VI. 研究および発表論文


1. 研究課題とその概要
材料界面マイクロ工学研究センター

PreviousPage
NextPage
第49号 2000年度
2001.8.23


1. ペロブスカイト型リチウムイオン伝導性酸化物の合成と物性評価(継続)

教授 工藤 徹一, 助手 日比野 光宏, 大学院学生 山田 博俊

 過酸化ポリニオブ・タングステン酸を前駆体として用いる低温合成法により, 準安定な三酸化レニウム型構造のニオブ・タングステン酸化物を合成した. この骨格にリチウムを化学的あるいは電気化学的に挿入し, リチウムの輸送挙動を調べ, リチウム挿入に伴う局所構造の変化が拡散速度に強く影響することなどを明らかにした. また, 溶融塩電解法によりリチウム・ニオブ・タングステン系ペロブスカイト型酸化物の合成にも成功し, そのリチウムイオン導電率を電子ブロッキング法により決定した.

2. 二次電池正極材料の研究(継続)

教授 工藤 徹一, 助手 日比野 光宏, 大学院学生 安彦 泰進・今村 大地

 リチウムイオン電池の正極材料として注目されているスピネル型リチウム・マンガン酸化物のリチウム組成と電位の関係を統計熱力学的に考察するとともに, 低温測定を行い, 構造中のリチウムの不規則・規則転移と見られる電位プロファイルの異常現象を見出した. 一方, 同電池負極の不可逆容量を補うという実用的な目的から, 斜方晶リチウム二酸化マンガンを含む混合系正極材料の充放電特性を評価し, 間歇的な通電により充電可能なことを示した.

3. バナジウム基酸化物薄膜のリチウム挿入と薄膜電池への応用(継続)

教授 工藤 徹一, 助手 日比野 光宏, 技術官 高野 早苗

大学院学生 野口 祐亮

 モリブデンをドープしたポリバナジン酸ゾルの構造, 電気化学的特性を研究するとともに, 同ゾルの湿式塗布により形成される膜を正極, ポリマーリチウム電解質をイオン伝導層, 金属リチウムを負極とする薄膜型電池を作製し, その充放電特性を評価した. この正極材料では良質な10ミクロン程度の膜を作製できるため, 1平方センチメートルあたりの容量が1ミリアンペアアワーを越える高容量電池が得られた. 出力電流密度も同面積あたり1ミリアンペアが得られる.

4. サーモトロピック薄膜の湿式形成法の研究(継続)

教授 工藤 徹一, 助手 日比野 光宏, 大学院学生 高橋 郁哉

 二酸化バナジウムは67℃で半導体から金属に相転移し, 近赤外線の透過率が急減する. このスイッチング現象を利用するスマートウィンドウの開発が望まれている. 従来のスパッタリング法に替わる, 酸化バナジウムゾルを用いる二酸化バナジウム膜の湿式形成法を研究した. タングステンを1.5%ドープした膜の転移温度は30℃で鋭いスイッチングを示すことが分かった. 均一なドーピングが容易におこなえるというこの方法の特長を生かし, タングステン/チタン系など複数金属によるドーピングも試み, ドーパント間の相互作用についても調べた.

5. プロトン伝導体の合成および評価(継続)

教授 工藤 徹一, 研究員 本間 格, 助手 日比野 光宏

大学院学生 田中 優実, 松田 博明

 この研究はNEDO受託研究「プロトン伝導性無機高分子固体電解質を用いた電気自動車用中温作動燃料電池の開発(平成10−12年度)」の一環として行なった. 種々の金属酸化物水和物のプロトン伝導性を中温領域で調べ, 酸化タングステン二水和物や酸化スズ水和物が150℃付近で0.01S/cmの導電率を示すことを確認するとともに, これらを耐熱性高分子と複合化することによりプロトン伝導性膜を作製した. さらに, 共同研究機関である日立製作所日立研究所とともに膜電極接合技術を開発し, 燃料電池の中温作動を実証した.

