研究解説
分子を識別する − 蛍光性人工レセプターの設計とその機能
務台俊樹・荒木孝二
バイオアッセイによる水処理の評価
鈴木基之・金 範洙・孫 晋彦・酒井康行・迫田章義
アルカロイドの吸着分離(英文)
王 殿霞・迫田章義・鈴木基之
アンヒドロ糖と環状エーテルの開環重合による糖含有コポリマーの合成
奥山光作・瓜生敏之
HPLCによる微量光合成色素の生合成過程の追跡
田中修平・仲村亮正・渡辺 正
イネのフィトキレチン誘導に及ぼす重金属イオンの共存効果
高寺喜久雄・小野由紀人・渡辺 正
一般投稿
研究速報
マイクロマシーニング技術のバイオテクノロジーへの応用に関する研究
−DNA注入用のマイクロキャピラリーアレイの作製−
全 教錫・橋口 原・年吉 洋・藤田博之
全反射角X線分光法を用いた酸化物超伝導薄膜のin-situ組成分析
亀井雅之・森下忠隆
分子を識別する − 蛍光性人工レセプターの設計とその機能
務台俊樹・荒木孝二
「Biomimetic Chemistry(生体模倣の化学)」が提唱されてから四半世紀。近年では生体にとらわれない、機能性ホストの開発が盛んにおこなわれており、なかでも、分子認識の情報を、蛍光応答という形に変換する機能を持つ分子素子 --- 蛍光応答性レセプター --- は、最近のトピックスの一つとなっている。本稿ではこの蛍光応答性レセプターについて、その分子設計と機能、そして高感度センサーとしての応用面から紹介する。
アルカロイドの吸着分離
王 殿霞・迫田章義・鈴木基之
ベルベリンアルカロイド及びグラファイト面とするモデル系において、アルカロイドの溶液中から固体表面への吸着を対象とした分子動力学シミュレーションの手法を構築した。アルカロイド分子の真空中及び溶液中における固体表面近傍での挙動及びアルカロイドと溶媒との相互作用を考察した。分子動力学計算により算出された溶媒効果に起因する自由エネルギーの変化を詳細に分析することにより、アルカロイドの選択的な吸着及び脱着に関する知見が得られた。本手法は、アルカロイドの液相吸着分離の検討に有効であることが示唆された。
アンヒドロ糖と環状エーテルの開環重合による糖含有コポリマーの合成
奥山光作・瓜生敏之
1,4-アンヒドロ-2,3-O-ベンジリデン-α-D-リボピラノース(ABRP)とexo-2-フェニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン(POBH)をカオチン開環重合させた。ABRPを先に重合させ、これにPOBHを添加することによりブロック型のコポリマーが得られた。第一段階のABRPプレポリマーの分子量Mn11000が第二段階のPOBHを重合させることによりMn14000に増加した。この時のPOBHの含有量は17%だった。添加順を逆にするとブロック型のコポリマーは得られなかった。アンヒドロ糖のカオチン開環重合は反応がリビング的に進行した。
HPLCによる微量光合成色素の生合成過程の追跡
田中修平・仲村亮正・渡辺 正
酸素発生型光合成の明反応においては微量のchlorophyll (Chl) 異性体Chl a',
pheophytin a (Pheo a)が重要な役割を果たしている。しかし、これら微量色素の生合成、タンパク質との複合化の経路はほとんど研究がなされていない。本研究では、HPLCを用いて黄化葉の緑化に際して起こるChl
生合成過程を追跡し、Chl a', Pheo aの生合成経路について調べた。両色素は1分間の光照射後、暗所下において5分で既に生成し、Pheo
aは生合成中間体が蓄積するChl aとは異なり、成熟型が優先的に合成される可能性が示唆された。
イネのフィトキレチン誘導に及ぼす重金属イオンの共存効果
高寺喜久雄・小野由紀人・渡辺 正
複数の重金属が混在する環境下で,重金属が植物に及ぼす影響を解明することを目的に,イネのカルスを試料とし,共存金属のフィトキレチン誘導に及ぼす影響を HPLC-ICPMS 法で検討した.Cdと他の金属(Zn, Cu, Pb, Hg, Ni)が共存するときの PC 合成量の変化から,PC 誘導阻害効果の強さは Hg > Ni > Cu > Pb > Zn の順となり,阻害効果の強い金属ほど, Cd など PC で無毒化される重金属に対する植物の耐性を弱める方向に機能すると推察した. また,他金属の共存が,Cd の PC 誘導を抑制する効果の測定は,重金属毒性の定量的評価につながる.
一般投稿
マイクロマシーニング技術のバイオテクノロジーへの応用に関する研究
−DNA注入用のマイクロキャピラリーアレイの作製−
全 教錫・橋口 原・年吉 洋・藤田博之
マイクロメカトロニクスはいろんな分野で広く応用されている。本研究はマイクロメカトロニクス
のバイオ応用に関するものである。シリコンマイクロマシニング技術を用いて微細針のアレイを作製し、細胞内へDNAを注入するツールとして使う。微細針をアレイ化することにより遺伝子注入効率が大幅に引き上げられることと期待される。
全反射角X線分光法を用いた酸化物超伝導薄膜のin-situ組成分析
亀井雅之・森下忠隆
MgO(100)基板上へのc軸配向Y1Ba2Cu3O7-x超伝導薄膜の成長の極初期段階を、表面の検出感度の高い新しいX線分光法を用いて調べた。反射高速電子回折-全反射角X線分光法による成膜の同時観察により原料のY,Ba,Cu各金属のフラックスを同時に基板への供給を開始しているにもかかわらず、Y1Ba2Cu3O7-x膜はそのBa-O層をMgO(100)基板上に形成することが明らかになった。