VI. 研究および発表論文


1. 研究課題とその概要
高次協調モデリング(客員部門)

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第49号 2000年度
2001.8.23


1. 非適合要素を用いた移流方程式の解法

客員助教授 畔上 秀幸

 流体中の物理量が流れによって運ばれる現象は移流問題と呼ばれる. 海流によって運ばれる赤潮の行方や, 座礁したタンカーから流出する油の行方を予測する問題, 有珠山の噴火による噴煙や粉塵の行方やディーゼル車の粉塵の行方を予測する問題などはいずれも非圧縮性流れ場における移流問題である. 移流方程式に既知量として現れる流れ場は時間・空間的に定常な場合には有効なスキームが知られている. しかし, 非定常流れ場の移流方程式で収束が保証されたスキームで広く認知されているスキームは見あたらない. 最近, 海津が密度を非適合0次, 流速を非適合1次で近似して, 隣り合う境界要素で流速の平均値が連続となることを仮定するスキームを提案し, その収束性を証明した. 本研究では海津のスキームを実現する有限要素法解析プログラムを作成し, 誤差解析の検証を試みた.

2. 均質化法に基づくフレームベースユニットセルの均質化弾性係数の解析

客員助教授 畔上 秀幸

 連続体の位相最適化問題は連続体をミクロな穴を有する多孔質体と仮定して穴の大きさと角度を設計変数にした穴の最適配置問題として解く方法が有効であるとされてきた. 最近, 孔構造をフレーム構造に変えることによって, さらに収束性が改善される可能性が示された. フレーム構造は穴構造(箱型構造)よりも引張−圧縮剛性に比べてせん断剛性が小さくなる特徴を有する. この特徴は, 位相最適化問題の解構造ではほとんどの部材が引張り応力か圧縮応力となることから, 有利な特徴である. これまでは1パラメータの等方フレーム構造が使われてきた. 本研究では, フレーム構造を3パラメータで定義した異方性の構造を採用することを目指して, 異方性フレーム構造の均質化剛性のデータベースを作成することを目的にした.

3. 圧力損失最小化を目指した流路形状設計に関する研究(継続)

客員助教授 畔上 秀幸

 粘性の強い流体輸送を目的とした配管やマイクロマシンのように微細な物体が液体中を移動する場合などは圧力損失(孤立物体の場合には抗力と等しくなる)が最小になるように流れ場の形を決定することが流れ場の効率を高めることになる. また, 生体力学の分野では血管の分岐の構造を解明して, その成果を手術法の改善や人工臓器の設計に役立てることが望まれている. このような要請を背景にして, 本研究室では, 境界値問題の定義された領域の幾何学的形状を設計対象にした領域最適化問題の統一的な解法として本研究室で開発してきた力法を基礎にして, 圧力損失が最小となる粘性流れ場の形状を解析するプログラムの開発を行ってきた. 本年は, Navier-Stokes流れ場への拡張を検討した.

4. 材料非線形性を考慮した形状最適化問題の解法(継続)

客員助教授 畔上 秀幸, 教授 渡邊 勝彦

 機械構造の設計では, 正常稼動時には弾性限度内で設計されても, 非常時の過大荷重に対しては非弾性変形まで考慮して設計される場合が少なくない. 形状最適化手法においても材料非線形性を許した問題への拡張が望まれている. 本研究では, 実用性の観点から, 塑性変形を含む経路依存型の材料非線形性に注目し, その材料非線形性を有した連続体の外力仕事最小化問題に対しても本研究室で開発してきた力法が適用可能であることを示した. その際, 経路依存型の形状最適化問題では随伴方程式を解かなければならないことが難点とされてきた. しかし, 比例負荷の仮定を導入することによって準自己随伴関係が得られ, その難点は解消されるという新たな知見を得た. 本提案の有用性は, 基本的な2次元および3次元問題に対して, 非線形を考慮しない場合との比較を通して示した.

