- 圧縮性効果をレイノルズ応力に取り入れた乱流モデル
横井喜充・吉澤 徴・William W. LIOU・Tsan-Hsing SHIH マルコフ化二スケール(MTS)の方法を用いてレイノルズ応力への圧縮性の効果が調べられる。規格化された密度変動と乱流マッハ数の自乗との比によって表わされる圧縮性の効果を取り入れることによりレイノルズ応力の渦粘性表現が修正される。圧縮性効果による乱流粘性の変化を取り入れた簡単な三方程式型乱流モデルが構成され、発達した自由剪断層の流れに適用される。本モデルにより、マッハ数の増加とともに混合層の成長率が抑えられるといったこの流れの特徴が再現される。
- 圧縮性乱流の4方程式モデル
半場藤弘 2スケール統計理論を用いて非一様圧縮性乱流モデルを考察した。圧力とエントロピーを基礎変数とし、圧力分散の非圧縮成分と圧縮成分を導入して理論を改良した。圧力分散の輸送方程式は圧力膨張相関のモデルとして用いるべきでことがわかった。そのかわりに乱流エネルギーの圧縮成分の輸送方程式のモデル化を行った。そして乱流エネルギー、その散逸率、圧縮性乱流エネルギー、エントロピー分散を用いた4方程式モデルを提案した。
- クロスヘリシティダイナモによる降着円盤のトロイダル磁場
西野学・横井善充 乱流エネルギーK、散逸率e、クロスヘリシティWの輸送方程式を平均場方程式と同時に解く電磁流体の乱流モデルを用いて、降着円盤領域の磁場を調べる。 中心近傍でジェットを生じているところを除く領域では、降着円盤流体の主要な運動は内側での剛体回転と外側でのケプラー回転であると考えられる。その領域において軸対称性と円盤垂直方向の一様性を仮定したとき、ケプラー回転している領域での磁場は、クロスヘリシティダイナモ効果により中心近傍でz方向の電流を生じるような配位をとることがわかる。これを簡単な式評価とシミュレーションで示す。 中心近傍でのz方向の電流は、frozen-inの描像を用いることなくq方向の定常的な磁場の存在を説明する。この磁場のエネルギーは重力エネルギーを超えることができ、ジェットが重力圏を脱出することが可能となる。シミュレーションの結果から活動銀河中心核のジェットの速度を見積もる。
- 非線形渦粘性表現に基づくk-eモデル
(第1報:溝乱流、一様せん断乱流の数値解析への適用)
西島勝一 乱流の数値解析で、k-e モデルは多く用られている。しかし、このモデルは工学上重要な幾つかの乱流を的確に予測出来ないという欠点も指摘され、改良が成されてきた。
統計理論的手法を用いて、歪み速度テンソル等の効果を乱流長さスケールに繰り込むことによって高次の非線形表現を導出する試みもなされている。本論文では、そのモデルを形状の異なる溝乱流、一様せん断乱流の解析に適用する。その解析結果を実験値や直接数値解析(DNS)結果等と比較検討し、新しい非線形渦粘性表現が異なる形状乱流の諸特性再現にどの程度有効であるかを明確にする。
- 非線形渦粘性表現に基づくk-eモデル
(第2報:正方形管内乱流の数値解析への適用)
西島勝一 乱流の数値解析において多用されているk-e乱流モデルで、指摘されている主な欠点の改善をめざし、統計理論的に導出された渦粘性型モデルを提起する。それは、歪み速度テンソル()等の効果を乱流長さスケールに繰り込むことによって高次の非線形表現となっている。すでに、溝乱流および一様せん断乱流の解析に適用し、モデル定数等の調整がなされ、適性な結果を再現できるこが確認されているこのモデルを、ここでは、正方形管内乱流の解析に適用する。その結果を実験値と比較検討し、本モデルの有効性を議論する。
- ダイナミックSGSモデルにおける渦粘性型モデルの評価
坪倉誠・小林敏雄・谷口伸行本研究においてはダイナミックSGSモデルの適用に際して、スマゴリンスキーモデルに替わる渦粘性型SGSモデルの提案を目的とする。モデルは局所平衡の仮説を用いることなく導出される。提案したモデルとスマゴリンスキーモデルについて、二次、および四次精度中心差分により平行平板間乱流のLES解析を行い、モデルの予測精度の比較、および解析結果の離散精度に対する依存性とフィルタ幅に対する依存性を調べた。この結果、スマゴリンスキーモデルと比較して、提案したモデルの有用性が示された。
- 浮力を考慮した修正k-εモデルによるサーマルプリュームのCFD解析
大平昇・加藤信介・村上周三 サーマルプリュームの乱流構造は、重力の影響により浮力の影響がないジェット等と比べて複雑になる。プリュームの精度良い計算を行うためにはより精密な乱流モデルが必要となる。本報では、村上らの修正k-eモデル(MKCO)、標準k-?モデル、安倍らのモデル(ANK)およびLaunderのWETモデルでプリュームの数値計算を行った。計算結果を実験結果と比較検討したところWETモデルは実験と良く一致したが、その他のモデルは実験よりも速度、温度場とも非拡散的となった。サーマルプリュームを精度良く計算するためにはWETモデルベースの乱流モデルが必要となることが明らかとなった。
