VI. 研究および発表論文


1. 研究課題とその概要
人間・社会大部門

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第49号 2000年度
2001.8.23


1. 自然雷の研究

教授 石井 勝, 技術官 齋藤 幹久・藤居 文行

大学院学生 下堀 友数・柳瀬 崇, 協力研究員 奥村 博・Syarif Hidayat

 自然雷の放電機構, 雷放電のパラメ−タに関する研究を, おもに電磁界による観測を通じて行っている. また, 雷放電位置標定システムの精度向上, VHF帯およびMF帯電磁波の多地点での高精度時刻同期観測による雷雲内放電路の3次元位置標定, 静的電界変化の多地点観測による雷雲内電荷分布の研究を進めている. (一部受託研究費)

2. 電磁界パルス(EMP)の研究

教授 石井 勝, 大学院学生 Ramesh K. Pokharel

 雷放電や, 高電圧回路のスイッチングに伴って発生する電磁界パルス(EMP)のモデリング, 伝搬に伴う変歪, 導体系との結合などについて研究を進めている. 周波数領域の3次元過渡電磁界解析コードの利用に加え, 時間領域コードを適用することによって, 非線型素子を含む配電線における誘導雷電圧の解析を行った. また冬季に落雷が頻繁に起こる高構造物の近傍に設置した試験配電線に生じる誘導雷電圧と, 電界変化, 雷撃電流の同時測定データより, 誘導雷電圧解析法の評価と雷放電路のモデリングを試みている.

3. 電力系統における直撃雷サージに関する研究

教授 石井 勝, 大学院学生 Ramesh K. Pokharel

 周波数領域, または時間領域の3次元過渡電磁界解析コードにより, 鉄塔を含む立体回路に流れる電流を計算し, 雷放電路の特性が直撃雷サージ波形に及ぼす影響を調べた. また雷放電路上の光速より遅く伝搬する電流波が生じる電磁界を計算するための, 放電路の回路モデルを使用し, 雷放電路のみかけの回路定数を検討した.

4. インパルス高電圧計測の精度向上に関する研究

教授 石井 勝

 抵抗分圧器を使用したインパルス高電圧計測を, 3次元過渡電磁界解析手法により数値的に模擬する手法を開発し, その有効性を実測結果との比較により実証した. この手法を用いて, 雷インパルス電圧測定系の応答特性に及ぼす回路の立体構成の影響, ステップ応答測定回路と, 測定系校正のための比較試験回路の特性の違い, 抵抗分圧器の設計法などについて解析を進めている.

5. ターボ過給エンジンシステムに関する研究(継続)

教授 吉識 晴夫, 助教授 加藤 千幸, 外国人客員研究員 張 力

研究員 田代 伸一, 助手 西村 勝彦, 技術官 高間 信行

大学院学生 王 威・今井 友一

 燃料経済性, 排気対策のため, 車両用ディーゼル機関のターボ過給化が進められている. 容積型のディーゼル機関と速度型のタービンを組み合わせ, しかも排気エネルギーを効率よく利用するためには, タービンを含む吸排気管路とエンジンとを統一的に流動解析する必要がある. この車両用高速ディーゼル機関の過給機駆動用原動機であるラジアル排気タービンは, 機関からの脈動排気で駆動される. これまで, エンジン全体を一次元流路と容積でモデル化したシステムの数値解析と実験を行ってきた. 現在, 広い運転範囲で高性能となるエンジンシステムの追求を行っている.

6. ディーゼル機関の吸気特性に関する研究(継続)

教授 吉識 晴夫, 助教授 加藤 千幸, 助手 西村 勝彦

 ディーゼル機関の出力向上, 燃費改善, 排気浄化のため, 燃焼制御が重要な役割を果たす. 燃焼改善のため, 吸気に旋回流を与えているが, 吸気管形状は経験的に決めることが多く, 設計は容易とは言えない. 現在, 円管内旋回流の基礎データを精度良く測定し, 数値解析モデルの構築を行っており, この情報を基に機関設計の効率化を図るための基礎研究を行っている.

7. 小型ラジアルガスタービンに関する研究(継続)

教授 吉識 晴夫, 助教授 加藤 千幸, 研究員 田代 伸一

協力研究員 小西 奎二, 助手 西村 勝彦, 技術官 高間 信行

大学院学生 斎藤 郁雄

 マイクロガスタービンや自動車用エンジンとして小型ラジアルガスタービンの利用が活発化してきた. このラジアルガスタービンの高性能化のため, ラジアルタービン動翼内の3次元流体解析法の開発を行っている. また, サージ余裕の改善のため遠心圧縮機の入口案内翼後流の不安定流れの実験的研究などを行っている.

8. ガスタービンを利用する動力エネルギーシステムの研究(新規)

教授 吉識 晴夫, 助教授 加藤 千幸, 大学院学生 岡田 卓

 人類の生活に不可欠の電力の発生が, 地球環境問題やエネルギー問題に大きく関与している. 最近のガスタービン技術の進展に伴い, ガスタービンと蒸気タービンによるコンバインドサイクル発電が火力発電の主流になりつつある. しかし, 現在は化石燃料焚きを行っているため, 熱効率の向上や排ガス清浄装置により, これらの問題に対処できるにすぎない. このため, 今後のエネルギー問題を解決する一方策として考えられるメタノールや水素酸素燃焼等のガスタービンを利用した発電システムの熱力学的研究, 及び水素燃焼タービンシステムの起動特性の研究を行っている. さらに, 自動車用エンジンの性能向上のため, ハイブリッドエンジンに関する基礎研究を行っている.

9. 翼及び翼列の非定常流特性に関する研究(継続)

教授 吉識 晴夫, 助教授 加藤 千幸, 技術官 高間 信行

大学院学生 石橋 武人

 エネルギー問題, 環境問題の解決の一方法として, 火力発電所のリパワリングが行われている. 部分負荷で運転される蒸気タービンでは, 翼列は周期的変動流の下で作動することになる. このように流速が時間的に周期的に変動する流れ場に置かれた単独翼及び翼列の特性について, 実験と解析の両面より研究を行っている. 今年度は, 低レイノルズ数域における翼面からの剥離特性を実験的に求めた.

10. スターリング機関に関する研究(継続)

教授 吉識 晴夫, 技術官 高間 信行

 高い熱効率が期待でき, 多種燃料に対応可能なスターリング機関の特性を明らかにする研究を行っている. これまでに, 機関性能を容易に精度良く推定する方法を開発し, 各因子が性能に与える影響を明らかにした. また, 発達したチャンネル乱流の粘性領域における乱れ特性を明らかにした. 現在, この機関の熱交換器に特有な管内往復流動時の流動特性と伝熱特性を求め, 高性能熱伝達機構の実現のための基礎研究を行っている.

11. 流体騒音の数値的予測技術の開発とその低減に関する研究(継続)

助教授 加藤 千幸, 教授 吉識 晴夫

技術官 鈴木 常夫・高間 信行, 助手 西村 勝彦

 流体機械の小型・高速化や鉄道車両の高速化に伴い, 流れから発生する音, 即ち, 流体騒音の問題が今後益々顕在化することが予想されており, その予測や低減は機械工学の重要な課題の一つとなっている. 本研究では, 流体騒音源の同定とそれによる騒音低減とを目指して, 流体騒音の数値的予測手法の開発を進めている. これまでの研究により, 実機から発生する騒音スペクトルの予測も(ある範囲では)可能であることが確認されているが, 本年度は適用範囲の拡大と予測精度の向上を図ることを目的として予測手法の改良に着手した.

12. ターボ機械内部流れの非定常解析(継続)

助教授 加藤 千幸, 教授 吉識 晴夫

 ポンプや水車などのターボ機械の性能や信頼性を向上させるためには, 非定常性も含めて機器内部の流れを正確に予測することが不可欠であるが, 従来のターボ機械内部流れの解析は, 殆ど時間平均流れに基づいており, 流れの非定常性を正確に予測できるものはなかった. そこで本研究ではLES(Large Eddy Simulation)と複合メッシュ法による, ターボ機械内部流れの非定常解析技術の開発を進めている. 本年度は特に, 低流量域における予測精度の検証を行い, ポンプの水力特性や羽根車内部流れが定量的に予測できることを確認した.

13. 翼周りの非定常剥離流れに関する研究

助教授 加藤 千幸, 教授 吉識 晴夫, 技術官 鈴木 常夫・高間 信行

助手 西村 勝彦, 大学院学生 石橋 武人・宮澤 真史

 単独翼周りの流れは, 軸流ターボ機械の内部流れや風車のブレード周りの流れなどの基本的な流れモデルと考えることができ, はく離, 遷移, 再付着などの代表的, かつ, 重要な流れ要素を含んでいる. 本研究では, (1)翼周りの流れから流体音が発生するメカニズムを解明すること, および, 次世代の乱流解析手法として着目されているLES (Large Eddy Simulation)の解析精度を検証することを最終的な目標として, 層流・乱流剥離する単独翼周りの流れの非定常計測に着手した. 本年度は, 翼表面圧力変動および後流の流速変動の計測を行った.

14. プロペラファンから発生する空力騒音の数値シミュレーション

助教授 加藤 千幸, 教授 吉識 晴夫, 大学院学生 宍戸 進一郎

 プロペラファンは, コンピュータの冷却ファン, エアコンの室内・室外機, ビルなどの換気用ファンに多用されているものであり, 快適なオフィス・居住環境を維持するためにはプロペラファンから発生する空力騒音を出来る限り小さく押さえる必要がある. 本研究は, このプロペラファンから発生する空力騒音の数値的予測手法を開発し, さらに, 低騒音ファンの設計指針を確立することを最終的な目的としたものである. 現在, その第1ステップとして, ファン内部流れの非定常計算を実施し, 流れの非定常渦構造を検討している.

15. 電子機器の冷却設計技術の開発

助教授 加藤 千幸, 教授 吉識 晴夫

 EWSや汎用大型計算機, スーパーコンピュータなどのCPU・メモリーチップは, 集積度の向上に伴い発熱量も増大しており, 限られたスペースの中に如何に実装するかが重要な課題となっている. 本研究では, 民間研究機関と共同で, 冷却ファンの偏流などの影響も考慮できる, 高精度でかつ実用的な冷却設計システムの開発を進めている. 現在, そのための基本アルゴリズムの検討を行っている.

16. シリコンの脱アンチモンに関する研究

教授 前田 正史, 助手 池田 貴

 太陽電池用に使用可能な低コストのシリコン源として, SbがドープされたN型のシリコンの精製を試みた. 電子ビーム溶解装置でSb初期濃度60ppmからおよそ150秒で1ppm程度まで除去することが可能であった. 比抵抗値も1Ωcm以上の許容範囲であることがわかった. これまでこのようなシリコンは太陽電池用には使用されていなかったが, この製造プロセスを用いることで太陽電池用シリコンとして使用可能であることがわかった.

17. CaF2系フラックスの熱力学

大学院学生 植田 滋, 教授 前田 正史

 製鋼スラグの滓化性, 反応性向上のためにCaF2が大量に用いられている. しかしふっ化物は人体に対して有害性があると言われている. 溶融スラグからのふっ化物の拡散や, 使用後のスラグの最終処分段階における溶出が問題となるためCaF2の効果を保ちつつ使用量の削減を考えなくてはならない. 本研究ではそれに必要なCaF2系フラックスの熱力学的性質を調査することを目的としてCaF2-CaO-P2O5系等の系に対する成分の活量測定を行っている.

18. 鉄亜鉛系金属間化合物の熱力学

大学院学生 三田 和哲, 教授 前田 正史

 亜鉛メッキ鋼板を用いた製品のスクラップが電炉で溶解される際に, 鋼の表面にメッキされた亜鉛は蒸発しダスト中に捕集される. この亜鉛を効率よく回収するためには, 亜鉛メッキ鋼板の表面に形成されている鉄亜鉛系金属間化合物相の熱力学的性質を知り, 亜鉛の分離回収が可能となる条件を求めるることが必要である. しかし, この系の熱力学的性質はほとんど知られていない. そこで本研究ではダブルクヌーセンセル・質量分析装置を新たに作成し, Fe-Zn-Al三元系試料を用いて350〜440℃の温度範囲で金属間化合物相の解離反応における亜鉛の蒸気圧を測定し, 精度の高い亜鉛活量データを得た.

19. オキシクロライド系混合物質の熱力学

大学院学生 岩沢 こころ, 教授 前田 正史

 一般ゴミを焼却処分する際に発生し, 集塵機によって収集される飛灰は, 非常に密度が低いためさらに溶融処理を施し固化するが, その処理の際にも溶融飛灰と呼ばれる二次飛灰が発生する. この物質の主な成分はアルカリ金属, 珪素, 塩素, 酸素, 重金属となっている. 本研究では今までほとんど研究例のない, この物質の基本組成となるアルカリ金属―珪素―塩素―酸素系, また重金属―珪素―塩素―酸素系混合物質に着目し, 融点や相分離領域などの熱力学的データを調査する. 以上, 含有物質を増やしていき最終的にはこの溶融飛灰の基本組成であるPb-Zn-Na-K-Si-Cl-O系混合物質まで発展させ, その物理化学的特性を明らかにし, 溶融飛灰の最終処分の段階での無害安定化の可能性を探査する事を目的としている.

