割については,金属イオンを置換したbRの光電応答を調べ,光電特性が金属イオンの種類に大きく依存することを確認した.また,LB法により電極表面を紫膜で被覆した場合,電極面に対する膜の配向によっては,典型的な微分型の光電流応答に加え,定常的な光電流も発生することを見出し,そのメカニズムについて検討している.

導電性ポリマー超薄膜を用いるバイオセンサー
教授 渡辺 正
ポリピロール(PPy)を基材とした導電性ポリマー超薄膜に酵素(HRP = horseradish peroxidase)を包括した過酸化水素センサーにつき,酵素分子の表面密度とセンサー性能の相関を解明する研究を行っている.超微量の酵素分子を,薄層セルを用いた電解重合とCBB 染色法を併用することにより定量する手法を開発した.電解重合時の通電量,電流密度,作成溶液の pH 値と,酵素の被覆密度,センサー感度との関係を一連に計測し,感度面で最適となる電解重合条件を見出した.

超純水製造用イオン交換不織布の作用メカニズム
教授 渡辺 正
アニオン交換膜とカチオン交換膜で仕切った脱塩室にイオン交換不織布を充填した超純水製造システムの動作メカニズム解明を目的に,不織布の種類と充填法などを変化させつつ,脱塩室と濃縮室の pH 変化,電流−電圧特性,イオン組成の変化,膜界面の pH 変化などを一連に計測した.計測データの総合により,イオン交換膜と不織布の界面に発生する強電場が水分子の解離を促進し,生じた水素イオンと水酸化物イオンが,ナトリウム型や塩素型となったイオン交換機を再生することを明らかにした.

音場の数値解析に関する研究 (継続)
助教授 坂本 慎一[代表者], 教授 橘 秀樹,研究員 矢野博夫,研究員 田近輝俊,協力研究員 横田考俊,橘研 大学院生 飯塚美奈,橘研 大学院生 山本航介
各種空間における音響・振動現象を対象とした数値解析手法の開発を目的として, 有限要素法, 境界要素法, 差分法等に基づく研究を進めている. 本年度は, 室内音響問題への応用として, 差分法によるホールのインパルス応答の計算手法に関する検討を行った.さらにその計算結果から室内音場の拡散性を評価する手法を提案し,各種形状の室の拡散性を評価した.また,騒音制御への応用として,掘割・半地下構造道路などにおける騒音伝搬の解析および建物連坦部における騒音伝搬特性の解析を行った.

数値シミュレーションに基づく音場の可視化・可聴化技術に関する研究(継続)
助教授 坂本 慎一[代表者], 教授 橘 秀樹,協力研究員 横田考俊,橘研 大学院生 成榮慶
建築音響・騒音制御の分野における各種音場制御手法の効果を的確に表示・把握するために,数値シミュレーションに基づく音場の可視化・可聴化技術に関する研究を行っている.今年度は,騒音制御問題に対する応用として各種形状の防音塀および掘割・半地下構造からの騒音放射を可視化し,併せて騒音制御効果に関する定量的な検討を行った.

概念情報工学研究センター

NOAA衛星画像データベースシステムの構築(継続)
教授 喜連川 優[代表者],教授 喜連川 優, 助手 根本 利弘
リモートセンシング画像等の巨大画像の蓄積には巨大なアーカイブスペースが不可欠である. 本研究では, 2テラバイトの超大容量8mmテープロボテックスならびに100テラバイトのテープロボテックスを用いた3次記憶系の構成と, それに基づく衛星画像データベースシステムの構築法に関する研究を行なっている. 本年度は, D3から9840なる新たなメディアに変更すると伴に試験的に階層記憶システムの運用を開始しその問題点を明らかにした. 又, 従来データのローディングを継続的に行った.

ファイバチャネル結合型大規模パソコンクラスタによる並列データ ベース・マイニングサーバの研究(継続)
教授 喜連川 優[代表者],教授 喜連川 優, 協力研究員 小口 正人, 大学院学生 合田 和生,大学院学生 横山 有一
100台のPentium Proマイクロプロセッサを用いたデスクトップパーソナルコンピュータをATMネットワークにより結合した大規模PCクラスタを構築した. パソコン用マイクロプロセッサの性能向上はワークステーション用RISCに匹敵するに到っており, 且つ大幅な低価格化が進んでいる. 本研究ではコモディティのみを利用した超廉価型PCクラスタを用い大規模データマイニング処理を実装し, 大きな価格性能比の向上を達成した. 本年は他のPCから未利用メモリを動的に確保する手法に関し, 手々の手法を実装しその特性を詳細に評価をすすめた.

スケーラブルアーカイバの研究(継続)
教授 喜連川 優[代表者],教授 喜連川 優, 助手 根本 利弘
現在, 大容量アーカイブシステムは, 導入時にその構成がほぼ静的に決定され,柔軟性が必ずしも高くない. 本研究では, 8mmテープを利用し, 比較的小規模なコモディティロボテックスをエレメントアーカイバとし, それらを多数台並置することで任意の規模に拡張可能なスケーラブルアーカイバの構成法について研究を進めている. 本年度は9840に代表される最近の新しいテープ装置のパラメータを想定しリプリケーション手法に関しシミュレーションを行いその有効性を確認した.さらに ツVDアーカイバへの適用についても検討した.

投機的トランザクション実行機(継続)
教授 喜連川 優[代表者],教授 喜連川 優, リサーチアソシエイト P. Krishna Reddy
2 phase Commitによる並行制御機構に対し, 投機機構を導入することにより分散環境に於けるコーディネーションフェーズのオーバヘッドを隠蔽する手法について提案すると共に, シミュレーションによりその有効性を定量的に明らかにした. 本年度はトランザクションの有限投機化についてアルゴリズムの拡張を進めると同時に, シミュレーションにより有効性を確認した.又,モバイル環境への適応について検討した.

デジタルアースビジュアリゼーション(継続)
教授 喜連川 優[代表者],教授 喜連川 優, 博士研究員 生駒 栄司
種々の地球環境データを統合的に管理すると共に, 多元的な解析の利便を図るべくVRMLを用いた可視化システムを構築した. 時間的変化を視覚的に与えることにより, 大幅に理解が容易となると共に柔軟な操作が可能となり, ユーザに公開しつつある. 本年度はバーチャルリアリティシアターを用いた大規模視覚化実験を進めた.

バッチ問合せ処理の最適化に関する研究(継続)
教授 喜連川 優[代表者],助手 中野 美由紀
複数の問合せの処理性能を大幅に向上させる主記憶およびI/O共用に基づく新しい手法を提案すると共に, シミュレーションならびに実機上での実装により有効性を明かにした.

サーチエンジン結果のクラスタリング(継続)
教授 喜連川 優[代表者],教授 喜連川 優, リサーチアソシエイト Yitong Wang
サーチエンジンは極めて多くのURLをそのサーチ結果として戻すことから, その利便性は著しく低いことが指摘されている. ここではインリンク, アウトリンクを用いた結果のクラスタリングによりその質の向上を試みる.いくつかの実験により質の高いクラスタリングが可能であることを確認した.

Webマイニングの研究(継続)
教授 喜連川 優[代表者],教授 喜連川 優, 大学院学生 Iko Pramudiono, Praz Bowo, 大浦 勇亮, 共同研究員 高橋 克己
WWWのアクセスログ情報を多く蓄積されていることから, WWWログ情報を詳細に解析することにより, ユーザのアクセス傾向, 時間シーケンスによるアクセス頻度などにおける特有のアクセスパターンの抽出を目的としたマイニング手法の開発を試みた.

WWWにおけるコミュニティ発見手法に関する研究(新規)
教授 喜連川 優[代表者],教授 喜連川 優, 博士研究員 豊田 正史, リサーチアソシエイト P. Krishna Reddy,大学院学生 阿部 匡史,大学院学生 吉田 聡
全日本ウェブグラフのクローリングにより,我国全体のWEBグラフの抽出を行うと同時に,当該グラフから密な部分グラフを抽出するいわゆるサイバーコミュニティ抽出実験を行い,そのアルゴリズムの有効性を確認した.タギングの質の向上を目指すと同時に,可視化ツールの構築を試みたい.

最大フローアルゴリズムを用いたWeb空間クラスタリング手法の研究
教授 喜連川 優[代表者],学術支援研究員 今藤 紀子
ウェブコミュニティを抽出する手法として,HITSなどの手法と比較してトピックドリフトのおこりにくい最大フローアルゴリズムを用いたコミュニティ抽出手法の提案を行い,2002年度の日本国内のウェブスナップショットを用いて,提案した手法の特性について調べた.

パブリッシュ・サブスクライブのシステムアーキテクチャに関する研究
教授 喜連川 優[代表者],学術支援研究員 Botao Wang,大学院学生 張 旺
多量のデータを扱う高性能なパブリッシュ・サブスクライブのシステムの構築を目指し,イベントマッチングの高速処理を可能とするB+木を基にした二次記憶上の格納方式を提案し,シミュレーションを用いてその有効性を調べた.

i-SCSIの研究
教授 喜連川 優[代表者],学術支援研究員 山口 実靖
i-SCSIを用いた二次記憶システムにおける高速アクセス方式について検討を行った.

Peer to Peerに関するシステム・アーキテクチャの研究
教授 喜連川 優[代表者],学術支援研究員 Anirban Mondal
Peer to Peer で構成される大規模分散システムにおける効率のよい負荷分散方式について検討を行い,シミュレーションを用いて提案した方式の有効性について調べた.

次世代ハイパーメディアプラットホームの開発
教授 坂内 正夫[代表者],坂内研 大学院学生 曹 芸芸
映像を中心とする幅広い情報をコンピュータを用いて魅力ある形に提供するためのハイパーメディアの新しいプラットホーム開発を行なっている.本年度は,原メディアからのデータモデルの獲得(データベースビジョン),データベース化(ハイパーメディア),そのフレキシブルな利用(プレゼンテーション)を一体化したハイパーメディアの枠組の拡張と,その開発ツール(プラットホーム)の実装,及び研究室に既存の図形・画像認識システムの実装及び各種応用システムの開発を行なっている.

マルチメディア地図の構築と応用に関する研究
教授 坂内 正夫[代表者],協力研究員 大沢 裕,坂内研 大学院生 川崎 洋
災害への対応や高度な交通管理,施設管理などにおいて我々の社会活動の基盤である都市の現況情報をリアルタイムに表現,把握することが不可欠である.本研究では,従来の図形ディジタル地図に加えて,リアルタイム映像,航空写真,異形態地図等を統合した拡張された地図(マルチメディア地図)データベースの構築とその応用方式の研究を行っている.本年度は,インターネット上での地図関連情報の収集方式,市街地の3次元モデル形成などの研究を行った.

複数メディアの協調によるドラマ映像の高度理解
教授 坂内 正夫[代表者],メディア教育開発センター助教授 柳沼 良知,坂内研 大学院学生 張 文利・柳瀬 健吾
高度なマルチメディアシステム実現のためには,ビデオ映像の内容理解が必要であるが,従来は困難な問題であった.本研究では,映像だけでなく文書メディア(シナリオ),音声メディアの認識システムを相互に協調させて高次認識を実現する方式を研究している.本年度は,複数メディアの最適結合方式を,主成分分析とデンプスタシェーファー理論とを用いて実現し,その応用方式を検討した.

次世代対応型ディジタル放送システムの研究
教授 坂内 正夫[代表者],メディア教育開発センター助教授 柳沼 良知,博士研究員 曹 芸芸,坂内研 大学院学生 張 文利・武 小萌
ディジタル化された放送は,高度なサービス提供の可能性を持っている.本研究では,放送映像の構造化フレームワークとそれに基づく放送用ハイパーメディアアーキテクチャ,更には映像認識手段との複合による高度な対話性等を具備したマルチメディア時代のディジタル放送サービス提供技術の開発を行なっている.本年度は,ネットワーク上での参加型の情報収集と認識技術とに基づく高度な対話性を実現するシステムを開発した.

ITSにおける安全性確保の研究
教授 坂内 正夫[代表者], 助教授 上條 俊介,坂内研 大学院学生 松下 康之,松下 剛士,中島 章
次世代道路交通システムのターゲットとして重要な安全性の向上のために,映像による事故検出・認識手法の開発を行っている.合わせて,東京駿河台下交差点のリアルタイム映像を24時間取得するシステムを構成して評価実験を行っている.本年度は,交通事象データベースの形成を行うと共に,24時間・365日の状況に対応できる耐オクルージョン性の高いトラッキング方式のロバスト化,各種事象の認識手法の開発を行った.

交通流統計自動解析システムの開発
助教授 上條 俊介
高度交通システムにおいて,安全で効率のよい交通流を実現するためには,正確な交通流統計に基づく交通流制御が不可欠である.そこで,本研究室で開発したオクルージョンにロバストな車両トラッキングアルゴリズムを用い,通過車両台数・速度・走行軌跡などの交通流統計を自動で取得するシステムを開発している.すでに神田駿河台下交差点において,約1年6ヶ月に渡るデータを毎日取得している.さらに,取得した大量の統計データを柔軟に加工・提供するためのデータ構造およびインタフェースを開発中である.

時空間Markov Random Field Modelによる時空間画像の領域分割
助教授 上條 俊介
コンピュータ・ビジョンでは画像上で移動物体同士が重なった場合(オクルージョン)において,個々の物体を分離して追跡することが困難であった.そこで,本研究では,この問題を時空間画像の領域分割と等価であることを明確にし,時空間Markov Random Field Modelを定義した.これにより,オクルージョンが生じている場合でも正確に移動物体を画像上で分離することが可能となった.さらに,本手法は,車両のみならず歩行者等に対しても有効であることが確認され,街角監視や商業地区での行動分析に活用が期待される.

交通可視化システムの開発
助教授 上條 俊介
交差点に進入しようとする車両にとって,前方停止車両等による死角は事故を起こす原因となる.そこで,当該車両の運転者に交差点交通の鳥瞰図等を提供することにより,運転者自らが視覚的に危険を回避すること促すことが事故防止に有効であると考えられる.そこで,本研究室で開発した車両トラッキングアルゴリズムにより認識した車両をモデル化し,視覚的に解りやすい画像を提供するためのシステムを開発している.

実世界指向インタフェースによる効率的なユーザ作業支援
助教授 佐藤 洋一[代表者],協力研究員 杉本晃弘,協力研究員 中西泰人
ユビキタス・コンピューティング環境においてユーザが意識することなく利用できる透明なインタフェースを実現するためには,実世界環境と電子メディアの連携を重視したパラダイムにもとづくインタラクションへのシフトが重要となる.本研究では,マルチメディアコンテンツなどの電子メディアと書類などの実在メディアとの連携に着目し,拡張机型インタフェースによる透明なインタフェースの実現を目指す.具体的には,実世界に埋め込まれたセンサ群からの情報にもとづくユーザの行動およびその意図の理解,実世界におけるさまざまな事象の認識,ユーザの知覚と行動の動的相互作用に関するモデルの獲得,などの面において研究をすすめる.

ユーザの手指動作の実時間追跡とジェスチャ認識
助教授 佐藤 洋一[代表者],助教授 佐藤洋一・大学院学生 岡 兼司
GUIに代表される従来型のヒューマンコンピュータインタフェースの枠組みを越え,実世界におけるユーザのさまざまな活動を効率よく支援するためのインタフェースを実現するためには,実空間内におけるユーザの動作をリアルタイムで計測することが必要不可欠となる.特に本研究題目では,赤外線カメラおよびに画像処理ハードウェアを利用し,机上で作業を進めているユーザの両手指先位置をリアルタイムで安定にトラッキングするための技術を開発している.また得られる複数指先の軌跡からさまざまなジェスチャを安定に認識するための手法を実現する.

ステレオ画像処理によるユーザ視線方向の実時間計測とそのユーザインタフェースへの応用
助教授 佐藤 洋一[代表者],協力研究員 小池英樹,協力研究員 中西泰人
自然なヒューマン・コンピュータ・インタラクションを実現するためには,システムがユーザの行動や意図を理解することが重要となる.本研究では特にユーザの視線情報に着目し,ステレオ画像処理により特別なマーカなどを利用することなくユーザの頭部3次元位置・姿勢を実時間で計測する手法を実現する.また,大型情報ディスプレイへの利用を例としてユーザの視線情報の具体的な利用方法を提案し,ユーザ実験によりその有効性を評価する.

手指動作と視線情報の統合によるマルチモーダルなジェスチャ認識
助教授 佐藤 洋一[代表者],助教授 佐藤洋一・大学院学生 岡 兼司
実世界におけるユーザの行動や意図を信頼性良く認識・理解するためには,身振り,手振り,音声など異なるモダリティからの入力情報を統合して用いることが重要になる.これまでにも身振りなどの身体動作と音声を統合する研究例が報告されているが,本研究では身振りと視線情報を統合的に利用する枠組みについて研究を進めている.これにより,ユーザが意図して行った身体動作とそうでない動作との判定など,ユーザの意図をより正確に反映したジェスチャ認識手法の確立を目指す.

