- 鋳鉄ボンド砥石による電解インプロセスドレッシング(ELID)境面研削法の開発
- 大河内記念技術賞受賞によせて-
大森 整・中川 威雄・高橋 一郎・萩生田 善明・刈込 勝比古 平成8年度(43回)大河内記念技術賞を受賞したELID研削は、砥石の母地を電気分解で除去することにより、目立てをさせながら研削を行うもので、微細砥粒が使用できることから境面研削が初めて実現した。この研削に鋳鉄ボンド砥石が用いられるが、この砥石は鋳鉄の粉末冶金の研究の副産物として開発され、またこの砥石の切れ味改善の研究から上記の画期的研削法が生まれた。
- ニューラルネットワークによる履歴特性の推定に関する研究
蔡徳瀛・楠浩一・中埜良昭 構造物全体の地震応答を解析する時に解析部分の部材においては,適切な部材の履歴モデルを設定するのが通例です。解析部分で用いる履歴特性をオンライン地震応答実験で得られる特性に基づき,設定することが可能となるならば,オンライン地震応答実験のメリットを最大限に生かすことが出来ます。構造物の荷重と変位関係に表れる非線形の履歴挙動は極めて複雑な非線形ループで,部材が終局破壊まで履歴挙動のループは30回以上及ぶのが普通です。ニューラルネットワークで学習した履歴ループと履歴面積の異なる履歴ループを推定できるならば,わずか五つ位の教師データの履歴ループに基づき,繰り返しの履歴モデルを表現できる可能性があると考えられる。
- 流れ場シミュレーション・プログラムにおける計算機性能の比較
谷口伸行 流れ場シミュレーションの典型的な事例として、差分法、および、有限要素法による2件の乱流LESプログラムを取り上げ、13機種の計算機を単体CPUで用いた場合の実行性能を示した。また、行列反復解法のベクトルプログラム例を紹介した。
- 劇場内の温熱空気環境に関する研究
3次元CFDによる夏期の空気温度形成解析
村上周三・加藤信介・孔鉄男 劇場内の温熱空気環境に関する数値シミュレーションによる解析結果の報告。プロセニアムを介して舞台・客席間で相互換気が生じ客席系統の空調負荷が増加すること、さらに温熱環境を改善し得る空調機負荷の予測には、空気温度形成解析が有効であることを検証した。
- 高炉セメントの利用に及ぼす社会的諸要因の検討(その1)
増田健一・魚本健人 本報告は、高炉セメントの利用が技術的側面のみならず社会的諸要因によりどのように変化してきたかを検討したものである。ここでは、まず「コンクリートの使用方法に影響を及ぼす諸要因」を過去から現在まで、具体的には高炉セメントが日本で始めて大量に使用されるようになった第二次世界大戦直前時から現在までを総合的に検討する。それにより、コンクリートに影響を及ぼす様々な問題を指摘した。
- 鋼板巻き立て工事におけるサーモグラフィ法を用いた検査手法の提案
- その4 西宮市における建築物被害のマクロ分析 -
出口知史・魚本健人 阪神大震災の惨劇を教訓に、全国各地の橋脚の補強工事がなされるようになった。その代表的な工法として鋼板巻き立て工法がある。現在の鋼板巻き立て工事において、橋脚とその外側に設置した鋼板の間に打設するモルタルやエポキシ樹脂などの充填性についての検査法としては検打が主に行われているが、その実用性については検査の対象となる面積などを考えると疑問が残る。そこで本研究では渡部1)によって提案され、その適用性が確認されたサーモグラフィ法を用いて、鋼板巻き立て工事における検査方法に関して考察した。
- 交通調査のためのビデオ画面上の車両走行軌跡のトラッキング手法に関する研究
陳鶴・桑原雅夫 本研究は、ビデオ画面上の走行車両の軌跡を自動的に計測するシステムの開発を行ったものである。本研究で扱うビデオ画面は、(1)移動するカメラで撮影した車両の重なりのないビデオ画面、(2) 固定カメラで撮影した車両の重なりの有るビデオ画面、の2種類である。また、本研究で開発するシステムの特徴として、(a)交通調査で用いられる一般のビデオカメラで撮影した画像から軌跡を自動計測すること、(b)計測はオフラインであるので、計算機の処理時間はある程度長くても良く、むしろ原画像データをなるべく有効に使い、計測精度の向上を目指すという点があげられる。 (1)の移動するカメラで撮影した車両の重なりのないビデオ画面における自動計測システムでは、気球に積載したカメラで撮影した500秒間の連続画像で検証したところ、車両の認識率100%、約150mの道路区間全域に渡るトラッキング成功率97%を達成した。また、マニュワル計測との相対的な誤差は、平均1.97[pixel] (=0.47m)であった。 (2)の固定カメラで撮影した車両の重なりの有るビデオ画面における自動計測システムでは、連続撮影した画像を用いて、3次元的な車両の認識と首都高速近傍のビルからトラッキングの検証を行った。
- ビーコン情報を用いた交通需要推計に関する研究
麦倉武志・桑原雅夫・新倉聡・織田利彦 本研究においては、光ビーコン情報から交通需要を推定する方法を提案し、その推定精度に関する考察を行なった後、横浜地区に本方法を適用し実用化への課題を整理した。光ビーコンは、従来の車両感知器と同様に交通量、オキュパンシーなどを計測できる感知機能に加え、路車間の双方向通信機能も備えている。双方向通信により車載器を搭載している個別の車両の動きを把握することができるので、様々な交通需要の推計に利用できる。本研究では、交差点における方向別交通量、面的な広がりを持った地域におけるOD交通量、経路交通量などの交通需要を推計する方法および精度を評価する方法を提案した。横浜地区への適用を通して、車載器の普及率が0.1%程度と低い上に、車種によって普及率に大きな偏りがあることがわかったので、車種別に需要を推定する方法、感知エラーや通信エラーといった誤差を考慮した需要推定方法の開発が望まれる。
- 兵庫県南部地震の被害分析
―その5 GISを用いた灘区の建築物被害分析―
村尾修・山崎文雄 GISを用いて灘区における建築物被害の分析を行った結果,どの構造においても,全壊率の高い地域はいわゆる「震災の帯」上に広がっているという傾向が確認された.また全壊率の高い地域で死者発生率も高いという傾向が見られた.木造建築物の被害率と微地形(土地条件)との関係を検討した結果,表層の地盤条件の違いが建築物の全半壊率に大きく影響していることが伺われた.さらに減免用被災度調査における全壊率の判定基準の方が,「震災復興都市づくり特別委員会」による調査の判定基準よりも高くなっていることも確認された.