VI. 研究および発表論文


1. 研究課題とその概要
B. 文部省科学研究費補助金による研究

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第48号 1999年度
2001.3.1


1.特定領域研究A(1)

 1.  地震被災危険度のマクロゾーネイション(継続)

助教授 中埜 良昭

 本研究の目的は,都市の地震災害危険度に大きくかかわると考えられる地域特性の要因を考慮した都市の地震災害危険度の評価手法を提案し,これを利用して地震災害を軽減するための対策を効率良く推進してゆくための基礎資料を得ることにある.研究分担者は,地勢・地盤・地形特性,建物特性,活断層,過去の震害経歴,気候条件,都市間交通システム,建築構法の地域特性,都市の発展・拡大状況,近隣地域の状況等の都市のさまざまな地域特性を考慮した都市が潜在的に有している地震災害の危険性を,都市間で相対比較・分析し評価する手法を提案した.更に,これを用いて日本の主要都市を対象に,それらに潜在する地震災害危険度を評価し,地震対策の基本的な資料となる地震災害危険度のパターン把握及び地震対策が急がれる地域の選別についての検討も行った.

 2.  フェイゾンに起因した準結晶の相変態

助教授 枝川 圭一

 準結晶構造はi)準周期的並進秩序,ii)非結晶点群対称性,の2つで特徴づけられ,一般に4次元以上の多次元空間の結晶格子をその部分空間である3次元空間に射影することによって記述できる.その結果,準結晶には実空間の格子変位による通常の歪の他に実空間と直交する補空間方向の格子変位によるフェイゾン歪が存在しうる.このようなフェイゾン歪に関連して準結晶には,種々の特殊な構造相変態がみられる.本研究ではそのような準結晶特有な新しいタイプの相変態の機構を解明することを目的としている.

 3.  単電子デバイスの創出とその回路・アーキテクチャの検討(継続)

教授 榊 裕之(代表者)・(東京大)鳳 紘一郎・(東北大)坪内 和夫・(大阪工業大)井上 正崇

教授(大阪大)谷口 研二・(北海道大)雨宮 好仁

助教授 平川 一彦・平本 俊郎・(北海道大)矢久保 考介

助教授(横浜国立大)吉川 信行・(東北大)小柳 光正

教授(名古屋大)水谷 孝

 

本研究では,量子箱(ドット)など微細な電子閉じ込め構造において静電的なクーロン反発力に起因する単電子効果と電子の波動性に起因する量子サイズ効果を解明・制御するとともに,新しいデバイスの考案・試作を進めている.また,トンネル過程の確率性を考慮したデバイスの特性解析やこれらの素子を用いた回路やシステムの可能性と課題についても検討を行っている.

 4.  ゼロエミッションをめざした物質循環プロセスの構築・総括班(継続)

助教授 迫田 章義

 21世紀に向けて地球に優しく安全で快適な生活を維持できる人間活動および生産活動を創生するためには,環境への排出,すなわちエミッションをできるだけゼロに近づける社会・産業・生産システムが構築されなければならない.わが国における物質の流れと利用量の現状を明らかにした上で,適当な規模の人間活動・生産活動を維持しながら資源・エネルギーの消費量と環境への汚濁負荷をどこまで削減することが可能かを検討し,ゼロエミッションをめざした新たな物質循環プロセスを構築することが必要である.  そこで本領域では,この様な社会的要請を実現するため,以下の3項目(A-01,A-02,A-03)に関する計画研究を実施するとともに,関連する研究を行っている.

A-01:プロセスゼロエミッション:個々の生産プロセスにおける現状の物質フローの解析と,それに基づくゼロエミッション化の検討

A-02:ゼロエミッションネットワーク:業種を越えた生産プロセスのネットワーク形成によるゼロエミッション化の検討

A-03:地域ゼロエミッション:モデル地域における物質循環を記述する数理モデルの構築とそれを用いたゼロエミッション化の評価と予測

 総括班では,領域内の全ての研究を統括し,上記の目的を達成するための私信を示すとともに,最終的にさらなる成果が得られ社会に還元されるように,研究者相互の情報の交換や共有等を支援している.なお,本領域の詳細は下記のホームページに公開されている.http://envchem.iis.u-tokyo.ac.jp/ZeroEm/

 5.  都市風と連成させた火災延焼のCFDシミュレーションと避難誘導システム開発

教授 村上 周三(代表者)・加藤 信介,助手 白石 靖幸

研究員 山田 常圭・赤林 伸一・持田 灯,協力研究員 林 吉彦

 本研究は,大地震に伴う都市火災及びそれに伴う2次災害を物理モデルに基づいてリアルタイムに予測し,避難,消火活動を円滑に行う方法を確立することを目的とする.このため,都市火炎の拡大に大きな影響を与える都市上空の風性状を詳細に解析すると共に,風による飛び火及び風により吹き倒された火炎からの熱放射に伴う延焼に着目し,これをCFD(計算流体力学)により詳細に解析する.

 6.  社会基盤システムの実時間制御技術(継続)

助教授 山崎 文雄(代表者)・目黒 公郎,助手・特別研究員 村尾 修

所長(科学技術庁防災科学技術研究所)片山 恒雄,教授(京都大)土岐 憲三

助教授(鳥取大)野田 茂,教授(名古屋大)福和 伸夫

助教授(京都大)清野 純史,教授(奈良大)碓井 照子

助教授(名古屋大)飛田 潤・(鳥取大)盛川 仁

主任研究員(日立製作所システム開発研究所)瀬古沢 照治

 社会基盤システムの地震被害を実時間で防止するために,地震発生直後から地動観測データを用いて当該地域で予想される地震動の時空間特性を実時間で同定し,かつ実時間で震害の様相を把握しながら,それらを社会基盤システムの震害制御に役立てるための研究を4年間にわたり行った.水道や高速道路といった社会基盤システムの実時間制御システム開発を念頭に置きながら,そのための基礎情報収集とデータ整備,理論・手法の整備・構築,実用化に向けての検討などの課題を総合的に行い,インターネットGISなどを用いたプロトタイプも提案した.

2.特定領域研究A(2)

 1.  親和性の高次同調スイッチングに基づく高効率人工能動輸送系の構築

教授 荒木 孝二,助手・特別研究員 務台 俊樹

 pH差,酸化還元反応,光などを利用してキャリア分子の基質親和性のスイッチングをおこない,高効率かつ高選択性人工能動輸送系の構築を進めている.本年度は,pH差を利用した二次能動輸送系の高効率作動の要因を検討するとともに,酸化還元応答性を示す新しいキャリア分子の設計・合成をおこなった.

 2.  高次認識糖鎖による細胞機能制御

助教授 畑中 研一

 生体内における複合糖質が細胞膜上でタンパク質と相互作用する際に,分子構造が生理活性にどのように影響するのかを検討するため,様々な構造の酸性多糖を構築し,線維芽細胞増殖因子との相互作用を検討している.

3.特定領域研究B(2)

 1.  熱帯エネルギー・水循環過程

教授 虫明 功臣(代表者),助教授 沖 大幹,客員教授 A.S.Herath

教授 安岡 善文,助手・特別研究員 鼎 信次郎,教授(東京大)鈴木 雅一

助教授(東京大)松本 淳,教授(東京農工大)青木 正敏・(福島大)渡辺 明

教授(山梨大)砂田 憲吾・(神戸大)山中 大学,助教授(京都大)大手 信人

研究室長(科学技術庁防災科学技術研究所)中根 和郎,研究員(通信総研)大野 裕一

助教授(タイ・カセツアート大)N.TANGTHAM,副局長(タイ気象局)P. PATIVIVATSRI

センター長(タイ王立灌漑局)P.Polsan・(タイ王立灌漑局)T.Suhapunnaphan

事務局長(タイ国家評議会)M.SUMIPAN

 本研究では,タイチャオプラヤ川流域を中心に,湿潤熱帯域における大気陸面相互作用の物理過程,降水・水循環機構を,現地観測およびモデリングにより解明し当該地の水資源を予測するとともに,日本の水文気候への影響評価を進めている.

 本年度は,乾季における高層気象強化観測,様々な土地利用での蒸発散の季節変化観測,レーダーによる熱帯降雨構造観測,GPSを用いた水蒸気量観測を行うとともに,これまで取得されたデータのデータベース化を行った.さらに流出モデル,気候モデル,植生水文モデル等の数値モデルの検証,新たな現象のモデル化などの研究も進められている.

 2.  マルチメディアによる地震災害の事後対応過程の検討

教授 須藤 研(代表者),助教授 目黒 公郎,教授(京都大)林 春男

 大震災から得られた教訓と犠牲を無駄にしないためにも地震災害に対する現在の都市空間の脆弱性を評価してそれを除去し,さらに強靱で安全・快適な都市空間を創生し,次世代へ継承する責務が我々に課せられている.人間社会が過去のおよび現在進行中の災害から深く学んでこそ少なくとも同じような災害を繰り返さずにすむ.

 この視点にたって地震災害の事後対応過程の研究が研究者に求める課題,社会が研究者に期待する課題は, (1)災害の実時間被害評価と実時間災害管理システム; (2)災害後の復興戦略 であることは論をまたない.災害発生後の衝撃を可能な限り小さくとどめること,災害から何をどのように学びそれを復興計画の中でどう実現していくかはきわめて重要な研究課題である.

 本研究では,上記の二つの項目を研究し,災害時の実時間災害マネージメントに供する技術を開発しかつ,その過程で獲得される新たな情報を最適な災害後の復興戦略に取り込んでゆくシステムを研究する.

 3.  エネルギー・水循環情報データアーカイブ

助教授 沖 大幹(代表者),教授 喜連川 優・柴崎 亮介

助教授(東京大)松本 淳,主任研究員(気象庁)高橋 清利

助手(長岡技術科学大)熊倉 俊郎

 東南アジア温暖湿潤地帯において現地地上観測,衛星観測,地上検証,水文・気象現業データなどが精力的に収集解析されている.また,特別集中観測の結果を利用して4次元同化データの構築も計画されている.これらを取りまとめて当該地域に関するエネルギー・水循環情報データアーカイブを作成し,国際的なエネルギー・水循環研究における日本の情報発信基地を構築する.

4.基盤研究(A)(1)

 1.  マイクロ波散乱理論に基づく多入射・多偏波計測による土壌水分・粗度の同時逆推定

教授 虫明 功臣(代表者),(日本大)長谷部 望,(山梨大)砂田 憲吾

客員教授 A.S.Herath,講師(日本大)三枝 健二,研究員(気象研究所)仲江川 敏之

主任研究員(建設省土木研究所)深見 和彦,教務技官 弘中 貞之

 マイクロ波リモートセンシングを用いて土壌水分量を精度良く評価するには地表面粗度の影響を定量的に評価することが,不可欠であることが現在までの研究で明らかになっている.その解決方法の一つである,多偏波,多入射,多波長観測データから土壌水分と粗度を同時に推定する方法について,研究を進めた.車載型Cバンド散乱計で水田,裸地,短植生地を一年に渡り観測し,その時系列変化を調べ,植生量および土壌水分との相関関係について詳細に検討を加えた.また植生を含んだ散乱モデルを用いた測定値の再現を試み,良好な結果を得た.

 2.  大災害インパクトの計量手法の開発とそれに基づく国際比較の研究

教授 須藤 研(代表者),客員教授 A. S. Herath,助教授 山崎 文雄・目黒 公郎

助手 D. Dutta,所長(科学技術庁防災科学技術研究所)片山 恒雄

(以下五十音順)室長(建設省建築研究所)糸井川 栄一

GIS事業部長代理(応用地質(株))金子 史夫

国際協力専門員(国際協力事業団)大井 英臣,助教授(北海道大)岡田 弘

副センター長(アジア防災センター)小川 雄二郎

代表取締役((株)水文環境)木下 武雄,助教授(筑波大)熊谷 良雄

教授(慶応義塾大)塚越 功,主任研究員(損害保険料率算定会)長島 秀隆

代表取締役社長((株)東海総合研究所)水谷 研治,教授(岩手県立大)元田 良孝

 本研究では,日本での災害対策経緯の視点から災害被災国が自然災害に対して脆弱になる過程を国際災害軽減工学研究センターがこれまで調査してきた国(フィリッピン,バングラデシュ,フィジー)及びネパール,中国を対象として地震,洪水,地滑り,火山災害に焦点を当て研究調査を行い,その災害インパクトを定量化する.