- ダイナミックSGSモデルを用いたチャネル乱流の有限要素LES
大島まり・小林敏雄・谷口伸行工学的な流れ問題として複雑な形状内の乱流場を計算する際に、有限要素法に代表される非構造格子を用いたLESは有効な解析手法と考えられる。本報ではLESのSGSモデルとして、複雑乱流場への拡張性が高いと考えられるダイナミックSGSモデルを適用する。ダイナミックSGSモデルは異なるフィルタ幅を課して空間的かつ時間的に唯一のモデル定数であるCsを求めるため、フィルタ操作は複雑で煩雑になりやすい。そこで、有限要素法の特長を生かしたダイナミックSGSモデルのフィルタ操作を提案した。チャネル乱流の解析を行い、解析結果を有限差分法と直接解析の結果と比較・検討したところ、本手法の有効性が確認された。
- Dynamic LESによる上向き冷風吹出を持つ室内気流解析
飯塚 悟・村上周三・大岡龍三・小杉茂樹 筆者らは既報において水平吹出口を持つ比較的低Re数の非等温室内気流のLES解析を行った。その結果、Dynamic型のSGSモデルを用いた場合、標準型のstaticなSmagorinskyモデルの結果に比べ、実験との対応が格段に向上する結果を得ている。本報では、引き続きDynamic SGSモデルの1つであるDynamic Smagorinskyモデルを鉛直上向き吹出口を持つ比較的高Re数の2次元閉鎖空間内の非等温流れ場に適用し、通例のSmagorinskyモデル並びにBlayの実験(1992)と比較する。
- 乱流境界層を対象としたLESのための流入変動風の生成法に関する研究風洞実験に基づく平板乱流境界層のモデル化と生成
近藤宏二・持田灯・村上周三・土谷学 筆者らは、LES計算の流入境界条件に与える風速変動(流入変動風)を周波数領域のパワースペクトル、クロススペクトルを満足するように生成する方法を検討してきた。本研究では、乱流境界層を対象としたLES計算のための流入変動風を生成するために、風洞床面上で発達した平板乱流境界層の特性を風洞実験で調査し、そのモデル化を行った。実験で得られたパワースペクトル、クロススペクトル(ルートコヒーレンス、フェイズ)には、風洞床面の影響が見られたので、その影響を再現するためにモデル式中のパラメータに床面からの距離の関数を導入した。モデル式から算定したクロススペクトルマトリクスをターゲットとして、モンテカルロ法に基づく逐次計算法に用いて流入変動風を生成した結果、ほぼ目標値を満足する流入変動風を生成することができた。
- 一般座標系におけるcollocation 格子系LES code の開発
張会来・小林敏雄・谷口伸行 本論文の目的は、エンジン内シリンダーのような複雑な形状を有する流れ場に対して有利に適用できる一般座標系を用いた、Large Eddy Simulation (LES)数値解析コートを作成することである。著者らは、collocation格子による LES コードの開発を進めていた。今回開発したコードでは一般座標系、collocation 格子系、有限体積法、LESのSmagorinsky model等を採用しており、時間進行については二次精度Adamas-Bashforth法を用い、圧力解法についてはHSMAC法を採用した。式(4-10)のA項とB項の修正によりcollocation格子系の特有な非物理的な空間振動を防止することが出来た。実用性の検証のために、開発したコードを正規直交格子と曲線斜交格子の二種類の座標に適用し、チャネル乱流のLES解析を行った。その結果、両座標において十分実用可能な精度の結果が得られた。
- 一般曲線座標系における非圧縮性乱流数値解析に適した差分スキーム
−第4報, 座標変換の誤差評価と適切な差分スキームの検証計算−
小垣哲也・小林敏雄・谷口伸行 座標変換を施した基礎方程式を導く際に導入した,変数変換に基づく座標変換の誤差評価を理論的および数値実験的に行った. その結果,不等間隔非直交座標系における微分を等間隔直交系に座標変換し,等間隔直交系で任意精度の差分スキームを利用して計算した場合でも,格子点数を増加させた時の厳密解への収束性という意味での精度は維持されることが確認された.また,第2報で構成した一般座標系における適切な差分スキームを平行平板間内乱流のLES計算に適用し,その差分スキームが,正規直交座標系における適切な差分スキームから適切に一般座標系に拡張されていることを確認した.