6. 電気化学スーパーキャパシタの研究(継続)

教授 工藤 徹一, 研究員 本間 格, 助教授 酒井 啓司

助手 日比野 光宏, 研究機関研究員 渡邉 崇, 大学院学生 池田 雄次

 この研究はJSPS受託研究「電気化学スーパーキャパシタ(マッチングファンド方式による産学連携事業, 平成11-12年度)」の一環として行なった. 当研究室独自の酸化バナジウムゾルを用いることにより, 酸化バナジウム/炭素系複合体電極を開発した. この電極は活物質の表面積がきわめて大きく, 電極重量1グラムあたり50アンペアという大きな電流密度で充放電できる. 産業界側のパートナーである日立マクセル共同して従来の電気二重層キャパシタよりエネルギー密度の大きなパワー供給用デバイスを開発している.

7. エンドランチ型マイクロ波プラズマCVD装置の開発(継続)

助教授 光田 好孝, 技術官 小林 剣二, 大学院学生 高井 義成

 2.45GHzの商業用マイクロ波を用いたプラズマは, 高い電子密度を有するため反応性に優れている. しかし, 通常は波長の半分以下の反応管(φ60以下)内に発生させる様式であるため, 産業用プラズマとして用いることは困難である. そこで, φ120の円形導波管内でのマイクロ波の共振を利用したプラズマ発生装置の開発を進めている.

 マイクロ波電源から反応容器へマイクロ波を効率良く導入するために, 矩形H01から円筒形H11へのモード変換素子を設計・作製した. マイクロ波の伝搬ロスを減少させるためには, 変換後の円筒導波管部を一波長以上の長さを必要とすることが明らかとなった. この結果, 変換素子部での加熱が減少し, 2kW以上の電力を効率よくH2プラズマに投入可能となった. また, プラズマ発生ガスとしてArを添加することによりプラズマの体積が増大することを確認したが, 過剰の添加により反応管内壁と反射端との間で異常放電を起こすことも明らかとなった. 以上より, 放電破壊電圧を添加ガスにより適度に制御することで, φ100 mm程度の均一なプラズマを発生可能とした.

8. 希ガスプラズマ環境下におけるダイヤモンド生成(継続)

助教授 光田 好孝, 技術官 小林 剣二

 ダイヤモンドのCVD生成には, 通常, 水素が希釈ガスとして用いられているが, ArやHeなどの希ガス希釈ガス系でもダイヤモンドが生成可能であることを示してきた. これは, 現在でも広く信じられている, 気相からのダイヤモンドの成長には, 高濃度のH原子が必要不可欠であるという反応機構と相容れない実験結果である. そこで, 希釈ガスに対するダイヤモンド形成中の気相環境の変化を発光スペクトルの微細構造を調べることを目的として, (Ar/H2)-CH4-O2雰囲気下でダイヤモンド堆積を試みた.

 雰囲気中のAr分圧の増加に伴い, C原子を含むラジカル濃度に変化が生じるものの, プラズマ体積が同時に膨張しているため単位体積あたりの発光量すなわちラジカル密度にはわずかな変化しかないといえる. これに対して, Ar分圧の増加につれて, H原子の励起状態分布には変化が現れないのに対して, C2系のラジカルの振動エネルギーの上位励起状態密度が増加し, H2を全く含まないときには急激な変化を示した. これらのことから, 希釈ガスは, 気相中のラジカル濃度を調整するといよりも, ラジカルのエネルギー状態を制御する働きがあることが明らかとなった.

9. 微細デバイス作製のためのダイヤモンド表面終端構造制御(継続)

助教授 光田 好孝, 技術官 小林 剣二, 大学院学生 鍋田 朋哉

 ダイヤモンド表面の電気物性は, 表面に化学吸着するHやOなどの原子種に大きく依存し, 高い絶縁性から良好なp型半導体特性にまで変化する. H原子で終端された場合に形成されるp型表面伝導層を利用すれば, 新たな半導体電子デバイスの可能性が開ける. そこで, CVD合成ダイヤモンド表面の終端構造を任意に制御する手法, 得に, H原子終端とO原子終端構造とを互いに変換するプロセスを構築することを目的とした.

 この終端原子変換プロセスをモデル化した実験を超高真空下で単結晶ダイヤモンドを用いて行っている. これまでに, H2分子を熱クラッキングしたH原子と(001)単結晶表面との相互作用についてRHEEDやAESおよびTDSにより測定してきた. 今年度は, O2分子の吸着・脱離過程, および熱クラッキングしたO原子の吸着・脱離過程の測定を進めている. H吸着表面に対しては, O2分子は化学吸着せず物理吸着のみであるのに対して, O原子は化学吸着したH原子と瞬時に反応してOH基として脱離していると思われる. 現在, 表面の吸着種および吸着温度を可変して, 単結晶表面状態に対する依存性を測定している.

