VI. 研究および発表論文


1. 研究課題とその概要
A. 文部省科学研究費補助金による研究

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第49号 2000年度
2001.8.23


1. 特定領域研究A(1)

 1.  ゼロエミッションをめざした物質循環プロセスの構築・総括班(継続)

教授 迫田 章義

 21世紀に向けて地球に優しく安全で快適な生活を維持できる人間活動および生産活動を創生するためには, 環境への排出, すなわちエミッションをできるだけゼロに近づける社会・産業・生産システムが構築されなければならない. わが国における物質の流れと利用量の現状を明らかにした上で, 適当な規模の人間活動・生産活動を維持しながら資源・エネルギーの消費量と環境への汚濁負荷をどこまで削減することが可能かを検討し, ゼロエミッションをめざした新たな物質循環プロセスを構築することが必要である.

 そこで本領域では, この様な社会的要請を実現するため, 以下の3項目(A-01, A-02, A-03)に関する計画研究を実施するとともに, 関連する研究を行っている.

 A-01:プロセスゼロエミッション:個々の生産プロセスにおける現状の物質フローの解析と, それに基づくゼロエミッション化の検討
 A-02:ゼロエミッションネットワーク:業種を越えた生産プロセスのネットワーク形成によるゼロエミッション化の検討
 A-03:地域ゼロエミッション:モデル地域における物質循環を記述する数理モデルの構築とそれを用いたゼロエミッション化の評価と予測

 総括班では, 領域内の全ての研究を統括し, 上記の目的を達成するための指針を示すとともに, 最終的にさらなる成果が得られ社会に還元されるように, 研究者相互の情報の交換や共有等を支援している. なお, 本領域の詳細は下記のホームページに公開されている.

 http://envchem.iis.u-tokyo.ac.jp/ZeroEm/

2. 特定領域研究A(2)

 親和性の高次同調スイッチングに基づく高効率人工能動輸送系の構築

教授 荒木 孝二, 助手・特別研究員 務台 俊樹

 光, pH差, 酸化還元反応などを利用してキャリア分子の基質親和性のスイッチングをおこない, 高効率かつ高選択性の人工能動輸送系を構築する研究を進めている. 本年度は, pH駆動型能動輸送系の解析から得られたキャリアの分子設計指針に基づき, 酸化還元駆動型プロトン能動輸送系のためのキャリアの分子設計を行い, キャリアとして各種フェロセンアミン誘導体の合成, およびキャリアとしての基本的な特性評価をおこなった.

3. 特定領域研究B(2)

 1.  ヌクレオシド含有ポリマーの組織化と細胞表面の糖転移酵素による認識

助教授 畑中 研一(代表者)

 糖鎖とヌクレオシドの両方を有する高分子(各種共重合体)を設計・合成し, これを生体機能発現の「認識分子」として, 生体材料表面, 微粒子表面や細胞表面における分子レベルでの空間分布を制御することにより, より高い機能を発現する集合体組織へと発展させることを行っている. 本年度は, 種々の共重合体の合成:ウリジンを有するポリマーを合成した. また, ウリジンを有するポリマー上には3T3-L1線維芽細胞が選択的に吸着し, 細胞が移動していることを発見した.

 2.  人文社会科学のための空間情報科学

教授 柴崎 亮介, 協力研究員 史 中超

大学院学生 稲葉 和久・中川 雅史

 空間情報科学の手法や知見を活かして, 人文社会科学との新たな融合領域を創生することを目標に研究を行っている. 今年度は, 3次元空間データの取得技術を利用した世界遺産の3次元モデル構築と考古学への応用をテーマに, レバノン・ティール遺跡で実測を行い, モデル構築までを終了させた.

 3.  熱帯エネルギー・水循環過程

教授 虫明 功臣(代表者), 客員教授 A.S. Herath, 教授 安岡 善文

助手・特別研究員 鼎 信次郎, 教授(東京大)鈴木 雅一・(東京農工大)青木 正敏

教授(福島大)渡辺 明・(山梨大)砂田 憲吾・(神戸大)山中 大学

助教授(京都大)大手 信人, 研究室長(防災科研)中根 和郎

研究員(通信総研)大野 裕一

 研究は世界気候研究計画(WCRP)の一部であるとともに, 東南アジア各国と日本との共同研究として成り立っており, 熱帯雨林気候から乾季のある熱帯気候までを覆うインドシナ半島を対象として, 当該地域のアジアモンスーンにおける役割を解明すること, および当該地域の降水と水資源の季節予報を向上させることを目的としている. 本研究は1. 地表面熱・水フラックス観測, 2. 熱帯大気構造の解明, 3. 東南アジア気候・水文データ収集と解析, 4. 衛星リモートセンシング研究, 5. 領域気候モデルと水循環モデル開発の5つのサブ研究グループと総括班によって, 1996年のプロジェクト開始以来, 精力的に進められてきた. 本年度および来年度は, これまでに取得された貴重な観測データをデータベース化し, これまで得られた科学的成果を水資源問題の解決に役立てることを目的として研究を進めている.

 4.  エネルギー・水循環情報データアーカイブ

助教授 沖 大幹(代表者), 教授 喜連川 優・柴崎 亮介

助教授(東京大)松本 淳, 主任研究員(気象庁)高橋 清利

助手(長岡技術科学大)熊倉 俊郎

 東南アジア温暖湿潤地帯において現地地上観測, 衛星観測, 地上検証, 水文・気象現業データなどが精力的に収集解析されている. また, 特別集中観測の結果を利用して4次元同化データの構築も計画されている. これらを取りまとめて当該地域に関するエネルギー・水循環情報データアーカイブを作成し, 国際的なエネルギー・水循環研究における日本の情報発信基地を構築する.

 5.  マルチメディアによる地震災害の事後対応過程の検討

教授 須藤 研(代表者), 助教授 目黒 公郎, 教授(京都大)林 春男

 大震災から得られた教訓と犠牲を無駄にしないためにも地震災害に対する現在の都市空間の脆弱性を評価してそれを除去し, さらに強靱で安全・快適な都市空間を創生し, 次世代へ継承する責務が我々に課せられている. 人間社会が過去のおよび現在進行中の災害から深く学んでこそ少なくとも同じような災害を繰り返さずにすむ.

 この視点にたって地震災害の事後対応過程の研究が研究者に求める課題, 社会が研究者に期待する課題は,

 (1) 災害の実時間被害評価と実時間災害管理システム;

 (2) 災害後の復興戦略

であることは論をまたない. 災害発生後の衝撃を可能な限り小さくとどめること, 災害から何をどのように学びそれを復興計画の中でどう実現していくかはきわめて重要な研究課題である.

 本研究では, 上記の二つの項目を研究し, 災害時の実時間災害マネージメントに供する技術を開発しかつ, その過程で獲得される新たな情報を最適な災害後の復興戦略に取り込んでゆくシステムを研究する.

 6.  ナノメートルオーダの3次元構造物の高速制御の研究

助教授 川勝 英樹, 助手 星 泰雄

 ミクロンからナノメートルオーダの走査型プローブを数千個から数百万個のオーダで同時に用いるための手法を確立する. 本年度はそのためのマルチプローブアレーの作製方法および駆動方法, 検出方法の研究を行う. 作製にあたっては, 結晶性を有効に生かすことによって小さくても寸法と形状の精度が高いものを得られる手法を確立する. 駆動については, 表面弾性波を用いた同時もしくは順次駆動の方法を検討中である. また, 個々のプローブの機械的特性を真空容器内で光学的に評価する装置を実現する予定である.

4. 基盤研究(A)(1)

 1.  浮遊海洋構造物の要素部材まわりの剥離流れの数値解析法に関する研究

教授 前田 久明(代表者)

 浮遊海洋構造物の設計あるいは安全性確保の観点から海洋構造物の運動を精度よく推定することが重要である. その際運動方程式中の非線形流体力, とりわけ柱体まわりの剥離流れによる粘性流体力の推定に多くの問題をかかえている. 模型実験では尺度影響に, 実機実験では経済性に問題をかかえている. そこで数値解析法に大きな期待がかけられている. スーパーコンピューターの発展に伴い近年急速な進歩を遂げている計算流体力学技術が各方面で実用に供されるようになってきている. 海洋工学の分野でも柱まわりの剥離流れの流場ならびに流体力の推定に当って, 流れの可視化技術と共に計算流体力学技術への期待が大いに高まっている. そこで海洋構造物の要素部材まわりの流場のうち, 現在までのところ特に解析が困難である粘性流体による剥離流れの予測に計算流体力学技術がどこまで有用であるかを総合的に調査し, 現在の計算流体力学技術の有効範囲ならびにその問題点を明らかにし, 今後ブレイクスルーすべき課題を明示することを本研究の目的とする. 本年度は, 潮流中, 波浪中, 強制動揺中における, ライザー管のin-line, transverse 方向の挙動の実験と計算結果を比較し, CFD, 修正モリソン式ともに, in-lineの推定は良好であるが, transverseの推定はおおむね良好であるが, 実用的にはさらなる改善が必要なことを明らかにした.

 2.  大災害インパクトの計量手法の開発とそれに基づく国際比較の研究

教授 須藤 研(代表者), 客員教授 A. S. Herath, 助教授 山崎 文雄・目黒 公郎

助手 D. Dutta, 所長(科学技術庁・防災科学技術研究所)片山 恒雄

(以下五十音順)室長(建設省建築研究所)糸井川 栄一

GIS事業部長代理(応用地質(株))金子 史夫

国際協力専門員(国際協力事業団)大井 英臣, 助教授(北海道大)岡田 弘

副センター長(アジア防災センター)小川 雄二郎

代表取締役((株)水文環境)木下 武雄, 教授(筑波大学)熊谷 良雄

教授(慶応義塾大)塚越 功, 主任研究員(損害保険料率算定会)長島 秀隆

理事長((株)東海総合研究所)水谷 研治, 教授(岩手県立大)元田 良孝

 本研究では, 日本での災害対策経緯の視点から災害被災国が自然災害に対して脆弱になる過程を国際災害軽減工学研究センターがこれまで調査してきた国(フィリッピン, バングラデシュ, フィジー)及びネパール, 中国を対象として地震, 洪水, 地滑り, 火山災害に焦点を当て研究調査を行い, その災害インパクトを定量化する.

 3.  不織布充填型人工肝臓バイオリアクターを用いた異種灌流実験及び肝不全患者の治療

教授(東京大)幕内 雅敏, 助手(東京大)成瀬 勝俊, 講師 酒井 康行, 教授 鈴木 基之

 ブタなどの大型哺乳類から採取した初代培養肝細胞を固定化したバイオ人工肝臓は, 劇症肝炎や肝移植待ち患者の一時的な肝機能代替システムとしての利用が期待されている. そこで, 従来から開発してきたポリエステル不織布充填型バイオリアクターを用いるバイオ人工肝臓システムを用いて, 前ヒト臨床応用試験として, 肝不全のイヌやサル・100%ヒト血漿などを用いたex vivo, in vitro灌流実験を進めている.

 4.  地震断層近傍の地盤変形の空間分布を考慮した構造物の破壊モードの制御

教授 小長井 一男(代表者)

助教授 目黒 公郎・(東京大)堀 宗朗

 阪神淡路からトルコ, 台湾と奇しくも, 国際防災の10年(20世紀最後の10年間)に世界を震撼させる大地震が頻発した. これらの地震被害は断層が明瞭な形で地表に現れるか, あるいは地表近くに到達し, その強い揺れに加えて断層近傍の大きな地盤ひずみが被害の形態をより深刻なものにした. 本研究は, 地盤の強い揺れで構造物が揺すられるという従来の想定シナリオだけにとどまるのでなく, 断層進展に伴う著しい地盤変形を想定し適切な対応を検討することを目的としている. 本年度は地盤の大変形の解析を進めるとともに, アメリカ, トルコ, 台湾からこの分野で著明な研究者を招聘し「A Workshop on Seismic Fault-induced Failures - Possible Remedies for Damage to Urban Facilities -」を開催した.