 3.  ホモトピー空間構造の開発と構造挙動に関する研究

教授 藤井 明,助教授 川口 健一(代表者)・(東京大)及川 清昭

助手 宮崎 明美,研究員(金沢工大)高山 誠・(法政大)吉田 長行

 任意形状の曲面をコンピュータ・グラフィックス(CG)で表現する手法のひとつとして3次元形状を等高線の重なりで表現するホモトピー法が開発されてきている.本研究では任意形状の曲面を等高線による平行閉曲線群によって表現し,それを実体化することにより任意形状の空間構造(ホモトピー空間構造と名付ける)を開発するものである.ホモトピー空間構造の特徴として,(a)任意形状の平面形に対応できる,(b)無柱の大空間を創出できる,(c)プレハブ化が可能である,(d)自立型構法が採用できる,等をあげることができる.本研究では,ホモトピー空間構造に関して,(1)基礎概念と建築計画,(2)構造挙動の調査と構造計画,(3)構法と施工法,(4)実用化試験,の研究を実施する.本年度は,(3),(4)項の研究を行い,直径約5mのプレキャスト・プレストレスト工法によるホモトピー空間構造実構造モデルの作成を実施した.

 4.  我が国の建設生産・管理システムの信頼回復と国際競争力の復権

教授(東京大)國島 正彦(代表者)・吉田 恒昭,助教授 野城 智也・(東京大)竹内佐和子

 各国の建設調達システムの現状および建設プロジェクトの執行過程を調査し,これを比較することにより,建設分野における国際競争力を構成する諸要因を明らかにしつつある.

5.基盤研究(A)(2)

 1.  水中を自動観測する環境保全ロボットシステムの研究開発

教授 浦 環,助教授(東京大)蒲生 俊敬

助教授(九州工業大)石井 和男,講師(明治大)黒田 洋司,助手 能勢 義昭

 湖水環境の改善には湖水調査が不可欠である.しかし,水中環境の調査は,人間が容易に近づけないため,陸上の環境調査とは異なる困難が多い.観測や制御データをより正確なものとするには,現状の母船釣り下げ式方法から脱却し,平面的な分解能の向上,鉛直分布の計測,さらにはより頻度の高い観測がおこなわれるシステムの構築をしなくてはならない.新たな観測システムの構築を目指し,湖水環境の保全のための観測に利用することのできる自律型ロボットの基本設計をおこない,実現へと近づけた.

 2.  複雑乱流場の多元情報画像解析システムの構築

教授 小林 敏雄・黒田 和男,助教授 谷口 伸行,助手 佐賀 徹雄,博士研究員 胡 暉

 本研究では,複雑乱流場に複合する速度,濃度あるいは温度などの多次元情報を,同時にしかも場の情報として解析する速度・スカラ同時画像解析システムを開発した.LES結果を用いてCGにより擬似的な可視化画像を作成し,画像解析手法の検証を行うとともに,スカラー量の画像計測に関するデータベースを作成した.ロブノズル噴流にシステムを適用し,複雑に混合する噴流内部の渦構造を定量的に解析し,システムの有効性を確認した.

 3.  LESモデルによる乱流燃焼火炎解析法の開発とその評価

教授 小林 敏雄,助教授 谷口 伸行・大島 まり,助手 佐賀 徹雄

助教授(名古屋大)新美 智秀,講師(東京工業大)坪倉 誠

 燃焼場をLESにより数値解析する際に克服すべき課題として,乱流変動速度場の予測精度の向上,温度・濃度などスカラー量拡散のモデリング,燃焼反応のモデリングがある.これらの課題に対応するLESモデリングを提案し,単純化された系について検証をおこなった.その成果を総合して現実の燃焼器設計を想定した総合解析コードを構築し,ガスタービン,燃焼器内予混合火炎を対象にコードの有効性を確かめた.

 4.  結晶格子を基準スケールとする三次元測定器

助教授 川勝 英樹,助手 星 泰雄

 リニアエンコーダのエンコード速度の向上を行い,走査型力顕微鏡と特定の試料を組み合わせることにより,20ミクロン/秒のカウントレートを実現した.更に,レーザ干渉系と組み合わせることにより,本手法の精度の検証を行っている.

 5.  ナノメートルオーダの機械振動子による質量と場の計測

助教授 川勝 英樹,講師 年吉 洋,助手 星 泰雄

 100ナノメートル大の機械振動子を作製し,原子レベルの質量変化や,場の計測を行う.今年度は,走査型電子顕微鏡内で作動する走査型力顕微鏡を実現し,ナノ振動子の機械特性の測定に成功した.微小振動子の振動励起と検出についての基礎実験を行った.

 6.  半導体量子ドットレーザの試作研究

教授 荒川 泰彦・榊 裕之,講師 染谷 隆夫

 本研究は,本研究代表者が長年取り組んできた量子ドットレーザについて,いよいよその実用化をめざして,その素子化技術の確立をはかることを目的としている.特にここでは,我々が最近開発した量子ドット形成技術をさらに発展させる.さらに,フォトニック結晶も組み込んだ素子も開発する.波長帯はこれまで取り組んできたInGaAs系やGaAs系量子ドットに対応する1_m付近を中心とする.併せて,光インターコネクション用光源として大規模集積回路組み込まれた場合には,レーザの低消費電力化が不可欠であるという観点から,4-5_m帯の波長を有する InGaSbAs系量子ドットレーザの開発も推進する.本年度は(1)青色InGaN量子ドットレーザの光励起室温発振に成功(2)フォトニック結晶を有する量子ドットレーザ実現のためのInAs量子ドットの領域選択成長の実現(3)GaSb量子ドットの形成などについて,重要な研究成果を達成した.

 7.  1.5 mm帯光通信用半導体量子カスケードレーザの基礎研究

教授 荒川 泰彦・ 榊 裕之,助教授 平川 一彦,講師 染谷 隆夫

 本研究は,C-MOS等の集積電子素子と光素子の融合をめざして,ユニポーラーキャリア動作に基づいたQuantumカスケード(量子カスケード)構成による1.5_m波長帯帯半導体レーザについて,その結晶成長技術,物理的基礎からデバイス設計および素子実現に至るまで,基礎研究を行うことを目的とする.本研究では,AlGaInSbAs系量子構造におけるタイプII遷移による量子カスケードレーザおよびAlGaN/InGaN系量子ドット構造におけるサブバンド間遷移による量子カスケードレーザを新たに提案しその実現をはかる.

 本年度はGaSb/GaAsタイプII量子ドット構造を形成し,蛍光スペクトルの励起強度依存性や時間分解特性などのその光学的性質を明らかにすると共に,GaN/InGaN量子井戸の光物性とデバイス応用の可能性の探索を行った.これらの結果は2年目の研究のための基礎固めとなる.

 8.  低地球負荷技術の開発に関する工学的・社会科学的研究

教授 安井 至

 人類にとって,21世紀における最大の課題は,「地球レベルの環境問題」である.この課題を持続可能性という観点から再検討し,技術的あるいは社会科学的な課題にブレークダウンして,その成果を,産業界,市民,政策決定者に還元することを目的とする.本研究グループは,東京大学,MITおよびスイス工科大学による地球戦略研究の一部をなす.

 9.  二針型複合FIM・STM装置の製作

教授 山本 良一,助手 弓野 健太郎

 本研究においては,薄膜結晶成長のメカニズムを解明することを目的として,走査型トンネル顕微鏡(STM)を改良し,原子の表面拡散を観察できる装置の開発を目指す.結晶成長は原子やクラスターの表面拡散,核生成,解離等複数の素過程が複雑に絡み合ったプロセスであり,成長機構を解明するためには,各素過程を直接観察し,素過程のレベルから明らかにする必要がある.

 10.  各種気候下におけるアダプティブ制御による省エネ型ハイブリッド空調方式の開発

教授 村上 周三(代表者)・加藤 信介,助教授 伊香賀 俊治

助手 白石 靖幸,研究員 近藤 靖史,協力研究員 近本 智行

 本研究の目的は,人体の環境適応性と教育・学習能力を活用して,現状の室内空調目標(一般に冷房26℃,暖房22℃など)をより緩和し,冷暖房用エネルギーを相当量削減しても快適となるオフィスの室内環境制御システムを開発することである.初年度は,新しい空調システムの開発並びに数値解析手法の予測制度の向上を図り,次年度は開発した数値解析手法を用いて,今回提案する新しい空調システムの性能評価を行う.

6.基盤研究(B)(1)

 1.  活性炭膜を用いた小規模分散型浄水処理法の開発

助教授 迫田 章義

 最近は,水道水の水源となる河川や湖沼等の水質汚濁の進行や,消費者のより安全でおいしい水に対する強い要求などから,特に大都市近郊の浄水場ではオゾン・活性炭処理を中心とした高度浄水処理が導入されている.しかしながら,浄水場からの給水の総量を飲料水として適する程度にまで集中的に高度処理するよりも,飲料用になる分だけを使用サイトで分散的に高度処理する方が経済的・能率的とも考えられる.本研究は,この問題の解決につながると思われ,かつ基礎研究を既に終えている水処理用活性炭膜を出発点として,以下の研究開発を進めている. (i)on site浄水処理に適する吸着能と膜性能を有した膜の開発 (ii)小規模分散型のプロトタイプとなる浄水処理装置の試作 (iii)その本格的な実用化に向けての指針の作成

 2.  グローバルな陸面水収支算定地の検証とデータベースの構築

助教授 沖 大幹(代表者)

教授(東京大)住 明正・(長岡技術科学大)小池 俊雄・喜連川 優

 地球上全陸地の土壌水分量をグローバルな1度グリッドメッシュごとに1987/88年に対して推定した国際プロジェクト(Globl Soil Wetness Project-I)の相互比較センターを引き継ぎ,東京大学生産技術研究所に全地球陸域水収支データベースを構築した.

 完成したデータベースには,全陸地1度グリッド10日間隔で,2年分の水・エネルギーのフラックスとその収支が与えられているので,前述した国際共同研究プロジェクトの関係者だけではなくて,広く地球環境関連の究者,あるいは教育関係者の興味を引いている.

 3.  高速道路網の地震防災システムの試作に関する研究(継続)

助教授 山崎 文雄,助手・特別研究員 村尾 修,研究員 若松 加寿江,学部学生 丸山 喜久

 本研究では,地震計ネットワークからの地震動情報と事前に地理情報システム上に準備したデータベースを用いて,地震発生直後に,高速道路の地震動分布を推定し通行規制を自動的に発令する,および,高速道路の被害推定を行い巡回点検箇所の順位づけを行う,の2つの機能を果たすシステムのプロトタイプ開発を行う.最近,高速道路には計測震度やSI値も観測できる新型地震計が増設された.これらの地震計からの情報に基づく規制基準値の提案のため,地盤増幅度の推定,地震動の補間法の検討,被害関数の構築などを行っている.

8.基盤研究(B)(2)

 1.  位相共役超音波を用いた無歪み診断装置および自動標的治療装置開発の基礎研究

教授 高木 堅志郎(代表者),助教授 酒井 啓司

助手 坂本 直人,日本学術振興会特別研究員 山本 健

 進行する超音波に対し,さながらこれを時間反転させたかのように逆向きにさかのぼる波を位相共役波と呼ぶ.本研究は我々が独自に開発した超音波位相共役波発生技術を応用し,これを歪みのない超音波画像診断装置や自動標的治療装置などの技術開発へと展開させることを目的とする.本年度はこれらの技術に必須な要素である高効率位相共役鏡の開発を行った.位相共役波発生メカニズムを電場−歪場の非線型相互作用から明らかにし,材料に要求される機械的・電気的物性を明らかにした.同時に最新の圧電材料・素材の探索を進め,発生効率100%を超える位相共役鏡の開発を目指している.さらにイメージング技術への応用を目指し,位相共役超音波顕微鏡システムの開発を進めている.