10. 共鳴核反応を用いたダイヤモンド表面および内部の水素原子密度測定

助教授 光田 好孝, 福谷 克之, 助手・特別研究員 Markus Wilde

技術官 小林 剣二

 ダイヤモンドの表面物性は表面終端元素により大きく変化し, 通常の気相合成時にはH原子で終端されていると云われている. ダイヤモンド膜デバイスの作製には, 表面終端H原子密度および薄膜内部のH原子濃度の測定法が重要であるが, H原子の表面や内部の密度を精緻に測定することが難しい. そこで, 15N2+イオンを用いた共鳴核反応により, ダイヤモンド表面近傍のH原子濃度の測定を行った.

 これまでに, マイクロ波プラズマCVD法によりSi基板上に堆積した多結晶ダイヤモンド膜について測定したきたが, これまでの結果から結晶界面に存在するH原子密度が高いことが予測され, 結晶内部のH原子密度については精確に求めてきたとはいえなかった. そこで, dcプラズマCVD法により(001)Ir基板上に堆積したヘテロエピタキシャル成長膜について, 新たに測定を試みた. ヘテロエピタキシャル膜の場合, 2×1構造に再配列していると思われる(001)表面のダングリングボンドはほぼ完全にH原子で終端されていることが明らかとなった. また, 内部はC原子に対して0.07at%程度のH原子が存在しており, 多結晶膜に比べて格段に低いことが判明した.

11. バイアススパッタリング法による強誘電体薄膜の形成(継続)

助教授 光田 好孝, 技術官 小林 剣二

 強誘電体の一つであるBaTiO3の結晶化薄膜を, バイアススパッタリング法を利用することにより300℃という低基板温度で堆積させることに成功している. この際, 成長表面へイオン衝撃のエネルギーに応じて, 薄膜組成が化学量論組成から変化してしまう現象が必然的に生じ, 低温結晶化した薄膜の誘電特性と堆積条件との相関関係が明らかではなかった. そこで, 新たに堆積速度の向上を兼ねてマグネトロン型スパッタリング装置を導入し, 原料であるターゲットの組成を容易に変更可能な粉末ターゲットを用いて, 高比誘電率および低温結晶化のための堆積プロセスの最適化を行った.

 堆積中のO2分圧を最適化することで, 低基板バイアスの範囲では, BaTiO3粉末のみをターゲットに用いても, Ba/Ti比がほぼ化学量論組成となる薄膜を堆積可能であることが明らかとなった. これまでの外磁場型のスパッタリング装置と比較して, 低い基板バイアス値から薄膜は結晶化し, 比誘電率のみならず誘電損失においても優れた特性を持つことが判明した.

12. 非晶質硬質炭素膜の反応性スパッタリング形成

助教授 光田 好孝, 技術官 小林 剣二, 研究員 鈴木 哲也

 非晶質硬質炭素a-C膜は硬さ・平滑性に優れているため, ダイヤモンドに代わる表面処理材料として利用されている. そこで, 炭素固体ターゲットを原料としたスパッタリング法によるa-C膜の形成を試みた. このとき, C原子の結合をsp3化するために微量のH2を雰囲気中に導入して, 表面反応に及ぼす効果について調べた.

 昨年度までに得られた薄膜には雰囲気から混入した不純物が含まれており, また堆積速度が非常に低いという問題があった. そこで, 今年度は, ターゲットシールドを作製して不純物の混入を防ぎ, かつ, 拡散磁場型のターゲット電極を用いることでターゲット上に発生するプラズマ密度の増加を試みた. この結果, 薄膜中への不純物の混入を劇的に抑えることに成功した. また, プラズマ密度の増加が確認されたものの, 期待された堆積速度の向上は認められなかった. これは, 拡散磁場により膜成長表面へも高エネルギーイオンが飛来して, 成長表面においてもスパッタが起こったためと思われる.