 5.  社会・文化的特性を考慮した持続可能性配慮型建設システムの創出に関する研究

助教授 野城 智也(代表者)

 「持続可能配慮型建設システム」を, 「持続可能性を阻害する要因の作用をできるだけ軽減する, 建物・インフラ施設の建設(=設計・施工・運用・改修・解体)に関わる種々の仕組」と位置づけ, 以下の三つの事項を明らかにすることを目的とする.

目的1:「持続可能配慮型建設システム」と社会的・文化的特性の関係を明らかにする.

目的2:マテリアルフロー・バランスからみた「持続可能配慮型建設システム」の具体像を明らかにする.

目的3:生産主体のサービス・プロバイダー化の寄与効果と可能性を明らかにする.

5. 基盤研究(A)(2)

 1.  位相共役パラメトリック増幅鏡による超音波自動標的装置の開発

教授 高木 堅志郎(代表者), 助教授 酒井 啓司, 助手・特別研究員 坂本 直人

 位相共役波とはある波と同一の空間的振幅分布を持ち時間的に逆進する波で, 時間反転波とも呼ばれる. 入射波の位相共役波を返す素子を位相共役鏡という. 最近我々は圧電セラミクスの非線形特性を利用したパラメトリック位相共役鏡を開発し, これによって入射波よりエネルギーの高い位相共役反射波を作ることが可能になった. この基盤技術の応用として, 特に医用超音波治療において患部を100%の確率で加熱破壊する自動標的装置の開発が挙げられる. 本年度はこの技術の実用化に向けて, 高効率の位相共役鏡の開発を目的として高い非線形性を示すセラミック材料の探索・設計を行った. さらに標的への自動収束能を評価する超音波ビーム可視化装置の作製に着手した.

 2.  コンクリート構造物の劣化診断および最適補修システムの開発に関する研究

教授 魚本 健人

 今日, コンクリート構造物の劣化診断および最適補修システムを開発することを目的とし, 今日, 既存コンクリート構造物の健全性評価および最適な補修を可能とするシステムが社会の重要なニーズ必要となっていることから本研究は最適診断システムの確立を目指す.

 3.  LESモデルによる乱流燃焼火炎解析法の開発とその評価

教授 小林 敏雄(代表者), 助教授 谷口 伸行・大島 まり, 助手 佐賀 徹雄

助教授(名古屋大)新美 智秀, 講師(東京工業大)坪倉 誠

 燃焼場をLESにより数値解析する際に克服すべき課題として, 乱流変動速度場の予測精度の向上, 温度・濃度などスカラー量拡散のモデリング, 燃焼反応のモデリングがある. これらの課題に対応するLESモデリングを提案し, 単純化された系について実測結果との比較検証をおこなった. 特に着火, 消炎現象の予測モデルを構築し, その評価をおこなった. それらの成果を総合して現実の燃焼器設計を想定した総合解析コードを構築し, ガスタービン, 燃焼器内予混合火炎を対象にコードの有効性を確かめた.

 4.  情報量的に安全なIDベース暗号インフラストラクチュアの構築および運営に関する研究

教授 今井 秀樹(代表者), 講師 松浦 幹太, 助手 古原 和邦

 インターネットに代表されるオープンなネットワーク上において電子商取引等を安全に行うためには, 通信の暗号化や一貫性および否認不可能性を提供する暗号インフラストラクチュアが欠かせない. 本研究では, 以下の3つの性質を満足する暗号インフラの実現を目的とする. (i)情報量的に安全, (ii)ユーザの識別子(ID)を公開鍵とすることが可能, (iii)高速処理可能. また, さらに実際的な目的として, (iv)従来の暗号インフラからの効率的な移行方法, および, (v)センタの負荷分散手法の研究開発も掲げる. (vi)に関しては鍵配送だけではなく, 多様な暗号系を開発する. とりわけ, 情報量的安全性に基づく署名技術とその最適化を重視する. その結果として, 電子署名の証拠能力を将来にわたって保持し, 様々な用途に対応できるものとする. (ii)に関しては(i)で述べた暗号系をIDベース方式に実装するばかりでなく, IDベース方式についての一般的な問題点を指摘し, その改良も行っていく. (iii)に関しては(i), (ii)を満足する暗号系の効率的な実装を行う. (iv)に関しては従来の暗号インフラからの移行を効率的に行う方法を検討する. そして最後に(v)に関しては複数のセンタで秘密情報を分散管理する手法についての研究を行う.

 5.  各種気候下におけるアダプティブ制御による省エネ型ハイブリッド空調方式の開発

教授 村上 周三(代表者)・加藤 信介, 研究員 近藤 靖史

研究員 伊香賀 俊治, 協力研究員 近本 智行, 助手 白石 靖幸

 近年の地球温暖化に伴い, CO2排出量の削減の必要性がある. 日本ではこの目標を実現するために空調時の室内設定温度を夏期:28℃, 冬季:20℃に変更することとした. しかし, これを一般オフィスや商業ビルで適応した場合, 室内空間の温熱快適性の悪化に伴い, 高い労働生産性を維持することは不可能である. これを達成するためには, 人体の環境適応性(アダプティビティ)や教育, 学習効果を活用した従来とは異なるコンセプトに基づく室内の空調制御が求められている.

 本研究では, 人体の環境適応能力と教育・学習能力を活用して, 現状の室内空調目標(一般に冷房26℃, 暖房22℃など)をより緩和し, 冷暖房用エネルギーを相当量削減しても快適となるオフィスの室内環境制御システムを開発する.

 6.  二針型複合FIM・STM装置の製作

教授 山本 良一, 助手 弓野 健太郎

 本研究においては, 薄膜結晶成長のメカニズムを解明することを目的として, 走査型トンネル顕微鏡(STM)を改良し, 原子の表面拡散を観察できる装置の開発を目指す. 結晶成長は原子やクラスターの表面拡散, 核生成, 解離等複数の素過程が複雑に絡み合ったプロセスであり, 成長機構を解明するためには, 各素過程を直接観察し, 素過程のレベルから明らかにする必要がある.

 7.  水中を自動観測する環境保全ロボットシステムの研究開発

教授 浦 環(代表者)・浅田 昭・(北海道大)蒲生 俊敬,

助教授(九州工業大)石井 和男, 講師(明治大)黒田 洋司, 助手 能勢 義昭

 湖水環境保全のための有効な調査方法として自律型ロボットを観測プラットフォームに用いるという全く新しい観測システムを構築しているが, 今年度はテストベッドとして自律型ロボット「トライドッグ1号」を建造した. また, ロボットが湖底に設置したランドマークを利用して自動的に位置の修正あるいは航路の修正をすることが可能なランドマークの研究および制御ソフトウェアの研究開発をおこなった.

 8.  ナノメートルオーダの機械振動子による質量と場の計測

助教授 川勝 英樹, 講師 年吉 洋, 助手 星 泰雄

 100ナノメートル大の機械振動子を作製し, 原子レベルの質量変化や場の計測を行う. 本年度は, 大気中での振動子の動特性の測定に続いて真空中での測定を行い, 振動子のQ値を求めた. これにより検出可能な力の分解能や質量変化の分解能を正確に算定することが可能となった.

6. 基盤研究(B)(1)

 1.  高精度全球土壌水分分布の再解析と降水予測へのインパクト数値実験

助教授 沖 大幹(代表者), 教授 喜連川 優・(東京大)小池 俊雄, 助手 鼎 信次郎

助手(京都大)田中 賢司, 研究員(国立環境研究所)江守 正多

研究員(米国海洋陸域大気研究所)ポール ディルマイヤー

 数週間以上の時間スケールを持つ地球大気環境の変動は, その下部境界条件である土壌水分や積雪の影響を強く受けている. そこで, 陸面植生水文数値モデル(LSM)に観測外力を与え時間積分することによって全地球陸面の土壌水分を推定するという国際共同研究プロジェクト(GSWP)が行なわれた. 得られたグローバルな水収支分布は一見もっともらしかったが, 研究代表者らによる包括的かつ綿密な解析の結果, LSMに与えられた観測外力の精度が悪い流域については, 得られた水収支推定結果の精度も悪いことが明らかになった. GSWP向けのデータが準備されてから5年が経った現在, より高精度の観測外力情報が利用可能となった. すなわち, それらのより良いデータを利用してもう一度GSWPの枠組みにおいて再実験を行い, 全球水収支, 特に土壌水分分布を精度良く推定することを本研究の目的とする. 本年は上記の高精度の観測外力情報の精度チェック, 陸面数値モデルGsiBの構築, および, 外力情報の共通情報基盤化と世界への公開を行なった.

 2.  スマート型空間構造システムの開発と構造挙動に関する研究

助教授 川口 建一(代表者), 助手 宮崎 明美

技術官 大矢 俊治, 大学院学生 小林 充

 元来, 建築構造物の形態は, 建設以後変化しない. しかし, 近年, 建築構造物への要求は大きく多様化しており, 開閉式ドーム構造等の可変式の建築が登場するようになってきている. この様な傾向は, 通常のビル建築以上に, ドーム構造や展示施設などの特殊構造をもった大規模集客施設, いわゆる空間構造物と呼ばれる建築構造物において顕著である. しかし, 従来の開閉式ドームなどに代表される可変構造物は, 既存の重工業的な技術の延長であったため, 空間構造本来の軽量性という特徴を失ってしまっており, 空間構造の特徴である耐震性や開閉に伴うエネルギー効率などの点で, 不利なものとなってしまっている.

 本研究では, 空間構造物本来の特徴である軽量性を損なわず, 様々な荷重, 用途条件下で最も適した構造システムを形成するスマート構造としての可変空間構造を開発することを目的とする.

 本年度は軽量構造物への可変システムの応用を目指し, ターンバックルやアクチュエータを持つ膜とケーブル構造の線形逆解析手法の開発, および, 簡易実験を行い, 双方の比較を行った.

 3.  合成開口レーダー画像を用いた地震被害判読技術に関する研究(新規)

助教授 山崎 文雄, 助手・特別研究員 村尾 修

協力研究員 松岡 昌志, 研究員 若松 加寿江

 合成開口レーダー(SAR)は, 雲などの天候や昼夜の別などに影響されないマイクロ波を使った能動的センサである. 本研究では, 人工衛星や航空機に搭載したセンサからのSAR画像を用いて, 地震被害を判読するための技術について研究を行っている. 今年度は, 兵庫県南部地震の人工衛星SAR画像を対象とした研究結果をまとめるとともに, 1999年に相次いで発生したトルコ・コジャエリ地震と台湾集集地震の人工衛星SAR画像を入手し, 非常に広範囲にわたる地盤変状や建物被害の判読の可能性について検討を行っている. また, 1993年北海道南西沖地震による奥尻島の津波, 火災, 斜面崩壊の判読についても人工衛星SAR画像を入手し検討を開始した.

7. 基盤研究(B)(2)

 1.  ポリピリジル骨格を持つ新規な機能性有機蛍光物質の創成

教授 荒木 孝二, 助手・特別研究員 務台 俊樹

 多点分子間相互作用部位を持つポリピリジル化合物に蛍光性を付与し, 分子間相互作用に基づく蛍光制御が可能な新規な機能性蛍光物質群を設計し合成することを目的とした. 昨年度までの研究で蛍光性ビピリジル化合物の開発とその機能に関する研究を完了し, 本年度は蛍光性テルピリジルの開発に主点を移した. その結果, 予備的な研究で蛍光性が確認されているフェニルおよびアミノ置換テルピリジル誘導体を対象に, 置換位置や置換基の組み合わせと蛍光特性との関係を検討し, 4ユ-位へのフェニル置換もしくは6-位へのアミノ置換が蛍光性付与に最も有効であること, フェニル基とアミノ基を同時に導入することは有効ではないことなど, 蛍光性テルピリジルの分子設計に有用な知見が得られた.