20. 競漕用シェル艇の性能向上(継続)

教授 木下 健, 技術官 板倉 博, 大学院学生 小林 寛

 ボート競技に用いられる用具の改良と開発を行っている. 既存優秀艇の曳航試験を行い, 抵抗成分を分離し検討をくわえ, 新型リガー, 舵, フィン, ボディーフェアリングの開発を行った. 本年度はシングルスカルの実艇実験により求めたオールに加わる流体力のモデル化を行った. これによりローイング運動の機械効率を解析し, 効率の向上に役立つ器具と漕法の研究を行う.

21. 係留浮体の長周期運動に関する研究(継続)

教授 木下 健, 助手・特別研究員 鮑(佐野)偉光

協力研究員 砂原 俊之, 大学院学生 李 孟偉

 波浪中の長周期運動は係留浮体の設計上で, 最も基本的かつ重大な課題の一つであるが, 非線形性が強く重要な研究課題が数多く残されている. その中でも波漂流力と波漂流減衰力の推定は運動や係留力の最大極大値の推定に大きい影響を与える. 本年度は船首揺れ含めた3自由度すべての連成運動に対する浮体の漂流減衰力の理論計算法を開発し, 水槽試験結果と比較し, 理論の妥当性を検証した.

22. 波浪中の任意形状浮体に働く非線形流体力の理論計算(継続)

教授 木下 健, 助手・特別研究員 鮑(佐野)偉光, 協力研究員 砂原 俊之

 海洋に係留された浮体は係留系との同調により長周期運動, スプリンギングさらにはリンギングと呼ばれる非線形振動をする. その起振力となる流体力を波傾斜を微小量とする摂動法により精度良く計算する研究を行っている. 無限領域の離散化の必要性を回避するため外部領域を解析的に取り扱い, 内部領域には境界要素法を用いて任意形状に対応できるようにしている.

23. 帆走艇の運動性能向上に関する研究(継続)

教授 木下 健, 大学院学生 加納 真裕

 帆走艇の性能推定に従来使用されているVPPでは定常航走性能のみで実際の帆走時に大変重要なタック性能や, 波浪による縦揺れの影響を知ることは出来ない. 本研究ではこの様な非定常運動を含む帆走性能の推定法を開発し, 性能向上に役立てる. 本年度は操船の容易な双胴型水中翼船ヨットの開発設計を昨年の三分の一, 五分の一模型に引き続きプロトタイプについて行い, 帆走試験に成功した.

24. ヒルベルト空間による逆問題と最適化手法の海事流体力学への応用の研究

教授 木下 健, 博士研究員 Jang Taek Soo

 ヒルベルト空間によるill-posedな逆問題の解法と最適化手法の海事流体力学への応用例として, 造波機(圧力分布)による造波と, 2次元翼の周りの流場の逆問題を取上げ, 三種の正規化法(Tikhonovの正規化法, Landweber-Friedmanの正規化法, 繰り返しによるTikhonovの正規化法)を適用してその適用性の優劣を調べた. さらにこれらの逆問題の極く一部(10%程度の領域)の不充分な条件から解をdetectすることが出来ることを示した. 次に最適化の問題としてキャビティー流れの抗力を最小にする2次元断面形状をill-posedな問題を解くことにより求める方法を開発し, 従来知られていた形状より約2%抗力の小さい断面形状を示した.

25. 乱流LESにおけるサブグリッドモデル(継続)

助教授 谷口 伸行・大島 まり, 博士研究員 Md. Ashraf Uddin

大学院学生 雷 康斌・弘畑 幹鐘・小林 克年

 乱流LESにおけるサブグリッドモデルについて複雑流れ場への適用性の観点から検討する. 今年度は, 乱流燃焼と固気混相乱流におけるSGSモデルの開発, 時間平均(RANS)モデルとのカップリングなどについて研究を進め, また, 乱流DNSデータを用いて渦微細構造に対するLESフィルター効果の分析を行った. 工学への応用事例としては, 電磁場下での乱流抑制効果のダイナミックSGSモデルによる予測, 火炉バーナ, 航空機ガスタービン燃焼器の数値シミュレーションなどへ適用を試みた.

26. 非圧縮性流れ解析コードの開発と応用(継続)

助教授 谷口 伸行・大島 まり, 技術官 伊藤 裕一

協力研究員 Josha MORA ACOSTA, 大学院学生 小林 克年

 実用的な流れ数値解析のためには, 流れ場の複雑さに応じて数理モデルや解析手法を合理的に選択あるいは併用することが必要である. 本研究では, 複雑形状の非圧縮性流れ場の解析を主な対象として, 異なる数理モデルや解析手法に基づく複数の計算コードを開発し, それらの相互比較による評価検証, および, それらを連性させた高度な解析法の開発を行う. 現在, 差分法による構造型格子コード, 有限体積法および有限要素法による非構造型格子コードの検証と改良を進め, その成果であるプログラムソースや数値検証データを公開している*. 今年度は, 特に, 並列コンピュータにおける計算の高速化を図るとともに, 燃焼乱流解析および脳動脈血流解析のためのコード開発を進めた. (* NST研究グループ)

27. 固気混相乱流の数値解析モデリング(継続)

助教授 谷口 伸行, 教授 小林 敏雄, 大学院学生 雷 康斌

 微粉炭燃焼や粉体輸送に際して分散粒子を含む流れの予測制御が重要な設計要件となるが, 工学問題において流れの乱れ特性との相互作用は十分解明されていない. 本研究では乱流の非定常構造の解析に有効なラージ・エディ・シミュレーション(LES)に基づき分散粒子と乱れの相互作用の数値モデルを構築して, 固気混相乱流の数値予測シミュレーション法の開発する. 本年度は, 乱流LESにおけるグリッドスケール(GS), サブグリッドスケール(SGS)および粒子衝突を全て考慮したFull wayカップリングモデルを提案し, 基本的な流れ場における検証を示した.

28. 燃焼反応を伴う乱流の数値解析モデリング(継続)

助教授 谷口 伸行, 技術官 伊藤 裕一

大学院学生 弘畑 幹鐘・村田 史人

 工業的に用いられるスケールの火炉バーナやタービン燃焼器などの燃焼反応は流れ場やその乱れ特性に大きく依存しており, 特にNox制御や異常燃焼抑制の合理的な設計には燃焼乱流場の非定常現象を直接的に予測できる手法が求められている. 本研究では, flameletの概念に基づく非予混合火炎に対する乱流解析モデル開発を進めている. 今年度は特に, ガスタービン燃焼器の多段着火や火炉バーナの吹き上がり火炎への適用を試みた. また, 今年度はバーナ流における流入乱れ条件の影響について検討を行った.

29. 新しい水処理のためのCarbon Whisker膜の開発

教授 鈴木 基之, 助教授 迫田 章義, 技術官 野村 剛志

日本学術振興会特別研究員 李 元堯, 大学院学生 べー 尚大

 Whisker膜(CWM)の開発を行っている. この新規の機能性炭素系膜は, セラミックス等の単体の上に炭素の膜が形成され, さらに設計した面密度で直径数ミクロンの炭素のヒゲを有している. このような構造によって, 例えば水中の揮発有機物(VOC)の除去や微生物分離等の新しい水処理技術への応用が有望と考え, 材料とプロセスの同時開発を進めている.

30. 高温高圧水処理による未利用素材の資源化

教授 鈴木 基之, 助教授 迫田 章義, 技術官 鶴 達郎

日本学術振興会特別研究員 望月 和博・申 鎭壽, 大学院学生 高山 卓

 生産活動から環境への汚濁負荷の削減と資源の有効利用の観点から, 廃棄物を「ごみ」として処分するのではなく「未利用素材」として有効に利用する技術の確立が望まれている. ここでは, 各種未利用素材からの有用物質の合成・抽出に対し, 水熱反応に代表される高温高圧(超/亜臨界)水反応の利用を目的として, 種々の原料および反応条件に対する生成物・素反応に関するデータベースの構築を行い, 反応残滓を含めた用途開拓を試みることでトータルとしての再資源化に関する検討を行っている. また, 水熱反応と物理的な粉砕の双方が期待できる蒸煮爆砕処理の導入や大量処理を念頭に置いた超/亜臨界水連続処理プロセスの開発を連携することで, 未利用素材の資源化プロセスの設計・構築に資する知見の集積を行っている.

31. キノコを利用した未利用素材の資源化

教授 迫田 章義, 教授 鈴木 基之, 技術官 藤井 隆夫

日本学術振興会特別研究員 王 殿霞, 大学院学生 井原 之偉

 今までの人間活動, 生産活動による資源・エネルギーの消費と, それに伴って排出された物質によって地球規模での環境問題が深刻化している. ここでは, キノコの優れた生物分解能力を着目し, 食用あるいは薬用キノコを植物系バイオマスや食品加工業等から排出される未利用物質を基質として培養した場合の物質変換や物質収支を検討している. さらにキノコ培養に使われた残さ(廃床)は優れた飼料・肥料として, あるいは有害物質除去材等としての活用も注目されている. 物質循環の定量的理解と工学的なプロセスとしての位置づけの解明が当面の課題である.

32. Integrated Biosystems(IBS)における物質動態

教授 迫田 章義, 教授 鈴木 基之, 技術官 藤井 隆夫

 これまでの有機性廃棄物は排水, 廃棄物処理という観点で対策が考えられてきた. しかしながら, 物質循環型社会を実現するためには排水や廃棄物も未利用物質と考え, 廃棄物をベースとする資源化処理システムの基本的定量関係を明確にすることが必要である. フィジーで行っている実験では豚舎からの糞尿を一例として, エネルギー生産, 藻類の増殖, 野菜の生産, 魚の養殖などと効率良く組み合わせたシステムを構築し, 極力, 廃棄物を排出しない産業形態の形成について検討している.

33. 生態系における物質循環の数理モデル化

教授 迫田 章義, 教授 鈴木 基之, 日本学術振興会特別研究員 林 彬勒

 生態系における物質の循環を定量的に把握することは, 生態系の保全という立場から非常に重要である. 特に数理モデルによって生態系を表現することで, 人為的な外乱が生態系に与える影響を予測することが可能となる. 本年度は, 土地利用と気候変動による生態系への影響の予測が可能な窒素循環モデルの構築を開始した. このモデルによって, 生態系を持続させるための人間活動のあり方が提案できよう. また湖沼における藻類の異常増殖, いわゆる水の華の発生における生態学的機構の解明や, 生態系構成生物を利用した効率のよい増殖抑制方策の提案のための湖沼生態系数理モデル化の構築も行っている.

34. 化学物質による生物・環境負荷の総合評価手法の開発

教授 迫田 章義, 教授 鈴木 基之, 講師 酒井 康行

大学院学生 庄司 良

 肝細胞などの動物細胞系に有機塩素化物, 重金属, 農薬などの環境汚染物質を負荷し, その増殖阻害や機能阻害などを指標として毒性評価を行っている. 本研究は様々な研究機関との共同研究で, 本邦では類を見ない大規模な培養細胞による化学物質毒性データベースを構築しつつあり, バイオアッセイによる水環境管理に大きな指針を与えることになろう.

35. 浄水処理評価のためのバイオアッセイ

教授 迫田 章義, 教授 鈴木 基之, 講師 酒井 康行

技術官 藤井 隆夫, 大学院学生 金 範洙

 今日の環境水(河川, 湖沼など)は多種多様の微量化学物質で汚染されているのが一般的である. そこで, これを水源とする水道水が水質基準にリストアップされている個々の物質についてその基準を満たしていても安全と言いきるのは疑問である. そこで, 様々な時定数で発現する複合的な人体影響を動物細胞などの生体応答から予測し, 総括的な毒性という視点で浄水処理を評価する手法を構築すると共に, このような新しい指標に基づいた浄水処理法の提案・開発を目指している.

36. ヒト臨床応用のためのバイオ人工肝臓システムの開発

講師 酒井 康行, 教授 鈴木 基之

助手(東京大)成瀬 勝俊, 教授(東京大)幕内 雅敏

 実際のヒト臨床応用に耐え得るような高機能かつ管理の容易なバイオ人工肝臓システムの開発に関する研究を行っている. 前臨床試験として, ポリエステル不織布充填型バイオリアクターと血しょう分離器・酸素冨化器などからなるバイオリアクターシステムを構築し, 肝不全ブタ・イヌ・サル等のの灌流治療実績を積み重ねている.

37. 肝組織in vitro再構築

講師 酒井 康行, 助教授 白樫 了, 教授 鈴木 基之

助手(東京大)木下 大成, 教授(東京大)宮島 篤

博士研究員 姜 金蘭

 将来, 移植にも耐え得るような肝組織をin vitroで再構築するために, 多面的に技術開発を行っている. たとえば, 複雑な構造を持つ肝組織再構築の一時的テンプレート開発を目的とした光反応性樹脂を用いる三次元微細造型技術の開発, 増殖能と臓器再構築能に優れた胎児由来肝細胞のin vitro増幅技術の開発, などを当面の目的としている.