13. 2次元凝集体の相転移と臨界現象の研究

助教授 酒井 啓司, 助手・特別研究員 坂本 直人

 界面活性剤分子や液晶性分子が液体表面に形成する薄膜は, 環境に応じて相転移を起こす. この相転移について, レーザ光による観察を行うとともに, 薄膜を2次元流体とみなすモデルによる説明を試みている. 観察にはリプロン光散乱法とリフレクトメトリを用いた. 前者は熱励起表面張力波による光散乱現象を利用して液面の動的物性を測定するものであり, 薄膜の局所的表面弾性率の測定に利用できる. 後者は液体のブリュースター角近傍で入射された光の反射率を測定するものであり, 薄膜の厚みに関する情報を得ることができる. いずれの手法も, 高い空間分解能での非接触・非破壊測定が可能である. この2つの手法を組み合わせて同一点同時測定を行うことも可能であり, 膜の相転移に伴う不均一構造の観察に役立てることができる.

14. ミクロ不均一系の構造とダイナミクスの研究

助教授 酒井 啓司, 技術官 美谷 周二朗, 研究機関研究員 渡邉 崇

 コヒーレント後方散乱法や拡散光波スペクトロスコピーなど, 光学的に不均一な系のミクロ構造とダイナミクスを調べるための新しい光散乱法の開発, およびこれを用いたエマルジョン, コロイド分散系など不透明な系の研究を行っている. 本年度は, 光の弱局在現象を利用して光学的不均一系の構造を調べるコヒーレント後方散乱測定法によってエマルジョンの分散構造を調べ, 流動場中で光の輸送平均自由行程が異方性を持つことを見出した. この結果からずり場と分散粒子の形状異方性との関係を調べている. また動的光散乱法により電極材料に用いるV2O5ゾルのキャラクタリゼーションを行い, 粒径の濃度依存性を解析した.

15. 光による分子操作と分子配向素過程の研究

助教授 酒井 啓司, 技術官 美谷 周二朗

助手・特別研究員 坂本 直人, 大学院学生 池田 康宏

 異方形状分子からなる液体について, レーザー光を用いた分子配向制御を試みている. 熱平衡状態ではランダムに配向する分子の集団に偏光制御されたレーザーを導入して分子配向秩序をもたらし, その秩序の程度を複屈折計測により定量評価する. 本年度は分子配向を誘起するポンプ光と, これを検出するプローブ光とを波長選択性ミラーを用いて同軸化した光学系を作製した. ガウスビームの伝搬理論を用いて非線形光学効果を評価する式を解析的に導出し, 光カー定数の絶対値を精度よく測定することに成功した. また短焦点レンズを採用した収束光学系により, 高い空間分解能で非線形性のマッピングができることを確認し, 顕微非線形分光装置の開発に着手した.

16. 表層素機能と動的分子物性

助教授 酒井 啓司, 助手・特別研究員 坂本 直人, 研究機関研究員 細田 真妃子

 気液界面, 固液界面など異なる層が接する境界領域において発現する特異な分子集合体の構造や現象と, そこにおける分子素機能の研究を行っている. 本年度は固気界面に全反射条件で発生する近接場光を用いた動的エバネセント光散乱法により, 界面近傍の分子ダイナミクスの研究を行った. 界面近傍に局在するエバネセント光を光源とすることで, 光波長程度の空間分解能で界面近傍のダイナミクスを調べることができる. さらに界面における全反射条件の局所的破れによって起こるフラストレートエバネセント光散乱を測定する装置を製作し, 界面近傍で微小粒子のブラウン運動が抑制されることを確認した. また界面活性剤分子が溶液表面に吸着するダイナミクスを考察し, 拡散が律速となる表面緩和現象を記述するスペクトルを理論的に導出した.

17. 酸化物系セラミックスを用いた耐熱コーティングの界面力学特性の評価・解析

教授 香川 豊

 酸化物系セラミックスを耐熱金属材料上へコーティングした材料の界面力学特性を実験的に求める方法を検討した. また, 実験的に求められる値の解釈についても検討した. レーザー励起蛍光分光による微小部分応力測定とコーティングされた材料に外部負荷荷重あるいは温度変化を与えることにより金属上に厚さが100μm程度の厚さでコーティングされた材料の界面剥離エネルギー開放率が求められることが明らかになった.

18. オール酸化物系繊維強化セラミックス(Al2O3-Al2O3)複合材料の製造と特性

教授 香川 豊

 織物状のAl2O3繊維の繊維束中にZrO2を含浸し, ミニコンポジットとしたものを強化素材としてAl2O3マトリックスと複合化する方法を提案し, それを工業的に応用できる技術にするための問題点を抽出するとともに解決策を提案した. 本年度は大型複合材料の製造方法を中心に検討し, 国際的にも遜色のない特性を持つ大型複合材料の製造技術の基礎を確立することができた. この方法を用いて異型材料の製造方法も検討した.

