I. 沿革と概要


2. 研究所の概要

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第49号 2000年度
2001.8.23


《設立の理念とその今日的意義》

 わが国における工学と工業とは, その発達の歴史において, 必ずしも相互に密接に連絡されていたとはいいがたい. この点にかんがみ, 本所は, 生産に関する技術的諸問題の科学的総合研究に重点をおき, 研究成果の実用面への還元をも行うことによって, 工学と工業とを結びつけ, わが国工業技術の水準を高め, 世界文化の進展に寄与しようとすることを目的として設立された. 創立以来40数年を経た現在も, 研究の対象や手法は変わりこそすれ, 目的は今もって新鮮である. 基礎的研究を行うと同時に生産の現場とも緊密な連絡を保ち, 生産技術の実態を把握し, 研究計画に適切に反映するとともに, 産業界と社会全般から寄せられる技術的諸問題に対しても, 学術に基礎をおいた本質的な解決を図ることを重要な使命としている.

《研究部門の発展》

 本所の運営, 研究体制の基本となる研究部門は, 昭和24年設立当初の3年計画にしたがい, 初年度15部門, 25年度10部門, 26年度10部門を設け, 計35部門となった. その後, 部門増として, 32年度, 35年度に各1部門, 36年度と, 37年度に各2部門, さらに38年度, 40年度, 41年度と42年度に各1部門の増加をみた. 他方, 昭和39年度に宇宙航空研究所(現・文部省宇宙科学研究所)の新設にともない, 2部門を同研究所に移した. 昭和61年度には他大学や産業界との共同研究を推進するための客員部門として, 計算力学や数値乱流工学などいわゆるコンピューテーショナル・エンジニアリングに関する研究を行うために多次元数値情報処理工学が設置され, これは平成8年度より高次協調モデリング部門として再出発した. また, 寄付研究部門としては, 情報工学におけるハードとソフトとの融合をめざす目的で, インフォメーションフュージョン(リコー)部門が設立され平成元年度から3年間の活動を行った. また, 平成3年度にはメカトロニクスの高度化と知的化を目的とするインテリジェント・メカトロニクス(東芝)部門と, 地球現象を工学的な立場から計測・モニタリング・モデリング・制御することを目的とするグローブ・エンジニアリング(トヨタ)部門が各々開設され, 平成 6年度まで活動を行っている. 平成12年4月からは, 表1に示す3大部門, 6研究センター, 1客員部門の体制になっている.

《附属研究施設の発展》

 本所では, 多様な研究を推進するために, 千葉実験所と6つの研究センターを附属研究施設として運営している. 千葉実験所は, 9.2haの面積を有し, 大型振動台や水槽実験設備など大規模な装置を要する研究を進めてきており, 平成7年新設の実験棟でのチタン溶解精製やコンクリート構造物の耐久耐震実験を含め多くの研究を展開している. また, 前記の研究部門とは別に, 環境工学の研究に必要な計測技術の開発に関する高度の学術的業務を行うことを目的とし, 昭和48年4月に, 計測技術開発センターが設置され, 昭和48年度と49年度に各1分野を加えて関係研究部門の協力のもとに業務を行っている. 昭和50年4月には, 複合材料の強度, 素材, 加工等に関する基礎的研究と, 複合材料の開発と有効利用を目的とし, 複合材料技術センターが設置され, 昭和50年と51年度に各1分野を加えている. 同センターは昭和60年3月末に10年の時限で終了したが, 同年4月には複合材料に加えてニューセラミックスや機能性合金まで研究対象とする先端素材開発研究センターが設立された. 同センターは, 平成7年3月に終了し同年4月には, 新たに材料界面マイクロ工学研究センターが発足している. さらに昭和52年4月, 濃淡・時間・波長等の多次元情報を含む画像の処理およびその応用に関する研究を目的として, 多次元画像情報処理センターが設置され, 昭和52年度と, 昭和53年に各1分野を加え関係研究部門と密接な連携のもとに業務を行っていたが, 同センターは昭和59年3月末時限7年を終えて廃止され, 同年4月, 新機能を有するデバイス素子・回路および情報の中から機能を引き出すための情報処理手法の研究開発を目的として, 機能エレクトロニクス研究センターが設置された. なお, 同センターは, 平成5年度末をもって終了し, 平成6年度より, さらに発展した情報工学の研究開発をめざして概念情報工学研究センターが発足した. また, 平成3年度からは自然災害から人命と財産を守り, 社会的・経済的損失を軽減するための国際的な研究の拠点として国際災害軽減工学研究センター(時限10年)が活動している. また, 平成8年度には本所と先端科学技術研究センターの共同の概算要求による東京大学国際・産学共同研究センターが学内共同利用施設として設置され, 本所と密接に連携をとりつつ運営されることになった. さらに, また, 平成11年度海中ロボットの研究を行なう海中工学研究センターが, 平成12年度からはマイクロメカトロニクス国際研究センターが4小部門相当の大きさで新設された. 平成13年3月には, 国際災害軽減工学研究センターが廃止され, 同4月には, 都市基盤安全工学国際研究センターが新設される.

《研究室制度と専門分野の刷新》

 本所は3つの大部門に分けて運営している. しかし, 研究の面では教官が部門を越えた協力を進めており, 大部門の分野分けなどのグループを作り有機的に連携している.

 研究部門制は特定の研究分野を長期間継続し, 深い知識を蓄積するには有効な制度であるが, 学問の急激な変化に対応するには必ずしも最適のものとはいいがたい. そこで本研究所では部門制の長所を残しながら研究体制の近代化のために, 教授や助教授が個々に独立の研究室を運営し, 自由かつ漸新な発想を生かす研究室制を併用してきた. さらに各研究室ごとに時代の変化・発展に対応するため「専門分野」を設定し, 研究の進歩に応じて刷新を行ってきた. 現在それぞれの部およびセンターは表に示す専門分野の研究を行っている.

 これらの専門分野での, 基礎的研究に加えて, 複数分野にまたがる共同研究が随時に行われている.

《教育活動》

 本所は, 大学院における講義や研究指導などの教育活動を, 大学附置研究所の使命としてとらえ, これを重視し, 積極的に行っている. さらに各種の教育制度により学外から研究員・研究生・その他を受け入れ, これらの教育・指導を行うとともに, 講習会, セミナーなどを通じて, いわゆる社会人教育にも力を入れている. 詳細については, 教育活動の項を参照されたい.

《組織の運営》

 管理運営のために, 後章に記すとおり, 教授会・教授総会のほか, 所長の諮問機関としての常務委員会を設け, また各種の運営委員会を設置している. 教授・助教授・専任講師がこれらの委員として運営に当っている. 生産技術の実態を把握し, 本研究所の使命を達成するため, 昭和28年に財団法人生産技術研究奨励会を設立し, この評議員として学識経験者と産業界の代表的技術者に参加を願い, 本所に対して様々な協力・助成などの事業を行っていただいている.


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