38. 化学物質影響評価のための培養ヒト細胞を用いる人体システム再構築に関する研究

講師 酒井 康行, 教授 迫田 章義, 教授 鈴木 基之

大学院学生 富田 賢吾・福田 理

 既存の単一培養細胞からなる毒性評価系では, 吸収・代謝・分配といった人体内での毒性発現に至までのプロセスが考慮されない. そこで, これらを考慮する実験系として, 膜上に培養された小腸上皮細胞, 同じく膜上に培養された肺気道・肺胞上皮細胞, 担体内に高密度培養された肝細胞および標的臓器細胞(腎臓・肺など)などの個別のモデル臓器コンパートメントを開発すると共に, これらを生理学的な培養液灌流回路で接続する新しい毒性評価システムを開発し, 毒物経口摂取後の血中濃度と毒性発現を速度論的に再現することを目指している.

39. 生体凍結保存における前処理過程の最適設計(継続)

助教授 白樫 了, 講師 酒井 康行

 医用の生体組織を凍結することにより, 長期間保存する技術は, 需要と供給のバランスをとる上で望まれている. 組織の大きさに依存しない凍結法としてガラス化が有力であるが, 凍結前に細胞内外の自由水を高濃度の凍害防御剤と交換しておく操作必要がある. この操作は細胞を高浸透圧に曝すことから, 適切なprotocolが細胞ごとに必要になる. 本研究では, この前処理過程のprotocolの最適化設計の手法を開発すると共に, protocolを左右する細胞の細胞膜透過係数の測定法の開発を行っている.

40. マイクロ波散乱理論に基づく多入射・多偏波計測による土壌水分・粗度の同時逆推定(継続)

教授 虫明 功臣, 助教授 沖 大幹, 技術官 小池 雅洋

大学院学生 Shakil A. Romshoo

 本研究は, マイクロ波リモートセンシングを用いて土壌水分量と地表面粗度を同時に精度良く推定することを目的とする. これまで, 多偏波, 多入射, 多波長観測データから土壌水分と粗度を同時に推定する方法について研究を進めてきており, 昨年度までに多種多様な地表面における各種観測データを得た. 本年度は, これらの観測データに対して数値散乱モデルを適用することによって, 裸地および植生地における水分量のリモートセンシングによる推測可能性が示された.

41. 東南アジアモンスーン地域の水文環境の変動と水資源への影響(継続)

教授 虫明 功臣, 客員教授 A. S. Herath, 助教授 沖 大幹

助手・特別研究員 鼎 信次郎, リサーチアソシエイト 金 元植・安形 康

大学院学生 大楽 浩司・Perapol Begkhuntod

 (科学研究費国際学術研究(2)の項参照)

42. 都市の水循環とそのモデル化に関する研究(継続)

教授 虫明 功臣, 客員教授 A. S. Herath, 技術官 小池 雅洋

教務技官 弘中 貞之, 大学院学生 Amila Silva

 自然系と人工系水循環要素が複雑に交錯している都市化流域の水循環機構を明らかにし, 今後の水循環系の保全策を研究するために, 海老川流域(千葉県)を対象に水循環のモニタリングとモデリングを行っている. 本年度は, 河川流量中の特に人工系流量成分に着目し, その季節変動について考察を行い, 海老川, 前原川の流域特性を明らかにすることができた. また, 新たに安定同位体を用いた水循環要素の解明にも着手した. また, バルーンによりマルチチャネルのセンサを用いたミクロスケールの観測からLSMのパラメタリゼーションを本年度は行う予定である.

43. 水文量の時空間分布特性に基づくマクロ水文学モデルの構築(継続)

教授 虫明 功臣, 客員教授 A. S. Herath, 助教授 沖 大幹

リサーチアソシエイト 楊 大文

 マクロ水文モデルのターゲットの一つである大気モデルと結合するための効率的な水文モデルを開発している. 本年度は, 地形特性に基づくサブグリッドでのパラメタリゼーションと流域スケールの河川流の両方を組み込んだ大陸スケールの水文モデルを開発し, アジアの主要な河川の流量シミュレーションを行った. その結果良好な結果が得られた. 今後は潅漑, 貯水池管理といった人工的な水利用を組み込んだ水文シミュレーションの実施, そしてGCMとのカップリングの試みを行う予定である.

44. 熱帯降雨観測衛星を用いた全球土壌水分の計測

教授 虫明 功臣, 助教授 沖 大幹, 助手・特別研究員 鼎 信次郎

大学院学生 瀬戸 心太, 平林 由希子

 地球規模の土壌水分量を計測することは, 土壌水分量そのものが水資源であるために重要であるとともに, 数値モデルを用いた水資源予測においても非常に重要である. 熱帯降雨観測衛星(TRMM)搭載の降雨レーダ(PR)を利用して, 土壌水分量を推定する手法について研究を行っている. 本年度は, オクラホマメソネットにおける土壌水分の現地観測データを利用して, TRMM/PRの地表面後方散乱係数の時間変化と土壌水分が強い線形関係にあることを確認した. また, 1998−99年のTRMM/PRから推定した土壌水分量と, 1987−88年の計算によって求められた土壌水分量を, それぞれ大気大循環モデル(GCM)の境界条件として与えて数値シミュレーションを行い, 降水量の再現結果に与える影響について検討した.

45. 環境同位体計測による広域水循環の解析

教授 虫明 功臣, 助教授 沖 大幹, 技術官 小池 雅洋

教務技官 弘中 貞之, 大学院学生 芳村 圭

 水素および酸素の安定同位体をトレ−サ−にすることで, 降水, 流出, 地下水等の水循環要素の起源およびそこにいたるまでの過程の解析を行っている. 本年度は, 駒場地区の降水の同位体比年変動, 都市河川・海老川流域の水循環要素の配分, およびタイ国の降水と河川水から, その起源と過程について検討した.

46. 地球規模水循環過程の変動と水資源への影響(継続)

教授 虫明 功臣, 助教授 沖 大幹, 助手・特別研究員 鼎 信次郎

大学院学生 猿橋 崇央, 学部学生 平岩 洋三

 地球規模の水循環過程の変動が水資源へ及ぼす影響を知ることは, 国土, あるいは地球における適正な自然利用を計画するために不可欠である. 本年は, 全球0.5度メッシュグリッドにおいて河川流量, 人口, 水使用量, GDP等を集積することにより, 全地球規模での水資源評価を行い, 各地域毎の水資源に関する脆弱性を算定した. また, 世界全体の自然水循環と社会的水利用を統合的に表現するシステムダイナミクスモデルを開発し, それを用いることによって, 今後100年の世界水危機の予測とその回避策に関する研究を行った.

47. ライフサイクルアセスメントによる環境調和性の判定

教授 安井 至, 助手 坂村 博康

(科学技術振興事業団)伊藤 健司・二宮 和之

 すべての材料, 製品などの環境調和性は, ライフサイクルアセスメントによって, 表現が可能である. しかし, その廃棄過程をどのように設計するかによって, 環境負荷は大きく異なる. そこで, 廃棄過程をさまざまに変化させたときの環境負荷がどのようになるか, より定量的にする方法論を含めて検討を行っている.

48. 産業の環境パフォーマンスに関する研究

教授 安井 至, 大学院学生 国分 政秀

 日本の産業における物質収支を解析し, より環境調和型産業に変貌させるには, どのような方法があるか, 次世紀にはどのような物質収支が予想され, その産業規模がどのようなものになるか, などを環境負荷軽減効果の観点から予測し, モデル化を行っている.

49. 新規機能性物質探索とそのプロセス

教授 安井 至, 大学院学生 中村 進一・稲毛 健一・森 恒

 多結晶薄膜は複雑な結晶構造を有するために, 結晶粒界や格子欠陥などの微細構造を詳細に解析する場合様々な困難を伴う. 本研究では様々な可能性を検討するために, 数種類の酸化物薄膜をヘテロエピタキシャル成長させることにより完全に結晶粒の配向が揃った薄膜を作成し, その電気特性と微細構造依存性などを解析している.

50. セラミックス単結晶の外形制御法の研究

教授 安井 至, 大学院学生 川村 史朗・高橋 司

 電子伝導性を有する酸化スズは, もしも針状のものが得られれば, 導電性フィラーとして有用である. そこで, フラックス法を用いた場合に, あらゆる添加物についてその外形制御の効果を検討した. その結果, ある種の3価, 5価のイオンが外形制御にとって非常に重要であることが判明した.

51. 分子動力学法による材料・プロセス設計法の研究

教授 安井 至, 助手 宇都野 太, 大学院学生 川原 実

 コンピュータシミュレーション法の一種である分子動力学法を用いて, 熱膨張係数の結晶方位依存性, 酸素イオンの拡散, 欠陥構造の予測, 薄膜合成プロセスの予測, などを行っており, より効率的な材料設計の方法論を探っている. また, ガラス溶融プロセスにおける酸化還元の原子機構の検討を行っている.

52. 酸化物水和物のプロトン伝導

助教授 宮山 勝, 大学院学生 原 晋治

 100℃以上でも高いプロトン伝導特性を示す材料探索とその燃料電池への応用を目的として, 酸化スズ, 酸化ジルコニウムの水和物およびそれらと耐熱性ポリマーの複合体を作製し, 100〜150℃, 高水蒸気分圧下でのプロトン伝導性を調べている. 酸化スズ水和物が広い水蒸気分圧下でも高いプロトン導電率を示すことを見出した. また, 酸化スズ水和物とポリマーの複合体においても安定した高いプロトン導電率が得られることを確認している.

53. 新しい酸化物イオン伝導体および単室型燃料電池の設計

助教授 宮山 勝, 大学院学生 安田 直人・高橋 尚武

 従来より低温で作動する固体酸化物燃料電池の設計を目的に, 固体電解質としてバナジウム酸ビスマス系の酸化物イオン伝導を調べ, 導電機構と結晶構造との関係を明らかにした. また燃料および酸化ガスの混合ガスにより発電が可能な単室型燃料電池を試作した. 酸化セリウムを電解質とした電池で, 起電力および発電特性が電極材料のガス酸化活性と電極界面抵抗に依存することを見出している.

54. ビスマス層状構造強誘電体の物性制御

助教授 宮山 勝, 助手(東京大)野口 祐二

大学院学生 入江 寛・五島 悠・三輪 一郎

 強誘電体メモリー等への応用が期待されているビスマス層状構造強誘電体について, 各種の単結晶を育成しその強誘電物性と結晶構造の相関を明らかにするとともに, 不定比性と添加物による欠陥制御を行い, 物性向上のための設計指針を追求している. チタン酸ビスマス多結晶体において, 酸化バナジウムや酸化タングステンの微量添加とビスマス欠損により, 単結晶データから予想される値に近い, 従来よりもはるかに大きい残留分極値を示すことが確認されている.

55. ゾルゲルプロセスおよび自己組織化プロセスによる, 薄膜・メソ構造体の作製

助教授 宮山 勝, 助手(東京大)野口 祐二

大学院学生 八木 康洋・中村 善子

 無機機能性薄膜の低温合成に有利なゾルゲルプロセスを用いてビスマス層状構造強誘電体薄膜を形成し, プロセスと膜構造および物性の相関を解明している. また, 界面活性剤の鋳型分子の作る自己集合構造にバナジウム酸化物前駆体を結合させ, 数〜数十ナノメートルの周期構造を持つメソ構造体を作製し, そのメソ構造形成過程の解明を試みている.

56. 金属の粒界・界面に関する理論的研究

教授 山本 良一, 大学院学生 呂 広宏, 田村 友幸

 (東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

57. 金属多層膜の輸送的性質に関する研究

教授 山本 良一, 技術官 神子 公男, 大学院学生 水野 浩行

 (東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

58. 金属多層膜の垂直磁気異方性に関する研究

教授 山本 良一, 技術官 神子 公男, 大学院学生 水野 浩行

 (東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

59. セラミックス超格子の力学物性

教授 山本 良一, 客員研究員 許 俊華

 (東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

60. 金属超薄膜の結晶成長の初期過程に関する研究

教授 山本 良一, 技術官 神子 公男, 大学院学生 水野 浩行

 (東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

61. ライフサイクルアセスメントの材料への応用

教授 山本 良一, 大学院学生 本田 智則

 (東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

62. 表面拡散の制御による薄膜のナノ構造制御

教授 山本 良一, 助手 弓野 健太郎, 大学院学生 林 聡史

 (東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

63. 振動台上での地盤と構造物の動的相互作用の新シミュレーション手法(継続)

教授 小長井 一男, 大学院学生 Raquib Ahsan・丸山 大介

 地盤と構造物の時刻歴における相互作用がディジタルシグナルプロセッサーで精度よく表現できることを示し, これを振動台への入力波形に加算することでリアルタイムに相互作用の影響を取り込む模型実験手法を提案した. 本年度は昨年度に引き続き, この手法をさらに非線形地盤と構造物の相互作用解析に拡張し, 破壊時に吸収されるエネルギーの計測を実施した.

64. レーザー光シートによる粒状材料よりなる構造の模型内部の動的挙動の可視化とその応用(継続)

教授 小長井 一男, 協力研究員 松島 亘志

 粒状材料よりなる構造の模型をガラス粒子で作製し, これを同じ屈折率の液体中に浸漬し, レーザー光シートを照射して, シート面上にある粒子の挙動を可視化あうる手法(Laser-Aided Tomography: LAT)で, 水中の粒状体構造物の耐震性を研究している. 本年度は昨年度に構築したLAT/平面ひずみ試験システムを用いて, 引き続き供試体の光学的切断面を多数撮影し, 三次元粒状体内部のあらゆる粒子の3次元画像画像から, これがせん断変形する場合の粒子パラメータを統計的に処理して, 全体変形に与える粒子ミクロ構造の影響を検討した.