室内空間におけるインタラクションのためのプロジェクタ−カメラ系による情報提示
助教授 佐藤 洋一[代表者],助教授 佐藤洋一・大学院学生 徳田泰久
室内空間におけるユーザのさまざまな行動に対する支援を考えた場合,PCモニタやPDAなどの各種ディスプレイデバイスに加え,床,壁面,机など室内空間におけるあらゆる物体表面に情報を呈示する機能を実現することが重要となる.本研究では,プロジェクタ−カメラ系により室内空間全体に情報表示機能を付加することを目指す.具体的には,パンチルト機能を持つプロジェクタおよびカメラ系の実装,非投影面となる室内形状の3次元計測,物体表面の反射特性の推定,などについて研究を進める.

照明変化を伴う物体認識へのサポートベクターマシンの適用
助教授 佐藤 洋一[代表者],助教授 佐藤洋一・技官 岡部孝弘
照明変化を伴う物体認識の問題に対して,パターン認識手法の一つであるサポートベクターマシンを効率的に用いた手法を提案しその有効性を実験的に検証する.具体的には,任意の照明下における物体の見え方の変化のメカニズムに関する考察に基づき,サポートベクターマシンにおける識別面の自由度にどのような制限を加えるかを決定している.また,異なる照明下で撮影された顔画像に対する認識実験から,提案手法が他の従来手法と比較して優れた性能を持つことを確認した.

画像線形化に基づく物体認識手法
助教授 佐藤 洋一[代表者],助教授 佐藤洋一・技官 岡部孝弘
照明変化を伴う物体認識の問題に対して,画像合成の分野で知られている画像線形化の枠組みに基づく認識手法を提案した.3枚の基底画像を用いて認識を行う線形部分空間法には自己遮蔽によるattached shadowを取り扱いことができないという欠点があるのに対し,提案手法では,3枚の基底画像を用いる場合でも,テスト画像撮影時の照明を推定することでattached shadowを再現できることに着目している.顔画像データベースに対して提案手法を用いた認識実験を行い,画像線形化が画像合成だけでなく物体認識に対しても有効であることを示した.

光源輝度分布の球面調和関数展開にもとづくキャストシャドウからの光源推定
助教授 佐藤 洋一[代表者],技官 岡部孝弘・大学院学生 佐藤いまり・助教授 佐藤洋一・教授 池内克史
物体陰影からの光源推定問題は拡散反射面を仮定した場合に不安定になることが,実験・理論の両面から報告されている.一方,キャストシャドウからの光源推定は,実画像を用いた実験を通して拡散反射面を仮定した場合でも比較的うまく働くことが知られているが,なぜうまく働くのかという点は必ずしも十分に明らかにされていない.本研究では,キャストシャドウを用いた光源推定について,球面調和関数展開に基づく手法を提案し,その振る舞いの良さについて考察を加えた.また,提案手法の特長を数値シミュレーションによる実験により検証した.

絵画における陰影解析とノンフォトリアリスティックレンダリングへの応用
助教授 佐藤 洋一[代表者],大学院学生 佐藤いまり・助教授 佐藤洋一・教授 池内克史
写実的な画像合成を目指すコンピュータグラフィックス手法に対し,油絵や水彩画などの非写実的な画像を生成することを目的とした技術はノンフォトリアリスティックレンダリングと呼ばれ,これまでにさまざまな手法が提案されてきている.しかしながら,与えられた絵をもとにして画家特有の筆使いや色付けの特徴を獲得することは試みられていなかった.本研究では,一枚の絵から色彩に関する画家特有の作風をモデル化し,それにより新たな画像を加工するための技術について研究を進めている.

室内環境における複数人物の実時間追跡
助教授 佐藤 洋一[代表者],大学院学生 鈴木達也,協力研究員 杉本晃弘
本研究では,室内環境において複数人物を追跡する為の頑健な手法の開発を目指している.特に,環境に分配配置されたセンサ郡からの観測情報を統計的な枠組みで統合することにより,照明条件など動的に変化する環境に対しても安定かつ高精度な追跡を実現する.更に,部屋の詳細な3次元形状などの環境モデルを利用することで,実世界環境における人物の行動パターンをも考慮した手法を検討している.

一般の照明環境下における物体反射率と光源分布の同時推定
助教授 佐藤 洋一[代表者],大学院学生 杜菲,技官 岡部孝弘,協力研究員 杉本晃弘
一般的な照明環境下において撮影された映像をもとにして,物体表面の反射率を推定する手法を開発している.一般に物体からの反射光は,物体表面の反射特性とその物体が置かれた環境における照明条件の両方に依存する.そのため,観察された物体表面の明るさからこれら2つの要因を分離することは困難であり,従来手法では単一の光源のみが存在するなどの特殊な環境を仮定することが必要であった.本研究では,実世界環境における複雑な照明分布と物体表面反射率の両方を同時に推定するアルゴリズムを提案し,その有効性を実験的に検証している.

材料界面マイクロ工学研究センター

SiC繊維強化SiC複合材料の高温曝露による酸化損傷の誘電特性による評価(継続)
教授 香川 豊[代表者],助手(特別研究員)本田紘一
非酸化物系繊維強化セラミックス複合材料は使用時に酸化劣化を生じることが課題となっている.新たに開発した,ホーンアンテナとネットワークアナライザーなどで構成された非接触損傷検査装置を用いて,周波数20〜50 GHzのビーム収束電磁波を熱暴露したSiC/SiCに照射し,誘電特性を測定して非接触・非破壊でセラミックス複合材料の酸化損傷を評価することを行っている.これまでに,酸化にともなう重量の変化率と誘電率の間には相関性が見られ,電磁波を用いてSiC/SiCの酸化損傷を非接触・非破壊で評価することが可能であることを明らかにした.

周期的に配列した空孔による散乱を利用した電磁波吸収体(新規)
教授 香川 豊[代表者],受託研究員 成田 毅
電磁波が材料の内部で散乱し,干渉して低減するような構造をシミュレーションにより求め,30GHzの高周波数用のモデル材料を実測することで効果を実証した.誘電体中に空孔を周期配列させることで,フォトニック結晶が形成され,構造の周期性を垂直方向,水平方向で調整することで電磁波は材料中に閉じ込められ,徐々に減衰することが確認された.損失特性のみを利用した均一な材料では達成できなかった電磁波吸収能力が発現し,特に入射角度に対する制限が少ないことが確認された.このように材料の物性と構造を相互作用させることで電磁波吸収材料を設計可能であることが確認された.

ナノコーティングのパフォーマンスの評価(新規)
教授 香川 豊[代表者],受託研究員 郭 樹啓
マイクロインデンテーションを用いて,Y2O3を添加したEB-PVDZrO2コーティング材料のコーティング層の硬度と弾性率の測定を行い,硬度と弾性率に及ぼす組織の影響を明らかにした.また,高温熱暴露後,コーティング層の硬さと弾性率は,増加,その増加の割合は熱暴露温度と時間に依存することが明らかになった.現在,高温熱暴露後のコーティング層の微細構造の変化を調べ,その変化と弾性率との相関性の解明を行っている.

急速加熱試験による耐熱コーティング健全性評価手法の開発と応用(新規)
教授 香川 豊[代表者],受託研究員 新見彰夫
ガスタービン高温部品に使用されるセラミック遮熱コーティング(TBC)の健全性評価法として,水素・酸素混合ガス燃焼炎を用いた急速加熱試験を行い,コーティングの物性変化および亀裂進展挙動を測定した.この結果,急速過熱試験で50サイクル以上剥離しないコーティングにおいて,その物性や組織は最初の数サイクルで大きく変化することが明らかとなった.また,TBC中の亀裂は,最初の数サイクルでは確認されず,それ以降のサイクルで徐々に進展する傾向があることがわかった.

Atomistic simulation of structure and mechanical properties of Cu/sapphire interface.
教授 香川 豊[代表者],機関研究員 Sergey V. Dmitriev
Fitting and testing the Cu/sapphire interatomic potentials applying them to different problems related to mechanical properties of the interface. With the use of the developed potentials, the misfit dislocations at Cu(111)/sapphire(0001) interface were studied in frame of the static analysis. The new method of coherency analysis applicable to the interfaces between crystalline bodies with different structure has been offered. The method allows analysis of the phenomenological trends dictated by the geometry of interface.

金属―セラミックス接合体における界面剥離挙動(新規)
教授 香川 豊[代表者],機関研究員 長谷川 誠
銅とサファイア(Al2O3)の接合体を作製し,荷重負荷時における界面剥離の挙動を高解像度CCDカメラでその場観察することによって実験的に調べた.剥離挙動は負荷条件によって変化し,疲労時には界面の形状は滑らかであったのに対して,破壊時には界面の形状は複雑に入り組んでおり,界面の前方に空孔の成長および合体が見られた.また,剥離挙動は銅の厚さによっても変化し,これは銅の塑性変形に伴う影響であることが実験から明らかとなった.

電磁波による連続繊維強化セラミックス基複合材料の損傷検出(継続)
教授 香川 豊[代表者],博士研究員 間宮 崇幸
GHz帯域の電磁波を材料に非接触で照射し,誘電特性の散乱パラメータ(反射係数(S11)および透過係数(S21))を測定する装置系を用いて,誘電率および誘電損率を算出し装置定数を求めた.また,本装置を用いて,GHz帯域の電磁波をアンテナの照射角度を変化させ斜めに材料に照射し,その反射係数の変化から,SiC繊維強化ガラスに生じた損傷の検出を行った.反射係数の変化と照射角度の関係から,生じたクラックの向きによる反射係数の変化への影響を検討し,SiC繊維強化ガラスに生じた損傷検出に適用した.

高温熱放射ナノマルチレイヤーコーティングの作製と熱反射特性 (新規)
教授 香川 豊[代表者],機関研究員 長沼 環
高温での熱放射を制御可能なナノマルチレイヤーコーティングを作製し,高温下での熱反射特性を検討した.セラミックス基板上に厚さ数百ナノオーダーの層をゾル-ゲル法を用いて積層コーティングを作製した.得られたナノマルチレイヤーコーティングにおいて,室温から1273 Kの熱エネルギーに相当する波長1.5〜10 mmの赤外光の反射率を,室温から1273 Kの高温環境下にて測定した.その結果,各層の界面による干渉効果により赤外光の特定波長範囲の光を反射できることが明らかになった.このような積層構造コーティングは高温熱反射表面として利用することができると考えられた.

繊維強化セラミックスマトリックス光透過複合材料の透光性と力学特性(継続)
教授 香川 豊[代表者],大学院学生 Arcan F. Dericioglu
メッシュ構造強化相の概念を持つSiC繊維/Al2O3-ZrO2ミニコンポジット強化MgAl2O3/ガラスマトリックスオプトメカニカル複合材料を製造し,mmオーダー間隔のミニコンポジットメッシュ構造が複合材料の透光性と破壊抵抗増加に有効であることを明らかにした.Al2O3-ZrO2ミニコンポジット強化ガラスマトリックスオプトメカニカル複合材料を用いてミニコンポジットのブリッジング機構を調べた.マトリックスクラック-ミニコンポジット相互作用の蛍光スペクトルによるその場測定を行い,ミニコンポジットの軸方向応力分布測定を行った.またそのモデル化を行ってオプトメカニカル複合材料の破壊抵抗を定量的に解析した.

複合材料における繊維‐マトリックス間の力の伝達機構(新規)
教授 香川 豊[代表者],大学院学生 川添 敏
繊維強化複合材料の繊維‐マトリックス間の力の伝達を調べるために,1本の単結晶サファイア短繊維で強化したエポキシ複合材料を作製し,繊維中の応力分布を高速走査型蛍光応力顕微鏡を用いて測定した.応力分布は材料作製時の熱応力測定に加え,一定およびサイクル引張荷重下での応力測定および界面破壊挙動の観察を行った.得られた実験結果を理論式と比較し検討した.

オプティカル複合材料の透明性評価手法 (継続)
教授 香川 豊[代表者],大学院学生 松村功徳
オプティカル複合材料の透明性は,複合化に起因した光散乱によって大きく影響をされる.本研究では,透過率による従来の評価に代わり光の経路や位相といった時間的なパラメーターを導入した透明性評価手法の開発を行った.材料透過光の経路の変化を計測する手法としてピコ秒パルス法を,また,透過光の位相変化を評価する手法として位相波面計測法を作製した.粒子体積率を変化させたガラス粒子分散エポキシ複合材料を用い,経路と位相の変化の測定を行った.また,複合材料中でのミクロな光散乱現象を評価する手法として,波動光学有限要素法シミュレーションを行った.その結果,材料中での散乱と経路・位相の変化の相関性を明らかにし,経路・位相を用いて複合材料の透明性を評価することができることを示した.

TBC(EB-PVD)のTGO層中の応力分布に及ぼす厚さの影響(継続)
教授 香川 豊[代表者],大学院生 冨松 透
EB-PVD法により作製したTBCのTGO層の高温・大気中加熱に伴う応力状態の変化を蛍光分光法により測定し,微細組織の変化との関連性について検討した.TGO層中の平均応力の測定により,TGO層の厚さの増加に伴い,その不均一性は増加し,平均圧縮応力は除々に増加することが確認された.各層の特性値の変化を考慮に入れて熱応力を計算し,TGO層の応力発生機構の検討を行った.また,TGO層中の局所的な応力分布の測定により,TGO層の板厚方向に平行な方向に働く圧縮応力が,TGO層の凹凸の要因となる可能性が示された.

耐熱コーティング材料の電磁波を利用した損傷の検出(継続)
教授 香川 豊[代表者],大学院学生 宮田誠心
耐熱コーティングの損傷を検出する新しい方法として,電磁波特性を利用した.本年度は,耐熱コーティングに電磁波を照射して,入射波と反射波の変化から,非接触で損傷を検出する装置を設計,試作した.また,耐熱コーティングの電磁波照射自己発熱を利用した損傷検出のシミュレーションを行い,損傷検出可能性を検討するとともに,実験結果との比較を行った.

H2Oと準ミリ波との相互作用機構(新規)
教授 香川 豊[代表者], 助教授 朱 世杰,大学院学生 井上 基
H2Oを含む吸水性高分子の電磁波吸収・透過率を測定した.また,NaClやKClを含む水溶液を作製し,H2Oの場合と同様に吸水性高分子材料中に含浸し,電磁波の吸収・透過率を測定した.H2Oを吸水性高分子材料中に含浸させた材料の電磁波反射率には周波数依存性が見られなかった.しかし,電磁波吸収率は周波数が高くなるにつれて減衰が大きくなる傾向が見られた.また,添加するイオンにより,その減衰する傾きは異なった.これらの結果から分子間の相互作用によると思われる吸収率の周波数依存性及び減衰率の相違について考察した.

酸化物系セラミックスの光反射特性(新規)
教授 香川 豊[代表者], 助教授 朱 世杰,大学院生 池上 将英
光の干渉による反射・透過の考え方を用いて熱輻射エネルギーを制御できることが知られており,高温下での光特性を理解するためには,屈折率や誘電率などの温度依存性や波長依存性を知ることが必要である.室温〜高温下での光(熱輻射)の反射を測定するための装置を試作した.多結晶Al2O3やサファイアなど酸化物系セラミックスの表面を鏡面に仕上げ,室温から1500℃の温度範囲で光反射特性を0.67〜500 mmの波長で調べた.高温用FTIRで光反射率を測定した結果,反射率にも温度依存性,波長依存性が認められた.

曲面を持つ積層誘電体構造と電磁波の相互作用(新規)
教授 香川 豊[代表者], 助教授 朱 世杰,大学院学生 熊澤 聡
ランダムな方向からの電波を効率よく電磁波吸収材料に導き,大きな損失を可能とする球状あるいは特定の形状を持つ電磁波吸収材料を得ることを目的とした.60~70 GHzのミリ波帯域で電磁波を効率良く吸収するために,積層誘電体層が曲面を持つ場合を想定し,電磁界シミュレーションを行った.材料系としては球状の誘電体がn層の積層構造を持つものを想定した.本年度は積層構造を構成する各層の誘電特性や厚さをパラメータとし,積層面が曲面を持つ場合の電磁波との相互作用を調べた.

中温度域作動型燃料電池用材料の研究
教授 宮山 勝[代表者],助手 野口祐二,技術官 高野早苗,大学院学生 田中優実・原 晋治・永坂圭介,外部研究生 秋山淳志
現在適切な材料が見出されていない100〜200℃で作動可能な燃料電池のプロトン伝導性電解質材料として酸化スズ水和物,酸化タングステン水和物などの金属酸化物水和物に着目し,その物性評価と機構解明を行っている。150℃の温度,高水蒸気分圧下で高いプロトン導電率が得られ,結晶内あるいは表面に強く結合した水和水が重要であることを確認している。実用材料として水和物とポリマーの複合体膜の作製も試みている。また,メタンおよび空気の混合ガスにより発電が可能な単室型燃料電池を,酸化物イオン伝導性の固体電解質と金属酸化物電極を用いて作製し,優れた発電特性が得られている。

ビスマス層状構造強誘電体における欠陥エンジニアリングによる物性制御
教授 宮山 勝[代表者],助手 野口祐二,大学院学生 高橋尚武・北村 敦・曽我雅之
ビスマス層状構造強誘電体(BLSF)は,耐疲労特性に優れた不揮発性メモリー材料として知られている.種々の単結晶を作製し,欠陥構造(不定比性を含む)と強誘電ドメイン構造を制御して各種物性(分極特性,導電率)を制御する研究を行っている.希土類置換と空孔導入を行ったタンタル酸ストロンチウムビスマス(SBT)系での著しく小さな抗電界を見出し,その置換元素依存性,温度依存性を明らかにした.また,チタン酸ビスマス(BIT)系での高温電気伝導機構とドメイン構造を解明し,酸素欠損低減による分極特性の向上を明らかにしている.