 2.  エバネセント光散乱法による界面近傍分子の動的物性研究

教授 高木 堅志郎(代表者),助教授 酒井 啓司,助手 坂本 直人

 近年,液晶素子や分子配向光学膜など界面に現れる特異な分子集合体を利用した機能材料の開発が進んでいる.これら界面から数10 nm程度の極薄領域における分子物性を測定する装置として,界面における光の全反射に伴い発生するエバネセント光を利用した新しい光散乱法の開発に着手した.本年度は新たにフラストレートエバネセント光散乱法の開発を行った.界面近傍の散乱粒子による全反射のフラストレーション現象の結果,反射方向に散漫散乱が現れる.回折格子を散乱素子として用いることにより,エバネセントプロファイルを反映した光散乱が起こることをはじめて検証した.この測定法により界面近傍粒子の界面に沿った方向の運動を調べることができる.測定により,界面と粒子の間の流体力学的相互作用のため粒子のブラウン運動が抑圧されることが明らかとなった.この結果は界面の影響を考慮した揺動散逸現象として理解できる.

 3.  半導体超格子からの電界電子放射のコヒーレント電子線源への応用

教授 岡野 達雄(代表者)・榊 裕之,助教授 福谷 克之,助手 Markus Wilde

 電界放射陰極試料として,GaAs/GaAlAsの超格子構造を作成した.ガス吸着汚染による端面の電子状態変化を避けることが重要であり,超高真空劈開機構を開発し,先端曲率半径が10 nm以下の先鋭な超格子電界放射陰極を得ることに成功した.二次元電子のトンネル過程の検証には,高分解能電子分光測定が有効であり,電界電子放射用180°半球型静電分光器を開発した.タングステン陰極を用いた動作テストでは20 meVのエネルギー分解能を確認した.超格子試料の清浄化処理や耐電圧の維持等で当初は困難があったが,現在,これらの問題点を克服して,電界放射像の撮影とエネルギー分析を進めている.

 4.  半導体量子井戸を用いたフォトリフラクティブ素子の高速高感度化の研究

教授 黒田 和男(代表者)・荒川 泰彦,助教授 志村 努

助手・特別研究員 的場 修,助手 芦原 聡

 光情報処理,光計測系への応用を目指し,近赤外域に感度を持つInGaAs/GaAs半導体量子井戸フォトリフラクティブ素子を作成し,その基本特性を調べた.これまで,電場を井戸層に平行にかけるフランツ・ケルディッシュ配置を研究してきたが,本年は,電場を井戸層に垂直にかける量子閉じ込めシュタルク配置での素子化を試みた.この配置を採用することにより従来型の素子に比べ10倍ほど効果を増大することに成功し,高感度化の指針を得た.現在電荷をトラップするバッファー層には酸化シリコンのスパッター層を用いているが,この代りに低温成長膜を使うことにより素子作成プロセスを簡単化できる.このための基礎的な研究を行っている.

 5.  地盤と構造物のエネルギー収支効果を反映した振動台模型実験による損傷累積過程の研究

教授 小長井 一男,助教授 中埜 良昭

 構造物の地震被害を考える上で,単独の地震だけでなく,複数の地震によって構造物内部に損傷が累積していく過程を考えなければならない.構造物内部で損傷の累積に関係するエネルギーは,地盤から構造物に与えられるエネルギーと,逆に構造物から地盤に逸散していくエネルギーの差として捉えられる.本研究は,振動台上でこの地盤との相互作用を再現するとともに,エネルギーの収支を計測しえるシステムを構築し,構造物の破壊過程をこれらのエネルギー収支と関連付けながら検討していくことを目的とするものである.本年度は地盤,構造物ともに非線形の性状を示す状態を想定し,非線形の相互作用効果を振動台上で再現することを試みた.

 6.  半導体レーザー励起による広帯域フォノンビーム源の開発

助教授 酒井 啓司(代表者),教授 高木 堅志郎,助手 坂本 直人

 物質中の分子レベルのミクロな構造やダイナミクスを調べる上でフォノンスペクトロスコピーはきわめて重要な技術である.とくに分子反応などの高速現象を調べるためには高い周波数のフォノンビーム源の開発が望まれている.これまでの主流であったサーマルフォノンにかえて,我々は高周波強度変調を加えたレーザーの照射によるコヒーレントフォノンビームの開発を目指している.本年度は半導体レーザーをサファイア基板に蒸着した金属薄膜に照射することにより,UHF帯のフォノンを生成することに成功した.この技術は高圧・高真空あるいは極低温といった特殊環境下において,非接触で材料中にフォノンを注入する技術として重要である.

 7.  光誘起表面振動スペクトロスコピー法の開発と液体表面の超高周波物性研究

助教授 酒井 啓司(代表者),教授 高木 堅志郎,助手 坂本 直人

 液体の表面・界面は新しい材料創製の場として重要である.本研究は,界面における分子レベルの高速反応を観察する新しい手法であるレーザー誘起表面振動スペクトロスコピーの開発を目的とする.レーザー光を液体界面に入射させ光の放射圧によって表面形状を制御する.レーザー強度を高速変調し,これに対する界面の変形応答を観察することで広い周波数帯域にわたる界面のダイナミクスを調べることができる.本年度は高出力レーザーと高速光変調素子を導入した界面振動スペクトロスコピー装置を作製した.これによりマイクロ秒程度の時間分解能で表面現象を観察することが可能になった.さらにこの装置を用いて表面の分子吸着層の緩和ダイナミクスの測定を行っている.

 8.  固体表面における水素のオルソーパラ転換機構の解明と新しい表面スピン測定法への応用

助教授 福谷 克之,教授 岡野 達雄,助手・特別研究員 Markus Wilde

助手 松本 益明,研究担当 常行 真司

 固体の表面では水素分子の核スピン状態が1重項から3重項へと転換することが知られており,本研究ではその微視的な素過程の解明を行うとともに,表面スピン測定法への応用を目指している.昨年度測定したメソポーラスアルミナ表面における結果の定量解析を進め,吸着サイトとポテンシャルの非対称性について考察した.また単結晶試料として,NiAl表面とCr表面を直接酸化することによりAl2O3単結晶膜とCr2O3単結晶膜の作製を行った.さらに液体Heを用いた試料冷却装置とパルスバルブを用いた水素供給装置を新たに開発した

 9.  マイクロマシン技術によるDNA注入用微細中空針アレイ

教授 藤田 博之,講師 年吉 洋,助手 安宅 学,教授(北陸先端科学技術大学院大)民谷 栄一

 マイクロマシン技術を用いて微細な中空の針のアレイを作り,それを用いて多数の細胞へ同時にDNA注入を行うシステムを得るため,微細な注射針のような中空針を規則正しく並べたデバイスを作り,同様の間隔で保持した細胞に突き刺し,針の穴を通してDNAなどの遺伝物質を注入することを目指している.

 微細中空針アレイをシリコンのマイクロマシニング技術で製作し,DNA注入機能を確認した.針の寸法や間隔の最適化を行う予定である.

 10.  摂動法の高次解による海洋構造物の非線形現象の解明

助手・特別研究員 鮑 偉光,教授 木下 健

 非線形波力のうちで,差周波数波力による長周期運動と和周波数によるスプリンギングは,近年の研究で摂動法による二次問題により十分解析出来ることが示されつつある.しかし最近リンギングといわれる過渡的な応答が緊張係留のテンドンに顕著に現れ,疲労強度に重大な影響を与える可能性が指摘されている.また長周期運動の減衰力である波漂流減衰力は強制力に比べて,さらに一つ高次になり並進運動のみならず回転運動についての研究が待たれている.ここでは三次の高周波波力とすべての運動モードの波漂流減衰力の理論計算と水槽実験の比較を行っている.

 11.  接触界線領域の蒸発現象に注目した高熱流束沸騰現象に関する研究

教授 西尾 茂文,助教授 白樫 了

 沸騰現象は身近かつ工業的にも重要な現象であるにも係わらず,複雑であるため解明が遅れている現象の一つである.特に,乾燥面の出現による固液接触の構造化が顕著となる高熱流束沸騰については,不明な点が多く技術開発の障壁となっている.本研究では,こうした沸騰領域に関し,固液接触境界である接触界線領域での蒸発が重要な位置を占めているとの判断から,接触界線近傍における蒸発現象自体を実験的かつ理論的に検討するとともに,沸騰現象における接触界線近傍における蒸発の果たす役割を明確にし,高熱流束沸騰のモデル構築を目指している.第二年度に当たる本年度は,単結晶サファイア沸騰面を用いて側面・裏面からいくつかの液体について固液接触構造を高速度ビデオカメラにより観察し,我々が提案した接触界線長さ密度の概念の普遍性を検討した.

 12.  順応型解析手法による大規模海洋骨組の構造設計支援システムの開発(継続)

教授 都井 裕,助教授 林 昌奎,助手・特別研究員 李 廷権

 実際の海洋骨組構造物の極限強度設計に適用可能な汎用的・効率的な解析・設計システムを構築することを目的とし,有限要素法による動的非線形解析における順応型Shifted Integration法の計算アルゴリズムの確立,およびプリ・ポスト処理を含む統合的な大規模骨組構造設計支援システムのプロトタイプコードの開発を進めている.本年度は,骨組構造物の極限強度に影響を与える因子として,塑性変形以外にマイクロボイドなどの塑性損傷を考慮し,弾性変形から降伏,損傷発生を経て破断に至るまでを一貫して解析し得るパイロットプログラムを開発した.

 13.  コロイドの界面電気現象を活用した高機能研削砥石の開発(継続)

教授 谷 泰弘,(タイホー工業)河田 研治

 研削加工に化学的作用を付与するために,化学的物質を封入したマイクロカプセルを製作し,それを第4の要素として取り込んだ研削砥石を開発している.本年度はマイクロカプセルを入れた研削砥石の加工特性とその利用技術について検討を行った.

 14.  セルフパワード・アクティブ制御による防振装置の試作研究

助教授 須田 義大,協力研究員 中代 重幸

 振動エネルギーを回生し,回収したエネルギーのみを利用するアクティブ振動制御方式である,セルフパワード・アクティブ制御について,2自由度振動系への適用性について検討した.制御則の高度化の検討を行った.

 15.  フレキシブル・マルチボディ・ダイナミクスを用いたコルゲーション現象の解明

助教授 須田 義大,研究員 曄道 佳明

 鉄道レールや転がり軸受の表面などには,周期的な変形が生じる.このコルゲーション現象を解明するには,レール・車輪系における接触振動系のモデル化が重要である.フレキシブル・マルチボディ・ダイナミクスの手法を用いて,移動質量を伴う弾性梁モデルの定式化を行い,モデルの構築を図った.実験装置による検討,モデルの高度化を進めた.

 16.  不均一誤り保護と依頼計算を応用したディジタル動画像の著作権管理に関する研究

教授 今井 秀樹,講師 松浦 幹太

 本研究の目的は,従来の技術では対処していないセンターの不正も考慮に入れることにより,著作権をより頑強に保護しつつディジタル画像を流通させるためのプロトコルを提案することである.そのために,まずさまざまな攻撃に対して頑強な電子透かしの埋め込み方法を開発する.埋め込み方法の開発の際には,電子透かしの埋め込みによる画像の劣化も考慮する.次に,電子透かしを埋め込むセンターの不正を防ぐ著作権管理プロトコルを提案する.当研究室が長年培ってきた暗号の技術を応用することにより,センターの不正を防ぐとともに,同時に健全なユーザが不正を行なったとみなされることも防ぐような著作権保護システムを実現するプロトコルを提案する.

 17.  ナノ構造内の電子遷移の新制御法と近赤外・中赤外域光変調機能デバイスの開発

教授 榊 裕之(代表者),助教授 高橋 琢二,助手 野田 武司

 ナノ構造において電子や正孔の準位間の遷移過程を制御する新手法を開発し,近赤外および中赤外領域で動作する新しい光変調機能素子の開発研究を行っている.特に,量子箱や量子細線にキャリアを電気的・光学的に導入した時の光吸収率や屈折率の変化を利用して,光変調機能をもたらす素子の設計解析を進めるとともに,一部試作・評価も試みる.