65. フィルダムの耐震性に関する研究(継続)

教授 小長井 一男, 協力研究員 松島 亘志

 粒径の大きな岩石を積み上げたフィルダム斜面の動的安定性をLATによる可視化模型実験やDEMによる数値シミュレーションで検討している. 斜面がその安定の限界に達するまでに必要とされるエネルギーについての研究を中心に進めている.

66. 軟弱地盤中のトンネルの地震時挙動に関する研究

教授 小長井 一男, 大学院学生 金 大相

 軟弱地盤中に建設されているトンネルについて, 地震観測によって地震時の加速度応答, トンネル覆工のひずみを調べている. 本年度は昨年度に引き続き, 地震時に覆工に発生するひずみを軽減するために, トンネル覆工と周辺地盤の間に挿入する柔らかい免震材料の効果について理論的, 実験的な検討を行った.

67. 岩盤における地震観測(継続)

教授 小長井 一男, 技術官 片桐 俊彦

 大鳴門橋の両端, 鬼怒川自動制御所, 三保ダムおよび山王海ダムの4地点において岩盤表面および内部で地震観測を続けていて, 表層地盤の影響を受けていない地震動の性質を研究している. 本年度は鳥取県西部地震などの記録を収録している.

68. アースダムの地震時における動的性状に関する研究(継続)

教授 小長井 一男, 技術官 片桐 俊彦

 実在のアースダム(山王海ダム)で地震観測を継続している. これまでにこのダムで様々な記録が得られたが, 現在このダムの上にさらに積み上げる形で新しいロックフィルダムが建設されつつあり, 上流側斜面の旧堤体と新堤体の境界部に新たに埋設型の地震計を設置しこれまでの研究を活かした新たな観測を継続している.

69. 地盤の大変形の解析手法の開発(新規)

教授 小長井 一男, 大学院学生 Jorgen Johansson・Sadr Amir

 地盤の大変形解析のためのLPFDM(ラグランジアン・ポイント有限差分法)を掲示した. これは有限差分法のスキームでの時刻歴解析法で, 解析対象となる物質はラグランジアン・ポイントと呼ばれる点の集合で表現される. 1回のタイムステップで更新されたラグランジアン パラメータはバックグラウンドであるEuler座標上にマッピングされ, 次のステップの計算に移行する. したがって, 本手法はSulskyらが開発したラグランジアン・ポイント法(LPM)にFLACなどと共通する有限差分法のスキームを反映したもので, 両者の特徴を反映し, 大変形解析を, 少ない計算負荷で行うことを可能にする.

70. 鉄骨系架構により補強された鉄筋コンクリート造骨組のねじれ応答性状に関する研究(継続)

助教授 中埜 良昭, 助手 楠 浩一, 技術官 山内 成人

協力研究員 日野 泰道, 大学院学生 藤井 賢志, 上田 芳郎

 本研究では, 昨年度に引き続き鉄骨系架構により耐震補強された鉄筋コンクリート造骨組を対象として, 昨年度まで解析的検討を行ってきた耐力偏心とねじれ応答量の関係を検証するため, 振動台実験による検討を行っている. さらに, 耐震補強された実建物により近いケースとして, 変形能力の乏しい部材が混在している建物を想定した簡略な解析モデルを用いて解析的検討を行った. その結果, 耐力偏心とねじれ応答量の関係について昨年度までに得られた知見を応用することにより, 変形能力が乏しく耐力低下が生じる建物の応答結果も説明することができた. また, 従来の剛性偏心率および本研究で提案している耐力偏心率を用いて, 補強方法の違いによる補強建物の剛性偏心と耐力偏心について実例分析を行っている.

71. サブストラクチャ・オンライン地震応答実験の精度向上に関する研究(継続)

助教授 中埜 良昭, 助手 楠 浩一

客員研究員 李 元虎, 大学院学生 楊 元稙

 サブストラクチャ・オンライン地震応答実験(SOT)法とは構造物全体の応答性状を直接実験的に評価する事の困難な構造物に対して極めて有効な実験手法の一つである. 実験手法としては解析部分の部材においては, 適切な部材の履歴モデルを設定するのが通例であるが, この場合オンライン実験の最大のメリット, 即ち履歴特性をモデル化することなく, 動的挙動を直接的にシミュレートできるという利点を最大限には生かせない. 一方, もし解析部分で用いる履歴特性を実験で得られる特性に基づき推定することが可能となるならば, オンライン実験のメリットを最大限に生かすことができると考えられる. そこで本研究では, ニューラルネットワークによる履歴推定手法を組み込んだSOT法を新たに開発し, 2層のオンライン実験を通じて既存のSOT法による結果との精度を比較・検討している.

72. 韓国の鉄筋コンクリート造建物の耐震性能に関する研究

助教授 中埜 良昭, 客員研究員 李 元虎, 研究機関研究員 李 康碩

大学院研究生 崔 琥

 韓国における地震活動は日本におけるそれと比較しさほど活発ではないため, これまで地震防災に関する意識はあまり高くはなかったが, 近年韓国においても中・小規模の地震が頻発していること, また隣国の日本では1995年阪神・淡路大震災を, また台湾では1999年台湾集集地震を経験したこと, 等から同国においても既存建築物の耐震改修に対する重要性が強く認識されてきている. 本研究では韓国の鉄筋コンクリート造建物を対象とした耐震改修工法の開発に基礎資料を得ることを目的とし, 同国の代表的な公共建物14棟を対象に日本の耐震診断手法を適用して, その耐震性能の評価および被害危険度の推定を行うとともに, 日本の耐震診断手法を韓国の建物に適用するにあたって生じると考えられる問題点を検討した.

73. 1999年台湾集集地震で被災した鉄筋コンクリート造建物の耐震性能に関する研究

助教授 中埜良昭, 研究機関研究員 李 康碩

大学院学生 劉 鋒, 大学院研究生 劉 瑛

 1999年9月21日に台湾中部を襲った「921集集大地震」により数多くの建物が被災した鉄筋コンクリート造校舎について, 日本の耐震診断基準に基づいて耐震診断を行い, その耐震性能と被害程度の関係について考察した. その結果, 最も低い構造耐震指標(Is)でも0.6と比較的高い値となり, 実被害程度(軽微)を説明しうることを示した.

74. 空間骨組構造の順応型有限要素解析手法に関する研究(継続)

教授 都井 裕, 助手・特別研究員 李 廷権

 海洋構造物, 機械構造物, 土木・建築構造物などに見られる大規模・空間骨組構造の様々な崩壊問題に対し, 順応型(Adaptively)Shifted Integration法(ASI法と略称している)に基づく合理的かつ効率的な有限要素解析手法を開発し, 静的・動的崩壊を含む各種の非線形問題に応用している. 本年度は, LCLモデルによる動的クラッシュ解析アルゴリズムを破断挙動解析に拡張し, また要素サイズ依存性を除去した弾塑性損傷解析アルゴリズムをRC骨組解析に適用した.

75. 材料破壊の計算メソ力学に関する研究(継続)

教授 都井 裕, 大学院学生 姜 成洙

 計算メソ力学モデルによる材料破壊のメソスケール・シミュレーション手法の開発と各種固体材料の構成式挙動および損傷・破壊現象への応用に関する研究を進めている. 本年度は, メッシュレス法の一種であるNatural Element Methodによるメソ解析アルゴリズムをマイクロクラッキング挙動解析およびマクロ亀裂伝播解析に拡張し, 数値例によりその有用性を確認した.

76. 工学構造体の計算損傷力学に関する研究(継続)

教授 都井 裕, 博士研究員 李 帝明

 各種の工学構造体の損傷破壊挙動に対する連続体損傷力学モデルの構成と有限要素解析への応用に関する研究を行なっている. 本年度は, Lemaitreらによる弾塑性損傷力学モデルを, 車輪との転がり接触による鉄道レールの損傷挙動解析に適用し, シェリング現象解明のための基礎的検討を行なった. また, 鋼構造部材の溶融亜鉛めっき時の損傷挙動解析プログラムと三次元熱伝導解析プログラムの統合化を進めている.

77. 新素材構造物の計算力学に関する研究(継続)

教授 都井 裕, 大学院学生 李 宗賓

 複合材料を含むセラミックス系, 金属系, 高分子系の各種新素材から成る構造物の非線形問題を計算力学の立場から研究している. 本年度は, ニッケル・チタン系の形状記憶合金(SMA)に対するBrinsonの構成式モデルを引張・圧縮非対称の場合に拡張し, SMAはりの変形挙動の有限要素解析に適用した. さらに, 文献の実験結果との比較により, 解析法の有用性を検証した.

78. 材料破壊問題のマルチスケール解析に関する研究

教授 都井 裕, 助手・特別研究員 李 廷権, 博士研究員 李 帝明

 各種工学構造体の損傷破壊挙動の解明を目的として, 連続体(マクロスケール)から多結晶体(メソスケール)を経て分子・原子集合体(ミクロスケール)に至るマルチスケールのモデリングおよび解析の可能な統合的計算コードの開発を進めている. 本年度は, 連続体損傷力学に基づくマクロ有限要素解析コード, 計算不連続体力学手法によるメソ解析コード, 分子動力学法によるミクロ解析コード間のインターフェースを作成し, 試計算を行った.

79. 血管の数値シミュレーションによる脳動脈瘤破裂のメカニズムの解明

助教授 大島 まり, 教授 小林 敏雄, 大学院学生 鳥井 亮

 未破裂動脈瘤の破裂する危険性の予測は, EBM(Evidence Based Medicine)に基づく未破裂動脈瘤の治療ガイドラインを作成していくうえで重要な課題である. 脳動脈瘤の破裂は血管や瘤の形状によって変化する血流の流動パターンあるいは血管の壁面応力分布等の流体力学的な(Hemodyamics)因子が重要な役割を果たしていると考えられる. そこで, 患者個人の血管形状や血流状態を用いて, Hemodynamicsの影響を考慮した血流解析ソフトウェアの開発を行っている.

80. 選択的脳冷却療法のための脳内熱輸送の数値解析

助教授 大島 まり

 頭部や頸部を冷やすことにより, 患者の身体的負担を軽減し, かつ効果的な局部低体温療法の開発を目的としている. そこで, 脳内の伝熱モデルを構築し, 脳内温度の調整メカニズムの解明を目指している.

81. Micro PIVによる血流の可視化実験

助教授 大島 まり, 教授 小林 敏雄

助手 佐賀 徹雄, 技術官 瀬川 茂樹

 1mm程度の管径をもつ血管を模擬した複雑な管内流れを可視化し, 計測するためのMicro PIVシステムの開発に関する研究である. 今年度は, 脳血管の曲がりに着目した屈曲管内の流れについて実験を行い, 数値解析との比較・検討を行った.

82. 次世代交通管制システムの調査研究(継続)

教授 桑原 雅夫, 教授(千葉工業大)赤羽 弘和

助教授(高知工科大)吉井 稔雄, 民間等共同研究員 榊原 肇・増山 義人

 世界各国の信号制御方式は, 予め幾つかの制御パラメータを準備し, 時間または現在の交通状況に応じて最適値を選択する「パタン選択方式」から, 最新の交通状況を基にサイクル単位または一定時間間隔で目的関数が最適となる制御パラメータを計算する「自動生成方式」に移行しつつある. 我が国でも自動生成方式が採用される方向にあるが, パラメータ(サイクル長・スプリット・オフセット)の計算方法, 及び計算の元となる交通状況の計測方法には改善すべき点が残されている. 本研究では, 最近開発された空間計測型感知器や, 車両との双方向通信が可能な光感知器の情報を活用して, 交通状況をより精度良く計測, 更には予測する方法, ならびにこれらの計測値から交差点の遅れ時間を最小化するパラメータの計算方法について研究を行っている.

83. 交通流シミュレータに用いるパラメータの自動調整方法(継続)

教授 桑原 雅夫, 教授(千葉工業大)赤羽 弘和, 助教授(高知工科大)吉井 稔雄

 交通環境改善施策による効果を事前に評価するツールのひとつとして交通流シミュレータが挙げられる. シミュレータには交通容量に代表されるネットワークパラメータが必要だが, 渋滞状況などの交通状況を忠実に再現するためにはパラメータの微妙なチューニング作業が必要となる. チューニング作業では多くのパラメータを人手によって同時に調整しなければならないため, シミュレータ利用者にとって大きな負担となっている. 本研究は, ボトルネック容量と旅行時間の関係に着目することにより, パラメータのチューニング作業がシステマティックかつ自動的に進む効率的なアルゴリズムの構築を目的とするものである.

84. 通勤時における旅行者の出発時刻選択行動の理論的解析(継続)

教授 桑原 雅夫, 大学院学生 井料 隆雅

 通勤時のような需要集中時において, 旅行者がどのように経路や出発時刻を選択し, どのような形態の混雑が発生するかを予測する事は, TDM(交通需要管理)施策を実施する際の理論的基礎として重要である. この研究では, 主に個人間に費用関数が異なり, さらに居住地が空間的に分布している状況を想定し, 利用者均衡時にどのような混雑が発生するか数学的モデルを用いて分析している.