 2.  二酸化炭素を原料としたメタノール生産バイオプロセスの開発

助教授 畑中 研一(代表者), 助手・特別研究員 鬘谷 要

教授(東京工業大)大倉 一郎, 助教授(東京工業大)中村 聡

 本研究では新規なバイオプロセスを構築し, 二酸化炭素とメタンを共にメタノールという有用物質に変換し, 大気中の二酸化炭素とメタンの軽減を達成しようとする. 太陽エネルギーをエネルギー源として利用した高効率なメタノールの生産を目指すものであり, 環境破壊化合物の低減法と新しいメタノール合成プロセスの開発を行う. 二酸化炭素の固定には還元力が不可欠であるが, 本研究では還元剤として水素を用い, 二酸化炭素をメタンに還元する. メタンの部分酸化によるメタノールへの変換は, 修飾メタン資化細菌(シクロプロパノール処理により収率100%のメタノール生産を可能にしたもの)を用いて行う. 本年度は, シクロプロパノールがMDHの選択的阻害剤になることを見いだし, シクロプロパノールで修飾したメタン資化細菌を用いてメタノールの効率的な蓄積を達成した.

 3.  粘弾性相分離の物理的起源とドメイン成長則の解明

教授 田中 肇

 我々は最近, 動的に非対称な混合系(高分子混合系など)において, 全く新しい相分離様式(粘弾性相分離)を実験的に発見した. 我々は, 大きな遅い成分の凝集過程で形成される過渡的なゲル状態こそが, この相分離挙動の起源であると考えている. そこで本研究では, 高分子系以外の系(コロイド分散系など)で, 粘弾性相分離現象が起きるか否かを実験・数値シミュレーションによって検証し, 粘弾性相分離の普遍性とそれを支配している物理因子を明らかにすることを目的としている. また, この粘弾性相分離においては, 従来の相分離の常識に反し, 少数相が連結したスポンジ状の構造が形成され, この構造形成の機構およびその過程の理解は, 少量の高強度成分による材料強度発現など, 応用的観点からも極めて重要である. そこで, 3次元構造解析手法により, そのスポンジ状構造などの時間発展を位相幾何学的側面から明らかにすることも目指す.

 4.  モード選択光励起による位相コヒーレント光散乱法の確立

教授 田中 肇, (日本分光)大久保 優晴

 本研究の目的は, 従来の熱揺らぎに基づく動的光散乱法にかわり, 光励起したモードの共鳴スペクトルとしてそのモードのダイナミクスを探るという新しい原理に基づく“位相コヒーレント光散乱法”を確立することにある. この方法は, 光により熱・濃度・回転拡散, 表面波などの各種モードを選択的に励起し, その共鳴スペクトルをスーパーヘテロダイン方式の光散乱により, 位相情報まで含めて測定するという方法であり, 従来パワースペクトルとしてしか観測できなかった光散乱スペクトルを, 複素周波数スペクトルとして観測することが可能となる. 我々は, 既に, 縦波音波に関して, 従来法に比べ分解能にして2桁以上高い音響フォノンの複素ブリュアン・スペクトルの測定に成功している. 本研究では, 縦波音波以外の動的モードへもこの方法を応用し, 材料の動的な物性測定のための強力なスペクトロスコピーとして確立するとともに, 実用化に向けてシステムの操作性を向上させることを目指す.

 5.  表面水素非局在系の構築とその検証

助教授 福谷 克之, 教授 岡野 達雄, 助手・特別研究員 Markus Wilde

助手 松本 益明, 教授(大阪大)笠井 秀明

 金属の表面では, 吸着した水素の原子核波動関数が空間的に広がり非局在化する可能性が示唆されている. 本研究では表面合金を作成することで水素非局在系の実現し, その時の位相コヒーレンス長の測定を目指している. 本年度は, 吸着水素の表面平行方向の零点振動に伴う運動量不確定性をより精度良く直接測定するため, 試料の角度を精度良く変化させられるような試料ホルダーの作製とイオンビーム光学系の改良を行った. シリコン表面について測定・解析を行い, 表面欠陥の影響がスペクトルの非対称性として現れることを見出した.

 6.  半導体レーザー励起による広帯域フォノンビーム源の開発

助教授 酒井 啓司(代表者), 教授 高木 堅志郎, 助手・特別研究員 坂本 直人

 物質中の分子レベルのミクロな構造やダイナミクスを調べる上で, フォノンスペクトロスコピーはきわめて重要な技術である. 特に分子反応などの高速現象を調べるためには高い周波数帯のフォノンビーム源の開発が望まれている. 我々はこれまで主流であったサーマルフォノンにかえて, 高周波で強度変調したレーザーの照射によるコヒーレントフォノンビーム源の開発を目指している. 本年度はこれまでの音響モードフォノンに加えて, 光の偏光をスイッチングすることで液体分子の集団回転というモードを励起し, これを観察する試みを行った. この結果から分子配向と流体の並進運動とのカップリングなどのミクロな情報を得ることができる.

 7.  光誘起表面振動スペクトロスコピー法の開発と液体表面の超高周波物性研究

助教授 酒井 啓司(代表者), 教授 高木 堅志郎, 助手・特別研究員 坂本 直人

 液体の表面・界面はLB膜などの新しい機能性材料の場として重要である. 本研究は, 界面における分子レベルの高速反応を観察する新しい手法であるレーザー誘起表面振動スペクトロスコピーの開発を目的とする. レーザー光を液体界面に入射させ, 光の放射圧によって表面形状を制御する. レーザー強度を高速変調し, これに対する界面の変形応答を観察することで, 広い周波数帯域にわたる界面のダイナミクスを調べることができる. 本年度は円筒レンズにより線状に集光されたレーザーを用いて高周波のコヒーレントリプロンの生成を行った. これにより従来より高い精度で表面エネルギーや2次元粘弾性の評価を行うことが可能となった.

 8.  磁気EXAFSによる希土類―遷移金属合金のスピン分極分布の研究

教授 七尾 進

 本研究の目的は, 磁気EXAFSの高精度測定法と解析法を確立するとともに, 磁気EXAFSの特徴を最大限に活かした磁気構造解析を行い, 希土類―遷移金属合金におけるスピン分極分布を明らかにして, この合金の磁性の研究に貢献することである.

その研究の主たる研究成果は次の通りである.

 (1) NdCo2およびTbFe2の磁気EXAFS測定を行い, このスペクトルを新たに考案した方法で解析した. その結果, これらの磁気構造に関する知見を得るとともに磁気EXAFSの有用性と問題点を明らかにされた.

 (2) 磁気EXAFSスペクトルの解析の信頼性を向上させるために磁気多電子励起(MMEE)に関する研究を行った. その結果, MMEEスペクトルの強度と形状, MMEEの励起エネルギーに関する詳細な知見を得るとともに, 磁気EXAFSの解析に与える影響を評価することができた.

 (3) 遷移金属および希土類の磁気吸収およびX線発光スペクトルの測定を行い, これらの元素における磁気円二色性発現の機構に関する知見を得た.

 9.  半導体量子井戸を用いたフォトリフラクティブ素子の高速高感度化の研究

教授 黒田 和男(代表者)・荒川 泰彦

助教授 志村 努, 助手・特別研究員 的場 修・芦原 聡

 近赤外域に感度を持つInGaAs/GaAs多重量子井戸を非線形光学媒質とし, 縦型電界配置のフォトリフラクティブ素子を作製し, 光学性能を評価した. 前年に酸化シリコンの誘電体絶縁層で量子井戸層を挟んだ構造で, 縦型配置素子を作製したが, 本年度は誘電体層の代りに低温成長した半導体絶縁層を用いることにより, 作製プロセスを飛躍的に単純化すると同時に, 素子の高性能化も目指した. このため, 真性半導体層をp型およびn型半導体層で挟んだp-i-n構造を採用した. 結果的に誘電体を用いた素子に比べ, 空間分解能は約5倍改善され, さらに感度も向上した. この素子を実時間ホログラムとして用い, 振動計測等への応用を試みた.

 10.  ナノ構造内の電子遷移の新制御法と近赤外・中赤外域光変調機能デバイスの開発(継続)

教授 榊 裕之, 助教授 高橋 琢二, 助手 野田 武司

 ナノ構造において電子や正孔の準位間の遷移過程を制御する新手法を開発し, 近赤外および中赤外領域で動作する新しい光変調機能素子の開発研究を行っている. 特に, 量子箱や量子細線にキャリアを電気的・光学的に導入した時の光吸収率や屈折率の変化を利用して, 光変調機能をもたらす素子の設計解析を進めるとともに, 一部試作・評価も試みつつある.

 11.  半導体ミクロおよびナノ・グレイン物質の物性支配機構の解明と制御の研究

教授 榊 裕之, 助教授 高橋 琢二, 助手 野田 武司

 SiO2の上のSiやGaAs基盤上のInAsなどの成長では, 数μmから数nmのサイズの多結晶グレイン状膜が得られる. この種の膜には, その質を一段と高める必要のあるものと, 物性の解明と新機能の探索をすべきものがある. 本研究では個々のグレイン単位で物性の支配要因を新手法を駆使して調べ, 物性の新制御や新素子応用を探る. 具体的にはSiのミクロンオーダーのグレイン界面に生じる境界障壁の作用を解明抑制し, 格段に高い伝導度を実現する道を探り, さらに, 10 nm級のグレインを電子電荷の蓄積要素やレーザなどの各種の光デバイス活性材料として活用するために障壁の効果を十分に高めるとともに, 界面の欠陥に伴うキャリアの再結合など負の効果を抑制する手法の開発を図る.

 12.  テラヘルツ放射をプローブとした10フェムト秒領域におけるキャリアダイナミクスの研究

助教授 平川 一彦, 助手 島田 洋蔵

 サブピコ秒の時間スケールで高速に運動する電子は, その速度の微分に比例する電磁波を放出し, その周波数はテラヘルツ(THz)領域にある. 従って, 電子が放出するテラヘルツ電磁波を検出・解析することにより, 電子の実時間領域における運動に関する情報を得ることができる. 特に, 以下の3点を目標として, 研究を遂行する. 1)10フェムト秒程度のパルス幅のテラヘルツ光を検出する超広帯域テラヘルツ電磁波検出系を確立する. 2)光励起により生成した電子波束のフェムト秒領域における非平衡な速度−時間特性を求め, 速度オーバーシュート効果を明らかにするとともに, 超高速トランジスタの動作限界を予測する. 3)半導体超格子中の電子の速度の時間波形を観測し, 超格子の伝導度スペクトルを直接求めることにより, テラヘルツ領域でのゲインの有無に決着をつける.

 13.  超細束イオンビームを用いた工業材料のナノスケール三次元分析装置の試作研究

教授 二瓶 好正(代表者), 研究担当 坂本 哲夫, 助手・特別研究員 石井 秀司

 本研究の目的は, ナノスケール三次元元素分析法の開発・装置化である. 本手法及び装置は, これまで開発もしくは解明されていない以下の様な事項を詳細に検討した上で, 実現されるものである. すなわち(1)ビーム径が数ナノメートルの超細束一次イオンビームの開発, (2)長時間安定で精密なビーム走査制御技術の開発, (3)迅速かつ適切な処理を可能とする三次元データ解析システムの開発, (4)収束イオンビーム加工断面の形状・化学状態の解明である. 以上の様な事項の詳細な検討結果に基づき試作した装置を用いて, これまでにない超高空間分解能三次元分析法を開発する.

 14.  個別微粒子表面に吸着した難揮発性有害有機物の直接分析法の開発

教授 尾張 真則, 研究担当 坂本 哲夫

 本研究では, 第一に固体表面に微量吸着した分子量数百の難揮発性有機物の二次イオン質量スペクトルを, 化学種の識別が可能な状態で測定することを試みる. ついで混合吸着物に対して同様な測定を行い, 混合物のスペクトルからの各成分の識別と定量の方法を, 多変量解析などの数学的手法の適用を含めて検討する. これらの結果をふまえて, 微粒子表面に吸着した超微量有機物の分析法を提示し, 焼却炉排ガスに含まれるフライアッシュを想定した微粒子に対する難揮発性有害有機物の個別微粒子単位での分析への適用性を評価する. これらの各段階を通して, 環境微粒子表面に吸着した難揮発性有害有機物の直接分析法の開発を行う.