 18.  視覚情報工学の技法による仮想現実感システムのための幾何・光学モデルの自動生成

教授 池内 克史,講師 佐藤 洋一

 現在,仮想現実感システムは幅広い分野への応用が期待されているが,大部分のシステムのモデルはプログラマーが手で入力している状況である.一方,仮想ショッピング,仮想美術館散策といった応用例を考えてみると,これらには仮想物体,仮想空間のもとになる現実物体,現実空間が存在している.こういった応用分野では,これらの基になっている現実物体,現実空間を仮想化してモデルが得られればシステム作成の手間が大いに省け,仮想現実感システムを安価に作成できる.このような目標のもとに画像処理技術に基づき,実在物体の寸法,曲率といった3次元幾何形状や,反射率,色といった質感のモデルを自動的に生成する手法の開発に関する研究を行っている.本年度は3次元幾何形状モデルに関しては透明物体の形状取得法を,質感に関しては固有テクスチャー法を開発した.

 19.  ディープサブミクロン配線のタイミング特性の研究

教授 桜井 貴康,助教授 平本 俊郎

 設計ルールのスケーリング(微細化)とチップ面積の増大に伴い,配線長の増加による配線抵抗および配線容量の急増,言い換えると配線による伝播遅延の急増,および微細化によるトランジスタの等価出力抵抗の減少により,LSI内部の信号伝播遅延では配線が支配的になりつつある.また隣り合った配線間(ピッチ)の接近と長距離にわたりそれらが沿うことにより配線間のカップリング容量が増し,クロストークなどのカップリングノイズの問題も浮かび上がってくる.このため,タイミング設計においてはディープサブミクロン配線の遅延やカップリングノイズを正しく反映することが重要となる.これらの問題を解決するために,これらを取り扱うCADツール上で配線による伝播遅延特性やクロストークノイズ特性のモデル化を行い,高速解析アルゴリズムを提案することが目的となる.

 20.  大規模並列プロセッサを用いた相関ルールマイニングの超並列処理方式に関する研究

教授 喜連川 優,助手 中野 美由紀,助教授(東京大)中山 雅哉

助手 林 周志,((株)日立製作所)鳥居 俊一

 近年,計算機の処理性能が著しく向上したことから,従来,顧みられなかった膨大なログデータを解析することにより,そこに新しい価値を見出そうとするデータマイニングなる技術が注目されつつある.本研究では,超並列相関ルールマイニングアルゴリズムを開発し,大規模並列コンピュータ(100プロセッサ)上に実現することで,その超高性能化を試み,従来,全く処理不能と考えられてきた巨大データのマイニングを可能とする基盤技術の実用化を試みるものである.

 21.  分散トランザクションの大幅な性能向上を目的とした投機的実行機構の基礎研究

教授 喜連川 優,助手 根本 利弘

 本研究では「投機実行機構(スペキュレーション)」を導入することにより分散トランザクションの実行性能(スループット,レスポンスタイム)を大幅に改善することを目的とする.即ち,研究期間内に投機的分散トランザクション実行機構の形式化を行うと共にプロトコルの設計を行い,更に,詳細なシミュレーションにより投機実行の為のオーバヘッドを明らかにすると共に投機レベルと性能のトレードオフについて詳細に検討する.

 22.  Networked Roboticsにおける人間・機械融合系の研究

助教授 橋本 秀紀(代表者),学長(東京都立科学技術大)原島 文雄

 本研究では,B-ISDNに代表される情報インフラストラクチャと我々の日常世界である物理世界を結ぶメディアとしてのNetworked Robotics Systemを実現する.具体的には物理的な自由度を持ったNetwork AgentとしてRobotを捉え,人間が無線等の情報インフラストラクチャを介してRobotを遠隔制御することによって人間と協調し作業を行うシステムを構築する.現在までに,ネットワーク・プロトルの検証を行い,ネットワーク遅延が人間に与える影響を認知心理学に基づいて評価した.

 23.  仮想現実感を用いたマクロ世界からナノ世界へのテレマニピュレーションに関する研究

助教授 橋本 秀紀,学長(東京都立科学技術大)原島 文雄

 生物学,遺伝子工学,物質工学,半導体産業などの分野でマイクロおよびナノスケールでの物質のハンドリングが急務となりつつある.しかし,マイクロ/ナノ世界及びマクロ世界との間には大きなバリアが存在する.本研究では,サイズが0.1から100 nmの範囲にある物質をマイクロ/ナノ世界とマクロ世界の境界に存在するバリアを克服してマクロ世界からテレマニピュレーションするシステムを構築する.現在までに,原子間力顕微鏡を用いたマイクロスケールの粒子の操作に成功している.

 24.  時間分解テラヘルツ分光法を用いた半導体ナノ構造中のダイナミックな伝導現象の解明

助教授 平川 一彦,教授 榊 裕之・荒川 泰彦

 フェムト秒レーザパルスを用いた時間分解テラヘルツ分光法を用いて,半導体中の電子の超高速運動が放出するテラヘルツ電磁波を実時間領域で検出することにより,電子のダイナミックな伝導現象を解明することを目的に研究を行っている.本年度は,広帯域ボロメータを用いた自己相関測定法を用いて,帯域約20 THz,時間分解能約50 fsでキャリアの動きを観測できるシステムを構築した.さらに,それを用いて,半導体空乏層を伝導する電子の速度の過渡現象,光学フォノンとの相互作用について検討を行った.また,様々なミニバンド幅を有する半導体超格子中を伝導する電子が放出するテラヘルツ電磁波についても検討を行い,励起光のスペクトル幅に対してミニバンド幅が狭い超格子中では,電子の伝導が抑制されることなどを明らかにした.

 25.  量子ホール効果状態における光磁気抵抗変化を用いた超高感度テラヘルツ光検出器の開発

助教授 平川 一彦,教授 榊 裕之・(東京大)小宮山 進

 量子ホール効果状態にある半導体2次元電子系の磁気抵抗が遠赤外光の照射により大きく変化する現象を用いて,超高感度のテラヘルツ光検出器を実現することを目標にしている.本年度は,様々な磁場,バイアス電流に対して,遠赤外光検出感度,雑音を測定し,動作条件の最適化を行った.さらに,得られた結果より,検出能は磁場の値にあまり依存しないこと,雑音は主に1/f雑音で支配されていること,また得られる検出能が市販のボロメータの数十倍の値であること等が明らかになった.

 26. ヘテロなネットワークにおける統合映像配信・通信システムの構築

助教授 瀬崎 薫(代表者),教授(早稲田大)安田 靖彦,(キヤノン)佐藤 宏明

 本研究では映像メディアを柔軟に伝送・配信及び検索可能な統合的なシステムを構築することを目標とする.具体的な課題としては,低速回線と高速が混在する状況では,既存のインターネットプロトコルを用いると,受信端末に近い低速部では相対的に遅延とレート変動が増大する現象が生じるので,これを抑制する制御方式を検討する.次に,この制御方式を前提として,リアルタイム映像通信と,将来のトラヒックが既知である映像配信の両者に適した映像伝送方式を検討する.さらに,この映像伝送方式を念頭においた上で,映像情報をキャッシュサーバを含む複数のサーバにおいた場合に,アクセスコストやメモリ容量などの総コストを動的に最小化する機構を考察する.

 上記課題のうち,本年度は計算機シミュレーションにより,準備的検討を行った.

 27. 界面構造解析・制御による薄膜成長プロセスの動的キャラクタリゼーション

教授 二瓶 好正・尾張 眞則,助手・特別研究員 石井 秀司

 X線光電子回折(XPED)法により,表面上での化学反応・成長プロセス前後の原子構造の変化を精密に決定するだけでなく,その途中の動的過程をXPEDの時間分解測定によってリアルタイムで解析する実験的方法を確立し,反応・成長プロセスの評価に役立てることを研究の目的としている.特にXPED法の元素識別性を利用して,表面変性エピタキシーや表面合金化など,最表面原子だけでなくナノメートルオーダーの深さまでの原子が関与するために走査トンネル顕微法などでは完全に解析できない系に重点をおいて研究を進めている.

 28.  超細束イオンビームを用いた工業材料のナノスケール三次元分析装置の試作研究

教授 二瓶 好正,研究担当 坂本 哲夫,助手・特別研究員 石井 秀司

 本研究の目的は,ナノスケール三次元元素分析法の開発・装置化である.本手法及び装置は,これまで開発もしくは解明されていない以下の様な事項を詳細に検討した上で,実現されるものである.すなわち(1)ビーム径が数ナノメートルの超細束一次イオンビームの開発,(2)長時間安定で精密なビーム走査制御技術の開発,(3)迅速かつ適切な処理を可能とする三次元データ解析システムの開発,(4)収束イオンビーム加工断面の形状・化学状態の解明である.以上の様な事項の詳細な検討結果に基づき試作した装置を用いて,ナノメートルオーダーで構築された超LSI中注入不純物などの工業材料中極微量元素分析や,粒径1ミクロン以下の超微粒子あるいは環境微粒子などを試料とした粒内元素分布計測を行い,これまでにない超高空間分解能三次元分析法を開発する.

 29.  遷移金属侵入型化合物と過酸化水素の特異的反応と生成物質のキャラクタリゼーション(継続)

教授 工藤 徹一(代表者),助教授(東京大)水野 哲孝,助手 日比野 光宏

 前年度に引き続き,モリブデン,タングステン,バナジウム等の金属窒化物と過酸化水素の反応を核磁気共鳴,赤外およびラマン分光,X線光電子分光,TOF質量分析法などの多用な手段で調べた.その結果,従来知られているtetraperoxoditungstateに加えてdiperoxomono-tungstateやその水和体などの新しい錯体の生成が確認された.また,炭化物中の炭素は専ら酸化を受けるだけなのに対し,窒化物中の窒素は酸化とともに加水分解も受けることが分かった.これは化学結合のイオン性の差異によるものと考えられる.プロトン伝導性についても引き続き検討している.

 30.  バナジウム基酸化物薄膜のリチウム挿入特性と薄膜電池への応用(継続)

教授 工藤 徹一(代表者),助教授 宮山 勝,助手 日比野 光宏

 ICカード,マイクロメカトロニクス等に用いる高容量薄膜マイクロ電池の開発が強く望まれている.本研究は非晶質酸化バナジウムおよびこれをベースとして合成される複合酸化物を薄膜化し,そのリチウム挿入特性を評価することにより,薄膜リチウム二次電池への応用可能性を実証しようとするものである.前年度に基本特性を確認したバナジウム/モリブデン系非晶質混合酸化物膜を正極,金属リチウムを負極,ポリエチレンオキシド系高分子固体電解質をイオン伝導層とする薄膜電池を試作し,10マイクロメートルの厚さでも利用率が低下することなく,充放電可能であることを確かめた.

 31.  仮想廃棄物焼却炉モデルの構築による非意図的生成物質の生成機構解明

教授 安井 至

 日本の現状では,廃棄物のある程度の焼却は必須である.しかしながら,ダイオキシンなどの非意図的化合物の生成を防止するためには,制御を極めて厳密に行う必要がある.本研究では,個々の物質の焼却プロセスを検証することによって,その積み上げから実際の焼却炉の操業が再現できるかを検討し,ミクロ的・分子論的立場からの焼却プロセスの理解と改善を目指している.

 32.  磁気EXAFSによる希土類−遷移金属合金のスピン分極分布の研究

教授 七尾 進

 磁気EXAFSは,EXAFS領域におけるX線吸収に対する磁気的寄与である.磁気EXAFSスペクトルからは,特定元素の周囲のスピン分極の空間分布に関する情報が得られる.本申請者らは,これまで磁気EXAFSの試験的な実験を行ってきており,スペクトルの測定法,解析法に関して,基礎的な情報を把握したと確信している.

 本研究では,DyCo5およびNdCo5における希土類原子周囲のスピン分極分布の精密測定をお子なった.磁気EXAFSを精密測定した結果を,磁気ブラッグ散乱,磁気コンプトン散乱,中性子磁気散乱(NdCo5のみ)の測定結果と比較検討した.また,さらにTbFe2合金についても測定を行い,現在解析中である.