85. 動的なシステム最適状態を達成する制御手法に関する研究(継続)

助教授 桑原 雅夫, 助教授(高知工科大)吉井 稔雄, 大学院学生 熊谷 香太郎

 本研究では, 慢性的な渋滞問題を抱える都市内の道路ネットワークを対象として, ネットワーク全体を有効活用する, すなわち, 動的システム最適(DSO: Dynamic System Optimal)状態を達成するための制御手法について, 提案を行う. 具体的には, 簡単なネットワークを用いてDSOが達成された状況について考察するとともに, 都市高速道路を含む実ネットワークをDSO状態に近づけるための, ランプ流入制御の戦略や施策について提案するものである.

86. 信号制御最適化を支援する過飽和交通流シミュレーションモデルの開発(継続)

教授 桑原 雅夫, 助教授(高知工科大)吉井 稔雄

民間等共同研究員 堀口 良太・榊原 肇・増山 義人, 大学院学生 劉 鴻潮

 ビーコンなどを介した路車間の双方向通信技術や交通感知器の充実により, 交通状況をリアルタイムに精度良く観測することが可能になりつつある. そこで, 観測される交通状況に, リアルタイムに反応して, ネットワーク規模で最適な信号制御を行うことが期待されている. そのためには, ある信号パラメータをセットした場合に予想される交通状況を予測する必要がある. 本研究では, 過飽和交通流の道路ネットワークを対象とし, 信号制御パラメータと交通量を入力として, 各車両の旅行時間や渋滞長を出力する交通流シミュレーションモデルの開発を行っている.

87. 都市街路網の交通流シミュレータの開発(継続)

教授 桑原 雅夫, 助教授(高知工科大)吉井 稔雄

民間等共同研究員 堀口 良太, 助手 小根山 裕之, 技術官 西川 功

 本研究では, SOUND(a Simulation model On Urban Networks with Dynamic route choice)とAVENUE(an Advanced & Visual Evaluator for road Networks in Urban arEas)という2種類の交通シミュレーションモデルを開発している. ともに, 経路の選択行動を内生化しているモデルで, 新たに交通規制・制御などの政策が実施された場合の, 利用者の経路の変化を表現できる構造を持つ. また, 利用者層を交通情報(旅行時間情報, 渋滞情報など)に反応して経路を選択するかどうかによって, いくつかのグループに分けてシミュレーションを実行することができる. SOUNDは, リンク数・ノード数が数百から数千の規模のネットワークに, AVENUEは, リンク数・ノード数が数十から数百の規模のネットワークに適用するモデルである. ともに, 数多くの適用事例を通して, その実用性が検証されている.

88. 都市内高速道路における合流部交通容量の決定要因に関する研究(継続)

教授 桑原 雅夫, 助教授(高知工科大)吉井 稔雄, 大学院学生 Majid SARVI

 本研究は, 首都高速道路において合流部を原因とする渋滞が起こっている地点について, その形状による交通容量の違い(Macro的アプローチ), 合流部における各車両の挙動(Micro的アプローチ)について解析を行う. 本年度は数カ所の合流部において交通量・速度データ, 線形・縦断勾配図, ビデオ撮影等による解析を行い実現象を明らかにする.

89. 交通流変化を考慮した自動車排出ガス量評価手法の研究(継続)

教授 桑原 雅夫, 助教授(東京都立大)大口 敬, 助手 小根山 裕之

 本研究では, 道路交通による大気環境への影響評価を行うために, 道路交通流の渋滞状況や交通量, 交通制御(交通信号)などの影響を適切に考慮したNOx, CO2などの自動車排出ガス量の定量的な評価手法を確立する. 車両の走行挙動特性と排出ガス量の関係及び道路交通流の状態量と個々の車両の走行挙動特性との関係を分析し, 排出ガス量を推定するモデルを構築するとともに, 交通シミュレーションモデルへの適用により, 交通流改善政策による排出ガス削減効果を評価する.

90. 砂礫の弾性的変形・強度特性の研究(継続)

助教授 古関 潤一, 研究担当 龍岡 文夫, 助手 佐藤 剛司・早野 公敏

大学院学生 Le Quang Anh Dan

 砂や砂礫のような粗粒材料の弾性波速度について検討を行った. 豊浦砂ではP波速度の測定値が微小振幅の繰返し載荷を行って求めた弾性的なヤング率から換算される値とほぼ整合することを確認した. 一方, ポルトガルレキでは, 最大粒径が12.5 mmの場合には両者の差は小さかったが, 最大粒径が31.5 mmの場合には前者が後者の約1.6倍となった. これは, 最大粒径の大きい砂礫地盤において原位置での弾性波速度よりヤング率を推定すると, 実際よりも過大評価するおそれがあることを意味している.

91. 砂礫地盤と堆積軟岩地盤上の基礎の沈下と支持力に関する研究(継続)

助教授 古関 潤一, 研究担当 龍岡 文夫, 助手 早野 公敏

大学院学生 Kandasamyiyer Balakrishnaiyer

 基礎直下の地盤は多様な初期応力条件下にあり, さらに地震時の応力状態の変化も複雑である. そこで, 新たに定義した応力・ひずみパラメータを用いて, 多様な応力経路に適用できる一般性の高い応力ひずみ関係のモデル化を提案した. さらに, Masing則とはやや異なる履歴法則を適用することにより予測した繰返し載荷時の挙動が, 多様な応力経路下で実施した密な砂礫の繰返し三軸試験結果とよく整合することを示した.

92. 中空ねじり三軸試験による砂質土のせん断挙動の研究(新規)

助教授 古関 潤一, 助手 佐藤 剛司・早野 公敏, 大学院学生 Nguyen Nam Hong

 両端を供試体とピン結合させる局所変位計を新たに製作し, これを三角形状に組み合わせることによって, 中型の中空円筒供試体にねじり力と軸力を載荷した場合の局所ひずみを計測できるシステムを開発した. これを用いて基礎的な試験を行い, 従来の外部変位計を用いた測定結果がベディングエラーと端面拘束の影響を受けていることを明らかにした.

93. 自然堆積軟岩及びセメント改良土の変形・強度特性の研究(継続)

助教授 古関 潤一, 研究担当 龍岡 文夫

助手 佐藤 剛司・早野 公敏, 大学院学生 印東 宏紀

 泥質および砂質の2種類の堆積軟岩を用いて非排水繰返し三軸試験を実施した. その結果に基づいて, ひずみの弾性成分と処女載荷による塑性成分, および繰返し載荷により累積する塑性成分を別々に評価することにより, 地震後の残留ひずみ量を予測できる手法を提案した. また, セメント改良した砂質土の一軸・三軸引張試験装置を新たに製作し, 直接引張試験を行った. その結果, 割裂試験よりも大きな引張強度が得られ, 合理的な評価ができることを示した.

94. 擁壁・土構造物の地震時安定性に関する研究(継続)

助教授 古関 潤一, 研究担当 龍岡 文夫, 助手 佐藤 剛司

 重力式擁壁模型の不規則波水平加振結果の整理を行い, 擁壁背面に作用する水平土圧合力の特性について検討した. その結果, すべり土塊の応答加速度に関する補正を行った土圧合力は, 裏込め地盤中にすべり面が発生すると一旦急増し, その後は水平震度の増加とともにゆるやかに増加した. このような傾向は, ひずみの局所化とひずみ軟化を考慮した新しい地震時主働土圧算定手法による計算結果と対応することを示した.

95. 砂質土の年代効果と液状化特性に関する研究(継続)

助教授 古関 潤一, 助手 佐藤 剛司・早野 公敏

 江戸川河川敷で採取した凍結サンプリング試料の非排水繰返し三軸試験を実施した. これと同じ材料から再構成した試料の凍結・融解試験を, 新たに製作した小型恒温室と冷却装置を用いて行い, 凍結時の体積膨張の影響について検討した. また, 豊浦砂の液状化強度特性に及ぼす拘束圧の影響を調べるために, 異方圧密後に軸変位を拘束した非排水繰返しねじりせん断試験を実施し, 拘束圧が小さくなるほど液状化強度が大きくなることを示した.

96. 火災煙流動数値解析手法の開発(継続)

教授 加藤 信介・村上 周三, 助手 白石 靖幸

研究員 山田 常圭, 研究機関研究員 KIM Sangjin

 建築物, 地下街, 船舶等における火災時の煙流動の数値解析手法を開発している. 本年度も昨年に引き続き, 都市気候モデルを用いて, 阪神・淡路大震災発生時の阪神地方の気象条件を用いて, 神戸市のある領域が大火に覆われた場合の広域にわたる熱気流予測を評価した.

97. 環境感性工学の開発(継続)

教授 加藤 信介・村上 周三, 助手 白石 靖幸, 大学院学生 林 立也・梁 禎訓

 環境感性工学開発の第一段階として, 空調による室内温熱環境における適用を検討する. 室内の温熱環境シミュレーションシステムに, 環境からの刺激に対して, 環境に対し能動的に反応する人間要素を組み込み, 環境制御のため投入したエネルギー量と人間の環境に対する不満足度を最小化するよう, 環境−人間系システムを最適化する. この検討により, 省エネルギーかつ, 人間の感性に沿った空調システムを発見, 選択することが可能となる. 本年度も昨年に引き続き, サーマルマネキン(人体の放射性状をシミュレートするマネキン)を用いて様々な空間の温熱環境を計測,評価し, 環境−人間系システムを検討した.

98. 室内の換気・空調効率に関する研究(継続)

教授 加藤 信介・村上 周三, 研究員 吉野 博, 研究機関研究員 金 泰延

協力研究員 伊藤 一秀, 大学院学生 太田 直希

 室内の空気温熱環境の形成に預かっている各種要因とその寄与(感度)を放射および室内気流シミュレーションにより解析する. これにより一つの空調吹出口や排気口, また温熱源などが, どのように室内の気流・温度分布の形成に関わっているか, またこれらの要素が多少変化した際,室内の気流・温度分布がどのように変化するかを解析する. これらの解析結果は, 室内の温熱空気環境の設計や制御に用いられる. 本年度は暖房室内で開放型灯油ストーブを燃焼させた際の室内空気質の濃度分布性状について検討した.

99. 数値サーマルマネキンの開発(継続)

教授 加藤 信介・村上 周三, 助手 白石 靖幸, 研究員 田辺 新一

大学院学生 林 立也・朱 晟偉・梁 禎訓

 本研究は, サーマルマネキン等を用いた実験に基づいて行われている人体とその周辺の環境場との熱輸送解析を, 対流放射連成シミュレーション, さらには湿気輸送シミュレーションとの連成により, 数値的に精度良くシミュレートすることを目的とする. 本年度は室内の様々な位置の汚染源の人体呼吸空気汚染への寄与を評価する指標を新たに定義し, CFDによる解析を行った.

100. 室内温熱環境と空調システムに関する研究(継続)

教授 加藤 信介・村上 周三, 研究機関研究員 金 泰延

大学院学生 張 賢在・宋 斗三・中野 亮

 良好な室内環境を得るための最適な空調システムに関して, 模型実験・数値シミュレーションにより研究している. 中でも放射パネルを用いた冷房方式は, 全空気方式に比べ冷風吹出しによるドラフトリスクが軽減される等の有利な点を持つ方式である. 本年度も前年度に引き続き, オフィス空間を対象として, 冷房しながら自然換気を行った場合(自然換気併用ハイブリッド空調)の有効性と理想的な空調拡散のあり方についてCFDにより解析を行っている.

101. 建物周辺の乱流構造に関する風洞模型実験と数値シミュレーションによる解析(継続)

教授 加藤 信介・村上 周三, 技術専門職員 高橋 岳生

協力研究員 飯塚 悟, 大学院学生 李 春絃

 建物周辺で発生する強風や乱れの構造に関して, 風洞実験や数値シミュレーションにより検討している. 建物のようなbluff body周りの複雑な流れ場を予測する場合, 標準k-εモデルは種々の問題を有する. 特に, レイノルズ応力等の渦粘性近似は流れ場によりしばしば大きな予測誤差の原因となる. 本年度は, 境界層流中に置かれた高層建物モデル周辺気流の解析にLK型をはじめ, 各種のk-εモデルや応力方程式モデルによる解析を行い, その予測精度を比較, 検討した.

102. 室内気流の乱流シミュレーションとレーザー可視化, 画像処理計測手法の開発研究(継続)

教授 加藤 信介・村上 周三, 助手 白石 靖幸

協力研究員 伊藤 一秀, 大学院学生 太田 直希

 室内気流を対象とした乱流シミュレーション・可視化計測による流れ場, 拡散場の予測, 解析, 制御のための手法の開発を行う. 特に, レーザー光を用いた流れの可視化による定性的な把握とともに, 定量的な計測を行うシステムの開発研究に重点を置く. 模型実験での可視化により得られた流れ性状を数値化してシミュレーション結果と比較し, その精度向上に務めた.

103. 流体数値シミュレーションにおける超並列計算システム(継続)

教授 加藤 信介・村上 周三, 助手 白石 靖幸

 超並列計算機による流体シミュレーションの検討課題を明らかにし, その基礎的検討を行う. 本年度も昨年に引き続き並列計算を実行する基礎コードとして, コロケーション格子を採用した3次元一般曲線座標系コードを基に, 並列処理および大規模計算に欠かすことのできないマルチブロックシステムを導入してChannel Flowおよび室内の流れ場解析を行った.

