- 一方程式型Subgridモデルに関する研究
岡本正芳 乱流統計理論の一つである2スケール直接相関近似理論(TSDIA)を利用して、サブグリッド(SGS)エネルギーの輸送方程式をモデル化し一方程式型SGSモデルを導出した。チャンネル流でのラージエディシュミレーション(LES)の際の壁近傍でのSGS諸量の挙動を改善するため、SGS散逸率の補正項を導入した。また、高次等方項を渦粘性表現に導入してSGSモデルのモデル定数の流れ場依存性を解消した新たな一方程式型モデルを提案した。さらに、壁からの周期的吹き出し吸い込みを伴うチャンネル流にそのモデルを適用し検証を行った。
- 差分法および要素法LESにおけるダイナミックSGSモデルの評価
谷口伸行・大島まり・坪倉誠 乱流LESの工学的応用には差分法や要素法による実用的な計算法の開発が必要となる。
本論では特に、最近注目されているダイナミックSGSモデルを取り上げて、差分法や要素法による計算法について検討し、モデル定数の影響などについて一様等方乱流とチャンネル乱流のLESにおいて数値検証した。
ダイナミックSGSモデルに現れる空間フィルターについて、差分法や要素法における数種類の定式を比較評価した。
- LESにおけるコロケーショングリッドのエネルギー非保存性の検討
channel計算によるスタッガードグリッドとコロケーショングリッドの比較
大岡龍三・村上周三・持田 灯 近年LES (Large Eddy Simulation)は、室内気流、建物周辺気流等の複雑乱流場の解析のために利用されるようになってきた。LESの複雑流れ場への適用を考えると、スペクトル法よりは有限差分法を用いた方法が便利である。LESに有限差分法を用いる場合には、数値精度の検討が必要である。 本報では有限差分法における代表的なgridシステムであるstaggered gridとcolocation gridを比較してcolocation gridのエネルギー保存上の問題点を理論的に検討し、比較的高Re数のchannnel流のLES解析を通じてcolocation gridの問題点を明らかにする。
- 波数空間の3次元エネルギースペクトルに基づくLESのための流入変動風の生成
飯塚 悟・村上周三・持田 灯・李 相山 本研究では、まずLarge Eddy Simulation (LES)における流入境界条件として、Lee et al. (1992)で提案された3次元エネルギースペクトルに基づいた流入変動風の生成方法について述べる。次に、本手法で生成された流入変動風を流入境界条件とし、LESにより一様等方性乱流を解析した結果を示し、下流への乱れの減衰過程が正しく再現できることを確認した。
- 平面衝突噴流のLES (第1報)
坪倉 誠・小林敏雄・谷口伸行 衝突噴流は、自由噴流における乱流への遷移、衝突噴流領域における流れ場の伸縮運動による乱流垂直応力間の再分配、壁噴流領域におけるせんだん応力の支配など様々な様相の乱流を含む複雑乱流場であり、一般にレイノルズ平均モデルによる予測が困難な場である。本研究においては平面衝突噴流をLESを用いて解析した。解析に先立ち、平行平板間乱流においてSGSモデルのテストを行ない、その有用性を確認した。衝突噴流のLES解析結果は著者らによる実験値と比較した。
- 平面衝突噴流のLES (第2報)
坪倉 誠・小林敏雄・谷口伸行 ここでは、第一報において述べたモデルと解析手法を用いて平面衝突噴流のLES解析を行ない、実験値と比較した。また、壁面近傍における格子スケールのレイノルズ応力について、特に垂直応力の輸送方程式の各項の収支を計算結果から求め、その輸送機構について調べた。この結果各応力の収支式において、圧力歪み相関項が特に壁面近傍において主要な役割をすることを確認した。また、格子スケールの変動速度に対する乱流エネルギーの輸送方程式における収支についても調べ、円形衝突噴流にみられる壁面近傍のエネルギーの負の生成が平面噴流についてはみられないことを確認した。
- LES Analysis on Turbulent Flow past 2D Square Cylinder using Various
Dynamic SGS Models
村上周三・飯塚 悟・持田 灯・富永禎秀 各種dynamic subgrid-scale (SGS) モデルを用いたLarge Eddy Simulation (LES)により、正方形断面の2次元角柱周りの乱流放出流れを解析した。本研究では、3つの異なる計算格子、2つのグリットシステム、4つのSGSモデルを用いて、計7ケースの計算を行い、それらの結果をLyn and Rodiの実験結果と比較している。今回取り上げた4つのDynamic SGSモデルのなかでは、Lagrangian Dynamic Mixed (LDM)モデルが最も実験と良い対応を示した。更に、LDMモデルによる流跡線に沿ってモデル係数を平均化する安定化手法により、計算の安定性に大きな改善が見られた。
- 角柱周りの流れのラージエディシミュレーション
−ラージエディシミュレーションにおける風上差分の影響−
小垣哲也・小林敏雄・谷口伸行 異なる格子解像度,対流項スキーム,SGSモデルを用いて2次元静止正方形角柱周りの流れのLESを行い,風上化の影響をグリッドスケールエネルギー式で評価した.最も細かい計算格子,対流項スキームに5次精度風上差分を使用した場合でも,風上化による散逸効果はSGSモデルによる散逸効果と比較して無視できない程度であった.しかし一方,時間平均速度場および乱流統計量は実験とかなりよく一致した結果が得られた,従って,LESの工学的応用問題への応用において少ない格子点数で安定な計算を行うという観点から,対流項スキームの風上化は無意味であるという結論は時期早尚である.