 15.  薄型フレキシブル熱拡散プレートの開発

教授 西尾 茂文(代表者), 助教授 白樫 了, 助手 永田 真一

 高集積化・高密度実装への傾斜により発熱密度が急増しているLSIチップの空冷技術に対して, (a)チップからの発熱を再電力化し放熱負荷を低減する方法, (b)高効率に空気へ放熱する方法[(b-1)放熱面積の拡大, (b-2)高性能ヒートシンク, (b-3)導入空気温度の低温化]の開発が必要である. 本研究では, 上述の(b-1)の課題を解決するための実用化研究として, これまでの研究を背景として実用化に近い段階にある細径の気泡駆動型熱輸送デバイス(BD-HTD)を内蔵した薄型フレキシブル熱拡散プレートを光造形システムにより作成し, notebook PC本体内部における放熱面積増大と液晶画面裏面への熱輸送を模擬した実験を行い, その性能を実証することを目的としている.

 16.  接触界線近傍の蒸発現象に注目した高熱流束沸騰現象に関する研究

教授 西尾 茂文(代表者), 助教授 白樫 了

 気泡構造と接触界線長さ密度との関連がつかみやすい「疑似二次元沸騰系」と接触界線領域の蒸発現象の顕在化が期待できる「マイクログルーブ系」とに関する研究を両輪として, 高熱流束沸騰における相変化機構の解明を目的とした. 即ち, 気泡構造と接触界線長さ密度との関連に関する物理モデルを構築する一方, 接触界線領域における蒸発現象をマイクログルーブ蒸発面により顕在化させ, 接触界線領域近傍における上述の空間的構造化を記述するモデルを構築した. 両者を結合し, 接触界線領域に注目した高熱流束沸騰現象に関する相変化モデルを構築する.

 17.  ゾルゲル法による凝集複合砥粒の開発に関する研究

教授 谷 泰弘(代表者)

助手 柳原 聖, (タイホー工業(株))河田 研二

 高品位加工を高能率で実現するには, もはや従来の砥粒での実現は難しい. 単一機能しか持たなかった種々の粒子を化学的に凝集させて複合凝集粒子を得る手法が確立できれば, 高精度の加工面を高能率に得ることが可能であろう. 本研究では, 従来単一機能しか持たなかった砥粒をゾルゲル法を利用して複合化することにより様々な機能を持たせ, さらなる高品位・高能率加工の実現を目指している. 本年度は凝集複合砥粒の適用範囲について検討を行った.

 18.  ディープサブミクロン配線のタイミング特性の研究

教授 桜井 貴康, 助教授 平本 俊郎

 設計ルールのスケーリング(微細化)とチップ面積の増大に伴い, 配線長の増加による配線抵抗および配線容量の急増ならびに微細化によるトランジスタの等価出力抵抗の減少により, LSI内部の信号伝播遅延では配線が支配的になりつつある. また隣り合った配線間(ピッチ)の接近と長距離にわたりそれらが沿うことにより配線間のカップリング容量が増し, クロストークなどのカップリングノイズの問題も浮かび上がってくる. このためタイミング設計においてディープサブミクロン配線の遅延やカップリングノイズを正しく反映することが重要となる. これらの問題を解決するためにCADツール上で配線による伝播遅延特性やクロストークノイズ特性のモデル化を行い, 高速解析アルゴリズムを提案することが目的となる.

 19.  住宅等における風力エネルギー変換パネルの開発とその応用

教授 村上 周三(代表者)・加藤 信介, 助教授(東北大学)持田 灯

研究員 伊香賀 俊治, 助手 白石 靖幸

 風力はクリーンな自然エネルギーとして, 将来的にその積極的な利用が望まれている. 本研究では従来エネルギー密度が低いためその利用が困難と考えられていた風力エネルギーによる住宅用のエネルギー開発を行うことを目的とする. このような住宅等の小規模な風力エネルギー利用計画の作成は, 風洞実験並びにCFD(Computational Fluid Dynamics)による風環境予測・解析システムを構築し, そのシステムに基づいて行う.

 20.  半剛接・部分強度接合された鉄骨架構の地震応答観測とオンライン地震応答実験

助教授 大井 謙一(代表者), 助手 嶋脇 與助・李 昇宰

 本研究は溶接による剛接合の代案として, わが国の設計環境で可能と思われる数種の接合法を選んでメカニカル・ファスナーと金物による接合部ディテールや露出形式柱脚(部分強度・半剛接接合部)を有する部分架構縮尺模型を実地盤上に構築し, 模型に対して地震応答観測, オンライン地震応答実験及び繰返し準静的載荷実験など直接・実証的手段によってこの種の架構・基礎及び周辺地盤振動の影響を含んだ地震応答性状を総合的に解明する.

 21.  鉄鋼精錬プロセスにおける, CaF2減量化に関する熱力学的研究

教授 前田 正史

 鉄鋼精錬における, ふっ素排出を抑制することを目的にフラックス添加剤として用いられているCaF2の使用減量に関する研究を行っている. CaF2の代替としてSiO2, Al2O3を取り上げ, 1673KにおけるAl2O3-CaF2-SiO2系相平衡図, Al2O3-CaO-FeO系相平衡図の測定を行った. CaF2の一部をAl2O3で置換するとSiO2の溶解度を上昇させることが分かった.

 22.  摂動法の高次解による海洋構造物の非線形現象の解明

助手・特別研究員 佐野 偉光, 教授 木下 健

 非線形波力のうちで, 海洋構造物にとって最も顕著な現象である水平面内モードの長周期運動と鉛直面内モードのリンギングを取上げ, それぞれにとって最も大切な流体力として, 波漂流減衰力と三次の高周波の波力を摂動法により解析した. 波漂流減衰力については並進運動のみならず回転運動についても理論計算, 模型実験を行い, 結果を比較し, 理論の妥当性を検証した. 三次の高周波の波力については水深, 浮体の喫水, 波長等のパラメーターの影響を理論計算により明らかにした.

 23.  水深の浅い場合の海洋構造物に働く非線形波力の理論計算と模型試験による検証

教授 木下 健, 助手・特別研究員 佐野 偉光

 従来の研究では三次波力またはそれ以上の高次波力の計算では十分水深が深い場合を除いて, 半無限積分にセキュラー項が表れ求解できない. すなわち十分水深が深い場合はMolinの示した数値フィルターにより, 収束解が得られるものの, 水深が浅くなると現実的には収束解が得られない. 本研究では固有関数の漸近展開近似を利用する方法等で収束解を得ることを試みている.

 24.  化学物質人体影響の定量的評価のための複合細胞培養システムの開発研究(継続)

講師 酒井 康行, 教授 迫田 章義

 既存の単一培養細胞からなる毒性評価系では, 吸収・代謝・分配といった人体内での毒性発現に至までのプロセスが考慮されない. そこで, これらを考慮する実験系として, 膜上に培養された小腸上皮細胞と担体内に高密度培養された肝細胞および標的臓器細胞(腎臓・肺など)を生理学的な培養液灌流回路で接続する新しい毒性評価システムを開発し, 毒物経口摂取後の血中濃度と毒性発現を定量的かつ速度論的に再現することを目指している.

 25.  強誘電性および導電性の交代層をもつビスマス層状構造酸化物デバイスの開発

助教授 宮山 勝(代表者), 教授 工藤 徹一, (日立製作所)平谷 正彦

 方向により強誘電性, 導電性が同時に発現する結晶体の設計・創製を目的に, 強誘電性のペロブスカイト層と導電性のペロブスカイト層が絶縁性酸化ビスマス層をはさんで交互に配列したビスマス交代層構造酸化物を合成することを試みた. まず単層の導電性層状構造体の作製を目指し, チタン酸ビスマス(Bi4Ti3O12)およびBi-Ti-Fe-O系酸化物のTiあるいはFeの一部をMnで置換した固溶体を作製し, Mn固溶量とともに導電率が増大しp型半導性を示すようになることを明らかにした. Mnを含むBi-Ti-Fe-O系層とMnを含まないチタン酸ビスマス層からなる交代層構造体が, 不純物相を若干含むものの合成できることが明らかとなった.

 26.  平面計画上の構造非整形性を有するRC造建築物のねじれ応答制御に関する研究

助教授 中埜 良昭

 現行の耐震規定では, 国内外を問わず, ねじれ振動に対する規定は部材の弾性剛性に立脚した指標に基づいている. 一方, 強震時における構造物のねじれ応答性状は弾性時の剛性偏心よりも非線形応答時の等価剛性や耐力偏心に大きく依存すると考えられるが, これらを適切に反映した設計手法は未だ確立されていない. 本研究の主目的は, 1. 従来の剛性偏心に替わり, 耐力偏心を主要パラメータとした新たなねじれ応答量を推定する指標を提案し, 2. その適用性と適用範囲を実験的・解析的に検証すること, 3. 無偏心建物に対する有偏心建物の応答倍率を明らかにすること, 4. ねじれ応答を制御するための設計クライテリアの提案, にある.

 27.  順応型解析手法による大規模海洋骨組の構造設計支援システムの開発(継続)

教授 都井 裕, 助教授 林 昌奎, 助手・特別研究員 李 廷権

 実際の海洋骨組構造物の極限強度設計に適用可能な汎用的・効率的な解析・設計システムを構築することを目的とし, 有限要素法による動的非線形解析における順応型Shifted Integration法の計算アルゴリズムの確立, およびプリ・ポスト処理を含む統合的な大規模骨組構造設計支援システムのプロトタイプコードの開発を実施した. 本年度は, LCLモデルによる動的クラッシュ解析アルゴリズムの破断挙動解析への拡張, および要素サイズ依存性を除去した弾塑性損傷解析アルゴリズムのRC骨組解析への適用を実施し, 研究を総括した.

 28.  応力とひずみの広範囲な三次元条件下における粗粒材料の変形・強度特性の研究

助教授 古関 潤一(代表者), 研究担当 龍岡 文夫, 助手 佐藤 剛司・早野 公敏

 大型角柱供試体の一対の側面に水平載荷板を設置することにより, 水平方向のヤング率を直接測定することができる大型三主応力制御試験システムを, 既存の大型三軸試験システムの一部を更新する形で導入した. この試験システムの性能に関する基本的な検討を行い, 目標とした載荷制御精度とひずみ計測精度が確保されていることを確認した.

 29.  CFD連成シミュレーションに基づく空調システム最適化のための逆問題解析法の開発

教授 加藤 信介(代表者)・村上 周三, 研究員 伊香賀 俊治, 助手 白石 靖幸

 本研究は, 室内環境CFD(Computational Fluid Dynamics)解析シミュレーションに基づく室内温熱環境の自動最適設計手法を開発することを目的とする. これは室内の環境性状を設計目標値に最大限近似させるための室内の物理的な境界条件を求める手法, すなわち逆問題解析による環境の自動最適化設計手法の基礎的な検討を行うものである. 従来の室内温熱環境設計手法は, 流れ場, 温度場などに関して室内均一を仮定する場合が多く, 室内空調方式の差異, 空調吹出口の位置と数, 窓ガラスの面積などによって生じる不均一な温熱環境やそれに伴う室内空調負荷の差異を考慮した室内温熱環境の最適設計はできなかった. 本手法の実用化により, 建築設計段階において, 建築される以前に設計された室内環境性状を外界変動, その他の変動要因を考慮した環境設計が可能となる. これは建築物環境設計のレベル向上に大きく貢献するものとなる. とくに建設例の少ない新しい環境開発の計画に有効である.