ビスマス交代相構造酸化物の作製と物性評価
教授 宮山 勝[代表者],助手 野口祐二,大学院学生 原 英和
異なるペロブスカイトブロックが酸化ビスマス層を介して積層した構造のビスマス交代相構造酸化物では,異なるペロブスカイトブロック間の相互作用により,単一層体から予想されるものとは異なる物性が期待される.このようなビスマス交代相構造酸化物の多結晶体,単結晶を作製し,交代層の形成要因とともにその強誘電物性を調べている.単結晶において層に垂直方向での分極特性を始めて確認している.また,一つのペロブスカイトブロックをMn置換などにより半導体化し,強誘電層/半導体層の構造に由来する新規機能の探索を行っている.

電気化学スーパーキャパシタ用電極材料の研究
教授 宮山 勝[代表者],大学院生 今村大地・鈴木真也・安永真也・木村香里
高容量と高速の充放電特性を兼ね備えたスーパーキャパシタは,電気自動車の補助電源などへの応用が期待されている。層状あるいはトンネル構造をもつ酸化バナジウム,酸化チタン,水酸化鉄などの非晶質体を電子導電性カーボン粒子にコーティングした高表面積複合体を正極に用いると,原理的にはLi二次電池と同じ機構で上記の特性を示す。無機フィラーを複合した電極微細構造の制御による著しく高速なLi+充放電特性,2価イオンであるMg2+の高容量高速インターカレーション特性などの成果が得られている。また他の複合体電極材料の探索を進めている。

ゾルゲルプロセスおよび自己組織化プロセスによる,薄膜・メソ構造体の作製
教授 宮山 勝[代表者],助手 野口祐二,大学院学生 鈴木智史,外部研究生 野崎洋一郎
無機機能性薄膜の低温合成に有利なゾルゲルプロセスを用いてビスマス層状構造強誘電体薄膜を形成し,プロセスと膜構造および物性の相関を解明している.また,界面活性剤の鋳型分子を用いた自己組織化法により数ナノメートルの空隙を持つシリカ系メソ構造体を作製し,その空隙へリチウムイオン伝導性溶液あるいはプロトン伝導性リン酸基を導入させることにより,イオン伝導性に優れた固液複合電解質の作製を試みている.

バイオアッセイを活用する廃棄物最終処分場の管理
助教授 酒井 康行[代表者],技術官 藤井隆夫,助教授(東京工業高等専門学校)庄司良, 教授 迫田 章義
廃棄物最終処分場から何らかの理由で漏出する化学物質の生態系やヒトへの影響が懸念されている.しかし化学分析で同定できる物質は,例えば有機物についてはわずか1%以下であると報告されている.そこで,生態系の一次生産者としての藻類の増殖阻害試験,ヒト影響評価のための肝細胞生存阻害試験や多環芳香族類検出のための肝細胞解毒酵素誘導試験などのバイオアッセイと,主要物質に関する化学分析のデータを総合することで,最も緊急に管理を必要とする物質群を同定したり,効果的な浸出水処理手法を提案したりすることを目指し,検討を行っている.

化学物質影響評価のための培養ヒト細胞を用いる評価
助教授 酒井 康行[代表者],博士研究員(韓国科学技術財団)崔水馨,大学院生 清水啓右, 教授 迫田 章義
既存の単一培養細胞からなる毒性評価系では,吸収・代謝・分配といった人体内での毒性発現に至までのプロセスが考慮されない.そこで,これらを考慮する実験系として,膜上に培養された小腸上皮細胞,同じく膜上に培養された肺気道・肺胞上皮細胞,担体内に高密度培養された肝細胞および標的臓器細胞(腎臓・肺など)などの個別のモデル臓器コンパ−トメントを開発すると共に,これらを生理学的な培養液灌流回路で接続する新しい毒性評価システムを開発し,毒物経口摂取後の血中濃度と毒性発現を速度論的に再現することを目指している.

ヒト臨床応用のためのバイオ人工肝臓システムの開発
助教授 酒井 康行[代表者],助手(医学部)成瀬勝俊,教授(医学部)幕内雅敏
実際のヒト臨床応用に耐え得るような高機能かつ管理の容易なバイオ人工肝臓システムの開発に関する研究を行っている.前臨床試験として,ポリエステル不織布充填型バイオリアクターと血しょう分離器・酸素冨化器などからなるバイオリアクターシステムを構築し,肝不全ブタ・イヌ・サル等の灌流治療実績を積み重ねている.

三次元造型技術と肝幹細胞の増幅技術を用いた肝組織in vitro再構築
助教授 酒井 康行[代表者],学振外国人特別研究員(吉林大学)姜金蘭,博士研究員(神奈川科学技術アカデミー)小島伸彦,教授(分生研)宮島篤,
将来,移植にも耐え得るような肝組織をin vitroで再構築するために,多面的な技術開発を行っている.具体的には,複雑な内部構造を持つ生体吸収性樹脂担体の光重合・機械加工積層造型法に関する検討や,増殖能と臓器再構築能に優れたマウスやヒトの胎児由来肝細胞のin vitro増幅技術の開発,などについて研究を進めている.

金属基複合材料のクリープ変形機構
助教授 朱 世杰
ナノサイズの粒子およびミクロサイズのセラミックス繊維など強化AlおよびCu基複合材料を用い,引張クリープ試験を行い.高温クリープ変形はしきいクリープ理論より説明し,温度の上昇に伴い,しきい応力は存在しない現象について研究している.その現象について転位は微細粒子から脱離の非熱活性化機構から熱活性化機構へと変化するというモデルを提案する.提案したモデルを利用してクリープひずみ速度を予測する.予測値は実験データと一致することを証明する.

ナノコーティングの損傷評価および寿命予測(継続)
助教授 朱 世杰[代表者], 教授 香川 豊
力学特性および耐酸化性評価方法および技術を開発し,高温で,応力その他の使用環境による過酷な負荷サイクルを含む実使用環境を模擬し,寿命や劣化に及ぼす物理的,化学的因子を定量的に取り扱うことが可能な評価装置を設計・試作する.これにより,現用評価システムよりも短時間で評価可能なシステムを構築する.他方,長時間使用環境模擬試験による基準データも取得し,加速試験との比較検討を行う.これらを通して短時間で劣化や寿命の予測を可能にする総合的なシステムの実現を目指す.

セラミックス基複合材料のクリープおよび疲労機構
助教授 朱 世杰[代表者],研究員 水野峰男
セラミックス基複合材料はモノリシックなセラミックス材料にくらべ,格段に靭性などの強度特性が改善されるため,有望な高温構造材料として,一部ではすでに実用化が進められている.しかし,実使用環境したではミクロな損傷の累積や酸化損傷により,特性の劣化が生じ残存寿命に影響を与えるという問題がある.ですから,使用時に複合材料中に生じた損傷を定量的に評価し,劣化や残存特性を知り,材料を安全に使いこなす技術の早期の確立が強く求められている.本研究では,SiC/SiC複合材料のクリープおよび疲労試験およびその機構について巨視的ならびに微視的に観察し,微視組織的パラメ−タと力学的特性の関係を確立することである.

プラズマ溶射熱遮蔽コーティング材料の引張り損傷進展挙動
助教授 朱 世杰[代表者],機関研究員 銭 立和
プラズマ溶射熱遮蔽コーティン材料中のクラックと破壊挙動を,サンドイッチ型試験片を用いて一方向引張り応力下で光顕その場観察を行って調べた.トップコート内に初期クラックが発生し,界面に垂直に進展することがわかった.クラックの数は引張りひずみの増加にともなって急激に増加した後停滞した.その後,クラックはトップコート/ボンドコート界面を通り抜けボンドコート内に進展した.クラックがボンドコート/サブストレート界面に到達したとき界面の剥離が生じた.この破壊挙動を説明するモデルを提案した.

プラズマ溶射熱遮蔽コーティングの界面破壊挙動
助教授 朱 世杰[代表者], 教授 香川 豊,機関研究員 銭 立和
プラズマ溶射熱遮蔽コーティングのクラック発生・進展挙動を,界面に垂直なノッチを有するサンドイッチ型4点曲げ試験片を用い単調およびサイクル負荷曲げ試験を行って調べた.クラックの進展の過程と経路をモニターするために光顕その場観察を行った.単調負荷下では剥離クラックの進展により明らかなR-曲線の上昇が見られた.低応力拡大係数のときにクラック拡張にともなうクラック進展が減速する現象が見られた.

大損傷許容性を有する繊維強化複合材料によるセラミックス材料の新しい表面保護法
助教授 朱 世杰[代表者], 教授 香川 豊,研究機関研究員 金永錫
繊維強化セラミックスの持つ大きな損傷許容性を利用して,薄い複合材料をセラミックスの表面に従来のコーティング材料のかわりに用い,表面の保護を行うメリットを明らかにする.これを通して,脆く損傷を許容しないセラミックス表面に損傷を許容するセラミックス基複合材料を設け,荷重の負担(強度)はセラミックス基材,損傷に対する抵抗は表面の複合材料で受けもつという機能分担を図った材料の可能性を検証する.

C/C複合材料の圧縮強度に関する研究
助教授 朱 世杰[代表者], 教授 香川 豊,研究生 曹寧源
C/C複合材料の圧縮強度の標準試験方法を作成するため,いろいろな形状および寸法の試験片を用い,圧縮試験を行い.強度の分布および破壊機構の観察を基づいて最適な試験方法を提案する.

海中工学研究センター

海事の安全に関する研究
教授 浦 環
海難事故は,当事者のみならず,第三者にも大きな影響を及ぼす.タンカーの衝突による原油の流出はその代表である.流出するのは貨物のみならず,燃料油も問題である.ハードウェアとしての船舶,船具,運行者,あるいはそれを取り巻く国際規則は,こうした海洋環境の維持に関係する.これらの大きなシステムを健全に維持するには,旧態然とした考え方ではできることが限られる.そこで,人的な要因の究明と除去や旗国の管理を含めた新たな海事の安全に関する枠組みを研究している.具体的にはBridge Resource Management の概念を安全面から見直している.

Classification and Tracking of Clicking Sperm Whales
客員教授 バール ラジェンダール[代表者], 教授 浦 環
Sperm whales are deep diving cetaceans that generate intense impulsive click sounds having several distinctive features. We have developed techniques for automatic classification of individual clicking sperm whales with the objective to track them and to understand their behavior, especially during their deep dives.

Recognition of Individual Singing Humpback Whales
客員教授 バール ラジェンダール[代表者], 教授 浦 環,浦研 大学院学生 欒 剣
Humpback whales, especially males, sing unique songs at audio frequencies. Efficient recognition of humpback whales other than by time-consuming manual visual-based methods is very important for maintaining a long-term record. We are developing advanced computer-based recognition techniques for recognizing individual whales using their voice models.

Study of Chinese River Dolphin from Acoustic Recordings
客員教授 バール ラジェンダール[代表者], 教授 浦 環,浦研 研究実習生 矢野 正人
The Chinese river dolphin "Baiji" is an endangered animal. Using very rare recordings of its click vocalizations, we have discovered evidence of a unique acoustic vision system for its survival and feeding. We have also obtained an understanding of its dynamic behavior that would help in locating and surveying its presence in the threatened habitats.

長時間航行のできる海中ロボットの研究
教授 浦 環[代表者], 教授 浅田 昭,教授(海洋研究所)玉木賢策・(東北大学) 藤本 博巳・(北海道大学) 蒲生 俊敬, 助教授 藤井 輝夫,主任研究官(産業技術総合研究所)中村 光一,助手 能勢 義昭,技術官 坂巻 隆,学術研究支援員 杉松 治美,民間等共同研究員 小原 敬史,大学院学生 川野 洋・金 岡秀
長時間航行のできる海中ロボットの研究開発をおこなっている.第一段階として,エネルギ源として閉鎖式ディーゼルエンジンを用い,最大速度3ノット,最大深度400mまで24時間連続航行できるプロトタイプロボット「アールワン・ロボット」を開発し,1996年8月21日田辺市沖で連続4時間の潜航,1998年6月16日には同海域で連続12時間37分の潜航に成功.さらに2000年10月19日〜22日に手石海丘の全自動観測に成功,鮮明なサイドスキャンソナーイメージを得た.2001年度からはその第二段階を開始,ロボットの小型大深度化を進めている.

深海知能ロボットの研究
教授 浦 環[代表者], 教授 浅田 昭, 客員教授 高川 真一, 助教授 藤井 輝夫,助手 能勢 義昭,技術官 坂巻 隆,学術研究支援員 杉松 治美,民間等共同研究員 小原 敬史,大学院学生 川野 洋・金 岡秀
これまでに開発してきた海中ロボットの成果を踏まえて,深度4,000mの高い水圧環境下にある深海を潜航し,熱水地帯を観測することのできる高度に知能化された信頼性の高い小型海中ロボットの研究開発をおこなっている.ロボットは海底観測ステーションとしての役割も期待されており,このための深海下でのドッキング機能等についての研究もおこなっている.

海中ロボットの自律航行に関する基礎研究
教授 浦 環[代表者], 助教授 藤井 輝夫,助手 能勢 義昭,技術官 坂巻 隆,研究員 川口 勝義・黒田 洋司・石井 和男, 博士研究員 近藤 逸人,大学院学生 川野 洋・金 岡秀・柳 善鉄・野瀬 浩一・欒 剣・佐藤 哲郎,研究実習生 川崎 俊嗣・栗本 陽子
海中ロボットのより高い自律性を確保するためには,取り扱いやすいテストベッドが必要である.テストベッドは浅い海域やプールでの航行試験を通じて,ソフトウェアが開発される.外環境に対する多くのセンサを持ち,運動自由度の大きな推進器群を装備する海中ロボットを製作し,その上に分散型運動制御システムを構築して海中ロボットの自律性の研究を行っている.自律性の一環として,画像を利用した高度な行動機能の開発を行っている.また,計算機上で複数ロボットの群行動や遠隔操縦をシュミレーションするシステムを実現し,ロボットの行動研究を行っている.この一環として新たにテストベッドロボット「Tam-Egg 1」の製作をおこなった.

ニューラルネットによるシステム同定の研究
教授 浦 環[代表者],研究員 石井 和男
複数入力複数出力で,非線形性が強く,相互干渉の大きいロボットシステムをニューラルネットによって実現する手法を開発している.本システムを用いて航行型海中ロボットの定高度維持航行あるいは有索潜水機の運動の制御を行っている.

画像を用いた海中での行動決定機構に関する研究
教授 浦 環[代表者], 助教授 藤井 輝夫,博士研究員 近藤 逸人,大学院学生 柳 善鉄・野瀬 浩一
ロボットの視覚を用いた信頼できる行動決定機構とフイードバック機構を研究開発している.画像情報は多くの情報を含むが,水中では,マリンスノーの散乱や,照明むらなど処理しなければならない外乱が多い.しかし,ケーブルのトラッキングや魚類の追跡など画像を用いなければできないミッションも多い.ここでは,自律型海中ロボットのテストベッド「Twin Burger 2」と「Tri-Dog 1」を使ってこうしたミッションを確実に遂行できるシステムを構築している.

自律型海中ロボットを用いた鯨類観測システムに関する研究
教授 浦 環[代表者], 客員教授 バール ラジェンダール, 客員教授 浅川 賢一,主任研究官(水産工学研究所)赤松友成,助手 能勢 義昭,技術官 坂巻 隆,研究員 白崎 勇一,大学院学生 欒 剣
鯨類の多くは鳴音と呼ばれる声を出す.ザトウクジラの雄の鳴音は複雑なフレーズを形成しており,マッコウクジラの鳴音はクリック音と呼ばれる.それぞれの鯨類に特有な鳴音をそれに適合する手法により解析し,個体識別をおこない,位置を探査し,自律型ロボットが個々のクジラを追跡して観測できるリアルタイムの自動観測システムの構築をおこなっている.2001年3月には沖縄県座間味島沖でザトウクジラの追跡実験に成功している.

音響処理装置を用いた揚子江カワイルカの生態に関する研究
教授 浦 環[代表者], 客員教授 バール ラジェンダール,助教授(工学系研究科)鈴木 英之,主任研究官(水産工学研究所)赤松友成,研究実習生 矢野 正人
中国に生息する揚子江カワイルカ(Baiji)は絶滅の危機に瀕しており,その生態についてはほとんど知られていない.本研究では,Baijiがエコーローケーションのために発する鳴音(クリック音)を解析し,個体を探索し,追跡し,その生態を観測するためのリアルタイムの自動システムの構築をおこなっている.これまでに,半自然保護区で録音されたBaijiの音響データからクリック音を抽出し解析,濁った河川で生存し餌をとるために発達したと推定されるBaijiのユニークな音響視認システムの存在を確認している.さらに,今後の現場調査に際して,個体発見に有効と思われるBaijiに特徴的な行動パターンを確認できた.