- Lagrangean Dynamic SGS Model に基づくLESによるチャンネル
内立方体障害物周辺の乱流解析
朴 南燮・小林 敏雄・谷口 伸行 本研究は、LESモデルとしてLagrangean Dynamic SGS モデルを適用し、チャンネル内立方体障害物周辺の乱流解析を行い、標準Smagorinskyモデル(以下S-Model)を用いた結果と比較したものである。MeneveauらによるLagrangean Dynamicモデルはモデル係数を求める際、流体塊のpath line に沿って平均操作を行うことによって一様方向のない複雑乱流場へDynamic SGS モデルを適用可能にした手法であり、本研究ではその有効性について検討している。一方、障害物周辺の流れのLESに計算安定のためQUICK等の風上差分が用いられることがある。本稿では SmagorinskyモデルによるLESに対し流れ場におけるQUICKの影響についても調べている。計算は立方体の高さ H,流入部の体積平均速度 Ubに基づくReynolds数 40,000 に対して行われ、Matinuzziらの実験結果と比較した。
- 乱流モデルを用いたプラズマ回転効果の研究
横井喜充 プラズマの回転によって乱流が抑えられる現象を乱流ダイナモ・モデルの観点から調べる。プラズマの回転効果を 捉えるために、乱れの強さを表す乱流MHDエネルギーとその散逸率に加えて、乱流場の速度/磁場相関である乱流クロス・ヘリシティを考慮に入れたモデル(K-e-Wモデル)が構成される。そのモデルを簡単な円筒形状プラズマに適用する。プラズマのポロイダル回転がポロイダル磁場の配位と結びつくことによって乱流クロス・ヘリシティが供給される。その量は回転の強さに比例する。生成されたクロス・ヘリシティの効果で乱流エネルギーが抑えられること、その抑制率が回転の強さの二乗に比例することが確かめられる。トロイダル回転など一般の回転についても考察される。
- 浮力による乱流フラックスの減衰・促進を考慮した修正k-eモデル
大平 昇・加藤信介・村上周三 空調された室内の気流を計算する際は、安定流、不安定流に対応する必要がある。浮力による減衰効果を考慮したモデルはすでに存在する(MKCモデル)。本報ではMKCモデルの減衰関数を拡張し、新しいモデル関数を導出した。このモデル関数により、不安定領域では浮力により乱流フラックスが促進される。このモデルを用いて2次元非等温室内気流の計算を行い、模型実験結果及びその他の乱流モデルによる計算結果と比較した。その結果、促進効果を考慮した方がより実験に近い結果となり、新しいモデル関数が有効なことが明らかとなった。
- 不安定成層乱流におけるエネルギー、温度強度スペクトル
岡本正芳 乱流統計理論の一つである2スケール直接相関近似理論(TSDIA)を利用して、浮力下の乱流場の理論解析を行った。その結果、導出されたエネルギーと温度強度のスペクトル表現は不安定成層時に浮力小領域でk-3のべき則を示し、近年の実験結果の傾向を良く再現することが確認できた。
- 直円管内旋回乱流の数値解析
(k-ε、k-ε-h、応力モデルと実験値間の比較検討)
西島勝一 工学研究において多用されているk-εモデルを、直円管内旋回乱流の解析に適用して、旋回の特性を表現できるモデルに改良するための検討を行った。
実験結果や応力モデル、k-ε-hモデルによる解析結果と比較し、次の点を重点として論議を進めた。
1.軸方向流速の管中心領域での原則現象の再現。
2.周方向流速や乱流エネルギー値の管中心領域での立ち上がり現象の再現。
3.旋回強度の下流に向かっての減衰傾向の実験との一致。
以上より、レイノルズ応力の表現や管中心部分での取り扱いの重要性が明らかになった。
- 慣性領域スペクトルを用いた圧縮性乱流のモデリング
半場藤弘 2スケール統計理論を用いて非一様圧縮性乱流モデルを考察した。速度と密度分散の慣性領域スペクトルを仮定して、圧縮性散逸率、質量フラックス、レイノルズ応力などの乱流統計量のモデルを求めた。乱流マッハ数と規格化された密度分散の2つのパラメータがモデル式に含まれることがわかった。また、質量フラックスの渦拡散率が非圧縮性乱流の渦拡散率より小さいこと、乱流エネルギーと散逸率の実質微分の項や平均速度発散の項が現れることが示された。一様乱流の直接数値計算のデータを用いて圧縮性散逸率のモデルを評価した。
- 低レイノルズ数型kーεモデルを用いたバックステップ流れの数値解析
弘畑幹鐘・谷口伸行・小林敏雄 本報では安倍・長野・近藤モデルをバックステップ流れの全領域に適用し、笠木らの実験値との比較を行った。
また低レイノルズ数kーεモデルを複雑形状に適用するときの問題点を考察し、壁面効果,低レイノルズ数補正のための修正関数を必要としないalternativeなモデルとしてDurbinによるk-ε-vモデルを取り上げた.
- マルチグリッド加速手法を応用したマルチブロック並列流体計算による
室内気流解析
三浦靖弘・加藤信介 並列処理および大規模計算に欠かすことができないマルチブロック流体解析では、領域間のデータ交換が必要であるが、その方法が解の精度、収束性等に影響を与えるものと考えられる。本報では、並列計算の粒度向上とプログラム作成の容易性から、データ交換を各ブロックの緩和計算1サイクルが終了した段階で行うこととし、このことによる収束性の悪化を防ぐため、マルチグリッド法の概念を応用した境界値強制による収束加速手法、すなわち各ブロック単位に連続条件を満たすよう境界値の修正を行い、収束性向上を計ったので報告する。