 30.  空間構造の静的及び動的挙動に関する研究(継続)

教授(米国・ワシントン大学)Phillip L. Gould・Srinivasan Sridharan

教授(韓国・成均館大学)権 宅鎮, 助教授 川口 建一, 助手 宮崎 明美(代表者)

 地震・台風・ハリケーン・竜巻等の環境下における, 空間構造(シェル構造, スペースフレーム, 膜構造等)の日米における研究状況をレビューし, 静的及び動的挙動に関する共同研究を実施する. レビューの比較, 検討を行うため, 日米においてミーティングを行う. 同時にレビューをレポートとして作成し, 次年度以降への基礎資料とする. 本研究課題は故半谷裕彦教授によって開始されたが, 半谷教授の逝去後, 宮崎助手が代表を引き継いで, 川口助教授とともに継続している. 当初, 国際学術研究として開始されたが, 昨年度より科学研究費基盤研究(B)(2)に組みこまれた. 本年度は, 10月に韓国で第2回セミナーを開催した. このセミナーには川口助教授と宮崎助手, および, 米国ワシントン大学のP.L. Gould教授・S. Sridharan教授および韓国成均館大学の権 宅鎮教授が参加し, 活発な意見交換が行われた. また, 本研究成果は同時期韓国で開かれた空間構造の国際会議で発表され, 討論・協議が行われた.

 31.  適応型柔軟構造物に関する学術調査(継続)

教授(ドイツ・シュトウツガルト大学)Jorg Schlaich・Ekkehard Ramm

教授(米国・コーネル大学)John Abel, 教授(スロバキア・スロバキア工科大学)Zoltan Agocs

助教授 川口 建一(代表者)・(英国・ケンブリッジ大学)Sergio Pellegrino

助教授(英国・ケンブリッジ大学)Simon Guest・(ギリシャ・アテネ工科大学)Charis Gantes

助教授(英国・オックスフォード大学)Zhong You, 助手 宮崎 明美

 近年世界各地に建設されつつある可動型の建築構造物は, 単に機械を大きくしたものである場合が多い. 今後自然環境との共生を考えていかなくてはならない時代において, 構造物自身が自然環境と共生していくためには, 人間本意の建築構造技術を考えてゆく必要がある. 建築構造学の分野では, 環境に適応できる適応型構造物の技術が開発されつつあり, また, 重厚長大な材料から, 膜材などの軽量かつ柔軟な建築材料が開発されつつある. 適応型構造物は災害被災地や宇宙空間, 海洋などの遠隔地においても利用価値が高いことが予想される. 本調査によって新たな建築技術のあり方を示すことを考える. 本年度は, 5月, 6月に川口助教授がイスタンブールにおける世界空間構造会議に出席し, その後ギリシャの, 非線形数値解析シンポジウムに出席し柔軟構造物の解析手法に関する論文発表を行ない, 各国の柔軟構造物研究者と情報交換を行った.

 32.  沿道住居の高遮音化に関する研究

教授 橘 秀樹(代表者), 教授 藤井 明・加藤 信介

講師 坂本 慎一, 研究員 矢野 博夫, 協力研究員 佐藤 史明

 モータリゼーションの進展によって, 居住域の音環境は悪化の一途を辿っている. 特に幹線道路の沿道に高密度に住居が立地するわが国の都市部における居住形態を考えると, 騒音源である道路とそれに近接する建物を都市設備として総合的に取り扱う視点が必要である. そのような背景をもとに, 沿道の音環境を改善する手法を体系的に研究し, 将来の沿道住居の在り方について音響工学の立場から研究を進めている. 本年度は, 建物ファサード構造の遮音性能に関する模型実験, 数値解析および実測による検討, 二重窓の遮音性能改善に関する実験的検討を行った.

 33.  光合成系I反応中心におけるクロロフィルa’の機能サイト確定

教授 渡辺 正, 助手・特別研究員 吉田 章一郎

 光合成器官で機能するクロロフィル類, カロテノイドおよびキサントフィル, 主要なキノン類のすべてを約1時間以内に高感度検出できるHPLC条件を初めて確立した. これを用いて, 高等植物, 好熱性ラン藻のチラコイド膜および光化学系I分画標品につき, 反応中心P700ならびにフィロキノンを指標とした微量色素の精密計測を行ったところ, いずれの試料でもP700あたりのクロロフィルa’は1分子だった. 関連して, 緑色硫黄細菌の反応中心近傍に約2分子のバクテリオクロロフィルa’を検出し, また海産の原核藻類については反応中心あたり2分子のクロロフィルd’を検出した. 以上の結果より, リングVの立体化学が反応中心構成に重要な役割を演じると推定した.

 34.  利用者の避難行動から見た都市施設の総合的安全性評価システムの開発

助教授 目黒 公郎(代表者)・須藤 研, 助教授 山崎 文雄

所長(科学技術庁防災科学技術研究所)片山 恒雄

 従来都市空間や施設の安全性は, 構造体としての物理的な強度を中心として議論されてきた. しかし最近では, 構造設計技術や施工技術の進歩, 新素材の開発などによって構造物の強度は向上してきている. また地震災害などを対象とした場合, 発生頻度を考えれば, 構造体の壊滅的な被害には至らないが, その空間や施設を利用する人々の避難安全性が問題となるような事態の方が発生の可能性が高い. 本研究は, 利用者の避難安全性から見た都市空間/施設の安全性評価法と新しい設計法を提案するものである. すなわち構造的に十分な強度を有し日常的に高い機能性を有しながら, 非常時においてもその機能を低下することなく維持できる総合的な安全性を確保するための設計と評価法の開発, 並びに安全性向上のための適切な施策の提案を行う.

 35.  大規模並列プロセッサを用いた相関ルールマイニングの超並列処理方式に関する研究

教授 喜連川 優, 助手 中野 美由紀, 助教授(東京大)中山 雅哉

助手 林 周志, ((株)日立製作所)鳥居 俊一

 近年, 計算機の処理性能が著しく向上したことから, 従来, 顧みられなかった膨大なログデータを解析することにより, そこに新しい価値を見出そうとするデータマイニングなる技術が注目されつつある. 本研究では, 超並列相関ルールマイニングアルゴリズムを開発し, 大規模並列コンピュータ(100プロセッサ)上に実現することで, その超高性能化を試み, 従来, 全く処理不能と考えられてきた巨大データのマイニングを可能とする基盤技術の実用化を試みるものである.

 36.  分散トランザクションの大幅な性能向上を目的とした投機的実行機構の基礎研究

教授 喜連川 優, 助手 根本 利弘

 本研究では「投機実行機構(スペキュレーション)」を導入することにより分散トランザクションの実行性能(スループット, レスポンスタイム)を大幅に改善することを目的とする. 即ち, 研究期間内に投機的分散トランザクション実行機構の形式化を行うと共にプロトコルの設計を行い, 更に, 詳細なシミュレーションにより投機実行の為のオーバヘッドを明らかにすると共に投機レベルと性能のトレードオフについて詳細に検討する.

 37.  ヘテロなネットワークにおける統合映像配信・通信システムの研究

助教授 瀬崎 薫(代表者), 教授(早稲田大)安田 靖彦

(キヤノン)佐藤 宏明

 本研究では映像メディアを柔軟に伝送・配信及び検索可能な統合的なシステムを構築することを目標とする. 具体的な課題としては, 低速回線と高速回線が混在する状況では, 既存のインターネットプロトコルを用いると, 受信端末に近い低速部では相対的に遅延とレート変動が増大する現象が生じるので, これを抑制する制御方式を検討する. 次に, この制御方式を前提として, リアルタイム映像通信と, 将来のトラヒック未知である映像配信の両者に適した映像伝送方式を検討する. 更に, この映像伝送方式を念頭においた上で, 映像情報をキャッシングする場合に, アクセスコストやメモリ容量などの総コストを動的に最小化する機構を考察する. 本年度は上記課題の理論的検討をほぼ終了し, プロトタイプ設計を開始した.

 38.  遷移金属侵入型化合物と過酸化水素の特異的反応と生成物質のキャラクタリゼーション(継続)

教授 工藤 徹一(代表者), 助教授(東京大)水野 哲孝, 助手 日比野 光宏

 本研究により明らかになった諸点は以下の通りである. モリブデン, タングステン, バナジウム等の前周期遷移金属炭化物は過酸化水素と作用してシュウ酸が配位したペルオキソポリ酸を与える. 縮合度は過酸化水素濃度に依存し, 1から12まで変化する. 一方, 窒化物においては, 窒素が酸化と還元の双方をうけ, アンモニウム基と硝酸が生じる. 赤外およびラマン分光, X線光電子分光, TOF質量分析法などの多様な手段で構造解析を行い, 従来知られているtetraperoxoditungstateに加えてdiperoxomono-tungstateやその水和体などの新しい錯体の生成が確認された. これらポリ酸の非晶質固体は顕著なプロトン伝導性を示す. 特にシュウ酸を配位したポリタングステン酸の導電率は0. 01S/cmに達する.

 39.  ダイヤモンド膜の二段階CVD成長法による切削工具の高信頼化

助教授 光田 好孝(代表者)

 CVD合成ダイヤモンド膜を用いた切削工具は商品化されているものの, 密着性やコストなどに問題点を抱えており, 低コストでas-depo状態のCVD工具の作製プロセスが必要不可欠である. 一方, 当研究室で開発した高過飽和二段階CVD成長法ではダイヤモンドの核生成密度の増加効果が確認され, 高い密着強度をもたらす可能性が示唆されている. そこで, 本研究では, 広い面積に堆積可能なプロセス開発を行って工業的なコスト削減に取り組むとともに, 二段階CVD法を用いて超硬材料基体上にダイヤモンドを堆積させることを目的とする.

 昨年度までに, 新たに開発したφ120の円筒H11モードマイクロ波共振器を用いたエンドランチ型マイクロ波プラズマCVD装置により, φ50程度の範囲で膜形成を可能にしたが, 膜厚の均一性などに問題があった. 本年度は, 更に広い面積へのダイヤモンド膜堆積を試みると同時に, 堆積分布の均一性の向上を目指した. この結果, 膜質および膜厚ともに均一性を向上させ, φ90の範囲にまで堆積させることに成功している.

 40.  金属コーティングを利用したSiTiCO繊維強化Ti基複合材料の製造と特性

教授 香川 豊

 SiC系繊維表面に金属コーティングを施しTi系マトリックスと複合化する方法を提案した. 本年度は, 複合化後の状態に及ぼすAuコーティング層の厚さの影響を詳細に調べるとともに, 複合化後の材料中に生じる界面の長時間熱曝露による反応の進行及び界面力学特性の変化を調べた. その結果, SiC系繊維表面にナノメートル・オーダーの炭素層をコーティングし, その上にAuを数十ミクロンメートルコーティングした材料を用いると, 繊維特性の劣化を極めて少なくし, Ti系マトリックスと複合化可能であることが確かめられた. さらに, この方法で作製した複合材料の界面は繊維破断あるいはマトリックスクラックが界面で偏向する条件を満足していることが確認された.

 41.  太陽電池用シリコンの方向性凝固による高純度化と凝固残留応力の制御

教授 香川 豊(代表者), 教授 前田 正史, (株)アイアイエスマテリアル 島田 雄彦

 金属シリコンまたはスクラップシリコンを原料とし, 直接太陽電池シリコン基板を製造するプロセス技術を確立することを目的とし, 小型電子ビーム溶解装置(最大8kW)を用いて, ボタン溶解による金属シリコンの気化精製実験を行いCa, Al, P, Cなどの不純物を除去する技術を確立してきたが, Fe, Tiなどの遷移金属不純物は気化精製することはできなかった. そこで, 本研究では真空中で連続鋳造を行い, 真空蒸発による精製と凝固時の偏析を利用する精製を同時に実現する方法を採用し, その実験, 解析を行なった. 具体的には, 小型電子ビーム溶解装置を用いたシリコンの精製を試み, ドーパントとして高濃度のアンチモンを含んだスクラップシリコンの精製に関する実験を行なった. 不純物を含んだシリコン試料を電子ビームの出力2kW−5kWで所定時間溶解した後中心部を切り出し分析した. 評価は, 化学分析と抵抗率測定によって行なった. また, 大型電子ビーム溶解装置による精製実験も行ない, スクラップシリコンが本プロセスにより再生できることがわかった.