湖沼調査ロボットを用いた湖沼環境調査システムに関する研究
教授 浦 環[代表者],技術官 坂巻 隆,研究員 黒田 洋司
生活に密着した湖沼の環境調査にあたっては,移動ロボットをプラットフォームとして用いて自動的かつ定期的に調査をおこなえば,空間的時間的な分解能が向上する.本研究では湖沼調査を専用とする自律型潜水ロボットの研究開発を琵琶湖研究所他と共同でおこない,2000年3月には琵琶湖専用ロボット「淡探」が完成.これを用いて継続的に琵琶湖で観測をおこないデータを収集,得られたデータを基に新たな工学的湖沼環境調査システムの構築を研究開発している.

深海調査ロボットの研究開発
教授 浦 環[代表者], 助教授 藤井 輝夫,助手 能勢 義昭,技術官 坂巻 隆,研究員 浅川 賢一,博士研究員 近藤 逸人,研究実習生 栗本 陽子
大深度海底に沈没した船舶や航空機を簡便に探査できるロボットシステムを,海上技術安全研究所および民間の研究機関と共同で開発している.当面のターゲットとしては2500m級の大深度に沈没した船舶の主船体部分の探査を想定.ケーブルに拘束されるROVは複雑な形状を持つ観測対象物には適さないが,情報の少ない未知の環境下においてロボットが全自動で行動するのは極めて困難である.そこで機能性を重視した小型軽量システムを選択,音響通信を利用した遠隔操縦によりテレビカメラで観測をおこなう半自動プロトタイプロボット「 Tam-Egg1」号が2003年1月に完成.今後さらに共同研究を継続し,実際のオペレーションをおこない機能向上を図る.

粉粒体の輸送の研究
教授 浦 環[代表者],協力研究員 太田 進
微粉精鉱・微粉炭・粉炭などの輸送は穀類などのばら積み貨物輸送とは同等に扱えない.こうした粉粒体の動力学ならびに安全でかつ経済性を重視した輸送工学の研究を,基礎実験を基として実験的・解析的におこない,ニッケル鉱の安全輸送に関するガイドラインなどを作成した.また,新しい貨物を液状化物質として扱うべきかどうかの簡易試験法を開発し,IMO(国際海事機関)で議論を進めている.2001年8月には生産国である南アフリカおよびザンビアを訪問し,問題点を追求した.

船舶のライフサイクル・アセスメント
教授 浦 環[代表者],大学院学生 加藤陽一
船舶は,NOxを大気中に放出する大きな要因である.燃料消費も多大であり,解徹は多くの産業廃棄物を生む地球環境のなかで,船舶あるいは船舶輸送がどのように影響を与えているか,他の輸送手段と比較すると優劣はどうか,あるいは,どう改良すべきかなどは,船舶の一生を通じた評価が必要である.これを環境に関する思想の面から研究している.

海底測地技術の開発
教授 浅田 昭
地震・津波防災対策研究の一環として,海底での長期地殻変動観測を目的とする海上保安庁との共同観測研究プロジェクトを実施.東海,相模,三宅西方,房総から釜石沖の水深400〜2000mの海底に,新開発の海底音響基準局システム14局を設置し,キネマティックGPSとリンクした高精度の海底音響測地手法の開発研究を行なっている.

海底地形の計測技術の高度化
教授 浅田 昭
航海,海域管理,港湾工事,海底ケーブルやパイプラインの敷設,海洋資源調査,ダム・河川の浸食・堆砂の把握,海洋の地震,津波,火山の防災対策,海洋地球科学などの利用に即した,海底地形調査,解析の研究.AUV搭載型地形計測ソーナーの開発,合成開口ソーナーの開発,マルチビーム音響測深技術の高度化の研究を行なっている.

海底地形情報の解析,利用法
教授 浅田 昭
地形・音響画像情報のビジュアル解析,データ管理手法,地形解析手法の高度化.航海,漁労,海洋工事の新支援システムの開発を行なっている.

極限環境維持技術の研究開発
客員教授 高川 真一
海底下地中深部に生息するバクテリアを現場環境を保持しつつ地上に回収し,同環境を保ったまま培養して,その生態・特徴を研究し,生命の起源も含めた生物学的研究の推進に寄与することを目的とする.維持環境は圧力2000気圧,温度300℃を目標とする.本研究は地球深部探査船「ちきゅう」の開発とリンクしている.この船で採集する地下深部の円柱状試料(コア)を保圧したまま船上に回収し,圧力保持下(温度は室温でも可:冬眠状態になるだけ)でバクテリアを分離した後に,同圧&高温下で培養する.

トルクバランスケーブルの捻れに関する理論的研究
客員教授 高川 真一
内外2層を互いに逆方向に撚って捻れトルクをバランスさせた長大ケーブルが大水深遠隔操縦海中ロボットに用いられるが,このケーブルは滑車を通ると概ね1000mにつき数回ないし数十回の割合で回転することが認められている.そして逆に引くと回転方向も逆になる.この原因は過去数十年にわたって皆目見当がつかなかったが,本理論研究の結果,滑車でケーブルが曲げられると強度メンバーの配置が変わり,その軌道の長さが変化するためであることが判ってきた.

マイクロチップを用いた現場微生物分析システムの基礎研究
助教授 藤井 輝夫[代表者],山本 貴富喜,大学院学生 福場辰洋,研究実習生 松永真之,研究員 長沼 毅(広島大学)
海中あるいは海底面下に存在する微生物の性質を調べるためには, サンプリングした海底泥を地上で分析するだけでなく, 例えば現場での遺伝子の発現状態を把握することが重要である. 本研究では, マイクロチップによる分析技術を応用して, 海底大深度掘削孔内や自律海中ロボットなどの移動プラットフォームに搭載可能な小型の現場微生物分析システムの実現を目指している. 本年度は, フロースルー型遺伝子増幅(PCR)反応デバイスの圧力試験装置を製作,導入した.

微小スケール反応・分析システムに関する基礎研究
助教授 藤井 輝夫[代表者],山本 貴富喜,技術官 瀬川茂樹
マイクロファブリケーションによって製作した微小な容器や流路内を化学反応や分析に利用すると, 試薬量や廃棄物の量が低減できるだけでなく, 従来の方法に比べて高速かつ高分解能の処理が可能となる. 本研究では, そうした処理を実現する反応分析用マイクロチップの製作方法の基礎研究を行うと同時に, 微小空間に特有の物理化学現象について基礎的な検討を行っている.

生化学反応用マイクロリアクターの開発
助教授 藤井 輝夫[代表者],山本 貴富喜
マイクロリアクターはデッドボリュームが小さいために微量のサンプルで反応が行えるだけでなく, その製法上, ヒータやセンサデバイスなどの集積化やリアクターそのものの並列化が容易であるという特徴を持つ. こうした特徴を活かして, ポストゲノムシーケンス時代に要求される大量の遺伝情報の効率的な翻訳を行うシステムとして, 無細胞系の蛋白質合成を行うマイクロリアクターの開発を進めている.本年度は,温度制御性能を向上させた改良型のマイクロリアクターを製作し,蛍光蛋白質の合成に成功した.

マイクロ構造を用いた真正粘菌変形体における振動現象の観察と解析
助教授 藤井 輝夫[代表者],協力研究員 高松敦子
真性粘菌変形体には, その固有の性質として原形質流動に由来する変形体厚みの振動現象が見られる. マイクロ構造内において粘菌変形体を培養し, その形状をパターニングすることによって, 複数の変形体間の結合強度や情報伝達の時間遅れのパラメータを調節することができる. 本研究では, それらのパラメータを変化させることによって, 複数の変形体間の振動の相互引き込み現象を観察すると同時に, 高次の非線形振動子結合系のモデルとして, その解析を進めている.

マイクロチャネル構造における細胞培養に関する研究
助教授 藤井 輝夫[代表者],研究機関研究員 Eric Leclerc, 助教授 酒井 康行, 教授 畑中 研一,博士研究員 Serge Ostrovidov
マイクロチャネル構造を用いると,従来ペトリディッシュ上で行ってきた培養系に比べて,栄養供給や酸素供給のための流れを強制的に与えることができるので,細胞の外部刺激に対する応答の観察や培養による組織構築などに利用できる可能性がある.本研究では,PDMSを材料としたマイクロチップ上にチャネル構造を形成し,チャネル内に部位特異的に細胞を固定化する方法や組織構築のための大規模チャネルネットワークにおける培養方法などについて検討を進めている.

反応分析用マイクロチップにおける光デバイスの集積化
助教授 藤井 輝夫[代表者],博士研究員 Serge Camou, 教授 藤田 博之, 教授 荒川 泰彦
生化学反応や分析の検出には,一般に蛍光や発光など光を用いた検出手法が用いられる.反応や分析に用いるマイクロチップ上に,光源や光検出の機能を有するデバイスを集積化することができれば,従来,外部に用意しなければならなかった蛍光観察のための大規模な装置類を必要とせず,ワンチップで蛍光の励起及び観察を行うことが可能となる.本研究では,こうした光デバイスをマイクロチップ上に集積化することを目的として,チップの材料であるPDMSによるマイクロレンズ構造の製作や有機半導体材料を用いた光源の集積化について検討を進めている.

分子計算用マイクロ流体デバイスの研究開発
助教授 藤井 輝夫[代表者],大学院学生 金田祥平,助教授(東工大)山村雅幸,教授(東大)萩谷昌巳
分子計算は主としてDNAを情報担体とし,分子そのものの超並列性を利用して,従来の計算手法では計算が困難であった問題を解こうとする新しい計算パラダイムである.本研究では,これまで試験管等を用いて行われてきた計算のための反応や分離の操作をマイクロチップ上で実現することによって,分子計算の新しい実装技術の開発を試みている.

マイクロチップを用いた現場化学センシングに関する研究
助教授 藤井 輝夫[代表者],大学院学生 臼井眞介,大学院学生 福場辰洋,助手(京大)岡村慶
海水中に含まれる微量金属イオンを現場で計測することは,深海の熱水活動を把握する上で極めて重要である.本研究では,マイクロチップ技術を用いて,そのような計測を実現し,従来のシステムに比べて小型かつ多項目の計測が可能なデバイスの実現を目指している.具体的には,マンガンイオンをマイクロチップ上で化学発光によって計測する方法などについて検討を進めている.

電界効果トランジスタを用いた現場型pHセンサの特性に関する研究
助教授 藤井 輝夫[代表者],研究実習生 西来路正彦,研究員 下島公紀(電中研),大学院学生 福場辰洋,研究員 許正憲(海洋科学技術センター)
海水のpHを現場で計測可能なセンサを用いれば,深海から噴出する熱水プルームの構造や海洋隔離されたCO2の拡散状況などを把握する上できわめて有用なデータが得られる.本研究では,電界効果トランジスタ(ISFET)を用いた現場型pHセンサについて,深海における性能を評価する目的で,その温度と圧力に対する特性変化を詳細に調べている.

マイクロ波リモートセンシングによる海面計測
助教授 林 昌奎
海面は海上風,波浪,潮流などの環境要因により常に変動する.海面計測には主に,定点ブイ,漂流ブイ,観測船あるいは海底設置超音波機器など現地設置型計測機器が用いられている.しかし,現地設置型計測機器の設置・運用には,気象および地理条件による様々な制約や困難が伴う.本研究では,自然条件に制約されることなく海面計測が可能な能動型マイクロ波センサーであるマイクロ波散乱計,合成開口レーダーを用いたリモートセンシングによる海面計測手法の開発を行っている.現在は,実験水槽にて生成した模擬海面によるマイクロ波散乱の直接計測,数値生成海面を用いたマイクロ波散乱の理論解析を行い,海面生成要因とマイクロ波散乱との因果関係の解明を行っている.

氷海域における流出油による環境影響評価に関する研究
助教授 林 昌奎
海氷が水面を覆う氷海域での流出油は,油が海氷の下に隠れるなどにより,その流出範囲の特定及び回収は非常に困難である.氷海域での流出油は流氷と共に移動し,その範囲を広げる.回収のは長い時間を要し,その間,周辺海域の環境に及ぼす影響は計り知れない.本研究では,氷海域での流出油が環境に及ぼす影響を評価するための手法開発を行った.

超大型浮体構造物に設置する応答低減装置の最適配置に関する研究
助教授 林 昌奎
振動水柱型エネルギー吸収装置,鉛直平板,水平平板など様々な超大型浮体構造物応答低減装置が開発されている.それぞれの装置が,超大型浮体構造物の応答を低減に有効であることは,各々の研究から示されているが,このような装置をどのくらいの大きさにし,どのように設置したらその効果を最大限引出すことが出来るかは,今だ未知数である.この研究では,最適化手法を用いそれぞれの装置をどんな大きさにし,どのような組合せで,どのように配置すれば,その効果を最大限にする手法の開発を行う.

大水深ライザーの動的応答特性に関する研究
助教授 林 昌奎
ライザーは比較的単純な構造物であるにもかかわらず,作用する流体外力,構造自体の応答特性も一般に非線形である.また,外部流体および内部流体は,密度や流速さらには構造の変形に応じて複雑な力を構造に及ぼす.これらの問題は,対象となる水深が深くなりライザーが長大になるに従い,強度が相対的に低下したり,ライザー自体が相対的に柔軟になり動的挙動が顕著になることにより,強度設計,安全性確保の観点からより重要になる.そのため,これらの応答特性を正確に把握し,諸課題を解決することが大水深掘削システムを実現する上で重要となる.

マイクロメカトロニクス国際研究センター

シリコンマイクロマシニングによる微小振動子の製作に関する研究
助教授 年吉 洋, 教授 藤田 博之, 助教授 川勝 英樹[代表者],JST 小林 大
100MHzレンジの高い周波数で振動するメカニカル共振器をシリコンマイクロマシニングで製作する方法を検討.

半導体微細加工による並列協調型マイクロ運動システム(継続)
教授 藤田 博之[代表者],助手 安宅 学, 外国人客員研究員 イブ アンドレ シャピス・大学院学生 福田 和人
半導体マイクロマシーニング技術の利点の一つである, 「微細な運動機構を多数同時に作れる」という特徴を生かして, 多数のマイクロアクチュエータが協調してある役割を果たす, 並列協調型マイクロ運動システムを提案した. アレイ状に並べた多数のアクチュエータでシリコン基板の小片を運ぶことができる. 制御回路とアクチュエータを含むモジュールを平面的に並べ, 物体の形状による分別を行う機構の設計と制御法と制御アルゴリズムを検討した. 流体マイクロアクチュエータのアレイを歩留まりよく作るプロセスを考案し,搬送動作を確認した.今後は,別途作ったVLSIチップと一体化することを試みる.

マイクロアクチュエータの応用(継続)
教授 藤田 博之[代表者], 助教授 年吉 洋,技術官 飯塚 哲彦, 博士研究員 三田 信・アレクシス ドゥブレー,ニコラ ティエレスラン
VLSI製造用の種々の微細加工技術によって可能となった, 微細な電極パターンや高品質の絶縁薄膜を利用して, 静電力や電磁力などで駆動する超小型アクチュエータを開発し, 種々の応用デバイスを試作している. 半導体レーザや発光ダイオードと光ファイバの光軸合わせ用微動機構, マイクロ光スキャナ, ハードディスク装置の微細トラッキング用マイクロアクチュエータ, マイクロ機構による乱数発生デバイスなどを対象に研究を進めている.

真空トンネルギャップ中の極限物理現象の可視化観測(継続)
教授 藤田 博之[代表者], 助教授 年吉 洋,助教授(香川大)橋口 原, 博士研究員 三田 信,大学院学生 角嶋 邦之・河原 宏昭・野澤 尚幸
マイクロマシニング技術を用いて, 走査トンネル顕微鏡の(STM)の探針とそれを動かすマイクロアクチュエータを一体で製作している. 断面の寸法が数十ナノメートルのナノ探針を安定して作製できるようになった. このマイクロSTMを, 電子位相検出方式の超高分解能透過電子顕微鏡の試料室に入れ, トンネル電流の流れるギャップを直視観察する計画である. 電界電子放出デバイスについて,電流電圧測定と針先形状観察を同時に行い,ある電圧で針先が丸くなるとともに電流が急に減少する現象を見いだした.

マイクロマシーニングによる微小光学システム(継続)
教授 藤田 博之[代表者], 助教授 年吉 洋,助手 アニエス ティクシエ, 博士研究員 三田 信, 大学院学生 猿田訓彦・肥後昭男
光路に対して垂直に動く微小ミラーのアレイを用いた光マトリックススイッチを作り, 良好な性能を得た. また, 3次元的にチップを組み立て, 光ファイバー, 光マイクロマシン, レーザ等をマイクロシステムに組み込む技術を開発した. さらに, 並列可変光インタコネクションの実現を目指し, 2次元走査可動レンズのアレイの製作を試みている.

マイクロマシニング技術のバイオ工学への応用(継続)
教授 藤田 博之[代表者], 助教授 年吉 洋,助教授(香川大)橋口 原, 助手 アニエス ティクシエ, 外国人客員研究員 ゴンザロ カボドゥヴィラ・フィリップ コケ, 博士研究員 マチュー ドゥヌアル, 大学院学生 横川 隆司・田 宗勲・新田 英之
バイオ工学のツールをマイクロマシニングで作る研究を行っている. 特定のタンパクを認識する分子を固定したパッチのアレイを作り, そこに細胞を選択的に吸着することができた. また, マイクロ構造内でニューロンを培養し, 人工的結合をさせることも試みている. チップ上に生体分子モータを固定し, その回転が温度により変化する様を一分子レベルで観察した. また, リニア分子モータによりマイクロ構造をチップ上で搬送できた. 更にDNA分子を可動マイクロ構造で把持した.

