伊豆諸島東青ヶ島カルデラ内の熱水鉱床探査において、最高精度の実用探査技術を達成

会見日時

平成28年6月2日(木)10:00~11:00

会見場所

東京大学生産技術研究所 中セミナー室3(As303・304号室)

発表者

   
浅田 昭(東京大学生産技術研究所 教授)
飯笹 幸吉(東京大学生産技術研究所 特任教授)

発表のポイント

◆海中ロボットに搭載した合成開口インターフェロメトリソーナー技術により、海底熱水鉱床マウンドを分解能10cmで3次元音響画像作成する実用技術を開発した。

◆船上から水深750mの海底熱水マウンド目的地点へ柱状採泥器を投下し、14回平均で20mの、革新的な精度を達成した。

◆本採泥探査技術は、狙ったピンポイントに柱状採泥器を高い位置精度で投下できるため、低価格で高効率な熱水鉱床探査に極めて有効である。

発表概要

東京大学生産技術研究所の浅田昭教授、飯笹幸吉特任教授らの研究グループは、2015年に開発した最先端の合成開口ソーナーを海中ロボットに搭載して、伊豆諸島青ヶ島東方12kmほどに位置している最大水深820mの東青ヶ島カルデラ内部を効果的に探査し、中央火口丘、南東カルデラ壁直下および東部カルデラ床の少なくとも三カ所の海底熱水鉱床探査に成功した。

(1) 本研究グループは、海中ロボットに搭載した合成開口インターフェロメトリソーナー(注1)技術により、海底熱水鉱床マウンドを分解能10cmで3次元音響画像作成する実用技術を開発した。海中ロボットに合成開口ソーナーを搭載し、水深750mの海底から高度80mを航行しながら、探査幅300mで海底の音響画像を作成した。従来の同等のサイドスキャンソーナーであれば25cmピクセルの2次元の音響画像が成果となるが、本ソーナーは距離に関係なく全域5cmのピクセルサイズでの高品質の3次元音響画像情報を得る性能を有しており、今後の熱水鉱床探査において重要な役割を担うことが期待される。

(2) 本研究グループは、熱水鉱床マウンドと推定される水深750mの目的地点に、船上からワイヤーウインチと音響測位システムを使って重力式柱状採泥器(注2)を誘導した。14回平均で目的地点に20m以下の精度で誘導(従来はおよそ50mから200mの投下・誘導精度)し、貴重な硫化鉱物試料を効果的に採取した。本採泥探査技術は、狙ったピンポイントに柱状採泥器を高い位置精度で投下できるため、低価格で高効率な熱水鉱床探査に極めて有効である。

問い合わせ先

<海洋鉱物広域探査システム開発の事業全般及び本研究成果について>
東京大学生産技術研究所
教授 浅田 昭
Tel:03-5452-6187
研究室URL:http://unac.iis.u-tokyo.ac.jp/

<本研究成果(鉱物の分析に限る)について>
東京大学生産技術研究所
特任教授 飯笹 幸吉
E-mail:k-iizasa {at} iis.u-tokyo.ac.jp {at}を@に置き換えてください。

用語解説

(注1) 合成開口インターフェロメトリソーナー
合成開口ソーナーとは、直線移動しながらワイドビームの音波を送受信し、8m程度のアレイ開口長内の受波信号を横方向のターゲット(ピクセル)に焦点合わせを行って、高解像度の音響画像を作成する技術。開口長とは、送受信器の長さを意味する。インターフェロメトリソーナーとは、複数の受波素子を縦方向一列に配置し、それらの受波信号の位相差から鉛直到来方向角を計測する技術である。
合成開口インターフェロメトリソーナーとはこの2つの技術を掛け合わせたものである。

(注2) 重力式柱状採泥器
ステンレス製の5mの円筒菅の上に500kgの錘を付けて海底に自由落下させ、堆積層に突き刺して試料を採取する装置。

(注3) 3次元音響画像探査
合成開口インターフェロメトリソーナーによって、分解能10cm×10cmの海底表面からの音波の反射エコーを受信し、反射エコーの強さを光に変換してディスプレイ上に表示する3次元音響画像情報を計測する技術。

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