104. 室内化学物質空気汚染の解明と健康居住空間の開発(継続)

教授 加藤 信介・村上 周三, 研究員 伊香賀 俊治・田辺 新一・近藤 靖史

協力研究員 伊藤 一秀, 大学院学生 朱 清宇・太田 直希

 建築物・住宅内における化学物質空気汚染に関する問題を解明し, 健康で衛生的な居住環境を整備する. 研究対象物質としてホルムアルデヒド, VOC, 有機リン系農薬及び可塑材に着目する. これら化学物質の室内空間への放散及びその活性化反応を含めた汚染のメカニズム, 予測方法, 最適設計・対策方法を解明すること, その情報データベースの構築を目的とする. 本年度は建築生産の現場で頻繁に使用されるペイント類に着目し, ペイントからの化学物質放散性状について検討した. また, 室内居住域の化学物質濃度を健康で衛生的な範囲内に留めるための多岐にわたる建材使用の条件, 室内換気方法, 除去分解方法を具体的に提案する.

105. 高密度居住区モデルの開発研究(継続)

教授 加藤 信介・村上 周三, 研究員 伊香賀 俊治

助手 白石 靖幸, 大学院学生 平野 智子

 人口爆発を止めることは困難であり, 人類は好むと好まざるに拘らず, 都市において高密度居住の道を選ばざるを得ない. 高密度居住を積極的に利用して, 効率的で, 高いサステナビリティ性を備えた, そして環境負荷の少ない居住区モデルを開発する. 本研究では, 都市負荷の最小化を目指して高密度居住区を計画し, その環境負荷削減効果を明らかにするとともに食料生産, ヒーリング等のための耕地地区, 緑地地区と高密度居住地内のバランスのとれた配置計画方法を提案する. 本年度は急激に高密度化が進行し, かつ空調がそれほど普及していない都市の典型例として, ベトナムのハノイにおいて環境実測を行い, 高温多湿気候に適応するための住宅の工夫などについて検討した.

106. 風洞実験・室内気流実験で用いる風速並びに風圧変動測定方法の開発に関する研究(継続)

教授 加藤 信介・村上 周三, 研究員 小林 信行・近藤 靖史

技術専門職員 高橋 岳生, 大学院学生 大津 朋博

 建物周辺気流に関する風洞実験や室内気流実験で用いる平均風速, 風速変動の3次元計測が可能な風速測定器の開発・実用化および変動風圧の測定法等の開発に関し, 研究を進めている. 本年度も前年度に引き続き, PIV流速計により等温室内気流, および非等温室内気流の乱流統計量を測定し, その特性を解析した.

107. 風力発電の立地選択のためのCFDに基づく風況予測手法の開発と検証

教授 加藤 信介・村上 周三, 研究員 持田 灯

技術専門職員 高橋 岳生, 大学院学生 大津 朋博・Mohamed Fathy Yassin

 風力発電サイトの最適な立地地点を選定するために, 広範な観測を実施することは困難である. そこで, 数値モデルによる風況予測を行わざるを得ないが, 日本の地形は起伏に富んでおり, 既存の線形風況予測モデルの適用限界を超えている. 本研究の目的は, 傾斜勾配が5%を越える地域にも利用でき, 風車立地候補地点近傍の正確な予測を行える局所的風況予測モデルを開発することである. 本年度は, 二次元丘陵周囲の気流性状について風洞模型実験並びにCFDによる検討を行った.

108. CFD解析に基づく室内温熱環境の自動最適設計手法の開発

教授 加藤 信介, 研究機関研究員 金 泰延

 本研究は, 室内環境CFD(Computational Fluid Dynamics)解析シミュレーションに基づく室内温熱・空気環境の自動最適設計手法を開発することを目的とする. これは室内の環境性状を設計目標値に最大限近づけさせるための室内の物理的な境界条件を求める手法, すなわち逆問題解析による環境の自動最適化設計手法の基礎的な検討を行うものである.

109. シェルと立体構造物に関する研究

助教授 川口 健一, 助手 宮崎 明美, 技術官 大矢 俊治

大学院学生 李 炯勲・加藤 求

 シェル構造及び立体空間構造を対象として継続的に研究を行っている. 今年度は(1)大スパン構造物の限界スパン長に関する調査(2)プレキャストプレストレスト型シェルモデルに対する構造計算及び実大モデルの設計(3)捩れを利用した木格子曲面構造の解析と構造設計を行った.

110. 大空間構造物の波動伝播特性に関する研究

助教授 川口 健一, 助手 宮崎 明美, 大学院学生 劉 鵬

 大スパン構造物は広大な広がりを持つ構造であり, そのスパンが大きくなるほど, 地震や風, 飛来物などによる衝撃荷重などに対する挙動として, 波動伝播特性が無視できなくなってくる. 本研究では, 実験的手法と数値解析的手法の両面から, 大空間構造物の波動伝播特性に関する研究を行っている. 本年は, 平板型ラチス構造物およびその部分構造モデルによる波動伝播実験を実施した.

111. 張力膜に発生するしわの問題に関する研究

助教授 川口 健一, 助手 宮崎 明美, 大学院学生 呂 品埼

 圧縮力を伝達しないケーブルや膜材を材料とする膜構造やケーブル構造は, 圧縮応力下で, しわを発生する. 張力膜に発生するしわは軽量で美観的にも優れた膜建築構造物を構造的にも視覚的にも台無しにしてしまう場合が多い. しかし, しわ, 特に一方向張力を受ける矩形膜に発生するしわの発生メカニズムは未だによく分かっていない. 本研究では, 建築膜構造に用いられるコーティングされた織布を材料として, 張力を受ける膜に発生するメカニズムを実験手法及び解析手法を用いて調査する. 本年度は単軸引張り力を受ける張力膜材に対し, (1)織布およびコーティングされた張力膜のしわ発生実験, (2)張力場理論およびリンクモデルによるしわ解析, 等を実施した.

112. 軽量大空間構造システムの開発

助教授 川口 健一, 大学院学生 呂 振宇

 無柱大空間建築構造は現在約200 m級のものが技術的に可能であり, 300 m級のものも設計されるようになりつつある. しかし, さらに大きな大空間建築を目指すには自重の軽量化以外にも技術的な飛躍が必要になってくると考えられる. 本研究では, 大空間建築の新たな付加価値も含め, 従来の構造システムの検証, 新しい大空間構造システムの開発を継続的に行っている. 本年度は, 軽量張力型空間構造である, テンセグリティ構造の解析手法の開発, 実大モデルの構造解析, 構造設計を行なった.

113. スマート材料の空間構造物への応用に関する研究

助教授 川口 健一, 大学院学生 小林 充

 スマート材料とは種々の機能を持った材料の総称である. 近年, 種々のスマート材料が提案されており, これらを建築構造物へ応用する試みが各地でなされている. 本研究では, スマート材料の大空間構造システムへの応用に関する調査を行い, 実際にその新しい可能性を研究する. 本年度は昨年度より継続している, PVDF材料(圧電ポリマー)を膜材の歪センサーとして利用する方法について, 実験的手法により調査した.

114. 空間構造の形態形成の数理解析

助教授 川口 健一, 大学院学生 金子 雅彦, 研究生 Terrence S. Wen

 空間構造において, 形態が形成される, あるいは, 決定される過程(形態形成過程)を数理解析の立場から調査している. 本年度は, 従来数値不安定性により困難であった空気膜構造(インフレータブル構造)の解析手法にブレークスルーを作ることを目指し, 分子数を制御した空気膜構造のインフレート解析手法の開発を行なった.

115. 大スパン構造物の耐震性に関する研究

助教授 川口 健一, 大学院学生 本田 博之

 多数の人命を収容する大スパン建築構造物の設計時における耐震性の検討は, 個別のケースとして評定が行われており, 必ずしも一般化した設計思想は無い. 本研究では, 建築基準法の構造規定の歴史を調査し, 大スパン構造物の耐震設計法の変遷を整理, 研究している.

116. 開閉式屋根構造システムに関する研究

助教授 川口 健一, 大学院学生 小澤 雄樹

 開閉式屋根構造の発想は古来よりあるが, 実際の応用技術は余り洗練されていない. 本研究では, 従来の剛な屋根構造に切断を設ける方法から離れ, 構造的な合理性を保ったまま開閉の行える屋根構造システム開発のための基礎的な研究を行っている. 本年度は捩りパターンを利用した開閉式膜構造のモデルを作成し, 膜の大変位を考慮した幾何学的非線形解析及びその考察を行った.

117. 構造物の畳み込み・展開に関する研究

助教授 川口 健一

 構造物を平面や点に畳み込む, あるいは, 畳み込まれた構造物を展開して広がりのある構造物を築くという手法は建物の合理的な建設解体工法, 展開・可変型構造物への適用等様々な応用が考えられる. 本研究では, (1)骨組み構造の畳み込み経路における分岐経路の考察, (2)骨組み構造物の最適畳み込み経路のモデル実験と解析との比較, (3)膜構造の畳み込み解析法の基礎的研究, (4)展開型接合部の開発等を実施している. 本年度は特に, (1)アルミニウムによるラチス型単層展開型ドームモデルの試作及びその解析等を行った.

118. 建築・都市空間の特性分析(継続)

教授 藤井 明(代表者), 助教授 曲渕 英邦, 客員教授 伊東 豊雄

助手 林 信昭・槻橋 修, 大学院学生 王 笑夢・若杉 綾子・浅野 元樹

 本研究は建築・都市空間を構成する形態要素とその配列パターンを分析指標として空間特性を記述することを目的としている. 本年度は様々な文化や気候風土を条件として成立した建築・都市空間の形態的特性を横断的に把握することを目的とした大規模な空間データベースの開発・構築を進めた. 具体的には, 本研究室が過去25年間にわたり行ってきた海外の都市・集落の調査によって蓄積した700を超える集落の実測図, 写真, ビデオによる画像データのデジタル化を行い, コンピュータ上での情報管理, 閲覧が行えるシステムの開発を行った. またそれらをもとにした, 集落に関する統合的なデータベースをインターネットを介して世界規模で共有・利用できるシステムを構築し, その試験公開を行った.

119. 空間の構成原理に関する実証的研究(継続)

教授 藤井 明(代表者), 助教授 曲渕 英邦, 助手 槻橋 修

技術官 小駒 幸江, 大学院学生 伊原 朋行・Jin Taira・狩野 朋子

 伝統的な集落や住居に見出される空間の構成原理は, 今日の居住計画を再考する上で重要な示唆に富んでいる. 本研究室では過去25年以上にわたって世界の伝統的集落の調査を継続しているが,本年度は昨年に引き続き, コンパウンド(compound)と呼ばれる集合住居が分布する北カメルーン地方およびマリで行われた集落調査の調査結果をも とに, コンパウンドにおける集落空間の組成原理について数理的な解析を試みた. 具体的には, 個人の占有領域が複雑に構成されたコンパウンドの住居内において, 住棟や穀倉をはじめとする構築物の配置と占有領域との相関関係に着目し, ボロノイ分割に障壁要素を算入する方法を開発し, 住居平面図上への適用を試みた.

120. 地域分析の手法に関する研究(継続)

教授 藤井 明(代表者), 助教授 曲渕 英邦, 助手・特別研究員 郷田 桃代

助手 槻橋 修, 大学院学生 山下 雅絵・Erez Golani・高山 勇成

 地域空間の構造を的確に把握することは, 地域性を積極的に組み入れてゆくという計画学的視点からも非常に重要である. 本年度はシリア・ダマスクス旧市街に見られる伝統的なイスラム都市の空間に関する定量的な分析を行った. ダマスクス旧市街にはイスラム都市に固有の複雑な街路空間が迷路状に張り巡らされている. 街路ネットワークの接続特性からの街路アクティビティの評価と, 街路空間を物質的に構成している住居群の分布形状から見た空間特性の評価とを総合し, イスラム都市における最も重要な要素である街路空間の構造を明らかにした.

121. 計算幾何学に関する研究(継続)

教授 藤井 明(代表者), 助教授 曲渕 英邦, 助手・特別研究員 大河内 学

助手 槻橋 修, 大学院学生 三好 隆之・朴 正民・山村 翼

 本研究は都市・地域解析への適用を目的とした計算機科学的な手法の開発を行うもので, 本年度は, 建築空間から得られる複数の断面図の系列を利用した空間特性の記述方法に関する研究を行った. 複雑な建築空間の断面構成を特定のパスの方向に対して距離情報を残したまま記述する為のレーブグラフを用いた記述方法を開発した. また情報理論におけるエントロピーの概念を用いて断面系列の持つ情報量を計測する手法の提案を行った.これらの手法に関して, 海外調査で得られた特徴的な住居形式に適用し, 建築空間の幾何学的特性に関する考察を行った.