 33.  鉄鋼精錬プロセスにおけるCaF2減量化に関する熱力学的研究

教授 前田 正史,助手 池田 貴

 鉄鋼精錬における,ふっ素排出を抑制することを目的にフラックス添加剤として用いられているCaF2の使用減量に関する研究を行っている.CaF2の代替としてSiO2,TiO2を取り上げ,1673 KにおけるAl2O3-CaF2-SiO2系相平衡図,Al2O3-CaO-TiO2系相平衡図の測定を行った.CaF2の一部をAl2O3で置換するとSiO2の溶解度を上昇させ,少量のTiO2のAl2O3,CaOの添加は融点に影響しないことが分かった.

 34.  ポリピリジル骨格を持つ新規な機能性有機蛍光物質の創成

教授 荒木 孝二,助手・特別研究員 務台 俊樹

 多点分子間相互作用部位を持つポリピリジル化合物に蛍光性を付与し,分子間相互作用に基づく蛍光制御が可能な新規な機能性蛍光物質群を設計し合成することを目的とした.本年度は,新規な蛍光性物質となることが明らかになっているフェニル置換テルピリジル化合物の置換位置と蛍光特性との関係などを解明した.また新規な蛍光性ビピリジル化合物として開発したジピリドフェナジン誘導体について,アルカリ土類金属イオンに対する特異的な蛍光応答など,金属配位部位を持つ蛍光物質としての機能を明らかにした.

 35.  複合材料界面の真実接触部での力の伝達を用いた界面せん断滑り応力の定量的評価・解析(継続)

教授 香川 豊

 異なる表面形状を持つ繊維とエポキシマトリックスを複合化したモデル材料を用いて,界面せん断滑り応力に及ぼす滑り界面での表面粗さの影響を評価した.界面力学特性の評価にはプッシュアウト,プッシュバック試験を用いた.その結果,界面せん断滑り応力は滑り表面での界面の凹凸に大きく依存することが確かめられた.ついで,界面の凹凸の幾何学的形状に着目し,界面せん断滑り応力が滑っている界面の真実接触部分の真実接触面積を用いて理論的に表されることを示した.これらの結果を工業的な材料系であるAl2O3繊維強化Al2O3の界面せん断滑り応力の定量評価に応用し,界面せん断滑り応力に及ぼす材料組織の影響を定量的に解釈することができた.

 36.  太陽電池用シリコンの方向性凝固による高純度化と凝固残留応力の制御(新規)

教授 香川 豊・前田 正史

助手・特別研究員 池田 貴,民間等共同研究員 島田 雄彦

太陽電池用シリコンの低コスト製造プロセスの確立を目的としている.小型電子ビーム溶解炉を用いてCa,Al,P,Cなどの気化除去に関する速度論的・熱力学的データの収集とその解析を行い,スクラップシリコンに含まれるSbなどの除去についても検討した.真空中での連続鋳造を行い,凝固速度,溶解出力,供給量が精製効果におよぼす影響を調べた.また,凝固におよぼす加熱条件などの影響,および残留歪の少ない凝固条件を決定するために凝固モデルを用いた数値シミュレーションを行った.

 37.  金属コーティングを利用した表面改質SiTiCO繊維強化Ti基複合材料の実現(継続)

教授 香川 豊,助手・特別研究員 本田 紘一・射場 久善

研究員(宇部興産(株))佐藤 光彦

 表面改質した直径30〜40 μmのSiTiCO繊維の表面にAuコーティングを施すことにより,繊維特性を劣化させずにTiマトリックスと複合化しSiTiCO繊維強化Ti複合材料を作製することの可能性とその問題点について検討した.複合化時に界面に生じる金属間化合物層(AuxTiy)の生成とその層厚さは,Auコーティング層厚さおよび複合化時のプレス加圧時間に依存し,金属間化合物層が生成した複合材料から抽出した繊維の引張り強度は複合化前の繊維強度とほぼ同じであった.繊維表面から金属間化合物層の剥離が観察され,金属間化合物と繊維の界面は力学特性を制御する役目を持つことができると考えられた.

 38.  ナノイオンビームによる最先端工業材料の三次元分析法の研究

教授 尾張 眞則,研究担当 坂本 哲夫

 本研究は,最先端工業材料の解析評価における要請に対して十分に応えられる空間分解能と感度を有する三次元組成分析法を創出するべく,イオンビームの持つ材料微細加工性と高感度プローブとしての特長をともに発揮した新たな高空間分解能高感度三次元分析手法を提案し,その有効性を評価することを目的とする.すなわち,収束イオンビームを用いて材料中の任意の断面を削り出し,その断面について収束イオンビーム励起飛行時間型二次イオン質量分析法を適用して高感度二次元組成分析を行う.さらに連続する断面についてこれを繰り返すことにより,三次元組成分布を得る手法を開発する.

 39.  個別微粒子表面に吸着した難揮発性有害有機物の直接分析法の開発

教授 尾張 眞則,研究担当 坂本 哲夫

 本研究ではまず第一に固体表面に微量吸着した分子量数百の難揮発性有機物の二次イオン質量スペクトルを,化学種の識別が可能な状態で測定することを試みる.ついで混合吸着物に対して同様な測定を行い,混合物のスペクトルからの各成分の識別と定量の方法を,多変量解析などの数学的手法の適用を含めて検討する.これらの結果をふまえて,微粒子表面に吸着した超微量有機物の分析法を提示し,焼却炉排ガスに含まれるフライアッシュを想定した微粒子に対する難揮発性有害有機物の個別微粒子単位での分析への適用性を評価する.これらの各段階を通して,環境微粒子表面に吸着した難揮発性有害有機物の直接分析法の開発を行う.

 40.  異種電気物性領域をもつビスマス層状構造酸化物の設計

助教授 宮山 勝(代表者),教授 工藤 徹一,助手(東京大)中村 吉伸

 ビスマス層と疑ペロブスカイト層が積層された結晶構造をもつビスマス層状構造酸化物について,単結晶の育成とその構造・物性の評価,および異なる2種のペロブスカイト層が規則的に配列した交代層構造強誘電体の探索を行った.単結晶での強誘電性評価から,残留分極値はキュリー温度に,抗電界と分極反転速度はペロブスカイト層の厚さ(BO6八面体の数m)に強く依存することを明らかにした.また,mが1と2,2と3および3と4からなる交代層構造体の多結晶体を作製し,それらの強誘電性相転移と強誘電物性を初めて明らかにした.交代層を構成する単層体よりも大きな残留分極値をもつものを見出している.

 41.  強誘電性および導電性の交代層をもつビスマス層状構造酸化物デバイスの開発

助教授 宮山 勝(代表者),教授 工藤 徹一,(日立製作所) 平谷 正彦

 方向により強誘電性,導電性が同時に発現する結晶体の設計・創製を目的に,強誘電性のペロブスカイト層と導電性のペロブスカイト層が絶縁性酸化ビスマス層をはさんで交互に配列したビスマス交代層構造酸化物を合成することを試みた.まず単層の導電性層状構造体の作製を目指し,チタン酸ビスマス(Bi4Ti3012)およびBi-Ti-Fe-O系酸化物のTiあるいはFeの一部をMnで置換した固溶体を作製し,Mn固溶量とともに導電率が増大しp型半導性を示すようになることを明らかにした.Mnを含む層と含まない層からなる交代層構造体の合成とその物性評価を進めている.

 42.  ダイヤモンド膜の二段階CVD成長法による切削工具の高信頼化

助教授 光田 好孝(代表者),助手・特別研究員 虫明 克彦

 CVD合成ダイヤモンド膜を用いた切削工具はが商品化されているものの,密着性や寿命,コストなどに問題点を抱えている.密着性・経済性の観点から,as-depo状態でのCVDダイヤモンド工具の作製が必要不可欠であると考えられる.一方,当研究室でこれまでに行ってきた高過飽和二段階CVD成長法ではダイヤモンドの核生成密度の増加効果が確認され,高い密着強度をもたらす可能性が示唆されている.そこで,本研究では,この二段階CVD法を用いて超硬材料基体上にダイヤモンドを堆積させた,as-depo状態でのダイヤモンド工具の信頼性を向上させることを目的とする.

 本年度は,経済性を向上させるφ120の円筒マイクロ波共振器を用いたエンドランチ型マイクロ波プラズマCVD装置を用いて,広い面積へのダイヤモンド膜堆積を試みた.この結果,Si基板上のφ50程度の範囲に比較的均一なダイヤモンド膜を得ることに成功した.現在,密着性向上を目指した超硬材料基体上へ堆積を試みている.

 43.  化学物質人体影響の定量的評価のための複合細胞培養システムの開発研究

講師 酒井 康行,助教授 迫田 章義

 既存の単一培養細胞からなる毒性評価系では,吸収・代謝・分配といった人体内での毒性発現に至までのプロセスが考慮されない.そこで,これらを考慮する実験系として,膜上に培養された小腸上皮細胞と担体内に高密度培養された肝細胞および標的臓器細胞(腎臓・肺など)を生理学的な培養液灌流回路で接続する新しい毒性評価システムの開発し,毒物経口摂取後の血中濃度と毒性発現を速度論的に再現することを目指している.現在までに,小腸上皮と肝細胞の2種を灌流培養可能な簡便なシステムの開発を終了した.

 44.  CFD連成シミュレーションに基づく空調システム最適化のための逆問題解析法の開発

教授 加藤 信介(代表者)・村上 周三,助教授 伊香賀 俊治,助手 白石 靖幸

 本研究の目的は,室内環境解析シミュレーションの逆変換法を検討することである.室内の環境性状を設計目標値に最大限に近似させるための室内の物理的な境界条件を求める手法,すなわち逆問題解析による環境の自動最適化設計手法の基礎的な検討を行う.

 45.  適応型柔軟構造物に関する学術調査

教授(ドイツ・シュトゥツガルト大学)Jorg Schlaich・Ekkehard Ramm

教授(米国・コーネル大学)John Abel・(スロバキア・スロバキア工科大学)Zoltan Agocs

助教授 川口 健一(代表者)・(英国・ケンブリッジ大学)Sergio Pellegrino

助教授(英国・ケンブリッジ大学)Simon Guest・(ギリシャ・アテネ工科大学)Charis Gantes

助教授(英国・オックスフォード大学)Zhong You,助手 宮崎 明美

 近年世界各地に建設されつつある可動型の建築構造物は,単に機械を大きくしたものである場合が多い.今後自然環境との共生を考えていかなくてはならない時代においては,構造物自身が自然環境と共生していくためには,人間本位の建築構造技術自体を見直して行く必要がある.建築構造学の分野では,環境に適応できる適応型構造物の技術が開発されつつあり,また,重厚長大な材料から,膜材などの軽量かつ柔軟な建築材料が開発されつつある.適応型構造物は災害被災地や宇宙空間,海洋などの遠隔地においても利用価値が高いことが予想される.本調査によって新たな建築技術のあり方を示すことを考える.本年度は,9月,10月に川口助教授がマドリッドにおける世界空間構造会議に出席し,その後スペインの,可動部を持つ建築物を調査した.また,11月にアテネ工科大学のガンテス助教授を招き,展開型構造物の地上における利用価値について意見交換を行ない,1月にケンブリッジ大学のゲスト助教授を招き宇宙型柔軟構造物の基礎研究について情報交換を行なった.

 46.  空間構造の静的及び動的挙動に関する研究

教授(米国・ワシントン大学)Phillip L. Gould・Srinivasan Sridharan

教授(韓国・成均館大学)権 宅鎮,助教授 川口 健一,助手 宮崎 明美(代表者)

 地震・台風・ハリケーン・竜巻等の環境下における,空間構造(シェル構造,スペースフレーム,膜構造等)の日米における研究状況をレビューし,静的及び動的挙動に関する共同研究を実施する.レビューの比較,検討を行うため,日米においてミーティングを行う.同時にレビューをレポートとして作成し,次年度以降への基礎資料とする.本研究課題は,故半谷裕彦教授によって開始されたが,半谷教授の逝去後,宮崎助手が代表を引き継いで,川口助教授と共に継続している.当初,国際学術研究として開始されたが,本年度より科学研究費基盤研究(B)(2)に組みこまれた.本年度は,7月に韓国より権教授を招き,韓国における本研究課題の実状と,共同研究企画について話し合った.また,10月に川口助教授が米国を訪問し,ワシントン大学においてP. L. Gould教授及びS. Sridharan教授と本研究課題について研究成果の情報交流及び来年度の活動に関して協議を行った.