 42.  オールオキサイド複合材料のマトリックス組織変化にともなう微視応力分布の測定・解析

助手 本田 紘一

 セラミックス基複合材料の破壊試験時に進展するクラック近傍の応力のその場測定を可能にするため, 不純物として含まれるCr3+からの蛍光を利用して, 短時間(1/30秒以内)で面積500mm2の応力分布を空間分解能1μm以下, 波長分解能0.1nm以下で, ±10MPaの応力分解能で測定できる装置の試作を行った. また, 特定スペクトルの強度比から結晶粒方位の同定も行った. 試作した装置を用いてAl2O3繊維強化Al2O3系複合材料中の結晶粒単位での微視応力測定と破壊時の微視応力分布の変化を測定した. その結果から, 破壊に及ぼす結晶粒単位の熱応力, 力学異方性の影響を明確にし, 与えられた素材の組み合わせのもとで破壊抵抗を最大にする繊維の特性, 寸法に対するマトリックス組織(特に結晶粒径)最適化の指針を得た.

 43.  ディスポーザブルなマイクロチップを用いた生体高分子の反応及び分離検出

助教授 藤井 輝夫(代表者), 助手 山本 貴富喜, 助教授(東京大)関 実

 シリコン基板上に製作した構造を鋳型にして, シリコーンゴムを用いたマイクロモールディングプロセスによって, 安価でディスポーザブルなマイクロチップを製作し, これを用いた高速かつ高性能な生体高分子の分離検出を実現すると同時に, 製作プロセスの簡便性を活かし, 分析対象物質をオンチップで合成するなど, 分離検出以外の機能をもチップ上に集積する可能性について検討をすすめている.

 44.  マイクロマシン技術によるDNA注入用微細中空針アレイ(継続)

教授 藤田 博之, 講師 年吉 洋, 助手 安宅 学, 教授(北陸先端大)民谷 栄一

 マイクロマシン技術を用いて微細な中空の針のアレイを作り, それを用いて多数の細胞へ同時にDNA注入を行うシステムを得るため, 微細な注射針のような中空針を規則正しく並べたデバイスを作り, 同様の間隔で保持した細胞に突き刺し, 針の穴を通してDNAなどの遺伝物質を注入することを目指している.

 微細中空針アレイをシリコンのマイクロマシニング技術で製作し, DNA注入機能を確認した. 針の寸法や間隔の最適化を行う予定である.

 45.  波長多重方式光通信ネットワーク用マイクロマシン光マトリックススイッチ

教授 藤田 博之, 講師 年吉 洋, 助手 安宅 学, (東京電気大)小林 大, (NTT)澤田 廉士

 マイクロマシン技術を利用してn対nの光通信路切り替えが可能なマトリックス光スイッチを製作し, 高密度波長多重光通信(DWDM)ネットワークの実現を目指している. マイクロマシン技術で製作する機械的光スイッチの構造として, n本の入力光ファイバからの光ビームに対してn個のマイクロミラーのうち適当なものを挿入して反射し, n本の出力光ファイバの中から望みのものを選んで結合させる形を考える. ここで, 挿入損失を低減するにはミラーの平滑度と角度の正確さが強く要求され, また結合距離を短くするために基板と垂直に動く3次元のミラーが必要であるので, これらを満たすマイクロ加工法を半導体微細加工技術に基づいて開発する.

 46.  脊柱特発性側彎症に対する治療法の開発

客員助教授 畔上 秀幸(代表者)

 脊柱特発性側彎症の成因について, 担当者はこれまで整形外科の専門家や比較解剖学の専門家と共同で, この疾患の力学的成因は座屈現象であるとする仮説を数値シミュレーションによって実証してきた. 一方, 担当者は構造最適設計の分野で, 形状最適化問題の汎用的な解法(力法)を提案し, 線形弾性体の座屈荷重最大化問題に対しても適用できることを示してきた. 本研究では, 脊柱特発性側彎症の成因が座屈現象であるとする仮説をさらに確固たるものにして, 構造最適設計の手法により最適補強部を特定し, これまでの治療法を再検討した上で改良法を提示することを目的とする.

 47.  セルフパワード・アクティブ制御による防振装置の試作研究

教授 須田 義大, 協力研究員 中代 重幸

 動エネルギーを回生し, 回収したエネルギーのみを利用するアクティブ振動制御方式である, セルフパワード・アクティブ制御について, 2自由度振動系への適用性について検討した. 制御則の高度化の検討を行った.

 48.  フレキシブル・マルチボディ・ダイナミクスを用いたコルゲーション現象の解明

教授 須田 義大, 研究員 曄道 佳明

 鉄道レールや転がり軸受の表面などには, 周期的な変形が生じる. このコルゲーション現象を解明するには, レール・車輪系における接触振動系のモデル化が重要である. フレキシブル・マルチボディ・ダイナミクスの手法を用いて, 移動質量を伴う弾性梁モデルの定式化を行い, モデルの構築を図った. 実験装置による検討, モデルの高度化を進めた.

8. 基盤研究(c)(2)

 1.  X線発光分光法を用いた準結晶の特異な電子構造の解明

助手 渡辺 康裕

 X線発光分光法は, 試料へ入射するX線とそれからの発光X線の両方のエネルギーをパラメータとする分光法で, 材料の電子構造を明らかにする新しい手段として開発・実験が進められている.

 本研究では, 非周期的でありながら規則性を持つ準結晶相にX線発光分光法を適用し, その特異な電子構造を解明することを目的とした. その結果, 結晶相やアモルファス相とも異なる発光スペクトルがいくつかの準結晶相で得られた.

 2.  準結晶中の転位

助教授 枝川 圭一

 準結晶構造は一般に4次元以上の高次元空間の結晶格子をその部分空間である3次元空間に射影することによって記述できる. このことを用いてバーガース・ベクトルが高次元格子の格子並進ベクトルであるような転位を準結晶中に定義することができ, 実際にこのような転位の観察例が幾つか報告されている. このような転位は, 実空間の格子変位による通常の歪に加えて実空間に直交する補空間方向の格子変位による歪(フェイゾン歪とよばれる)をともなう点で準結晶に固有な全く新しいタイプの構造欠陥である. 本研究では, このような準結晶中の転位の基本的性質を実験的に明らかにすることを目的としている.

 3.  3次元4光波干渉によるフォトニック結晶の形成

助教授 志村 努, 教授 黒田 和男

助手・特別研究員 的場 修, 助手 芦原 聡

 4つのkベクトルを持つ光波を干渉させ, 3次元的な干渉縞を作り, これにより感光性材料を固化あるいは屈折率変化させることによりフォトニック結晶の形成を試みる. 4光波の干渉では互いの偏光方向の関係により, 干渉縞の可視度が変わる. また4光波を同時に干渉させた場合と, 各2光波の組み合わせにより順次干渉させた場合とでは, 作られる立体的屈折率変化に違いが生じる. これらの解析を行った.

 4.  実験廃棄物削減のための微小規模化学実験手法の研究

教授 尾張 真則, 研究担当 坂本 哲夫

 本研究は, 現在増え続けている実験廃棄物の削減を目指して, 実験に使用する化学物質の量を少なくする一方で実験の価値を損なわない実験手法の開発を念頭に置き, 液体を取り扱う化学実験の規模を微小化した汎用実験装置を試作することを目的としている. 1回の実験に用いる試薬の量を少なくすれば実験の結果発生する廃棄物の量も少なくなることは自明であるが, 単純にスケールダウンするだけでは, 多くの不都合が生じる. 現在広く普及している実験器具・装置が, 人手による操作性をふまえた再現性確保に重点が置かれて最適化されており, 微小化に伴う操作性の悪化と結果に対する信頼性への不安が微小規模化を躊躇させている点に注目し, 本研究では, 微小化に伴う操作上の問題点の明確化と, その解消を実際に例示することを目的としたものである.

 5.  プラズマ乱流中の熱エネルギー輸送障壁形成の電磁流体統一理論

助手 横井 喜充(代表者), 教授 吉澤 徴

助教授 半場 藤弘, 研究員 加藤 浩文

 電磁流体力学的見地からプラズマ乱流中に熱エネルギ−の輸送障壁が形成される機構を研究した. 高温プラズマの磁気閉じ込めにおいて極めて重要なエネルギ−輸送障壁と径方向電場やグロ−バルなプラズマ回転との関連が調べられている. 速度と磁場の相関であるクロス・ヘリシティという概念を用いることで, プラズマのグロ−バルな回転, クロス・ヘリシティの生成, 新たな回転の惹起, 径電場の空間分布, 乱流熱輸送の抑制, という輸送抑制の連鎖が明らかになった.

 6.  材料損傷および破壊を考慮した構造解析法に関する研究(継続)

教授 都井 裕, 助手・特別研究員 李 廷権

 連続体損傷力学理論による損傷発展式(損傷・応力・累積ひずみ関係式)および構成方程式(応力・ひずみ関係式)を非線形構造解析に援用することにより, 塑性変形, 座屈, 損傷発生, 破壊に至るプロセスを一貫して解析し得る有限要素解析プログラムの解析を実施した. 本年度は, 弾塑性損傷力学モデルを, 車輪との転がり接触による鉄道レールの損傷挙動解析に適用し, シェリング現象解明のための基礎的検討を行ない, 研究を総括した.

 7.  数値シミュレーションによる脳動脈瘤破裂のメカニズムに関する研究

助教授 大島 まり

 脳動脈瘤の破裂はくも膜下出血を起こす主原因であり, 破裂のメカニズムを把握することは医学的に重要な課題である. 本研究では, CT画像や超音波流速計より実際の血管形状や流速情報を取得することにより, 血管形状に起因する血流の流体力学的な要因に着目している. 血行力学のシミュレーションを通して脳動脈瘤破裂のメカニズムを解明することで, 血管や瘤形状が流速分布や壁面せん断応力にどのような影響を与えるのかを検証し, Patient Specific Diagnosisへの展開を図っている.

 8.  世界の伝統的集落に関する非定型データベース・システムの開発と実用化

教授 藤井 明

 本研究は, 世界の伝統的集落・住居に関して作成した非定形データベースをコンピュータ・ネットワークを通じて研究者のみならず一般にも広く公開し, データベース自体の拡充を図る, 動的なインターネット・アプリケーションの開発・実用化を目的とする. 本年度はインターネット上のクライアント機からデータベースの内容を更新することができる, 更新アプリケーションの開発, および図面や解説テキストデータを写真データとともに閲覧できるリレーションスキーマの設計を行った. またこれらのアプリケーションのための, データの安全性を考慮したシステムへの実装方法を検討した.

 9.  ベストエフォート型ネットワークにおける遅延予測とメディア同期への応用

助教授 瀬崎 薫

 本研究ではベストエフォート型ネットワーク上での遅延補償, 即ちメディア同期の問題を解決するため, ネットワークの短時間遅延分布と, その推移の仕方に注目し, その特徴を捉えた上で, それを活かした効率的なメディア同期方式を提案することを目的とする. 本年度は, phase plot法を用いて, 遅延とその構造を詳細に同定すると共にクライアント毎のクロック差を自動的に吸収する手法を提案した.

9. 萌芽的研究

 1.  高電圧スクリーニング法によるセラミックスの高信頼化に関する研究

助教授 岸本 昭

 セラミックス材料の信頼性を確保するためには, 脆弱部材を取り除く, スクリーニングが必要であるが, 超音波, 放射線を用いた方法では装置が大がかりになる上, スクリーニングの効果も十分とは言えない. 本研究では測定の簡便な電気的方法により取り除かれた部材の強度分布を取り除く前のものと比較し, スクリーニングの効果を評価する. また, スクリーニング効果を導く, 微細構造について, 絶縁破壊の前駆電流から検討した.