122. 空間の生成プロセスに関する研究(継続)

助教授 曲渕英邦(代表者), 教授 藤井 明, 助手・特別研究員 郷田 桃代

助手 今井 公太郎, 大学院学生 谷田 明義・張 希実子・木村 達治

 建築・都市空間を構築するための設計プロセスの研究は, その基礎論としての空間の生成プロセスを把握することが肝要である. 本年度は, シリア・ダマスクスにおける都市空間の形成プロセスについて分析を行った. 伝統的なイスラム都市であるダマスクスの旧市街地は, 建物周囲に空地を残さない「ゼロロット」の中庭型住居が集積したものである. 現地調査と地図資料に基づいて, この地域における全住居の幾何学的情報をデータベース化し, 個々の敷地形状や中庭形状についての統計的な分析を行うとともに, 中庭型住居の様々なタイプが地域の中でどのように配置されているかを把握し, 都市空間の形成プロセスの推定を試みた.

123. 文化としての空間モデルの計画的研究(継続)

助教授 曲渕 英邦(代表者), 教授 藤井 明, 客員教授 伊東 豊雄

助手・特別研究員 郷田 桃代, 助手 今井 公太郎

大学院学生 金塚 英雄・鍋島 憲司・松岡 聡・Adriana Shima Iwamizu

 建築・都市空間は時代精神や場所性に根ざす文化の表現であり, 21世紀に向けて新たな空間モデルを提案することは, 今日の重要な計画的課題であるといえる. 昨年度は, 「高温多湿気候に適応する環境負荷低減型高密度居住区モデルの開発」という長期的な課題に対し, 初期モデルとして「ポーラス型高密度居住区モデル」を提案したが, これに引き続き, 今年度はベトナム・ハノイ36通り地区におけるポーラス型実験住宅の計画を行った. 「ハノイ実験住宅」は, 高温多湿気候への適応と環境負荷の低減という必須条件に加え, 伝統的な街並みの保存という歴史的コンテクストから生じる様々な要請に応じるものでなければならない. 異なる2つの敷地を具体的に設定し, 既存の管状住居群に調和した新しい住居を計画したが, そこには建物内部へのヴォイドの確保によって高密度で快適な居住空間が実現されている.

124. 都市空間構成の形態学的研究(継続)

助教授 曲渕 英邦(代表者), 教授 藤井 明, 助手・特別研究員 大河内 学

助手 今井 公太郎, 大学院学生 伊藤 香織・松田 達・秋永 寛

 本研究は都市空間を構成する形態的要素に着目し, その空間的特性を記述する手法の開発を行うものである. 本年度は, 都市におけるテナントの持続と交替から, 都市空間のダイナミズムを記述する方法論について検討した. 東京・山手線内に該当する全テナントビルを対象として, 広範な地域のテナント空間情報データベースを整備し, これを用いてテナントの持続と交替の空間的な分析を行った. データベースは, 過去5年間のテナントの変化が記載されている既存の電子地図データを援用して作成し, テナントの持続と交替の情報に基づいた領域分割の手法を提案して, 大域的および局所的な変化の動向を明らかにした.

125. 都市空間の計画学的研究(継続)

助教授 曲渕 英邦(代表者)・教授 藤井 明, 助手・特別研究員 郷田 桃代・大河内 学

大学院学生 樫原 徹・鳥居 斎・宮崎 慎也

 本研究は都市空間の形成に関与すると考えられる「物理的な環境」と「活動の主体としての人間」について, 計画学的な立場から, 個別の分析を行うと同時に両者の統合を目指すものである. 本年度は, 歩行者が比較的低密度な空間に対象を限定して, 歩行者流動の特性を定量的に分析した. 具体的には, 対象空間を上方より撮影したビデオ情報から, 時間をパラメーターとした歩行者の位置情報を作成し, これを3次元の時空間上に表現して, 歩行者流動を可視化した. また, 可視化された情報から歩行者流動の特性を考察し, 定量的な記述を可能とする指標を考案した.

126. 音響計測法に関する研究(継続)

教授 橘 秀樹, 講師 坂本 慎一, 研究員 山崎 芳男・矢野 博夫

大学院学生 横田 考俊

 建築音響・騒音制御の分野における計測法の開発および精度向上を目的とした研究として, 各種音響測定の基本となる基準音源の開発, 音響インテンシティ計測法による音響パワーレベルおよび音響透過損失の測定方法, 衝撃性音源の音響エネルギーの定量化および測定方法などに関する研究を継続的に行っている. 本年度は, インテンシティ法による音響透過損失測定および各種音源の音響パワーレベル測定, 並びに遮音性能測定におけるS/N比の改善方法などについて検討を行った.

127. 室内音響に関する研究(継続)

教授 橘 秀樹, 助手 上野 佳奈子, 研究員 山崎 芳男・矢野 博夫

協力研究員 佐藤 史明・園田 有児, 大学院学生 横田 考俊・横山 栄・伊藤 清之・青木 亜美

 室内音響に関する研究として, 今年度はホール・ステージ上の音響評価量に関する検討, ステージ上の物理特性の測定とそれに基づく音場シミュレーション手法の開発, 演奏者を対象とした主観評価実験を行った. また, ホール客席部における各種音響指標の測定方法に関する検討, ホールの壁面形状および不連続音響反射板の配列と音場拡散効果の関係に関する数値解析, 模型実験および聴感評価実験による検討などを行った. 実際のホールの設計にも参加し, これらの研究成果を実際に適用した.

128. 交通騒音の予測・評価に関する研究(継続)

教授 橘 秀樹, 講師 坂本 慎一

研究員 矢野 博夫・吉久 光一・押野 康夫・田近 輝俊, 大学院学生 于 千

 道路交通騒音に重点を置いて, 騒音の伝搬予測法並びに対策法に関する研究を進めている. 今年度は, 等価騒音レベルに基づくエネルギーベースの道路騒音予測計算法の改良を目的として, 各種断面形状をもつ防音塀の騒音低減効果, 掘割・半地下構造からの騒音放射特性に関し, 数値解析および模型実験による検討を行った. また, 沿道住居の高遮音化に関する技術開発を目的として, 建物ファサードによる高遮音化技術に関する模型実験による検討を行った(科学研究費).

129. 商業施設から発生する騒音の予測方法に関する研究(継続)

教授 橘 秀樹, 講師 坂本 慎一, 研究員 田近 輝俊

大学院学生 石橋 睦美

 商業施設が住居地域に立地する場合, しばしば騒音問題が発生しており, 昨年6月に施行された「大規模小売店舗立地法」でも建設時の騒音アセスメントを義務付けている. そこで, 商業施設から発生する騒音問題について, その予測・評価・対策方法に関する研究を進めている. 本年度は, 昨年度の既存店舗における実測調査結果を踏まえ, 周辺環境に大きな影響を与えると考えられる衝撃性騒音の対策方法およびその効果について実験的検討を行った. また, 商業施設内を走行する自動車から発生する騒音の予測方法に関しても検討を行った.

130. 室内騒音の評価に関する研究

教授 橘 秀樹, 助手 上野 佳奈子, 研究員 矢野 博夫

協力研究員 佐藤 史明, 大学院学生 横山 栄・青木 亜美

 建築物内外における騒音が室内居住者に及ぼす影響に関して, 実験室に構築したシミュレーション音場を用いた聴感評価実験により検討を行っている. 本年度は, 室内における空調設備騒音と外部から室内に透過した道路交通騒音を対象として, それらの騒音が居住者に与える心理的影響を検討した.

131. 建設産業のサービス・プロバイダー化に関する研究

助教授 野城 智也

 一国のマテリアルフローの約半分を建設産業が担っているにもかかわらず, 産業の資源利用効率が改善されないのは, 建設産業がモノ(施設)を提供し対価を得るという様態をとってきたことによる. 本研究では, 建設産業が, 建物・施設がもつ機能・性能, すなわち提供するサービスに対価を得るという様態を, サービス・プロバイダーと呼び, 建設産業のサービス・プロバイダー化の具体的なシナリオ及びその効果を評価することを目的にする.

132. プロジェクトにおけるテクノロジー・フュージョンに関する研究

助教授 野城 智也

 建設プロジェクトでは, 種々の主体が, 技術的詳細を決定(=設計)に様々な寄与をしている. その寄与のあり方は, プロジェクトの開始時点では必ずしも明確でなく, かつ, 契約上で定義された役割とも異なるものである. 主体相互間の情報フロー及び意志決定のあり方も非定型的である. にもかかわらず, この技術的融合(テクノロジー・フュージョン)のあり方が, 最終産品(建物)の性能・機能・品質を左右する. 本研究はプロジェクトにおけるテクノロジー・フュージョンにかかわるベストプラクティスを生む出す諸手法を開発することを目的にする.

133. プロジェクトを基盤とする企業体の環境パフォーマンスに関する研究

助教授 野城 智也

 プロジェクトは種々の主体が連携しながらある目的達成のため行う有期の活動であり, そのスコープは多様である. 従って, 企業など組織が継続的に存在していることを前提とした, 環境マネジメントシステムをそのまま適用することはできない. 本研究の第一の目的は, プロジェクト・ベースでの環境マネジメントについて, ケーススタディを通じて, そのベストプラクティスの要件を探ることにある. 目的の第二には, プロジェクトを基盤とする企業体(建設企業, デベロッパー, プラント企業など)の環境パフォーマンスの計測方法にかかわる課題を明らかにすることである.

134. 経時的カスタマイゼーションとしてのライフサイクルマネジメント手法の開発

助教授 野城 智也

 建設施設(建物及び土木施設)を, プロダクトとしてみてみると, その寿命期間(=存続期間)は, 工業製品一般に比べて長い. 従って, 施設用途によって差異はあるものの, そのライフサイクルのなかで, 施設への要求条件の変化や, 施設自身の経年変化に対応して, 何らかの改変を加えていく必要が生じてくる. 本研究は, こういった経時的な改変行為を, 「経時的カスタマイゼーション」と呼び, そのマネジメント手法を開発することを目的にしている. 具体的には, 以下の5つの課題に分かれる.

 a. ライフサイクル・マネジメント・システムの構築

 b. プロダクトの現況にかかわる情報の維持管理

 c. レベル・アプローチによる意思決定

 d. 刻々変わる施設への要求条件の把握

 e. ライフサイクルにわたるフィードバックによる知識の獲得

135. 日本近代建築の地域性に関する研究(継続)

教授 藤森 照信

 日本の近代建築が地域性を持つか否かは, 日本近代建築史の大きな論点の一つであった. この点を究明するために, 各地に残る建築遺構の写真撮影, 資料収集を行い, その比較調査を続行している. その成果として, これまで開花式建築の東日本偏在現象を発見した. その原因として, 港ヨコハマの影響および江戸期の過剰装飾の影響などを指摘することができた. 開花式の中でスタイルに地域性が見られ, 細部について調査を進めている.

136. 日本の近代都市形成史の研究(継続)

教授 藤森 照信

 日本の近代都市の発達を歴史的にとらえるため, 江戸から東京への変化の過程を明らかにする. これについては, 明治期に関する限り, ほぼ全容を明らかにすることができた. また引き続き大正期から戦前についてまでも解明を進め, 郊外住宅の開発の経緯と, その日本的特徴をつかみ, 都市環境開発などの問題点なども指摘, 研究を進めている.

137. 日本近代産業施設の発達と遺構の生産技術史的研究(継続)

教授 藤森 照信

 わが国の産業施設の発達過程は, 変化があまりにも急速である. その歴史が記述される前に, 肝心な生産施設そのものが取り壊される傾向にある. この現状を踏まえ, 全国の生産施設, 土木, 工場施設についても順次研究を進めている.

138. 東京における町屋建築の研究(継続)

教授 藤森 照信, 大学院研究生 永田 雅子, 技術官 中川 宇妻

 日本の近代建築の発展過程の中で庶民生活を支えてきた下町の建物(看板出桁建築, 長屋)は近年都市開発によって取り壊しが急速に進み, その数が減少している. また, 建設当時の状況や当時の生活を知る居住者の高齢化も進んでいる. その現存状況を調査し, 職住が一緒の建築空間にあって職別の(銭湯, 床屋, 酒屋, 豆腐屋, 饅頭屋, 金物屋など)間取りの特徴を, 居住者のヒヤリングにより, 都市空間, 居住空間, 住環境, 生活史など, 多角的に研究を進め成果を上げている. 江戸東京博物館たてもの園への移築保存へも貢献している.

139. 歴史的建造物及び都市空間の復元的研究(継続)

教授 藤森 照信, 研究員 時野谷 茂, 協力研究員 青木 信夫

 都市の歴史への関心が高まっており, とりわけ東京がいかに近代化したかへの関心は高く, その一環として明治期の都市空間の復元的研究が求められている. 戦前の西洋館, 近代住宅を現代都市の中で再利用することは近年大きなテーマとなっており, その手法の研究を進めている. その成果は, 最近地方都市においても近代建築への関心が高く, 建物の価値評価, 保存再利用に向けての手法が多く求められている.

140. ベトナム都市における近代建築の保存と再生(継続)

教授 藤森 照信, 助手・特別研究員 村松 伸, 協力研究員 大田 省一

 

ベトナム都市のハノイ・ホーチミン等には, フランス植民地時代の建築物が多く残り, 都市基盤施設, 建築物は当時のものそのまま利用している. ただしすでに半世紀以上経ちち半世紀以上経ち, 老巧が進み, また近年の開放政策から急激な都市環境の変化がみられるため, 近代建築の現存リストを作成, かなりの成果を上げた. これに基づきその利用と, 保存・再生とする都市計画を提示し, その実現のためのベトナム側との共同研究を進めている.