「マイクロメカトロニクス国際研究センターの項目を参照」
教授 増沢 隆久

マイクロ放電加工に関する研究(継続)
教授 増沢 隆久[代表者], 助手 藤野 正俊, 大学院学生 蔡 曜陽, 田口 敬章
数μmから数百μmの寸法領域の三次元的形状加工において, 放電加工は最も高精度で加工できる方法の一つである. 本研究では, 微細軸加工の新しい手法として開発したワイヤ放電研削法(WEDG)をもとに, 超微細穴加工, マイクロ加工・組立システム, さらに3次元的微細形状加工への応用に関する研究を行っている.

機械的マイクロ加工に関する研究(継続)
教授 増沢 隆久[代表者],助手 藤野 正俊・大学院学生 江尻 鉄平
打ち抜き, 切削, 研削等の機械的加工法は生産性, 加工精度ともに優れた方法であるが, 微細寸法の場合は工具の製作, 調整が容易でない. 本研究では, 工具製作を組込んだシステムにより, 数十μmの寸法の打ち抜き, ドリル加工, エンドミル加工, 超音波加工, 研削などの実用化を進めている. また,切削と電気加工の複合システムの開発を行っている.

三次元的微細形状測定法の開発(継続)
教授 増沢 隆久[代表者],外国人客員研究員Jean Bernard POURCIEL・外国人博士研究員 Laurent JALABERT・助手 藤野 正俊
微細な三次元的形状測定の新しい手法として, 電気的接触検知を用いたバイブロスキャニング法(VS法)及びピエゾ抵抗素子を用いた手法(SDAPPLIN法)を開発し, 細穴内部形状測定等への応用研究を行っている.

電解加工を応用したマイクロ加工の研究(継続)
教授 増沢 隆久[代表者],研究員 酒井 茂紀・ 助手 藤野 正俊・大学院学生 江尻鉄平
パルス電流による電解加工の応用技術として極短パルスを用いたマイクロ3次元形状加工および微細表面の平滑化の研究を行っている.

Hole Area Modulation 法による3Dマイクロ加工
教授 増沢 隆久[代表者],助手 藤野 正俊・外国人客員研究員 Jean Bernard POURCIEL
マスクパターンに加工深さ情報を入れ込んで,単純な操作により三次元形状のマイクロ加工が行える新しい手法,Hole Area Modulation (HAM) 法を考案し,エキシマレーザによる方法と,化学エッチングによる方法の開発を進めている.

ナノ振動子とマルチカンチレバーアレーの作製
助教授 川勝 英樹
シリコンの異方性エッチングを用いて探針を有する微小なカンチレバーを作製した.小型化により固有振動数を高めるとともに,使用目的に応じたバネ定数を実現することに成功した.質量や力の検出分解能を高める上で重要な,振動子のQ値を向上させるための処理方法や,振動子の設計を行った.

ナノメートルオーダの3次元構造物の動的機械特性の計測
助教授 川勝 英樹
10nmオーダの3次元構造物の固有振動数や振動のQ値を光学的方法により計測する方法の研究を行っている.現在100MHz,10pmの計測が可能で,現在,1GHzまでの計測を計画している.

ナノメートルオーダの機械振動子による質量と場の計測
助教授 川勝 英樹
サブミクロンの機械振動子を作製し,それをAFMの探針に用いて力や質量の検出を行う.現在,大きさ2ミクロン,バネ定数10N/m程度,固有振動数40MHz,Q値8000のものを作製している.計測には,高真空用ヘテロダインレーザドップラー振動計を組み込んだAFMヘッドを用いた.

100万本の原子間力顕微鏡カンチレバーのパラレル検出の研究
助教授 川勝 英樹
各カンチレバーと基板の構成するフィーゾー干渉計マイクロキャビティの輝度をCCDカメラ等の受像器に導くことにより,各カンチレバーの変位や振幅を計測する研究を行っている.液中応用を目的に,倒立顕微鏡にカンチレバーアレーと光学顕微鏡,干渉計を組み込んだ.

走査型力顕微鏡のカンチレバーのねじれ固有振動の自励を用いた探針の面内位置変調と,それによる散逸のマッピング
助教授 川勝 英樹
走査型力顕微鏡のカンチレバーのねじれ振動を自励により励起し,それにより探針の面内位置変調を実現した.一定の加振力でねじれ振動を励起し,ねじれ量を検出することにより,試料の場所によるダンピングを検出した.ねじれの自励を実現したことにより,固定周波数励起による,コントラストの反転等の問題点が解消された

ナノメートルオーダの3次元構造物の特性評価と応用
助教授 川勝 英樹[代表者],大学院学生 福島 公威・川井 茂樹, 助手 星 泰雄, 助教授 川勝 英樹
ナノメートルオーダの機械振動子などの, 3次元構造物の機械・電気特性の測定と, その応用の研究を行っている. そのために, 走査型電子顕微鏡内にマウントする走査型プローブ顕微鏡を実現している.

結晶格子を基準としたリニアエンコーダ
助教授 川勝 英樹[代表者],助手 星 泰雄, 助教授 川勝 英樹
走査型トンネル顕微鏡や, 走査型力顕微鏡を用いて結晶の周期性を読み出してリニアエンコーダのスケールとして用いる研究を行っている. 大気中において黒鉛の結晶周期を反映した鋸波形を接触モードの走査型力顕微鏡により読み出しながら,同時に結晶を固定した試料台の変位をレーザー干渉計で測定したところ,レーザー半波長分の変位に対応する鋸波の数は,黒鉛の格子間隔から計算される数よりも3割多かった.この違いの主な要因は格子列の読み外しと考えている.幅を持った範囲を観察することにより,格子列の読み外しを検出・補正した上で,精度検証を行う予定である.

結晶格子を基準とした位置決め
助教授 川勝 英樹[代表者],助手 星 泰雄, 助教授 川勝 英樹
結晶格子の規則正しい原子のならびを走査型トンネル顕微鏡の探針でサーボトラッキングすることによって, 結晶構造を2次元的な動きとして取り出し, xyステージの位置決め制御に用いることが可能となる. 現在, ミクロンオーダの範囲での変位制御を目指している.

走査型力顕微鏡の探針の軌跡の計測
助教授 川勝 英樹[代表者],助手 星 泰雄, 助教授 川勝 英樹
本研究は走査型力顕微鏡探針のxyz空間内での動きを原子レベルの分解能で求めることを目的としている. 装置構成としては, 光てこ2個を用いてカンチレバーの異なる2点での傾きを求めた. その結果, 探針の試料面内方向の変位と法線方向の変位を分離することが可能となり, より正確な探針の軌跡を求めることが可能となった. この測定法は原子レベルの摩擦現象を可視化するのに有効であると伴に, 走査型力顕微鏡を用いた形状計測の精度向上に役立つものである.

マイクロマシニングによる透過型光ファイバスイッチ
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之,年吉研 大学院生 猿田訓彦
従来のマイクロミラーを駆動する方式の光ファイバクロスコネクタとは異なり,マイクロレンズを駆動する新たな方式のMEMS光ファイバスイッチを考案し,試作,評価を行った.

シリコンマイクロマシニングによる可変光減衰器
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之,サンテック(株) 諫本圭史
静電駆動型のマイクロミラーをもちいた光ファイバ可変減衰器を企業と共同開発した.

マイクロメカトロニクスとフォトニック結晶の融合
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之, 教授 荒川 泰彦
フォトニック結晶中/上で振動する機械的振動子をマイクロマシニング技術で製作し,新しい方式の光変調器を検討する.

マイクロマシニングによる光ファイバスイッチ
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之,光伸光学工業 小尾浩士
光ファイバスイッチの実用化に向けて,マイクロマシニングによる静電駆動型のミラー等を試作.

静電駆動型マイクロアクチュエータの解析手法に関する研究
助教授 年吉 洋[代表者], 教授 藤田 博之,年吉研技官 高橋巧也
数値演算による静電容量の予測を,静電アクチュエータの変位-電圧解析モデルに組み込む手法の研究.

自己組織化単分子膜を用いたナノパターニングに関する研究
助教授 金 範
新しい概念の自己組織化単分子膜(SelfーAssembled Monolayers, SAMs)を利用して, シリコン表面上に10 nm以下の疎水性の単分子膜を作り, 表面マイクロマシニングの問題であるsticknessを解決する新しい表面処理法を開発した. 今後, 様々な機能性自己組織化単分子膜の工夫により広い範囲においてより簡単にマイクロ・ナノパターンを製作する研究を行う.

単分子の光学的計測するためのマイクロマシンニング用いた新走査型近接場顕微鏡プローブの開発
助教授 金 範
走査型近接場顕微鏡は光学的な透過性という観点からナノメートルイメージングを行えるという点で重要なテクニックであり,DNAやタンパク質等の生体分子系の観察,色素分子のpolarization検出等のバイオ・ナノメートル表面分析や化学研究への新しい応用科学機器として,さらに近年ナノマシニングと超高密度data storageに向けて次世代技術となる可能性がある.しかし,この技術の大きい問題になっているのは,極微細なapertureを持つプローブの作製が極めて難しいことであった.そこで,シリコンモールドの新しい表面処理方法,新材料の導入によって優れた機能を持つSNOMプローブの製作に成功し,現在まではFocused Ion Beam(Ga収束イオンビーム)マシニング法で100 nm以下のtip apertureを作製した.完全にバッチプロセスで製作できるナノモールドマシニング法の開発と水晶のマイクロ加工法の工夫して光学的特性の分析と応用実検,評価等を行っている.

生体細胞を操作,計測するポリマーマイクロプローブ製作に関する研究
助教授 金 範兌代表者],マイクロメカトロニクス国際研究センター
マイクロ流体Channelと電極を持つポリマーのマイクロプローブアレーを製作し,bio-morph thermal actuationにより自己位置制御を行いバイオセルをCapture,操作し計測するマイクロデバイスの設計や製作に関して研究する.生体細胞を個別に計測できるデバイスである.

ステンシルマスクと自己組織化単分子膜を用いたナノスケールのパターニング
助教授 金 範兌代表者],マイクロメカトロニクス国際研究センター
本研究では,ステンシルマスクを用いた直接ナノパターン方法からさらにその上マイクロコンタクトプリンティングを用いて自己組織単分子膜のナノスケールのパターンの製作に関した研究である.マイクロマシニングで製作したナノステンシルマスク,もっと微細な形状のPDMSのスタンプ等の設計,製作に関する研究とマイクロコンタクトプリンティングの方法でナノスケールのSAMのパターンを広い範囲において簡単に行う方法を開発する.これからSAMの表面の状況と多様な材料についての適用性,高度なSAMの構造規制等を工夫する.

都市基盤安全工学国際研究センター

個別要素法を用いたコンクリート等輸送装置の性能評価に関する研究
教授 魚本 健人[代表者], 講師 加藤 佳孝,魚本研 大学院学生 吉國美涼
現在,建設現場におけるコンクリートや土砂の輸送は,ベルトコンベヤやダンプトラック等で行われている.しかし,ベルトコンベヤは傾斜角度に限界があり,またダンプトラックでは迂回する道路が必要となり,いずれの工法も設備規模が大きくなることや,コスト,自然環境面で問題があることが指摘されている.この様な現状に対して,共同研究組織は急傾斜地でのコンクリート輸送を可能となる装置を開発し,実証実験によってその有効性を確認している.しかし,実証実験を基礎としているため,必ずしも施工性能の評価が十分でなく,検証した範囲内での性能保証しかできないのが現状である.本共同研究では,この実証実験結果を活用し個別要素法を用いた数値解析により試験装置の施工状況を表現するとともに,施工性能の評価(適用限界等)を解析的に検討するものである.前述したように,本装置は建設現場における自然環境を破壊することなく,コンクリートや土砂を効率的に輸送することが可能であり,極めて有効な輸送手段である.

コンクリートのひび割れへの樹脂注入効果に関する検討(継続)
教授 魚本 健人[代表者],技術官 星野 富夫
コンクリート構造物の鉄筋腐食に関する研究については, その劣化のメカニズムや防食方法などが検討している. しかし, 実際の構造物に発生したひび割れの補修方法や耐久性に関する検討は殆どなされていない. そこで, 品質の異なるコンクリート梁に発生させたひび割れに, 注入深さの異なる樹脂注入を行った試験体を作製し, 強度特性を明らかにするとともに促進炭酸化や模擬海水浸漬繰り返しなどによる長期の耐久性に関する検討を行う. また, 実物大のコンクリート梁への注入実験も行い, 注入樹脂の粘度と注入の関係なども明らかとする研究を行う.

若材齢時の乾燥がセメント硬化体の内部組織構造形成ならびに物理特性に与える影響
教授 魚本 健人[代表者],大学院学生 伊代田 岳史
コンクリート構造物が作られ供用を開始するまでには様々な周囲環境に曝される.特に若材齢時において乾燥環境に曝されたセメント硬化体は水和反応が阻害され強度・耐久性に影響を及ぼすとされる.しかし,降雨や湿度変化などにより水分が供給される環境も考えられることから,時々刻々と変化する環境に応じたセメントの水和反応とそれに伴う内部組織構造形成を考察した.また,内部組織構造により大きく影響を受ける強度や耐久性といった長期における物理特性に発展させ,内部組織内に起こっている事象をモデル化することをこころみている.

コンクリート表面保護材料(塗膜)の耐疲労性に着目した実験的研究(継続)
教授 魚本 健人[代表者],技術官 西村 次男, 研究実習生 奥山 康二
コンクリート構造物は, 多くの立地条件のもとで様々な劣化現象が現れる. 主にコンクリートの劣化に大きな影響を与えるCl−やCO2の外的要因を防御する対策, またコンクリート表面に現れるひび割れに対する簡単な延命対策として, コンクリート表面保護材料(塗膜)が使用されている. これら塗膜には, 様々な要求性能が存在しているが, その性能を評価する方法としては化学的な性質に着目されたものが多いのが現状である. 物理的な評価としては, 「ひび割れ追従性試験(静的引張試験)」があるが, 疲労荷重がかかる構造物を考慮した場合のひび割れ追従性は非常に重要な要因となってくる. 本研究では, 一般的に使われている塗膜材料をモルタル試験体に塗布し, 塗膜の耐疲労性に着目し疲労試験を行い, 新たな材料の評価方法を検討する.

DEMと実験を用いた吹付けコンクリートの解析(継続)
教授 魚本 健人[代表者],大学院学生 Quoc Huu Duy Phan
吹付けコンクリートは1907年以来100年近く用いられてきた高圧で吹付けるコンクリートである. 吹付けコンクリートの品質は様々な施行や材料によって左右される. 過去において本研究室で吹付けコンクリートの二次元数値解析は行われてきた. 本研究は貴重な研究の拡張として三次元個別要素法(DEM)を用いて, 異なった吹付け条件, 物質, 配合, 加速度を考慮した吹付け過程をモデル化するものである. シミュレーションの結果, DEMは定量的にも定性的にも吹付け過程をシミュレートする道具として優れていた. 一方で耐久性や強度, リバウンド率なども含めて実験により吹付け条件や材料の様々な要因の影響を明らかにしている.

マルチスペクトル法のコンクリート構造物劣化調査への応用
教授 魚本 健人[代表者],大学院学生 金田 尚志
コンクリート構造物の劣化調査は一般に,外観調査等の目視点検,コア等を採取し,コンクリート中の成分を測定する方法,コンクリートのかぶりをはつり,内部の鋼材の腐食状況の確認,自然電位法による腐食の推定等が行われている.また,一部破壊型調査ではなく,各手法による非破壊検査も行われている.本研究では,ハイパースペクトルリモートセンシングの技術を用い,非接触でコンクリート表面の劣化因子物質の検出を試みる.本手法の適用により,短時間,大断面の診断が可能になり,調査費用の低減が期待できると考えられる.

床版防水工がコンクリート床版に及ぼす影響(継続)
教授 魚本 健人[代表者],大学院学生 野村 謙二
高機能舗装の採用, 凍結防止剤として塩化ナトリウムの散布の増加など, 道路橋の鉄筋コンクリート床版は以前よりも一層過酷な環境に置かれるようになってきた. 鉄筋コンクリート床版の耐久性向上の有効な対応策として床版防水工がある. アスファルトとコンクリート床版に挟まれた箇所に敷設される床版防水工の効果についての研究は極めて少ない. このため, 現行の床版防水工の効果はどの程度なのか, 要求する性能を満たすためにはどのようにすればよいのかを明らかにすることを目的として研究を行っている.

補修した既存鉄筋コンクリート構造物の力学的特性
教授 魚本 健人[代表者],大学院学生 Harsha Priyankara Sooriyaarachchi
鉄筋コンクリート構造物は種々の劣化が生じているが,維持管理のためには各種の補修を行う必要が生じる.一般的に行われている補修方法は断面修復とコーティングの併用である.本研究では断面修復等行った鉄筋コンクリート梁がどのような力学的挙動を示すかを実験的に調べ,問題点の抽出と対策に関する実験・解析を行っている.