 47.  大規模地震に対する各種擁壁構造物の実用的な耐震設計法に関する研究

助教授 古関 潤一,研究担当 龍岡 文夫

助手 佐藤 剛司・早野 公敏,大学院学生 渡辺 健治

 前年度に引き続き,形式の異なる擁壁模型を用いた水平加振実験を,不規則波入力により行った.その結果,重力式やL型などの従来型擁壁よりも補強土擁壁のほうが,変位し始めたあともねばり強い特性を示すことを明らかにした.また,台湾で発生した集集地震における擁壁構造物の被災調査を実施した.その結果,従来型擁壁の被災原因として,断層変位,背後斜面のすべり,支持地盤の支持力不足,および擁壁自体の過大な慣性力が考えられること,さらに,補強土擁壁は補強材の敷設間隔が大きいほど被害が大きかったことを示した.

 48.  応力とひずみの広範囲な三次元条件下における粗粒材料の変形・強度特性の研究

助教授 古関 潤一,研究担当 龍岡 文夫,助手 佐藤 剛司・早野 公敏

大学院学生 Kandasamyiyer Balakrishnaiyer・Le Quang Anh Dan

 前年度に引き続き,良く締固めた千葉レキの大型角柱供試体(23 cm×23cm×57 cm)を用いて最大900 kPa程度の拘束圧力下で排水繰返し三軸試験を実施し,水平応力一定,鉛直応力一定,あるいは平均応力を一定に保った場合の応力ひずみ関係に及ぼす応力経路の影響を明らかにし,得られた結果を統一的にモデル化する手法について検討した.また,このような硬質な供試体の弾性波速度を測定する手法について基礎的な検討を実施した.

 49.  沿道住居の高遮音化に関する研究

教授 橘 秀樹(代表者),講師 坂本 慎一,助手 上野 佳奈子,研究員 矢野 博夫

 都市生活の利便性は道路交通に大きく依存しているが,その反面,モータリゼーションの進展によって居住域の音環境は悪化の一途を辿っている.特に幹線道路の沿道に高密度に住居が立地するわが国の都市部における居住形態を考えると,騒音源である道路とそれに近接する建物を都市設備として総合的に取り扱う視点が必要である.そのような背景をもとに,沿道の音環境を改善する手法を体系的に研究し,将来の沿道住居の在り方を音響工学の立場から研究する.本年度は,幹線道路沿道における騒音の実態調査,各種建物ファサード構造の遮音性能に関する模型実験による検討を行った.

 50.  大型構造部材を対象とした低サイクル疲労パラメータ計測システムの開発

助教授 舘石 和雄,教授 魚本 健人

 阪神大震災以降,土木構造部材に生じる低サイクル疲労破壊の危険性が指摘されている.従来,低サイクル疲労の研究は,力学条件が明快な環境下で小型試験体を用いた実験によって検討されてきた.しかし実構造物においてはひずみ場,応力場が複雑であることから,その影響を取り込んだ上で低サイクル疲労挙動を明らかにする必要がある.本研究は実構造部材に近い形状の大型構造部材における変形性状,ひずみ場などを,画像計測などによって捉えるためのシステムを構築し,それによって得られた計測結果に基づいて,高精度な低サイクル疲労強度の予測を試みるものである.

 51.  利用者の避難行動から見た都市施設の総合的安全性評価システムの開発

助教授 目黒 公郎(代表者),教授 須藤 研,助教授 山崎 文雄

所長(科学技術庁防災科学技術研究所)片山 恒雄

 従来都市空間や施設の安全性は,構造体としての物理的な強度を中心として議論されてきた.しかし最近では,構造設計技術や施工技術の進歩,新素材の開発などによって構造物の強度は向上してきている.また地震災害などを対象とした場合,発生頻度を考えれば,構造体の壊滅的な被害には至らないが,その空間や施設を利用する人々の避難安全性が問題となるような事態の方が発生の可能性が高い.本研究は,利用者の避難安全性から見た都市空間/施設の安全性評価法と新しい設計法を提案するものである.すなわち構造的に十分な強度を有し日常的に高い機能性を有しながら,非常時においてもその機能を低下することなく維持できる総合的な安全性を確保するための設計と評価法の開発,並びに安全性向上のための適切な施策の提案を行う.

 52.ディスポーザブルなマイクロチップを用いた生体高分子の反応及び分離検出

助教授 藤井 輝夫(代表者)・(東京大)関 実,基礎科学特別研究員(理化学研究所)山本貴富喜

 シリコン基板上に製作した構造を鋳型にして,シリコーンゴムを用いたマイクロモールディングプロセスによって安価でディスポーザブルなマイクロチップを製作し,これを用いた高速かつ高性能な生体高分子の分離検出を実現すると同時に,製作プロセスの簡便性を活かし,分析対象物質をオンチップで合成するなど,分離検出以外の機能をもチップ上に集積する可能性について検討を進めている.

9.基盤研究(C)(1)

  多次元画像流速計測標準のための国際協力に関する企画調査

教授 小林 敏雄(代表者),助手 佐賀 徹雄,教授(北海道大)井口 学

教授(関西大)植村 知正・(近畿大)江藤 剛治・(大阪府立大)奥野 武俊

教授(東京大)笠木 伸英・(埼玉大)川橋 正昭・木村 一郎・(九州大)速水 洋

教授(慶應義塾大)菱田 公一・(新潟大)藤澤 延行・(福井大)山本 富士夫

助教授(東京大)岡本 孝司・(山口大)小河原 加久治・(大阪大)加賀 昭和

助教授(山口大)加藤 泰生・(神戸商船大)西尾 茂・(横浜国立大)西野 耕一

助教授(京都工芸繊維大)村田 滋

 多次元画像処理流速計測を工学的に有効な手法として確立するために,国際標準設定と国際共同研究の企画調査を実施した.最先端技術の調査により,多次元画像処理流速計測に関する世界的な現状を把握するとともに,これをデータベース化した.将来研究の動向と発展性についてとりまとめ,これらの結果をもとに”Challenging PIV Work”を提案し,欧州,米国,アジアなどとの国際共同研究をすすめることとした.

10.基盤研究(C)(2)

 1.  プラズマ乱流中の熱エネルギ−輸送障壁形成の電磁流体統一理論

助手 横井 喜充(研究代表者),教授 吉澤 徴

助教授 半場 藤弘,研究員(東北文化大)加藤 浩文

 トカマクで発見された高閉じ込めモードはプラズマ端での輸送障壁の形成を特徴とするが,その後輸送障壁は様々な装置で発見され,形成位置にしたがって,境界輸送障壁,内部輸送障壁等と呼ばれている.輸送障壁形成機構については,径方向電場およびその勾配の重要性が既に指摘されているが,局在性等の空間的性質を表すためには径電場の2階微分(曲率)を考慮する必要がある.本研究では,径電場の曲率と関連する電荷分布の非一様性という観点から境界輸送障壁および内部輸送障壁の形成を考察し,その統一的理解を図った.また,径電場と密接するプラズマのポロイダル回転の発生機構を,プラズマの速度と磁場の相関を表すクロス・ヘリシティを用いて調べた.

 2.  3次元4光波干渉によるフォトニック結晶の形成

助教授 志村 努,教授 黒田 和男,助手・特別研究員 的場 修,助手 芦原 聡

 本研究では4光波の干渉による3次元の周期的明暗パターンを用い,感光性物質を用いた光造形的な手法によりフォトニック結晶構造を形成することを目的としてその基礎研究を行う.4つのkベクトルを持つ互いにコヒーレントな光波の角度を立体的に適当に設定することにより,さまざまな晶系の明暗を作ることができる.第1段階としてベクトル4光波の干渉により作られるいくつかの晶系につき,その明暗のコントラストを理論的に求め,異なる感光特性を持つ材料で作られる立体の形を求めるシミュレーション,およびフォトリフラクティブ結晶を用いた実際に作られる空間パターンの評価を行っている.

 3.  準結晶の転位

助教授 枝川 圭一

 準結晶構造はi)準周期的並進秩序,ii)非結晶点群対称性,の2つで特徴づけられ,一般に4次元以上の多次元空間の結晶格子をその部分空間である3次元空間に射影することによって記述できる.このことを用いてバーガース・ベクトルが高次元格子の格子並進ベクトルであるような転位を準結晶中に定義することができ,実際にこのような転位の観察例が幾つか報告されている.このような転位は実空間の格子変位による通常の歪の他に実空間と直交する補空間方向の格子変位によるフェイゾン歪がともなう点で準結晶に固有な全く新しいタイプの構造欠陥であるといえる.このような準結晶中の転位の性質を実験,理論両面から研究する.

 4.  材料損傷および破壊を考慮した構造解析法に関する研究

教授 都井 裕,助手・特別研究員 李 廷権

 連続体損傷力学理論による損傷発展式(損傷・応力関係式)および構成方程式(応力・ひずみ関係式)を非線形構造解析に援用することにより,塑性変形,座屈,損傷発生,破壊に至るプロセスを一貫して解析し得る有限要素解析プログラムの開発を進めている.本年度は,静的・動的引張り,疲労,予疲労・予ひずみ下の動的引張りなどの数値材料試験,溶融亜鉛めっき時の構造部材および熱サイクルを受ける傾斜機能材の熱損傷挙動の解析などに本アプローチを適用し,実験結果との対比により十分な将来性を有する計算力学手法であることを確認した.

 5.  ダイナミックSGSモデルに基づく複雑乱流場のLESモデリング

助教授 谷口 伸行(代表者)・大島 まり

 直接解析の適用できない複雑乱流場の解析手段としてラージ・エディ・シミュレーション(LES)が挙げられるが,工学一般の問題へ適用するには未だ研究課題を残している.近年Germanoらの提案したダイナミックSGSモデルは基礎的研究では多くの課題に優れた結果を与えており,LESにおける汎用的な乱流モデリングとして注目される.本研究では,ダイナミックSGSモデルの考え方に基づいた複雑乱流場のLESモデリングの実用的な定式化を示し,その数値計算上の問題点を明らかにすることで,乱流LESのより広範囲な応用を進めることを目的とする.その具体的な研究課題として,今年度は,特に燃焼流,および,分散粒子系の固気混相流のLESモデリングの提案と検証,および,LES解析における数値誤差に伴う計算安定性の検討を行った.

 6.  ベストエフォート型ネットワークにおける遅延予測とメディア同期への応用

助教授 瀬崎 薫

 本研究では,ベストエフォート型ネットワーク上での遅延補償,即ちメディア同期の問題を解決するため,ネットワークの短時間遅延分布と,その推移の仕方に注目し,その特徴を捉えた上で,それを活かした効率的なメディア同期方式を提案することを目的とする.本年度は,従来手法より統計的適合度の高い遅延分布モデルを導出することに成功した.

 7.  ゾル・ゲル法によるリラクサー型強誘電体薄膜の作製

助教授 小田 克郎(代表者)

 本研究では,リラクサー型強誘電体を実際にコンデンサー,アクテュエーター等として用いる際に有力な作製手段であるゾル・ゲル法等を用いてPb(Mn1/3Nb2/3)O3,Pb(Fe2/3W1/3)O3,Pb[(Fe1/2Nb1/21-xTix]O3等のペロブスカイト構造を持つ鉛系リラクサー型強誘電体膜を作製する.そ次に,得られた膜が散漫相転移をする際に微細構造がどのような挙動を示すかを調べる.測定手段としては複素誘電率の温度周波数依存性を用いて外部電場に対するマクロな応答を,ラマン分光法を用いてミクロな各構成原子間の結合状態を調べる.また,特にFe原子を含む系においてはFe原子核が置かれている局所的環境を調べるのに最適な測定手段であるメスバウアー分光法を用いる.これまで,強誘電体の研究に関してはメスバウアー分光法は他の材料に比べてあまり用いられていない.本研究では強誘電体の研究に置いて初めてメスバウアー分光法を系統的に用いてスペクトルの温度依存性を調べ,散漫相転移の機構を調べる.