- 一般座標系による燃焼器内流れの数値解析(第1報)
高 相吉吉 、小林 敏雄、谷口 伸行 最近、複雑形状を持つ流れ場に適用できる様々な乱流モデルが提案、検証され、その有効性が確認されている。これらの状況から複雑形状を持つ燃焼器内流れに対する数値シミュレーション実験を積極的に導入する必要がある。よって、一般座標系格子と円筒座標系格子を併用した複合座標系を用い燃焼器内流れの数値解析を行った。計算はまず予備計算として層流のもとで行い、コードの有用性を確認すると共に、その流れ分布がレイノルズ数数百の範囲で定常から非定常に変わって行くことがわかった。また、乱流計算では流れ場の配分特性を決定する衝突円盤周りで速度勾配および乱れが激しいことがわかった。
- 非圧縮性流れ数値解析のための高精度スキーム
アヨデジ オー デムレン・ロバート ヴィ ウィルソン・マーク カーペンター・小林敏雄 2次元あるいは3次元の流れ場に対する非圧縮性ナビエ・ストークス方程式を解くための高精度の差分スキームを提案した.これらのスキームは時間の離散化に対し低記憶容量ルンゲ・クッタ法を,空間の離散化に4次精度と6次精度のコンパクトスキームを用いて構築する.非圧縮性の条件は圧力のポアソン方程式を解くことで満足されるが,解法の全体の精度が等しくなるようにポアソン方程式も同じコンパクトスキームを用いて離散化する.提案した手法をいくつかの適切な問題に適用してその精度を検証した.
- 複雑乱流噴流の数値シミュレーション(軸伸張の発生)
アヨデジ オー デムレン・ロバート ヴィ ウィルソン・小林敏雄 複雑な断面を持つ3次元噴流を有限差分法で解析した.ナビエ・ストークス方程式を低いレイノルズ数では直接計算し,高いレイノルズ数ではLESによる解析を行う.計算は剪断層内で異なる種類の噴流を表すように異なった入口条件を与えて実行した.幾つかのケースでは、渦輪の「軸の切り替え」現象が観察される.低いレイノルズ数では複雑な渦度場の自己誘導が原因であるが,一方、高いレイノルズ数では乱れの非等方性が自然噴流の支配的なメカニズムである.主流方向の平均流速の収支からは対流項がレイノルズ応力の勾配と圧力の勾配に釣り合っていることが示されている.
- 対流・放射・湿気連成解析による屋外環境共生空間の緑地効果の検討
吉田伸治・大岡龍三・村上周三・持田灯・富永禎秀 本研究では、(1)浮力効果、(2)建物風上側の乱流エネルギーの過大生産の抑制効果を導入した改良k-eモデルに水蒸気輸送方程式を組み込んだ対流・放射・湿気連成プログラムを用いて市街地の温熱環境を解析した。解析結果からSET*(Standard Effective Temperature)の空間分布を算出し、都市緑化が夏季の屋外環境に及ぼす影響を検討した。解析の結果、(1)改良k-eモデルの結果では標準k-eモデルの結果と比べ、平均風速分布、平均温度分布に差が見られること、(2)都市緑化が夏季の屋外環境の緩和に貢献していることを確認した。
- 人体皮膚全熱放熱特性に関するCFD・放射・湿気輸送連成解析数値サ−マルマネキンの開発
曽潔・加藤信介・村上周三 数値サ−マルマネキン開発の一環として人体皮膚表面からの全熱放熱特性に関するCFD・放射・湿気輸送の連成解析法を開発する。すなわち、人体熱放散に関する温熱生理モデルを組み合わせて複雑形状を有する人体表面から室内環境に対する全熱(顕熱・潜熱)伝達特性を詳細に検討する。気流場・温度場・湿気場の解析は低Re数k-εモデルを用いた3次元CFDにより行う。放射解析ではモンテカルロ法により形態係数を求め、Gebhartの吸収係数を用いて壁面間の放射熱伝達量を算出する。人体熱放散モデルに関しては、Fangerのモデル及びGaggeらの2 Node Modelを組み込んで検討を行っている。解析結果は実際の人体の熱放出特性を良く再現するものと考えられる。
- 数値気候モデルによる関東地方の局地気象の解析
― 初期温位分布、海水面温度、地中の熱容量及び人工排熱の影響の検討 ―
金相鰓・大岡龍三・持田灯・村上周三 関東地方の夏季の局地風を中心とした都市気候の構造をMellor-Yamadaの大気乱流モデルを用いた数値解析により調べた結果を示す。本報では、温位分布の初期値、海水面温度の分布、地中の熱容量、人工排熱等の取扱いの相違が流れ場、温度場の予測結果に与える影響を調べる。また、計算結果を既往の観測結果と比較し、その予測制度の改善を検討する。