各種要因がPCグラウトの充填性に及ぼす影響
教授 魚本 健人[代表者],研究実習生 宮本 一成
PCグラウトは,その品質や施工の良否によってPC構造物の耐久性に大きな影響を与えることが言われており,シース内のPC鋼材まわりの隙間にグラウトを完全に充填させることが必要である.近年のノンブリージングタイプグラウトの普及に伴い,粘性を高めてシース内を充満させながらグラウトを注入し,空気の残留を防止するような施工方法も用いられているが,粘性を高めることによるデメリットとして,施工性の低下等が挙げられる. そこで,本研究では,PCグラウトの流動特性,シース径や配置条件,施工性を要因として挙げ,これらがPCグラウトの充填性にどのような影響を与えるか検討を行った.

コンクリートの品質に対する化学混和剤の作用効果に関する研究
教授 魚本 健人[代表者],受託研究員・杉山知巳
コンクリートの品質,特に硬化コンクリートの耐久性を論じうる上で,使用材料や配合条件がコンクリートの空隙構造に与える影響を検討することは非常に重要である.また,近年コンクリート製造に欠かせない材料の一つになっている化学混和剤に関しては,空隙構造に対する作用効果が明確になっていない. そこで,化学混和剤の持つ種々の特性が,硬化コンクリートに及ぼす影響を明らかにすることを目的とし,様々な化学混和剤,中でも最も頻繁に用いられている減水剤系の混和剤を中心に,減水性,凝結遅延性,空気連行性等の特性が,硬化体の空隙構造形成過程に与える影響を明確にする.

新しいガラス繊維を用いたGFRPロッドの強度と耐久性に関する研究
教授 魚本 健人[代表者],(受託研究員)杉山基美
塩化物イオンの影響を受けるコンクリート構造物の多くは,その内部に埋設された鋼材の腐食により著しく劣化している.この問題を抜本的に対処する方法として,塩化物イオンによって腐食を生じない繊維強化プラスチックス(FRP)の利用が注目されてきた.これまでガラス繊維,アラミド繊維,カーボン繊維を用いたFRPロッド(GFRP,AFRP,CFRP)の強度と耐久性に関する多くの研究がなされてきたが,GFRPについてはAFRP,CFRPに比べて耐アルカリ性,疲労特性,クリープ特性が劣り,実用化には大きな課題を残していた.本研究では,従来と異なる新しいガラス繊維を用いたGFRPロッドの耐久性の検討を行っている.

コンクリート構造物の常時モニタリング手法の開発 (継続)
教授 魚本 健人[代表者],研究実習生・村瀬豊,教授 魚本 健人, 大学院学生 金田 尚志
日本の社会基盤整備における重要な課題は,供用されている既存構造物をいかに効率よく維持管理を行うことである.今後,人口減少期に入り建設分野の技術者も減少していくと考えられるが,建設後数10年が経過し補修,補強を必要とする構造物が増加していくため,従来の技術者による点検では限界がある.高い信頼性を有する常時モニタリング手法の開発がこの問題を解決する一歩である.光ファイバー網等の利用により,大量のデータを遠隔地にリアルタイムで転送できるようになり,常時モニタリングの環境構築は容易になってきた.本研究ではコンクリート構造物を対象とし,高精度,高耐久性,低コストのセンサー,常時モニタリング手法について検討する.

補修を行ったコンクリート構造物の耐久性評価に関する研究
教授 魚本 健人[代表者],受託研究員 槇島修
劣化した鉄筋コンクリート構造物を断面修復材によって補修する場合,補修材料の耐久性に関わる要求品質が明らかでなく,使用される材料や施工方法によって耐久性がまちまちである.そのため,特定の材料や施工方法によって補修を行った場合に,補修した構造物の耐久性を予測することができないのが現状である.そこで,補修した鉄筋コンクリート構造物の耐久性を評価することを目的として,断面修復工法を対象に,補修材料の耐久性を明確にし,施工方法が耐久性に与える影響についても明らかにする.

リモートセンシングによる環境・災害評価手法の研究
教授 安岡 善文[代表者], 助手 越智 士郎,博士研究員:Tran Hung, Jan Kucera, 大学院生:遠藤貴宏,竹内 渉,高橋俊守,Guo Tao, Manzul Hazarika
人工衛星からのリモートセンシングデータを利用して,地表面の被覆状況,植生分布などを計測し,都市・地域スケールから大陸・地球スケールまでを対象として,環境・災害に関する各種のパラメータを評価する手法を開発する.2002年においては,新たに地球観測衛星TERRA/MODISデータの受信・処理設備を設置し,東アジアの衛星観測ネットワークを構築した.さらに,これらのデータを利用して,シベリア地域の湿原,アジアの水田からのメタン発生量の推定,シベリア森林地域における火災による温暖化ガス放出量の評価等を行った.また,都市スケールでは高解像度衛星データ等を利用した都市の3次元構造の計測,アジア諸都市のヒートアイランドの評価等を行った.

ハイパースペクトル計測による生態系パラメータの計測手法の開発
教授 安岡 善文[代表者],教授安岡善文・助手越智史郎・大学院生遠藤貴宏・高橋俊文
陸域生態系による光合成能や二酸化炭素の吸収・放出量を評価することを目的として,高い分解能で計測対象物のスペクトル特性(分光特性)を計測するハイパースペクトル計測により,植物の光合成速度,クロロフィル,リグニン,セルロース,水分含有量などの生物・生理パラメータを計測する手法を開発する.2002年は,実験室レベルで,植生の光合成速度,クロロフィル量等を画像観測するハイパースペクトルイメジャーを開発し,植物の機能パラメータを評価した.

ハイパースペクトル計測によるコンクリート劣化の非破壊計測手法の開発
教授 安岡 善文[代表者],教授安岡善文・助手越智史郎・大学院生遠藤貴宏・佐々木顕一郎
トンネルや高架橋のコンクリート劣化度を評価することを目的として,高い分解能で計測対象物のスペクトル特性(分光特性)を計測するハイパースペクトル計測により,中性化,塩化,硫化などによるコンクリート劣化を非破壊で計測する手法を開発する.2002年は,実験室レベルで,中性化,塩化によるコンクリートの劣化深さを計測する手法を開発した.さらに,これらの劣化をコンクリートの汚れなどによる変化と判別する手法の検討を行った.

Maintenance of concrete structures
客員教授 ミスラ スディール
Development of a methodology to consider the total service life of a concrete structure as made up of an initial maintenence free part and then one with periodic maintenance action. Includes considerations such as non-destructive testing, maintenance strategies and materials, etc.

Codes and specifications for design and construction of concrete structures
客員教授 ミスラ スディール
Study of codes and specifications dealing with design and construction of concrete structures in different countries, and drawing up of a Model Code, especially relevant for the countries in the Asian region.

Non-destructive testing in concrete
客員教授 ミスラ スディール
Application and limitations of various available methods including infrared thermography, natural potentials, etc.

火災煙流動数値解析手法の開発(継続)
助教授 大岡 龍三[代表者], 教授 加藤 信介,学術支援研究員 黄弘,協力研究員 吉田伸治,大学院学生 大竹宏
建築物,地下街,船舶等における火災時の煙流動の数値解析手法を開発している.本年度も昨年に引き続き,都市気候モデルを用いて,阪神・淡路大震災発生時の阪神地方の気象条件を用いて,神戸市のある領域が大火に覆われた場合の広域にわたる熱気流予測を評価した.また,都市火災の伝搬要因の一つである火の粉飛散による飛び火現象の物理モデルを作成し,建物周辺の風の流れを再現するCFD解析と火の粉飛散を連成させて都市火災伝搬を解析した.

建物周辺の乱流構造に関する風洞模型実験と数値シミュレーションによる解析(継続)
助教授 大岡 龍三[代表者], 教授 加藤 信介,技術専門職員 高橋岳生,協力研究員 飯塚悟
建物周辺で発生する強風や乱れの構造に関して,風洞実験や数値シミュレーションにより検討している.建物のようなbluff body周りの複雑な流れ場を予測する場合,標準k-εモデルは種々の問題を有する.特に,レイノルズ応力等の渦粘性近似は流れ場によりしばしば大きな予測誤差の原因となる.本年度は,境界層流中に置かれた高層建物モデル周辺気流の解析にLK型をはじめ,各種のk-εモデルや応力方程式モデルによる解析を行い,その予測精度を比較,検討した.

都市のヒートアイランド緩和手法に関する研究
助教授 大岡 龍三[代表者], 教授 加藤 信介,学術支援研究員 黄弘,大学院学生 原山和也
都市気候解析モデルを開発・利用し,各種ヒートアイランド緩和手法の効果について検討を行う.

基礎杭利用による地中熱空調システムの実用化に関する研究
助教授 大岡 龍三[代表者], 教授 加藤 信介,宋 斗三,民間等共同研究者 関根賢太郎
基礎杭を利用した地中熱利用空調システムの実用化に向けて,実大実験装置などを用いて研究し,システムの有効性・省エネルギー性・環境負荷低減効果等の研究を行い,設計手法などを構築する.

屋外温熱環境の最適設計手法に関する研究
助教授 大岡 龍三[代表者], 教授 加藤 信介,大学院学生 原山和也, 陳宏
屋外放射解析をCFD解析に基づき,屋外の温熱環境の最適設計を行う手法について検討を行う.

地震災害環境のユニバーサルシミュレータの開発
助教授 目黒 公郎
本研究の目的は「自分の日常生活を軸として」,地震発生時から,時間の経過に伴って,自分の周辺に起こる出来事を具体的にイメージできる能力を身につけるためのツールの開発と環境の整備である.最終的には,地震までの時間が与えられた場合に,何をどうすれば被害の最小化が図られるかが個人ベースで認識される.地震災害に関係する物理現象から社会現象にいたるまでの一連の現象をコンピュータシミュレーションすることをめざしている.前者の物理現象編は,AEMやDEMなどの構造数値解析手法と避難シミュレーションを中心的なツールとして,後半の社会現象編は,災害イマジネーションツール(目黒メソッド)や次世代型防災マニュアルを主なツールとしている.

地下の地震断層変位が地表地盤に与える影響度評価
助教授 目黒 公郎[代表者],博士研究員 RAMANCHARLA Pradeep Kumar
1999年に発生したトルコ・コジャエリ地震や台湾・集集地震では, 地震断層運動による表層地盤の変状が, 多くの土木構造物や建築構造物に甚大な被害を与えた. 本研究は, 破壊現象を高精度に追跡できるAEM(Applied Element Method)を用いたシミュレーションから, 地下の断層運動が表層地盤に与える影響を分析するものである.

衝突や火災による構造物の崩壊過程のシミュレーション解析
助教授 目黒 公郎[代表者],大学院学生 ELKHOLY Said Abd Elfattah Said
米国同時多発テロ事件では,ニューヨーク市のマンハッタンにある110階建てのWTCビル2棟が旅客機の衝突とそれを原因とする炎上で,完全に崩壊した.この崩壊で消火活動及び避難誘導をしていた消防士を含め,2800余の尊い人命が奪われた.この事件は,高層ビルの崩壊過程の解明の重要性を強く認識させた.本研究は衝突や火災による高層建築物の破壊挙動を,時間的・空間的な広がりを考慮した上で再現するシミュレーション手法を開発している.この手法とは,目黒研究室で開発した応用要素法(AEM)を大規模で複雑な部材断面を有する構造物に適用しても大幅な自由度の増大なしに解析を行えるように改良を加えたものである.そしてこの改良型AEMを用いて衝突や火災から高層ビルの完全崩壊を防ぐ対策を探っている.

構造物の地震時崩壊過程のシミュレーション解析
助教授 目黒 公郎[代表者],大学院学生 MAYORCA Paola,ELKHOLY Said Abd Elfattah Said,長島 浩,黒田 武大
平成7年1月17日の兵庫県南部地震は, 地震工学の先進国と言えども構造物の崩壊によって多数の犠牲者が発生しうることを明らかにした. 本研究は地震による人的被害を軽減するために, 地震時の構造物の破壊挙動を忠実に(時間的・空間的な広がりを考慮して)再現するシミュレーション手法の研究を進めている. すなわち, 破壊前の状態から徐々に破壊が進行し, やがて完全に崩壊してしまうまでの過程を統一的に解析できる手法を開発し, 様々な媒質や構造物の破壊解析を行っている. そして解析結果と実際の地震被害の比較による被害発生の原因究明と, コンピュータアニメーションによる地震被害の再現を試みている.

非連続体の挙動シミュレーションに関する研究
助教授 目黒 公郎[代表者],大学院学生 榎本 咲美
少し離れた位置からは「連続体の挙動」のように見えるが, 実はばらばらなある大きさの運動単位が, 適当な約束(必ずしも物理的な法則のみではない)に従って, 全体として挙動している現象が多く見られる. 砂時計の砂の運動や朝夕の通勤客, 自動車の流れなどはその典型である. これらの「挙動」は, 連続体の運動として近似できる場合もあるが, 適当な大きさの非連続な物体の集合体の挙動として扱わないと, その現象を適切に理解することはできないことも多い. 本研究室では物理的な約束に支配される現象の代表として, 「土石流」や「砂地盤の液状化現象」, 「地震時の家具の動的挙動」を非連続体解析手法を用いてシミュレーションしメカニズムを研究している. 避難行動など人間に絡んだ挙動については, 「災害時の避難行動特性のシミュレーションと空間の安全性評価」を参照されたい.

地域特性と時間的要因を考慮した停電の都市生活への影響波及に関する研究
助教授 目黒 公郎[代表者],助教授 山崎 文雄, 学部生 山口 紀行
近年, 都市生活の電力への依存が高まる一方で, 自然災害や事故などの様々な原因による停電被害が発生し, 都市機能に大きな影響を及ぼしている. 停電の影響は, 電力供給システムの構造から, 配電所の供給エリアを単位として相互に影響し合い, しかもエリアごとの「電力需要状況・住民特性・産業構成などの地域特性」「停電の原因となる災害の規模」「停電発生時刻や継続時間などの停電特性」等によって, 大きく変化する. そこで本研究では, 配電所の供給エリアを単位とした地域特性と, 停電の発生時刻・継続時間を考慮した都市生活への停電の影響評価法の研究を進めている. 今年度は, 地理情報システムを用いて, 東京23区の314箇所の配電用変電所の電力需要と地域特性のデータベースの構築とその分析を行い, 供給エリア内の大口需要家の影響を含めた考慮した地域特性と, 停電の発生時刻・継続時間を考慮した停電の影響評価モデルの構築を進めている.

電力供給量の変化を用いた地震被害状況と復旧状況の把握に関する研究
助教授 目黒 公郎[代表者],学部生 山口 紀行
地震直後の被災地域の特定と被害量の把握は, 防災関連機関の初動を決定する上で極めて重要である. 本研究は地震前後の電力供給データを用いて, 地域ごとの被害推定を試みるものである. すなわち, 配電用変電所の供給エリアを地域単位として, 地震前の電力需要から地域特性を把握するとともに, 地震後の電力供給量の落ち込み具合から供給エリア内の建物被害を推定する手法を提案するとともに, 両者の関係について分析している. 分析結果からは, 地震後の電力供給量の低下は地域の建物被害と高い相関を持つことが確認されるとともに, 提案手法が, リアルタイム評価が可能, 新たな設備投資がほとんど不要, 天候や時刻に左右されない観測が可能, など有利な点を多く有し, 実用に向けて大きな可能性があることが示されている.

効果的な地震対策支援システムの開発に関する研究
助教授 目黒 公郎[代表者],大学院学生 吉村 美保,近藤 伸也, 客員教授 高橋 健文
兵庫県南部地震以降, 「雨後の竹の子」的に全国の自治体を中心として様々な「地震防災システム」が生まれた. しかしこれらの多くは, 既存のシステムを(ブラックボックス的に?)違う場所に適用しただけの早期地震被害予測システムであり, 地域の地震防災力を高めることに具体的に貢献するとは思えないものもである. このような状況を踏まえ, 本研究では効果的で投資効果の高い地震対策を講じるための地震対策支援システムの開発を進めている. 地震防災システムが持つべき機能の整理に基づいて, 地域の弱点の抽出や異なる事前対策に対する投資効果の評価が可能であるなどの機能を有する「最適事前対策立案支援ツール」の開発を行っている.

実効力のある次世代型防災マニュアルの開発に関する研究
助教授 目黒 公郎[代表者],大学院学生 近藤 伸也, 客員教授 高橋 健文
本研究は地域や組織の防災ポテンシャルを具体的に向上させる機能を持つマニュアルを開発するものである. 具体的には, 現状のマニュアルの性能分析機能, 目的別ユーザ別編集機能, 当事者マニュアル作成支援機能などを有したマニュアルである. このマニュアルによって, 災害発生以前に地域や組織が有する潜在的危険性の洗い出し, その回避法, 事前対策の効果の評価などが可能となる. このコンセプトを用いた防災マニュアルの作成を,内閣府,首都圏の自治体,東京大学生産技術研究所を対象として進めている.