19. SiC繊維強化SiC複合材料の高温曝露による酸化損傷の誘電特性による評価(継続)

教授 香川 豊, 助手・特別研究員 本田 紘一

 実構造部材となった非酸化物系繊維強化セラミックス複合材料の酸化劣化を非破壊で知ることが必要である. これまでに, SiC繊維強化SiC複合材料(SiC/SiC)の誘電率の周波数依存性は酸化の進行にともなって変化し, 誘電特性を用いてSiC/SiCの高温酸化損傷を検出することが可能であることを明らかにした. 新たに開発した, ホーンアンテナとネットワークアナライザーなどで構成された非接触損傷検査装置を用いて, 周波数20〜50 GHzのビーム収束電磁波を熱暴露したSiC/SiCに照射し, 非接触・非破壊でセラミックス複合材料の酸化損傷を評価することを行っている.

20. 混合粒子分散エポキシ電磁波吸収複合材料の電磁波特性

教授 香川 豊, 助手・特別研究員 射場 久善

 異なる誘電率を持つ粒子と導電性粒子を混合した粒子分散複合材料を用いて, 電磁波吸収特性を持ち, かつ反射電磁波を防止する電磁波吸収材料をミリオーダーの厚さで実現する可能性を調べた. 平均粒径25 nmの導電性カーボンブラックを導電性粒子として, 平均粒径0.5 μmのTiO2粒子を誘電体粒子として用い, 混合粒子体積率を変化させてエポキシマトリックスに分散させた. これらの試料を組み合わせ20〜40 GHzの電磁波の反射・透過特性を電磁波入射面を変えて測定した. 透過特性は導電性粒子の体積率が支配的であるのに対し, 反射特性は電磁波が入射する面によって異なった. これらの結果から, 傾斜材料や積層材料とした場合の電磁波吸収材料の可能性について検討した.

21. SiC繊維強化SiC複合材料の損傷許容性評価(継続)

教授 香川 豊, 大学院学生 間宮 崇幸

 連続繊維強化セラミックスは損傷許容性を持った材料であることが知られている. 織物SiC繊維強化SiC複合材料の引張損傷許容性の評価を行った. 電磁波を用いて誘電特性の変化から, 2次元織物SiC繊維強化SiC中に生じる損傷を, 非接触で検出する装置を開発した. 複合材料引張試験前後の電磁波の透過係数(S21)の変化が確認された. 引張応力―ひずみ曲線から求められる材料の損傷程度を評価する損傷パラメータと, この装置系を用いた損傷検出法を組み合わせることで, 誘電特性変化を用いて損傷評価を行うことが可能であることが確認された.

22. 粒子分散オプティカル複合材料の光学特性(継続)

教授 香川 豊, 大学院学生 長沼 環

 光透過機能を持つガラス粒子分散エポキシ複合材料を用いて, 光透過性に及ぼす粒子体積率の影響を検討した. 可視光領域から近赤外光領域(200〜1100nm)で, 数十mmオーダーのガラス粒子を粒子体積率10−4〜0.4の領域で分散させたオプティカル複合材料の光透過率を測定した. その結果, オプティカル複合材料の光透過率は, 複合化した粒子の総表面積に依存し, ある総表面積, Sa*, を境に急激に低下することが明らかになった. この総表面積, Sa*, は粒子寸法や入射光の波長に依存しないことがわかった. この結果から, オプティカル複合材料の光透過率の急激な低下を抑えるためには, 粒子の総表面積がSa*よりも小さくなるような粒子体積率で複合化することが好ましいと考えられた.

23. セラミック−金属接合体の界面力学特性(継続)

教授 香川 豊, 大学院学生 川添 敏

 セラミック−金属接合体の界面接合強度は界面自由端の応力状態に大きく影響される. 本研究ではAl2O3とCuの接合体を用い, 引張負荷時における自由端近傍のAl2O3のミクロな応力分布を新しく開発した高速走査型蛍光応力顕微鏡によって測定した. その結果, 自由端近傍において結晶粒の異方性に起因すると考えられる周期性を有する応力分布が得られた. また, 有限要素法によりAl2O3とCu作製時に生じる熱応力ならびに引張負荷時における応力分布を解析し, 実験結果の妥当性を確認した.

