II. 研究活動


1. 研究のねらいと方針

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第49号 2000年度
2001.8.23


大学における研究の背景と使命

 東京大学生産技術研究所の設置目的は, 「生産に関する技術的問題の科学的総合研究ならびに研究成果の実用化」である. もとより、第二次世界大戦終了直後における生産技術研究所の立場と, 現在の環境とは, 全く異なっており, この設置目的の意味するところも時代に応じた変遷を遂げてきた. しかし, 「大学の中においても常に社会からの要請を意識し, それに答える研究を行うことで, 社会に貢献する」という精神は, 生産技術研究所の歴史を通じ一貫して貫かれてきており, またさらに, 「幅広い工学分野の知見を総合化, 融合し, 新たな工学技術, 分野を創造する研究」の内容は今こそ我が国にとって不可欠のターゲットとなっていると言えよう.

 今, 急激なグローバル化の進展の下に, 我が国の社会, 経済, 行政, 個人に至るまで全てが新しい秩序の構築に向けての産みの苦しみを突き付けられ, 大学に課せられた社会発展への寄与の責任と期待は, 何倍も大きなものになっている. 大学として自由な発想の下に自主的に研究テーマを選択して進めることができる環境を強化し, 広く社会, 産業界とも十分な情報交流を図りつつ, 新しく生まれた萌芽を協力して育てていく文化が必要である. 本所は大学の自由な環境の下で工学の最前線の問題を基礎的に研究して新しい分野を開拓するとともに, その成果を総合的に開発発展させ人間生活に活かすことによって, 人類の将来に貢献したいと考えている. 特に最近の新しい研究分野が多くの専門領域を包含した学際的なものが多いことを考えると, 当所のように大学附置の研究所としては, 日本最大の規模を有し, 工学の各分野にまたがる豊富な人材を擁する研究所の組織力・機動力を発揮する局面は今後ますます開けていくものと思われる.

研究グループとセンター

 もとより大学における研究は, 研究・教育の自由に根源があり, 研究者の自由な発想に基づく創造的研究が基本であることは言うまでもない. その第一義的責任は教官に委ねられていて, 教授・助教授の教官が個々独立に研究室を主宰し, その研究室ごとに時代の変化・発展に対応して自由かつ斬新な発想が生かせるよう, 「専門分野」を設定し, 研究の進歩に応じて目標を明確にしながら活動を行う仕組みとなっている.

 このような各個研究で得られた成果を工学界, 工業界にインパクトを与える規模にまで拡大発展させ, あるいは各個研究の成果を一層顕著なものとするため, 複数の研究者間で流動的共同研究を行うグループ研究の振興, さらには各個研究の累積によって培われた経験と知識を集約し, その流動的組織を形成することによって, 時代の必要とする大型研究課題に対処するプロジェクト研究の組織化を積極的に進めている. 所内に設けられた特別研究審議委員会は, これらの大型研究計画の厳正な評価と推進を行うとともに, 特に重点的研究や萌芽的研究の育成と発展のため, あらかじめ全所的に留保した所内予算を重点的に配分する選定研究およびグループ研究として発展する可能性をもつテーマに対する共同研究計画推進費の配分を行っている. また, 本委員会は, 特に優れた研究グループに対して, 申請に基づき審議を行い, RGOE(Research Group of Excellence)として, 毎年10件程度を所として認定している. また所長の諮問機関である研究推進室では, より長期的な展望に立った研究計画の企画立案を行っている.

 研究センターは, 新しい研究分野や社会的要請の強い研究分野に対処して, 異なる専門家集団の学際的協力を推進するために設けられている. これらのうちには時限付きのものがあり, 一定期間の目標を設定し, その成果を評価したうえで, 次の研究体制を検討することによって研究の流動化を図っている.

建物と設備の整備

 しかし, 都市型研究を支える六本木庁舎は今日狭隘化, 老朽化が進み, その改善が求められてきた. これに対応し, また東京大学全体としての本郷, 駒場, 柏地区における三極構造の将来構想の推進の意味も含め本所の駒場II地区の新営移転計画が平成7年度より開始され, 平成13年3月をもって移転が一応完了している. また, 国際・共同研究や産業界との共同研究において大規模な研究がスタートする際には本所と密接な協力関係にある東京大学国際・産学共同研究センターにおいて遂行することも考慮されるが, このセンターも駒場地区に平成11年に完成している.

 また, 都心では設置困難な大型設備を要する大型研究は, 本所の千葉実験所で行われている. 千葉実験所の諸施設においても老朽化が進み研究に支障をきたしていたため, 平成5年度より新実験棟の建設が開始され, すでに延床面積3767m2の新実験棟が完成している.

将来計画と評価

 研究所は, 常に自己改革の努力を行うべきことであることは言うまでもない. 本所においては, 数年に一度「将来計画委員会」の報告書がまとめられ, すでに第7次に達している.

 さらに, 研究所の自己改革には外部社会からの評価が不可欠であるとの認識から, 「国際社会からの評価」「産業界からの評価」「学界からの評価」をそれぞれ計画し, 平成7年6月には「生研公開」の時期にあわせて5名の著名な学者を海外より招聘し, 3日間をかけ本所の運営, 組織, 活動状況, 将来計画等に関する検討をいただいた. 平成8年6月には「産業界メンバーによる評価」, 平成9年6月には「学術メンバーによる評価」が行われた. これにより, 本所の活動は, 内外の高い評価が得られている.


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