組積造構造物の経済性を考慮した効果的補強手法の開発
助教授 目黒 公郎[代表者],大学院学生 Mayorca Arellano Julisa Paola,Bishnu H.Pandey,黒田 武大,菅野 有美
世界の地震被害による犠牲者の多くは,耐震性の低い組積造構造物の崩壊によって生じている.本研究の目的は,耐震性の低い既存の組積造構造物を,それぞれの地域が持つ技術と材料を用いて,しかも安く耐震化できる手法を開発することである.防災の問題では,「先進国の材料と技術を使って補強すれば大丈夫」と言ったところで何ら問題解決にはならないためだ.一つの目的は,上記のような工法や補強法を講じた構造物とそうでない構造物の地震時の被害の差を分かりやすく示すシミュレータの開発であり,建物の耐震化の重要性を一般の人々に分かりやすく理解してもらうための環境を整備するためのものである.

既存不適格構造物の耐震改修を推進させる制度/システムの研究
助教授 目黒 公郎[代表者], 大学院学生 吉村 美保, 客員教授 高橋 健文
我が国の地震防災上の最重要課題は,膨大な数の既存不適格構造物の耐震補強(改修)対策が一向に進展していないことである.既存不適格建物とは,最新の耐震基準で設計/建設されていない耐震性に劣る建物であり,これらが地震発生時に甚大な被害を受け,多くの人的・物的被害を生じさせるとともに,その後の様々な2次的,間接的な被害の本質的な原因になる.このような重要課題が解決されない大きな理由は,震補強法としての技術的な問題と言うよりは,市民の耐震改修の重要性の認識度の低さと,耐震補強を進めるインセンティブを持ってもらう仕組みがないことによる.本研究は,行政と市民の両者の視点から見て耐震補強をすることが有利な制度,実効性の高い制度を提案するものである.

地震予知情報の工学的な活用法に関する研究
助教授 目黒 公郎[代表者],大学院学生 吉村 美保
我が国では, 1965年以来地震予知研究が行なわれており, 東海地震の危険性が指摘されている東海地域においては, 大規模地震対策特別措置法に基づき地震予知情報を発表する体制が整えられている. しかしこの体制は, 大規模な地震が高い確率で予知されることを前提としているため, 万一予知が空振りに終わった場合にこれらの影響は1日7200億円にものぼると試算されている. 地震予知をとりまくこのような状況は, 結果的に予知の空振りが許容されにくい環境と不確実性の高い情報の公開を困難とする状況を作り出している. 本研究は不確実性を伴った予知情報を防災対策に活用するための考え方, すなわち, 地震発生までの猶予時間とその精度に応じて適正に活用する戦略について研究するものである.

途上国の地震危険度評価手法の開発
助教授 目黒 公郎[代表者],博士研究員 Mehedi A. Ansary, 大学院学生 Mayorca Arellano Julisa Paola,Bishnu H.Pandey,吉村美保
世界の地震被害による犠牲者の多くは,途上国に集中している.この大きな原因の1つに,政府や中央省庁の高官達をはじめとして,多くの人々が地域の地震危険度を十分に把握していないことが挙げられる.この研究は,そのような問題を解決するために,簡便な方法で対象地域の地震危険度,予想される被害状況,経済的なインパクトなどを評価する手法を構築するものである.イランやトルコ,ミャンマーやバングラデシュなどを対象として,研究を進めている.

赤外線法を用いた既設コンクリート構造物の品質評価手法の提案
講師 加藤 佳孝[代表者],研究実習生 芝浦工業大学 小根澤篤志
コンクリートの物質移動特性は耐久性能を支配する重要な要因であり,これまで多くの研究がなされている.しかし,既設構造物のコンクリートの品質(例えば水セメント比など)を定量的に把握することが難しいため,既設構造物の物質移動特性を予測する手法が無いのが現状である.そこで,本研究では非破壊試験を活用して既設構造物の物質移動特性を定量的に評価する手法を開発することを目的としている.

セメント硬化体の内部組織構造のモデル化
講師 加藤 佳孝
従来,コンクリートの内部組織構造の測定には水銀圧入式ポロシメータが用いられているが,様々な問題があるため真の情報をとらえることができない.そこで,ポロシメータの問題点に関する原理をモデル化し,数値解析することで,実際の内部組織構造の予測を行う

不均一性を考慮したコンクリート中の拡散現象のモデル化
講師 加藤 佳孝
コンクリートは,水,セメント,骨材などの大きさの異なる材料で構成されている.このため,その内部組織構造はきわめて複雑となる.結果として,コンクリート中の拡散現象の取り扱いも極めて難しくなる.本研究では,コンクリートを構成する材料の不均一性を考慮して,コンクリート中の塩化物イオンの拡散現象をモデル化することを目的としている.

高耐久コンクリートの限界に関する検討
講師 加藤 佳孝
従来,コンクリートの配合設計は経験則に基づいたものであり,新材料が開発されると,トライアンドエラーにより適切な配合を選定している.本研究では,セメントの充填特性に着目し,新しい配合設計法の提案を行うことを目的としている.さらに,充填特性を用いて,コンクリートの高耐久化の限界に関する検討も行う.

計算科学技術連携センター

次世代量子化学計算システムの開発
客員助教授 佐藤 文俊
密度汎関数法による大規模タンパク質の量子化学計算ソフトウエアを開発し,公開する.すでに開発したプログラムProteinDFに,自動計算法,量子分子動力学法,超大規模タンパク質計算,タンパク質波動関数データベースに関する諸研究開発成果を統括したシステムである.

ナノエレクトロニクス連携研究センター

フォトニックネットワークデバイスの研究
客員教授 勝山 俊夫
光通信用フォトニックネットワークデバイスとして,フォトニック結晶を用いた分散制御とその素子化の研究を行っている.

複合精密加工システム(寄附研究部門)

複合粒子研磨法の開発
客員教授 河田 研治
従来のポリシング加工で使用していた研磨パッドの代わりに,キャリア粒子と呼ばれるポリマー微粒子を用いる全く新しい発想の研磨法「複合粒子研磨法」を開発した.この研磨法においては,工作物と定盤(工具プレート)との間にキャリア粒子を介在させ,キャリア粒子表面に付着あるいは保持された砥粒の研磨作用により加工が進行する.本研磨法においては,キャリア粒子と砥粒との界面化学的相互作用や,キャリア粒子を加工域に供給し一定時間滞留させるための工具プレートの材質・表面形状(粗さ)などが加工特性を支配する.

荏原バイオマスリファイナリー寄附研究ユニット

物理化学的物質変換技術を利用したバイオマスからの工業原材料の生産
客員助教授 望月 和博[代表者], 教授 迫田 章義
たとえば高温高圧水中などの反応場でバイオマスを分解すると石油化学製品を代替できる有用物質が生成することが知られているが,その実用化には,生成物を工業原料としての品質を満たすレベルに精製する技術を確立する必要がある.ここでは,高温高圧水中での加水分解や熱分解を利用してバイオマスから糖類,無水糖類,フルフラール類などの有用化学物質を得るための物質変換過程の検討を行うと同時に,得られた生成物を分離・精製するまでの一貫したプロセスの構築を目指している.特に,反応プロセスと分離プロセスを高度に複合した反応・分離同時プロセスは収率向上や省エネルギー化が期待できるため,重点的に検討を進めている.

バイオマスリファイナリー構想に沿った新規バイオマスエネルギー生産・利用技術の開発
客員助教授 望月 和博[代表者], 教授 迫田 章義
持続可能社会に向けて再生可能資源であるバイオマスをマテリアルおよびエネルギー資源として無駄のない利用を目指すシステムである「バイオマスリファイナリー」の実現には,バイオマスのカスケード利用が求められる.マテリアル(化学物質など)を順次回収した後の油状あるいは固体の残渣を最終的にはエネルギー(燃料など)として利用するシステムが有望であると考え,反応残渣の高性能燃料化,効果的な燃焼方法などの検討を行っている.また,燃料としてのエネルギー回収のみでなく,一連のバイオマスリファイナリープロセスにおいて廃熱の利用や熱源の共有といったエネルギーの効率化を図り,エネルギー的に自立できるプロセスを構築することが最終的な課題である.

東京大学国際・産学協同研究センター

表面拡散の制御による薄膜のナノ構造制御
教授 山本 良一[代表者],大学院学生 呉 相文
分子線エピタキシー法やスパッタ法による薄膜の成長は, 原子, クラスターの表面拡散やクラスターの解離などの複数の素過程より成り立つ複雑な過程である. 従って, 薄膜成長を原子レベルで制御するには, 成長に対する各素過程の役割を明らかにする必要がある. 本研究では, 素過程の制御による薄膜のナノ構造制御手法の開発を目的とする.

金属多層膜の輸送的性質に関する研究
教授 山本 良一[代表者],助手 神子 公男, 大学院学生 千早 宏昭
Fe/Cr等の金属多層膜は巨大磁気抵抗効果を示すことが発見され, すでにハードディスク用の磁気ヘッドへの応用が始まっている. スパッタ法によって作成したCu/Co多層膜の磁気抵抗効果の大きさは最大で30%以上の値を示し, Cu層厚の関数として振動する. MBE法によって作成したCu/Co多層膜および合金薄膜についても研究を行っており, そのメカニズムについて研究中である.

金属超薄膜の結晶成長の初期過程に関する研究
教授 山本 良一[代表者],助手 神子 公男, 大学院学生 千早 宏昭
金属多層膜は巨大磁気抵抗効果や垂直磁気異方性などの興味深い物性を示すが, これらの物性は異種金属界面の構造に非常に敏感である. そこで, 多層膜の界面構造を制御することを目的として, 結晶成長の初期過程に関する研究を行っている. これまでに, 金属の成長中にもRHEED強度振動を観測することに成功しており, サーファクタントエピタキシーに関する研究も行っている.

金属の粒界・界面に関する理論的研究
教授 山本 良一[代表者],大学院学生 田村 友幸・松井 裕
金属多層膜は巨大磁気抵抗効果や垂直磁気異方性などの特異な物性を示すことで知られているが, これらの物性は異種金属界面の構造に非常に敏感である. また, バルク材料においても粒界の構造や粒界偏析は機械的性質に大きく影響することが知られている. 本研究においては, 粒界や異種金属界面の原子レベルでの構造と電子構造を理論計算により求め, 界面の構造と物性の関係を明らかにすることを目的とする. また, これらのシミュレーションを仮想実験室に適用する.

ライフサイクルアセスメントの材料への応用
教授 山本 良一[代表者],助手 神子 公男,大学院学生 本田 智則,外部研究生(千葉工大)折田 享司
環境負荷を総合的かつ定量的に評価することが低環境負荷材料を開発する上で重要な用件である. LCAはその中でも最も注目を集めている評価法である. しかし, LCAのデータベースおよびインパクト分析について, 各製品を構成する材料の組成および特性まで着目した評価を行うことは困難であり, このような方法は未だに確立されていない. 本研究では環境負荷の評価を, より詳細かつ正確に行うため, 製品の前段階である材料および素材のLCAを開発し, 実際に既存材料, 新材料等に適用することを目的とする. また, 材料特性の一つとして環境調和性を組み込むことを大きな特徴としている.

交通流変化を考慮した自動車排出ガス量評価手法の研究(継続)
教授 桑原 雅夫[代表者],助教授(東京都立大学)大口敬, 助手 小根山 裕之
本研究では,道路交通による大気環境への影響評価を行うために,道路交通流の渋滞状況や交通量,交通制御(交通信号)などの影響を適切に考慮したNOX,CO2などの自動車排出ガス量の定量的な評価手法を確立する.車両の走行挙動特性と排出ガス量の関係及び道路交通流の状態量と個々の車両の走行挙動特性との関係を分析し,排出ガス量を推定するモデルを構築するとともに,交通シミュレーションモデルへの適用により,交通流改善政策による排出ガス削減効果を評価する.

ITSセンシング技術を用いた信号制御アルゴリズムの開発
教授 桑原 雅夫[代表者], 助手 小根山 裕之,民間等共同研究員 堀口良太,大学院学生 浅野美帆,大学院学生 中島章
日本で現在行われている「プログラム選択方式」の信号制御は,制御パターンをあらかじめ設定しておく必要があり,良好な交通状態を維持するためのコストが大きい.本研究では近年開発されてきた画像処理によるセンサー等を用いて,これまで測定できなかった信号待ちによる各車両の遅れ時間を測定し,その遅れを最小化するよう信号パラメータを自動生成する制御アルゴリズムを開発している.

都市街路網の交通流シミュレータの開発(継続)
教授 桑原 雅夫[代表者],助教授(高知工科大学)吉井稔雄, 民間等共同研究員 堀口良太, 助手 小根山裕之, 技術官 西川 功
本研究では, SOUND (a Simulation model On Urban Networks with Dynamic route choice)とAVENUE (an Advanced & Visual Evaluator for road Networks in Urban arEas)という2種類の交通シミュレーションモデルを開発している.ともに,経路の選択行動を内生化しているモデルで,新たに交通規制・制御などの政策が実施された場合の,利用者の経路の変化を表現できる構造を持つ.また,利用者層を交通情報(旅行時間情報,渋滞情報など)に反応して経路を選択するかどうかによって,いくつかのグループに分けてシミュレーションを実行することができる.SOUNDは,リンク数・ノード数が数百から数千の規模のネットワークに,AVENUEは,リンク数・ノード数が数十から数百の規模のネットワークに適用するモデルである.ともに,数多くの適用事例を通して,その実用性が検証されている.

ITS技術を用いた次世代の信号制御についての研究(継続)
教授 桑原 雅夫[代表者],助手 小根山裕之, 大学院学生 上杉友一
我が国の大都市の交差点では,1サイクル中に車両を捌ききれない過飽和交差点が非常に多く存在している.非飽和交差点においては待ち行列が常に解消されていくが,時間の経過にしたがって待ち行列が伸長する,過飽和交差点における信号制御には,従来の理論をそのまま適用することが出来ない.また,近年はITS技術の進展により,車両と車両探知機間で,より正確で多くの情報を双方向に通信することが可能となっている.そこで本研究では,これらのITS技術を活用し,従来の制御にとらわれない次世代の信号制御手法を提案することを目的とするものである.

通勤時における旅行者の出発時刻選択行動の理論的解析(継続)
教授 桑原 雅夫[代表者],リサーチフェロー 井料隆雅
通勤時のような需要集中時において,旅行者がどのように経路や出発時刻を選択し,どのような形態の混雑が発生するかを予測する事は,TDM(交通需要管理)施策を実施する際の理論的基礎として重要である.この研究では,主に個人間に費用関数が異なり,さらに居住地が空間的に分布している状況を想定し,利用者均衡時にどのような混雑が発生するか数学的モデルを用いて分析している.

都市間高速道路における車群特性に関する研究
教授 桑原 雅夫[代表者],教授(東大国際・産学共同研究センター)Edward CHUNG,リサーチフェロー Majid SARVI,大学院学生 石田友隆
本研究では,東北自動車道において得られたパルスデータをもとに,交通流を記述するための手法を確立する.具体的には,車頭時間を基準とした車群の定義を含め,ある地形データや車頭時間のデータが得られた際に,それがどのような交通流であるのかを明らかにすることを目的とする.その為に,CHAIDや軌跡図など,様々な手法を用いて分析を行っている.

東京都ロードプライシング導入に伴う交通運用政策に関する研究(継続)
教授 桑原 雅夫[代表者],助手 小根山裕之, 技術補佐員 村上康紀
交通需要マネジメント(TDM)の1つとしてロードプライシングがある.これはあるエリア内に流入する車両に対して課金を行うことにより大量交通機関への手段変更や出発時刻の変更を促す施策であるが,同時に課金を避けるための経路変更などによって交通状況に変化をもたらす可能性を持つ施策である.本研究では,課金を行った場合における交通状況を本研究室で開発したシミュレーションモデルSOUNDを用いてシミュレートし,その結果から施策が行われた場合に生じ得る問題点を抽出し,とり得る対策についてを考察する.

交通流シミュレータに用いるパラメータの自動調整方法(継続)
教授 桑原 雅夫[代表者],教授(千葉工業大学)赤羽弘和, 助教授(高知工科大学)吉井稔雄, 大学院学生 Edy Purwono
交通環境改善施策による効果を事前に評価するツールのひとつとして交通流シミュレータが挙げられる.シミュレータには交通容量に代表されるネットワークパラメータが必要だが,渋滞状況などの交通状況を忠実に再現するためにはパラメータの微妙なチューニング作業が必要となる.チューニング作業では多くのパラメータを人手によって同時に調整しなければならないため,シミュレータ利用者にとって大きな負担となっている.本研究は,ボトルネック容量と旅行時間の関係に着目することにより,パラメータのチューニング作業がシステマティックかつ自動的に進む効率的なアルゴリズムの構築を目的とするものである.

インターネット・プロトコルのセキュリティと可用性
講師 松浦 幹太
インターネット・プロトコルのバージョン6(IPv6)への移行により, セキュリティ機能が標準でサポートされる. その際, 通信プロトコル階層の下位レイヤに負荷の高い作業を組み込むことになるため, 効率化や拡張性に関する要求が格段に厳しくなる. そのような観点から, プロトコル全体としての評価・設計を重視して研究を進めている. 例えば, 要求がもっとも厳しいマルチキャスト通信において, グループ鍵配布時のオーバーヘッド最小化などの成果を得ている. さらに, 既存の標準プロトコル仕様に対する仕様変更を最小限度に抑えて可用性を高める汎用技術を開発している.