24. 繊維強化セラミックスマトリックスオプトメカニカル複合材料の製造と特性(継続)

教授 香川 豊, 大学院学生 Arcan F. Dericioglu

 SiC繊維強化MgO・Al2O3スピネルマトリックスオプトメカニカル複合材料を作製し, その光学特性と力学特性を評価した. 作製した複合材料は光学窓として十分な光透過率を有していると考えられた. また, 複合材料の光透過率は繊維の影となる部分を除いたマトリックスの光透過率と相関関係にあった. 力学特性に関しては繊維体積率が小さいために, 複合材料の破壊抵抗を大きく向上させることは難しいが, クラックが発生した後の繊維によるクラックブリッジング機構によるフェイル・セーフ機構は働くことが明らかになった.

25. 耐環境表面材料としてのオール酸化物系繊維強化セラミックス複合材料の可能性(継続)

教授 香川 豊, 大学院学生 金 永錫

 非酸化物系セラミックスやセラミックス基複合材料を使用環境から保護するために, 表面に大きな破壊抵抗を持つAl2O3繊維強化Al2O3複合材料を耐環境表面材料として利用することの可能性について検討した. 硼珪酸ガラスの表面に複合材料を接合したものを作成し, 材料の圧子押し込み試験を行ない表面材料としての効果を調べた. その結果, 表面に設けた複合材料層は脆性材料の破壊原因となる表面欠陥の応力集中を防ぎ, 脆性破壊を生じさせない効果があることが確認された.

26. 光学的に不均一な材料の透明性評価:超短光パルスと材料の相互作用の応用(継続)

教授 香川 豊, 大学院学生 松村 功徳

 オプティカル複合材料や透光性セラミックス等の光学的に不均一なミクロ組織を持つ材料では, 異相界面や粒界での光散乱によりその透明性が低下することが問題となっている. これら材料の透明性向上には, 材料中での光の経路を考慮して材料の透明性を評価することが必要である. 本研究では, 材料中での光の遅れを含めて透明性を評価する方法として, 超短光パルスレーザー及び干渉による透過波面観察を用いて, オプティカル複合材料および透光性セラミックスを対象に材料中での光の遅れの評価を行った. その結果を用いて, 透明性評価手法を提案した.

27. SiC系繊維強化エポキシ電波吸収複合材料に関する研究(継続)

教授 香川 豊, 大学院学生 今橋 祐輔

 熱処理によって表面に炭素に富む層を表面に析出させることにより7桁以上の範囲で電気抵抗率を変化させることができるSiTiCO系繊維を用いて, 新しい電磁波吸収材料を実現する方法を検討した. カーボン層の厚さの異なる3種のSiTiCO系短繊維を混合条件を変えてエポキシ樹脂と複合化させ, 1.0 MHz〜1.0 GHzの周波数範囲で誘電特性を測定した結果, 複合材料の電磁波吸収特性は繊維表面のカーボン層の厚さと繊維分布に大きく依存することがわかった. カーボン層の厚さの薄い繊維, 厚い繊維を用い, それぞれ電磁波反射・透過抑制と, 機能を分担した材料を組み合わせることで30〜40 GHzの周波数範囲で反射・透過率が共に−20 dB以下の複合材料の製造が可能であることを実証した.

28. 周波数選択可視光透過型電磁波シールド複合材料に関する研究

教授 香川 豊, 大学院学生 馬場 和彦

 電磁波は横波であり, 偏光の原理を用いることで, 可視光領域は透過するが電磁波を透過しない周波数選択透過型複合材料の実現可能性を検討した. 一定間隔に配列したステンレス繊維をPMMAマトリックスに複合化し, 電磁波に対する偏向板としての効果を調べた. 同一の2枚の複合材料のシールド特性を周波数範囲20〜40 GHzで測定することにより, 複合材料がこの周波数範囲で偏光板として機能していること, 繊維中心間距離が電磁波の波長より小さな領域では繊維間間隔が小さいほどシールド効果は大きくなることが明らかになった. これに対し, 可視光領域では80%以上の透光性を保っていたことから, 透明な周波数選択透過型電磁波シールド材料の実現可能性が検証できた


previous page

next page