生研リーフレット No.290
1997年12月1日  東京大学生産技術研究所発行

ガラス管モデルによるコンクリート透水性の検討
Study on Permeability of Concrete by Glass Pipe Net-Work

魚本 研究室

1.概要
コンクリートの耐久性を論じる場合、気体や液体、イオンなどがコンクリート中をどのように移動 するかが問題となる。これらの物質移動について既往の研究では、主にFickの法則による拡散現象に よって説明がなされている。しかし、微視的に捕えた場合、コンクリート中の物質移動が拡散によって 説明されるとは考え難く、コンクリートが不均一な多孔材料であることや、ひび割れなどが存在した場 合に物質の移動が促進されることなどを考え併せると、当然物質はその空間を移動するものと考えられ る。本研究においては、コンクリート中の空隙構造に影響を受ける透水性に着目し、コンクリート中の 空隙構造を想定したガラス管網による実験を行い、水みちとなる空隙構造の違いにより透水性がどのよ うに変化するかの検討を行った。

2.検討方法
コンクリート中の空隙構造を2次元的に単純化し、想定した管網の水頭分布を測定するため、写真 −1に示す実験装置(外形:380mm×380mm×525mm)を作成した。この実験装置の底面部は、十字 のガラス管(縦:50mm, 横:50mm)をチューブで接続した管網部(写真−2)で構成され、上部は十字ガラ ス管の交点に設置したマノメーターから成る。
実験は作成した試験装置に水位を一定とした水槽より一方向から水を流入させ、定常状態になった 後、各節点での水頭ならび各流出点での流量の測定を行った。この実験を空隙構造の違いをパイプのメ ッシュ(7×6,4×4,2×2)と管径(φ4.5,3.5,2.5mm)の違いで表現した管網に対して行った。

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3.結果検討
水頭分布測定結果を図1に示す。図1より、いずれのケースにおいても流入部から流出部に向かう に従い管路の摩擦損失や分岐部などにより、水頭が減少していくことがわかる。また、メッシュの違い よりもガラス管の径の違いが水頭に及ぼす影響が大きいことがわかる。
図2はガラス管の径を変えることで空隙量を変化させて、流出量と空隙量の関係をメッシュごとに 整理したものである。この図から、同じメッシュの管網の場合、空隙量が少なくなると(管径の小さく なると)流出量が減少することがわかる。また同程度の空隙量の場合、メッシュが多いものの方が少な いものよりも流出量が小さい傾向があることが分かる。
本研究においては単純な管網を想定したが、実際のコンクリート中の空隙構造は、より小さな管径 でより複雑な管網になっていることが予想され、図3は、既往の研究で報告されている実際のコンク リートにおける透水係数と空隙率の関係である。本研究で行った実験をこの図にあてはめると、左上の 点になる。想定したメッシュの多い管網がメッシュの少ない管網よりも複雑さを増して透水性が減じる こと、同じ複雑さ(形状)の管網でも径の小さな管で透水性が減じることを考え合わせると、図3の 矢印@は細孔径の大きさを示し、管網の複雑さはそのままで細孔径が小さくなると、透水係数と空隙 率が小さくなることを示す。矢印Aは管網の複雑さを示し、細孔径の大きさはそのままで管網が複雑 になると、空隙率が大きくなり透水係数が下がることを示す。したがって、径を小さくすると同時に管 網を複雑にすることで、実際のコンクリートを表現できると考えられる。
本研究を実施するにあたり試験装置を作成していただいた当研究所試作工場の滑川氏に感謝致しま す。 (執筆担当:木下 勝也・魚本健人)

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