 8.  X線発光分光法を用いた準結晶の特異な電子構造の解明

助手 渡辺 康裕

 X線発光分光法は,入射X線によって内殻電子を励起させて正孔が形成された後に,外殻電子が遷移する際に輻射するX線分光することによって,電子構造を調べる新しい実験手段である.本研究では,Al-Pd-Mn,Al-Mn-Si,Al-Mn-Fe-Geなどの準結晶を対象として,その特異な準周期構造がどのように電子構造に反映するかどうかを調べている.

 9.  光電子回析による金属/絶縁体薄膜界面反応

助手・特別研究員 石井 秀司

 金属/絶縁体界面や絶縁体/半導体界面の状態を原子レベルで把握することは,微細化の進む半導体デバイスの製造プロセスの上からも欠くことができない.特に絶縁体としての酸化物が使われた場合には,これらの界面での酸化反応が生じて界面状態が変化し,デバイスの性質に大きな影響を与える可能性がある.本研究では,このような界面での反応に伴う原子レベルでの構造・化学状態変化を調べるための分析手法の確立とその界面反応プロセスの基本機構を明らかにすることを目的とする.具体的には,半導体デバイスの配線などに対応する金属/酸化物絶縁体界面や金属半導体界面などに注目し,厚さ数原子層程度の超薄膜系界面に高角度分解能XPEDやエネルギースキャン光電子回折法を適用する.

 10.  日本近代建築におけるアメリカの影響に関する研究

教授 藤森 照信

 日本の近代建築は欧米の影響を常に受けながら発展してきた.第一次大戦後はアメリカの影響が顕著になるがその中で,スバニッシュ・スタイルは日本でも住宅建築において大流行した.そこで,日本近代建築のスバニツシュスタイルについて研究を深め,日本近代おけるアメリカ建築の影響を具体的に示すことを目的とする.

 11.  AE法による鋼材の低サイクル疲労破壊特性の解明

助教授 舘石 和雄(代表者),教授 魚本 健人

 本研究は破壊時に発生するAEに着目し,鋼材の低サイクル疲労破壊特性を詳細に解明することを目的としている.低サイクル疲労破壊特性として,微視的な破壊モード(疲労破壊,延性破壊,ぜい性破壊など),1サイクルあたりの破壊進展の程度,破壊の発生時期,発生点などに,AE特性として波数,振幅,周波数分布(波形)などの特性に着目し,これらを関連づけることにより,AE波によって鋼材の内部で生じている低サイクル疲労破壊過程を精度よく推定することが可能となるものと考えられる.

11.特別研究促進費(1)

 1999年トルコ・イズミット地震とその災害に関する調査研究

教授 須藤 研(代表者),助教授 目黒 公郎・(東京大)須貝 俊彦・(東京大)堀 宗朗

教授(東京工業大)衣笠 善博,助教授(愛媛大)森 伸一郎,教授(東北大)源栄 正人

助教授(京都大)西山 峰広・(九州工業大)幸左 賢二・(京都大)梅田 康弘

助教授(文教大)田中 淳,教授(東京都立大)中林 一樹

 本地震が発生したトルコ国は,世界有数の地震多発国で,過去にも多大の地震被害に見舞われている.とりわけ,今回の地震の発生源となった北アナトリア断層の西端部分は,長く空白域として注目されその危険性は広く認識されていた.にもかかわらず大災害となった.この理由,背景を解明分析することが本調査研究の第一義的目的であり,このことに本調査研究の意義がある.このために下記を調査する:(1)活断層と近傍地盤の挙動,(2)地震動と被害,(3)都市防災と災害社会学

12.萌芽的研究

 1.  三次元粒状体の微視的構造と巨視的挙動の精密計測および解析手法の開発

教授 小長井 一男,協力研究員 松島 亘志

 砂礫などの粒状体を材料として扱う工学分野では,その材料の巨視的な性質に関する実験結果に基づく理論や経験則を背景に変形解析が行われている.しかしながら粒状体の巨視的性質は,個々の構成単位である個別の粒子が持つ基本性質(一次情報)に加えて,これらが積みあがって構成される粒子骨格(fabric)に大きく依存し,これを的確に把握しなければ現行の解析法が直面している諸問題(ひずみの局所化,力学的ラチェット現象など)の解決は難しい.本研究では研究代表者らが開発した三次元粒状体内部の可視化手法(レーザー援用トモグラフィー:LAT)を粒状体の標準的試験の一つである平面ひずみ試験装置などに応用し,供試体内部の三次元的な粒子運動や形態という従来手法では得ることのできない情報を,粒子集合体としての巨視的性質の精密計測と関連付ける手段を提供した.

 2.  サブストラクチャ・オンライン地震応答実験の精度向上に関する研究(継続)

助手 楠 浩一

 サブストラクチャ・オンライン地震応答実験とは,建物全体の弾塑性地震応答解析を行う際に,応答に大きな影響を与える部分に関しては実際に試験体を加力することにより復元力特性を得,他の部分に関しては復元力モデルに数値計算モデルを用い,両者をオンラインで結び応答解析を進める手法である.しかし,アクチュエータシステムでは,計測機器の精度により,各ステップで強制する変位と計測変位の間に制御誤差が生じる.この制御誤差は実験精度に大きな影響を与えることが知られている.そこで,この制御誤差の影響を低減させる数値積分法として,「可変時間刻み法」を提案し,その有効性を実験的に検討している.

 3.  凝固核生成のアクティブ制御に関する研究

教授 西尾 茂文(代表者),助教授 白樫 了

 研究は生体の凍結保存を念頭において,水素結合をしている水(氷)を対象とする.凝固相である氷の誘電損率(複素誘電率)は周波数6kHz近傍でピーク値をとり,液相である水の数GHzとかけ離れている.この誘電損率の周波数特性の違いを利用して,凝固核の前駆体であるクラスターに選択的に電場エネルギーを吸収させ,分解させることで,核生成の抑制の可能性を調べる.また,融解過程において,照射電界の周波数による融解促進の可能性をも併せて調べる.

 4.  マイクロチャネルで発現する特異熱流動現象に関する研究

助手 高野 清,教授 西尾 茂文

 最近の微細加工技術の進展により,0.1 mmオーダー以下の断面代表寸法を有する流路(マイクロチャネル)の形成が可能となってきた.流路内で発達した層流熱伝達率は,流路断面代表寸法に逆比例して高くなることが知られている.したがって,マイクロチャネルを利用すると,高密度の熱処理ができるヒートシンクやコンパクトな熱交換器が開発できる可能性があり,LSIチップの冷却や省冷媒技術に資することができる.この様な事情を背景として,最近マイクロチャネルにおける熱流動についていくつかの研究が発表されているが,特に熱伝達については上述の知見と大きく異なる結果が報告されている.そこで本研究では,マイクロチャネルの寸法・形状最適化,数値シミュレーションによる熱流動特性の把握,実験による熱流動特性の把握を目的としている.

 5.  脳動脈瘤の血流シミュレーションに関する数値シミュレーション

助教授 大島 まり

 くも膜下出血の原因の90%は脳動脈瘤の破裂といわれている.脳動脈瘤は臨床の統計データより,発生部位および年令に特徴があることが知られている.このことから,脳動脈瘤が発生および破裂は,血管形状の変化に起因する流れのパターンおよびせん断応力などの流体力学的因子が血管壁に影響を与えて起こると考えられる.そこで,本研究ではCT(Computed Tomography)画像データより,実形状の血管を取り出し,流れの境界条件として超音波流速計から測定された流速分布を与えることにより,現実に近い血液の流れを数値シミュレーションを行い,脳動脈瘤の発生および破裂のメカニズムを解明することを目的としている.CT画像からの3次元ソリッドモデルの作成,格子生成,解析および結果の可視化を行う一連のシミュレーションシステムの開発を行った.このシステムを用いたシミュレーション結果より,血管の曲率がせん断応力および2次流れに影響を与えていることが検証された.

 6.  高圧N2および常圧CH4+NH3中加熱によるW,Mo系炭窒化物粉の創製と生成機構

教授 林 宏爾

 炭窒化物は耐摩耗特性が一般に優れるが,W(C, N)およびMo(C, N)の粉末は合成されたことが無い.これは,それらの原料となりうるWCは熱力学的に常圧で安定であるが,MoC,WNおよびMoNは不安定であることによると考えられた.そこで,(1)ル・シャトリエの原理に基づき,W,Mo+C混合粉の高圧窒素中加熱,および(2)オストワルドの反応段階説に基づき,発生期のCとNを生じるCH4とNH3の混合ガス中でのW,Moの加熱により,W,Moの炭窒化が可能であると予想し,実験を行った.そして,予想通り,いずれの方法でもそれらの合成に成功した.

 7.  バクテリオロドプシンの光電気化学と工学応用

教授 渡辺 正,助手 吉田 章一郎

 高度好塩菌の光駆動プロトンポンプとして働き,光・化学的な安定性がきわめて高いバクテリオロドプシン(bR)は,電極上で光励起した際,照射光のプロフィールを微分した形の特異な光電応答を示す.媒質のpHで紫膜が表裏の帯電状態を変える現象を利用し,ポリカチオンで被覆した酸化スズ上,bR分子の向きを制御した形に配列させて光照射したところ,分子配向と相関をもつ光電応答を得た.こうした知見はbRを用いるバイオエレクトロニクス素子実現の基礎となる.

 8.  オキシクロライドの熱力学

教授 前田 正史,助手 池田 貴

 本研究は一般ゴミの処理によって発生する溶融飛灰の基本組成であるNa-K-Zn-Pb-Si-Cl-O系物質の最終処分の段階での物質組成の制御,無害安定化の可能性を探査し,具体的な処理法の提案をすることを最終目的としている.ホットフィラメント法を用いてNaCl-Na2SiO3系,LiCl-Li2SiO3系に関する状態図的研究が可能となった.

 9.  高電圧スクリーニング法によるセラミックスの高信頼性化に関する研究

助教授 岸本 昭

 セラミックス材料の信頼性を確保するため,脆弱部材を取り除く,スクリーニングが必要であるが,超音波,放射線を用いた方法では装置が大がかりになる上,スクリーニングの効果も充分とはいえない.本研究では,測定の簡便な電気的方法により取り除かれた部材の強度分布を取り除く前のものと比較し,スクリーニングの効果を評価する.応力印加方法(曲げ,二軸,引っ張り)によりその効果がどの様に変化するかを検討し,それぞれに対しどの程度の信頼性向上がももたらされるかを明らかにする.

 10.  血管内皮細胞成長因子徐放カプセルによる類洞構造を持つ肝組織生体外再構築の試み

講師 酒井 康行,主任研究官(産業技術融合領域研究所)牛田 多加志

 ヒト移植用臓器のin vitro再構築を考えた場合,物質交換の経路となる血管網を再構築組織内に予め形成させておく必要がある.そこで血管内皮細胞に特異的な増殖因子などを包括した生分解性マイクロカプセルを含む細胞組織体を構築し,周囲に配置された血管内皮細胞を組織体内部に誘引することを試みている.

 11.  運転シミュレータを用いた地震時の高速道路走行安定性に関する研究(新規)

助教授 山崎 文雄,大学院学生 山之内 宏安,学部学生 丸山 喜久

 地震発生時の高速道路走行車両の走行性安定性への影響など,通常に評価や試験が困難な事象については,運転シミュレータの利用が有効と考えられる.しかし,本格的な運転シミュレータは,我が国で数台あるのみで,さらに地震動を加えるとなると技術的な開発も必要となる.そこで,本格的な運転シミュレータの利用計画を進める一方で,本研究では,運転ゲーム機を振動台で加振することにより,模擬的に地震動の走行安定性への影響を調べることを行った.この結果,地震動の振幅やスペクトル特性が走行安定性に大きく影響することが示された.

 12.  イスラム世界における近代建築の現存遺産調査−基礎調査とネットワークの確率(継続)

助手 村松 伸

 建築の近代化を考える際,これまで日本の近代建築は欧米の影響を考求してきた傾向にある.その視点を相対化するため,日本より早く「近代化」を進めたイスラム諸国(トルコ・エジプト)の近代建築の状況を分析する.本研究の最終目的のひとつは『イスラム近代建築総覧』の作成であるが,ここでは情報,ネットワークによるインフラの確率を目的とする.

