- Geドーピングによる表面電子状態の修飾と分子吸着への影響
福谷克之 Pt(111)表面にGeをドープした試料の電子構造とNO分子の吸着過程を、光電子分光、反射吸収赤外分光、熱脱離スペクトルの実験により調べた。Geのドープにより、5つのdバンドのうち主にEgバンドのフィリングが起こり、バンドエネルギーが低下していることがわかった。この表面では、NOの吸着エネルギーが低下し、さらにブリッジサイトへの吸着が阻害されることがわかった。Egバンドのフィリングが原因と考えられる。
- 振動制御型熱輸送管に関する研究
―層流崩壊条件とその熱輸送性能への影響―
西尾茂文・申 興泰・呉 性済 本報告では、サーモサイフォンやヒートパイプの欠点を補う新しい熱輸送管として期待される振動制御型熱輸送管の熱輸送限界発生の可能性について検討している。即ち、本熱輸送管は層流状態の往復振動流における拡散促進効果を利用しているため、層流状態の崩壊(あるいは乱流遷移)が熱輸送限界をもたらす可能性がある。そこで、まず可視化実験により層流状態の崩壊条件を検討し、流動状態マップを示した。次いで、その熱輸送性能への影響を調べるために、実効熱伝導率の測定実験を行い、層流状態が崩壊しても実効熱伝導率は低下せず逆に向上することを示した。
- 二相固体の破壊挙動の二次元メソ解析
李 延権・都井 裕 短繊維あるいはインクルージョンを含む二相固体の破壊挙動をメソスケールで解明するために、二次元メソ解析プログラムを開発した。いずれも、ボロノイ分割メッシュに基づく計算不連続体モデルを使用しており、短繊維については母材との連成を陰的に考慮するやや粗いモデル化が、インクルージョンについては粒内破壊も考慮する精細なモデル化が行なわれている。破壊解析例によりその有効性を示す。
- 座席配置評価シミュレータと実験による快適通勤車両の提案
須田義大・松岡茂樹・西村隆一・田村 宗 通勤輸送車両の車内レイアウト評価に関する工学的な検討を行った。従来は、経験的に乗客の快適性を重視した多座席方式と乗降容易性は相反すると言われてきたが、構築した快適性と乗降容易性の客観的評価手法を用いることにより、これらが両立する新しい座席配置を提案する。提案する方式は、乗客の平均乗車時間に応じた3つの方式があり、いずれも3人掛けクロスシートとロングシートを左右非対称に用いる。座席配置評価シミュレータによる計算と、実物大車両のモックアップを用いた評価実験により、提案する座席配置は、快適性、乗降容易性共に良好であることが示された。
- 0.15 μm 部分空乏型 SOI MOSFET における1V以下での基板浮遊効果
更屋拓哉・高宮真・トラン ゴック デュエト・平本俊郎・生駒俊明 薄膜SOIデバイスは、低消費電力用途への応用が期待されているが、低電圧領域における基板浮遊効果はほとんど調べられていない。本研究では0.15μm PartiallyDepleted(PD) SOIMOSFETを試作し、1V以下の領域での基板浮遊効果について詳細に調べた。その結果シリコンのバンドギャップ以下の領域である0.9Vまでインパクトイオン化電流を観測した。さらに0.7V付近までインパクトイオン化の影響がキンク特性および過渡特性に現れることを明らかにした。このことから今後の低消費電力SOIデバイスの実現には低電圧領域においても基板浮遊効果対策が重要な課題であることを示した。
- 数値気候モデルによる新潟地方の局地気象解析
―水田の有無が夏季の環境に及ぼす影響―
村上周三・持田 灯・赤林伸一・吉田伸治・金 相進 Mellor-Yamada型の大気乱流モデルを用いた数値シミュレーションにより、新潟地方の夏季の局地気象を解析した。解析では2つのCASEを想定した。CASE1では現状の土地利用状況を想定した場合を行ったのに対して、CASE2では全ての水田が舗装面に変更になったと仮定した場合について解析を行った。2つのCASEを比較することで、水田が夏季の局地気象に及ぼす影響を検討した。水田を舗装面に変更した場合、現状の土地利用状況を想定した場合に対して午後3時の地表面温度が4〜10℃、高さ10mでの気温が約2℃上昇し、風速も全般に増加した。この変化は潜熱輸送量の大小が大きく影響しており、潜熱輸送量の大きい水田は夏季の地表面温度の上昇に大きく貢献していることが確認された。
- Application of Biological-Growth Strain Method on Optimal Shape Design of Mechanical Components
許 かい麟・魚本健人 最近、構造物の最適化分野において形状最適化の研究に関心が高まっている。そのうち、応力集中を最小化するための形状最適設計手法として生物成長調節過程をシミュレーションした手法が新しく提案された。本研究では、構造感度解析が必要ない特徴を有している本手法について、そのアルゴリズムを説明し、有効性を検証した。
- コンクリート構造物への非破壊検査の適用に関する基礎研究(1)
− RC床版を用いた静的荷重損傷検出の比較 −
吉沢 勝・西村次男・魚本健人・加藤佳孝 コンクリート構造物に適用可能な非破壊検査は数多く提案されており、その手法や測定される項目は多種多様にわたっている。一方、非破壊検査を用いて行われる点検の目的も多岐にわたっており、その目的や構造物の劣化機構等によって適切な非破壊検査法を選択することが重要である。本研究では、コンクリート構造物の様々な劣化機構から疲労を取り上げ、鉄筋コンクリート床版供試体を用いて同一条件の下で非破壊検査を行い、非破壊検査相互間の関係を明らかとした。