5. 音場を対象とした形状最適化問題の解法(継続)

客員助教授 畔上 秀幸

コンサートホールの設計では音が偏らないことが望ましい. 一方, 自動車の室内を設計する際には乗客の耳に近い特定の部分領域に音が伝わらないことが望ましい. 本研究では, 音場を対象とした形状最適化問題について, このような相反する評価規準が存在することを考慮して次の問題に取り組んだ. 広帯域の音源に対する定常音場を対象にして, 2乗音圧・2乗音圧勾配の最大化および最小化問題, さらに非定常音場に対して, 部分領域における任意時間の2乗音圧・2乗音圧勾配・音圧の立ち上がり速度の最大化および最小化問題を扱った. 解法には本研究室で開発してきた力法を用いた. 定常音場の例題として, 2次元音響管, 立方体音場, 簡略化したコンサートホールを解析した. 非定常音場の問題に対しては, 良好な結果を得るに至っていない. 随伴方程式の解法に問題が残されている.

6. 固有振動モードを規定した形状最適化問題の解法(継続)

客員助教授 畔上 秀幸

 機械の振動を抑えるための有効な方法の一つは, 問題となる固有振動モードを調べて, 加振部や支持部がその固有振動モードの節になるように構造を変更することである. さらに, 固有振動モードを利用したメカニズムを設計する際には, 固有振動モードが目的の機能を発揮するようなモードとなるように構造を変更することである. 本研究では, 線形弾性体の固有振動モードを指定されたモードに近付けることを目的にした形状最適化問題の解法を開発した. 目的汎関数には2乗誤差積分を選んだ. 解法には力法を選んだ. 開発した数値解析プログラムの有効性は3次元片持ちはりの1次固有振動モードが規定したモードに近付いたことで確認した.

7. フレーム構造のノンパラメトリック最適化問題の解法(継続)

客員助教授 畔上 秀幸

 自動車などの車体は薄板で構成されたフレーム構造になっている. このような薄板フレーム構造を最適化する際, 従来, 各フレーム部材の代表寸法を設計変数に選んだ寸法最適化問題を定式化し, 直接法によって感度を評価して, あるいは応答曲面を評価して, 勾配法によって解かれてきた. しかしながら, フレーム構造が複雑になり, 代表寸法の数が増大してくると, 設計空間の次元数の増大を招き, 最適解の解析を困難にする. そこで, 本研究では, 薄板フレーム構造を1次元連続体としてモデル化し, その断面形状が連続的に変化する場合の薄板フレームの最適化問題に対する感度の解析法を示し, それに基いた勾配法による薄板フレームの最適化プログラムを開発した. この解法の有効性は簡単な3次元フレーム構造に適用した結果を通して確認した.

8. 特発性側彎症の力学的成因解明に関する研究(継続)

客員助教授 畔上 秀幸

 

脊柱の生理的彎曲に異常をきたす疾患は脊柱側彎症と総称される. 特に, 椎体やそれを取り巻く筋や靭帯に際立った異常が見出されない状況で成長期に突然発症する側彎症は特発性側彎症と呼ばれてきた. 症例が女子に多いことは広く認められているが, その成因は不明とされてきた. 本研究室では, 整形外科や比較解剖学の専門家と共同で, その成因を力学的見地から明らかにする研究を行ってきた. これまで, 胸郭付脊柱有限要素モデルを構築し, 椎体の成長に対する変形とそれによる線形座屈解析を通して, 姿勢制御が不可能な最低次の座屈現象であるとする仮説を提唱してきた. これまで, 胸椎型は胸部椎体が成長した場合の4次モードであることを示した. 本年は, ダブルカーブ型は成長部位を広く取った場合の6次モードであることを示した.

9. 特発性側彎症に対する治療法の検討(継続)

客員助教授 畔上 秀幸

 特発性側彎症の力学的成因が椎体の成長に伴う座屈現象であるとする仮説を提唱してきた. 一方, 本研究室では, 線形弾性体の境界形状を設計対象にした座屈負荷係数最大化問題の解法を示してきた. したがって, 特発性側彎症の力学的成因が座屈説であることを受け入れれば, その座屈に対する椎体成長係数を目的関数に選んだ形状最適化問題を考えて, その問題の形状勾配関数の分布を調べることによって, 特発性側彎症の進行を遅らせる補強治療を上で効果的な部位を特定できることになる. 本研究では, 先に構築した脊柱有限要素モデルを用いた解析を行い, 胸椎型に対して, 第6椎体から第8椎体の椎間関節, 椎間板, 肋椎関節, 肋横突関節, 第1椎体の肋椎関節, 肋横突関節, 第1腰椎の椎間板, 椎間関節が重要である結果を得た. ダブルカーブ型についても解析を行った.


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