 2.  電気物性を利用した氷点下における氷結晶形態の経時変化の非破壊計測

助教授 白樫 了(代表者), 教授 西尾 茂文

 本研究では, 氷結晶の構造と電気物性の間の相関を明らかにすることを目的とし, 通常では観察できない生体や冷凍食品内部の氷晶形態の非破壊検査等への応用を目指す. 氷結晶の構造は温度に依存して, 数時間〜月単位で目に見える経時変化をおこす. 一方, 電気物性を複素誘電率で記述した場合, 一定温度に保持された氷の誘電損率のスペクトルは構造変化とほぼ同じオーダーでスペクトルのピーク周波数が高周波側へとシフトする経時変化を起こす. 以上を踏まえて, 冷却条件をかえて低温顕微鏡下で種々な形態の氷結晶を生成し, 一定温度下に保持して複素誘電率スペクトルを長時間にわたって測定すると同時に, 顕微鏡観察をおこなった. 測定で得られた形態をサイズ, 個数等で表現して, 誘電損率スペクトルのピーク周波数との相関を探った.

 3.  グランド・コントロール・ホイールに関する研究

教授 須田 義大, 協力研究員 中代 重幸・中野 公彦, 助手 岩佐 崇史

 車輪の持つ新たな可能性を探るために, グランド・コントロール・ホイールというコンセプトを提案し, その具体的な手法について検討を進めている. 本年度は, 走行路面の駆動部分について基礎的な検討を加え, 駆動・制動・旋回への可能性を調べた.

 4.  オキシクロライドの熱力学

教授 前田 正史

 本研究は一般ゴミの処理によって発生する溶融飛灰の基本組成であるNa-K-Zn-Pb-Si-Cl-O系物質の最終処分の段階での物質組成の制御, 無害安定化の可能性を探査し, 具体的な処理法の提案をすることを最終目的としている. ホットフィラメント法を用いてNaCl-Na2SiO3系, LiCl-Li2SiO3系に関する状態図的研究が可能となった.

 5.  血管内皮細胞成長因子徐放カプセルによる類洞構造を持つ肝組織生体外再構築の試み(継続)

講師 酒井 康行, 助教授(東京大)牛田 多加志

 ヒト移植用臓器のin vitro再構築を考えた場合, 物質交換の経路となる血管網を再構築組織内に予め形成させておく必要がある. そこで血管内皮細胞に特異的な増殖因子などを包括した生分解性マイクロカプセルを含む細胞組織体を構築し, 周囲に配置された血管内皮細胞を組織体内部に誘引することを試みている.

 6.  三次元粒状体の微視的構造と巨視的挙動の精密計測および解析手法の開発

教授 小長井 一男(代表者)

 砂礫などの粒状体を材料として扱う工学分野では, その材料の巨視的な性質に関する実験結果に基づく理論や経験則を背景に変形解析が行われている. しかしながら粒状体の巨視的性質は, 個々の構成単位である個別の粒子が持つ基本性質(一次情報)に加えて, これらが積みあがって構成される粒子骨格(fabric)に大きく依存し, これを的確に把握しなければ現行の解析法が直面している諸問題(ひずみの局所化, 力学的ラチェット現象など)の解決は難しい. 本研究では研究代表者らが開発した三次元粒状体内部の可視化手法(レーザー援用トモグラフィー:LAT)を粒状体の標準的試験の一つである平面ひずみ試験装置などに応用し, 供試体内部の三次元的な粒子運動や形態という従来手法では得ることのできない情報を, 粒子集合体としての巨視的性質の精密計測と関連付ける手段を提供した.

 7.  室内・車両内空間における快適さ認知のモデリング

教授 加藤 信介(代表者)・村上 周三・須田 義大, 助教授 曲渕 英邦, 助手 白石 靖幸

 室内, 車両内の物理的環境(主に温熱感に関わる温熱空気環境や開放感, 視覚的快適につながる照明など)の調整に使用されるエネルギーを合理的に削減するためには, 人間の環境に対する認知, 行動要素を人間周囲の物理環境シミュレーションに組み込むことが強く求められている. 温熱環境などでは, 主に人の生理的, 物理的構造からモデル化された人体の「快適方程式(環境と人体生理の関係を記述し, 人体生理から環境目標を定める方程式)」が設けられて, 人と環境の関係がモデル化され制御目標が定められている. しかし, 同時に考慮されるべき心理的, 認知的要素は未だ体系化されておらず, 生理的要因で定まる目標の分散的要素としてしか扱われていない. これらの要素を考慮した高度な環境調整を行うためには, 人間の認知, 判断, 行動のモデリングとその環境解析への組み込みが求められている. 本研究は, 室内や車両内の環境(主にその物理環境など)の快・不快を視覚, 聴覚, 触覚, 温感などを介して認知し, 対応行動を取る脳内認知システムとその認知背景にある情報データ構造をモデル化する事を目的としている.

 8.  未確定性を前提とした生産システムモデルの創造

助教授 野城 智也(代表者)

 建築プロジェクトの生産プロセスが内包する, 「作りながら技術的詳細を決めていく」ことを可能ならしめる柔軟な統御・調整機構を明らかにし, これをもとに, 従来の事前確定性を前提とした生産システムモデルとは異なった「事前未確定性を前提とした生産システムモデル」を提示することを目的とする. ここでいう生産システムモデルは, 時間軸上でのプロセス, 生産プロセスに関与する組織・主体相互の関係, 柔軟な統御・調整機構を機能させている明示的及び暗黙的な知識の体系という三つのファセットをもつ.

 9.  SiC系繊維を用いた広帯域型電波吸収機能を付与した構造用複合材料の実現

教授 香川 豊

 SiC系繊維を主電磁波吸収材料として用いたプラスチックス系複合材料を作製し, その電磁波吸収特性を調べた. 繊維の抵抗率を変化させたものを用いた場合, 抵抗率により電磁波吸収特性が大きく異なり, 抵抗率を選択することによりミリ波領域で周波数選択型の電磁波吸収体が作製できることを確認した. さらに, 本研究で得られた複合材料は極めて薄くても効果が十分であることが認められた. 周波数選択型の複合材料を得るための指針について理論的な検討も行った.

 10.  超集積型プローブアレーによる高効率の顕微鏡観察と加工

助教授 川勝 英樹

 走査型力顕微鏡は, 高い分解能を有するが, 探針の機械的走査によって像を得ているため, 広範囲の撮像や加工には適していない. これを解決するためにプローブを複数個配置し, それらを同時あるいは個々に駆動することによって効率を向上する方法がある. 本研究では, 表面弾性波を用いてカンチレバーを駆動することにより, 個々のカンチレバーに駆動回路等を備える手間を省く方法について, 可能性を検討している. また, 表面弾性波の定在波を用いて特定のカンチレバーを選択的に励振する方法についても検討している.

10. 奨励研究(A)

 1.  CWレーザを用いた光励起複屈折測定装置の開発

助手・特別研究員 坂本 直人

 棒状の粒子からなる流体において, 粒子の向きのそろい加減をCWレーザ光で制御することにより流体の性質を全体的または局所的に制御することを目指している. レーザ光のパワーと粒子のそろい具合の関係や, レーザ光を高周波で変調したときの粒子の方向の追随の様子について, 複屈折という定量的な尺度で容易に評価ができる装置を開発した. これにより, 等方相状態にある液晶性分子が相転移温度近傍で協同運動を行う様子を観察することができた.

 2.  2次非線形光学効果のカスケーディングによる超高速光スイッチング素子の研究

助手 芦原 聡

 2次非線形光学効果のカスケーディングによる光スイッチング素子の実現を目的とする. 次世代光通信・情報処理で必要となる, 全光型スイッチング素子実現へ向けて3次非線形光学材料の研究が行われてきたが, 未だに大きな非線形・高速性・透明性をあわせもつ材料は見いだされていない. 本研究では. 特に, 毎秒テラビット以上のシステムにおいて必要となる, フェムト秒光パルスでの動作に焦点を絞る. 本年度は光源としてパルス幅120 fsのチタンサファイア再生増幅パルスを, 非線形結晶としてBBO非線形結晶を用い, マッハ・ツェンダー型全光スイッチング動作を実現した. 疑似位相整合素子を用いたより低パワーでコントラストの高いスイッチングを目指す.

 3.  X線光電子回折法を用いた収束イオンビーム加工断面の表層領域損傷評価

助手・特別研究員 石井 秀司

 収束イオンビームによる表面微細加工に伴う加工断面の汚染と構造・化学状態の変化を, X線光電子回折法・オージェ電子回折法により明らかにする. プローブとする光電子およびオージェ電子の運動エネルギーを変化させ, 測定対象の深さ領域を最表面から10原子層程度の領域について深さ方向にどのような組成・構造変化が起きているかを明らかにする.

 4.  食道の蠕動運動を代替する柔軟ロボティック機構の開発

助教授 鈴木 高宏(代表者)

 本研究の目的は, 従来の「硬い」ロボットシステムに対して, 本質的に「柔らかい」ロボットシステムの構築を提案し, その応用例として人工食道用ロボティック機構の開発を行うことである. 食道癌は, 日本では中高年の男性に多く, その治療は癌化部位がスキップ状に転移するため食道の全摘出が基本となっている. その代替としては, 胃や大腸の一部を切離して用いられ, ためにその手術はしばしば10時間にも上る大手術となる. 一方, 人工的な食道の代替物としては, 過去に人工血管を応用したものなどが検討されているが, 食道の重要な機能である, 蠕動運動を代替可能なものは未だに開発されていない. そこで本研究では, 食道の蠕動機能を代替する, ロボティック人工食道機構の開発を行う. このような人工食道の開発は, 食道癌手術の大幅な低侵襲化を実現するものであり, 恒久的もしくは一時的な代替のどちらにも柔軟でロバスト, かつ胸部の狭隘な空間に収まる非常にコンパクトな機構であることが要求される. 本研究では, そうした要件を備えられる機構として, 研究代表者のアンダーアクチュエーテッド機構に関する知見を生かして新しい機構の試作開発を行い, またその動力学的性能の検証を行う.

 5.  円管内旋回乱流を対象としたLESのための入口変動風生成法に関する研究

助手 西村 勝彦

 円管内旋回乱流を対象としたLESのための入口変動風生成法に関して研究を行う. Xプローブを作成し, 円管内旋回乱流に関して3次元の速度成分及びレイノルズ応力成分を計測する. 更に, この変動成分のパワースペクトル及びクロススペクトルを計測し, 入口変動風の生成に必要な計測データを取得する. 同時にLESの計算コードに入口変動風の生成プログラムを組み込み, LESの予測結果を評価する.

 6.  1998年長江大洪水の水文・気候モデルによる数値シミュレーションと検証

助手・特別研究員 鼎 信次郎

 20世紀の水害の中でも最大級のものであった1998年夏に長江流域を襲った大洪水を数値シミュレーションによって再現し, 現実の災害調査結果を踏まえて, 統一的に解釈することを目的とする. 特に以下の2点について重点的に研究を進める.

 第一に, 長江という大河川に適用可能な広域水文流出モデルを構築し, 気候モデルと結合する. 次に, ユーラシア大陸の水文状態と東アジア降水の年々変動との関係を明確にすることによって, 数ヵ月前に大洪水を予測する基礎を固める. 本年度はそのための, アジア規模水文流出モデルの構築, 水文植生モデルと地球気候モデルとの結合を行ない, 妥当な結果を得た.

 7.  圧縮性LESによる火災時の熱・汚染物質輸送メカニズムの解明

助手 白石 靖幸

 本研究では, 工学で用いられる先端的な圧縮性乱流数値解析手法を用いて, 火災により建物内外で生じる乱流熱輸送及び汚染物質輸送のメカニズムを解明することを目的とする. 特に火災により発生する乱流高浮力プリュームにより駆動される煙流動性状, 並びに建物内外の熱・汚染質拡散性状を圧縮性LES(Compressible Large Eddy Simulation)を適用して, 高精度に解析・予測するモデルを開発する.