141. 近現代における武漢の都市と建築(継続)

教授 藤森 照信, 日本学術振興会特別研究員 李 工

 中国近代建築の研究の一環として, 武漢は各国の租界(イギリス, フランス, ドイツ祖界, 日本祖界)による都市の開発が進んだ. その成立と形成過程, 建設された都市構造と, 当時の現存建築調査研究.

142. 戦後建築家に関する基礎的研究(継続)

教授 藤森 照信, 協力研究員 石崎 順一, 技術官 中川 宇妻

 日本の建築は, 第二次世界大戦後半世紀の間に大いに発展した. 現代では, 世界の建築界のリーダーシップとるまでになっている. 戦後50年経った時期を迎えて, 戦後をリードした建築家たちの事跡については, あるものは, ほとんど資料も残さないまま, あるものは重要な建築的出来事に立ち会いながら何の記録も回想も残すことなく, 没してしまっている. 早速にこの時期についての資料収集と分析に着手する必要があり, 戦後建築総体の基本資料を得ることを目的として研究を進めている.

143. 歴史および自然環境に配慮した建築設計の研究(継続)

教授 藤森 照信

 歴史と自然の環境にマッチした建物は, 大きなテーマとなっている. こうした社会時代的な要請に答えるべく, これまで長く歴史的環境との調和のための研究をしてきたが, 現在は, 自然環境に力点を入れ, <自然と人工>をキイワードに調査研究を進め, 実験のための実際に, タンポポハウス, ニラハウス, 天竜市秋野不矩美術館, 一本松ハウス, 熊本農業大学学生寮, 椿の家などの建築設計でさまざまな試みを開始している.

144. 日本近代都市デザイン研究(継続)

教授 藤森 照信, 協力研究員 石崎 順一

 日本のモダンテーキテクチユアの発展過程において, 都市はデザインする新たな領域として注目され, 多くの方法論の模索が行われた. 特に戦中あるいは, 戦後初期にかけて, 新進建築家のヴイジョンの実験場となり, その後の都市デザインの幾つかの道筋がたてられた. 本研究は日本を中心とする近現代アーバン・デザインの系譜を明らかにすることを目的とする. 建築家のプロジエクトを資料調査し, 聞き取りを行い, 当時の状況把握に努め, 分析, 考察を進めている.

145. 集合住宅の研究−日本・韓国・台湾・中国の住宅営団に関する研究(継続)

教授 藤森 照信, 協力研究員 冨井 正憲

 本研究は, 国策住宅供給機関として1940年代に設立された, 東アジア4ケ国(日本, 韓国, 台湾, 中国)の住宅営団の組織の成立過程, 及び各国公共集合住宅, 近代住宅計画成立過程を調査, 比較検討し, 併せて東アジア4ケ国の居住空間の文化的特質を分析も研究する.

146. 能舞台の歴史的変遷及び, 能的建築空間設計手法の研究(継続)

教授 藤森 照信, 大学院学生 奥冨 利幸

 我が国独自の「能舞台」は, 最近富に伝統文化の象徴として, 新たな能舞台が各地に建築されている. 能舞台の歴史的変遷過程と, 現存する能舞台の把握, 実測調査により, 設計方法の踏襲部分や建築空間の調査研究, 併せて現代建築の能空間的設計手法及び, 日本人に潜在的に好まれてきている能的思考の文化意識を考察研究する.

147. 近代日本の土木デザインに関する歴史的研究(継続)

教授 藤森 照信, 大学院学生 佐々 暁生

 近年の調査で分かってきたことだが, 戦前の土木においては, 経済性を年頭におきながらも工夫を凝らし, 個性あふれるデザインが多数生み出された. これらは将来の土木設計を考える上で学ぶべき点が極めて多い. しかし, 建築と違って歴史研究が市民権を得てこなかった土木においては, そのデザインがどのような変遷を辿ってきたのか, ほどんど明らかにされていない. そこで本研究は, 建築家や建築デザイン, 海外土木などとのデザイン的接点に着目してその影響関係を探り, 土木デザインの潮流の全体像提示を試みる. (H12年度科学研究費補助金・特別研究員費奨励費)

148. 東アジアと日本の建築近代化の比較研究(継続)

教授 藤森 照信, 研究員 西澤 泰彦

助手・特別研究員 村松 伸, 大学院学生 鄭 昶源・陳 正哲

 19世紀における西欧列強の強い東アジアの進出の軌跡は, 東アジアに登場する近代建築の歴史的展開と符号する. 近代日本における近代化遺産も, この歴史的展開の中で行われたといえる. 本研究は, こうしたグローバルな視点から, 東アジアと日本の近代建築の発生とその展開を比較研究し, 建築近代化過程の本質的問題を考察している.

 また, 同時に現存する遺稿調査, この地に活躍した併欧米人, 及び日本人建築家の活動, に関する研究も進めており, すでに一部を研究成果として報告している.

149. 明治期における住宅建築の近代化過程に関する研究(継続)

教授 藤森 照信, 外国人協力研究員 ドン チョイ

 本研究は, 工部大学校, 帝国大学における建築教育および, 明治時代の住宅思想, 実践について, 分析と考察を行い, 住宅の近代化過程の実体を明らかにするものである.

150. アジアの近代的歴史的建物および都市空間の復元的・再生的研究(継続)

教授 藤森 照信, 助手・特別研究員 村松 伸

 アジア各国では都市化が進み, 都市に残る近代的建築と研究保存・再生が求められている. 本研究は, アジア各研究者とネットワークを築き, 研究, 保存再生についてマニュアルを作成し, 連帯して進む道を考える.

151 熱帯アジア(南中国, 旧植民地諸国など)の近代における居住様式, 建築, 都市の変容に関する研究(新規)

教授 藤森 照信, 特別研究員 李 江

 本研究は, 中国(広州)を中心に, 近代における熱帯アジア都市の住宅建築の変容過程及び, 都市構造の変化を明らかにしょうとするものである.

152 多民族化及び西洋化による都市と建築の近代化に関する研究 ―内蒙古フフホト市を中心に

助手・特別研究員 村松 伸, 大学院学生 包 慕萍

 本研究は, 少数民族地域の近代都市, 建築西洋化, 漢風化, 多民族化などによって, どのように影響を受け, 近代化が形成されたのか, これまでの学習モデルの欧米近代建築史研究の視点とは異なるアジア独自の特徴などを内モンゴル・フフホト市を中心に調査, 分析, 明らかにすべく研究を進めている.

153. 都市ライフライン・交通システムの早期地震被害推定と影響波及

助教授 山崎 文雄, 助手・特別研究員 村尾 修

大学院学生 田村 勇・久美田 岳・丸山 喜久

 地震による都市ガス供給網の二次災害防止のため, 大規模な地震動モニタリング基づく早期被害推定システムの開発と, 緊急対応の方法について研究を行っている. その要素技術である地盤増幅度の評価のために, 日本や台湾などの強震観測点で, 常時微動観測も行った. また, 高速道路網などの交通システムに関しても, 地震計ネットワークからの情報を用いて被害推定を行う研究を行っている. 今年度は, 高速道路網に沿って密な常時微動観測を行い, 地震計設置位置の地震動と周辺地盤や道路構造物の地震動推定を行った. 更に, 2000年鳥取県西部地震による広域地震動分布を推定した.

154. 地理情報システムを利用した都市災害機構の分析

助教授 山崎 文雄, 助手・特別研究員 村尾 修

研究員 若松 加寿江, 大学院学生 梅村 幸一郎

 地理情報システム(GIS)を用いて, 地域住民や防災関係者が具体的な地震被害イメージを持てるような微視的な地域情報データベースの構築, 地盤ゾーニングと地震動強度の推定, さらに建物地震被害の予測など, 総合的な地域地震被害想定システムの構築に取り組んでいる. また, 東京の住宅地を対象に, 建物の耐震性を簡易的に評価し, 地震保険料率の細分化に役立てるための研究を開始した. その一環として, 横浜市で実施された木造建物に対する耐震診断データを収集し, この結果と阪神・淡路大震災による建物被害関数を比較することにより, 耐震診断による耐震性指標から建物ごとの被害関数を推定した.

155. 地震動のアレー観測と地震動記録の工学的評価

助教授 山崎 文雄, 助手・特別研究員 村尾 修

大学院学生 Kazi Rezual Karim, 田村 勇

 千葉実験所では高密度の地震動アレー観測を16年以上継続しており, その記録をデータベース化して公開するとともに, 地震動の空間変動や増幅特性に関する解析を行っている. また, 科学技術庁のK-NETなどにより得られた強震動記録を用いて, 最大加速度, 最大速度, 応答スペクトル, 計測震度, SI値などの距離減衰式の構築, 地震動と地盤特性の関係の評価, 地震波形に基づく液状化検知法の開発, 地震動強さ指標と構造物の地震被害との相関についての分析などを行っている. また, 駒場IIキャンパスにおける地盤地震動と建物応答の観測システムを構築した.

156. 構造物-地盤系の地震観測と地震応答解析

助教授 山崎 文雄, 助手・特別研究員 山口 直也

大学院学生 Kazi Rezual Karim, Gabriel Calle

 構造物−地盤系の地震時挙動に関して, 地震観測, 常時微動観測, さらにスウェイロッキング・モデルや有限要素法を用いた地震応答解析を行っている. 対象とする構造物としては, 千葉実験所および台湾花蓮の鉄筋コンクリート製タワー模型, 横須賀市逸見浄水場の発泡スチロールを裏込め材として用いた鉄筋コンクリート擁壁, 東神戸大橋, 各地の高速道路橋などがある. これらの構造物で観測された地震記録を数値解析で再現することにより, 手法やモデル化の検証, および実用的解析法の提案を行っている. さらに, 木造家屋や橋脚などの構造物の弾塑性応答解析を行い, 被害関数の構築も行っている.

157. ドライビングシミュレータを用いた高速道路通行車両の地震時走行安定性に関する研究

助教授 山崎 文雄, 助手・特別研究員 村尾 修, 大学院学生 丸山 喜久

 高速道路の地震時通行規制基準の見直しについて研究を行っているが, 構造物被害の観点のみからは, 現状の基準値をかなり引上げてよいことになる. しかし実際に強い地震を体験したドライバーは, 「タイヤがパンクしたと思った」「ハンドル操作が出来なくなった」などと証言しており, 事故を起こす危険性が高い. そこで, 地震の揺れが高速道路の走行安定性にどのような影響を与えるか, 数値モデルにより検討している. また, 駒場キャンパスに新たに導入された6軸アクチュエータを有する本格的なドライビングシミュレータを用いて, これに地震動を加える被験者実験を行い, 模擬的に地震動下での運転車の反応・挙動を調べている.

158. リモートセンシング技術を用いた災害把握と都市環境把握

助教授 山崎 文雄, 助手・特別研究員 村尾 修

協力研究員 松岡 昌志, 大学院学生 Miguel Estrada

 人工衛星や航空機などからのリモートセンシング技術を用いて, 地震などの自然災害の状況把握や建物分布などの都市環境把握に関する研究を開始した. とくに1999年に発生したトルコ地震や台湾地震に関して, 人工衛星による地震前後の光学画像を入手し, これらを比較することによって被害状況の把握が可能かどうか検討し, 地上踏査による被害調査結果などとの比較を行った. その結果, Landsat衛星によって, 地表面の大規模な変状は把握できることが分かった. また, 更に解像度の高い衛星画像を用いて, 災害危険度評価のための都市被覆・建物データ構築の可能性について研究を開始した.

159. 車両・軌道システムにおける運動力学と制御に関する研究(継続)

教授 須田 義大, 大学院学生 柴野 和彦

技術官 小峰 久直, 研究実習生 和田 学

 (東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

160. マルチボディ・ダイナミクスによるヴィークル・ダイナミクス(継続)

教授 須田 義大, 協力研究員 中代 重幸

研究員 曄道 佳昭, 大学院学生 椎葉 太一・宮崎 純

 (東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

161. コルゲーションの成長・減衰機構の研究(継続)

教授 須田 義大, 助手 岩佐 崇史

研究員 曄道 佳昭, 技術官 小峰 久直

 (東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

162. 移動質量を伴うフレキシブル・マルチボディ・システムの研究(継続)

教授 須田 義大, 研究員 曄道 佳明

 (東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

163. セルフパワード・アクティブ振動制御システムに関する基礎研究(継続)

教授 須田 義大, 協力研究員 中代 重幸・中野 公彦

大学院学生 林 隆三

 (東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

164. 磁気浮上系における浮上と振動の制御(継続)

教授 須田 義大, 協力研究員 中代 重幸, 大学院学生 荘 志忠・和田 貴弘

 (東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

165. 車両空間の最適利用に関する研究(継続)

教授 須田 義大, 助手 岩佐 崇史, 技術官 小峰 久直

大学院学生 平沢 隆之

 (東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

166. 自動車における電磁サスペンションに関する研究(継続)

教授 須田 義大, 協力研究員 中野 公彦, 大学院学生 椎葉 太一・檜尾 幸司

 (東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)

167. 鉄道車両における車輪・レール系の知能化に関する基礎的研究(継続)

教授 須田 義大, 研究員 曄道 佳明, 協力研究員 中代 重幸

技術官 小峰 久直, 大学院学生 柴野 和彦, 研究実習生 和田 学

 (東京大学国際・産学共同研究センターの項参照)


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