13.奨励研究(A)

 1.  統計理論と直接数値計算を用いた乱流の圧縮性効果のモデリング

助教授 半場 藤弘

 高速流や高浮力流の圧縮性効果を調べるため,圧縮性流体の等方減衰乱流と一様剪断乱流の直接数値計算を行った.密度,速度,内部エネルギーの時間発展方程式を数値的に解き,初期値を変えて計算結果のアンサンブル平均をとり,乱流統計量を求めた.2スケール統計理論を用いてレイノルズ応力,圧力速度相関項などの乱流モデルを導出し,計算データを用いて検証を行い,それらの項に対する圧縮性効果について考察した.

 2.  2つの異なる複雑流体複合系における内部秩序間の競合と動的結合(継続)

助手・特別研究員 山本 潤

 究極的な高機能性を有し,複雑な構造を持つ生体組織ですら,実は天文学的な数の分子の集合体であり,あたかも意志を持つかの如く,振る舞うこれらの多数の分子の協同運動は,単純な物理法則に基づいて決定されていることは疑う余地がない.液晶・ガラス・ゲルといった多くの内部自由度を有するこれらの物質群を総称して,“複雑流体”と呼んでいる.本研究では,異なる2つの複雑流体系を混合し,2つの異質な内部秩序が競合して存在するために起こる,内部構造間の相互作用を研究することを目的とする.この新しいタイプの相互作用を基にして,複合系においては,多種多様な複合構造の形成が期待され,さらには準結晶的秩序・超構造等の特異な新しい構造が生まれる可能性を秘めている.本研究では,これらの新しい秩序や動的相互作用の発見とそのメカニズムの探求を行うことを目的とする.

 3.  CWレーザを用いた光励起複屈折測定装置の開発

助手 坂本 直人

 棒状の粒子からなる流体において,粒子の向きのそろい加減をCWレーザ光で制御することにより流体の性質を全体的または局所的に制御することを目指している.レーザ光のパワーと粒子のそろい具合の関係や,レーザ光を高周波で変調したときの粒子の追随の様子について,複屈折という定量的な尺度で容易に評価ができる装置を開発している.

 4.  相変化に伴う自励振動を応用した高性能熱輸送デバイスの作動原理の解明

助教授 白樫 了(代表者)

 相変化に伴う自励振動を応用した高性能熱輸送デバイスは,最近開発された熱輸送管の一種である.高温部と低温部を蛇行する,ループ状に密閉された管内に封入された一定体積分率の作動液体が高温部で沸騰,低温部で凝縮をすることにより自励振動をおこし熱を輸送すると考えられている.本デバイスはヒートパイプに比べ,構造が格段に単純な点,細管を曲げることで形を自由にできる点で,フレキシブル化,マイクロ化が可能になる可能性がある.

 以上に基づき,本研究では,作動液の物性(蒸発潜熱,表面張力,熱容量)を変化させて熱輸送能力を測定する.また,将来,本デバイスをマイクロ化する際に重要になると考えられる管径と熱輸送能力の関係も併せて測定する.さらに,測定に基づき現象理解の為に数値計算モデルの作製を試みる.

 5.  結晶格子を基準に用いた二次元位置決めテーブルおよび変位センサーの開発

助手 星 泰雄

 結晶格子の周期性を基準に用いて位置決めや測長・変位計測を行う手法を研究している.結晶を検出する手段として走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscope,以下STM)および原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope,以下AFM)を試している.今年度は大気中でもAFMで容易に結晶の周期性を観察できるマイカ(雲母)およびグラファイトを用いた実験を行った.まず酸化シリコン製のAFMカンチレバーの押しつけ圧とマイカの摩耗との関係を調べ,押しつけ圧が50 nN以下であれば数十時間観察し続けても表面の摩耗がおきない事を確認した.また押しつけ圧が100nNを越えると数回の走査で最表層が剥離するが,その下の層の結晶周期が観察できる事もわかった.マイカの場合,走査速度1ミクロン/秒以上では読み飛ばしが発生して正確な周期の検出ができなくなる.この原因がマイカの親水性にあると考えられたため,疎水性のグラファイトを用いて同様の検討を行ったところ,走査速度が20ミクロン/秒でも読み飛ばしなく周期を検出できることがわかった.グラファイトの場合,約0.25 nm間隔の周期性がカンチレバーの固有振動数に一致する場合に周期性の検出が困難となる.現在使用している市販のAFMカンチレバーは走査時の固有振動数が約100 kHzであり,グラファイトの走査速度25ミクロン/秒に相当する.コンプライアントおよび固有振動数の高いカンチレバーの開発が今後の課題である.

 6.  実世界型インターフェース実現のための実環境モデルの学習

講師 佐藤 洋一

 本研究では,従来型のGUIの枠組みを超えて,行動の主体であるユーザと実世界とのインタラクションを重視したインターフェースを実現することを目的とし研究を進める.特に,このような実世界志向インターフェースを実現する際に重要となる,実世界認識およびに実環境モデル学習の2点に焦点をあてて,技術的課題の特定と必要とされる技術の開発を進めていく.

 7.  ナノ半導体レーザにおける光・電子相互作用の制御

講師 染谷 隆夫

 半導体光デバイスの寸法を微細化して,電子状態や光のモードを自由に操ることは,21世紀の高度情報化社会を支える光信号処理の基幹技術と考えられている.最近の微細加工技術の急進展の結果,ナノメートル寸法の構造を作製して,1次元や0次元電子の状態制御が可能になり,優れた低次元系の物性が明らかになってきた.しかしながら,ナノ構造は本質的に高密度化することが困難で,低次元電子の優れた物性を光デバイスに応用する際の技術的な障壁となっている.すなわち,ナノ構造の総体積が極微量であるため,通常の光導波路に閉じ込められた光は,ほとんど電子と相互作用せずにすり抜けてしまう.そこで,本研究では,低次元電子が光と有効に相互作用する新しい微細構造を開発して,量子細線レーザをはじめとするナノ半導体レーザへの道を拓くことを目的としている.

 8.  超高精細静止画像のロスレス・ロッシー統一符号化システムの開発

助手 小松 邦紀

 近年,医療,美術等の分野で,超高精細静止画像の符号化に対する要求が大きくなってきている.超高精細静止画像のファイル容量は現在インターネット上で伝送されている通常の画像に比べて非常に大きく,なおかつ,医療,美術等の分野では画像圧縮による劣化が許されない場合が多いために,特別な取り扱いが必要になる.つまり,静止画像の標準方式であるJPEGのような再生画像に劣化が生じる符号化方式を用いることはできず,さらに,符号化されたデータの一部を取り出して,様々な品質及び解像度で再生できる機能が必要になる.本研究では,対象画像を超高精細静止画像までに拡張した,スケーラビリティ機能を有するロスレス符号化方式の構築を目的とする.本年度は,可逆的重複直交変換方式およびハイブリッド型ロスレス変換変換方式を提案した.

 9.  スペースフレームの波動伝播特性に関する研究

助手 宮崎 明美

 兵庫県南部地震以降,スペースフレームなどの空間構造物においても吊り物などによる局所的衝撃力が作用する可能性が指摘され,衝撃力作用時の挙動を調査する必要が認識されつつある.衝撃力に対する応答は過渡的であり,短時間のうちに破壊につながる可能性があるため,波動伝播を考慮した考え方が必要となる.本研究の目的は,インパクトハンマーによる衝撃実験を行い,スペースフレームの波動伝播特性を調査するための基礎資料を得ることにある.

 本年度は部材配置密度が異なる数種類のスペースフレームの試験体を作製し,インパクトハンマーによる打撃試験を行った.

 10.  兵庫県南部地震における灘区と北淡町の被害分析と地域特性を考慮した比較研究(継続)

助手・特別研究員 村尾 修

 兵庫県南部地震による豊富な建物被害データと,建物密度,人口規模,学校数など地域特性データを用いて,GISを用いた都市部と山村部の地域特性の比較分析を行っている.研究成果としては,兵庫県南部地震の際に実施された各自治体の建物被害調査の比較を行い,その違いを明らかにしたうえで,神戸市が行った建物被害調査データを用いて構造別,建築年代別の建物被害関数を構築した.また,各地域の潜在的な危険性を表す指標として,建物倒壊危険度評価法を提案した.以上の成果を踏まえ,灘区および北淡町の地理情報データベース上に整理した.

 11.  固結力を有する地盤材料の三次元条件下における変形・強度特性

助手 早野 公敏

 近年,固結力を有する堆積軟岩やセメント改良土を支持地盤とする事例が増え,構造物の安定性を精度良く予測するために支持地盤の詳細な力学的特性の把握が必要とされている.研究経過として三軸試験を実施し地盤定数のモデルを提案してきたが,三軸試験で再現できる応力条件は限られている.そこで多様な応力状態の変化に対する地盤の挙動を再現するため,3方向の主応力を独立に制御できる試験機を開発した.今後は三主応力制御試験を実施する.とくに異方性が地盤の変形量に大きな影響を与えるため,鉛直・水平2方向の載荷経路に伴う異方性を明らかにし,それを表現できる適切なモデルを提案することを目的とする.

 12.  圧縮性LESによる火災時の熱・汚染物質輸送メカニズムの解明

助手 白石 靖幸

 本研究では,工学で用いられる先端的な圧縮性乱流数値解析手法を用いて,火災により建物内外で発生する乱流熱輸送及び汚染物質輸送のメカニズムを解明することを目的とする.11年度は,1. 文献調査,及び,既往の実験による火災時の熱対流及び煙流動の特性に関するデータの整備を行い,2. 通常の非圧縮性流体の予測モデルを圧縮性流体の基礎方程式を用いた予測モデルに拡張し,加熱壁近傍の対流熱伝達量の解析を行い,実験データ・理論値との比較によりその予測精度を検証した.3. さらに,火災時のような複雑流れ場では,主として気流性状,温度性状が乱流状態を呈するため,乱流モデルとして予測精度,非定常性の面で優れた圧縮性LESを2. の予測モデルに組み込み,これにより,火災時に生じる高浮力プリュームの解析が可能となった.

 13.  壁面拡散体および浮雲反射板の音響効果に関する研究

講師 坂本 慎一

 ホール・劇場などの室内には,音響特性を改善する目的で,壁面拡散体や不連続音響反射板(浮雲)がしばしば設置される.これらの音響散乱・反射体に関して,形状,寸法に関する設計用チャートが提案されているものの,実際の音響設計では有効な設置位置に関して明確な指針が確立されておらず,半ば設計者の勘によって設計されることが多い.ホールにおける音響散乱・反射体を有効に活用するためには,「音響散乱・反射体が室内音場全体に及ぼす影響」に着目した研究が必要である.そこで本研究では,音響散乱・反射体の単体での音響性能のみならず,室形状と散乱・反射体の設置位置および設置面積の相互関係に着目して,数値解析,模型実験による検討を行う.今年度は,平面配列不連続反射板の反射特性,室形状の違いによる各種壁面拡散体の音響効果の違いなどについて,有限差分法を用いた検討を行った.

14.創成的基礎研究

  人間主体のマルチメディア環境形成のための情報媒介機構の研究(継続)

教授 坂内 正夫(代表者),研究担当 石塚 満

教授 池内 克史・喜連川 優・柴崎 亮介,講師 舘村 純一,助手 柳沼 良知

 インターネットやディジタル衛星放送等の普及に伴い,映像を含むマルチメディア情報が急激な勢いで蓄積,利用されている.この”膨大な情報の海”を適確に利用するためには,情報空間と利用者の間に立ってこれらの情報を利用者の目的を達成できる形に媒介する情報処理機能の必要性が増大している.本研究では,文部省「新プログラム」方式による研究プロジェクトとしてネットワーク型マルチメディア環境,ストリーム型マルチメディア環境,実世界型マルチメディア環境の3つの視点から,この媒介に必要な媒介空間形成,事象発見,データリトリーブ,データコラボレーション,インターフェース等の機能を統合的に開発している.本年度は新プログラム(平成9〜平成13)の3年度目として,ストリーム型情報媒介機能,ネットワーク型情報媒介機能,実世界型情報媒介機能を発展させると共に,国際シンポジウム等,成果公開につとめている.(http://shinpro.sak.iis.u-tokyo.ac.jp/)


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