 8.  固結力を有する地盤材料の三次元条件下における変形・強度特性

助手 早野 公敏

 構造物基礎の支持地盤の変形量を正確に予測するうえで, 地盤の異方性がしばしば問題となる. 本研究では異方性の評価に, 高精度にひずみを測定できる角柱供試体を用いた三主応力制御試験装置が有効であることを示した. しかし, 正確な三次元変形特性を評価するためには, 鉛直・水平方向の載荷板と供試体の間に摩擦軽減層を設けて過剰な摩擦力が生じないように実施する必要があることが分かった. また堆積軟岩を対象とした試験結果から, ある方向に生じる直ひずみ増分から定義するヤング率は, その方向に作用する直応力に基本的に依存するという弾性変形特性の応力状態誘導異方性が明らかになった.

 9.  スペースフレームの波動伝播特性に関する研究(継続)

助手 宮崎 明美

 兵庫県南部地震以降, スペースフレームなどの空間構造物においても吊り物などによる局所的衝撃力が作用する可能性が指摘され, 衝撃力作用時の挙動を調査する必要が認識されつつある. 衝撃力に対する応答は過渡的であり, 短時間のうちに破壊につながる可能性があるため, 波動伝播を考慮した考え方が必要になる. 本研究の目的は, インパクトハンマーによる衝撃実験を行い, スペースフレームの波動伝播特性を調査するための基礎資料を得ることにある.

 本年度も前年度に引き続きスペースフレームの打撃実験を行った. また, 波動の反射と透過を詳細に考察するためにスペースフレームの部分構造モデル(一部を取り出したモデル)を作成し, 同様にインパクトハンマーによる打撃実験を行った. 実験結果は解析結果と比較され, スペースフレームの波動伝播特性について考察を行った.

 10.  壁面拡散体および浮雲反射板の音響効果に関する研究

講師 坂本 慎一

 ホール・劇場などに取り付けられる壁面拡散体や不連続音響反射板(浮雲)の音響散乱・反射体に関して, 音響散乱・反射体の単体での音響性能のみならず, 室形状と散乱・反射体の設置位置および設置面積の相互関係に着目して, 数値解析, 模型実験による研究を進めている. 今年度は, これまでの差分法による計算に加えて新たにFMBEM法を導入し, 立体配列音響反射板における反射板間の相互作用について物理的側面から検討を行った. さらに心理的側面の検討として, 拡散体・浮雲の形状および配置の違いが聴感に及ぼす影響に関して評価実験を行った.

 11.  超高精細静止画像のロスレス・ロッシー統一符号化システムの開発

助手 小松 邦紀

 医療, 美術等の分野で超高精細静止画像を扱う場合, そのファイル容量は現在インターネット上で伝送されている通常の画像に比べて非常に大きく, なおかつ, 画像圧縮による劣化が許されないので, 特別な取り扱いが必要になる. つまり, 静止画像の標準方式であるJPEGのような再生画像に劣化が生じる符号化方式を用いることはできず, また, 符号化されたデータの一部を取り出して, 様々な品質及び解像度で再生できる機能が必要になる. そこで, 本研究では, 対象画像を超高精細静止画像とする, スケーラビリティ機能を有するロスレス符号化方式, 「超高精細静止画像のロスレス・ロッシー統一符号化システム」の構築を目的としている.

 12.  実世界志向型インターフェース実現のための実環境モデルの学習

助教授 佐藤 洋一

 本研究では, 従来型のGUIの枠組みを超えて, 行動の主体であるユーザと実世界とのインタラクションを重視したインターフェースを実現することを目的とし研究を進める. 特に, このような実世界志向インターフェースを実現する際に重要となる, 実世界認識およびに実環境モデル学習の2点に焦点をあてて, 技術的課題の特定と必要とされる技術の開発を進めていく.

11. 特別研究員奨励費

 船舶流体力学における正規化スキームの開発

教授 木下 健, 博士研究員 Jang Taek Soo

 海事流体力学のill-posedな問題として, 造波機(圧力分布)による造波と, 2次元翼の周りの流場の逆問題を取上げ, 三種の正規化法(Tikhonovの正規化法, Landweber-Friedmanの正規化法, 繰り返しによるTikhonovの正規化法)を適用してその適用性の優劣を調べた. すなわち, これらの三種の正規化法は造波機(圧力分布)による造波と, 2次元翼の周りの流場の逆問題の求解に適用可能である. 繰り返しによるTikhonovの正規化法は最も高精度であるが, 求解に計算時間が必要である. Landweber-Friedmanの正規化法は精度, 計算時間の両面で十分満足できる方法であることが明らかになった.

12. 創成的基礎研究

 人間主体のマルチメディア環境形成のための情報媒介機構の研究(継続)

教授 坂内 正夫(代表者), 研究担当 石塚 満

教授 池内 克史・喜連川 優・柴崎 亮介, 助教授 佐藤 洋一

講師 舘村 純一, 助教授(メディア教育開発センター)柳沼 良知

 インターネットやディジタル衛星放送等の普及に伴い, 映像を含むマルチメディア情報が急激な勢いで蓄積, 利用されている. この“膨大な情報の海”を適確に利用するためには, 情報空間と利用者の間に立ってこれらの情報を利用者の目的を達成できる形に媒介する情報処理機能の必要性が増大している. 本研究では, 文部省「新プログラム」方式による研究プロジェクトとしてネットワーク型マルチメディア環境, ストリーム型マルチメディア環境, 実世界型マルチメディア環境の3つの視点から, この媒介に必要な媒介空間形成, 事象発見, データリトリーブ, データコラボレーション, インターフェース等の機能を統合的に開発している. 本年度は新プログラム(平成9−13年度)の4年度目として, ストリーム型情報媒介機能, ネットワーク型情報媒介機能, 実世界型情報媒介機能を発展させると共に, 国際シンポジウム等, 成果公開につとめている. (http://shinpro.sak.iis.u-tokyo.ac.jp/)

13. COE形成基礎研究

 量子ドット構造による電子物性の制御と次世代エレクトロニクスへの応用

教授 榊 裕之・荒川 泰彦・黒田 和男・岡野 達雄・桜井 貴康・藤田 博之

教授(東京大)三浦 登・安藤 恒也・家 泰弘

助教授 平川 一彦・志村 努・福谷 克之・小田 克郎・高橋 琢二・平本 俊郎

助教授(東京大)勝本 信吾・講師 染谷 隆夫

 電子の量子力学的な波動性をよりよく制御する手段として10 nm級の量子細線や箱(ドット)構造を活用する初の提案は, 1975年に榊によって初めてなされた. その後さらに, 量子細線FETや量子ドットレーザが, 榊と荒川らによって提唱された. 特に量子ドットでは, 電子の自由運動が完璧に禁止され, 特定のエネルギー状態の電子のみが許容されるため, 様々な新物性と機能の出現が期待される. こうしたドットは, 当初形成が困難であったが, 近年実現が可能となり, その物性の解明だけでなく, レーザ・メモリー・光検出器への応用も進展を見せている. こうした研究に関しては, 本学の研究者は部局を超えた協力を進め, 国際的にも先導的役割を果たしてきた. この共同研究の一層の進展を図るため, 2000年度文部省の支援で中核的研究拠点(COE: Center of Excellence)プロジェクトが発足した. 5年計画で, 量子ドットの形成法の高度化と物理過程の解明を基盤にして, 優れた特性や新機能を持つ先端素子の探索と実現を目指す.

14. 未来開拓推進事業

 1.  原子スケール表面・界面ダイナミックス領域「ナノ構造の自己形成と制御」プロジェクト

教授 荒川 泰彦, 名誉教授 西永 頌, 教授 榊 裕之

助教授 平川 一彦・平本 俊郎, 講師 染谷 隆夫

 最近のナノ構造作成の進歩にはめざましいものがあり, 今や10nm−20nmのオーダーの量子ドット構造をある程度手中におさめつつある. しかし, 寸法のゆらぎの問題は極めて重大であり, その解決の見通しはたっていない. さらに, 量子ドットの位置の制御はより深刻な問題である. したがって, デバイスとして有用なナノ構造の形成ダイナミックスの深い理解に立ち戻り, 結晶成長学にもとづいた探求が必要である. このような状況を踏まえて, 本研究は結晶成長における原子スケールのダイナミックスの深い理解に立脚しナノ構造の形成過程の科学とテクノロジーの確立をはかるとともに, その量子物性の探求を行い, 次世代光・電子デバイスの基礎の確立をはかることを目的とする.

 2.  光電子スペクトロホログラフィーによる表面・界面3次元構造評価装置の開発

教授 二瓶 好正・尾張 真則, 研究担当 坂本 哲夫, 研究員 河合 潤

助手・特別研究員 石井 秀司, リサーチアソシエイト 大森 真二・白木 将

大学院学生 成松 啓博・天野 幹也・田村 理恵

 X線励起による光電子のホログラフィックな干渉・回折現象を利用して, 固体表面・界面の3次元構造を再生する手法の研究を行っている. この目的のために, 複数の回転対陰極を備え強力な多波長・多領域X線を発生させ, かつコンパクトなX線源, および角度・エネルギー同時検出型トロイダルアナライザーや高角度分解型光電子分光アナライザーという新しい装置の開発を進めている. それにあわせて, 高エネルギー光電子回折, テンソル光電子回折および光電子ホログラフィーの理論的研究とソフトウエア開発を行っている. これらによってモデル触媒表面の吸着構造や半導体超格子デバイスの表面から深い位置にある界面構造などを化学状態を特定しながら3次元的に決定することができる. 本年は, 高強度X線光源と高能率角度分解型電子分光器とを組合わせた解析システムを構築し, それを用いた測定を開始した.

 3.  極低消費電力・新システムLSI技術の開拓

教授 桜井 貴康, 助教授 平本 俊郎

 本研究のターゲットは「5年後に0.5Vでギガヘルツ動作する集積回路」に設定する. これを実現するために本研究では以下の2項目に焦点を当てる.

1)極低消費電力LSIは低電源電圧によって達成される部分が大きい. 従って上記ターゲットでは電源電圧を0.5Vとし, 現行より2桁ないし3桁の低消費電力化をめざす. そのために極低消費電力システムLSI用新アーキテクチャ, 回路技術, SOIを含めたデバイス技術のブレークスルーを創出するとともに, 指針を体系化する. 0.5V以下の低電源電圧でのMOSデバイスの最適化手法(極薄膜酸化膜, メタルゲートなど), バラツキを含めた回路設計理論(しきい値電圧の設定, バラツキのモデル化, D型MOSFETの活用など), リーク低減のためのアーキテクチャ, 回路(データ駆動方式, スーパーカットオフ方式など)の研究を行う.

2)0.5V, 0.05ミクロンデザインルールで超高速, 超大規模LSI(ギガスケールインテグレーション)を実現するために必須となる配線遅延を従来より2桁程度低減する技術を研究する. これにはサブ0.1ミクロン配線特性をモーメントマッチング法などの応用により現在の回路シミュレータより3桁程度高速化して解析するツールの開発, 配線電力最適化のための実験と理論の整備を含む.

 4.  水・物質バランスの時空間変化に着目した人間活動の環境影響評価とその軽減方策に関するシステム的研究

教授 虫明 功臣(代表者)・安岡 善文・喜連川 優・柴崎 亮介, 助教授 沖 大幹

助手・特別研究員 鼎 信次郎, 助手 越智 士郎・根本 利弘・中野 美由紀

ポスドク 安形 康・金 元植・楊 大文・林 彬勒・談 国新

ポスドク P.K. Reddy・L. Mutenda・K S. Rajan

 本研究の目的は, グローバルスケールで増加する人口や経済活動の結果, どのような土地利用や水資源利用の変化が生じる可能性があるかを定量的に明らかにし, 水循環や物質循環の変化を通じて生じる環境影響や資源劣化の程度を推定することである. 本年までに, ユーザインターフェースにVRを取り入れた地球環境デジタルライブラリ, 地球規模水循環モデル, 地球規模土地利用--農業生産モデル, 物質循環モデルのそれぞれを開発した. また, これらを統合的に用いた地球規模の食糧生産・水資源・環境資源の将来予測を開始した.


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