研究促進技術と学術情報データベースセキュリティ
講師 松浦 幹太[代表者], 大学院学生(松浦研) 安東 学
ネットワーク上の経済活動のために情報セキュリティ技術が重要であることは, 周知の事実である. 我々は視点を変え, 研究用ディジタルデータを流通させる「非営利研究促進事業」に役立つ情報セキュリティ技術を研究している. すなわち, 知的所有権やプライバシー保護, 信頼性を考慮してネットワークを介した安全な共同研究活動をサポートする技術に取り組んでいる. 具体的には, データアクセスに伴うセキュリティ上の必須処理の概念を応用し, セキュリティ的に無矛盾なシステム設計のための技術を考案している. また, グループで秘密鍵を共有する際の確認作業を安全に実施するプロトコルなど, より高い安心感を得るための要素技術を開発している.

分散サービス妨害攻撃対策
講師 松浦 幹太
盗聴やなりすましのような狭義のセキュリティ的脅威だけでなく, ネットワーク社会では嫌がらせも大問題となる. 例えば, 安全な通信のために備えた認証機構を逆手に取り, 「相手を確認する作業」を次から次へと行わせて計算機資源を枯渇させついには動作不能状態に陥れるサービス妨害攻撃は大きな脅威である. 我々は, サービス妨害攻撃を抑止するために攻撃者へ負荷を負わせる技術を開発し, 同技術を安全性証明可能な鍵共有プロトコルへ応用することに成功している. さらに, 複数の攻撃拠点から同時に妨害攻撃を仕掛ける分散型の攻撃に対しても, ファイアウォールおよびミラーサイト機能との連携による対策技術を開発している.

セキュリティシステムの不確定性理論と応用
講師 松浦 幹太
情報セキュリティシステムでは, 本質的に時間的な不確定性を避けることが出来ない. 例えば, 使用する鍵や電子証明書の信頼性は, 一定とはいえない. その不確定性に起因するトラブルによって損害を被った場合, 独自の保険や金融ディリバティブなどで対処する方策が考えられるが, それらの価格付けは自明ではない. 我々は, そのような新しい電子社会のシナリオを考え, 基本的な価格評価に関する理論式を導いた. これを応用し, 市場の観測値からトラブル発生確率を推定する技術を開発している. また, より一般的な情報セキュリティへの最適投資理論, さらに最適保険選択問題に対する解析解の導出を行っている.

電子証拠物工学の研究
講師 松浦 幹太[代表者], 大学院学生(松浦研) 小森 旭
完全に実時間の信頼できる分散ディレクトリが原理的に不可能なため, ネットワークセキュリティ技術で対策を講じても, 何らかの紛争が発生し得る. 我々は, その紛争処理において有効な資料となる「電子証拠物」の概念を提唱し, 証拠物生成の要素技術を研究している. 例えば, 電子マネーのユーザが秘密データの搾取にあってそれを悪用されても, 「悪用されたのだ」ということを第三者に証明できる技術を開発している. また, その技術に対する情報法制的分析を進め, かつ要素技術を適用するための仮定を緩めるシステム設計を考案することにより, 実社会における実効性向上を学際的に検討している.

システムレベル低電力化方式の研究
教授 桜井 貴康
(東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

SOIデバイス,極低消費電力SOI回路の有用性の評価,実証
教授 桜井 貴康
(東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

ディープサブミクロン世代の設計法の研究
教授 桜井 貴康
(東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

次世代低電力プロセッサ
教授 桜井 貴康
(東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

極低消費電力・新システムLSI技術の開拓
教授 桜井 貴康
(東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

極低消費電力・新システムLSI技術の開拓
教授 桜井 貴康
従来のトレンドより突出した超低消費電力・高速LSI技術を実現するために大学主導のもと産業界とも連携しながら,国際的視野に立って,この極低消費電力・新システムLSIのアーキテクチャや回路技術,デバイス技術のブレークスルーを創出し,学術的に体系化してわが国の競争力の源泉とすることを目的とする.

システムレベル低電力化方式の研究
教授 桜井 貴康
携帯機器用システムLSIの低電力方式について,制御方式や回路技術の開発を目的とする

SOIデバイス,極低消費電力SOI回路の有用性の評価,実証
教授 桜井 貴康
極低消費電力SOI回路のへのフィードバックダイナミックに電源電圧やしきい値電圧を切り替えるVdd,Vthホッピング等,低電力アーキテクチャとSOI回路の適合性,有用性を評価,実証する.

ディープサブミクロン世代の設計法の研究
教授 桜井 貴康
ディープサブミクロン世代のLSIで問題となる消費電力の増大や高速データ転送技術に対処するため低電圧回路や高速シリアルリンク回路などの低消費電力・高性能回路に関する研究を行う

次世代低電力プロセッサ
教授 桜井 貴康
シリコンCMOS LSIをより高性能にする研究

車両・軌道システムにおける運動力学と制御に関する研究(継続)
教授 須田 義大[代表者],大学院学生 道辻洋平 技術官 小峰久直,大学院生 黒崎由紀夫,大学院生 藤井毅,研究実習生 青木慎一,研究実習生 楠 明,研究実習生 八百志貴
高速性, 安全性, 大量輸送性, 省エネルギー性などの点で優れている, 軌道系交通システムについて, 主として車両と軌道のダイナミクスの観点から, より一層の性能向上や環境への適用性を改善することを目標に検討している. 本年度は,アクティブ操舵台車, 模型走行実験による曲線通過特性, 空気ばねの制御手法,一軸台車の防振性能向上の検討を行った.

マルチボディ・ダイナミクスによるヴィークル・ダイナミクス(継続)
教授 須田 義大[代表者],協力研究員 中代重幸・椎葉太一 研究員 曄道佳昭 大学院学生 田邉裕介
マルチボディ・ダイナミクスによる運動方程式の自動生成, さらにダイナミック・シミュレーションなどの自動化は, 宇宙構造物, バイオダイナミクスなどの複雑な力学系において有用なツールである. 本年度は, リアルタイムシミュレーションを可能とするソフトウエアによるドライビングシミュレータへの実装,評価を行った.

コルゲーションの成長・減衰機構の研究(継続)
教授 須田 義大[代表者], 助手 岩佐 崇史,研究員 曄道佳昭 技術官 小峰久直 外国人研究員 張継業
鉄道レール上の発生するコルゲーション現象(波状摩耗), さらに転がり軸受などに発生するコルゲーションについて, 検討を進めた. 実験装置上における生成機構のモデル化およびシミュレーションを行い, 滑りがコルゲーションの発生・成長に与える影響を検討した.

セルフパワード・アクティブ振動制御システムに関する基礎研究(継続)
教授 須田 義大[代表者],協力研究員 中代重幸 協力研究員 中野公彦 大学院生 林 隆三
振動エネルギーを回生し, そのエネルギーのみを利用した外部からエネルギー供給の必要のない, 新しいアクティブ制御を実現するセルフパワード・アクティブ制御について, 研究を進めている. 船舶の動揺装置への適用について検討を継続し, 模型船での実証実験にひきつづき,実船におけるシミュレーション評価とエネルギーの一時貯蔵システムについての検討を行った.さらに,新たに新交通システムへの適用についても検討した..

磁気浮上系における浮上と振動の制御(継続)
教授 須田 義大[代表者],協力研究員 中代重幸 大学院生 道辻洋平, 助手 岩佐 崇史
永久磁石を併用した吸引式磁気浮上システムにおいて, 浮上のための電流ゼロ制御と防振制御を両立させる手法について検討を行った. 本年度は, 浮上のロバスト性を向上させるための外乱オブザーバの適用と,動揺制御手法の最適化を図り,実験によりその効果を実証した.

車両空間の最適利用に関する研究(継続)
教授 須田 義大[代表者],教授 須田 義大, 助手 岩佐 崇史, 技術官 小峰 久直, 大学院学生 平沢 隆之,民間等との共同研究員 林哲也
快適で効率のよい公共交通機関の実現には, 走行性能の向上, 振動乗り心地特性の改善とともに, 交通空間の効率のよい利用が大切である. 本年度は, 動揺模擬装置を用いた快適性評価手法の検討,車内の乗客の行動調査などについて検討を進めた.

自動車における電磁サスペンションに関する研究(継続)
教授 須田 義大[代表者], 助手 岩佐 崇史,大学院生 林 隆三 川元康裕 後藤友伯
ITSの進展に伴う自動車における電子化, 情報化の背景を踏まえ, サスペンションの機能向上, 性能向上, 乗心地向上, 省エネルギー化などを目標に, 電磁サスペンションの検討を進めた. 本年度は, 任意の減衰力特性を実現するためのパワーエレクトロニクス回路を開発し,試作した電磁ダンパーによりその基本特性を評価した.

鉄道車両における車輪・レール系の知能化に関する基礎的研究(継続)
教授 須田 義大[代表者], 助手 岩佐 崇史,技術官 小峰久直 大学院生 道辻洋平 藤井毅
鉄道車両の曲線追従性の向上, 軌道不整への応答特性の改善, 軌道破壊への柔軟な対処の実現を目標に, センサ機能, アクチュエータ機能, 判断機能を付加する知能化システムの基礎的な研究を進めた. 本年度は,模型車両による試験,シミュレーションにより,摩擦制御と輪軸のヨーイング制御について検討を進めた.

都市交通向け自転車に関する研究(継続)
教授 須田 義大[代表者], 助手 岩佐 崇史
自転車をエコロジカルな交通システムととらえ,都市交通における公共交通機関との連携を図った新たな自転車の可能性を検討している.本年度は,小径自転車の低速走行時の安定性に着目し,マルチボディダイナミクスによる解析と実験による検討を進めた.

自動車用タイヤの動特性に関する研究(継続)
教授 須田 義大[代表者],協力研究員 椎葉太一 大学院学生 後藤友伯
走行安全性を向上させるための車両運動制御,ITSに対応した新たな自動車制御のためには,タイヤの動的な特性を詳細に把握することが重要である.本年度は,スリップアングルの動的入力に対する接触力特性に着目し,タイヤ動特性試験を実施し,タイヤの物理パラメータ,タイヤサイズ,グリップ特性の影響を評価するためのモデルの構築を試みた.

マルチボディ・ダイナミクスによるヴィークル・ダイナミクス(継続)
教授 須田 義大[代表者],協力研究員 中代重幸・椎葉太一 研究員 曄道佳昭 , 助手 岩佐 崇史
(東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

バーチャル・ブルービンググラウンドの研究(新規)
教授 須田 義大[代表者],協力研究員 椎葉太一 大学院生 田邉裕介 民間等との研究員 大貫正明
マルチボディ・ダイナミクスの車両運動モデルを用いたドライビングシミュレータによるバーチャル・プルービンググラウンドを提案している.リアルタイムシミュレーション手法の改善,実車運動との比較を含む評価手法などの検討を行い,提案手法の適合可能性を検討した.

ITS車両による路面情報収集と車両制御に関する研究(新規)
教授 須田 義大[代表者], 助手 岩佐 崇史,技術官 小峰久直,大学院生 後藤友伯,大学院生 川元康裕
車両の運動性能向上,安全性の向上のためには,路面情報収集が有効である.ITS(高度道路交通システム)への適用として,車両に取り付けたセンサーによる路面情報収集手法を提案し,実車両における走行試験を行い,その手法の評価を行った.

セラミックス粉末射出成形の可視化観察(継続)
教授 横井 秀俊
(東京大学 国際・産学共同研究センターの項参照)

セラミックス粉末射出成形の可視化観察(継続)
教授 横井 秀俊
セラミックス粉末射出成形では樹脂とは異なる特有の現象が成形機内で発生していると考えられ,可視化計測技術を駆使してこれを解明することは極めて意義がある.本年度は,スクリュ冷却引き抜き法を用いて,寒天をバインダーとして用いたセラミックス粉末射出成形において問題なっている焼成前の成形体表面に発生する"ふくれ"と呼ばれる欠陥の生成原因の解析を行った.その結果,成形材料中の残留水分量の不均一分布とそれによる乾燥収縮速度・収縮量の差異に起因した2つの生成過程を提示した.

射出成形における型内樹脂流動計測システムの開発(継続)
教授 横井 秀俊[代表者],技術官 増田範通,大学院外国人研究生 楊 衛民
(東京大学 国際・産学共同研究センターの項参照)

可視化加熱シリンダによるスクリュ設計システムの開発(継続)
教授 横井 秀俊[代表者],博士研究員 金 佑圭
(東京大学 国際・産学共同研究センターの項参照)

射出成形における溶融樹脂温度分布の計測(継続)
教授 横井 秀俊[代表者],講師 村田泰彦
(東京大学 国際・産学共同研究センターの項参照)

超高速射出成形現象の実験解析(継続)
教授 横井 秀俊[代表者],講師 村田泰彦,技術官 増田範通,リサーチフェロー 宮地智章,博士研究員 金 佑圭,CCR協力研究員(東京大) 長谷川茂,瀬川 憲, 大学院学生 山田健央,渡辺 順,韓 雪,宿 果英,高橋辰夫,中野雄介
(東京大学 国際・産学共同研究センターの項参照)

型内圧力計測精度評価システムの研究(新規)
教授 横井 秀俊[代表者],大学院学生 永井崇之,博士研究員 金 佑圭
(東京大学 国際・産学共同研究センターの項参照)

射出成形における型内樹脂流動計測システムの開発(継続)
教授 横井 秀俊[代表者],技術官 増田範通,大学院外国人研究生 楊 衛民
基礎計測技術の研究として型内樹脂流動を計測する各種手法の開発と成形現象の実験解析を目的としている.本年度は,昨年度に引き続き(1)厚肉成形における補償流動過程,(2)ヒンジ部におけるツヤムラ現象,(3)メルトフロント内部の流動挙動, (4)ランナー内樹脂流動過程について,回転ランナー切替装置を内蔵した各種可視化金型等を用いてそれぞれ検討を行った.また,新たに(5)射出圧縮成形過程および(6)フローモールディング過程の可視化観察を行い,それらの流動挙動を明らかにした.

可視化加熱シリンダによるスクリュ設計システムの開発(継続)
教授 横井 秀俊[代表者],博士研究員 金 佑圭
石英ガラスを加熱シリンダ内に組み込んだ可視化加熱シリンダと,ホッパ下可視化装置を用いて,樹脂ペレット可塑化状況の可視化解析を行うことを目的としている.本年度は,蛍光法による色替・材料替時のバレル内樹脂置換過程の実験解析を行った.具体的には,冷却シリンダ・スクリュを用いたスクリュ引き抜き法により得られた冷却樹脂サンプルの表面および断面観察を行い,スクリュ溝内の樹脂置換ならびに樹脂滞留モデルを提示した.また,磁歪式センサを用いてチェックリング挙動の計測を行い,各種チェックリング形状とチェックリング挙動との相関関係を明らかにした.

射出成形における溶融樹脂温度分布の計測(継続)
教授 横井 秀俊[代表者],講師 村田泰彦
射出成形は,断熱材料である樹脂の溶融・流動・冷却固化プロセスと捉えられ,各過程における温度分布計測は,極めて重要である.本年度は,昨年度に引き続き,集積熱電対センサに加えて,大型三次元可視化金型による流動挙動観察を併用することにより,中央部に段差部を有するキャビティにおける樹脂充填パターンおよび段差部前後におけるキャビティ厚さ方向流動樹脂温度分布の計測を行い,キャビティ厚さ方向に生成される非対称の温度分布形状について検討を試みた.

超高速射出成形現象の実験解析(継続)
教授 横井 秀俊[代表者],講師 村田泰彦,技術官 増田範通, リサーチフェロー 宮地智章,博士研究員 金 佑圭, CCR協力研究員(東京大) 長谷川茂,瀬川 憲, 大学院学生 山田健央,渡辺 順,韓 雪,宿 果英,高橋辰夫,中野雄介
本研究では,超高速射出成形現象について多面的に実験解析を行い,不確定因子の多い成形技術,金型技術の確立と新規な高機能・高付加価値成形品の実現に資することを目的としている.本年度は,(1)超高速射出成形における樹脂流動現象,(2)ゲート部における発熱現象について,ガラスインサート金型および光ファイバセンサ,温度センサを用いて実験解析を行い,超高速射出条件が樹脂流動パターンおよびゲート部前後における樹脂温度に及ぼす影響を明らかにした.また,(3)レーザマーキング法による伸長・スリップ現象の計測,さらに,(4)超高速射出成形による微細プリズムパターンの超転写成形,(5)コアバック式金型を用いた超高速複合多層射出成形の実現の可能性についても検討を行った.

型内圧力計測精度評価システムの研究(新規)
教授 横井 秀俊[代表者],大学院学生 永井崇之,博士研究員 金 佑圭
当研究室では,圧力センサ周辺に形成されるスキン層が型内圧力の測定値に大きな影響を与えていることを以前より報告してきた.しかしながら,以前の研究では汎用ポリスチレンGPPS一系列のみについて測定を行ったに過ぎず,GPPSに限定された解析事例以外に検討がなされていなかった.そこで本研究では,樹脂の種類および射出率,金型温度,保圧といった多様な要因と圧力測定値との相関を効率よく測定するために,自動的に計測可能な新しい評価システムの開発について検討を行い,その有効性を実証的に明らかにした.